2 色led...

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兵庫教育大学 研究紀要 第532018 9 pp. 103 108 2 LED の光 セ ン シ ン グ特性 と 障害物検知への応用 Light-sensing Capability of Dual-color LEDS and Its Application to Obstacle Detection 英 樹* ** KOYAMA Hideki YIN Mengze 1 つのパッケージに発光色の異なる 2 個 の発光 ダイ オ ー ド (LED) が実装 さ れた 2 LED の新たな応用と して , その 短波長側 ( 青ま たは黄緑色) LED を発光素子, 長波長側 (赤色) LED を受光素子 と し た, 小型で一体化 さ れた光セ ンサ モ ジュ ールと し ての利用の可能性 を検討 し た。 鏡, 白色紙, 段ボール, 黒色紙 を対象物 と し た反射光検知特性の測定では, 使用 し た 4 種類の 2 LED のすべてにおいて短絡電流の変化は数オ A と小さかったものの, 開放電圧の変化は比較的大き いものもあり , 鏡およ び白色紙に対 し て最大数百 mv の値が得 ら れた。 最も高い開放電圧の変化 を示 し た 2 LED を用 いて , パ ソ コ ン制御 に よ る簡易 で低 コ ス ト の障害物検知 シス テ ムを試作 し て動作確認 を行 っ た と こ ろ , 距離 1 cm程度で 白色紙を検知しその情報をパソコ ンに取り込むこ とができた。 キ ーワ ー ド : 発光 ダイ オ ー ド , 光 セ ンサ, 受光素子, 計測 ・ 制御, 教材 Key words : light emitting diode, optical sensor, optical receiver, measurement and control, teaching tool 1. はじめに 長寿命 ・ 高輝度 ・ 低消費電力の光源であ る発光 ダイ オー (LED) , 照明やディ スプレイ , 信号機な どの製品 です で に多 く 使用 さ れ, われわれの身の回り に急速に普 及しつつある。 様々な発光色のものがあり , 小型で安価, た低電圧 ・ 小電流で駆動が可能であ ることから学校教 育の現場でも教材と して広く用いられている ' 8) LED は太陽電池やフ ォ ト ダイ オー ド と同 じ く 半導体 材料の pn 接合を基本構造と しているため, 光を照射す る と内部光電効果によ り 起電力 を生 じ る と い う 特徴 を も っ ている 9 ' 2) 。 逆方向電圧を加えている場合には光電流が 流れるため, フ ォ ト ダイ オ ー ド と し て の利 用 が可能 で あ る。 この発光と受光の両方の機能を有するという 特徴は, 特に双方向光通信への応用に向け て注目を集め, 多くの 研究成果が報告されている 9, ' 3 ' 6) 。 学校教育に関わるも のとしては, 光通信実験の受光素子と しての利用 2, 3) のほか, エネルギー変換学習のための光電池 5) として , また光電効果そのものの学習を日的と した実験'' ) にも 利用 れている。 教材 ・ 教具と し ての利用 を目的 と し た 簡易な双方向光通信実験装置の開発も試みら れ, 実際に 生徒が光通信で会話を体験する授業実践も行われた' 72 ° ) 1 つの LED を送受信兼用と しているため部品数が少な く 簡易 な回路構成 と な り , ま た伝送路が 1 本となるため 光フアイバや鏡を利用した実験がしやすいという利点も ある。 半導体の内部光電効果は, バンドギヤツプエネルギー と同じ , も し く はそれより も大きい光子エネルギーを有 す る光に対 し てのみ発生す る。 LED の場合, 発光によ り放射される光と同じか, それより も波長の短い光が照 射 さ れた と き に光起電力 や光電流が観測 さ れる。 し たが っ て波長の短い (470nm前後) 青色 LED の場合は可視光 では青色~ 紫色の光に対 してのみ反応するが, 波長の長 (630nm前後) 赤色 LED の場合はほと んどすべての 可視光に対 し て光電効果を観測するこ と が可能である。 現在, 発光色の異なる 2 ( / 赤など) または 3 ( / / ) LED 素子が 1 つのパッケージに実装さ れた 2 色または 3 LED が屋外 デ ィ ス プ レ イ な どに多 く用いられており , 電子部品販売店で容易に入手す るこ とができる。 このよう な LED の青または緑色 LED 素子 を発光素子, 赤色 LED 素子を受光素子と して用いるこ とができれば, 光源と光センサが一体化された小型で安 価のセンサモジュールと しての応用が可能となる。 特に, 発光素子と受光素子の相対的な位置や角度の調整が不要 になるため, 自律ロボッ ト教材の障害物検知やライ ント レースにおいて, 精度の高い制御 を容易に行う こ と がで きるようになる。 そこで本研究では, このような 2 /3 LED の新 たな応用と して光センサモジュールと しての利用の可能 性を検討するため, 基礎特性の評価と システムの試作 を 行 っ た。 こ こ では, 市販の 4 種類の 2 LED について, * 兵庫教育大学大学院教科教育実践開発専攻生活 ・ 健康 ・ 情報系教育 コ ース 教授 平成30 4 2 日受理 * * 兵庫教育大学大学院学校教育研究科 (修士課程) 教育内容 ・ 方法開発専攻行動開発系教育 コ ース 修了生 103

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  • 兵庫教育大学 研究紀要 第53巻 2018年 9 月 pp. 103 108

    2 色 LED の光セ ンシング特性と障害物検知への応用

    Light-sensing Capability of Dual-color LEDS and Its Application to Obstacle Detection

    小 山 英 樹* 殷 夢 澤** KOYAMA Hideki YIN Mengze

    1 つのパ ッケ ージに発光色の異な る 2 個の発光 ダイ オー ド (LED) が実装 さ れた 2 色 LED の新たな応用 と し て , その

    短波長側 (青または黄緑色) LED を発光素子, 長波長側 (赤色) LED を受光素子と した, 小型で一体化 さ れた光セ ンサ

    モ ジュ ールと し ての利用の可能性を検討 した。 鏡, 白色紙, 段ボール, 黒色紙を対象物と し た反射光検知特性の測定では,

    使用 し た 4 種類の 2 色 LED のすべてにおいて短絡電流の変化は数オA と小 さかっ たものの, 開放電圧の変化は比較的大き

    いも のもあり , 鏡およ び白色紙に対 し て最大数百 mv の値が得 ら れた。 最も高い開放電圧の変化 を示 し た 2 色 LED を用

    いて , パ ソ コ ン制御 によ る簡易で低 コ ス ト の障害物検知 シス テ ムを試作 し て動作確認 を行 っ たと こ ろ , 距離 1 cm程度で

    白色紙を検知 し その情報をパソ コ ンに取り 込むこ と がで き た。

    キーワ ー ド : 発光 ダイ オー ド , 光セ ンサ, 受光素子, 計測 ・ 制御, 教材

    Key words : light emitting diode, optical sensor, optical receiver, measurement and control, teaching tool

    1 . はじ めに長寿命 ・ 高輝度 ・ 低消費電力の光源である発光ダイ オー

    ド (LED) は, 照明やディ ス プレイ , 信号機な どの製品ですでに多 く 使用 さ れ, われわれの身の回り に急速に普及しつつある。 様々な発光色のものがあり , 小型で安価, ま た低電圧 ・ 小電流で駆動が可能であ るこ と から学校教

    育の現場で も教材と し て広 く 用い ら れてい る ' 8)。LED は太陽電池や フ ォ ト ダイ オー ド と同 じ く 半導体

    材料の pn 接合 を基本構造と し てい るため, 光 を照射すると内部光電効果により 起電力 を生じるという 特徴をも っ

    て い る 9'2)。 逆方向電圧を加え てい る場合には光電流が流れる ため , フ ォ ト ダイ オー ド と し ての利用が可能であ

    る。 この発光と受光の両方の機能を有するという 特徴は, 特に双方向光通信への応用に向けて注目を集め, 多 く の研究成果が報告 さ れてい る 9, '3 '6)。 学校教育に関わる もの と し ては , 光通信実験の受光素子 と し ての利用 2, 3) のほか, エ ネ ルギー変換学習のための光電池 5) と し て ,

    ま た光電効果そのも のの学習 を日的 と し た実験 ' ') に も利用 さ れてい る。 教材 ・ 教具と し ての利用 を目的と し た

    簡易な双方向光通信実験装置の開発も試みら れ, 実際に生徒が光通信で会話を体験する授業実践も行われた'7 2°)。 1 つの LED を送受信兼用 と し てい る ため部品数が少なく 簡易な回路構成と なり , ま た伝送路が 1 本と な るため光 フ アイ バや鏡を利用 し た実験がしやすい と いう 利点 も

    あ る。

    半導体の内部光電効果は, バ ン ド ギ ヤツプエネ ルギー と同 じ , も し く はそれよ り も大きい光子エネルギーを有する光に対 し てのみ発生す る。 LED の場合, 発光により 放射 さ れる光 と同 じか, それよ り も波長の短い光が照射 さ れたと き に光起電力や光電流が観測 さ れる。 し たがっ

    て波長の短い (470nm前後) 青色 LED の場合は可視光では青色~ 紫色の光に対 し てのみ反応す るが, 波長の長い (630nm前後) 赤色 LED の場合はほと んどすべての可視光に対 し て光電効果を観測するこ と が可能である。

    現在, 発光色の異なる 2 つ (緑 / 赤な ど) または 3 つ(青 / 緑 / 赤) の LED 素子が 1 つのパ ッケージに実装された 2 色ま たは 3 色 LED が屋外 ディ ス プレイ な どに多く 用いら れており , 電子部品販売店で容易に入手すること ができ る。 こ のよ う な LED の青または緑色 LED 素子を発光素子, 赤色 LED 素子を受光素子と し て用い ること ができ れば, 光源と光セ ンサが一体化 さ れた小型で安価のセ ンサモ ジュ ールと し ての応用が可能と な る。 特に, 発光素子と受光素子の相対的な位置や角度の調整が不要

    にな るため, 自律ロ ボ ッ ト 教材の障害物検知やライ ン トレ ースにおい て , 精度の高い制御 を容易に行う こ と ができ るよ う にな る。

    そこ で本研究では, こ のよ う な 2 色 / 3 色 LED の新たな応用 と し て光セ ンサモ ジュ ールと し ての利用の可能

    性 を検討す るため, 基礎特性の評価と シス テ ムの試作 を行 っ た。 こ こ では, 市販の 4 種類の 2 色 LED について,

    * 兵庫教育大学大学院教科教育実践開発専攻生活 ・ 健康 ・ 情報系教育 コ ース 教授 平成30年 4 月2 日受理* * 兵庫教育大学大学院学校教育研究科 (修士課程) 教育内容 ・ 方法開発専攻行動開発系教育コース 修了生

    103

  • 小 山 英 樹 殷 夢 澤

    光セ ンサモ ジュールと し て使用 した場合の反射光検知特

    性を測定 し た結果について報告する。 また, 最も高い反射光検知特性を示 し た LED を用いて簡易なパソ コ ン制御障害物検知 システムを構成 し , その動作 を確認し たのでその結果についても報告する。 カソード

    定'電流原(10 mA)

    2 . 2 色 LED の反射光検知特性 土

    表 1 に示す 4 種類の 2 色 LED を使用 し て実験を行 つ 測定時) た。 表中の発光波長, 光度, 半値角の数値は, それぞれのデー タ シー ト に記載 さ れてい る ものであ る (順方向電

    流 IF= 20mAでの値)。表 1 . 使用 した 2 色 LED

    ・l- -- l-

    テイジタル・ マルチメータ

    アノード

    (青 / 黄緑)

    アノード

    (赤)

    2色LED 整-◆' ,l-

    図 1 . 反射光検知特性の測定方法

    口型番 発光色 発光波長 (nm) 光度 (cd) 半値角 2θ,,2 (°)

    OSRGHC5B31A 黄緑 570 1.1

    30 赤 625 1.56

    L59SURKSGC 黄緑 568 0.2

    24 赤 630 1.6

    OSRB5131A-C 三l_ 470 5.8

    30 赤 625 7

    L-519LBHURC 青 470 1.2

    20 赤 633 0.75

    0.04

    3

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    00

    0

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    (>)

    -0一鏡一ロー白色紙

    -●一段ボールー■一黒色紙

    0 2 4 6 8 10距離 (cm)

    (a) 0SRGHC5B31A (黄緑 / 赤)

    0 2 4 6 8 10距離(cm)

    (c) 0SRB5131 A-C (青 / 赤)

    (>)

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    (>)

    図 2 . 開放電圧の測定結果

    104

    0 2 4 6 8 10距離 (cm)

    (b) L59SURKSGC (黄緑 / 赤)

    0 2 4 6 8 10距離(cm)

    (d) L-519LBHURC (青 / 赤)

  • 反射光検知特性の測定方法 を図 1 に示す。 2 色 LED の短波長側 (青または黄緑色) LED 素子に一定電流 (10 mA) を流 し て発光 させ, その光を反射対象 (鏡, 白色紙, 黒色紙, 段ボールの 4 種類) に垂直に照射 し , 反射対象からの反射光によ り 長波長側 (赤色) LED 素子に生 じ た開放電圧およ び短絡電流 を LED と 反射対象 と の距離を変え て測定 し た。 ただし開放電圧測定時には測定

    の安定化のため, 素子に並列に3.9MΩの抵抗 を接続し てい る。 定電流源には直流安定化電源 (GW Instek GPD- 3303s) , 開放電圧な ら びに短絡電流の測定にはディ ジタル ・ マルチメ ー夕 (ADCMT 7351E) を用い, 暗所にて測定 を行 っ た。

    開放電圧の測定結果を図 2 に示す。 いずれの LED において も反射対象が鏡の場合, 数十~ 数百m yの開放電圧の増加が確認で き た。 開放電圧の増加は距離 5 cm 程度まで見 ら れ, それ以上の距離では LED 内部での反射光の影響により 一定値になる。 OSRGHC5B31A (黄緑/ 赤) と 0SRB5131A-C (青 / 赤) では白色紙でも開放

    電圧の増加がはっ き り と 確認で き たが, L59SURKSGc (黄緑 / 赤) と L-519LBHURC (青 / 赤) では鏡以外の反射対象に対 しては明確な開放電圧の増加は見ら れなかっ

    た。

    (v( :E

    )

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    )

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    0 2 4 6 8 10距離 (cm)

    (a) 0SRGHC5B31A (黄緑 / 赤)

    図 3 は短絡電流の測定結果であ る。 どの LED においても測定さ れた短絡電流は数オA ~ 十数オA で , 発光 / 受光を別個の単色 LED を用いて実験 し た場合と同程度の値 と な っ てい る 9, '')。 そのため, 対象物から の反射光によ る変化 も非常に小 さ く , 使用 し たディ ジタ ル ・ マルチメ ー 夕の分解能 (1 オA) の数倍程度 し かない。 こ のよう に微弱 な (数オA の) 電流の変化 を検出 し てパソ コ ンに取り 込むためには増幅回路や電流 / 電圧変換回路が必要にな る。 し たが っ て , で き る だけ簡易 な構成で 2 色LED を光 セ ンサモ ジ ュ ールと し て使用す る ためには ,

    短絡電流ではな く , 比較的大き な変化が得ら れた開放電圧を利用する方がよい。 そこ で以下で報告する障害物検

    知 シス テ ムにおい ては, 白色紙に対 し て最 も大き な開放電圧の変化が見ら れた 0SRB5131A-C (青 / 赤) を用い, 短絡電流ではな く 開放電圧の変化を検出するよ う に した。

    3 . 2 色 LED を光センサと して用いた障害物検知シ ステ ム

    2 色 LED の光 セ ンサモ ジュ ールと し ての動作 を確認す る ため , パ ソ コ ン制御によ る障害物検知 シス テ ムを試

    作 し た。 教材と し て利用しやすいよう , でき るだけ簡易な構成で低 コ ス ト な も のにす る ため , パ ソ コ ンのデー タ

    入出力には Km2Net 製 USB 接続ディ ジタル入出力モジユー0.012 r

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    (v(E

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    (vl:E)

    0 2 4 6 8 10距離 (cm)

    (b) L59SURKSGC (黄緑 / 赤)

    0 2 4 6 8 10 0

    距離 (cm)

    (c) 0SRB5131A-C (青 / 赤)図 3 . 短絡電流の測定結果

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    2 色 LED の光セ ンシング特性と障害物検知への応用

    2 4 6 8 10 距離 (cm)

    (d) L-519LBHURC (青 / 赤)

  • 小 山 英 樹 殷 夢 澤

    ル (USB-10 2.0) 2') を使用 し た。 こ の入出力 モ ジュ ールは安価 (1,000円 ) で販売 さ れてお り 22), プロ グラ ミ ン

    グ言語と し て広 く 普及 し てい る Microsoft Visual Basic や Excel v BA を使用 し て比較的容易に制御 プロ グラ ムを作成す るこ と ができ る。 特に Excel v BA を使用すれば測定結果を Excel のシート にそのまま記録でき るので , 実験等には便利である。 8 ビ ッ ト のポー ト 1 と 4 ビ ッ トのポー ト 2 の 2 つのディ ジタ ル入出力 ポー ト (パラ レル)

    があり , 各 ピ ンには最大25mA (全 ピ ン合計で80mA まで) の電流 を流す こ と がで き る。 ただ し デイ ジタ ルデー 夕の入出力 し かで き ないため, アナロ グ電圧の入出力には A/D ・ D/A コ ンバータ が必要にな る。

    今回試作す る シス テ ムは, 受光側 LED の開放電圧が基準電圧よ り 高いか低いかで障害物の有無 を検知する も

    のであ るため, AID コ ンバータ を用いて開放電圧 を測定する必要はない。 しかし , 検知を行う対象物や周囲の環境に合わせて基準電圧 を変え る必要があ るため, こ の調整がソ フ ト ウェ アででき るよ う に し てお く と 便利である。

    そ こ で D/A コ ンバータ を用い て基準電圧 を発生 さ せるよ う に し た。

    D/A コ ンバータ は市販の Ic を利用す るこ と も 可能であ るが , ほ と ん どがデ イ ジ タ ルデー 夕 を シリ アル信号 と

    し て入力するものであり , 取り扱いが容易ではない。 そこ で本研究では, 2 種類の抵抗と プロ グラ ムで簡単にでき る電圧加算型 D/A コ ンバー タ 8,23,24) を自作す る こ とに し た。

    こ の D/A コ ンバータ の回路図 を図 4 に示す。 R および 2R の 2 種類の抵抗 を ラ ダー (は し ご) 形 に組み , USB-10 の出力 ポート ( ポート 1 , 8 ビッ ト ) に接続した だけ の簡易 な構成 と な っ てい る。 こ の と き出力電圧

    vDA は , ポー ト 1に出力 さ れた 8 ビ ッ ト のデ ィ ジ タ ルデータ a7a6a5a4a3a2a,ao (各値は 「 0 」 ま たは 「 1 」 ) に対 し ,

    =2 (a7 a6 a5 a4 a3 a2 a, ao、

    VDA 3 2 十 4 十 8 十16 十32 十64 十128 十256ノVCC (1) で計算 さ れる値と なる。 こ こ で , v cc はパ ソ コ ンの USB 端子に供給 さ れる電源電圧 (約 5 v ) で ある。 8 ビ ッ トすべてが 「 0」 の場合 vDA は 0 v , すべて 「 1」 の場合は約3.3v と なり , 「 0」 と 「 1」 の組み合わせにより , その間を255等分 し た電圧を出力す るこ と ができ る。

    2 色 LED (0SRB5131A-C) を含めた システム全体の回路図 を図 5 に, またユニバーサル基板 (47mm X 72mm) を使用 し て実際に試作 し た電子回路部分の外観を図 6 に示す。 発光素子である青色 LED には反射光検知特性の測定のと き とほぼ同 じ約10mA の電流を流すため, アノ ードに560Ωと300Ωの 2 つの抵抗 を並列接続し , こ れを通し て USB-10 の v c c 端子に接続し た。 受光素子と し て使用す る赤色 LED には開放電圧の安定化のため3.9MΩの抵抗 を並列接続し てい る。 障害物検知のための基準電

    106

    V DA

    図 4 . D/A コ ンバータの回路図

    圧は10kΩと20kΩの抵抗 ラ ダー 回路によ る D/A コ ンバータ によ り 発生させ, こ の基準電圧と受光素子である赤色LED の開放電圧 を コ ンパレ ー 夕で比較す るよ う に し てい る。 なお コ ンパレ ー 夕には , 入手 しやすい汎用 オペ アン プ (LM358) を使用 し た。 コ ンパ レ ー 夕の出力 はUSB-10 のポート 2 ( ピ ン 0 ) に接続さ れており , 受光用 LED の開放電圧が基準電圧よ り も高け ればポー ト 2 の最下位 ビ ッ ト が 「 1 」 , 低け れば 「 0 」 にな るよ う にな っ てい る。 USB-10 以外はすべて安価で入手が容易 な汎用部品であり , ユニバーサル基板 を含めても300円程度で購入でき る。

    こ の シス テ ムを使用す るためにはまず基準電圧 を決定

    す る必要があ る。 前章で報告 し た通り , LED パ ッ ケージ内 での反射光のため, 障害物がない場合 で も受光用LED にはあ る程度の開放電圧が生 じ る。 障害物検知のための基準電圧はこ れよ り も高 く , なおかつ障害物からの反射光が届いた場合の開放電圧よ り も低 く なけ ればな

    ら ない。 そこ でまず室内照明下で白色紙と黒色紙を障害

    物と し て用い, 開放電圧を測定 し た。こ の電圧の測定は, Excel v BA によ り A/D 変換のプ

    ロ グラ ムを作成 して行った。 D/A コ ンバータ と コ ンパレー タ があれば, 逐次比較型の AID 変換 を行う こ と が可能である 8,23,24)。 本 システムでは 0 ~ 約3.3v の電圧を 8 ビ ッ

    ト の分解能 (256段階) で測定するこ と ができ る。

  • 2 色 LED の光センシング特性と障害物検知への応用

    図 5 . 障害物検知シ ステムの回路図

    図 6 . 試作 した電子回路部分の外観

    測定の結果, 白色紙ではディ ジタ ル値で105~ 107 (電圧値で約1.4v) , 黒色紙では40~ 60 (約0.5~ 0.8v) の値が得 ら れた。 そこ で , 基準電圧をディ ジタル値で95 (電圧値で約1.2v ) に設定 し , Excel v BA を用いて障害物検知用の プロ グラ ムを作成 し た。 こ の プロ グラ ムを用い

    て実際に白色紙を障害物と し て動作 させたと こ ろ , LED を距離 1 cm程度まで障害物に接近 させたと き , 受光用

    107

    LED の開放電圧が基準電圧 を超え たこ と をパ ソ コ ンで検知でき るこ と が確認でき た。

    4 . まと め2 色 LED の小型で一体化 さ れた光セ ンサモ ジュ ール

    と し ての応用の可能性を探るため, 反射光検知特性の測定と障害物検知 システムの試作 を行っ た。 反射光検知特

    性の測定は, 鏡, 白色紙, 段ボール, 黒色紙の 4 種類の反射対象 を用い , 4 種類の 2 色 LED について行 っ た。 いずれも , 短波長側 (青ま たは黄緑色) の LED を発光素子, 長波長側 (赤色) の LED を受光素子と し , 対象物からの反射光によ り受光素子に生 じ る開放電圧およ び

    短絡電流を LED と対象物 と の間の距離 を変え て測定 した。 その結果, 短絡電流の変化は非常に小 さい (数オA) ものの, 開放電圧の変化はある程度大き く (数十~ 数百my) , 開放電圧を利用すれば比較的簡易な構成で検知し, その情報をパソ コ ンに取り 込むこ とができ るこ と がわかっ

    た。 そこ でこ の結果を利用 し て, パソ コ ン制御の障害物検知 シス テ ムを試作 し た。 パ ソ コ ンのデー タ入出力 には

    低 価 格 で 入 手 可 能 な デ ィ ジ タ ル入 出力 モ ジ ュ ー ル

    (USB-10 2.0) を用い, また D/A コ ンバータは抵抗ラ ダー 回路 を利用 し てい るため, 簡易で低 コ ス ト の構成と な ってい る。 こ のシステムによ り , 室内照明下, 距離約 1 cm で白色紙を検知でき るこ と が確認でき た。 発光 / 受光素子が一体化 さ れた, 安価で調整が容易な小型の光セ ンサモ ジュ ールと し て, 教育現場等での応用が期待 さ れる。

    引用文献

    1 ) 根本和昭 : LED を用いたブラ ンク定数の測定実験,物理教育, 第49巻, 第6号, pp 545-547 (2001) .

    2 ) 渡辺智和 : LED 利用法, 物理教育, 第52巻, 第 3号, pp 249-253 (2004).

    3 ) 長谷川誠 : 発光 ダイ オー ド を用いた光通信実験セ ット と それを利用 した演示実験の実践, 応用物理教育, 第32巻, 第2号, pp 27-32 (2008).

    4 ) 鶴田孝一, 小池守, 高津戸秀, 音エネルギーに対する生徒の理解を深める中学校理科学習におけ る授業実

    践研究, 理科教育学研究, 第50巻, 第 3 号, pp. 135-143 (2010).

    5 ) 渡辺理文, 鎌田正裕 : 光と電気の間でのエネルギー変換を実感させるための教材, 物理教育, 第59巻, 第1号, pp 9-13 (2011) .

    6 ) 武藤浩二, 横尾仁甚 : 発光 ダイ オー ド を用いた教材の開発及び授業等の実践, 長崎大学教育学部教育総合実践センター紀要, 第10号, pp 89-96 (2011) .

    7 ) 若山裕章, 小山英樹 : 振動発電教材の高効率化のための回路の検討と授業実践, 兵庫教育大学学校教育学研究, 第28巻, pp 39-43 (2015).

  • 小 山 英 樹 殷 夢 澤

    8 ) 小山英樹, 西村尚大 : 発光ダイ オー ド を温度セ ンサと し て用いた簡易なパソ コ ン制御温度計測 システム,兵庫教育大学研究紀要, 第51巻, pp 73-77 (2017).

    9 ) 新保利和, 須田隆夫 : 可視光 LED の受光特性に関する研究一双方向通信機の試作一, 鹿児島工業高等専門学校研究報告, 第18号, pp 69-76 (1984) .

    10) E. M iyazaki, S. Itami, and T. Araki : Using a light-emitting diode as a high-speed, wavelength selective photodetector, Rev. Sci. Instr., vol. 69, no. 11, pp.3751-3754 (1998).

    11) 小野寺力, 室谷利夫 : 発光ダイ オー ド を用いた光電効果の実験, 応用物理教育, 第32巻, 第 2 号, pp 9-14 (2008).

    12) 長谷川誠 : 光通信実験セ ッ ト における受光素子と しての発光ダイ オー ドの動作状態の測定, 物理教育, 第63巻, 第4号, pp 269-272 (2015).

    13) T. 0zeki, T. Uematsu, T. Ito, M. Yamamoto, and Y.Unno : Half-duplex optical transmission link using anLED source-detector scheme, Opt. Left., vol. 2, no 4,pp. 103-105 (1978).

    14) N. Kashima and S. Ishii : Optical transmission using super luminosity LEDS as a transmitter and a receiver,J. 0pt. Commun., vol. 23, no 5, pp. 165-169 (2002) .

    15) 安倍尚吾, 春山真一郎, 中川正雄 : LED を光受信機と して使う 新方式の検討, 信学技報, Ocs2006-77,pp.19-24 (2007).

    16) 鈴木康祐, 旭健作, 渡邊晃, 小川明 : LED を受光素子と する双方向可視光通信に関する基礎的検討, 信学技報, USN2010-2, pp 5-10 (2010).

    17) 小山英樹, 高田裕治 : 簡易な双方向光通信実験装置,第72回応用物理学会学術講演会講演予稿集, p. 18-047(2011) .

    18) 高田裕治, 西村尚大, 小山英樹 : 会話を体験するための双方向光通信実験装置, 日本産業技術教育学会近畿支部第28 回研究発表会講演論文集 , pp. 13-14(2011) .

    19) 高田裕治, 小山英樹 : 双方向光通信実験装置の開発と評価, 日本産業技術教育学会第55回全国大会 (旭川)講演要旨集, p. 161 (2012) .

    20) 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科共同研究プロ ジェ ク ト (P) 研究 グループ : イ ノ ベーシ ョ ン力を育成する技術 ・ 情報教育の展望, ジアー ス教育新社, pp 236-245 (2016).

    21) 小松博史 : かんたん ! USB で動かす電子工作, オーム社 (2011).

    22) 秋月電子通商 (株) , http://akizukidenshi.com/ (最終アクセス日 : 2018年3 月13日) .

    23) 渡辺明禎 : VB と 製作で学ぶ初めてのパソ コ ン応用

    108

    工作, CQ 出版社 (2002) .24) 池田政也 : コ ンピ ュ ータ を用いた簡易な電流一電圧

    特性測定装置の開発, 兵庫教育大学大学院学校教育研究科修士論文 (2010) .