taro-27 第1章 生涯学習 - tochigi prefecture...平成9年3月...

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- 95 - 第1章 生涯学習 生涯学習と社会教育 (1) 生涯教育の提唱 1965年(昭和40年)12月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の第3回成人教育推進国際委員会に おいて、ポール・ラングラン(フランスの教育思想家)がワーキングペーパーを提出したのが最初 です。日本では、心理学者の波多野完治氏がこの概念を日本に紹介しました。当時、生涯教育の 概念は、我が国の社会教育 ※1 に類すると解されたことから、当時の文部省では社会教育課が所 管することになり、地方教育委員会でも、しばらくの間、多くは社会教育課が所管していました。 そして、1987年(昭和62年)臨時教育審議会第4次答申が「生涯学習体系への移行」を提言して からは、生涯教育よりも生涯学習の用語が主流とされ、生涯学習は社会教育に代わる概念として 用いられる傾向が強まりました。 社会教育 ※1 「社会教育」とは、学校教育法(昭和22年法律第26号)に基き、学校の教育課程として行わ れる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及び レクリエーションの活動を含む。)をいう。 (社会教育法第2条「社会教育の定義」 S24.6) (2) 生涯教育と生涯学習 生涯教育について 生涯教育という考え方は、生涯にわたる学習の継続を要求するだけでなく、家庭教育、学 校教育、社会教育の三者を有機的に統合することを要求しています。 (社会教育審議会答申「急激な社会構造の変化に対処する社会教育の在り方について」 S46.4) 生涯学習のために、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を、相互の関 連性を考慮しつつ総合的に整備・充実しようとするのが生涯教育の考え方です。 (中央教育審議会答申「生涯教育について」 S56.6) 生涯学習について 学習は、各人が自発的意思に基づいて行うことを基本とするものであり、必要に応じ、自 己に適した手段・方法は、これらを自ら選んで、生涯を通じて行うものです。この意味では、 これを生涯学習と呼ぶのがふさわしいのです。 (中央教育審議会答申「生涯教育について」 S56.6) 「生涯学習」は、生涯教育を学習者の視点から捉え直した考え方・理念であると言われる ことがありますが、これについては、昭和56年の中央教育審議会答申(「生涯教育について」) でも明らかにされているように、「生涯学習」が生涯にわたって行われる「具体的な学習活 動」を指すものであるのに対し、「生涯教育」が「考え方・理念」を表すものであるので、 同質の対照的な概念として両者を捉えることは適切ではありません。生涯教育という「考え 方・理念」に対応する概念としては、改正教育基本法第3条に新たに規定された「生涯学習 の理念」 ※2 が適切です。 (中央教育審議会答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について ~知の循環型社会の構築を目指して~」 H20.2) 生涯学習の理念 ※2 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわ たって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生 かすことのできる社会の実現が図られなければならない。 (教育基本法第3条「生涯学習の理念」 H18.12)

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Page 1: Taro-27 第1章 生涯学習 - Tochigi Prefecture...平成9年3月 第3期生涯学習審議会が審議の概要 「生涯学習の成果を生かすための方策 平成9年4月

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第1章 生涯学習

1 生涯学習と社会教育

(1) 生涯教育の提唱

1965年(昭和40年)12月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の第3回成人教育推進国際委員会に

おいて、ポール・ラングラン(フランスの教育思想家)がワーキングペーパーを提出したのが最初

です。日本では、心理学者の波多野完治氏がこの概念を日本に紹介しました。当時、生涯教育の

概念は、我が国の社会教育※1に類すると解されたことから、当時の文部省では社会教育課が所

管することになり、地方教育委員会でも、しばらくの間、多くは社会教育課が所管していました。

そして、1987年(昭和62年)臨時教育審議会第4次答申が「生涯学習体系への移行」を提言して

からは、生涯教育よりも生涯学習の用語が主流とされ、生涯学習は社会教育に代わる概念として

用いられる傾向が強まりました。

社会教育※1

「社会教育」とは、学校教育法(昭和22年法律第26号)に基き、学校の教育課程として行わ

れる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及び

レクリエーションの活動を含む。)をいう。 (社会教育法第2条「社会教育の定義」 S24.6)

(2) 生涯教育と生涯学習

ア 生涯教育について

◆ 生涯教育という考え方は、生涯にわたる学習の継続を要求するだけでなく、家庭教育、学

校教育、社会教育の三者を有機的に統合することを要求しています。

(社会教育審議会答申「急激な社会構造の変化に対処する社会教育の在り方について」 S46.4)

◆ 生涯学習のために、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を、相互の関

連性を考慮しつつ総合的に整備・充実しようとするのが生涯教育の考え方です。

(中央教育審議会答申「生涯教育について」 S56.6)

イ 生涯学習について

◆ 学習は、各人が自発的意思に基づいて行うことを基本とするものであり、必要に応じ、自

己に適した手段・方法は、これらを自ら選んで、生涯を通じて行うものです。この意味では、

これを生涯学習と呼ぶのがふさわしいのです。(中央教育審議会答申「生涯教育について」 S56.6)

◆ 「生涯学習」は、生涯教育を学習者の視点から捉え直した考え方・理念であると言われる

ことがありますが、これについては、昭和56年の中央教育審議会答申(「生涯教育について」)

でも明らかにされているように、「生涯学習」が生涯にわたって行われる「具体的な学習活

動」を指すものであるのに対し、「生涯教育」が「考え方・理念」を表すものであるので、

同質の対照的な概念として両者を捉えることは適切ではありません。生涯教育という「考え

方・理念」に対応する概念としては、改正教育基本法第3条に新たに規定された「生涯学習

の理念」※2が適切です。

(中央教育審議会答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について

~知の循環型社会の構築を目指して~」 H20.2)

生涯学習の理念※2

国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわ

たって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生

かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

(教育基本法第3条「生涯学習の理念」 H18.12)

学校経営

教育課程

学習指導

道徳教育

特別活動

総合学習

生徒指導

キャリア

人権教育

健康安全

特別支援

へき複式

帰国外国

生涯学習

生涯スポ

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◆ 生涯学習は、生活の向上、職業上の能力や、自己の充実を目指し、各人が自発的意思に基

づいて行うことを基本とするものです。

◆ 生涯学習は、必要に応じ、可能な限り自己に適した手段及び方法を自ら選びながら生涯を

通じて行うものです。

◆ 生涯学習は、学校や社会の中で意図的、組織的な学習活動として行われるだけでなく、人

々のスポーツ活動、文化活動、趣味、レクリエーション活動、ボランティア活動などの中で

行われるものです。 (中央教育審議会答申「生涯学習の基盤整備について」 H2.1)

生涯学習は、社会教育の他、学校教育や個人の自主学習等も含み、社会教育より広い活動を対

象とする概念です。生涯学習と学校教育・社会教育等の関係を示したものが、下図になります。

【生涯学習と学校教育・社会教育の関係】

個人学習

など ●

● 連 携

(文部科学省生涯学習政策局社会教育課資料「新しい時代の社会教育」より H18.2)

(3) 国及び本県の生涯学習推進の経緯

国 本 県

昭和56年6月 中央教育審議会が答申「生涯教育につ 昭和56年6月 栃木県生涯教育推進連絡会議発足いて」を提言

昭和57年7月 栃木県生涯教育推進会議発足

昭和59~62年 臨時教育審議会が4次にわたる答申で「生涯学習体系への移行」等を提言

昭和63年7月 文部省に生涯学習局を設置

平成2年3月 栃木県生涯学習推進の基本構想の策定

平成2年6月 「生涯学習の振興のための施策の推進

体制等の整備に関する法律」制定

平成2年8月 生涯学習審議会の発足

平成3年6月 栃木県生涯学習推進本部の設置

平成4年2月 栃木県生涯学習推進計画(中期計画)

「とちぎ学びプラン」を策定

平成4年4月 栃木県生涯学習審議会の設置

平成4年7月 第1期生涯学習審議会が答申「今後の 平成4年7月 栃木県立とちぎ海浜自然の家開所

社会の動向に対応した生涯学習の振興 平成4年10月 栃木県総合教育センター開所

方策について」を提出

国民・住民として必須な学習

地域における課題解決学習

青少年教育

女性教育 など

首長部局や関係機関などで行われる様々な活動

幼稚園

小・中学校

高等学校

盲・ろう・特別支援学校

大学 など

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学校経営

教育課程

学習指導

道徳教育

特別活動

総合学習

生徒指導

キャリア

人権教育

健康安全

特別支援

へき複式

帰国外国

生涯学習

生涯スポ

平成5年4月 社会教育課を生涯学習課に改組

平成6年10月 栃木県生涯学習審議会が答申「『21世紀

平成8年4月 第3期生涯学習審議会が答申「地域に の生涯学習社会“とちぎ”』を展望した

おける生涯学習機会の充実方策につい 生涯学習の振興方策について」を提出

て」を提出

平成9年3月 第3期生涯学習審議会が審議の概要

「生涯学習の成果を生かすための方策 平成9年4月 とちぎ県民カレッジ開学

について」を提出 栃木県生涯学習ボランティアセンター設置

平成10年9月 第4期生涯学習審議会が答申「社会の

変化に対応した今後の社会教育行政の

在り方について」を提出

平成11年6月 第4期生涯学習審議会が答申「生活体

験・自然体験が日本の子どもの心をは

ぐくむ」及び「学習の成果を幅広く生

かす」を提出 平成12年4月 「とちぎ生涯学習文化財団」と「とちぎ青

少年こども財団」を設立

平成12年11月 第5期生涯学習審議会が答申「新しい

情報通信技術を活用した生涯学習の推 平成13年3月 栃木県生涯学習推進計画三期計画 「とち

進方策について」を提出 ぎ学びかがやきプラン」策定

平成13年4月 県内8教育事務所に「ふれあい学習課」

を設置

平成14年4月 教育事務所に生涯学習ボランティアセン

ターを設置

平成16年3月 「栃木県子どもの読書活動推進計画」策定

平成16年4月 栃木県立なす高原自然の家開所

平成19年3月 栃木県生涯学習審議会が答申「栃木県の

平成20年2月 第3期中央教育審議会が答申「新しい 今後の生涯学習振興のあり方について~

時代を切り拓く生涯学習の振興方策に 支え合う社会を創造する生涯学習~」を提出

ついて~知の循環型社会の構築を目指

して~」を提出 平成23年3月 栃木県生涯学習推進計画四期計画

「新・とちぎ学びかがやきプラン」策定

平成23年4月 「とちぎ生涯学習文化財団」と「とちぎ青

少年こども財団」の両財団が合併し「財

平成25年6月 「第2期教育振興基本計画」(~平成 団法人とちぎ未来づくり財団」が誕生

29年度)閣議決定

平成26年2月 地域連携教員の設置に関する指針を提示

平成27年12月 第8期中央教育審議会が答申「新しい 平成26年4月 県内各公立学校に地域連携教員を設置

時代の教育や地方創生の実現に向けた

学校と地域の連携・協働の在り方と今

後の推進方策について」「チームとし

ての学校の在り方と今後の改善方策」

を提出

平成28年1月「次世代の学校・地域」創生プラン策定

平成28年2月 栃木県生涯学習推進五期計画

平成29年3月 社会教育法の一部改正 とちぎ輝き「あい」育み プラン策定

地域住民等と学校との連携協力体制の

整備等に関すること

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栃木県生涯学習推進計画五期計画「とちぎ輝き『あい』育み プラン」の概要

1 計画策定の趣旨

◆ 生涯学習をめぐる状況

今後の社会は、少子化による人口減少、雇用状況の変化による経済格差の拡大、情報化やグ

ローバル化の進展等、急速に変化していくものと考えられます。こうした中で、本県における

生涯学習実践率は全国を上回っており、県民の学習活動は活発であると考えられます。

これらの状況を踏まえ、今後の社会の変化に対応し、“とちぎ”をこれまで以上に発展させ

るためには、生涯学習による「人づくり」をさらに進めていくことが求められています。

◆ 性格

栃木県重点戦略「とちぎ元気発信プラン」に掲げる“めざすとちぎの将来像”の実現に向け、

生涯学習に関する施策を総合的、効果的に推進するための基本指針として策定します。

◆ 期間

本計画の期間は、平成28年度から32年度までの5年間とし、これからの社会の状況の変化や

施策の成果を評価し、必要に応じて見直しを行います。

2 基本目標 ともに学び ともに“とちぎ”の未来をひらく人づくり

3 生涯学習推進の3つの視点

本計画では、基本目標の達成のため、次の3つの視点を設定し生涯学習を推進していきます。

(1) 自立につながる生涯学習

学ぶことにより、一人一人が多様な個性や能力を伸ばし、それを発揮しながら、充実した

人生を切り拓いていけるよう生涯学習を推進します。

(2) 協働を進める生涯学習

多くの人との学び合いをとおして絆を育み、お互いが支え合いながら協働して、地域や社

会の課題に取り組んでいけるよう生涯学習を推進します。

(3) 愛着や誇りを育む生涯学習

“とちぎ” や身近な地域の良さや魅力を学ぶことにより、“とちぎ” への愛着や誇りが

育まれるよう生涯学習を推進します。

4 4つの重点施策

3つの視点に基づき、生涯学習を推進するため、4つの重点施策を設定し、21の施策を位置

づけました。

(1) 生涯学習の基盤づくり (2) 県民の学習機会の充実

①生涯学習・社会教育推進体制の充実 ①家庭教育や子育てに関する学びの充実

②県民の学びを支える環境づくり ②子どもたちを多様な学びを通して育む取組の推進

③学校・家庭・地域の連携の推進 ③困難を抱える子ども・若者の学びの充実

④生涯学習を推進する指導者の養成と活動支援 ④女性の活躍を推進する取組の充実

⑤生涯学習関連施設の充実 ⑤高齢者の生きがいづくりにつながる学びの充実

⑥学びに関する情報提供・相談活動の充実 ⑥職業に関する学びの充実

⑦“とちぎ”らしい生涯学習の推進 ⑦社会の様々な課題に関する学びの充実

⑧“とちぎ”への愛着を育む学びの充実

(3) 県民同士の交流の促進 (4) 学んだ成果を生かす取組の推進

①スポーツ活動を通じた交流の促進 ①社会参加・社会参画を進める取組の充実

②文化活動を通じた交流の促進 ②地域や社会に貢献する活動の促進

③学びの場を生かした交流の促進 ③地域づくり・まちづくり活動の推進

(栃木県生涯学習推進計画五期計画「とちぎ輝き『あい』育み プラン」より H28.2)

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学校経営

教育課程

学習指導

道徳教育

特別活動

総合学習

生徒指導

キャリア

人権教育

健康安全

特別支援

へき複式

帰国外国

生涯学習

生涯スポ

2 ふれあい学習の推進

(1) ふれあい学習とは

本県では、子ども同士、大人同士、子どもと大人、そして幅広い年代の人々との交流活動や体

験活動、学習活動を「ふれあい学習」として推進しています。

ふれあい学習は、これらの活動を通して、学校・家庭・地域社会が連携・協力し、子どもの「生

きる力」を育成しながら、「家庭と地域の教育力の向上」を目指すための地域づくりを目的とし

た取組です。

ア 取組の推進

(ア) 公民館や関係機関等への情報提供、活動事例等の提供を行う。

(イ) 学校、公民館、関係機関・団体、高等教育機関、企業等と連携し、推進体制の充実を図

る。

(ウ) 地域活動実践者や活動団体、各市町行政担当者とのネットワークづくりをふれあい学習

ネットワーク※3等により支援し、地域住民による主体的な地域教育活動の取組を促す。

ふれあい学習ネットワーク※3

学校教育関係者、社会教育関係者及び地域で活動する団体・グループ等の関係者が、ふれあい学習の推進への共通理

解を図り、実践に向けた情報交換や様々な教育課題の解決等を目指したネットワークづくりのための会議や研修

ふれあい学習による地域づくり

ふれあい学習の目的

ふれあい学習推進事業の目標

ふれあい学習推進事

交流・体験・学習活動

大 人

交流・体験・学習活動

ふれあい学習推進事業

学校支援家庭教育支援

学校教育家庭教育

地域教育

(子ども会、放課後子ども教室、PTA活動)

地域の教育活動

地域連携

教員

地域教育コーディネーター

大 人

子ども子ども

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イ 人材の育成と活動の支援

(ア)・地域連携教員や地域連携に関心を持つ教員のための研修を実施し、地域連携活動に関す

る情報の提供、校内研修の企画・立案等の支援を行う。

(イ) 地域づくりの要となる地域教育コーディネーター※4の養成に努め、その資質向上のため

の研修機会の充実を図ったり効果的な活動のための情報提供等を行ったりする。

(ウ) 社会教育主事の資格を持つ教員を計画的に養成するとともに、活動支援のための研修機

会や情報提供の充実を図る。

地域教育コーディネーター※4 (地域コーディネーターと同義)

学校支援ボランティア等地域教育活動において、ボランティアと受入れ側との仲立ちとなり、活動日程、内容等を連

絡調整したり、地域や学校で大人と子どもが交流しながら学びあう機会をつくったりする人

(栃木県教育振興基本計画2020-教育ビジョンとちぎ-H28.2 栃木県生涯学習推進計画五期計画「とちぎ輝き『あい』育み プラン」H28.2)

(2) ふれあい学習推進のための様々な取組

本県では、次のような様々な取組を行い、ふれあい学習の推進に大きな効果を上げています。

親学習プログラム

子供の理解や接し方、親子のコミュニケーション等、子育てに必

要な知識やスキルについて、保護者同士が身近なエピソードやワー

クを通して話し合い、交流しながら主体的に学ぶことができる参加

型体験プログラムです。ふれあい学習出前講座として、那須教育事

務所ふれあい学習課の職員がファシリテーターを行いますので、ぜ

ひ御活用ください。PTA研修会や学年部会等でも実施できます。

栃木県巡回公演(演劇公演)

演劇公演を直接鑑賞する機会を提供し、芸術鑑賞能力の向上と豊

かな情操の涵養を図ることを目的とした事業です。実施した学校か

らは、「本や映像とは違う楽しみを味わうことができた。」「本物の

劇に触れ、心を揺さぶられた児童が多かった。」と好評をいただいて

います。本物の芸術を無料で体験できますので、募集があった際に

は、ぜひお申し込みください。

ふれあい学習ネットワーク

幅広い年代の人々との交流活動や学習活動に係る共通理解を図る

とともに、それらを実践するための情報交換を行い、課題解決を目

指していく研修会です。参加者からは「地域のつながりを今まで以

上に考えさせられた。」「ほかの地域の取組等について話を聞くこと

ができてよかった。」などの声が寄せられています。「地域とともに

ある学校づくり」を実践していくためにも、ぜひ御参加ください。

・ホットほっと電話相談、メール相談(家庭教育ホットライン、いじめ相談さわやかテレホン)

・不登校児童生徒支援事業(ふれあいキャンプ) ・とちぎ子どもの未来創造大学

・とちぎの高校生「じぶん未来学」 ・家読推進事業 等

人権教育指導者一般研修 ふれあい学習推進会議 地域連携教員研修 PTA指導者研修

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学校経営

教育課程

学習指導

道徳教育

特別活動

総合学習

生徒指導

キャリア

人権教育

健康安全

特別支援

へき複式

帰国外国

生涯学習

生涯スポ

3 生涯学習推進に向けた地域との連携・協働

(1) これからの学校と地域の目指すべき連携・協働の姿

【地域とともにある学校への転換】

地域住民等と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子供たちを育む取組を推進し

ていくことが必要です。

【子供も大人も学び合い育ち合う教育体制の構築】

子供との関わりの中で、大人も共に学び合い育ち合う教育体制の構築が必要です。

【学校を核とした地域づくりの推進】

学校という場を核とした連携・協働の取組を通じて、子供たちに地域への愛着を育み、地

域の将来を担う人材の育成を図るとともに、地域住民のつながりを深め、自立した地域社会

の基盤の構築・活性化を図る取組を推進していくことが重要です。

(中央教育審議会答申 H27.12)

(2) 社会に開かれた教育課程とは

新学習指導要領には、これからの教育課程の理念として「社会に開かれた教育課程」の実現が

示されました。その内容は、次に示すとおりです。

① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創ると

いう目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。

② これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自分の

人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し

育んでいくこと。

③ 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活

用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを

社会と共有・連携しながら実現させること。

(3) 学校と地域の効果的な推進体制の構築に向けて

それぞれの地域や学校における実情と特色を踏まえつつ、「コミュニティ・スクール」と、「地

域学校協働本部」が、相互に補完し高め合う存在として、両輪となって相乗効果を発揮していく

ことが重要です。那須地区においては、大田原市と那須町がコミュニティ・スクールを、那須塩

原市が地域学校協働本部を先に整えていきます。国の示す体制は下の図のとおりですが、国と各

市町の体制は若干異なりますので、p.108~110の「(5)各市町の取組」で詳しく説明します。

学校と地域の効果的な連携・協働のための推進体制(イメージ図)

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行 事 名 地域の関わり 学校の関わり

 

 

大捻縄引き

行事の説明 DVD視聴

クビレづくり指導 クビレづくり体験

大捻縄引き実施 親子で大捻縄引きに参加

 

 

奉納相撲

(諏訪神社)企画・運営 奉納子供相撲に参加

豊年棒 豊年棒づくり指導 豊年棒づくり体験

地域行事に関する学校と地域の役割分担

- 102 -

(4) 特色ある取組

ア 大田原市立佐良土小学校【地域との協働で復活した伝承行事】

本校では、以前より稲作等の農園活動や豊年棒づくりなど、

保護者や地域の方々の協力を得ながら、様々な地域連携活動を

進めてきました。

ここでは、22年間休止していた佐良土地区の国選択無形民俗

文化財である「大捻縄引き(だいもじひき)」を、地域と学校

が協働することで復活した取組について紹介します。

(ア) 復活のきっかけ

「大捻縄引き」は、8月の盆の行事を彩る旧湯津上村の代表的な祭りの1つでしたが、引

き手の減少やワラ不足等の理由から平成7年以降休止されていました。昨年7月、伝統ある

伝承行事の復活と、ふるさと佐良土地域全体の活性化を図ることを趣旨に、本校保護者を含

む壮青年の有志が立ち上がりました。そして、これに感銘を受けた自治会が賛同したことに

より、大捻縄引き実行委員会が設立されました。

本年度、実行委員会から本校へ大捻縄引き復活についての説明が行われ、協力要請があり

ました。学校側も、児童に地域の行事を継承していくことの大切さを育むとともに、地域と

の交流を更に深めることをねらい、地域に協力する方向で話合いが行われました。

(イ) 地域との役割分担について

学校では、5月に協力要請

があったことから、教育課程

に組み込むことが難しかった

ため、できる範囲で協力する

形をとりました。地域からは、

学校側にできるだけ負担を掛

けないような配慮がなされま

した。初めに学校で行われた

説明会には、校長と地域連携

教員が参加しましたが、それ

以降の地域で行われた会議に

は、学校への参加要請はあり

ませんでした。会議の結果概要については、適宜、実行委員会から連絡がありました。

大量に必要なワラの確保や運搬、会場として使用する国道294号の使用申請や、当日大縄

を作成するためのやぐらの手配等に関するほとんどの役割は、実行委員会が中心となり行い

ました。学校で関わった主な役割は、次のとおりです。

【学校の主な役割分担】

・児童に対する大捻縄引き講演会の紹介

・運動会での綱引き種目を「大捻縄引き」として実施し、大捻縄引き復活を地域にPR

・大縄を作成する会場へのテント貸し出し

・駐車場としての校庭貸し出し

・教職員による当日の校外指導・巡視等

・地域による炊き出しのための情報提供(食物アレルギー対策)

大捻縄引きの様子

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学校経営

教育課程

学習指導

道徳教育

特別活動

総合学習

生徒指導

キャリア

人権教育

健康安全

特別支援

へき複式

帰国外国

生涯学習

生涯スポ

(ウ) 大捻縄引きに関連する事業の流れについて

6月には、実行委員会のメンバー約20名が

学校を訪れ、児童に大縄の材料となるワラの

小束「クビレ」づくりの指導をしてもらいま

した。この時間は、地域学習として生活科や

総合的な学習の時間で実施しました。

本校の学習発表会である「さらどフェステ

ィバル」に実行委員長を招待し、3年生が総

合的な学習の時間で調べた「うけつごう!大

田原のれきしと文化」のテーマで、クビレの

作り方や大縄を捻って作る方法を再現した様

子等を発表しました。

(エ) 取組の成果

今回、大捻縄引きに使用した大縄は、佐良土の鎮守である諏訪神社の例大祭に奉納されま

した。大捻縄引きが復活したことにより、奉納相撲も本来の形である奉納された大縄を使っ

た土俵で実施することができました。また、大捻縄引きに参加した児童が、奉納相撲への関

心を高めたことで参加者が増えるなど、関連の地域行事も盛り上がりを見せました。大縄づ

くりで余ったワラについても、これまで学校が協力してきた地域の伝承行事である豊年棒づ

くりで活用しました。大捻縄引きを復活させたことで、様々な相乗効果が生まれましたが、

この他にも、学校や地域にとってのメリットがありました。

【学校にとってのメリット】

・児童に、生きた伝統ある伝承行事を体験させることができた。

・児童に、地域のすばらしさを再発見させることができた。

・学校では見せない児童の一面を発見することができた。

・教員が地域の方々と話す機会が増え、地域との信頼関係が深まった。

・学校以外の場で、児童との思い出を共有することができた。

【地域にとってのメリット】

・児童を介して地域の大人を集めることができ、地域の活性化ができた。

・地域の子供の顔がわかるようになった。

・地域の大人同士のコミュニケーションが増えた。

・「大捻縄引き」を復活させたことで、児童の地域行事への参加が増えた。

・普段あまり話すことがない教員とコミュニケーションを図ることができた。

(オ) 今後に向けて(地域連携教員の立場から)

今回復活となった「大捻縄引き」は、大田原市の「わがまち未来創造事業」の交付金を受

けていることから3年間は実施されます。しかし、それ以降もこの行事を続けていくために

は、学校としても何ができるかを考えていかなければいけないと感じています。

地域の声を受けての協力となりましたが、学校が核となり、児童を介して地域が盛り上が

ることで地域の活性化につながることを身近に感じました。地域連携教員として、更に地域

づくりの視点をもって取り組むことが重要だと考えています。

今後も学校と地域が協働してよりよい地域づくりができるよう、教育課程の編成も含め、

学校ができることを考えていきたいと思います。

月 内    容

5月 ○大捻縄引き復活に関する説明会(協力要請)

○運動会にて「大捻縄引き」をPR

6月 ○大捻縄引き実行委員会会議

○大捻縄もじり(デモンストレーション)

○DVD視聴

○クビレづくり体験

7月 ○実行委員会と連絡調整

8月 ○大捻縄引き

○奉納相撲

10月 ○豊年棒づくり

○十五夜の豊年棒(育成会行事)

11月 ○さらどフェスティバル(発表・写真展示)

○十三夜の豊年棒(育成会行事) 

大捻縄引きに関連する事業の流れ

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イ 那須町立田代友愛小学校【地域教育コーディネーターの活躍で広がった地域学校協働活動】

本校では、学校支援協議会設置後3年の経過に伴い、本年度より、それを学校運営協議会に

移行させました。これにより、これまでの学校支援という連携体制を更に一歩進めて、地域と

学校がパートナーとなって連携・協働し、児童の学びを充実させていくための仕組みが整いま

した。そして、地域と学校をつなぐキーパーソンとなるのが、地域教育コーディネーターの存

在です。本校でも、地域学校協働活動には欠かすことのできない存在であり、これまでも充実

した教育活動を支えてきました。ここでは、地域教育コーディネーターの活躍により、今まで

以上に広がりを見せた地域学校協働活動について紹介します。

(ア) 地域教育コーディネーターの複数配置とネットワーク

本校では、町の方針で地域教育コーディネーターが2名配置されています。コーディネー

ターが2名配置されていると、情報量・行動量が2倍になります。さらに那須町では、各校

にいるコーディネーター同士のネットワークが確立しているので、お互いに情報を共有し、

町全体の教育力をコーディネートすることが可能となっています。

(イ) 地域教育コーディネーターがつないだ地域学校協働活動

2人の地域教育コーディネーターがコーディネートした活動は、児童の学びに大きな効果

をもたらしています。その中でも代表的な活動を紹介します。

【プログラミング教育】

「パソコン教室の先生が、小学校で専門的な

指導を行ったら、子供たちは楽しいだろうな。」

という地域教育コーディネーターの思いから始

まった取組です。

地域教育コーディネーターのコーディネート

により、クラブ活動から始まったこの活動は、

その後、米IT大手のマイクロソフト社とNP

O法人CANVAS(キャンバス)の協力も得

ながら、更に充実した活動へと発展していきま

した。そして、この活動は本校だけにとどまら

ず、町全体にも広がりを見せています。本年度

は、那須町教育委員会より「プログラミング教育実証拠点校」に指定され、新学習指導要

領で導入される「プログラミング教育」の必修化に向けた取組として、大きな注目を浴び

るまでに発展しました。

児童は専門的な指導を受けることで、プログラミングに対する興味・関心が高まりまし

た。その結果、物事を順序立てて考えることや、それを相手に正確に伝えようとすること

などを、他の教科や日常生活にも生かそうとする場面が見られるようになってきました。

本校における「プログラミング教育」の経緯

H26年度…クラブ活動で、プログラミング教育を開始する。

H27年度…2年生で、試験的にプログラミング教育の授業を行う。

(その他の時間を使って、「ビスケット(ヴィジュアルプログラミング言語)」を体験)

H28年度…企業等と連携したプログラミング教育を開始する。

専門家・企業・町教育委員会との連携の下、「プログラミングデイ in 那須町」を実施する。

地域の指導者を育成することも目的の一つとし、活動の幅を広げる。

H29年度…那須町教育委員会より「プログラミング教育実証拠点校」の指定を受ける。

各学年で、それぞれ年間10時間のプログラミング教育を行う。

(1~2年生はその他、3~6年生は総合的な学習の時間)

プログラミングに取り組む児童

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田代友愛小サマースクール(7/31~8/1)実施計画学  習  内  容 場  所 指 導 者 

1 じゅら先生の絵画教室(ポスター・風景画等、夏休みの課題作品づくりの予定) 1年教室 しいな じゅら 先生

2 マドリンと英語クリルで楽しもう 家庭科室 マドリン 先生

3 パソコン教室(プログラミングの基礎を学習します。) パソコン室 星野 尚 先生

4 プーバ先生の読書感想文教室(前もって読んできた本で、読書感想文を書きます。)

夏休み前に、プーバ先生と一緒に本を選びます。

図書室 プーバ 先生

5 工作教室(夏休みの課題作品づくりをします。) 図工室 平山とおる 先生

6 現役くもん先生による教科お悩み教室(夏休み中のドリル等、分からないところを教えてもらいながら学習します。)

(31日のみ)

5年教室 星 亜由美 先生

7 校長先生のお習字教室(1日のみ) はぐくみ教室 田代 卓朗 校長先生

8 平ちゃんの自然観察教室(理科の自由研究の一助になる学習です。) 校外 平山 政昭 先生

9 山田さんの生き物調査(31日のみ) 学校前の用水路 山田 正美 先生

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学校経営

教育課程

学習指導

道徳教育

特別活動

総合学習

生徒指導

キャリア

人権教育

健康安全

特別支援

へき複式

帰国外国

生涯学習

生涯スポ

【サマースクール】

「夏休みに、児童に様々な経験をさせたい。」という学校の

思いと、地域の教育力をよく理解している地域教育コーディ

ネーターのコーディネートにより実現した取組です。

夏季休業中の2日間を利用し、地域の方々が指導者となっ

て児童の学習支援等を行いました。児童に取り組ませたい学

習内容を学校から提示し、それを基に、地域教育コーディネ

ーターが地域から指導者を探しました。その結果、本年度は

下の表にあるように、9講座実施することができました。昨年度よりも指導者が増えるな

ど、地域と学校の連携・協働体制の構築が進んでいます。

学習内容を自由に選ぶことができたので、1人で複数受講する児童も見られました。ま

た、児童は地域の指導者から学ぶことで、身近にいる大人のすばらしさや地域のよさなど

を、改めて再確認することができたようです。サマースクールは、児童や地域の指導者に

とって貴重な学びの時間となりました。

(ウ) 地域と学校がつながることのメリット

地域教育コーディネーターのコーディネートにより、これまで学校だけで行ってきた活動

よりも内容が充実し、次のような効果が見られるようになりました。

【児童】

・地域の大人と接することで、コミュニケーション能力や自己肯定感が高まった。

・積極的に課題解決しようとする姿勢が見られ、学習意欲の向上につながった。

【学校】

・地域から学校へ積極的に声が掛かるようになり、地域との協働意識が高まった。

・高齢者の協力が多く、学校の希望する日時に都合をつけていただけた。

【地域】

・学校と関わることで、学校理解につながった。

・学校支援を通して学校が身近な存在となり、今後も関わっていくきっかけとなった。

(エ) 今後に向けて(地域連携教員の立場から)

児童の豊かな学びを保証するためには、各種活動を地域と協働しながら実施していくこと

が大切であり、その活動が単年度で終わるのではなく、継続して行われていくことが重要で

あると考えています。そのためには、地域教育コーディネーターを含め、地域人材等に継続

的に支援してもらうことが必要であり、その後継者を見つけていくことが、今後の課題とも

言えます。

今後は、これまでの地域学校協働活動を更に発展させるとともに、これらの課題を解決し

ていくためにも、学校だけではなく地域と一緒に考えていくことで、「地域とともにある学

校」づくりを進めていきたいと思います。

工作教室の様子

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ウ 那須塩原市立黒磯中学校【負担を増やさずに地域連携活動を実施するための工夫】

本校では、地域に愛着をもった生徒を育てたいという思いから、「地域とつながる」を生徒

会活動目標(表1)の1つに掲げ、平成28年度から、校外班活動※としてボランティア活動に

取り組んでいます。

教員も生徒も、この活動の効果を強く実感

しており、負担を増やさずに、更に地域とつ

ながることができる活動にするために、本年

度は、これまで以上に校内の連携体制を整え

たり、教育課程の編成等を工夫したりしてい

ます。

※生徒の居住地ごとに編成された縦割り班での活動

(ア) 活動までの流れ

地域とのつながりの希薄さを実

感した生徒たちから出た、「もっ

と地域に出よう」という声がきっ

かけとなり、校外班活動がスター

トしました。

まず、生徒の居住地域ごとに行

っている行事や活動について実態

を把握することから始めました。

すると各地域には、それぞれ生徒

が関われそうな活動があることが

分かりました。(表2)

活動内容は、学校の思いを生かしながら、地域からの要望を聞き、両者で話し合って決め

ていきました。

(イ) 教員や生徒の負担軽減のための工夫

活動が増えることで、教員や生徒の負担が大きくならないように、役割分担や活動日、そ

して教育課程の編成等を工夫しました。

【役割分担の工夫】

活動をスムーズに行うために、校外班活動の役割分担を明確にしました。外部との連絡

調整は、主に地域連携教員が担当し、活動日時や内容、準備物等について事前に各地区の

代表者等と打合せを行いました。また、生徒への周知は、各校外班の担当教員が担当し、

当日も生徒と共に活動しました。

【活動日の工夫】

活動日については、教員や生徒が参加しやすいよ

うに、部活動のない第3日曜日や夏季休業中の普段

部活動をしている時間に行えるよう、地域と調整し

実施しました。

【教育課程の工夫】

異なる2つの活動を関連づけ、1つの活動にまと

めることで、活動時間の負担が少なくなるように教

育課程を編成しました。本校の総合的な学習の時間では、「地域に生きる」を全学年統一

のテーマとして、3年間を通して、地域学習を系統立てて学習できるよう計画されている

校外班活動について話し合う生徒

校外班活動内容(表2)

№ 地区名 時期 内容 № 地区名 時期 内容

1 本郷町 8月 花火大会 9 大黒町・若葉町 5月 黒磯図書館

2 新朝日 7月 夏キャンドル 10 桜町・材木町・

東大和町・

 上黒磯町

4月 黒磯公園さくら祭

3 宮町・本町・

黒磯幸町

12月 冬キャンドル 11 阿波町・豊住町

・新町

8月 いなむらまつり

4 錦町 7月 夏キャンドル 12 西新町 8月 いなむらまつり

5 橋本町 10月 巻狩まつり 13 末広町 5月 黒磯図書館

6 弥生町・中央町

・高砂町

8月 花火大会 14 北栄町・緑が丘

・豊浦北町

10月 巻狩まつり

7 豊町 7月 夏キャンドル 15 学区外 8月 花火大会

8 住吉町 8月 花火大会 ※地域の実態に応じて、清掃活動やまつりなど 

 の、準備等を行う。

生徒会活動目標(表1)

(柱1) 積極性を高める

(柱2) 凡事徹底

(柱3) 地域とつながる

 ・ボランティア活動の活性化

 ・歩いて登校し、地域に黒磯中のよさを広める

(柱4) 新たな企画

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学校経営

教育課程

学習指導

道徳教育

特別活動

総合学習

生徒指導

キャリア

人権教育

健康安全

特別支援

へき複式

帰国外国

生涯学習

生涯スポ

ので、その学習内

容に校外班活動を

関連づけていま

す。(表3)

例えば、第1学

年では地域学習の

素地として、市役

所やコミュニテ

ィ、青年会議所等

から講師を招い

て、話を聞く時間

を設定しています。このことは、地域活動に関心をもつことにつながり、校外班活動への

意欲を高めることにもなっています。また、第3学年では、校外班活動で体験したことが、

「自分たちでできることは何か。」を探る手立てにもなっています。校外班活動と総合的

な学習の時間を関連づけることで、新たに時間を設けて準備等をしなくても、充実した地

域連携活動へつなげることが可能となっています。

(ウ) 取組の成果

生徒の声から始まった「地域とつながる」校外班活動は、単なるボランティア活動にとど

まらず、地域と生徒、地域と教員、地域と学校を結び付け、互いを大きく成長させる取組と

なりました。それぞれのメリットは次のとおりです。

【地域のメリット】

・中学生が加わることで、地域活動が活性化した。

・地域の未来を担う後継者育成の一助となった。

・生徒と顔の見える関係が構築された。 等

【生徒のメリット】

・コミュニケーション力が向上した。

・自己有用感が向上した。

・地域への愛着の育成が図られた。 等

【学校のメリット】

・学校では見ることができない生徒のよさを、再確認することができた。

・教員も共に活動することで、教員自身が地域について理解することができた。

・日頃部活動を行っている時間帯での活動だったので、大きな負担はなかった。 等

(エ) 今後に向けて(地域連携教員の立場から)

今後、更に充実した校外班活動にするためには、各地区の各活動の代表者と直接会って話

をすることにより地域と学校が目標等の共有をしたり、小学生が参加することも考慮し、小

中連携の視点をもって校外班活動を計画したりすることが、重要なポイントだと思います。

また、「参加」から「参画」へと、意識を変えていくことも大切なことです。地域に出向

いて活動する直接的な参画や、ポスターや会場の装飾物の制作等で関わる間接的な参画もで

きるように、教育課程を更に見直したり、編成を工夫をしたりする必要があると考えていま

す。そして、地域と学校がパートナーとして連携・協働していくことで、これまでの「地域

連携活動」から「地域連携協働活動」へと発展させていきたいと思います。

地域の方と一緒に活動する生徒

総合的な学習の時間指導計画(表3)

主な活動内容 指導の留意点 校外班活動との関連

 ○「地域の方から学ぼう」(1年)

 ・「那須塩原市のまちづくり」

   市役所企画課職員

   商工観光課職員  

・ 行政が考えているこれからの那須塩原について、中学生

 に理解出来るよう話していただく。

・ 地域の方から話を聞くことで、

 地域の一員としての自覚をもっ 

 て、校外班活動に参加できるよ 

 うになる。

・ 地域の方が求めていることを知

 ることから、「自分にもできるこ

 と」が考えられるようになる。

 ・「地域への思い」

   駅前活性化青年会議所会長

   稲村コミュニティ会長  

・ 駅前活性化イベントである「キャンドルナイト」や稲村

 コミュニティ主催の「いなむらコミュニティまつり」につ

 いて開催の経緯や現状、今後についてなどを話していただ

 く。

 ・「行政とは異なる視点でのまちづくり」

   黒磯那須青年会議所

  

・ 本市の商工業の現状や「花火大会」「巻狩まつり」など

 について、行政とは異なる視点から取り組むまちづくりへ

 の思いを話していただく。

 ○「地域の人々と関わろう」(3年)

 ・「育ててくれた地域に感謝」

   地域リーダーへのインタビュー

   地域の人々との交流、行事の手伝い

   清掃活動  

・ 地域の人々と、積極的に関われるようにする。

・ 「自分たちが考えたこと」が実践できるよう支援する。

・ 地域のためになるボランティア

 活動を計画・実行することで、積

 極的に校外班活動に参画すること

 ができるようになる。

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(5) 各市町の取組

ア 大田原市【大田原市におけるコミュニティ・スクールの推進について】

コミュニティ・スクールとは、学校運営協議会を導入した学校を指します。学校と地域住民

等が知恵を出し合い学校運営に意見を反映させることで、お互いに連携・協働しながら子供た

ちの豊かな成長を支えていく仕組みです。本市では、子供たちの人間力、学力、コミュニケー

ション力、社会適応力の育成と向上を図るため、平成30年度よりコミュニティ・スクールを導

入します。

(ア) 大田原市のコミュニティ・スクールの特徴と学校におけるメリット

本市のコミュニティ・スクールの3つの特徴と学校におけるメリットは、次のとおりです。

【特徴1】中学校区で1つの学校運営協議会を設置

本市では、コミュニティ・スクール導入と同時に小中一貫教育も全中学校区で実施しま

す。小中一貫教育を縦軸、コミュニティ・スクールを横軸として捉え、この2つを一体化

して推進できるよう、中学校区に1つの学校運営協議会を設置する形をとります。学校運

営協議会での協議を通し、地域住民等のコミュニティ・スクールや小中一貫教育への理解

が深まるので、これまで以上に、学校と地域の連携・協働の場面が増えていきます。

【特徴2】学校運営協議会の全ての権限・機能を実施

国が示す学校運営協議会の権限・機能は、次の3つです。

①校長が作成する学校運営の基本方針を承認すること

②学校運営について、教育委員会または校長に意見を述べること

③教職員の任用に関して、教育委員会に意見を述べること

①については必須事項ですが、②・③については任意事項であり、実施するかどうかは

各自治体の判断によるものとなります。本市では、これら3つの権限・機能を全て実施し

ます。ただし、③については、特定の教職員の任用に関する意見を述べることはできない

こととしています。これらの権限を地域住民等が行使することで、教育に関する当事者意

識が高まるとともに、教育責任の社会的分担を促進することにもつながります。子供たち

への教育は学校だけが行うのではなく、地域住民等の協力を得ながら推進していくことが

可能となります。

【特徴3】地域コーディネーターが学校運営協議会委員を兼務

地域コーディネーターが学校運営協議会の委員になることで、「学校支援」に関する意

見が各地区生涯学習推進協議会学校支援部に下ろされ、学校のニーズに合わせた効果的な

活動につなげていくことが期待できます。

(イ) 今後に向けて

コミュニティ・スクールと小中一貫教育を

充実させるために、まずは、小・中学校の教

員、学校と地域住民等との相互理解が不可欠

です。そして、関係する大人全員が地域の子

供たちをどう育てていくかという目標やビジ

ョンを共有し、それぞれの立場で子供たちの

教育に携わっていくことが重要となります。

学校運営協議会を「相互理解」や「協働」の

有効な場として捉え、「地域とともにある学

校づくり」を推進していける体制を目指して

いきたいと考えています。

大田原市の小中一貫教育・コミュニティ・スクール

グランドデザイン

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学校経営

教育課程

学習指導

道徳教育

特別活動

総合学習

生徒指導

キャリア

人権教育

健康安全

特別支援

へき複式

帰国外国

生涯学習

生涯スポ

イ 那須町【那須町におけるコミュニティ・スクールの推進について】

本町では、平成24年度より学校適正配置計画に基づき小・中学校の統廃合を進めてきました。

それと同時に、統合後の学校に学校支援協議会を立ち上げ、地域住民等が子供たちの学びを支

援する体制づくりにも努め、学校運営協議会導

入の準備を進めてきました。本年度、立ち上げ

後3年を経過した4つの小学校の学校支援協議

会を学校運営協議会に移行させました。これま

で築いてきた学校支援体制を更に一歩進めて、

地域と学校がパートナーとなって連携・協働し

ていく那須町コミュニティ・スクールとしての

体制を整えているところです。

(ア) 学校運営協議会の組織

本町は、1校に1つの学校運営協議会を置きます。委員は、町教育委員会が定める「那須

町立学校における運営協議会の設置等に関する規則」に基づき、保護者、地域住民、校長、

教職員、学識経験者、行政職員等から選出された15~20名で構成され、互選により会長、副

会長が各1名ずつ選出されます。

(イ) 学校運営協議会の機能と学校におけるメリット

本町の学校運営協議会には、主に4つの機能があります。その特徴と学校におけるメリッ

トは、次のとおりです。

【機能1】校長の学校運営に関する基本的な方針の承認

校長が作成する学校運営の「基本方針の承認」を行います。これにより、保護者や地域

住民等も教育の当事者となります。様々な課題に対して責任をもち、積極的に子供への教

育に携わることになるので、これまで学校だけが抱えてきた教育責任を、保護者や地域と

役割分担することになります。

【機能2】学校運営に関する意見の申出

学校運営全般について、委員が共に考え話し合い行動することで、学校運営の改善につ

ながります。本年度の特徴的な取組として、「熟議※」があげられます。この取組によっ

て地域と学校がどのような子供を育てていくのかなど、共通の目標やビジョンをもち、共

通行動がとれるようになります。 ※当事者による「熟慮」と「議論」を重ねながら課題解決を目指すこと

【機能3】学校運営に関する評価及び情報提供

学校運営協議会が、学校に関する各評価を一体的に推進することにより、地域と学校が

学校運営に関する成果や課題を共有することができます。それにより、学校だけでなく地

域の力を借りた改善サイクルを充実させることができるようになります。

【機能4】地域学校協働活動の推進

これまでの「学校支援」から「連携・協働」へと発展させることで、地域と学校がパー

トナーとなって共に子供たちを育てていきます。学校だけでは解決が困難な課題等に対し

ても、地域の力を借りて解決できるようになります。

(ウ) 今後に向けて

本町では、それぞれの学校に学校運営協議会の設置を計画しており、平成32年度には、町

内全ての小・中学校への設置が完了する予定です。これにより、統合後の新しい学区におい

ても、その学校が地域と地域をつなぐ拠り所となり、地域学校協働活動を推進していくこと

が可能となります。学校を核とした新しい地域づくりを進めるとともに、それぞれの地域性

を生かした特色ある学校運営の在り方を検討していきたいと考えています。

コミュニティ・スクール

校長学校運営協議会

説明

意見

学校支援委員会(例)

連絡調整

学校評議員制度の機能学校支援協議会の機能

協力

要請

説明

承認

説明

意見

教職員教頭

教務主任

地域連携教員

委員

保護者PTA役員

地域住民地域教育コーディネーター

各学校支援委員代表

地域団体の役職員 など

校長学校運営の

基本方針

学校運営

教育活動

保護者・地域のみなさん学校支援ボランティア

学習支援委員会

運動支援委員会

図書支援委員会

環境整備委員会

安全支援委員会

町教育委員会

学校の指定

委員の任命

指定取消し

学校運営全般に関する意見

(校長の意見を反映させて)委員を任命

指導・助言

協議会運営に関する指導・助言

地域人材やボランティアが学校を支援するもの。学校と地域が連携することで、地

域全体で学校教育を支援する体制づくりを推進する。

開かれた学校づくりを推進するために、保護者や地域住民の意向を学校運営に反

映させる仕組み。委員は、校長の求めに応じて意見を述べる。

学校運営協議会を設置した学校をコミュニティ・スクールといいます。

地域教育コーディネーター

那須町コミュニティ・スクールのイメージ

Page 16: Taro-27 第1章 生涯学習 - Tochigi Prefecture...平成9年3月 第3期生涯学習審議会が審議の概要 「生涯学習の成果を生かすための方策 平成9年4月

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ウ 那須塩原市【那須塩原版地域学校協働本部事業の推進について】

本市は、かねてから公民館と学校の連携を中心に、学社連携・融合事業を推進してきた地域

性があります。この特性を生かして、大人から子供まで交流が盛んな地域づくりを目指し、地

域学校協働活動を推進するための「地域学校協働本部」を設置します。

また、地域学校協働本部の基本理念を「子供とともに 大人とともに 地域とともに 広が

る学びの輪」と定め、子供たちが生涯にわたり自ら学び続け、身に付けた知識や技能を社会や

生活の中で活用できる地域づくりを目指しています。

(ア) 地域学校協働本部の組織

基本的には、右のイメージ図のような組織となります。

ただし、本市では、小中一貫教育との関連で、中学校区

を1つのエリアとして地域学校協働本部を設置していく

ので、中学校区内の学校数や公民館の設置の仕方に応じ

て、組織の構成が異なってきます。

(イ) 地域学校協働活動の要素と学校におけるメリット

本市の地域学校協働本部には、4つの要素があります。その特徴と学校におけるメリット

は次のとおりです。

【要素1】コーディネート機能

地域学校協働活動推進員※を必置とするため、地域と学校や、地域の団体等同士をつな

ぐことが可能となり、幅広い地域づくり活動になることが期待されます。また、学校では、

今まで教員が行っていた学校支援ボランティア等との連絡調整を、地域学校協働活動推進

員に依頼することができます。 ※地域と学校をつなぐコーディネーター

【要素2】多様な活動

様々な地域住民の参画によって、多様な地域連携協働活動を行うことができます。多く

の大人の専門性や地域の教育力を生かした教育活動等が実施され、地域や学校の学びがよ

り豊かで広がりをもったものとなり、子供たちの学びが充実します。

【要素3】継続的な活動

地域と子供たちが継続的に関わることで、地域の活性化や地域づくりなどにもつながる

ことが期待されます。また、地域と学校が組織として機能するため、学校の担当者が異動

した後でも地域学校協働活動推進員を中心に、これまでと同じ活動を継続することができ

ます。

【要素4】大人と子供の交流が盛んな地域づくり

大人と子供が交流することで、地域全体で子供たちを育てていこうとする意識が高まり、

地域の教育力が向上するなど好循環が生まれます。また、子供たちの自己肯定感や豊かな

心が育まれます。

(ウ) 今後に向けて

今後、地域学校協働活動を推進していく上で、

地域と学校が「どのような子供を育てたいか」な

どの目標やビジョンを共有していくことが必要に

なってきます。本市では、そのための1つの手段

として、地域学校協働本部において、両者の話合

いの場を設ける予定です。具体的には、右のよう

なシートを地域側と学校側で作成し、それを基に、

どの部分で連携・協働が可能なのかすり合わせを行い、実際の活動につなげていきます。

地域学校協働活動年間計画表

那須塩原版地域学校協働本部イメージ図

○○協働本部