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Page 1: Study of Adhesion Mechanism between Rubber and Brass

研究論文ゴム と黄 銅 め っ きス チ ー ル コー ドとの接 着 にお け る

ヘ キ サ メ トキ シメ チ ル メ ラ ミ ン(HMMM)の 影響 †

穂 高 武*1・ 石 川 泰 ・弘*1・ 森 邦 夫*2

Study of Adhesion Mechanism between Rubber and Brass-Plated Steel Cord,

Part 1. Effect of Hexamethoxymethylmelamine on Adhesion between Rubber

and Brass-Plated Steel Cord

Takeshi HOTAKA, Yasuhiro ISHIKAWA (Yokohama Rubber Co., Ltd., 2-l, Oiwake, Hiratsuka, Kanagawa, 254-8601, Japan), and Kunio MORI (Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Iwate University, 4-3-5, Ueda, Morioka, Iwate, 020-8551, Japan)

A resorcinol-formaldehyde (RF) resin is typically formulated in a compound for steel cord coating in order to improve the brass-rubber adhesion in the interface. A hexamethoxymethylmelamine (HMMM) is also formulated to

accelerate the condensation reaction in the RF resin. Our study found that formulation of HMMM in the absence of

RF resin has an ability to trap amines generated from N,N'-dicyclohexylbenzothiazole-sulphenamide(DCBS) accelerat-ed vulcanization system, which prevents stress-induced corrosion crack in the brass layer at the brass plated steel

cord. In this study, the nature of HMMM formulation was thoroughly investigated.

It was clarified that the physical properties of the vulcanized rubber such as crosslink density and strain modulus

are effectively improved by trapping the residual amine component. When the RF resin was used in conjunction with the HMMM, the process of such amine-trap is tremendously interrupted due to the preferential consumption of the RF

resin at condensation. However, the HMMM begins to trap the amine immediately after the complete of condensation reaction even during the formulation with the RF resin. It was revealed by ASTM pull-out test that the adhesion prop-

erty is greatly improved by trapping the residual amine.

(Received on July 18, 2002)

(Accepted on September 13, 2002) Key Word : Hexamethoxymethylmelamine(HMMM), N,N'-dicyclohexylbenzothiazole-sulphenamide(DCBS), resorci-

nol-formaldehyde (RF) resin , Brass-Plated Steel Cord

1.緒 言

スチールラジアルタイヤの出現により,黄 銅 メッキ処理

したスチールコー ドとゴムを加硫工程により直接接着 させ

る技術 は日々発展 し,今 日までに様々な研究1)や 総説2-4)

が発表されている.タ イヤにおけるスチールコー ド被覆ゴ

ムは一般的なゴム と比較 して,多 量の硫黄や有機酸の金属

塩を配合するなど,ス チールコー ドとの接着に寄与する配

合がなされている.更 に接着性能を向上 させ る技術 として,

ゴム側か らは新規配合剤の開発,=金 属側か らはメッキ表面

の 改 善 な ど 多 岐 に わ た る 努 力 が な さ れ て い

る5『8).

†「ゴム と黄 銅 め っ きス チ ー ル コー ドとの接 着 機 構 に関 す る研 究(第

1報)」 とす る*1横 浜 ゴ ム㈱(〒254 -8601平 塚 市追 分2-1)

*2岩 手 大 学 工学 部 応 用化 学 科(〒020 -8551盛 岡市 上 田4-3-5)

488

近年,配 合面か らみた改良の一つ としてレゾルシンーホ

ルムアルデ ヒド(RF)樹 脂が挙 げられる.こ れは接着界面

で樹脂化反応 を促進させ ることにより,接 着層をより強化

する目的で配合 している.こ れら配合剤における具体的な

反応機構 をFig.1に 示す.ゴ ム中に配合するRF樹 脂は レ

ゾルシノールとホルムアルデヒ ドの反応により合成された

2~3量 体の樹脂である.こ のRF樹 脂 とヘキサメ トキシメ

チルメラミン(HMMM)を 配合す ると,HMMMか ら発生

するホルムアルデヒ ドがRF樹 脂 と反応 し,樹 脂の縮合反

応を促進することで強固な樹脂を形成する.こ の反応は加

硫中にゴムー金属の接着界面付近で硬化反応が優先的に進

行するため,よ り強固な接着界面を形成する.

これらの効果についてはいろいろな研究者によって報告

されている.Hamadら は有機i酸コバル ト塩 とRF樹 脂の併

用配合により「相乗効果が生 まれ,湿 潤老化時の接着性が向

上することを報告 している9).Dietricklo)・11)やAlbrecht12),

(54)

Page 2: Study of Adhesion Mechanism between Rubber and Brass

第75巻 第11号(2002) 穂 高 武 ・石川 泰 弘 ・森 邦夫

Tate13)も またこれら三種の併用効果を見いだしている.

このホルマ リン ドナー としての役割を果たすHMMMの

他の効果として,最 近スルフェンァミド系加硫促進剤が加

硫の際に放出するア ミンを トラップすることがわかって き

た.ス チールラジアルタイヤのゴムの加硫促進剤には,ス

ルフェンア ミド系加硫促進剤が使用 されている.こ れは加

硫の際にアミンを放出するがユ4-16),こ のア ミンはゴムー

金属接着界面に浸透 し,粒 界応力腐食割れを促進すること

が報告 されている17・18).これに対する解決策は現在 まで

見いだされてお らず,HMMMは ア ミンを トラップす るう

えで非常に有用な配合剤であるといえる.こ のアミンを ト

ラップする反応の模式図をFig.2に 示す.加 硫促進剤であ

るN,N'一 ジシクロヘキシルー2一ベ ンゾチアゾリルスルフェ

ンアミド(DCBS)か ら発生 したN,N'一 ジシクロヘキシルァ

ミンはHMMMの メ トキシメチル基 との置換反応 により,

副生成物 としてメタノールを発生 しなが らトラップ され

る.こ のア ミンの トラップにより,黄 銅メッキ層の応力腐

食割れによる接着強度低下 を防止できるものと悪われる.

以前に筆者 らは,接 着用 コンパウンドとスチールコー ド

の接着性において,RF樹 脂やHMMM,促 進剤 から発生

するア ミンが与 える影響 について報告 している19).本 報

ではこれに加 え,RF樹 脂やHMMM,促 進剤か ら発生す

るアミンがゴムに与 える影響 などを解析 した.ま た,黄 銅

メッキ したスチールコー ドワイヤと,HMMM又 はRF樹

脂併用配合系コンパ ウンドとの直接加硫接着の結果か ら,

接着界面に与えるフリーアミンなどの影響について報告す

る.

2.実 験

2.1材 料

ゴ ム 配 合 剤 に つ い て は市 販 の も の をそ の ま ま 使 用 した.

配 合 剤 の種 類 や 配 合 量 はTable1に 示 して い る.HMMM

はCYTECINDUSTRIESINC.製 のCyrez964RPF

(HMMM65%,非 晶 質 合 成 シ リ カ35%)を 用 い た.ま た

RF樹 脂 はINDSPECChemicalCorporation製 のPenacol-

iteResin(B-18-S)を 用 い た.ASTM引 抜 試 験 に 使 用 した

ス チ ー ル コ ー ドワ イ ヤ は,東 京 製 鋼 ス チ ー ル コー ド(株)製

の 黄 銅 メ ッキ ワ イ ヤ(3+9+15×0.170+0.15:Cu/Z:n=

63.5/36.5)を 用 い た.ま た 今 回 の研 究 で 使 用 した 加 硫 ゴ ム

はす べ て150℃ ×45分 の 条 件 で 加 硫 を行 っ た.

2.2測 定

2.2.1加 硫 挙 動 試 験 加 硫 曲 線 の測 定 に は,東 洋 精 機

製 作 所 製 のDISKRHEOMETERを 用 い た.温 度 は150℃,

振 角 は10で あ る.

2.2.2ア ミン 定 量 ア ミ ンの 定 量 に つ い て は,始 め に

日本 ダ イ オ ネ ク ス(株)の 高 速 溶 媒 抽 出 機(ASE-200)を 用

い て,加 硫 ゴ ム1.5gか ら メ タ ノ ー ル に よ り抽 出 を行 っ た.

抽 出 は100℃,1500psi,25分 ×5回 の 条 件 下 で 行 っ た.こ

れ に よ り抽 出 し た サ ン プ ル を メ ス フ ラ ス コ に て 定 量 した

後,島 津 製 作 所 製 の キ ャ ピ ラ リ ーGC(GC-17A)に て 定 量

を行 っ た(キ ャ ピ ラ リ ー サ イ ズ:φ0.32mm×30m)・ な お

結 果 に は ゴ ム19あ た りか ら抽 出 した ア ミ ン量 に 換 算 して

示 し て い る.な お 基 準 と な る 配 合(不 溶 性 硫 黄:10phr,

加 硫 促 進 剤DCBS:1.2phr)に お い て,算 出 した 理 論 抽 出

Fig.1 Reaction scheme of RF resin and HMMM.

Fig.2 Reaction scheme of HMMM and N,N'-dicyclohexylamine.

Table 1 Compound formulations

(55) 489

Page 3: Study of Adhesion Mechanism between Rubber and Brass

ゴム と黄銅 め っ きスチ ー ル コー ドとの接 着 にお け るヘ キサ メ トキ シ メチ ルメ ラ ミ ン(HMMM)の 影 響 日本ゴム協会誌

量の約65%のNNLジ シクロヘキシルアミンが抽出された.

2.2.3引 張試験 引張試験についてはJIS規 格に準 じ

て(JISK6251)室 温,引 張速度500mm/minの 条件下で

測定を行った.

2.2.4網 目鎖濃度(VT)測 定 網 目鎖の密度測定は,

Flory-Rhenerの 式 を用いて算出 した.溶 媒は トルエンを

使用 して加硫ゴムの膨潤度を測定 し,μ 値は0.43と して算

出した.

2.2.5接 着試験ASTM引 抜試験条件(ASTMD1871)

に従 い行 った.埋 め込 み長 さは25mm.引 抜 速 度 は

50mm/min.ま た湿熱劣化 は70℃,96%の 湿度条件下の

オーブン中に14日 間放置,温 水劣化 は70℃ のオーブン内

の温水中に14日 間それぞれ放置 した後 に引抜試験 を行 っ

た。

2.2.6X線 光電子分光(XPS)に よる接着界 面の分析

接着引抜試験後のワイヤをXPSに より解析 した.分 析 に

はULVACPHI製 の複合表面分析装置ESCA-5600を 使用

した.X線 源はモノクロAlを 使用 した.分 析面積 はφ400

μm,検 出器の取込角度は45degで 測定を行った.ま た深

さ方向の分析 ではAr銃 を用いて2.2nm/minの 速度でエッ

チ ングしなが ら測定を行った.ゴ ムが接着 した状態で引抜

かれたワイヤについては,液 体窒素でゴムを凍結 させた後

にハ ンマーで叩き割って接着層を露出させて,金 属側をエ

ッチ ングして深 さ方向の元素濃度解析を行った.

3.結 果 と 考 察

3.1フ リーア ミンに対するHMMMの 影響

混合 したコンパウンドをレオメーターにより測定 した結

果をFig.3に 示す.HMMM配 合系 では加硫速度の低下が

見 られるが,こ れは促進剤か ら発、生したアミンをHMMM

が トラップすることにより,コ ンパウンド内のアミンが減

少 し加硫を遅 らせているものと考 えられる.ま たRF樹 脂

のみ配合 した場合 よりもHMMMと の併用により最大 トル

ク(MH)が 高 くなるのは樹脂縮合化反応によるものである.

注 目すべ き点は,HMMMを 単独 で配合 した場合 にMHが

若干高 くなる傾向が見 られた点である.こ れは耳MMMの

みでも架橋度が向上 していることを示す ものであるが,こ

の点については後述するゴム物性のところで詳しく検討す

る.

HMMM配 合により,コ ンパウンド中の促進剤DCBSか

ら発生 したジシクロヘキシルア ミンを実際にどれだけ トラ

ップしているかを確認 した.Fig.4に はDCBS配 合系 にお

ける,HMMM配 合量 とア ミン抽出量の関係 を示 した.加

硫中にDCBSか ら発生するジシクロヘキシルアミンをGC

にて定量 したものであるが,HMMMの 配合量の増加 とと

もにジシクロヘキシルア ミンの抽出量が減少 していること

がわかる.HMMMの み配合 した場合 には,ほ ぼ直線的に

減少することから,HMMMに よりジシクロヘキシルアミ

ンが ゴム中で トラップされているものと考えられる.一 方

で,RF樹 脂 を配 合 した コ ンパ ウ ン ドにお い て は,

HMM単 の配合量2phrま ではジシクロヘキ シルア ミンの

量は変化が見 られなかった.こ れは,HMMMとRF樹 脂

が優先的に反応 して更に縮合化 した樹脂 を形成することに

より,ア ミンを トラップす るHMMMの メ トキシメチル基

が消失するために,ア ミンが残留 したものと思われる.し

か し2phr以 上のHMMMを 配合すると,ゴ ム内に存在す

るジシクロヘキシルアミンの量は直線的に低下 しているこ

とか ら,RF樹 脂 とHMMMは 等量配合で樹脂化反応はほ

とん どが完結 し,過 剰分なHMMMが ア ミンの トラップに

寄与 したもの と推測される.

3.2HMMM配 合によるゴム物性に与える影響

ゴム系内に残留するこれらアミンが,ゴ ム物性等にどの

ような影響 を及ぼすかを検討 した.Fig.5に は引張試験:に

より測定 した100%引 張応力(Mloo)と 抽出アミン量の関係

について示 したものである.抽 出アミン量の減少に伴い,

Mlooは 増加する傾向が見 られる.HMMMの み配合すると

ほぼ直線的に抽出アミン量が低下 してい くことは先に述べ

たが,こ れに伴いMlooは 直線的に増加 してい く傾向であ

ることがわかる.こ の ようにHMMMを 配合することで

Mlooが 向上す る効果が得 られた理由として,加 硫効率の

向上が考えられる.

スルフェンアミド系老化防止剤か ら発生するアミンは,

Fig.3 Curing curves of compounds at 150 °C.Fig.4 Relationship between the

dicyclohexylamine.

amounts of HMMM and extracted

490 (56)

Page 4: Study of Adhesion Mechanism between Rubber and Brass

第75巻 第11号(2002) 穂 高 武 ・石 川 泰 弘 ・森 邦 夫

加硫工程中に遊離するが,こ のア ミンがゴム加硫中間体で

あるメルカプ トラジカルに反応すると,ゴ ムが未加硫物 と

して存在 し,加 硫 を阻害することになる20).こ の系内に

HMMMが 存在すると,ア ミンを トラップす ることによ り

ゴム加硫中間体 と反応 しないので,加 硫が効率 よく進行す

るものと考 えられる.Fig.3でHMMM配 合によ りレオメ

ーターの トルクが若干高 くなっていたのも,こ の理由によ

る ものと考 えられ る.ま たRF樹 脂 と併用 した系で は,

HMMM2phr配 合まで抽出ア ミン量はほぼ一定でMlooの

みが増加 し,そ れ以上配合 してもMlooは ほとんど変化せ

ずに抽出アミン量が急激に低下する傾向が見 られる.こ れ

も先に示 したアミン量 と相 関がある.RF樹 脂2phrに 対

してHMMMを2phrま で配合 した場合は,HMMMの ア

ミン トラップ反応よ りもRF樹 脂 との縮合反応が優先的に

進行する.よ ってコンパウンド内のアミン量はそれほど低

下 しないが,縮 合化 した樹脂の存在 によりMlooは 向上す

る.HMMMが2phr以 上の配合量では,RF樹 脂 との縮

合反応が完了 し,過 剰分のHMMMが アミンの トラップを

行 うが,樹 脂化 によ り十分 にMlooが 向上 してい るため,

アミンが減少 して も顕著 に増加 しないことがわかる.

アミンの トラップにより,架 橋が効率 よく進行 している

とす れ ば架橋密 度が 向上 してい るこ とが予 想 される.

Fig.6に は抽出アミン量 と架橋密度(ソT)の 関係について示

している.Mlooと 同様1抽 出アミン量の減少 に伴 い,架

橋密度は増加 してい くことがわかる.ま たHMMMの み配

合 した場合は,ほ ぼ直線的な相関が得 られ,RF樹 脂 と

HMMMの 併用系では変 曲点が存在するなど先 に示 した

Mlooと 抽出アミン量 との関係 に非常 に似通った傾 向が見

られた.こ の結果か らも,HMMMの 存在によりアミンが

トラップされることで硫黄架橋が効率良 く進行 し,架 橋密

度の向上につながっているといえる.

3.3HMMM配 合による接着特性に与える影響

次にワイヤ とゴムとの接着について検討 した.Fig.7に

はASTM引 抜試験 により,接 着試験を行った結果を示す.

三つのグラフを示 しているが,上 から初期接着,温 水劣化,

湿熱劣化の順である.ま た各プロットの()内 に示 した値

は,試 験 後 の ワ イヤへ の ゴムの被 覆 率[%]で あ る.

HMMMを 配合 しない場合 には樹脂の有無によらず同等の

引抜力 を示 しているが,HMMMの 配合量が増加する と,

RF樹 脂 と併用 した場合 よりもHMMM単 独で配合 したほ

うがより高い引抜力を示 している.

現在 までにRF樹 脂 とHMMMを 併用配合することによ

り接着力が向上する点については次の ような報告が されて

きた.RF樹 脂 とHMMMは,双 方 とも極性物質であるこ

とか らゴムに難溶であり,ゴ ム系外 にマイグレー トする.

これ らがスチールコー ド表面へ とマイグレー トす ること

で,接 着界面付近で樹脂化反応 し,接 着をより強固にする

Fig.5 Relationship between modulus and extracted

lamine.

dicyclohexy-

Fig.6 Relationship between the extracted

crosslinking density.

dicyclohexylamine and

Fig.7 Relationships between the amounts

force.

of HMMM and pull-out

(57) 491

Page 5: Study of Adhesion Mechanism between Rubber and Brass

ゴム と黄銅 め っ きス チー ル コー ドとの接 着 にお け るヘ キサ メ トキ シ メチ ルメ ラ ミ ン(HMMM)の 影響 日本ゴム協会誌

と提唱されている.し か しなが ら,今 回の評価 では

RF樹 脂 を併用せず,HMMMの み配合 した場合で も

十分に接着力は向上することがわかった.こ れがアミ

ンの トラップによる粒界腐食割れの抑制効果であると

思われる.ま た,双 方 ともHMMMを4phr配 合する

とほぼ同等の引抜力を与えているが,こ れは先の架橋

密度やMlooの 結果においてHMMMを4phr配 合する

と樹脂の有無に関わ らず近い値に収束 していたことか

ら,接 着界面近傍のゴム物性が同等の値を与える影響

で引抜強度が近い値を示 したものと思われる.

温水試験ではHMMMの み配合 したゴム と,RF樹

脂 と併用 したゴムとの引抜力の差が更に顕著になっ

た.こ れは森 ら17)・18)によって提唱されているように,

接着層を湿潤条件下に放置すると水分がゴム系 内に進

入 し,ア ミンを含有 して接着界面に達 して黄銅メッキ

層の粒界腐食割れを促進 していることか ら,ゴ ム系内

のアミン量が引抜力 により顕著に表れた,つ まりアミ

ンが少ないほ ど高い接着力 を与 えるもの と考えられ 謹

る.ま た初期接着力 と比較 して,温 水劣化により引抜 島

力が向上 しているが,こ れは接着層の再結晶化21)に

よるものであると考えられる.

一方 ,湿 熱劣化を行った場合は双方とも接着力の低

下が顕著であった.ま た温水劣化試験 との相違点 とし

てHMMM単 独 よ りもRF樹 脂 と配合 した場合の方が

引抜力が高い傾向が見 られた.こ れは劣化環境下の違

いによるものである.ASTM引 抜試験 におけるサ ン

プルはワイヤがむ き出しであることか ら,ワ イヤ内部

の隙間か ら水分等が進入できる.つ ま り外部環境 に接

着界面が非常に影響されやすいサンプルといえる.耐

水試験ではゴムと同様にワイヤ内部か らも水分が浸透

してくる.こ れにより接着界面付近にアミンを運んで

くることか ら,ア ミンの粒界腐食割れが促進すること

にな り,フ リーア ミンの存在が接着力に寄与する.一

方,湿 熱劣化では,ワ イヤの内側か ら水分 と一緒に酸

素が浸透 してくる.こ れによりワイヤ内部か らの腐食

が促進され,フ リーアミンの有無に関わらず接着力 は

低下する傾向にあることから,樹 脂化反応 によりゴム

内部 まで広 範 囲 に接 着 層 を形成 す るRF樹 脂 ・

HMMM併 用系 コンパ ウンドの方が耐湿劣化性 に優れ

た接着物を与えるもの と考える.

3.4接 着界面のXPS分 析

これらの接着界面が どのようになっているかを確認する

ため,接 着試験によ り引抜 いたワイヤの表面 をXPSに よ

り分析 した.そ の結果をFig.8~10に 示す.

Fig.8に は初期接着 における各コンパ ウンドの接着界面

を示 している.HMMM,RF樹 脂 ともに配合 しない場合

は界面付近での銅 の存在が非常 に顕著であるのに対 し,

HMMMを 配合 した場合 には銅の原子濃度が低いことがわ

かる.接 着界面付近の銅は主に硫化銅(CUxS)と して存在

してお り,硫 化銅はゴムとブラスメッキ表面を接着させる

うえで必要不可欠な存在である.こ の存在が低いにも関わ

らず,HMMM配 合 により接着強度が向上するという結果

となったことから,HMMMは 過剰な硫化銅層を抑制する

効果があるものと考え られる.ま たRF樹 脂 と併用 した場

合には,接 着界面層付近で酸素の原子濃度が高い傾向が見

られたが,こ れは樹脂の酸素原子 に起因するものであり,

Fig.8 Concentration depth profiles of wire surface at unaged samples.

Fig.9 Concentration depth profiles of wire surface after water aging.

Fig.10 Concentration depth profiles of wire after moisture aging.

492 (58)

Page 6: Study of Adhesion Mechanism between Rubber and Brass

第75巻 第11号(2002) 穂 高 武 ・石 川 泰弘 ・森 邦 夫

接着界面層での樹脂化 反応が形成 されていることがわか

る.更 にそれ よりも内部(金属側)で は銅の元素濃度が高い

部分が検出されていることか ら,ゴ ムとブラスメッキ層の

間に樹脂と硫化銅層が存在することがわかる.

Fig.9に は温水劣化後のワイヤの分析結果 を示す.こ こ

でFig.8の 初期接着 と比較 して顕著なのは酸素 の原子濃度

の増加である.こ れは水により酸化が促進 されたことによ

るものであるが,HMMMとRF樹 脂を配合 していないコ

ンパウ≧ドの接着界面は非常に酸化が進行 し,界 面か ら内

部方向まで高い原子濃度で存在 している.ま た,HMMM

とRF樹 脂を双方配合 した場合 には,全 く配合 していない

コンパウンドの接着層 とほぼ同等の傾向を示 しているが,

RF樹 脂 は酸素原子を含 んでいることか ら,実 際の酸化は

少 し抑制 されているもの と考えられる.一一方で,HMMM

のみ配合 した場合 には初期状態 とほとんど変わらぬ原子濃

度を示 していることか ら,HMMMの み配合 した場合 に温

水による接着界面の劣化 ・腐食は抑制されているものと考

えられ る.こ れは先のASTM引 抜試験 の結果 において,

温水劣化条件下ではHMMMとRF樹 脂 を併用 した場合よ

りHMMMを 単独で用いた場合 に,よ り引抜力が向上する

傾向が見 られた現象における証拠 となるものである.

湿熱劣化後のワイヤの分析結果をFig.10に 示す.先 に示

した温水劣化の傾向とは全 く異な り,今 度はHMMMを 単

独で配合 した場合 に酸化が進行する傾向にあることがわか

る.一 方でHMMMとRF樹 脂を併用 した場合には酸素原

子の濃度が一番低 いことか ら,腐 食などは抑制 されている

ものと思われる.こ れも先 グラフに示 したASTM引 抜試

験の結果において,湿 度 劣化条件下ではHMMM単 独 で配

合 した場合 よりRF樹 脂 と併用 した場合に高い接着力を示

していた点の説明 となるものである.

HMMMの 配合・によ り接着力が向上 していた点 につい

て,XPSを 用いた接着界面分析 の結果から以下の ような

ことが言える.温 水劣化,水 による接着力低下に対する耐

久性は向上する傾向にある.し か しなが ら湿熱劣化,つ ま

り水 と酸素が共存する環境下では耐久性が逆に低下する傾

向にある.こ れについては今後更に解析 を行ってい く.

4.結 言

スチールコー ド接着用 コンパ ウン ド中に存在する,加 硫

促進剤か ら発生したアミンは,接 着界面に浸透 して粒界腐

食割れを促進することで接着性 を低下 させる.こ れを トラ

ップする効果がある配合剤 として,HMMMの 効果を本報

では検討 した.そ の結果,HMMM配 合量の増加 とともに

ゴム中のアミンは減少 し,そ れに伴いモジュラスや架橋密

(59)

度の向上,更 に接着力の向上効果も見 られた.

HMMMとRF樹 脂を併用 した場合には,RF樹 脂に対 し

て配合量が約1:1の 割合 に達するまでは,抽 出アミン量

はそれほど減少 しなかった.こ れはHMMMが 樹脂の縮合

化反応に寄与するため,そ れほどフリーアミンを トラップ

しない ものと思われる.そ れ以上の配合を行った場合には,

抽出アミン量が急激に減少することから,樹 脂化反応を終

え過剰に存在するHMMMが アミンの トラップに寄与 した

ものであると思われる.樹 脂化反応 自体がゴムの架橋形態

や接着界面への強化に効果があり,HMMMの み配合 した

コンパウンドとは若干異なる物性を示 している.

接着試験においては,HMMM配 合量の増加とともに接

着力(引 抜力)は 向上す る傾向にある.RF樹 脂 と併用 した

場合 には,HMMM単 独で配合 した場合 より若干接着性は

低下するが,HMMM4phr(RF樹 脂は2phr)配 合するこ

とで,双 方 ともほぼ同等の接着性を示す.こ れは促進剤か

ら発生 したア ミン量 と相関がある.こ れを温水に浸せき後

に引抜試験 を行 うと,HMMM単 独配合の方がRF樹 脂 と

併用 した場合 より接着性が向上する.一 方で湿熱劣化条件

下では反対 にHMMM単 独配合の場合に接着性が低下する

傾向が見 られた.こ れはXPSに よる解析結果から,酸 化

物層の存在が接着に寄与を与えるものである.

参 考 文 献

1)Ooij,W.J:R配 わわ8rα 餓 丁6c加o乙,52,605(1979)

2)石 川 泰 弘 日 ゴ ム 協 誌,65,54(1992)

3)芦 田 道 夫 日 ゴ ム 協 誌,57,501(1984)

4)池 田 能 幸 日本 接 着 協 会 誌,34,488(1998)

5)襲 蓬i,森 邦 夫,平 原 英 俊,大 石 好 行:日 ゴ ム 協 誌,74,289

(2001)

6)聾 蓬,森 邦 夫,大 石 好 行:日 ゴ ム 協 誌,74,368(2001)

7)史 暁 東,森 邦 夫,大 石 好 行:日 ゴ ム 協 誌,74,374(2001)

8)襲 蓬,森 邦 夫,平 原 英 俊,大 石 好 行:日 ゴ ム 協 誌,74,483

(2001)

9)Hamed,G.R.,Huang,J.:RubberChem.Technol.,64,285(1991)

10)Dietrick,M.L,Emmert,D.E.:AdhesiveAge.,20,27(1977)

11)Dietrick,M.L,Emmert,D.E.:RubberChem.Technol.,50,217

(1977)

12)Albrecht,K.D.:R配 わわ6rC舵 肱7セc肋o乙,46,981(1973)

13)Tate,P.E.R.:RubberWorld.,April,37(1985)

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