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TRAVEL JOURNAL 2019.9.23 TRAVEL JOURNAL 2019.9.2324 25
JNTO発SEMINAR
外客攻略のヒント
JNTO発 外客攻略のヒント
資料:JNTO 資料:JNTO
10 11 12 13(年)
181716151413 (年)
10
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20(千件) (人)
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549592
537
601
17,515 17,09318,219 17,796
訪日外客数出国日本人数
0
50
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400(万人)
0
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400396.8352.3
271.0
205.1
158.7136.7
●訪日インドネシア人の推移 ●旅行形態の変化
10 11 12 13(年)181716151413 (年)
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訪日外客数出国日本人数
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400(万人) 396.8352.3
271.0
205.1
158.7136.7
団体 38%
個人旅行 62%
団体 18%
個人旅行 82%
18年に日本を訪れたインドネシア人は前年比12.7%増の39万7000人だった。この5年堅実に伸びてきた市場ではあるが、東南アジアの他の市場と比べ、日本国内からの注目度が低い印象がある。インドネシア市場とは。まずは市場の概要と最新状況からお伝えしたい。 インドネシアといえば、観光地としてバリ島が有名だが、その国土は実に広大だ。ロンドンからイラン・テヘランまでの距離に匹敵する東西約5110kmの範囲に、1万4000以上の島が点在する世界最多の島しょ国家であり、300以上もの言語、民族を擁する多様性の国でもある。約2億7000万人の人口は、中国、インド、米国に次ぐ世界4位の規模を誇るだけでなく、人口ボーナスのピークは30年ごろといわれ、国としてまさに育ち盛りだ。 18年の1人当たりの名目GDPは3871ドル(約41万円)。これは同じアセアンで最大の訪日国タイの10年前とほぼ同じ、日本であれば1970年代前半の数値と重なる。インドネシアの銀行口座の保有率は48.4%。クレジットカードの保有率は2.4%と低いため、これまで旅行商品は旅行会社の店頭等で購入されることが多かったが、銀行口座による決済やクレジットカードを飛び越えて、今はスマホ決済などのキャッシュレス化が進んでいる。
1年前にジャカルタに赴任した時、同僚からスマートフォンに数種類のアプリをダウンロードしないと
ではインドネシア人の旅行者としての消費力はどうか。7月に発表されたマスターカードによる「世界渡航先ランキング(出発地別)」によると、インドネシアの旅行消費力は19位(年平均成長率は4.6%)、渡航先での旅行支出額の伸び率では7位(10年間で9.7%増)で非常に高い購買力があると報告されている。 冒頭で触れたように、昨年の訪日インドネシア人数は約40万人であったが、この国の訪日市場は、特に14年末のIC旅券保持者に対する訪日ビザ(査証)免除措置以降、毎年前年比30%前後の伸びを記録してきた。 まだ初訪日が全体の6割を占めているインドネシア市場で、この3年で個人旅行の割合は62%から82%へと急増している。旅行商品の購入先としては、旅行会社の店頭が46.9%、ウェブサイトが50.7%と、従来の旅行会社経由での購入割合が比較的多い市場ではあるが、前述のようにオンライン決済が多様化しており、より多くの消費者への浸透が進むなかで、オンライン化が一挙に進む可能性を秘めている。
ジャカルタに赴任して感じるのは、日本でのインドネシアに関する報道の少なさや関心の低さだ。直行便の運航数も東南アジア6市場で最も少なく、LCCの直行便は現在運航していない。4月から訪日インドネシア人数が前年を割り込んでいるのは、今年4月に実施された大統領選挙の影響に加え、昨年5月に就航したLCCが昨年9月に撤退したことも影響している。
観光事業者はインドネシアはムスリム対応が必要だと取り組みを躊躇する方が多いかもしれない。しかし、インドネシアは多民族国家であり、中華系インドネシア人だけでも約800万人と、世界最大級の華僑人口を持つ国である。 むしろ、こうしたインドネシアの特性である多様性が、市場をわかりにくくしているかもしれない。多様な人口構成であるが故に、インドネシアの子供はさまざまな宗教や文化的背景を持つ友達と学校で机を並べて育つので、他のムスリム国に比べ一般的に寛容だといわれる。また多様性を認め合おうという理想のもとに、例えばイスラム教徒が人口の9割を占めるが、イスラム教は国教とされていないなど、独自のスタンダードを形成している。 その多様性を束ねているのが、公用語のインドネシア語だ。インドネシア語はアルファベット表記で英語との親和性も高い。訪日旅行を検討するうえでインドネシア人に人気があるのは、桜、雪、紅葉などインドネシアにはない季節に関わるコンテンツや、花畑鑑賞、都会での街歩きやショッピング、和食、伝統文化、お祭りなどの体験である。 さらに増加する個人旅行者向けのアクセス情報も必要となってくる。まずはこれらの情報をインドネシア語で発信していただきたい。そしてムスリムへの対応も、いずれ着手していただけるとありがたい。ハラール認証取得などハードルが高いところからスタートせずとも、まずは豚肉抜きやアルコール抜きで提供できる飲食の食事場所を確認することでも第一歩となるだろう。この機会に、ぜひ急速な変化を遂げるインドネシアに着目いただきたい。巨大市場へ取り組む関係者が少ない今こそ、チャンスである。
生活できないと言われて驚いた。公共交通機関が発達していないジャカルタではタクシーが主な移動手段になり、配車アプリの利用は必須であるうえ、高速道路の料金所や公共バスも現金が使えないため電子マネー搭載のカードが必要だ。 そして、この1年の間にも、スマホによるQRコード決済システムが急速に普及し、今や屋台や市場の小さな店舗でもスマホ決済が可能になっている。新興国では先進国が経験したステップを飛び越えて、一挙に成長が加速することがあるといわれるが、ジャカルタ生活の1年でこの言葉をまさに身をもって体感している。 このような決済システムの移行期に急成長しているオンライン旅行会社(OTA)が、インドネシア発の旅行サイト「トラベロカ」である。同社は、東南アジアに11社あるユニコーン企業に名を連ね、設立から数年で東南アジア域内5カ国に展開し、アプリのダウンロード数は3000万件以上を誇る。 同社躍進の背景には、頻繁な割引クーポンの配布などもあるが、インドネシア市場向けに決済方法を40以上も用意しているという点が挙げられる。銀行口座やクレジットカード等の従来型決済システムを使用しない層を上手にオンラインへ誘導し、消費者を囲い込んでいる。 インドネシアでは、トラベロカより先発のチケット・ドット・コムというインドネシア発のOTAもあり、観光関連のデジタルサービスが、グローバル系OTAが強い他の東南アジア市場と違った形で大きく伸びていく兆しが見え始めている。
インドネシア対応は言語と電子決済堅調に成長を続ける訪日インドネシア市場。世界最大のムスリム国であることから、ハラール対応などに注目されがちだが、多民族で構成される国家でもある。日本以上に進むキャッシュレス化など対応すべき課題は多い。
vol.90
多様性束ねる公用語
急速に進むキャッシュレス化
天野泉 JNTOジャカルタ事務所長
(次回は10月21日号に掲載します)