rgsシャンソン研究会|日本のシャンソン - no.8 · 2017. 2. 14. · au ciel de paris...

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姿宿No.8 2011年7月1日発行 ▲雪月 水葉さん 1

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  • 舞台に華咲く一人の歌い手がい

    ました。

    バルバラが歌う貴婦人を、遠く

    を見つめるように佇みながら人生

    の光と影を歌っていました。

    気品のある老婦人の物語です。

    枯れ葉散る広いお庭には美し

    かった想い出ばかり……。

    哀しみの瞳の奥から、遠い昔を

    まどろんでいる老婦人の姿が目に

    浮かぶようなその歌声に、私は過

    ぎ去った過去の糸を手繰り寄せて

    そっと涙しました。

    愛しい人も、大きなお屋敷も、

    広いお庭も、美しい宝石も、す

    べて失い、残るものは想い出だ

    け……。

    それも、今日で幕を閉じまし

    た……。

    美しかった想い出を胸に今、愛

    しい人の元に旅立ってゆくかのよ

    うなこの物語は、静かに幕を下ろ

    します。

    貴婦人という曲名にもあるよう

    に、すべてを失っても誇り高い心

    だけは決して失っていないこの老

    婦人の凛とした香

    りが漂うこの曲

    に、私は心惹か

    れました。

    心に枯れ葉散

    る人生半ば、私は

    シャンソンという

    光に出会いました。

    炎のように燃え尽

    きて、雪のように

    消えていった大切

    な人との永遠の別れ……。

    人の生命の儚さを知り、枯れた

    バラをただ見つめることしかでき

    なかったあの頃の私。

    ある日、微かな私の魂の残り

    火に一筋の光を差してくれたのが、

    シャンソンでした。

    ふと振り向けばいつも私の傍ら

    にはそっと寄り添い、私を励まし、

    優しく語りかけてくれる永遠の友、

    シャンソンがいました。

    大勢のシャンソン歌手がこの貴

    婦人の光と影を歌っている。でも

    まだ未熟な私の歌には貴婦人の言

    霊は宿ってくれないでしょう。

    枯れ葉散る広いお庭もそこには

    ないでしょう。

    甘い夢にまどろんでいたバラの

    香り匂うあの寝室もそこにはない

    でしょう……。

    過去の糸を手繰り寄せて、私は

    老婦人に語りかけます。

    「貴女がすべてを失っても……

    貴女がどんなに年老いても……

    貴女の限りない美しい心が、私の

    心に住む本当の貴婦人なのです。」

    (筆者はシャンソン歌手)

    No.8

    2011年7月1日発行

    貴婦人

    雪月

    水葉▲雪月 水葉さん

    1

  • 2

    ある冬の日、横浜のシャンソニ

    エ「デュモン」に友人のライブを

    聴きに行った時、この歌に出会った。

    歌っていたのは店のオーナーで

    ピアニストの日野敦子さんで、こ

    の歌は彼女の作曲した歌だった。

    何て好ましい歌だろうと、私は

    いっぺんに好きになった。

    親しみやすく、どこか懐かしさ

    を感じさせるこの曲と、鋼屋鋳造

    さんのこの詩が、誰もが心の中に

    持っている果たせなかった恋に対

    する純な思いを感じさせるからだ

    ろうか。

    人はきっと誰でも遠い昔に一度

    は、心を寄せても打ち明けられな

    かった恋の想い出をもっているの

    ではないだろうか。その思いがこ

    の詩では、シャンソンにありがち

    な直接的な表現ではなく、思いは

    募っているけれど「心眠らせて、

    君を夢見て春を待つよ」という表

    現に、日本生まれのシャンソンら

    しく私のような日本人の感性が

    マッチして、とても好感を抱く由

    縁なのかもしれない。

    この歌に出会ったあと、早速『日

    本生まれのシャンソンⅠ』を買い

    求め、歌わせていただいているこ

    の頃である。

    ちなみに作詞の鋼屋鋳造さんは、

    お名前のお堅いイメージとは違っ

    て、とてもステキなナイスガイ!

    であった。

    日本生まれのシャンソン

    古賀

    功子

    君を想う頃作詞 鋼屋 鋳造作曲 日野 敦子

    ▲古賀 功子さん

    時雨に濡れて ざわめく紅葉秋の名残りに、恋しさ募り君を想う、この頃です恋した日々は、移ろい巡り季節のように、変わったけれど思いはつのり、心縮ませて君を夢見て、春を待つよ

    木枯らし吹いて、凍える落ち葉裸の梢に、さびしさ募り君を想う、この頃です愛した日々は、いつしか冷めて冬日のように、変わったけれど思いは消えず、心眠らせて君を夢見て、春を待つよ

    愛した日々は、いつしか冷めて冬日のように、変わったけれど思いは消えず、心眠らせて君を夢見て、春を待つよ

    ●メロディー・楽譜は発売中の 「日本生まれのシャンソンⅠ」に掲載。

  • 3

    パリの空の下

    二十歳を四回も迎えたという

    のだから、八十歳は遠くすぎてい

    るのだろう。

    最近の彼の公演を見た人が、

    八十歳を超えた人とは思えない

    と、その歌手ぶりをほめていた。

    一九五二年「日曜日は嫌い」と

    いう曲の作詞をする。ピアフに

    歌ってもらおうと作詞するのだ

    が、「善良な人々は日曜日に教会

    でお祈りをしたあと、何もするこ

    とがないからセックスする」とい

    う詞にびっくりしたのかピアフ

    は歌わず、ジュリエット・グレコ

    がコンクールで歌いエディット・

    ピアフ賞をもらって以来、彼女の

    持ち歌としている。

    作詞家と思いきや、多くの作曲

    もしていて、日本でもよく歌われ

    ている。

    また、俳優としても高く評価さ

    れ、アメリカでも知名度を高めて

    いる。シャンソンでは、フランス

    で名を上げた人には外国人も多い

    が、彼もアルメニア出身と聞く。

    娘も姉も歌手として有名である。

    姉のアイーダの古風なブルースの

    ような歌い方はなかなかのもので

    ある。

    一九七〇年代、知識人と言われ

    たいのか、ベトナム反戦歌をよく

    有名歌手が歌っていたが、彼は歌

    では戦争が止められないと思って

    いるのか歌ってはいない。

    最近彼のリサイタルを聞いた

    人が、エネルギッシュに歌って

    いたが、途中で咳をしたが歌はそ

    のままだったと、八十を過ぎたら

    いくらなんでも体力がね、と言っ

    ていた。

             (T・H

    記)

     Sous le ciel de ParisSous le ciel de ParisS’envole une chansonHum HumElle est née d’aujourd’huiDans le cœur d’un garçonSous le ciel de ParisMarchent des amoureuxHum HumLeur bonheur se construitSur un air fait pour eux

    Sous le pont de BercyUn philosophe assisDeux musiciens quelques badaudsPuis les gens par milliersSous le ciel de ParisJusqu’au soir vont chanterHum HumL’hymne d’un peuple éprisDa sa vieille cité

    Près de Notre DameParfois couve un drameOui mais à PanameTout peut s’arrangerQuelques rayonsDu ciel d’étéL’accordéonD’un marinierL’éspoir fleuritAu ciel de Paris

    この歌は 1951年、トーキー映画第一作「巴里の空の下セーヌは流れる」で歌われた曲ですが、日本ではいろいろな訳で歌われています。

    パリの空の下歌が沸き上がるふーふーその歌はひとりの少年の心に今日生まれたパリの空の下恋人達が歩くふーふー恋人達の幸せはつくられる恋人達のためのメロディーの上にパリの空の下

    ベルシー橋の下一人の哲学者が座り二人の音楽家が 何人かの野次馬がそして無数の人々がパリの空の下夜まで歌いに行くふーふー古き都に惚れ込んだ人々の賛歌を

    ノートルダムのあたりでは時にはもめ事も起きるでも、このパリッ子の町ではすべてがうまく片付けられる夏の空の日差しが何本も差し込み水夫が奏でるアコーデオン希望が花咲くパリの空の下

    ▲シャルル・アズナブール

  • この店は、シャンソン歌手深江

    ゆかさんの店である。

    強力なリーダーシップで、シャ

    ンソン教室やスタジオを運営し、

    日本のシャンソン界の発展に貢献

    してきた。

    ライブハウスの老舗「銀巴里」

    最後のピアニストの藤原和矢さ

    んが音楽を担当し、同じく最後

    のマネージャーだった

    松浦さんが音響・照明

    を受け持っているので、

    本格的なライブが楽し

    める。

    一階のスタジオは

    シャンソンやステージ

    ングのレッスンにも使

    われているが、発表会

    やリハーサルのための

    レンタルスタジオとし

    ても貸し出されている。入り口に

    は一日中シャンソンの流れるオー

    プンテラスとカウンターのあるカ

    フェがある。

    約六十名が収容できるスタジオ

    では、金曜の夜にはプロの歌い手

    をゲストに招き、アマチュアの方

    達が歌う「ソワレ・ド・ラマンダ」

    という楽しいライブや、「銀巴里」

    出演者を中心とした四名の歌手が

    ピアノカルテットで歌う本格的な

    「シャンソネット・ライブ」が開

    かれている。

    昨年の五月には、二階に落ち着

    いた雰囲気のこぢんまりとしたサ

    ロンが開設され、毎日のようにラ

    イブが行われている。

    ラマンダでは、楽譜やカラオケ

    などシャンソンに関する資料も豊

    富に取りそろえられ、シャンソン

    に携わる歌い手や愛好家には頼り

    になるスポットといえるだろう。

    定価 送料300円

    ●「日本生まれのシャンソン」ホームページ http://rgschanson.com ●第3回「日本生まれのシャンソン  」を歌う会は平成23年9月18日バルバラにて開催

    ♪♩♬

    ♪♩♬▲ソワレ・ド・ラマンダ出演の土橋さん母娘

    ラマンダ

    自由が丘南 口 東急ストア

    安藤薬局

    八沢川

    遊歩道GAP

    至目黒通り

    至奥沢駅環八

    ラマンダ★

    ● ●

    *東急東横線「自由が丘」南口改札を出て左 東急ストアの角を右 並木の美しい遊歩道を左 遊歩道左手に建つモダンなビルの1F*駅から徒歩2分*建物の正面入り口からはカフェへ スタジオへは左の大きなドアからお入りください

    TEL 03-3724-9959(オフィス)   03-5731-7897(カフェ)HP http://www.lamanda.co.jp

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