mra ハウス助成金業 終了報告書(平成 29...

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1 MRA ハウス助成金事業終了報告書(平成 29 年度) 事業名:「ASEANにおける介護人材の確保と育成 ―介護技能実習制度の活用―」 報告者認定特定非営利活動法人 外国人看護師・介護福祉士教育支援組織 報告責任者:青野淳子(代表理事) 平成 30 年 3 月 12 日

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MRAハウス助成金事業終了報告書(平成 29年度)

事業名:「ASEANにおける介護人材の確保と育成

―介護技能実習制度の活用―」

報告者:認定特定非営利活動法人

外国人看護師・介護福祉士教育支援組織

報告責任者:青野淳子(代表理事)

平成 30年 3 月 12 日

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[はじめに]

団塊の世代が後期老齢者となる 2025年には約 38万人の介護労働者の不足が予想さ

れている。この不足を補うために外国人人材の受け入れを介護職にまで拡大する(介

護技能実習制度)法案が 2016年 11月 1日に成立した。我々は、この制度を活用した

介護人材の確保と育成について、ASEAN 諸国におけるその可能性と課題を見出し提言

することを目的として調査研究を実施している。2016 年度はベトナムおよびタイに

おいて調査した。本年度はミャンマーの首都ヤンゴンにおいて調査を実施した。本調

査ではミャンマーにおける①介護事情、②介護技能実習生送り出し機関の実態、③日

本語教育の状況を把握することを目的とした。

[調査結果]

1 介護事情について

ヤンゴン市内にある高齢者介護施設の訪問及び介護人材教育の現状について調査

した。

1-1 高齢者介護施設

ミャンマー人材開発機構(後述)の院田浩利氏ら のご尽力によりヤンゴン市内に

ある下記2つの高齢者施設を訪問し面談・見学することができた。2013年社会福祉

省が開設した「高齢者デイケアセンター」については訪問許可を得るに必要な時間

的余裕がなく見学がかなわなかった。

(1) See Zar Yeik (Twilight Villa)訪問(2018年 2月 1日、15:00)

Daw Khin Ma Ma氏(中央左) 4階

Daw Khin Ma Ma氏(作家、女性)が 2012年に設立した。この施設は医療や介護が

必要な高齢者も受け入れている。面談者:氏名不明(事務長?)の説明を受けなが

ら施設内を見学させていただいた。パンフレットはなし。面談内容:現在入居者は

120 名(男性 37 名、女性 83 名)、建物の 4階には重度で常時看護が必要な患者、

3階には脳卒中の患者、2階には自力で歩けない人が、男女別々に収容されている。

ただし部屋に仕切りはなく並んだベッドが見渡せる。職員は医師 2 名(ほかにボ

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ランティア医師がいる)、看護師 12名、リハビリ担当者 4名、看護助手 12名、そ

の他。勤務は 2 交代制(8:00~20:00 と 20:00~8:00)、食事は 1 日 5 回。食

費 1月 20万チャットはほとんど寄付で賄われている。

(2) Hninzigon Home for The Aged 訪問(2018年 2月 3日、14:00)

Dr.Daw Khin Tint(中央左) 看護師は青色の、看護助手は赤色のスカート

家族や身寄りのない 70 歳以上の自立した(自力で移動、自力で排泄可能な)高齢

者のための施設である。創設は 1933年、1956年より現在の場所と建物で活動して

いる。面談者:Dr.Daw Khin Tint(Joint Secretary,元大学物理学科長)、事務長

(73 歳、元ヤンゴン新聞編集長)。面談内容:収容者数 240 名(男性 100、女性

140)、家具・衣類・食事・医療が無料で提供される。男女別棟となっており食堂、

レクリエーションホールがある。食事は 1日 4回(朝食 5:30、昼食 1:30、お茶:

13:30、夕食:16:30)。施設内には病院があり、入居者の健康を管理している。

但し病気になった者はヤンゴンの総合病院に送られ必要な治療を受ける。病院に

は、2008 年以来基本的な看護学と専門的な高齢者ケアを学ぶ 6 ケ月のコースがあ

り“老年看護専門看護助手(nurse aid)”が養成されている。施設運営資金はすべ

て寄付による。事務長の案内で施設内を見学した。施設スタッフは 125 名で、そ

の 80%はボランティアである。現在の入居者の最高齢は 103 歳(ミャンマー人の

平均寿命は男性 64歳、女性 74歳)。日本語を話す入居者(男性)に声をかけられ

た。

1-2 看護介護従事者の養成機関

ヤンゴンにある 3つの機関を訪問し面談した。ヤンゴン市内には日系の「あさひ看

護介護学校(ASAHI NURSING WELFARE TRAINING CENTER)」もあるが、訪問を拒否され

た。また、株式会社スリーエーホールディングスがミャンマー第 2の都市マンダーレ

において「UJLAC看護介護学校」を開講(2016年 3月)しているが、今回の調査では

訪問できなかった。

(1) Sandi Dewi介護学校訪問(2018年 2月 1日、10:00)

ミャンマー人材開発機構の院田浩利氏の尽力により訪問が実現した。

面談者:現校長ディ・キ・エ(Daw Kyi Kyi Aye)氏および教員 2名、面談内容:

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1995 年 6 月、現校長が退役看護師らと創立した。目的は、①高校を卒業しても仕

事がない女性に職業教育を施す、②老人を支えるなど。教員は退役看護師 13 名、

校長(左 2人目) クラス風景

医師 2 名(産科、小児科)、事務員 1 名である。学生数:1 期当たり 20 名あまり

(年間約 200 名)、授業料:15 万チャット、教育期間:2 カ月、年 6 回開講、教

育内容:講義 1か月(解剖学、薬学、救急、産科学など)、実技・実習 1か月、授

業時間:9:00~15:00(12:00~13:00昼休み)。就職:育児や病人のいる家庭

を訪問し世話をする(1 日 2 交代制)、賃金は仕事の内容や地域によって異なる

が、1日あたり 8千~1万チャット。当介護学校の評判:「介護は誇りをもってや

れる仕事でお金がもらえる」、「長く働ける仕事である」として人気がある。同類

の学校はヤンゴンに 20 校ほどあるが、当校は政府系で退役看護師が教育してい

るので評判が良く、募集をしなくても学生が集まる。教室の見学:1 つの部屋を

簡易間仕切りして事務室と教室として使用しており、小さな机と椅子で肩と肩が

触れるような状態で 25 名ほどの学生が勉強していた。黒板は古く文字が判別し

にくい、壁には古びた解剖図、人体模型図などが張られている、照明も暗い、冷

房はなく天井扇風機のみで蒸し暑い。当校ではパンフレットはなくカリキュラム、

テキストなどの情報はいただけなかった。当校卒業により得られる資格の英語名

を忘れてしまったが通訳は介護士と訳した、この資格はシンガポール政府には認

められているとのことである。

(2) POLESTAR KAIGO SERVICE Co.,Ltd.訪問(2018年 2月 6日、14:00

ミャンマー政府も高齢化対策に取り組み始めており、当社と共同で国立病院内に

介護専門の職業訓練学校の開設をする予定である(日経新聞、2018/1/25)。

面談者:片岡希望氏(写真中央)。面談内容:

当社はミャンマーのポータルトラベル&ツア

ーズと日本のさくらコミュニティーサービス

(札幌)・笑顔いちばん(岐阜)などの企業連

合との合弁会社で、2015年 6月に設立された。

2017 年 12 月、ヤンゴンで訪問介護の実地研

修事業を開始した。介護技能実習生の日本へ

の送り出しはまだ始まっていない。

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(3)Royal City College 訪問(2018年 2月 5日, 11:00)

Dr.Phyu (中央) 先生(中央)と学生達

アバフィールド インターナショナル(後述)と提携している学校で、医師が経営

している。建物は豪華。面談者:Dr.Htike Myat Phyu(Director),Dr.Myo

WinHtay(Managing Director),Daw Khin May New 氏(日本語教師)。面談内容:

授業料 11.5万チャット。学生は、午前中介護など、午後日本語を学び、介護・ホ

テル・自動車などの専門学校へ留学する。過去 115名を送り出した。現在介護技

能実習生として 14名を申請している.

2.介護技能実習生送り出し機関の実態について

ヤンゴンの3つの人材送り出し機関を訪問した。

(1) テエワンサービスエージェント(株)(HTAY ONE Services Agent Co.,Ltd.)訪

問(2018年 2月 1日、13:00)

社長ご夫妻と 縫製工場

2011年設立。ミャンマー人材開発機構と提携している。社長(U Thein Htay

氏)との面談内容:テエワンサービスエージェント(株)は主として塗装技能実習

生を海外に送り出している、日本へは 2014~2017年に 197名を派遣した、ブロ

ーカーがミャンマー国内から集めてきた希望者に日本語と塗装技術を訓練して

送り出す、手数料は 1人 2800 ドル、介護技能実習生の場合 N3 まで教えることに

なったのでその費用が問題となっている、当社隣地に 8 階建ての建物を建て日本

語学校、訓練学校、寄宿舎とし一体的に技能実習生の養成を行う予定である。社

長夫人(Daw Khaing Khaing Aye氏)との面談内容:夫人はテエーサービスエー

ジェント(HTAY Service Agent Co.,Ltd)という会社の社長である。この会社は

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シンガポールへ家政婦を送り出している。今までに 500 人ほどを送り出したが、

事故や逃げ帰るなどがあったので対策をした。その結果2013年~2014年には10%

程度あった逃げ帰りが 2017年には 2%に減少した。家政婦や介護に向かない女性

のために訓練目的の縫製工場を経営している。その工場を見学した。30 人ほどの

女性たちがもくもくと縫製に取り組んでいた。

(2)株式会社ジェイサットコンサルティング(Japan SAT Consulting Co.,Ltd)訪

問(2018年 2月 3日、10:00)

日本企業が集まるさくらタワーに本社事務所が

ある。社長の西垣充氏(写真中央右)がにこやか

に我々を迎えてくれた。西垣氏は「ミャンマーを

夢が昇る国にする」との志をもって 20 年ほど前

からミャンマーで活躍されている。2012 年には

視覚障害者自立支援の功績によりミャンマー政

府から表彰された。当社の設立は 1998 年 8月、

手広く事業を展開されておりその中に人材紹介・

人材派遣・日本語訓練センター事業が含まれている。面談内容:①日本からの苦

情をなくするために日本語を学ぶ学生にマナー教育を実施しており日本語学校

の規則に取り入れた、マナー教育は日本に行ってからでは困難であり送り出し側

でしっかり教育する必要がある、②介護技能実習生派遣についてはミャンマー政

府の労働省と日本の厚労省とがまだ協議中であり派遣の許可がおりず日本への

送り出しができていない。そのため、当社日本語学校で教育した介護技能実習生

応募者の第 1 期及び 2 期生はほとんどがミャンマーで日本語の先生になってい

る、第 3期生では介護技能実習生になることを希望する者は 50%ほどである、介

護技能実習生希望者は医師会の協力を得て適性ある人材を選択してもらい、当社

で面接し適性を見極めたうえ介護施設で研修させ適性を示した者についてのみ

日本語教育を施す、③日本語を習得すると技能実習生となるのをやめる学生が出

る、④ミャンマーでは仕事がないので日本へ行くが、女性は適齢期になると帰国

するので日本滞在は 5年が限度と考えるのが妥当である、技能実習生の 7割は地

方の出身であり親に仕送りをしており、稼いで早く帰国したがっている、⑤チン

州などミャンマー北部ではヨーロッパへの出稼ぎシステムができあがっている、

授業料・航空券・ビザなどの費用がかかるが、高利貸しからの借金を禁止してい

る、家族からの借金は認めており働いたら 6カ月で借金を返済させるようにして

いる、⑥日本の場合、受け入れ機関も相当の負担をしているので逃げ出さないよ

うにすることが大切である、そのために日本での生活を支援するミャンマー人の

存在が必要である、団結力があるし IT 時代なので各地に配置する必要はない、

当社では東京と大阪にミャンマー人のカウンセラーを配置し相談を受けている、

カウンセラーの精神を整えるために一定期間ごとにミャンマーに帰国させてい

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る(帰国中のカウンセラー、写真中央左)。

(3)アバフィールド インターナショナル(Arbourfield International Co.,Ltd.)

訪問(2018年 2月 5 日,10:00)

面談者は日本事務所の秩父重三郎氏(Japan Manager)及び今村昌史氏(Japan

General Manager)である。面談内容:2002年海外人材派遣事業を開始した、ミ

ャンマーで最も古い人材送り出し機関である。中東や東南アジア諸国へ年間 1000

人単位で送り出している。2015年、日本への技能実習生派遣事業を開始した。パ

ンフレットによれば、逃亡失跡による金銭支払いの保証契約などは一切行わない。

逃亡失跡ゼロを目指しての対応/対策として、実習生自身の将来、きっちり最後ま

でやり遂げた後の実習生自身の価値、そして多大な迷惑を関係者各団体にかける

ことの罪の大きさなどを徹底して教え込んでいる。

3.日本語教育の現状

近年日本語学習者の増加が著しい。学校教育としての日本語教育は国立大学である

ヤンゴン外国語大学とマンダーレ外国語大学の 2校でしか実施されていないが、民間

の日本語教育機関が急増している(2017年 10月現在 196機関)。日本語学習の主な目

的は、就労・留学・訪日実習であるが、日本へのあこがれや期待が大きいことがその

背景にあると考えられている。

3-1 ヤンゴン外国語大学(University of Foreign Language, UFL)

日本語学科訪問(2018 年 2月 5日、13:30)

国際交流基金から派遣されている上級専門家

佐藤直樹氏(写真右)及び日本語科講師ウイン

ウインタン Win Win Thant 氏(写真左 2番目)

に面談した。UFL は 1996 年設立、2009 年には

修士課程が開講した。日本語学科の人気は高く、

入学の難易度は英語、日本語、中国語の順であ

る。日本語学科の学生数は 1年生 150 名、2 年

生 120 名、3 年生 100 名,4 年生 80 名である。

現地ミャンマー人日本語教師は 26 名(2 名を除き修士号取得者)。また、国際交

流基金から佐藤氏の他に日本語パートナーズ 2 名が派遣されている。学生の日本

語習得度は、日本語能力試験で、3 年生では 70%が N3、4 年生では 50% が N2 合

格である。佐藤先生によれば「本屋はあるが本がない」そうである。

3-2 送り出し機関が併設する日本語学校訪問

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(1) ミャンマー人材開発機構の日本語学校訪問(2018年 2月 1日、13:00)

一般財団法人全国建物調査診断センターが経営するミャンマーの日本語学校で

ある(2014設立)。街中の雑居ビルの3階にある。面談者:Su Hnin Oo 氏(日本

語教師)。面談内容:日本語教師(ミャンマー人)4名(N3と N2各 2名、先生の

Su氏(左端)と留学予定学生 2名 教員が工夫して作成した教科書

月給 50 万チャット)、教室 2、それぞれ約 25 名の学生が日本語を学んでいた。

授業は 9:30~16:00、月謝 12.5万チャット/年。過去 200人以上日本に送り出

した、仕事は建築・塗装・縫製・農業など。日本語の他に文化・習慣・マナーを

系統立てて教育しているとのこと。教室見学では学生が起立して元気よく挨拶

してくれた。2018 年 4月日本に留学予定の 2名(女性)が挨拶してくれた。日

本語会話が実に上手である。

(2)株式会社ジェイサットコンサルティングの日本語学校訪問(2018 年 2 月 2 日、

14:00)

授業風景 休み時間の学生達と

本社のあるさくらタワーから徒歩 5~6 分の雑居ビルの 3 階にある(2 階には韓

国語学校あり)。面談者:柿本春花氏(日本語教師)、面談内容:日本語教師は日

本人 4 名(シニアボランティア 2 名を含む)及びミャンマー人 4 名(N1,N2 取得

者)で、担任制をとり生活指導までする、教員 1 名が 25~26 名を担当する。学

生は①介護、②エンジニア(技術大学卒業者、専門知識で就職)、③工場系(技能

実習生)である。授業時間 9:00~15:00(1コマ 50分x5)で 10カ月教育する。

遅刻 3回で 1回の欠席となる、無断遅刻・欠席禁止、登下校管理は指紋認証で代

返は不可と厳しい規則があるが、授業が終わると学生が事務室を訪問し職員とに

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ぎやかに話している。介護クラスとエンジニアクラスの授業を見学した。教室は

広く明るい、学生は礼儀正しいが親しみやすい感じ。介護クラスは現在 4 期生 6

名、5期生 18名が学んでいる。施設実習が厳しく辞めた学生がいるので 4期生は

少数となった。3期生は 11月に授業を終了、受け入れ会社も決定しビザ待ち、1,

2期生は N3を取得したがすでに介護職への就職をやめてしまっている。

学生の作文 指紋認証の機械

(3)Study & Work Japan Myanmar Human Resource Center 訪問(2018年 2月 5日、

10:00)

学生達 学習風景

アバフィールド インターナショナル(上述)の日本語学校である。新しい 5階

建てビルの中にあり、広い教室で全員が会社名入りの紺色のTシャツを着て学ん

でいた。教師は若いミャンマー人女性で、日本人教師はいない。学生は日本の企

業と契約した技能実習生で日本に行く前に 6カ月間(週 5日)日本語を学習する

(N4 レベルまで)。コミュニケーションを重点的に教育する、また日本特有の礼

儀も学ばせる。費用は 300 ドル。介護技能実習生は N3 を取得してから日本へ行

く。

(4)アウン日本語アカデミー訪問(2018年 2月 6日、11:00)

面談者:代表者アウン・タン・ウー氏。面談内容:2003年ヤンゴンの大学を卒業

後日本語学校への留学を経て、静岡県立大国際関係学部大学院で修士号を取得し

た、日本の会社などに勤務し 10 年間日本に滞在した、2013 年に帰国し現在の会

社を設立、日本語教育、翻訳・通訳、留学派遣などを手掛けている。現在日本語

教育を一時中止している、広告、旅行、送り出し等の仕事を主としてやっている。

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ウー氏(中央)

4 日本大使館訪問(2018年 2月 2日、11:30)

突然の訪問依頼にもかかわらず、二等書記官藤原尚子氏が面談を快諾くださり丁寧

な説明を受けることができた。

面談内容

① 日本の支援としては①独立行政法人国際協力機構(JICA)がミャンマー事務所を

持ち、「ミャンマー日本人材開発センター」を設立して産業中核人材の育成など

ビジネス情報・ネットワークの拠点としての役割を担っている、②日本語学習者

が増加しており、日本語能力試験の応募者は約 2 万人に達した。今年度中には

国際交流基金がヤンゴンセンターを設置する予定である。日本企業も急増して

おり、5年前には約 50社であったが、最近では約 360社が進出している。

② 中国からの政府開発援助(ODA)が多大である、庶民が使うバスなどを提供

している。文化面では韓国がリードしており、映画、音楽、化粧品などが人気で

ある。日本は著作権が厳しいのがネックである。日本のアニメは人気あり。

③ ミャンマーの教育は暗記中心であり、「なぜそうなのか」と自分で考えたり、覚

えたことを使って行動する学習の仕方ではないのが課題である。また義務教育

期間におけるドロップアウトが多い、義務教育は現在の 11年から 12 年に変更

の予定であるがまだ実施されていない、大卒は通信制を合わせて 2割くらい、

外国への留学生(国費、公費、日本企業)は高卒・大卒合わせて 4,000 人くら

いである。

④ 日本への技能実習生についての課題として、質の良くない斡旋業者が多い、送

り出し機関がきちんとマッチングをしていない、帰国した技能実習生が日本で

習得した技能を使う働き場がないなど。

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日本大使館玄関 日本大使館前にあるカンドージ湖

[おわりに]

初めてミャンマーを訪問した。人々は優しくおだやかであり、ゆったりした時間が

流れていた。ミャンマーでは高齢者の面倒は家族が看るという文化である。見学した

高齢者施設は身寄りのない貧しい高齢者のための無料の施設で、その経費は寄付によ

って賄われている。これはこの国を支える仏教文化に根ざすものであろう。ミャンマ

ー人は誰も分相応の寄付をするそうである。ジェイサットコンサルティングの西垣氏

はすべての社員が給料の 10~15%程度を寄付していると推測していた。この文化は

今後ミャンマーが経済発展を遂げた後でも存続してほしいと思う。このミャンマーに

おいて日本の介護技術が貢献できるとすれば、デイサービスや訪問介護により自宅で

高齢者を抱える家族を支援することではなかろうか。すでに訪問介護ステーションの

実証事業が Polestar Kaigo Service によってなされている。訪問介護ステーショ

ンは日本で介護技能実習生として技術を習得した後ミャンマーにて働く受け皿とし

ても期待される。

介護技能実習制度は制定されたものの今日にいたるまで介護技能実習生の日本へ

の入国はない。ミャンマーと日本政府はいまだ協議中らしい。希望者を募集しすでに

日本語などの教育を施したミャンマーの送り出し機関や日本語学校もある。日本の受

け入れ希望施設も介護技能実習生の来日を待っていると推測する。速やかな協議の終

結をお願いしたい。

[謝辞]

本調査では多くの方にご尽力ご協力いただきました。ここに深く謝意を表します。

本調査の機会を与えていただきました一般財団法人MRAハウスに厚くお礼を申

し上げます。