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家庭科教育の充実に向けた学校家庭クラブ活動のあり方 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 教育内容・方法開発専攻 行動開発系教育コース M11208F

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家庭科教育の充実に向けた学校家庭クラブ活動のあり方

兵庫教育大学大学院 学校教育研究科

   教育内容・方法開発専攻

   行動開発系教育コース

    M11208F    藤 原 容 子

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内容

序章 問題の所在と研究の目的...................................................................................................................2

第1章 学校家庭クラブの現状と課題........................................................................................................3

 1.全国高等学校家庭クラブ連盟加入状況.............................................................................................3

 2.家庭科教員の意識調査........................................、..............................................................................5

 2・1 10年経験者研修での学校家庭クラブ活動に対するアンケート調査...........................................5

 2・2兵庫県家庭科教員への意識調査.....................................................................................................11

 3.見えてきた課題...............................、....................、......、....................................................................13

第2章 学校家庭クラブ活動とは...............................................、..........................................................1..14

 1.学習指導要領解説における学校家庭クラブ活動の条件..............................................................14

 2.教科書「家庭基礎」における学校家庭クラブ活動の取扱い........................................、.................17

 3.高校家庭科と学校家庭クラブ活動の歴史的変遷...............................................、.............................21

 4.学校家庭クラブ活動の意義と要件........................、.........................................................................22

第3章学校家庭クラブ活動の指導方法と教育効果..、.............................................................................24

 1.家庭に関する専門学科における学校家庭クラブ活動の取り組み...................................................24

 1-1ナラティヴ・アプローチによるライフヒストリー分析.................................................、............24

 1-2分析から見えてきた変化と教育効果........,、...................................................................、.............27

 1・3 見えてきた学校家庭クラブ活動の具体的指導の工夫..................................................................29

 2.生徒の発達段階に応じた指導方法..................................................................................................34

 3.普通科r家庭基礎」(2単位)における学校家庭クラブ活動のあり方......、....................................37

第4章 まとめと今後の課題.................................................................................................................._41

終章 おわりに.................................、..........、..............................................................................................43

 参考文献..............................................、..................................................................................................44

 資料1 家庭科教育の変遷と学校家庭クラブ活動...............................................、..........................._..46

資料2 高等学校学習指導要領 家庭 目標.......................................................................................48

資料5 学校家庭クラブ(FHJ)設立(高校家庭科とHP・FH J. 教育図書昭和42年発行).48

資料3 ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動の意義..................................................................49

資料4 小学校・中学校・高等学校の家庭科指導目標  (学習指導要領.2009)............................50

資料5 中央教育審議会答申 「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」51

資料6 プレゼン発表資料、...............................、......................................................、........................_.54

1

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序章 問題の所在と研究の目的

  平成22年新学習指導要領において、「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動を一層充実させる。」

 とあり、「家庭基礎」においては、3つの柱の一つに、「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」

 が明記されている。

  しかし、高等学校家庭科において『家庭基礎」2単位の実施が大半を占めるようになった現在、今

 まで行っていたホームプロジェクトも、時間不足からますます実施できなくなっている。まして、学

 検家庭クラブ活動は兵庫県においては、家庭に関する専門学科が中心に取り組んでいるのが現状であ

 る。家庭科教員も特に学校家庭クラブ活動に対する意識は低く、全く行ったことがない教員も増えて

 いる。

  1984年に新福らが行った調査において、「家庭クラブを指導した経験をもつ教員は73人中10人で、

 そのうち8人が50歳以上のベテラン教員である。」とあるが、その当時から28年経過し、年々若い教

 貝が増える中、ますます学校家庭クラブに対する意識は低下していると思われる。また、「亘P由や家庭

 クラブ1ママ1は教室内授業だけでなく家庭生活や地域での実践力を養うための活動であるため、授業外

 での時間や場所での指導が必要であり、教員の幅広い指導力が要求される。HPと家庭クラブ活動1ママ1

 の教育的価値認識と教員の実践指導能力の養成などが要求されるところである。」しかし、家庭部会家

 庭科教育研究会近畿大会や兵庫県大会において、教育的価値認識と教員の実践指導能力の養成目的と

 した研修機会はほとんど実施されていない。現在では、学校家庭クラブ活動そのものの理解がない教

 貫も多いのではないだろうか。「家庭クラブ1ママ1を指導する上での問題点として、教員・生徒共に授業

 以外での負担が大きいこと、予算が少ないこと、全員加入しなければならないことなどがあげられて

 いた。」当時から問題とされていた内容であるが、現在も解決されてなく、加入しない理由にあげられ

 ている。

  食育や幼児教育などの研修は実施されているが、家庭科教育そのものの指導内容や家庭基礎2単位

 の在り方を検討する機会はない。ただ4単位の内容を2単位に収める工夫ではなく、家庭科教育その

 ものを見直し、その指導方法を検討しなければならないと思う。その鍵がホームプロジェクトや学校

 家庭クラブ活動にあると考える。

   学習指導要領による家庭科の教育目標は、小学校は、「家族の一員として生活をよりよくしようと

する実践的な態度を育てる。」とあり、中学校では、「進んで生活を工夫し創造する能力と実践的な態度

を育てる。」と、家庭生活における内容となっている。高校家庭科では、「家庭科や地域の生活を創造す

る能力と実践的な態度を育てる。」と地域にまで学習内容を広げなければならない。しかし、福岡・後

藤(2012)などのホームプロジェクトの実践に関する研究はあるが、学校家庭クラブ活動に関する研究

はほとんど見られない。

  そこで、本研究では、高等学校で必要とされる学校家庭クラブ活動をとりあげ、その現状と課題を把

握し、家庭科教育の充実に向けた学校家庭クラブ活動の指導の工夫と教育効果を提案することを目的と

する。

*HP:ホームプロジェクトの略

2

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第1章 学校家庭クラブの現状と課題

 1 全国高等学校家庭クラブ連盟加入

状況            1

  全国高等学校家庭クラブ連盟は、高1

 等学校の学校家庭クラブ活動を推進≡

 し、クラブ員のホームプロジェクトや1

 学校家庭クラブ活動への研究意欲と

資質の向上を図ることを目的として・ P 昭和28年(1953年)に結成された組;

 織である。        1  平成23年度各都道府県の学校家庭1

 クラブ連盟の加入状況(平成23年3…月。日現在)によると、。。都道府県に1

 おいて、公立学校加盟率100%の県は、1

 香川と愛媛の2県あるが、全国平均は≡

 約46%であり、全く加入校のない県は1

 静岡県・長野県・京都府の3県である。≡

  (図1-1)       :  兵庫県は加盟校30校(内私立2校)、:

公立学校加盟率では’8%で全国33番 P 目と低い。加盟生徒数を見ると、家庭

 科を学習している生徒が全員加入し1

 ている学校はなく、専門学科生徒の全1

 員加入が8校で、他は代表者のみの加」入や家庭科部.調理部.手芸部など家1

 庭科に関係のある部活動が、学校家庭1

 クラブとして加入している。(表1-1)…

  本来家庭科教育のために設立されミ

 た全国高等学校家庭クラブ連盟であ1

平成23年度都道府県別加盟率

 徳島 愛如一

 沖縄一

 香川 島根」

 奈良

 岐阜 佐賀

 茨城長崎一

 岡山 山梨.

岩手.

 高知宮崎.

福井」

 福岡

 鳥取鹿児島 栃木一

 大分 福島

熊本.

 山口群馬」

秋田’

青森.

富山.

 山形一■大阪11■誰;=

 石川 ,新潟、■■一

広島1、■

 兵庫コ和歌山川

 三重皿・東京一滋賀]□愛知」,

るが、加入率が50%を割り、全く加入:北海道■                   千葉一していない県もあることが分かった。1神奈川1≒

また・教科指導1して学校家庭クラブ1鶏1

活動を行うべきであるが、そのとらえ≡ 長野.j

方はさまざまであり、実施方法は学校…  0・O%  20・O% 40・O% 60・0% 80・O% 1OO・O%

によって異なっている。      ≡一’’                      図1-1平成23年度学校家庭クラブ連盟加入率

                 加盟率=都道府県別全国学校家庭クラブ連盟加盟枚数/都道府県別高等学校数 以上の現状から、各都道府県が家                    平成23年加盟校一覧(全国学校家庭クラブ連盟)庭科教育において全国高等学校家                    全国学校データ2011年(NPO法人教育ソリューション協会)をもとに作成

                     3   http:〃www.kyo皿ik皿so1帖ionjp!9akkoudata/index.11tm工

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庭クラブ連盟をどのように位置づけ浄性化を図ろうとしているのか、現状を把握し共通理解を図る必

要があると考えられる。

 しかし、兵庫県においては、各学校が学校家庭クラブ活動をどのようにとらえ、取り組んでいるの

か、まず家庭科教員の意識から問題点を把握する必要がある。

表1-1兵庫県の全国高等学校家庭クラブ連盟加入状況

比較項目 普通高校での実施 家庭に関する専門学科設置校での実施

加入状況 希望者のみ加入 専門学科生徒のみ全員加入  (5校)

福祉に関する専門学科のみ加入 専門学科生徒全員・普通科一部  (1校)

家庭科教員 1~2名(常勤講師の場合もあ 4~6人る)

活動内容 ・保育所や幼稚園へ手作りおもち ・小学校と連携した食育活動

や製作 ・レストランでの一日シェフ活動

・保育所訪間やイベントに参加し ・地域でのファッションショー

交流活動 ・老人ホームや保育所訪問

・文化祭でのバザー販売 ・地域でのイベントに参加

・老人ホーム訪間 ・交通安全週間の呼びかけ

・被災地支援活動(入園グッズ製作・クリス

マスプレセント製作)

問題点 ・調理や手芸など家庭科に関する ・学科の特色ある活動として実施するため、

部活動で加盟し活動している。 専門性が高く、普通科「家庭基礎」での活動

・学校家庭クラブ事務局の地区幹 と一緒に行うことができない。

事の仕事が負担である。 ・地域と結びついた特色づくりもあり、各校

とも年々活発に行っている。

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2.家庭科教員の意識調査

   2-1 10年経験者研修での学校家庭クラブ活動に対するアンケート調査

   平成23年8月10目(水)10年経験者研修において「学校家庭クラブ活動」の研修を行った。

  まず、参加教員5名に学校家庭クラブ活動に関するアンケート(図1-2)を実施した。そして、

 筆者の勤務校である県立西脇高校での学校家庭クラブ活動の実践と意義や教育的効果を説明し、

  最後に各学校の学校家庭クラブ活動を提案する(図1-3)演習をさせた。

   対象教員のうち3名(教員A・教員B・教員C)は普通科のみの経験者で、1名(教員D)は

 農業科併設の普通科、1名(教員E)ぱ総合学科勤務である。

   アンケート結果を表1-2のようにまとめた。

   アンケートの設問1において、学校家庭クラブ活動について、どのように認識しているのか闘

  いた。学校家庭クラブについて、正しいと思われる項目を選んだ結果、全員が「家庭科教育に位

 置づけられている。」と答えた。しかし「部活動とは違う。」とした教員は2名(教員C・教員D)

  で、部活動との違いが明確でないところがある。これは、実際に部活動に位置づけて学校家庭ク

  ラブ連盟に加入し活動している高校があるからだと考えられる。「学習指導要領に挙げられ行わな

  けれぱならない。」と3名(教員B・C・E)が答えているが、うち2名(教員B・C)は学校家

 庭クラブ連盟に加入していないし、活動もしていない。「家庭科を特色とする学校で行われる活動。」

  (教員D)「家庭科を学習している生徒全員が加入しなければならない。」(教員E)と認識してい

  る教員がそれぞれ1名いた。

  学校家庭クラブ連盟に加入していないし、活動もしていない教員3名(教員A・B・C)は、

  いずれも普通科高校のみの経験者で、うち1名は「学習指導要領に挙げられ行わなければならな

 い。」とも認識しておらず、学校家庭クラブ活動を行わない理由としても、よく分からない・学校

  の特色として必要ない・費用が出ない・勤務時間以外の活動は無理・経験がない・研修の機会も

  なく、指導する内容や方法が分からない、と6項目を挙げている。学校家庭クラブ活動に対する

 認識不足を感じる。また、この教員は学校家庭クラブ活動として取り組むことができると思うも

  のも、1つも選んでいない。「進学率の高い学校で現在のところ、活動は難しい」.と考えている。

  学校家庭クラブ活動を行っている教員2名(教員D・E)は、地域での活動を行うことにより

 生徒が成長し、教員共々得るものが大きいとし、「これからも学校家庭クラブ活動を行っていきた

 い。」と答えている。うち1名(教員D)は、研究発表や事務局が回ってくると困ることを理由に、

 学校家庭クラブ連盟には加入していない。この2名は、家庭に関する専門学科経験者もしくは自

 分が高校時代に家庭クラブ活動を経験した人である。

  学校家庭クラブ活動を行っていない普通科勤務の教員3名は、これからも学校家庭クラブ活動

  は「行いたくない」が1名、「どちらでもない。」が2名であった。行いたくない理由として、教

 育効果を上げる見通しが立たない。指導者養成講座もレベルが低く普通高校が入っても得るもの

 が少ない。と答えている。

  学校家庭クラブ活動として取り組むことができる項目をあげ、できると思うものを選んで答え

  てもらったが、学校家庭クラブ活動を行っていない普通科の教員Aは何も選ばなかったが、活動

  を行っている総合学科の教員Eは1O項目全て選んでいた。普通科の教員2名(教員B・C)も「地

 域の子育て支援を理解し、ボランティアとして参加する。」ことは可能だと答えている。これは、

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普通科でふれあい育児体験を実施している学校があり、意識が高いと考えられる。普通科の教員

Cはボランティア活動に繋がる7項目を取り組むことができるとしている。この学校は、総務部

が窓口となり、地域のボランティア活動に取り組んでいるので、「今後、この活動を家庭クラブ活

動と位置づけていくのがよいのか分からない。」と答えている。

 教員Dは、前任校での経験をもとに、積極的に地域の商品開発を試みているが、管理職からの

理解を得ることができず活動しにくい状況で、研修の機会を望んでいる。

 以上の結果より、家庭科教員としての10年間の経験者から次のことが分かった。

 ① 学校家庭クラブ活動の経験があるかないかで、学校家庭クラブ活動に対する認識や意識が

大きく異

   なっている。

 ② 普通科での経験しかない教員は、学校家庭クラブ連盟に加入し、活動する意義や方法が分

   かっていない。

 ③ 学校の特色やボランティア活動の中にどう位置づけるべきか難しい。

 ④学校家庭クラブ活動は、レベルの低い専門高校が行っているという認識がある。

 ⑤ 意欲的に活動を進めようとしても、管理職や職員からの理解を得ることができない。

 ⑥ 研修の機会がない。

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  図

  一

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  嚇  薄  洲  瀞  、  Nl  、  諦べ 騨  石  囲  叫  び   ㍉

   ∵

  、   一

   7  謝   塒

  誼  輩

           r学校家庭クラブ活動」についてΦアンケート、

当てはまる項目をOで画んでください.        学校名:県立     高篠学校

                           民 名:

1学校家庭クラブに開ける説明として正しいと思うものにOをっけてください・(複数可)・

部芋吝寛5とは違う.・

家庭料教育に位置づけちれている。・

学習指導長領に挙げちれていて行わなければなちない.・

家庭科を~色とする学校で行われる活動パ

カしλするためには、1役i,900円心筐.。

家庭科を学習している生徒全■が家庭クラフ違■に加入しなけ湖なちない.・

家庭クラブに加入していま寸か..

①加入し活動しているパ

② カ0入していないが、活動はしている..

③ 加入していないし、活動もしていない。・

掌後家庭クラブ滑動を行わない録由として当てはまるものを選んでください(複数百)・

Φ

Φ

学校藪庭クラブ活動について、よく分力・らないパ

学校⑳絢色として必長ない。・

家庭科教師が’人しかいないため終重であるパ

舳泌い.・

家庭クラブカ日量やボランティア保険などΦ電用が出ない.・

バックアップしてくれる人がいないパ

研寛繁豪や書務局が回。てくると因る..

:1=Bや放線後Φ統務咄間外Φ活動は業種.・

自分目鼻、糧隣がないぺ

学校家庭クラブ活動を行う意最が分かちない。.

研修の機会もなく、指導する内容やカ減5高分かち机・ぺ・

螂とのi0機カ高とり}=くく、詞8■Oを広{ヅることカ…できな、、.・

4

5

6

掌佼察届クラブ活動を行っていきたいですか..

⑪行うていきたいパ

②行いたくない.・

③ どちらでもない.・

〈その刃由…  >・

家庭クラブ活動として取り組むことができると思うものを選んでください  (複数司).

⑪ 短続投業の午後や裏期休業中に作業所や保資目、老人ホームなどΦボランティアに参カ。する。

②障警告授産抱負や小沢模作業所の実態を知り、自分たちにできることを行うパ

⑧ 榊易11支援学校やNPOに参カ。し活動を広めていく.・

④ 地域の判産品Φ蘭晶化やアイディア料理を行う.。

⑤ 保慣所・老人ホームなどΦ行書に参加し、主体的な活動を深めていく.・

⑤ 手ともの過びを提案し、施般蛎聞や文化竸で交流を行う..

⑦地域の手石て支援を螂し、ボランティアとして参加する。

⑭ 輔手で1町に出て、住環境を考える。・

⑨ 手作りの作品を製作し、バサ’やボランティアに活用サる..

⑩ 交通安全過一間に参カ肘る..

学校徴庭クラブ活動には、どのよう松教霊的意裏があると思いますカ・.・

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学校家庭クラブ活動の提案。

兵庫県立 高等学校。

く地域環境>

D ・

く校内環境>。

E ‘

u uく活動できること>.

D ’

く身につけさせたいこと>…

E’ f

家庭クラブ活軌

@ の提案ぺ

・  ・  ・   …             一   ・   ・  一   ・   ・  一   …             一   ・   ・   ・   ・   ・  ・   ・   ・  ・   ・   ・   ・   …             一   一   ・  ・   ・   …             .   ・   ・  ・   ・  ・   ・  ・   ・  …             .  .   ・  ・   .   ・  .   .   .   …             .   …

@                                            ・

図1-3 学校家庭クラブ活動の提案用ワークシート用紙

8

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表1-2-1 学校家庭クラブ活動についてのアンケート結果

A教員(普通科)   B教員(普通科)  C教員(普遜科)  D教員(普通科)  E教員(総合学科)

1・一学校家庭クラブ活動と惇

・家庭科教育に位置づ ・家庭科教育に位置づ ・家庭科教育に位置づ ・家庭科教育に位置づ ・家庭科教育に位置づ

けられている。 けられている。 けられている。 けられている。 けられている。

・学習指導要領に挙げ ・学習指導要領に挙げ ・家庭科を特色とする ・学習指導要領に挙げ

られ行わなければな られ行わなければな 学校で行われる。 られ行わなければな

らない。 らない。 ・部活動とは違う。 らない。

・部活動とは違う。 ・家庭科を学習してい

る生徒全員加入しな

ければならない。

珍.1学校象麟多ラブ遵醐動脈レ即時常禅。。

カ口入していないし 加入していないし 加入していないし 加入していないが 加入し

活動もしていない。 活動もしていない。 活動もしていない。 活動はしている。 活動している。

畠 学校奉麟クラブ溝藪を荷わ勧ミ麹菌

・よく分からない。 ・よく分からない。 ・経験がない。 ・研究発表や事務局が

・学校の特色として必 ・意義が分からない。 回ってくると困る。

vない。 ・地域との連携がとり

・費用が出ない。 にくい。

・勤務時聞外の活動は

無理。

・経験がない。

・研修の機会もなく分

からない。

」壁一学校家庭クラブ藩動を行づぞいき勉、芯歩槻。一三

どちらでもない 行いたくない どちらでもない 行っていきたい 行っていきたい一  ・  ・  一  ’  一  一  一  一  ・  一  一  一  ■  一  .  .  .  ■  ’  ’  ’  .  .  一 ■  一  ・  ■  ・  ’  一  .  ■  .  ■  ■  一  .  ’  一  .  ’  .  .  ’  ’  一  一  ・ 一  一  一  ・  ・  一  一  一  一  .  一  .  .  一  一  ’  ’  ・  I  ’  .  一  ・  ‘  ’ 一  一  一  一  I  一  ■  一  ■  一  一  一  ■  I  ■  ■  ■  ’  ・  ‘  .  ・  一  ・ 一  一  一  ■  ・  ・  ■  一  ・  一  一  一  一  ■  ’  一  一  ■  ’  一  ■  ■  I  .  I

進学率が高く塾や学 教育効果を上げる見 家庭科とは関係なく 地域と関わることで 生徒も教員も得るも

習におわれている。 通しが立たない。 地域と関わりをもっ 生徒は成長している のが大きい。

・指導者養成講座もレ ている。今後家庭クラ と感じるから。 近年、規模内容等が大

ベルが低く普通科高 ブと位置づけていく きくなりすぎてやり

校が入っても得るも のがよいのか分かり づらい。

のが少ない。 ません。

9

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なし

表1-2-2 学校家庭クラブ活動についてのアンケート結果

5.・学校家庭クラブとし芯醸り艦むこと鹸できるもの。’

④ ③⑤⑦⑨⑩    ④⑤ ①③④⑥⑥⑦⑧⑨⑩

短縮授業の午後や長期休業中に作業所や保育園、老人ホームのボランティアに参加する。

障害者授産施設や小規模作業所の実態を知り、自分たちにできることを行う。

特別支援学校やNP0に参加し活動を広めていく。

地域の特産品の商品化やアイディア料理を行う。

保育所・老人ホームなどの行事に参加し、主体的な活動を深めていく。

子どもの遊びを提案し、施設訪間や文化祭で交流を行う。

地域の子育て支援を理解し、ボランティアとして参加する。

車椅子で町に出て、住環境を考える。

手作りの作品を製作し、バザーやボランティアに活用する。

交通安全週間に参加する。

 ・活動についてよく分からないので、勝手なイメージですが、生徒自体が主体的に発想した

  り発表したり製作したりできる能力が身につく。

 ・部活動と同様に取り組み次第であると思う。(しかし、現実にはそこまで持っていくのに相

  当のパワーが必要。ならば部活やHR、学年に力を入れた方がいいと思う。)

 ・「やらされ感」でなく「やった感」→「充実感」がもてるはず。

 ・生徒が達成感や自己肯定感を感じる機会になる。

 ・主体的に考え行動する力が身につく。

 ・学校外で評価を得ることが生徒の自信につながる。

 ・キャリア教育にもなっている。

 ・生きていく上で大切な、体験からしか得られないものを得られる。(勤労・感謝・愛情・奉仕)

10

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2・2兵庫県家庭科教員への意識調査

 10年経験者の意識調査からうかがえるように、学校家庭クラブ活動に対する認識・関心は、

教員に大きな違いがあるため、感覚的な意識調査をおこなった。教員の自己判断で、学校家庭

クラブ活動をどの程度理解しているのか、また実践する意欲はどの程度なのかを図1-4の表に

シールを貼ってもらい調査を行った。

活動への意欲・関心

学校家庭クラブを十

分理解している活動

への意欲も高い。

学校家庭クラブ

を知らないし、活

動意欲関心もな

一一一 秩E一一r.‘一■一一一 ・一. P’一・・‘I・…   一・・‘

図1-4 学校家庭クラブ活動に対する意識調査

調査の方法は、以下の通りである。

 実施日:2014年2月 7目(火)

 対象者:平成23年度兵庫県高等学校教育研究会家庭部会後期研修会並びに講演会 参加教員

 場  所:神戸市総合教育センター

 実施方法:昼食時、会場入り口付近で、シールを手渡し貼ってもらう。

       なお、シールの色(濃淡)に意味はない。

 目  的:家庭クラブ推進委員会として、家庭科の先生方の学校家庭クラブ活動に対する理解

      や意識を把握するため。

11

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.一一

                                            .1

                                            ・l

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し一‘…

図1-5 「学校家庭クラブ活動」意識調査

結果、88名から回答を得ることができた。(図1-5)

 学校家庭クラブ活動に対する理解度と意欲に関して、全体的に、理解している教員ほど活動

意欲も高く、学校家庭クラブ活動の意義や教育的効果を理解していると考えられる。

 問題点として、グラフ中のAは、学校家庭クラブ活動に関して、ほとんど理解もなく意欲も

感じていない層である。学校家庭クラブ活動に関して理解しないで家庭科の指導を行っている。

また、Bは学校家庭クラブ活動について、だいたいは理解しているが、活動意欲を感じること

ができない層である。しかし今回は各教員の主観に基づいた調査であるため、学校家庭クラブ

活動について、どのように理解しているのかは疑問である。

12

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3.見えてきた課題

  学校家庭クラブ連盟加入状況、10年経験者研修でのアンケート調査および兵庫県家庭科教員88

名の意識調査から、以下の課題が見えてきた。

1) 庭科教去の充実のために発足した学校 庭クラブ連盟であるが、そのあり方が問題である

   加入率100%の県もあるが、全く加入していない県があることは、家庭科教育に位置づけられ

  全国組織として活性化させていくことは困難である。また年々加入率が低下していることから、

  家庭科教育のあり方として、足並みを揃えた取り組みができるように、学校家庭クラブ活動と学

  検家庭クラブ連盟についての共通理解を図る必要がある。

2)家庭科教育における学校庭クラブ活動の意義や目的を明確にしなければならない

   家庭科教員10年の経験者であっても、学校家庭クラブ活動について十分な理解ができていな

  い。また、兵庫県家庭科教員意識調査においても、自ら学校家庭クラブ活動についてほとんど理

  解していないとする層が多く、研修の機会が必要である。

3)学校 庭クラブ活動を実践していくための具体的な方法についての研修が必要である。

   各学校の特色ある取り組みや総合的な学習、生徒会活動やインターアクトの活動やボランティ

  ア活動など、さまざまな組織と連携し、学校家庭クラブ活動を位置づける必要がある。また、地

  域性を考え、家庭科教育にどのように位置づけて行っていくべきかを検討し、実践のための方法

  を考えなければならない。

4)普通科「庭基礎」2単立で、学校庭クラブ活動を実施するための研修が必要である。

兵庫県の学校家庭クラブ連盟加入状況では、普通科での加入はほとんどないため、普通科で最

も履修の多い「家庭基礎」2単位での学校家庭クラブ活動の実施方法を研修する必要がある。

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第2車学校家庭クラブ活動とは

 学校家庭クラブ活動の理解を図るために、学習指導要領解説や教科書から、学校家庭クラブ活動のあ

り方を整理し、家庭科教育における位置づけとその意義をその歴史的変遷から探ることとする。

1 学習指導幕領解説における学校家庭クラブ活動の条件

  「共通教科としての家庭科においては、生徒の多様な能力・適正、興味・関心等に応じて選択して

履修させることを重視し、「家庭基礎」(2単位)、「家庭総合」(4単位)及び「生活デザイン」(4単位)

の3科目を設けた。これらの3科目のうちいずれか1科目を必履修科目として履修することとしてい

る」。(文部科学省.2009)

 各種研究(野中ら2012;萬羽ら2011;小川ら2010;浅野2012)から、最も履修の多い科目は「家

庭基礎」であることが明らかになっている。「家庭基礎」における内容は、「人の一生と家族・家庭及

び福祉」「生活の自立及び消費と環境」「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」の3つの項目か

ら構成され、社会と.自分の関連を考えながら、地域や社会へと視点を広げ、それぞれの生き方を考え

 させる。

  高校家庭科では、社会と自分との関連を考えさせ、地域社会へと社会的な視点を広げ考える点から、

学校家庭クラブ活動へと発展させる必要がある。教科書の内容や教室だけの授業に留まらず、学校や

地域の実態に応じて、学校家庭クラブ活動を行い、乳幼児や高齢者との触れ合いや交流などの実践的

な活動を取り入れるよう努めなければならない。そして「人の一生と家族・家庭及び福祉」の内容を

より具体的に実践的に考えることができる。また、「生活の自立及び消費と環境」の内容を深く理解す

 ることができる。

  しかし、学校家庭クラブ活動のとらえ方はさまざまであり、認識の違いから活動方法も教員によっ

て異なる。そこでまず、学習指導要領解説から学校家庭クラブ活動のあり方の定義づけを行う。

  学校家庭クラブ活動の条件を、高等学校学習指導要領解説(文部科学省.2009)から図2-1のよう

にまとめた。

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1.

2.

3.

4.

ホームルーム単位又は家庭科の講座単位、さらに学校としてまとまって行う。

学校や地域の生活の中から課題を見いだし、課題解決を目指す。

課題解決を目指して、グループで主体的に計画を立てて実践する。

問題解決的な学習活動であること。

①ホームプロジェクトを発展させ、学校生活や地域の生活を充実向上させる意義を十分

 理解させること。

②家庭科の授業の一環として、計画、立案、参加させること。

③ホームルーム活動、生徒会活動、学校行事、「総合的な学習の時間」など学校全体の教

 育活動との連携を図るようにすること。

④ボランティア活動については、地域の社会福祉協議会などとの連携を図るように工夫

 すること。

特に、「家庭基礎」においては、単位数が少ないので効果的な指導を図るように工夫する。

1.生活を科学的に探究する方法や問題解決の能力を身に付ける。

2.内容の(1)及ぴ(2)の学習で習得した知識と技術を学校生活や地域生活の場に生かすことができる。

3.ボランティア活動などの社会参画や勤労への意欲を高めることができる。

図2-1学習指導要領における学校家庭クラブ活動の要件

 以上の内容から、学習指導要領にみられる“学校家庭クラブ活動のあり方”として、以下のことが考

えられる。

1) r 庭窄の投 の一 として庭の’担当が指’し「さらに出としてまとまって実

  しなければならない

 「学校家庭クラブ活動は、ホームルーム単位又は家庭科の講座単位、さらに学校としてまとまって」

 とあり、原則として、家庭科の授業内で指導するべきものである。時間講師であっても、授業担当と

 して指導はできる。ただし、「学校としてまとまって」放課後等の活動は、他の教科が補習を実施する

場合に準じ、家庭科教諭が実施することができる。従って、学校から地域へと活動範囲が広がる学校

家庭クラブ活動を活発に行うことにより、各校最低1名の家庭科教員を配置し、家庭科教育の充実を

図ることができる。学校の特色や地域との連携などから、家庭クラブ活動のあり方を検討し計画的に

指導する必要がある。各学校に1つは、学校家庭クラブ活動の取り組みを行っていなければならない

 と考えられる。

2)「ホームプロジェクトを発展させ学生活や地の生を  向上させる意を ∠理 させる

ニムLとあるため、まず、ホームプロジェクトを実施し、そこからグループで主体的に学校家庭ク

15

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  ラブ活動へと発展させ、地域の生活を充実向上させる意義を理解させなければならない。しかし、

  ホームプロジェクトは家庭生活上の問題解決であり、それを家庭クラブ活動として、地域の課題解

 決に発展させるには無理がある。ホ]ムプロジェクトと連携させながら、学校や地域の生活の中か

  ら課題を見いだし、グループで取り組むことができるように見据えた指導が必要である。ここでの

  「ホームプロジェクトを発展させ」は、ホームプロジェクトで実践した各家庭での課題解決能力を

 発展させると、拡大解釈でもよいか、もう少し説明が必要である。

   「学校生活や地域の生活の充実向上させる意義を十分理解させること」の指導内容や指導方法な

  どの具体的な説明が必要だと考える。

3) 庭科で習得した知識と技術を学校生活や地域生活の場に生かさなければならない。

   家庭基礎2単位になり、時間不足から技術の習得が困難で、地域社会活動に生かしながら技術の

  習得を図ることも必要である。

4) 「生活を科学的に探究する方法や問題角決の能力を身に付けさせる。」とあるが、今回の改訂により

 加わった丁生活を科学的に探究する方法」の具体的指導内容を研修しなければならない。

5) 「学校全体の教育活動との連携を図るようにすること。」とあるため、学校の教育活動や特色づくり

  に位置づけ、実施方法を工夫しなければならない。まず職員への学校家庭クラブ活動の理解を図る

  ことが必要がある。

6) 「ボランティア活動については、地域の社会福祉協議会などとの連 を図るように工夫すること。」

  と明記されており、具体的に社会福祉協議会との連携の内容や方法について検討していく必要があ

  る。

7) 「家庭基礎 (2単立)においては 「効果的な 導を図るように工夫する」とあり、効果的な指導

についての研修を行う必要がある。

 学校家庭クラブ活動は、問題解決能力や実践的な態度の育成を図るため、教室内の授業時間だけで

行う教科指導とは異なり、地域に広げた活動内容を工夫し、実践しなければならない。目的や工夫す

るべき点についての記載はされているが、実践するためには各学校の実情に応じてさまざまな課題を

解決しなければ実施できないのが現状である。また、「問題解決能力や実践的な態度の育成」のための

地域活動を、どのように指導するべきか、その実践方法に関しても研修が必要である。

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2 教科■r家産稟確』における学校衰庭クラブ活動の取扱い

  平成25年度用教科書でのホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動についての取り扱いについて

分析を行った。(表2-1)

 学習指導要領には、家庭基礎2単位では、「効果的な指導を図るように工夫しなければならない。」

 とあるが、6社10種類の教科書を分析したところ、ホームプロジェクトに関しては、具体的例をあ

げるなどの工夫がみられる教科書もあるが、学校家庭クラブ活動に関しては、ほとんどがわずか数

行だけの説明で、しかも東京書籍以外は、すべて巻末ぺ一ジに掲載されている。

 東京書籍は目次に続いて、4・5ぺ一ジにホームプロジェクトの説明を図式化し記載されている。

学校家庭クラブに関しては、約1/6ぺ一ジの説明である。次の6・7ぺ一ジの見開きには、第30

回全国高校生ホームブロジェクトコンクール最優秀賞作品を掲載している。また、第1章自分らし

い人生をつくる 第2章子どもと共に育つ 第3章馬齢社会を生きる 第5章食生活をつくる 第

 6章衣生活をつくる 第7章住生活をつくる 第8章経済生活を営む の各章の最終ぺ一ジにホー

ムプロジェクトテーマが探せるチャート式が載っている。

 教育図書は、最終2ぺ一ジに学んだことを実生活に生かす~ホームプロジェクトと学校家庭クラ

ブ~を載せ、続いて見開き2ぺ一ジにホームプロジェクト、続いて学校家庭クラブ活動の例を掲載

 している。各章の最後には、課題研究1ぺ一ジある。

 実教は、最終ぺ一ジにホームプロジェクトと学校家庭クラブの説明があり、続いて見開き2ぺ一

ジにホームプロジェクト側が掲載されている。

 開隆堂は、最終ぺ一ジに、「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」として見開き2ぺ一ジ説

明しているが、学校家庭クラブ活動の説明は7行である。続いてホームプロジェクト例rより快適

に過ごすために~光熱費から見えたこと~」2ぺ一ジ、「いま、なんじ?~フェルトおもちゃを通し

て幼児と遊び、学ぶ~」2ぺ一ジ掲載されている。

 いずれの教科書も、学校家庭クラブ活動に関しての説明や事例は少なく、その目的や興味関心や

意欲をもつような内容の工夫はなかった。

 第1章家庭科教員の意識調査の結果で、‘‘家庭クラフ活動を知らない”としている教員にとって、

巻末ぺ一ジにしか記載のない学校家庭クラブ活動に関して、授業で触れることもなく家庭科を指導

している場合も考えられる。現在の教科書では学校家庭クラフ活動の意義や活動方法も理解できず、

まして効果的な指導を図る参考にはならないのが現状である。

 さらに、教育図書の家庭科の教科書の変遷を調べた。(表2-2)昭和62年から平成5年までの教

科書では、教科書最初のぺ一ジに、「家庭一般」では、何をどのように学ぶか?が2ぺ一ジあり、続

いて家庭科の学習に必要なホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動として、2ぺ一ジの説明が掲

載されている。学校家庭クラブについては、事例もなくやや分かりにくいが、当時、この教科書を

使用していた教員は、家庭科の学習に学校家庭クラブ活動は位置づけられ、理解できていたと考え

られる。ホームプロジェクトに関しては、単元ごとの具体例が示され、実践しやすくなっているが、

学校家庭クラブ活動に関しては、説明も少なく家庭科にどのように位置づけ活動していくべきか、

理解できない。具体的な活動内容や方法など詳しく触れることなく現在に至っていると考えられる。

17

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表2-1 教科書r家庭基礎」の分析

教 科 書 掲載ぺ一ジ 備 考

家基301 2東書 家庭基礎 4-5 各単元の最後にホームプロジェク

自立・共生・創造 28・52・64・114・ トテーマが探せるチャート式1ぺ

140・158・180 一ジ(第4章共に生き共に支える

以外)

家基302 8教団 家庭基礎 216-221 亘PとFHJの説明2ぺ一ジ

ともに生きる明目をつくる 24・52・66・78・ HP例2ぺ一ジ・FHJ例2ぺ一ジ

126・154・178・ 課題研究 各章の後 9ぺ一ジ

200・213

家基303 8教団 最新家庭基礎 184-189 HPとFHJの説明2ぺ一ジ

生活を科学する HP側2ぺ一ジ・FHJ側2ぺ一ジ

課題研究60・ 第1章人の一生と家族・福祉

148 第2章生活の自立のために

家基304 7実教 家庭基礎 190-193 実践活動としてホームプロジェク

パ』トナーシップでつくる未来 トと学校家庭クラブ活動の説明が

見開き2ぺ一ジあり、続いてホー

ムプロジェクト例2ぺ一ジある。

各編の後7か所に2ぺ一ジWor1dNo亡e が掲載されている。

家基305 7実教 家庭基礎21 187-189 ホームプロジェクトと学校家庭ク

ラブ活動

家基306 7実教 図説家庭基礎 170-173 実践活動(HP・FHJの説明)2

ぺ一ジ

ホームプロジェクトの実践例2ぺ

一ジ

家基307 9開隆堂 家庭基礎 188-193 説明2ぺ一ジ

明目の生活を築く ホームプロジェクト例4ぺ一ジ

家基308 50大修館 家庭基礎 第10章生活をデザインする

豊かな生活をともにつくる 158-159 2よりよい生活をつくろう

HP・FHJ説明188 資料編ホームプロジェクト実践例

家基309 50大修館 未来を拓く 第10章生活をデザインする

高校家庭基礎 2間題を解決してよりよい生活を

つくろう

166-167 1よりよい生活の創造一HP説明

168 ホームプロジェクトの実践例

169 2地域社会での活動一FHJ説明

18

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家基310 183第一 高等学校家庭基礎 166-169 「生活の課題にチャレンジしよ

ともに生きる・未来をつくる う」の申で「ホームプiコジェクト」

と「学校家庭クラブ活動」の説明

あり。続いて実践例として「祖父

母の長生きのための提案」とそれ

それ実践テーマ例2ぺ一ジある。

表2-2 教育図書の学校家庭クラブ活動記載の変遷

検定年 タイトル 導入 ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動

新 187 ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動の説明

家庭基礎 188

家庭科を学ぼホームプロジェクト側:それは本当にこみ?

平成ともに生き 2 189 ~小さなことからごみ意識改革!!~

18年 う

るくらしを

つくる

家庭基礎 2 ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動の説明

出会 W生活をつくる 1自分の生活をデザインする平成 高校生のみな

う・かかわ 2 2家庭科の学習をひろげる18年 さんへ

る・行動す 182 3地域コミュニティの一員として

る ~185 ・・ ニ庭科の学びを生かして

家庭基礎 170 ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動の説明

平成 気づく・追 高校生のみな 171 継続する学習実践例:水と油と環境1

14年 水する・行 さんへ 173 ホームプロジェクト:わが家の排水クリーン作戦

動ずる 174 学校家庭クラブ:油の有効利用

総合 家 ホームプロジェクト201

庭一般 1 生活の主人公はあなた自身202

平成 見つめ 高校生のみな 実践例1:おじいちゃん,長生きしてね1 203

10年 る,考え さんへ 実践例2:わが家のリサイクルと亨ミの減量

る,行動す 学校家庭クラブ活動204

る 実践例:地域とともに歩むボランティア活動

「家庭一般」と 55 例:私の生活設計(夢の実現を)

は,何をどのよ 王10 例:食事のパターン別による献立とその栄養診断

平成 うに学ぶのか 玉44 例:暖かい室内着の製作家庭一般 4

5年 ホームプロジ 172 例:ゴミについて考える一私たちの暮らしリサイクル

エクトと学校 202 例:虫歯のない弟に!

家庭クラブ

19

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r家庭一般」 第五章家庭生活:41

とは,何をと 「一日主婦」をとおして、家事の分担を考える

平成 最新のように学ぶ 第2章食生活:高校生のやせたい願いと食生活

994 か…

2年 家庭一般第3章住生活:太陽熱温水器によるわが家の省エネルギー対策

117ホームプiコシ 第4章衣生活:リフォームを楽しむ

169エクトと学校 第5章保育:たのしくお手伝い一エプロンとミトン型ふきん一

197家庭クラブ

r家庭一般」 35 第1章家庭生活:

とは,何をと 「一日主婦」をとおして、家事の分担を考える

のように学ぶ 91

昭和 新第2章食生活:高血圧の父の食事を考える

4 か… 109

6年 家庭一般第3章住生活:太陽熱温水器によるわが家の省エネルギー対策

ホームプロジ 第4章衣生活:リフォームを楽しむ

エクトと学校 161 第6章保育:めいへのプレゼントに絵本rいってまいります」

家庭クラブ 189 をつくる

40 家庭と家族:r家族とのコミュニケーションを求めて」

「家庭一般」 129 食生活の設計・調理:rひとり暮らしの食事作り」

を学習する前 194 衣生活の設計・被服製作:rリフォームによる母のエプロン製

昭和 新版 に 221 作」

5

63年 家庭一般 ホームプロジ 264 住生活の設計・住居の管理:r子ども室に手づくりのカーテン

エクト・学校 を」

家庭クラブ 母性の健康・乳幼児の保育:rめいの健やかな成長を願って」

家庭生活の経営

第1章家族と家庭経営

第五節 家族と家庭生活

第2節 家庭生活の経営

第3節 家庭生活の充実向上

昭和 新訂版1 改善を要する問題

】一

はじめに 22

53年 家庭一般2 ホームプロジェクトおよび学校

~25 家庭クラブの意義と方法

55 家族による家庭の仕事の分担一共働きの母への協力

142 望ましいべんとうつくり

210 被服のしまい方の工夫

234 住生活に関するホームプロジェクトの題材

285 乳幼児に関するホームプロジェクトの題材

20

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3.高校家庭科と学校家庭クラブ活動の歴史的変遷

 学習指導要領「家庭基礎」において、今回の改訂では3つの柱の1つとしてあげられているホ』ム

プロジェクトと学校家庭クラブ活動が、家庭科教育において、どのように位置づけられ誕生したのか、

歴史的背景を探り、その内容や目標を明らかにする。

 家庭科教育におけるホームプロジェクト・学校家庭クラブ活動のあゆみを青木(昭和47年)から以

下にまとめた。

 昭和24年教育制度の実施により、家庭科教育は、民主主義を育てるために、人間形成の基盤となる

家庭生活の民主化を図るため、家族関係の指導が強化された。また、女性が積極的な態度で、家庭生

活の改善向上に取り組み、生活文化を高めていくことができる実践カを育てることを目標に技能教育

が重視され、HPとFHJにより実践カ牽高める指導も重視された。当時の教科課程は、C.I』.(民間

情報教育局)家庭科担当官であったニューヨーク市立ハンターカレッジ家政学部長ルイス教授

(Mrs.Dora S.Lewis)とその後任として来日されたアメリカコロラド州立大学名誉教授ウィリアム

ソン博士(Miss Mauae Wi』止a鵬。n)の指導によるところが大きかった。今日の家庭科教育への新し

い方向づけを示された始まりから家庭科に “HP’’や ‘‘FHJ’’が実施されていた。

 昭和26年教科課程(カリキュラム)編成では、家庭科は自由選択教科であったが、家庭科は、人間

生活に直接関係が深く、また、最も重要な家庭生活を対象とする学習であるから、1~2年生におい

ては、一般教養として事実上すべての女生徒に履修されていた。『一般家庭』は1~2学年7単位ずつ

であるが、そのうち5単位が学校の授業時数、2単位は家庭学習によるホームプロジェクトとして実

施し、『一般家庭』を履修するものは、必ず亘Pを2単位とらなければならなかった。しかし、高校生

の大学への進学率が増え、男女平等観が次第に家庭科教育軽視の風潮となり、家庭科目を履修する生

徒が減少し始めた。

 昭和28年に全国高等学校家庭クラブ連盟が結成され、昭和31年には「全目制普通課程のすべての

女子に『家庭一般』4単位を履修させることが望ましい。」とされ、昭和合8年には、『家庭一般』4単

位は女子必修となった。しかし、大学入試のための知育偏重教育への傾向はいっそう強まり、HPや

FHJを運営することはまずます困難となり、家庭科教育における実践学習の場は狭められる一方とな

った。

 昭和48年以降の高等学校学習指導要領では、個々の家庭生活の充実向上を図るばかりでなく、「進

んで地域の家庭生活の改善を図る能力と態度を養う」と示されている。これは、HPの実践や醐Jを

通して、各自の家庭生活から地域の家庭生活の向上を図る積極的な実践力を育てることをねらいとし

ている。

 また、FHJの目的は、「高校家庭科とHP・F田」(青木.昭和47年)には、以下のように記載され

ていた。

  ① 家庭科教育の究極のねらいである家庭生活の充実向上を図る実践力を身につけ、生きた体験

    による自信と誇りをもつ。

  ② 地域社会の家庭生活の改善向上を図ることにより、地域社会を理解し、広く社会に貢献する

    ことの喜びと責任を感得する。

  ③ 協力・協同の精神を養い、会員相互の友情を深めるとともに、広く社会の1買としての社交

2王

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  性を身につける。

④ 勤労の精神を養い、豊かな愛情と美しい奉仕の心を育て、人間性の向上を図る。

 つまり、家庭科教育は、家庭生活の改善向上に取り組み、生活文化を高めていくことができる実践

カを育てることを目標に始まった。そして実践的な態度を養うための方法として、学校家庭クラブ活

動(FHJ)が取り入れられたのである。

 その後、平成元年の学習指導要領では、家庭科の目標を「家庭生活及び関連する職業に必要な能力

と主体的、実践的な態度を育てる。」とし、男女必修となった。平成11年の学習指導要領では、「男女

が協力して家庭や地域の生活を創造する能力と実践的な態度を育てる。」となった。社会や生活環境の

変化に対応して、「男女が協力して」が加わり、「家庭生活及び関連する職業に必要な能力」が「生活

を創造する能力」となり、実践的な態度を育てることとなった。そして、平成22年の学習指導要領で

は、「男女が協力して主体的に家庭や地域の生活を創造する能力と実践的な態度を育てる。」と「主体

的」と強調されている。

 実践的態度の育成という“目標’’に変化はないが、社会の変化やそれに伴う家庭生活の変化のなか

で、つまり、生活の充実向上を図る実践的な態度の“内容’’は常に変化している。家庭経営者として

生活の質を高めるための知識や技術の習得から次第に、家庭や地域の生活の改善向上を行う実践的な

態度が要求され、大量生産・大量消費の社会では消費者教育として安全性を考えた賢い消費者、男女

共修に向けて、男女で築く新しい家庭へと変わっていった。

 学校家庭クラブ活動のあり方も、昔から変わらない家庭科教育の目標である‘‘実践的な態度を育て

る”不易の部分と社会の変化に対応した生活の向上を目指した活動に取り組むべきものである。

*1HP:Home Pmjectホームプロジェクト

*2FHJ:Future Homemakers of Japan 学校家庭クラブ活動

4 学校家庭クラブ活動の意義と要件

  家庭科教育は、家庭生活の改善向上に取り組み、生活文化を高めていくことができる実践力を育て

 ることを目標に始まった。そして、平成22年改訂高等学校学習指導要領においても、「教科・家庭」

の目標は「人間の生涯にわたる発達と生活の営みを総合的にとらえ、家族・家庭の意義、家族・家族

 と社会とのかかわりについて理解させるとともに、生活に必要な知識と技術を習得させ、男女が協力

 して主体的に家庭や地域の生活を創造する能力と実践的な態度を育てる。」とし、実践的な態度を養う

ための方法として、学校家庭クラブ活動が位置づけてある。時代の推移などによる指導内容の改訂は

行われても、ホームプロジェクトや学校家庭クラブ活動による指導は、当然存続されるべきものであ

 る。

  換言すれば、教科目標を達成するためには、学校家庭クラブ活動が必要である。家庭科は語学や読

解力、知識理解を図る教科と比べて、総合的で実習を伴い、いくら知識や技術があっても実践しなけ

れば意味がない教科である。各学科に共通する教科「家庭」の中で最も単位数の少ない「家庭基礎」

においても、学校家庭クラブ活動を通して実践的な学習を行い、地域を知ることでより深く自分の生

活や生き方を考えていくことができる。机上の空論で終わらない、実践的体験的な学習から考え学ん

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 でいくことが大切な教科である。学校家庭クラブ活動を通して、生活上の課題を設定し、解決方法を

 考え、計画を立てて実践していくカを身につけなければならない。ただし“課題’’については、時代

 や社会の推移により変化させなければならない。

以上の学校家庭クラブ活動の意義をふまえ、学校家庭クラブ活動を行う要件として、以下の内容が考え

られる。

 1) 庭科の教育目標を十分に理 し 各学校で実践するための課題解決に取り組む。

   家庭科教員が教科目標と学習指導要領に基づき、その意義を理解し、学校家庭クラブ活動が必

 要であることの認識が必要である。カリキュラムの時間内で教室だけで行うものではないため、

 職員への理解と協力を得なければならない。教科の特性を理解してもらうだけの説得力と課題解

 決能力が家庭科教員として必要である。

2)活動時間を確保する

   授業時間内で指導は行っても、実践活動は授業時間外で行わなければならない。従って、他教

 科が行っている補習と同じ扱いで、曜日や時間を決めて計画的に行うか、長期休業中に実施する

  か、学校行事に合わせて行うかなど、学校の実情に合わせて工夫しなければならない。

   柴(2005年)においても、「家庭科の授業の一部として行われるものであるから、活動の時間が取

 れないなどというのは認識不足も甚だしいことである。」とある。10年前からも、問題であった活

 動時間の確保は、家庭科教員が具体的に実践し、位置づけていかなければならない。

   学校の教育目標や特色、生徒の実態を把握し、社会福祉協議会と連携し、それぞれの地域の特

 性や乳幼児施設や高齢者施設などの福祉施設を把握し、どのような学校家庭クラブ活動に取り組

  むべきか考え実践する。何も行っていないところから、生徒の主体的な活動は生まれない。実践

 カを養うためには、まず家庭科教員が学校家庭クラブ活動を実践するべきである。

4)生合逸」 今後ますます少子高齢化、核家族化、家庭の機能の縮小の変化の申で、地域コミュニティが

重要になってくる。そのような社会の変化に対応し、家庭科で学んだ知識や技術を生かし、学校

家庭クラブ活動として課題解決に取り組むべきである。

*3:平成8年中央教育審議会答申(「21世紀を展望した我年国の教育の在り方について」)は、変

   化の激しい社会を担う子どもたちに必要なカは、基礎・基本を確実に身に付け、いかに社会

   が変化しようと、自ら課題を見つけ自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよ

   く問題を解決する資質や能力、自ら律しつつ、他人とともに強調し、他人を思いやる心や感

   動ずる心などの豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力などの「生きる力」であ

   ると提言した。

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第3章 学校家庭クラブ活動の指導方法と教育効果

 前章において、学校家庭クラブ活動に対しての共通理解を図るため、高等学校学習指導要領や家庭科

教育の変遷からその意義と要件をまとめた。学校家庭クラブ活動とは、実践カを養うことを目的に、課

題解決を図る活動であるが、教科書ではあまり説明もされていない。ここでは、学校家庭クラブ活動の

具体的な指導方法と教育効果を明確にしていきたい。

 本研究では、家庭科教員としての24年間の経験をナラティヴという形式を手がかりに、ライフヒスト

リー分析を行い、社会背景と家庭科教育、その中に位置づけられた学校家庭クラブ活動と自己との構造

化を考えた。

 松平・山崎(1998)は、教員の変化や成長の道筋、すなわちライフヒストリーを、「ライフコーススタデ

ィ」という研究方法によって追跡している。この研究は、出生の時期を同じくする同齢集団(コーホー

ト)を対象として、その集団に属する個々人の生活の歩みを追跡し、教員という職業にある人々のライ

フヒストリーの特質を、このコーホートを追いかけることによって明らかにしようとするものである。

高野ら(2010)も、インタビューから教員のライフヒストリー研究を行っている。一般的にライフヒストリ

ー研究では、インタビューを用いるが、本研究では、筆者自身のライフヒストリーを分析するため、ナ

ラティヴ・データを分析対象とした。

 ナラティヴは通常、「物語」と訳され、「語る」という行為と「語られたもの」という行為の産物の両

方を含意する方法であるとしている。野口(2009)は、ナラティヴ・アプローチはナラティヴという形式を

手がかりにしてなんらかの現実に接近して行く方法であるとしている。小高(2004)倉持ら(2009)伊深

(2012)は、ナラティヴをデータとして捉え、研究している。

 従って、教員として取り組んできた学校家庭クラブ活動を自ら語り、そのナラティヴ・データから「ラ

イフコーススタディ」という方法で追跡し分析を行った。今回、コーホートにふさわしい事例がなかっ

たため、一人分の事例分析となった。

1、家庭に関する専門学科における学校家庭クラブ活動の取リ組み

 家庭に関する専門学科では、各校の専門学科としての特色を生かした学校家庭クラブ活動を行ってい

る。家庭科の専門科目25単位以上履修しており、学習した専門知識や技術を地域産業やボランティア活

動に生かし、地域との連携を図った活動を行っている。

 1-1ナラティヴ・アプローチによるライフヒストリー分析

 筆者の現在の勤務校においても、学校家庭クラブ活動は学科の行事として位置づけられ、学科の活性

化を図り取り組んでいる。その指導内容や方法と教育的効果について、ナラティヴ・アプローチによる

ライフヒストリー分析から、平成元年から平成24年度までの学校家庭クラブ活動の取り組みと指導者と

しての経験を大きく7つの段階に分け、表3-1にまとあた。

表3・1学校家庭クラブ活動および指導者としての取り組み

学校家庭クラブ活動 指導者としての経験

<平成元年>教員主導型g封建的活動:一蔀の役員による活動

兵庫県において家庭に関する学科は、すべて“家政科’’であった。学校家庭 ・前任校では、アンザン

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クラブ活動は、総会に始まり、家庭クラブ週間、交通安全週間、老人ホーム訪

間が主な活動であった。総会では、家庭クラブ顧問が司会進行の原稿を作成し、

礼の仕方や言葉遣いなど細かく指導を行った。家庭クラブ週間では、以前から

“母の目”の“布のカーネーション’’を製作し、母への手紙を書かせた。教員

が材料を準備し授業時間に製作を行った。秋の交通安全週間でもマスコット人

形のストラップを教員が材料を準備し、製作指導を行い配布させた。

 学校家庭クラブ活動は、教科に位置づけられ、教員の指導のもときちんと行

われていた。生徒が主体的に考え任される場面はなく、教員主導型の活動であ

った。教育効果として、言われたことを確実に行う責任感や、実践活動から成

就感や達成感を感じることができた。また手作りの母へのプレゼントや老人ホ

ーム訪間を行い、喜んでもらったり感謝されることで生徒のモチベーションは

上がった。

ブルの着物やテーラー

ドジャケットの縫製技

術を、先輩教員の家に習

いにいった。

・赴任校では情報教育を

特色としているため、コ

ンピュータ操作技術を

習いに行った。

・地場産業幡州織」を

初めて知る。

・マナーを学ぶことがで

きた。

一<平成4年ネ生徒による学校家庭ク」ラブ活動め誕生=役員とその友だちめ3年生が中心の活動

全国高等学校家庭クラブ研究発表大会ホームプロジェクト部門出場。

 ホームプロジェクト「ふるさと播州織」のテーマで、家業が播州織工場をし

ている生徒が、播州織のPR活動に取り組んだ。研究を進めるに従って播州織

の手芸講習会を実施するなど、学校内の活動から初めて地域での活動へと広げ

ていった。そして、少しずつ意欲的に生徒主体の活動へと自発的に変わってい

った。総会の冊子も前年度を参考に自分たちで作成し、秋の交通安全週間では、

教員が行っていた播州織ティッシュケースのチェックを、自分たちで厳しくチ

」エックし、後輩を指導し責任もってやり直しを行うようになった。教員が行っ

ていたことを先輩としての使命感と責任感をもって行い、生徒主体的な取り組

みが始まった。

 全国大会出場の経験が、大きなモチベーションとなった。

・ホームプロジェクト部

門の全国大会出場によ

り、学校家庭クラブ活動

について詳しく知るこ

とができた。

・先輩から後輩への指導

力や影響力の大きさに

気付いた。

・地域への播州織PR活

動を意識した。

〈平成9年〉学校家庭クラブ活動の情報化と生徒の主体的活動一…3一年生の各代表者中心に広がった活動一.

「家政科」から「生活情報科」への学科改編により、LANが整備されデータ

の共有化が可能となった。自由に過去の資料や記録をみて、総会の資料の冊子

やパワーポイントを制作し生徒の主体的な活動がより広がった。情報機器を使

った企画カ・発想カ、インパクトあるプレゼンに挑戦し、先輩から後輩へと活

動が引き継がれ、実践力が育まれた。

 地元のイベントに播州織のPRとして、平成4年から行っている高校生によ

る播州織ファッションショーの依頼が増え、少しずつ生徒が主体的に企画・演

出を行うようになった。

 特色ある学校家庭クラブ活動をホームページにまとめることで自分たちの

活動目的や内容を明確にし、情報発信することで自信となった。

・家庭科教育のあり方や

専門学科の目指すもの

と地域の二一ズを考え

学科改編を行った。

・情報教育を取り入れる

ことで、主体的な活動や

表現方法、伝達能力が

身についた。

<平成1◎年度〉隼徒主導型幡州織プロジェクトj・:全学年が縦割りで活動

全国高等学校家庭クラブ研究発表大会学校家庭クラブ活動部門出場。学校家

庭クラブ活動研究発表幡州織大作戦~地域交流とまちの活性化~」をテーマ

・全国高等学校家庭クラ

ブ研究発表大会や兵庫

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に4つの播州織プロジェクトを立ち上げ3年生主導型の取り組みが始まった。

 学校家庭クラブ組織として定着した総会や施設訪間や交通安全週間などの

活動以外に、家庭科で学んだ知識技術を活かし、地場産業幡州織」を活用し

た地域活動に取り組み、より専門性を高めることができた。

 いろいろな企画に取り組むことにより、多くの生徒がプロジェクトのリーダ

ーとなり、地域の方との話し合いから企画・実践を通して対応能力やコミュニ

ケーション能力・協調性・責任感を体得している。

県家庭科技術検定事務

局、全国高等学校長協会

家庭科講習会開催と大

きな企画や事務処理に

追われながら、教員同士

お互い配慮し協調しな

がら、実践力と対応能力

を学ぶことができた。

<平成.20年>. 幡州織で手作りウエディング”一でマネマジメント能力:全学年で幅広い活動

 文部科学省「因指せスペシャリスト研究指定校」を受け、噺・播州織」の

提案と商品企画~地場産業幡州織」を通した“ものづくり・人づくり”~を

テーマに、より専門性を求めた課題解決に主体的に取り組むことができた。平

成21年度には、手話講習会で知り合った、すでに結婚し1歳の子どもがいる

夫婦の実際の結婚式を企画し、播州織工房飾(旧播州織工場)で行った。素材

やテキスタイルデザインからこだわり、企画し噺・播州織」布地の提案を行

い、ウエディングドレスやカラードレスはもちろん、スタッフのユニホームや

テーブルクロスを製作した。また、高砂席や会場全体の花やぬいぐるみの演出、

デザートバイキング・ウェディングケーキや紹介ビデオや映像の演出もすべて

生徒の手作りで行った。聴覚障害の方が半数近く参加されることもあり、生徒

自ら地域の公民館へ手話を習いに行き、手話通訳や映像のテロップにも配慮し

演出を行った。すべての生徒が企画に携わり、試行錯誤しながらより良いもの

を作ろうと、各自担当している企画に必要な要素を分析し、成功するためにマ

ネージメントを行った。目標が大きく責任のある内容だけにモチベーションも

上がった。また、やり終えたときの達成感、多くの方に喜んでいただき感謝さ

れたことは大きな自信と自己肯定感につながり大きく成長することができた。

主体的に考え、いろいろなことに配慮しながらマネージメント能力の向上を図

ることができた。

・播州織布地を活用した

ファッションショーな

どの取り組みから、播州

織の生産に一歩踏み込

んだ活動を展開するこ

とができた。

・経験したことのない結

婚式の演出を、生徒共に

検討した。教員集団も即

対応した行動力や、それ

ぞれの能力を率揮し、さ

まざまな問題を解決し

てきた。さまざまなピン

チを前向きにとらえ、ア

イディアを出し合い成

功にっなげることがで

きた。

」〈平成22年度> ‘滴晶企画と大量製作’’からキャリア教育へ:3年生が指導し幅広い活動

 平成16年全国大会で発表した「播州織大作戦」の4つプロジニクトは、生

徒の主体的な取り組みが次の学年にも引き継がれ、オリジナルの発想を加えな

がら継続して行われている。また、地域からのユニホームの提案の依頼や播州

織ファッションショーの回数も増え、今まで以上に多くの生徒がリーダーとし

て責任ある活動を行っている。

 市内にある小学校からの依頼で、オーケストラ部130人の播州織ユニホー

ムの製作を行った。大会への出場に合わせて、幡州織が奏でるハーモニー”

を合言葉にデザインの提案や企画を行い、全学年で製作にかかった。実際3年

生の指示で1・2年生が製作を行う過程において、多くの失敗を経験し、企画・

計画・指示の方法や配慮を学ぶことができた。言葉では、簡単そうな単純作業

・デザインや企画は行っ

ても、同じものを大量生

産するのは業者に依頼

するべきだと考えてい

たが、今回初めて取り組

んでみた結果、キャリア

教育に結ひっく能力の

育成を行うことができ

た。

・考えていた以上に、取

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だと思っていたが、大勢で製作にあたる場合、その過程において、指示の出し

方・責任感・協調性・忍耐力・自分の立場など、多くのことを考え、学び、コ

ミュニケーションの大切さも学んだ。失敗したときの対応が大切と教え「ピン

チはチャンス」ととらえ、いかに乗り越えるか、励まし合いながら前向きに取

り組む姿勢も学ぶことができた。教員から細かい指示を出さず、役割分担も自

分たちで行うことで、自分の能力や性格に応じて主体的に取り組み責任を果た

した。

り組んでみて改めてそ

の実践を通して学ぶこ

との大切さを知ること

ができた。

く平成一23年度〉 さまざまな活動から自分自身もプpデュース;普揮科を巻き退んだ活動一

 東北復興支援活動として、県内の家庭に関する専門学科6校と協力し、播州

織の‘‘入園グッズ’’(手さげかばん・座布団・上靴入れ・コップ入れ・お弁当

用巾着)に手紙を添えて1か月後に発送した。

 また、7月には、播州織給食当番服を南三陸町の小学校に約60着製作し、

贈った。その後クリスマスには、200個の手作りのくまのぬいぐるみをプレゼ

ントし、3月には実際に小学校を訪間し、給食当番服の修理や各学年ごとのの

交流会を行った。自分たちで企画し準備から実践までを責任もって協力して行

うことができた。また8月7目には、旧の七夕にちなんで、夕涼み会を計画し

た。子どもたちや仮設住宅の方に楽しんでもらえるように、20着の播州織浴

衣を製作しプレゼントした。播州織ファッションショーを企画し、簡単な食べ

物や駄菓子屋やゲーム、カラオケなど生徒も一緒に楽しめる企画を行うことが

できた。

 また、地域からの依頼で特産品の商品開発やユニホームの製作などさまざま

な活動に取り組んできたが、製作するだけでなく、プレゼンにより、その過程

である実践目的や方法、社会性や地域性、環境など分析し理論づけや分析を行

い実践するようになった。

 播州織ファッションショーも年間10回と増え、神戸ワールド記念ホールや

たっの市赤とんぼ文化大ホールなど大きなステージで行い、服の製作はもちろ

ん、企画や運営、全体のとりまとめなど、お互い協力し合い、支え合いながら

全体の中の自分の立場ややるべきことを把握し行動することを考えて取り組

んでいる。

・今までの取り組みがあ

ったので東北復興支援

活動にすぐに対応して

実践することができた。

・教員も今までの経験か

ら、即対応できる協力体

制があり、前向きに取り

組むことができた。

・与えられたボランティ

ア活動ではなく、生徒が

主体的に考え、いかに支

援するか創造し実践さ

せることができた。

・さまざまな企画や構成

を提案し、理論づけて実

践していく力や人間力

を基盤にプロデュース

能力へと発展させるこ

とができた。

 1-2分析から見えてきた変化と教育効果

ライフヒストリー分析の結果から、以下のことが分かった。

1)家庭昼麹幽   家庭科教員になってからの経験から、教員としての成長が見えてきた。

   まず最初に、家庭に関する専門学科で専門科目「被服製作」の指導を行うために、教員になって

  から経験豊富な先生方から被服製作技術を学び、実際に実技指導することで技術以外の取り組む姿

  勢や考え方、確実にやり遂げるカと自信など、指導内容と教育効果を理解することができた。

   次に、家庭情報処理を指導することで、情報処理技術を身につけ、コンテンツや発想、表現方法

                       27

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  など幅広く学校家庭クラブ活動に応用することができた。

   そして、学校家庭クラブ連盟の全国高等学校家庭クラブ研究発表大会にホームプロジェクト部門、

 続いて学校家庭クラブ部門で出場し、発表する機会が与えられ、その指導を通して生徒の成長を知

  ることができた。地域へ広げた学校家庭クラブ活動の取り組みは、生徒の意欲やモチベーションを

  高め、責任感や実践カ、協調性など教育効果が大きく、人間力が高められた。

   また、家庭科技術検定事務局や全国高等学校長協会家庭科講習会の実行委員として研修の企画・

  計画・実践の経験から、実践力を学ぶことができた。そして、文部科学省の「目指せスヘシャリス

  ト研究指定」を受けることで、より大きく活動を展開し思い切った取り組みを行うことができた。

  さまざまな活動を行い、その実践から指導法を学び、生徒の成長と生きる力を確信し、家庭科教育

  の魅力とやりがいを感じることができた。

2)望鑓   学校家庭クラブ活動の内容も、本校への赴任当初は、教師主導型で、一部役員による活動でしか

  なかったが、少しずつ生徒が主体となり、播州織ファッションショーなど地域活動を行うようにな

  り、3年生の服飾デザイン選択者が活発に実践するようになった。その後、全国高等学校家庭クラ

  ブ研究発表大会学校家庭クラブ部門で出場することで、幡州織プロジエクト」を全学年で展開し、

  2年生も活動を任され、今では1年生から製作にかかわり、全員で役割分担しながら取り組んでい

  る。

   内容も、よく行われている施設訪間や交通安全運動から、播州織を使ったものづくり、播州織P

  Rのためのファッションショーやユニホーム製作など服飾デザイン選択者中心に行っていったが、

  次第に、食物の一員レストランのシェフ体験や特産品からの商品開発、高齢者や障がい者との交流

  や点訳絵本の製作へとさまざまな分野に広がった。また先輩から引き継いだ幡州織プロジェクト」

  も新しい発想を取り入れながら生徒主体で活動を広げていった。

   このように、学校家庭クラブ活動の内容や取り組み方も変化しながら、現在に至っていることが

  分かる。表3・2は平成23年度本校が取り組んだ学校家庭クラブ活動の内容である。

3)望鑓教萱塑塁   さまざまな活動を行ってきた結果、一部生徒の活動が多くの生徒の取り組みとなり、責任感、成

  就感、達成感、自信による自己肯定感、協調性が養われた。学校家庭クラブ活動は、各自の家庭生

  活の充実向上を図るホームプロジェクトとは異なり、地域社会の生活に目を向け、他人を思いやり、

  社会に貢献し、グループで協力して実践していくことで、協調性を養うことができる。FH J誕生

  当初から変わらない不易の教育効果といえる。まさに*3「生きる力」を育む活動である。

   また、地域社会に目をむけ、“地域との連携”や“社会参画活藪’につながる活動であるといえる。

  しかし、石島(2012)の研究では、家庭科における社会参画意識を育む授業を具体化することを目

  標にしているが、学校家庭クラブ活動という言葉は出てきていない。鶴田(2008)も家庭科で市民

  性教育を行う有効性は述べても、学校家庭クラブ活動の有効性とは結びつけていない。本来、家庭

  科教育に位置づけられた学校家庭クラブ活動が、社会参画意識を育み、地域社会でさまざまな実践

  を行っていくものであると考えられる。

4)新しい教育効果

   生徒が主体となったさまざまな活動の実践結果から、向上心や忍耐力、実践力、失敗から修復し

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ていく力やコミュニケーション能力、企画や構成、発想からマネージメント能力が育まれた。現在

は、いろいろなプ1コジェクトを組んでメンバーのカを最大限に発揮しあいながら目標達成を員指す

プロデュース能力の育成に取り組んでいる。

 プロデュース能力とは、「一つのビジョンのもとに、人々の力を借りて『新しい何か』を創りだし、

現状を変えること一『新しい何か』はかたちのないものでもいい。モノではなく状態でもいいし、

人でもかまわない。プロデュースには、何かを仕掛けて変化を生みだすというニュアンスがある。

ただ創りだすだけではない。誰かをあっと驚かせたり、感動させたり、ワクワクドキドキさせる要

素が、プロデュースにはある。プロデュースにはユンタテイメントの要素がありプロデュースのプ

ロセスで周囲の人々を巻き込んで進んでいく特性がある。人を、“自分も、そのプロデュースに一役

買いたい、参加したい’’という気持ちにさせるのである。そこに関わった人たち一人ひとりがキャ

リアを拓く場がつくられ、彼らの人生に大きなインパクトをもたらす。そして何より自分自身が変

わっていく。このような行為こそ、プロデュースである。」(佐々木.2008)

 1-3 見えてきた学校家庭クラブ活動の具体的指導の工夫

 ナラティヴ・アプローチによるライフヒストリー分析から、学校家庭クラブ活動を通して教員も指導

力を高め、教員め指導力によって学校家庭クラブ活動の活性化を図ることができることが分かる。学校

家庭クラブ活動も、最初から出来上がっているものではなく、生徒の実態に応じて指導を積み上げ、実

践を繰り返し、取り組んでいくことで内容が充実していくものである。

 ここでは、さらになぜこのように変化し、教育効果をあげることができたのかを、具体的な指導の工

夫としてまとめる。

1) 個人の活動であるホームプロジエクトにとどめず地  動の学校 庭クラブ活動へ展開する

   家庭科の教育目標である「主体的に家庭や地域の生活を創造する能力と実践的な態度を育て

   る」ために、学校家庭クラブ活動を行うが、実践的な活動を通して、協調性や責任感、コミュ

  ニケーション能力やマネージメント能力・プロデュース能力と多くの教育効果がある。

    「家庭生活の充実向上を図る実践力を育てるための自主的学習活動」と、同じ目標をもつホ

  ームプロジェクトであるが、学校家庭クラブ活動は、個人から地域社会へと活動をひろげるこ

   とで、さまざまな配慮を必要とし、企画・計画し実践していく。地域からの協力を得るために、

   プレゼンやコミュニケーションが必要となり、クラブ員で協力し行うために、協調性や責任感・

   リーダーシップなどさまざまな能力や人間性が求められる。そのような活動を通して、社会と

   のかかわりや実践的な態度を養うことができると考える。

2) 地域からの連携や依頼または、大△や発表する機会は、チャンスと考え前向きに取り組む

 学校から活動を依頼するより、地域からの依頼に応える方が、協力を得た活動がしやすい。

ただし、家庭科としての教育内容や指導目標を明確にし、できることとできないことを打ち合

わせた上で行う。また、大会など発表する機会にも積極的に参加し、レベルアップや自信につ

なげる。

 教員自身も経験したことが無い、新たな企画に挑戦していくことが大切である。教員がどの

ように考え、前向きに取り組んでいるか、その姿勢から生徒も学ぶことができる。頭で考えて

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理論理屈だけでは分からないことが多い。自分の経験の範囲だけで綿密な計画のもと実践する

だけではなく、新たに挑戦し実践することから気づき、経験することで見えてくることがある。

それが指導力に生かされる。

3) 生月の意欲関心を高めながら、より高い目標を設定することにより活動を充実させる。

 最初から主体的な活動ができるわけではない。意欲関心のない生徒に対して、まず興味ある

実習内容を考え、正しくできるように準備し実践させる。まず、成功体験からできるという自

信と達成感や成就感を経験させることによって、次への意欲ができる。常に、少しずつレベル

をあげてやりがいや自信を高めていく。レベルに合わせた教材の工夫と分かりやすい指導方法

の工夫やサンプルの準備を行う必要がある。

4)

 すべて教えることで指示通りにやらせるだけでなく、自ら考え理解し意欲を導く指導へと

生徒の実態に応じて主体的な活動ができるように指導していく。できていないところを指摘し、

もっと工夫すべき点など指導しながら、高いレベルを要求していく。期待されていることから、

自信をつけ、より意欲的に取り組むことができる。信頼関係を築きながら第2、第3のリーダ

ーを育てる。

5) 実践活動が目的ではなく その活動を通して何を幽ばせるか、指導目標を明確にする

施設訪間などに参加し体験することを通して、何を学ばせたいのか、家庭科として何を考え

させたいのかを明確にしなければならない。また、全員が活動できるわけではないので、一人

の経験や感想など、全体に還元する工夫が必要である。

表3-22011年学校家庭クラブ活動の取り組み

行  事 教科 活動内容 指導内容

家薩ク・9ブ緯套 家庭 冊子作り・原稿作り・活動報告のPP 役員になって初めての行

制作を通して、今までの活動を理解し、 事なのである程度説明し、

本年度の計画を考える。 活動報告を作りながら役

員一としての自覚と責任を

再確認させる。

播郷載ブ湊ジ手一ク・一ト 課外 8年前、家庭クラブ研究発表から続い 一人ひとりに企画を提案

①給食服班 ているプロジェクト。たて割り班で構 させ、試作を作り新しい作

②ザクラ班 成し、3年生中心に活動計画を立て取り 晶製作へと発展させる。

③カタピラ班 生活産業 組む。 3年生の指示で企画して

④コットソボール班 生活産業一 3年生の知識や技術を次の学年に引き いく.ため、責任感やリーダ

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継ぎ、先輩と後輩の関係を築きながら、 一シップ、思いやりなど配

より良いものづくりを考える。 虞し人聞性を育む。

播捌穣梁呂ホ㌣ム製確 課題研究 課題研究の服飾デザイン選択者がリー 全員がリーダーを経験し、

①バイオリニスト(4着) ダーとなり、デザインの提案、相手の 責任感や協調性を学ぶこ

②多可町少年少女合唱団 方との話し合いやサイズの確認をし、 とができた。

(25着) 試作、パターン作り、製作する。 自分の意見をもって相手

③旬来館エプロン(10着) それぞれのユニホームの目的やイメー に伝えたり、要望を取り入

④よかたんエプロン ジに合ったオリジナルのデザインを考 れ十分に打合せをさせる。

(24着) え提案する。 実際に着装し、多くの方に

⑤オーケストラ衣装追加 年齢層が違うため、それぞれの体型の 見ていただくので播州織

(30着) 配慮や、イメージに合った布を選ぶ。 のPRになるようなデサイ

⑥ハンドベルブラウス 被服製作 数が多いものは全員に依頼し、活動目 ンや布選びをさせる。

(9着) を決めて製作するが、抵当者が責任を 学校だけの評価ではない

⑦訪間介護スモック(40着) 被服製作 もって仕上がりや数の確認を行う。 ので、より厳しく責任を持

⑧田園空間エプロン(10着) ち取り組ませる。

き一挙善ズ津二詳皐身箏 課外 2年前きらら商店街からの依頼でゆる きららくんの提案からま

商店街総会で発表 キャラを提案したのがきっかけ。 ちづくりを考え、高校生の

飛び出し坊や製作 山崎高校に協力していただきオリジナ 発想や企画を発表したり、

商店街夏祭り参加 ル飛び出し坊やを製作。 夏まつりなどさまざまな

夏祭りではプラ板きららくん製作体験 コミュニケーションの機

やきららくんうちわの配布など企画。 会を作り指導する。

交湧安峯週藺 課外 地場産業‘‘播州織’’の余り布を活用し、 確実に仕上げさせること

播州織ポケットティッシ 播州織のP Rする。 で技術の向上と責任感を

ユケース製作 2年生が1年生に指導し、完全でないも 指導する。

のはやり直しをする。

特鰯藩晶開講 お互い試食し、改善点を検討し商晶化 材料費の計算など、各グル

チェックツーキー 課題研究 を考える。 一プに責任を持たせ無駄

巻きずし提案 フードD バザーなど大量に作るとき場合役割分 や失敗のない調理を考え

担や協力し合い自分たちでできるよう させる。

に計画・実践している。 協調性と責任感を指導す

る。

擦爽鍋支湊 課外 急な言十画であったが、3年生を中心に、 急な行事で、突発的なこと

入園グッズ100セット いろいろな生徒が責任をもって活動を があるが、それぞれが前向

播州織給食服60着製作 進めることができた。 きに対応し、取り組むこと

播州織スモック40着製作 被服製作 1年生は「被服製作」の課題として製 ができるような協力体制

播州織テディペァ120製作 被服製作 作したが、趣旨を理解し全員が前向き を気付くよう心がける。

に取り組むことができた。 地域や多くの方からの評

被災地訪間 3月には生徒会と連携し、実際に被災 価を生徒に返し、自信や成

31

Page 33: M11208F - HEART Hyokyo Institutional Repository: ホームrepository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/10796/1/YU323020… · 検家庭クラブ活動は兵庫県においては、家庭に関する専門学科が中心に取り組んでいるのが現状であ

地誌間しボランティア活動を行うため 就感の育む。

に企画に散り組んでいる。

梅奮亭二日シキフ 課題視=究 地産地消や西脇高校オリジナルの献立 自分たちで役割分担しな

8月 オリジナルカレー を考え実際に一同シェフとして販売す がら協調性や責任感をも

2月 地産地消メニュー る』食材の組み合わせやサービスの仕 たせる。

方などに配慮し取り組む。 調理技術や盛り付けなど

材料費と売上にも配慮し、失敗のない 専門性を高める。

調理の工夫を行う。

雑鋼着蜂犯今φ提察 生活情報 さまざまな取り組みを行っているが、 いろいろな分析を通して

西脇市の活性化 現状の問題や背景を分析し、提案の理 問題点を把握させる。

多可町の活性化 南を明確にして発表する。 幅広く状況を判断しオリ

おりひめバスの活性化 なぜそう考えたかを数値やアンケート ジナルな企画を考えさせ

黒田庄和牛の肉巻き などで裏付け発表する。 る。

飴売停縞馨零 課題研究 10月~3月イズミヤ西脇店、2月は市 幅広い遡域からの興味関

カナート店内展示 民病院に展示。多くの方に見ていただ 心を知ることができ、生徒

西脇市民病院エントランス けるようにパネルを作り展示してい の意欲にもつながる。でき

る。 るだけ生徒が主体に活動

できるように配慮する。

保育粛誘簡 児童文化 3年選択授業r児童文化」の生徒中心 責任者には、保育園との連

ひよこ保育園 課外 に生活清報科全員が各保育園に分かれ 絡調整し、保育園の状況を

芳田保育園 訪間する。自分たちで企画し準備し、 確認させプログラムを提

旧恩保育園 校内発表会で相互評価して実際に訪間 案させる。園児の年齢を考

西脇保育園 する。 え、プレゼントや手作りの

おもちゃを考えさせる。

播側溝プア汐批シ払 課題研究 “播州織’’をテーマにさまざまなイベ 播州織の素材やデザイン

①文化祭]般公開 3年 ソトでファッションショーを発表す を活かしたファッション

(本校体育館) る。 ショーを企画させる。

②成田山浴衣まつり 各企画代表者を決める。 一人1回は企画責任者を

(成日目山境内ステージ) ↓ 経験させる。

③西脇市織物まつり テーマを各自意見を出して全員で話し 高校生の感性を引き出し、

(カルチャーセンター) 合い決める。 多くの生徒の意見からテ

④北播磨じばさん元気市 イメージマップなどパネル制作。 一マをしぼらせる。(KJ

(ガーデン八千代) ↓ 法)

⑤ちちんぷいぷい生出演 グループやテーマに分かれ作業を把鍾 全体の流れは代表者に任

(梅田スカイビル) しながら進める。 せながら、各テーマ毎のリ

⑥兵庫県総合文化際 2年↓ 一ダーを決め取り組み状

(四季の森公園) 演出について代表者が把握し、企画書 祝を把握する。

⑦〃合同発表会 2年 の枠を作り、グループに指示する。 いろいろな技法やアイデ

32

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(ハーバーランド) ↓

イアを呈示しながら、納得

⑧労働安全衛生大会 3年 それぞれがテーマに合った音楽・照 がいく作品作りを促す。

(アピカホール) 明・ウォーキング・映像を作成する。 企画書を作成させ、冊子に

⑨たつの市皮革まつり ↓ まとめさせる。

(赤とんぼ大ホール) リハーサル・本番の同程等確認と指示。 パンフレットなど必要に

⑩播州織総合見本市 2・3年 応じて主体的に、考えさせ

(アピカホール) 準備させる。

家庭クラブ集会 3年 3年生最後に今までの取り組みから学 実際に行ってきた経験か

んだことや各分野への進路決定までの ら学んだことや感想、学習

過程や受験勉強の具体的内容などを発 の取り組みを発表させ、1

表する。 2年生の今後の活動や進

路選択の参考にさせる。

33

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2.生徒の発達段階に応じた指導方法

 前項では、学校家庭クラブ活動の活性化を図る具体的指導の工夫を1)~5)の5つあげたが、一つ

は、地域活動を積極的に展開し、実践活動を行うことであり、もう一つは、指導方法の工夫である。目

標を明確にし、生徒の意欲関心を高めるように、より高い目標を設定し、生徒主体の自立を促す指導を

心がけてきた。

 そこで、生徒の発達段階に応じた指導法として、水越敏行の「授業研究の方法論」が大変わかりやす

く、適切であると考えた。本研究では、水越の学習指導法の5段階(A全面制御の学習 B有意味受容

学習 C多項選択学習 D誘導発見学習 E独り立ち学習)を参考に検討を行った。

 学校家庭クラブ活動とは、「学校や地域の生活の中から課題を見いだし、課題解決を目指す。」とある

が、まず、主体的に課題を見つけることから問題である。生徒の興味関心や意欲により、課題を見つけ

ることが困難な場合は、「導かれた発見学習」から始まり「独り立ちの発見」へと指導していかなければ

ならない。やらされているのではなく、できるだけ主体的に取り組むことができるように促すことが必

要である。まずは、実践し成果があってこそ学びがあり、次への意欲や興味が湧いてくる。そのために

は、まず生徒の理解が大切で、生徒の状況を把握し、生徒の実態に即した課題解決方法を指導しなけれ

ばならない。生徒自身が、生活を見つめなおし、問題を発見し、課題解決に向けでどのように取り組ん

でいけばよいか、自ら考え実践できるようにするためには、段階を踏まえた指導が必要である。

 ホームプロジェクトを発展させるという点で、ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動の指導方法

についてまとめた。(表3・3)

 最初からモチベーションが高く主体的に取り組むことはできない。生徒の実態に即した指導方法と目

標を明確にすることが大切である。

 今までの実践から、「最初の体験や実習は絶対に成功体験でなければならない。」と考えている。全く

意欲関心もなく理解できていない状態では、まず、確実に成果を得られるように計画し、段取りをした

上で実践をさせ、喜んでもらえた、人のためになったという成功体験からやってよかったという成就感

を感じさせることが必要である。指導者として、生徒の実情を把握し、確実な計画で目標をもって実践

させ、成功体験の積み重ねが次へのステップにつながる。

 したがって、全くの意欲のない生徒には、全面制御の学習から始まるが、次第に難しい課題に取り組

み、失敗しても試行錯誤しながら前向きに取り組み、やりがいや達成感を感じることができるようにな

る。生徒の発達段階に応じた指導の工夫や目標の設定が必要である。最終的には独り立ち学習である目

標を明確にすることで、段階を経て導きながら、常にレベルアップを目指した指導の工夫を行うことが

できる。

 また、目標を明確にすることで、単なる体験活動で終わらないように、学校家庭クラブ活動を位置づ

けることができる。

 この学習指導法は、意欲を高め主体的な学習へと導くために有効で、「被服製作」の授業においても、

有効である。1年次2単位、2年次4単位、3年次「課題研究」服飾デザイン選択者は4単位履修してい

るが、生徒集団レベルIから次第にレベル1IIでの指導ができるようになってきた。(表3・4)

 その要因として、学習指導法による指導目標を明確にすることと、“教える”指導から“導く’’指導方

法への理解と実践が必要であると考えられる。また、前年度の先輩の取り組みから学ばせ、生徒自身に

も目標を明確にし、モチベーションを高めることも大きな力となる。

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他の教科指導においても、5つの段階を意識し、導く指導に生かすことができる。

        表3-3 ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動の指導方法

全面制御の学習ホームプロジェクト …すべて指導し、その指導通りに実践させることでホームプ         一

■1ロジェクトを理解させる。

一一■一一1一一’一’..’一I・‘一一’一・一■一・一.■一一I・一一‘’一■■一一一一■一.■一一一一’’.‘一一.I一’..’一.’一一一一一■一一.■一■・一一一一・一■一一一一.一■■一■.一一一一

@         ■学校家庭クラブ活動 …学校家庭クラブ活動のテーマを設定し、計画に沿ってホー         1

有意味受容学習ホームプロジェクト ≡具体例を示し、どのように進め計画して実践していくかを         ■

(説明式授業) 一1+分に説明し、各自取り組ませる。一一一■一一■■I一一一一一一一■一一一一一一一一一・一一■一一■・一・一・・一一一■・■■一一・■I I一・一一■一■一■一一一.一■一一’・’■I一’一・一一一■一一一一一一一一■’一I一一一一’一一■.’

@         一学校家庭クラブ活動 ≡学校の特色や地域連携をふまえ、生徒に説明した上で、家          1

多項選択学習ホームプロジェクト ≡学習の単元ごとに、具体的なホームプロジェクトの内容を         ■

一1あげ、その申から選んで実践を行う。一■一一一・一一一■一■一■一I.一’一・一I一.一’..一一’.一一一一一一一一’■一’一一■一一一一■■一.一.一■■一一一一’■■一一一一一’一.’一一一一・・’■一一’.・・一一一一一・一一一’’一一

@         I学校家庭クラブ活動 ≡学校の特色や地域連携を踏まえ、実施可能な内容を想定し          一

誘導発見学習ホームプロジェクト …生活課題や社会問題や地域の特性や課題をあげ、生活を見         I

11つめる中からテーマを考えさせる。一■一■一■■一一.・■一・■一‘一■一一一一■一’一一一1.’.一・.一.■一■■一一’一’一一一一一.一一’’一’一一.I一’一■一一一一一一一...一一’一■■’一■■.’.一・一一一’’’一一一‘一一

@         1学校家庭クラブ活動 1学校の特色や地域環境から動機づけ、家庭クラブ活動のテ         I

独り立ち学習ホームプロジェクト 1生活全般から課題を見つけ、計画一実践一評価・反省から         一

一1次の課題につなげる。

I一.‘‘■一I’■一一■...一一■.一一一.一一.一一■一■■一一一一一一一一■一■一一一■一一一’一■一一一’・■一一一■一■一一一一一一一一一一一一一一.’一I一’.一.一一.一一.■.’.一一.I’

@         ■学校家庭クラブ活動 1生徒の主体的な発想から、家庭クラブ活動へと発展させる。

表3・4 「被服製作」の場合

学習指導法一 生徒集団レベ”王(鰯い) 生徒集団レベル皿(普通) .生徒集団レベル㎜.(高い)一・

生徒の 学習に対する意欲が低 学習や課題に対して指示に 積極的に基本的な内容の理解

実態 く、何事に対してもやら 従い、課題の提出など基本 をし、できないことに対しても

されていると受け止め、 的な姿勢と理解はある。そ 自分なりに努力し取り組むこ

うまくできないことや分 れ以上にやる気はあるが、 とができる。興味関心をもって

からないことで、より意 行動に移すことができな 意欲的に取り粗くんでいる。

欲をなくす傾向にある。 い。

全面制御 ・印刷してある布地で裁 ・指示通りパターンをひく。 ・製図の基本を理解し各自パタ

の学習 断する。 ・裁断の基礎 一ンをひく。

・ボタンとボタンホール ・ファスナー付け(!種) ・裁断のポイント

・見返し ・見返し ・ファスナー付け(3種)

・じんべいとズボン ・ブラウス

有意味 ・技術や知識の内容より、 取組む姿勢を押さえなが 曲線の始末

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受容学習 取り組む姿勢やなせ学習 ら、技術内容や方法の科学 スラッシュポケット(玉縁フラ

するのか、いろいろなケ 的な理解を説明する。 ヅプポケット)

一スから授業の意味を解 裏地の縫い方 衿(フラットカラー・シャツカ

脱する必要がある。 パターンのひき方 ラー・テーラードカラー)

デザインに合わせた袖のパタ

一ン

多項目 ブラウスのディテールを自 簡単なものから高度な技術を

選択学習 由に製作(衿・ポケット・ 選択肢に入れて指導する。

切り替え・袖)

誘導発見 衿や袖のパターンをひく。 ベンツ、短冊あき、前立て、ポ

学習 衿や袖の縫製方法。 ケット各種など必要に応じて

できる生徒には、少し困難 製作に取り入れる。

な目標を与えてやる方が良

い。

独り立ち 自分で考え応用作品を製作す

学習 る。

独自の新しいやり方でオリジ

ナル作品を製作する。

学習目標 ・一ツひとつの作業をき ・自分考え、理解し取り組 ・各自の発想でデザインした服

ちんと積み重ねることを む姿勢を身につける。 を工夫し独自の表現で製作す

学習し完成させる。 ・基本的な技術から応用作 る。

・成功体験により、やれ 品の製作ができる。

ばできる成就感や達成感

を体得する。

指導の ・教材を準備し、分かり ・理論理屈を理解させ、サ ・教えるのではなく“導く”指

重点 やすい説明によりボイン ンプルを提示し、説明をみ 導を心がける。

トをおさえた指導を工夫 て理解し製作するカをつけ ・何をどうすれば理解できるか

する。 させる。 その手立てや情報を的確に与

・完成してよかったと満 ・なぜそうするのか考え方 える。

足できる教材を選択す や取り組む姿勢を指導す ・参考文献など環境を整える。

る。 る。

・個人のレベルに応じて、 ・少し難しいことに取り組

話を聞きながら個別指導 ませることによりレベルア

を行う。 ップを図る。

達成感 縫製技術を通して、考え方 発想カ・創造の楽しさ

成就感 や取り組む姿勢の理解 行動力

自信 計画性・実践力 地場産業への愛着とほこり

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3I普通科『家庭基礎」(2単位)における学校家庭クラブ活動のあり方

 学校家庭クラブ活動を行った結果としての教育効果は明確である。そのような活動を「家庭基礎」

ではどのように位置づけ行うべきか、その手がかりを検討する。

 1節では、家庭に関する専門学科として、地域との連携に、学科の特色を発揮した学校家庭クラブ活動

をとりあげた。従って、専門科目を生かした取り組みが多い。しかし、普通科における「家庭基礎」に

おいても、実践力を育てる部分では、その工夫や取り組み方は参考になるものと思われる。学校家庭ク

ラブ活動の独り立ち学習を理解した指導を行うことによって、家庭基礎から選択科目での誘導発見学習

の学校家庭クラブ活動を展開することができる。

 新学習指導要領解説「家庭基礎」に、「社会と自分の関連を考えながら、地域や社会へと視野を広げ、

それぞれの生き方を考えさせる。」また、「社会と自分め関連を考え、地域・社会へと社会的な視野を広

げ考える点から、学校家庭クラブ活動へと発展させる必要がある。」とあるように、「家庭基礎」は、家

族や生活の営みを人の一生とのかかわりの中でとらえ、家族や家庭生活の在り方、子どもと高齢者の生

活と福祉、生活の自立と健康のための衣食住、消費生活と環境などに関する基礎的・基本的な知識と技

術を習得させ、男女が協力して家庭や地域の生活の充実向上を図る能力と実践的な態度を育てることを

ねらいとしている。そのためには、生活をする上での様々な課題を主体的に解決する能力の育成を目指

して、ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動を充実することが重要である。

 以上、新学習指導要領をもとに、次の2つを提案する。

提案I-1地域の実態に応じて、幼稚園や保育所等を訪間して実際に乳幼児と触れ合いや交流をしたり、

     乳幼児をもつ親が子どもとかかわる姿を観察したりするなど、実践的・体験的な学習活動を

     取り入れるようにする。

   一2地域の実態に応じて、実際に地域の高齢者を訪問したり、学校に招いたり、福祉施設を訪間

     したりするなどして、高齢者との触れ合いや交流などの実践的・体験的な学習活動を取り入

     れるようにする。

 提案Iについては、体験実習にならないように、目的を明確にし、計画的に実施し、記録に残

し次の活動へとつなげる努力が必要である。

 学校家庭クラブ活動を実践する能力として、それぞれの学校の条件に応じた学校家庭クラブ活

動を、まず家庭科の教員が行うべきであると考える。何の実践もモデルもない所から、生徒の主

体的な活動が生まれてくることは困難であるため、最初は、全面制御の学習から、一つの学校家

庭クラブ活動を確立させるべきである。そこからがスタートである。学校の特色やさまざまな活

動と最初から連携し広げるのは困難でも、家庭科の教科指導の範囲内で行っていくべきである。

何もしなければ何も見えてこない。失敗がなければ問題解決はできない。問題解決能力を指導す

るためにも、まず実践しなければならない。

 提案I-1について、生徒レベルに応じた5段階における学習指導法を提案する。(表3-5)

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表3-5 学校家庭クラブ活動r保育所訪間」の生徒集団レベルに応じた指導例

挙習指導濠一一・ 牽徒集鼠レベル手(猛い) 塗徒集国レペ々皿(普通)一. 一左俸集団kべ堆皿(勘・).・

生徒の 活動に対する意欲が低 活動に対して指示に従い、 活動に対し、積極的にやってみ

実態 く、何事に対してもやら 内容を考えてはいるが、具 ようという意欲があり、お互い

されていると受け止め、 体的な方法が分からず、実 の意見を尊重し合いながらアイ

うまくできないことや分 践力にかける。やや自信に ディアを出し合い、興味関心を

からないことで、より意 かけ、率先して行動に移す もって取り組むことができる。

欲をなくす傾向にある。 ことができない。

全面制御 ・生徒メンバーの特技や

の学習 能力を生かせるように配

慮し、子どもたちにも興

味ある内容を工夫し、実

習内容を準備する。生徒

の能力に合わせて指導す

る。

有意味 なぜ、その遊びを行うの 子どもの生活環境や遊びに

受容学習 か、子どもたちとの接し ついて、子どもの成長や発

方など、子どもの成長段 達から理解し、脳の発達と

階を理解させながら活動 しつけや社会性理解を深

内容や配慮するべき点を め、保育所での活動内容を

理解させる。 考えさせる。

多項目 次のイベントも準備し、 対象年齢の子どもに適した

選択学習 参加を促し、意欲ある生 おもちゃづくりや遊びの事

徒に活動の機会を与え 例を示し、グループで選ん

る。 で計画を立てさせる。

誘導発見 実際に遊んだ子どもの反応 3世代にわたる遊びの調査を行

学習 から、さらに工夫を凝らし ったり、地域の子どもを取り巻

たおもちゃ作りを促す。 く環境を考えるなど、子どもだ

ちの遊びの実態と問題点を把握

し、遊びの提案を考えさせ実習

や、保護者への提案を行う。

独り立ち 自分の経験や、地域の自然どぶ

学習 れあう環境など、遊びについて

自ら課題を見つけ、課題解決に

取り組む。主体的に夏休み工作

教室や料理教室、手芸教室など

の企画し実践する。

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保育領域 乳幼児の心身の発達と生活、親の役割と保育、子どもの育つ環境について理解させ、子ど

としての もを生み育てることの意義を考えさせるとともに、子どもの発達のために親や家族及び地

学習目標 域や社会の果たす役割について認識させる。

指導の ・生徒の意欲を促しなが ・少子化によるきょうだい ・主体的に課題を見つけ、お五

重点 、ら、実際に子どもと接し の数の減少、自然との触れ い意見を出し合いながら課題解

て、乳幼児の心身の発達 合う経験の不足など、現代 決を考える。

と生活や子どもの成長段 の子どもや子育て家庭を取 ・協力しながら目標に向けてプ

階と遊びを理解させる。 り巻く環境の問題について ロデュースしていく実践力を促

理解させ遊びの役割を考え す。

させる。

・成就感、達成感 ・リーダーシップ ・マネージメント

・自信 ・責任感 ・プロデュース能力

・コミュニケーション能 ・地域の自然環境への愛着

力 ・問題解決能力

提案皿:社会と自分の関連を考えながら、地域や社会へと視野を広げ、それぞれの生き方を考えさせる。

     家族や生活の営みを人の一生とのかかわりの中でとらえるためには、まず地域環境を知るこ

    とが大切だと考える。より具体的に人口構造や地元企業と職業、高齢者福祉施設や保育環境を

    知ることで、ライフデザインが見えてくる。教材研究やホームプロジェクトからテーマを絞り、

    クラスから学校・地域へと学校家庭クラブ活動へと発展させる。(表3-6)

表3-6 「共生社会と福祉」からホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動へ

自分の住む地域の入園構造について

・高校卒業後の進路を考える。高校生のライフデザインすごろくを作りPTA総会で展示

・核家族と拡大家族について… 実態調査及び意識調査   土地価格と住宅ローン

・地元で働くとしたら… 企業調査

・魅力あるまちづくり… 理想のまちとは?  どんな施設が必要か?

・子育て支援活動 外国人支援活動 高齢者支援活動 事故防止活動 環境保全活動

高齢者の生きがいについて

・身近な高齢者の生きがいをまとめる。

・自分の親戚や家族について考える。両親の老後は…

・自分の老後の生きがいについて、考える。

・地域の高齢者に学ぶことを通して、コミュニティづくりを考える。

・高齢者とのイベントの実施

・老人ホームの実態

・老人ホーム訪間… 何ができるか?

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育児について

・イクメン調査

・虐待

・地域で起こっている事故(火事・転落死・交通事故など)の実態

女性の就労について

・子育て支援の実態

・保育所訪間

・学童保育

子どもと遊び

・子どもの遊びの実態と遊び場

・手作りのおもちゃ

・夏休み工作教室

・自然とのふれあい

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第4章まとめと今後の課題 新学習指導要領においても、「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動を一層充実させる。」とあり、

家庭基礎においては、3つの柱の1つにあげられている。しかし、現場では時間数の不足やその実施方

法の問題をよく耳にする。今回の研究では、学校家庭クラブ活動の現状と課題を把握し、家庭科教育の

充実に向けた学校家庭クラブ活動の指導の工夫を提案することを員的とした。

 第1章では、学校家庭クラブ連盟加入率や意識調査から、学校家庭クラブ活動の現状と問題点を把握

した。学校家庭クラブ活動そのものを知らない、意義が理解できないという家庭科教員がいることが分

かった。また、分かっているとしても、それぞれの理解のしかたは異なっていた。

 第2章では、まず、学校家庭クラブ活動は、どうあるべきか、その目的や意義、指導方法を、学習指

導要領や教科書、家庭科教育の変遷から検証した。家庭科教育の目標として、問題解決能力や実践的な

態度の育成を図らなけれぱならないことは理解できたが、学習指導要領解説や教科書からは、具体的な

学校家庭クラブ活動の内容や実施方法は見えてこない。

 そこで第3章において、その具体的指導方法とその教育効果を、専門高校での24年間学校家庭クラブ

活動を指導してきた筆者の経験からナラティヴ・アプローチによるライフヒストリー分析を行った。そ

の結果、家庭科の教員として見えてきたことは、実際に実習指導や研究発表大会への参加やいろいろな

行事の取り組みを繰り返すことで、家庭科教育の指導の充実を図ってきたことが確認できた。

 また、学校家庭クラブ活動も活動を続けることで、より充実した取り組みや生徒のレベルアップにつ

ながり、教員の指導力と実践活動経験が、学校家庭クラブ活動の教育効果をより充実したものにしてい

くことが分かった。

 家庭科教育の嘆践する力を育む」とする不易の教育効果として、地域社会に同を向け、他人を思い

やり協調性を養い、まさに「生きるカ」や社会参画意識を育んでいることを再認識した。また、新しい

教育効果として、企画実践する申で、お互いの能力を最大限に発揮しあいながら、協力し楽しんで員標

達成に取り組んでいく、プロデュース能力が育まれている。このような分析結果から、具体的に、教員

主体から生徒主体へと生徒の意欲と自立を促す指導を心がける、など指導の工夫をあげた。また、水越

のr授業研究の方法論」の5段階の学習指導法を参考に、r家庭基礎」での実施に向けた提案を行った。

 生徒数減少のため学級数が少なくなり、「家庭基礎」2単位では、家庭科教員の確保も難しくなってき

ている。そのため、各学校の地域や生徒の実態の応じた学校家庭クラブ活動を行い、家庭科教育を充実

させることが大切だと考える。家庭科教育の歴史や家庭科の教育目標や学校家庭クラブ活動の意義から

も、まず、学習指導要領に記載されているとおり、各学校に1つは学校家庭クラブ活動を位置づけ実施

するべきである。今、少子高齢化社会で、ますます核家族化が進み、家庭の機能が縮小していく中で、

地域コミュニティが必要となっている。地域の生活改善向上を図るためにも、学校家庭クラブ活動を積

極的に行い、教科書の知識や実習を基盤に、地域活動を通して問題解決能力や実践力を身につける必要

があると考える。そこに家庭科で学ぶ知識や技術が生きて身につく。あるいはより深く自分を見つめな

おすことができる。

 今後の課題として、今回の研究方法は、自分自身のナラティヴ・アプローチのみの分析であったが、

今後コーホートに属する複数の事例から分析を行い、学校家庭クラブ活動の指導方法をより明確にし、

実施に向けた提案を行っていきたい。家庭基礎においては、学習指導要領から2つの内容の提案を行っ

たが、今後家庭科教員からの評価や、実践した結果から、内容を工夫し検討を行っていきたい。

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Page 43: M11208F - HEART Hyokyo Institutional Repository: ホームrepository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/10796/1/YU323020… · 検家庭クラブ活動は兵庫県においては、家庭に関する専門学科が中心に取り組んでいるのが現状であ

 また、家庭科教員への研修のあり方も検討していく必要がある。専門知識をもって教員となっても、

実践力や課題解決能力の育成を目指した指導方法については、研修を重ねていく必要がある。

 家庭科教育の充実に向けて、学校家庭クラブ活動の教育効果とその可能性を追究していきたい。

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終車 おわりに

 「家庭科は学校家庭クラブ活動とホームプpジエクトが両輪となって動いていく。」と初めての総会で

耳にした。専門学科の経験が長く、自分なりに理解し納得して家庭科教育に携わってきたつもりだが、

家庭に関する専門学科の教員と普通科の家庭科の教員と、区別した表現や学校家庭クラブ活動への取り

組みの違いを感じてきた。家庭に関する専門学科として、専門性を高めても、専門学校ではない。高校

の家庭科教育である。共通科目「家庭」の軍長線上にあると考える。

 現場では、学校家庭クラブ連盟への加入率がますます減少し、兵庫県においては組織の運営も問題に

なってきている。学校家庭クラブ活動の活性化を図るためにはあまりにも問題点や課題が多い。それ以

前に家庭科教育における学校家庭クラブ活動の教育効果や位置づけからの理解をするべきである。

 今回の研究では、長年野間を抱いていた学校家庭クラブ活動のあり方について、改めてその意義や問

題点を把握することができた。ライフヒストリー分析から、実践によって教員も学校家庭クラブ活動も

成長し、教育効果も深まっていくことがわかった。

 これからの家庭科教育を活性化させるためにも、まず、家庭科の教員が、学校家庭クラブ活動を各学

校に一つは位置づけ、実践する必要がある。教員が実践的な態度を示し、課題解決能力を身につけてい

くべきであると考える。そこから研修は始まる。

 東北復興支援ボランティアを希望する生徒は多くいた。震災の教訓から家族の絆・地域の絆が再認識

され、普段からの地域連携が必要とされている。いくら高齢者体験をしていても、実際にお年寄りとの

コミュニケーションをとったこともない生徒が、特別な状況の中で的確に判断し実践できないであろう。

非日常を日常的に行う、そんな地域コミュニティを大切に学校家庭クラブ活動を展開していくことが、

今こそ期待されている。

 家庭科の単位数を2単位から4単位に増やすためにも、家庭科教育の充実を図り、期待される教育効

果を実践し位置づけていくべきだと考える。

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