kirin stitch - nihon university

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樹木の配置とボロノイ分割 樹木を母点としたボロノイ分割をおこない 建築を含めた育成距離を考慮したシステムで 森の基礎をつくります。 育成距離の関係によりさまざまな樹種が 敷地いっぱいに広がります。 ユニットの設定と配置 分割してできたボロノイ点に住戸を配置していきます。 住人の数に応じて個人ユニット、世帯数に応じて 設備ユニットそれぞれを配置します。 個人を一単位とみなし住戸ユニットを配置し 敷地いっぱいにばら撒きます。 ユニットの回転と連結 配置したユニットボロノイ分割の軸に 垂直になるようにユニットを回転させます。 回転させたユニットどうしを ボロノイ分割にあわせて連結させます。 そうすることで、個人ユニット間に間の空間を創出させます。 連結タイプの決定と浮遊 ユニットの設備との関係から住戸の領域を決めます。 ユニットの個数が同じでも間の空間のあり方 及び個数によってさまざまな 住戸タイプが創出されます。 また位階部分を浮遊させることによりアクセスを確保します。 多重積層形状変化 システムに基づくベーシックなラインを 保つことで樹木の育成距離が脅かされない ようになっているので 樹木の育成環境を考慮しながら 建築を積層し最初の基本形を作り出します。 ��� 樹木の成長とともに建築を変化させることで 樹木の育成を保ちながら森は生き続けます。 ���� ���� 樹木植栽→新グリッド設定 ・敷地に残された大きなケヤキの木を基点として 10×10mグリッドをしきます。 ・グリッドの中にひとつ樹木を 配置することで森を形成します。 育成距離の関係を考慮しさまざまな配置とすることで 変化のとんだ森をつくります。  街区の設定 ・木造密集住宅地からの動線の流れを意識し 南から北に向けての街区境界を 樹木をよけるよう設定します。 ・境界セットバックを4~6mとし、自動車が通れるものとします。 ・街区間に対面しないように3.5mセットバックし 緊急車両・搬入車両・来客用の駐車スペースを確保します。 麒麟模様の連庭+ボイド ・敷地に残された大きなケヤキの木を基点として 10×10mグリッドをしきます。 ・グリッドの中にひとつ樹木を配置することで森を形成します。 育成距離の関係を考慮しさまざまな配置とすることで 変化のとんだ森をつくります。  ネットワークサンクンガーデン ・連庭の一部を地下化しサンクンガーデンとして ネットワーク化します。 ・連庭で構成された路地的空間創出し ここにしかないコミュニティーガーデンをつくります。 ブロックセンターガーデン ・コミュニティガーデンの大きいものとして センターガーデンをつくります。 ・この計画に必要と思われる諸施設を設置します。 ・地域のコミュニティガーデンとしても 機能するような施設とします。 ����¥���×����Center garden   ○地区センター施設 ・ミニシアター(集会所) ・調理室 ・キッズルーム ○生涯学習施設 ・ライブラリー ・クラフトルーム ・ギャラリー ・サークル活動室 ○インキュベーション施設 ワークサービスステーション ・シンクタンク ○その他テナント ・カフェ&バー ・コンビニエンスストア etc �� first basement floor  『地域及び住民の生活必要施設としての ブロックセンターガーデン』 『路地的空間を創出する アンダーネットワークサンクンガーデン』 >>>公営SOHO住宅  or 木造密集地区整備中代替住宅>>>120戸 木造密集地区の整備完了予定の 2015年をめどとした 仮住まいとして使用できる集住を計画します。 そして 誰もが気軽に通れる路地として地下はあるために SOHOを中心とした住戸タイプも 対応できるようにします。 center garden 活動が盛んな地域コミュニティの新たな 受け皿として、さまざまな施設をコンプレックス します。 ○地区センター施設 ○生涯学習施設 ○インキュベーション施設 ○テナント etc. roof top 『都市の眺望』 ・誰もが歩ける屋上街路として さまざまな樹木が生み出す都市の眺望を提供する。 second and third floor『樹木の中に沈む住戸』 ・住 戸   >>>公営賃貸住宅>>>351戸 現在の都営アパートの既存住個数(140戸)を含め 病院跡地の面積も加えた住戸数とする。 first floor『全てが共存する森のGL空間』 自動車も人も動物も誰もが歩きまわれる 街のスクランブル動線的共有スペースをつくります。 そしてこのGL部分にはいろんな機能を持った 幹が散りばめられています。 樹木の幹      システムによって生成されたボイドの中に 樹木を一本づづ植えて 連庭を敷地いっぱいに広げます。  ピロティの幹    構造を補助する柱として 敷地いっぱいにばら撒きます。 樹木の幹と人工物である幹の共存が 自然物と人口物との共存を明確にします。 レンタル倉庫の幹  主要構造としてのコアの中にレンタル倉庫の 機能をつけます。 ここで得た収益は 樹木の管理費として使用します。  共用階段の幹    各住戸のアクセスとして機能しています。  ��建物の支えるピロティは、樹木の幹と同化し森の一部となります。 樹木を軸としてさまざまなフィールドを積層することにより 多様な居場所や距離感を生活の中に取り入られるような 集合住宅のあり方を提案します。  □ 樹木共生建築形態生成システムの提案 樹木に対する新しい建築形態生成の方法として ボロノイ図法を主軸とする 建築形態生成システム『KiRin Stitch』の提案をします。 □ システムを生かした5つのの創出 麒麟stitch』に基づくフィールドを積層・変化をつけることにより 樹木を軸とする個性ある5つの風景を創出します。 □ システムと周辺環境との連動 敷地内部のシステムと周辺緑地・コミュニティ環境の連動により 地域を含めた緑地・コミュニティネットワークの新たな母点を創出します。 いろんな人が住むことによってさまざまな距離感や居場所が創出されます 所 在 地 東京都世田谷区太子堂3丁目 敷地面積 43191.5m 2 建築面積 18451.3m 2 延床面積 50941.2m 2 各階面積  B1階 7344.3m 2 1階 2689.4m 2 2階 18451.0m 2 3階 12915.7m 2 住戸面積 30.0m 2 ~155.7m 2 建ペイ率 42.7%(許容:60%) 容 積 率 160.1%(許容:200%) 構  造 鉄骨造 鉄筋コンクリート造 規  模 地下1階 地上3階 最 高 高 9550mm 地域地区 第一種中高層住居専用地域    高度地区 第二種高度地区 防火地域 準防火地域 地区計画 地区計画区域                   住戸種類 公営,賃貸 総住戸数 471戸  �� □ ボロノイ図法の利用方法 ・ボロノイ図法により、さまざまな樹木の育成距離を保持しながら 樹木の間を紡ぐような 建築形態を生成するシステムとして採用します。 母   点 = 樹    木 ボロノイ点 = 住戸ユニット として樹木と共存した建築の 基本模様=KiRin Stitchを形成します。 □ KiRin Stitchと周辺環境 ・KiRin Stitchは、周辺地域の緑ネットワークとつながり 街の緑の濃度を上げていきます。 ・KiRin Stitchはコミュニティ母点である学区の中の 新たな母点として機能し、 コミュニティを縫い合わせていきます。 □ ボロノイ図法とは  ・ある領域をそこに置かれた点群の位置の関係性によっ て分割する作図法です。 ・学校の配置や携帯電話のアンテナを設置するときに使 われているもので、一定距離範囲内に何かをつくると きに役立つ作図法です。 ����roof top 『都市の眺望』 桜建賞受賞作品 2 KiRin Stitch ~集合住宅再開発における森林共 生建築群の提案~ 三好礼益 制作主旨 家は二度生まれます。建造物としてた てられたとき、そして、人間に住まわれ 生活の場になったとき。たとえば現在あ なたが住んでいた家を思い起こすとすれ ば、住宅そのものの形状だけではなく、 そこでの生活の断面も同時によみがえっ てくるはずです。また、住宅という物体 は人間の生活をやんわりとかたちづくる ものです。そこで流れた時間、積み重ね られた経験がそれぞれの記憶に深く染み 込まれていきます。生きられた家の記憶 として。 全てのはじまりは、数本の樹木からは じまりました。計画敷地は東京都世田谷 区太子堂。都営太子堂住宅の建替えおよ び国立育成医療センター研究所移転に伴 い 都市基盤整備公団を主軸として住宅 密集地の真ん中に大規模な集合住宅の建 設が計画されている場所です。現在更地 になってしまったこの敷地には、何本か の既存樹が土地の記憶として残されまし た。密集住宅地区であるこの地域にとっ ても新しく住む住人にとっても樹木とい う緑環境は貴重な財産です。私は新たに 創造する集合住宅の形態として、貴重な 緑環境を増殖し育てる森林共生建築群を つくるシステムの提案を大学最後のプロ ジェクトに決めました。 これからはこの場所ではじまる人々の 生活、ひとりひとりの記憶のなかへ、と もに成長する樹木をささげます。 講師評:今村雅樹 都市型居住地域のありかたを、ボロノ イ図法を設計方法論として取り入れなが らまとめた秀作である。現実の話として 咀嚼していく中で、いろいろとリアルな 問題にぶつかってしまうが、新しい発想 と展開する風景に現代的な若さを見るよ うな気がする。私たちは、何故にこうま でして都市に依存しまた、集まって住む ことに執着するのだろうか ? 1本の樹 木の周りに展開する日常のシーンは、豊 かでもあり、ある時にはアイロニカルに 「自然」という存在を示唆する対象とも なり、いろんな解釈が存在しそうである。 最近とくに増えた「低層高密度」「増 殖系」作品の中では、単純な BOX の増 殖ではなくどちらかというとリゾーム的 な増殖の仕方が21世紀的だとも言えよ う。が、問題はそこに発生した「空間」 であろうか? 居住空間に存在するコミ ュニティというよりもつかず離れずの距 離感を持つコミュニケーション的ディス タンスと、各住戸が持つアノニマスな冷 たさがいかにも「現代的」ではあるが、 作者はその空間の持つ暴力的とも言える 増殖性に何らかの疑いを持っているのか 否か? その思想性は別の機会にすると して、手法と構築の仕方には、高い評価 を与えられるすぐれた作品である。

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Page 1: KiRin Stitch - Nihon University

樹木の配置とボロノイ分割樹木を母点としたボロノイ分割をおこない建築を含めた育成距離を考慮したシステムで

森の基礎をつくります。育成距離の関係によりさまざまな樹種が

敷地いっぱいに広がります。

ユニットの設定と配置    

分割してできたボロノイ点に住戸を配置していきます。住人の数に応じて個人ユニット、世帯数に応じて

設備ユニットそれぞれを配置します。個人を一単位とみなし住戸ユニットを配置し

敷地いっぱいにばら撒きます。

ユニットの回転と連結配置したユニットボロノイ分割の軸に

垂直になるようにユニットを回転させます。回転させたユニットどうしを

ボロノイ分割にあわせて連結させます。そうすることで、個人ユニット間に間の空間を創出させます。

連結タイプの決定と浮遊ユニットの設備との関係から住戸の領域を決めます。ユニットの個数が同じでも間の空間のあり方

  及び個数によってさまざまな住戸タイプが創出されます。

また位階部分を浮遊させることによりアクセスを確保します。

多重積層形状変化システムに基づくベーシックなラインを保つことで樹木の育成距離が脅かされない

ようになっているので樹木の育成環境を考慮しながら

建築を積層し最初の基本形を作り出します。

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樹木の成長とともに建築を変化させることで樹木の育成を保ちながら森は生き続けます。

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樹木植栽→新グリッド設定・敷地に残された大きなケヤキの木を基点として

 10×10mグリッドをしきます。・グリッドの中にひとつ樹木を配置することで森を形成します。

 育成距離の関係を考慮しさまざまな配置とすることで 変化のとんだ森をつくります。 

街区の設定    

・木造密集住宅地からの動線の流れを意識し 南から北に向けての街区境界を 樹木をよけるよう設定します。

・境界セットバックを4~6mとし、自動車が通れるものとします。・街区間に対面しないように3.5mセットバックし

 緊急車両・搬入車両・来客用の駐車スペースを確保します。

麒麟模様の連庭+ボイド・敷地に残された大きなケヤキの木を基点として

10×10mグリッドをしきます。・グリッドの中にひとつ樹木を配置することで森を形成します。

育成距離の関係を考慮しさまざまな配置とすることで 変化のとんだ森をつくります。 

ネットワークサンクンガーデン・連庭の一部を地下化しサンクンガーデンとして

 ネットワーク化します。・連庭で構成された路地的空間創出し

 ここにしかないコミュニティーガーデンをつくります。

ブロックセンターガーデン・コミュニティガーデンの大きいものとして

 センターガーデンをつくります。・この計画に必要と思われる諸施設を設置します。

・地域のコミュニティガーデンとしても 機能するような施設とします。

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□ first basement floor  『地域及び住民の生活必要施設としての         ブロックセンターガーデン』 『路地的空間を創出する   アンダーネットワークサンクンガーデン』    住    戸   >>>公営SOHO住宅         or     木造密集地区整備中代替住宅>>>120戸   木造密集地区の整備完了予定の   2015年をめどとした   仮住まいとして使用できる集住を計画します。   そして   誰もが気軽に通れる路地として地下はあるために   SOHOを中心とした住戸タイプも   対応できるようにします。

center garden  活動が盛んな地域コミュニティの新たな   受け皿として、さまざまな施設をコンプレックス   します。   ○地区センター施設   ○生涯学習施設   ○インキュベーション施設   ○テナント etc.  

□ roof top 『都市の眺望』 ・誰もが歩ける屋上街路として   さまざまな樹木が生み出す都市の眺望を提供する。

□ second and third floor『樹木の中に沈む住戸』   ・住    戸      >>>公営賃貸住宅>>>351戸  現在の都営アパートの既存住個数(140戸)を含め   病院跡地の面積も加えた住戸数とする。

□ first floor『全てが共存する森のGL空間』 自動車も人も動物も誰もが歩きまわれる 街のスクランブル動線的共有スペースをつくります。 そしてこのGL部分にはいろんな機能を持った 幹が散りばめられています。          樹木の幹      システムによって生成されたボイドの中に 樹木を一本づづ植えて   連庭を敷地いっぱいに広げます。      ピロティの幹    構造を補助する柱として 敷地いっぱいにばら撒きます。   樹木の幹と人工物である幹の共存が   自然物と人口物との共存を明確にします。              レンタル倉庫の幹  主要構造としてのコアの中にレンタル倉庫の   機能をつけます。   ここで得た収益は 樹木の管理費として使用します。  共用階段の幹    各住戸のアクセスとして機能しています。 

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建物の支えるピロティは、樹木の幹と同化し森の一部となります。

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樹木を軸としてさまざまなフィールドを積層することにより多様な居場所や距離感を生活の中に取り入られるような

集合住宅のあり方を提案します。 

�������□ 樹木共生建築形態生成システムの提案      樹木に対する新しい建築形態生成の方法として ボロノイ図法を主軸とする 建築形態生成システム『KiRin Stitch』の提案をします。   □ システムを生かした5つの����の創出    

『麒麟stitch』に基づくフィールドを積層・変化をつけることにより 樹木を軸とする個性ある5つの風景を創出します。    □ システムと周辺環境との連動     敷地内部のシステムと周辺緑地・コミュニティ環境の連動により 地域を含めた緑地・コミュニティネットワークの新たな母点を創出します。

いろんな人が住むことによってさまざまな距離感や居場所が創出されます

�������� 所 在 地 東京都世田谷区太子堂3丁目     敷地面積 43191.5m2

     建築面積 18451.3m2

     延床面積 50941.2m2

     各階面積       B1階 7344.3m2

       1階 2689.4m2

       2階 18451.0m2

       3階 12915.7m2      住戸面積 30.0m2~155.7m2

     建ペイ率 42.7%(許容:60%)     容 積 率 160.1%(許容:200%)     構  造 鉄骨造 鉄筋コンクリート造     規  模 地下1階 地上3階     最 高 高 9550mm 地域地区 第一種中高層住居専用地域        高度地区 第二種高度地区     防火地域 準防火地域     地区計画 地区計画区域                       住戸種類 公営,賃貸     総住戸数 471戸 

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□ ボロノイ図法の利用方法 ・ボロノイ図法により、さまざまな樹木の育成距離を保持しながら  樹木の間を紡ぐような  建築形態を生成するシステムとして採用します。    母   点 = 樹    木   ボロノイ点 = 住戸ユニット  として樹木と共存した建築の 基本模様=KiRin Stitchを形成します。

□ KiRin Stitchと周辺環境 ・KiRin Stitchは、周辺地域の緑ネットワークとつながり  街の緑の濃度を上げていきます。 ・KiRin Stitchはコミュニティ母点である学区の中の  新たな母点として機能し、 コミュニティを縫い合わせていきます。

□ ボロノイ図法とは  ・ある領域をそこに置かれた点群の位置の関係性によっ   て分割する作図法です。 ・学校の配置や携帯電話のアンテナを設置するときに使  われているもので、一定距離範囲内に何かをつくると きに役立つ作図法です。

�����������roof top 『都市の眺望』

桜建賞受賞作品

2

KiRin Stitch~集合住宅再開発における森林共生建築群の提案~

三好礼益

制作主旨

 家は二度生まれます。建造物としてた

てられたとき、そして、人間に住まわれ

生活の場になったとき。たとえば現在あ

なたが住んでいた家を思い起こすとすれ

ば、住宅そのものの形状だけではなく、

そこでの生活の断面も同時によみがえっ

てくるはずです。また、住宅という物体

は人間の生活をやんわりとかたちづくる

ものです。そこで流れた時間、積み重ね

られた経験がそれぞれの記憶に深く染み

込まれていきます。生きられた家の記憶

として。

 全てのはじまりは、数本の樹木からは

じまりました。計画敷地は東京都世田谷

区太子堂。都営太子堂住宅の建替えおよ

び国立育成医療センター研究所移転に伴

い 都市基盤整備公団を主軸として住宅

密集地の真ん中に大規模な集合住宅の建

設が計画されている場所です。現在更地

になってしまったこの敷地には、何本か

の既存樹が土地の記憶として残されまし

た。密集住宅地区であるこの地域にとっ

ても新しく住む住人にとっても樹木とい

う緑環境は貴重な財産です。私は新たに

創造する集合住宅の形態として、貴重な

緑環境を増殖し育てる森林共生建築群を

つくるシステムの提案を大学最後のプロ

ジェクトに決めました。

 これからはこの場所ではじまる人々の

生活、ひとりひとりの記憶のなかへ、と

もに成長する樹木をささげます。

講師評:今村雅樹

 都市型居住地域のありかたを、ボロノ

イ図法を設計方法論として取り入れなが

らまとめた秀作である。現実の話として

咀嚼していく中で、いろいろとリアルな

問題にぶつかってしまうが、新しい発想

と展開する風景に現代的な若さを見るよ

うな気がする。私たちは、何故にこうま

でして都市に依存しまた、集まって住む

ことに執着するのだろうか ?1本の樹

木の周りに展開する日常のシーンは、豊

かでもあり、ある時にはアイロニカルに

「自然」という存在を示唆する対象とも

なり、いろんな解釈が存在しそうである。

 最近とくに増えた「低層高密度」「増

殖系」作品の中では、単純な BOXの増

殖ではなくどちらかというとリゾーム的

な増殖の仕方が21世紀的だとも言えよ

う。が、問題はそこに発生した「空間」

であろうか? 居住空間に存在するコミ

ュニティというよりもつかず離れずの距

離感を持つコミュニケーション的ディス

タンスと、各住戸が持つアノニマスな冷

たさがいかにも「現代的」ではあるが、

作者はその空間の持つ暴力的とも言える

増殖性に何らかの疑いを持っているのか

否か? その思想性は別の機会にすると

して、手法と構築の仕方には、高い評価

を与えられるすぐれた作品である。

Page 2: KiRin Stitch - Nihon University

-集合住宅再開発における森林共生建築群の提案-

 □ ライフスタイルと「間」のデザイン

  人と都市のあいだ、人と建築のあいだ、人とモノのあいだ、人と人のあいだ。  「間」とはあるものとあるものの距離を意味すると同時に、  ひとつながりの空間や時間も意味します。  人と都市のあいだ、人と建築のつながり、人とモノのつながり、  そして、人と人のつながり。   人間について考えてみる・・・。  人はあらゆる「間」にはまり込むことで人間になります。

  そして人は「間」をうまく使い分けます。  電車の中、学校、図書館、トイレの中でさえ・・・。  しかし、外では自然に行っている間の選択は、家の中では自由にできません。  完全にくっつくか(リビング)、完全に離れるか(個室)・・・。

  本計画では「間」のデザインから  住戸を超えたさまざまな「場」のきっかけづくりを散在させることにより、  人・家族・地域・自然・都市が共存する集合住宅をつくる提案とします。

  「間」をおくことによって生まれる、ゆるやかなつながりが逆に  人と人との絆を強くするきっかけにはならないでしょうか。

連庭によるみんなのボイド

空中の個人の庭としてのボイド

・住戸部分のレベルの外部(ボイド)は、一世帯人一外部として ファサードのデザインがなされています。・ボイドに面して開かれる間と、自分以外の閉じるファサード で間が構成されています。・このデザインは、内部空間のテクスチャーを変えると同時に 外部の空間も変わるため、ボイド一つ一つが外部の室内化を 多重ボイドのデザインとし、誰もが利用できる連庭のデザインが 形成されています。

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麒麟の穴は多重ボイド

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second and third floor『樹木の中に沈む住戸』������

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������first floor『全てが共存する森のGL空間』

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