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JICA カンボジア事務所 July 16, 2012 No.11 ■淡水魚養殖、カンボジアに学べ! 1 ■数字で見るカンボジア「動物性たん ぱく質と魚」 1 ■ 理数科教育改善計画プロジェクト、 フェーズ2完了へ 2 ■カンボジア投資セミナー、開催へ 2 ■<カンボジアひと模様>カンボジア 開発評議会 ソク・チェンダ長官 3 ■ カンボジア事務所から 3 ■ カンボジアの新聞から 4 ■ 今後の活動のご案内 4 淡水魚養殖、カンボジアに学べ! アフリカ・ベナンから研修員 「淡水魚の消費量世界一」といわれるカンボジアに6月中旬、JICAが支援する 淡水養殖の普及方法を学ぼうと、西アフリカのベナン共和国から2人の研修員が 訪れた。1週間の研修では、タケオ州やシェムリアップ州の養殖農家を訪れた。 ベナンでは、JICAの技術協力プロジェクトとして、「ベナン国内水面養殖 普及プロジェクト(PROVAC)」が2010年から実施されている。淡水魚を養 殖する内水面養殖の技術を確立するだけでなく、それを農民間に広め、自立 運営が可能な事業とすることが目的だ。この点で、カンボジアで2005年から 実施されている「淡水養殖改善・普及プロジェクト(FAIEX)」は成功事例 としてベナンでのプロジェクトにも役立つと考えられ、研修が実現した。 カンボジアのFAIEXが目指すのは、大規模な投資が必要な集約的な養殖で はなく、一般農家が水田跡地などを利用した小さなため池でできる養殖事業 の普及。農村住民たちの現金収入になるだけでなく、淡水魚が貴重なタンパ ク源である彼らの栄養改善にもつながる取り組みだ。 2005年から2010年までのフェーズ1では、タケオ州など4州に種苗生産農 家と呼ばれる稚魚を育てる農家を育成し、地域の中での生産サイクルの核を 作った。2011年から2015年までのフェーズ2では、種苗生産農家を中心に農 民間で技術を伝え合うというフェーズ1で定着したサイクルを、さらに広い範 囲で普及させるべく取り組んでいる。 研修員として参加したのはベナン政府水産局の副局長とプロジェクトマネ ージャー。研修後、「カンボジアでは、1地区に1養殖池、1カ村に1種苗生産 農家といった明確な目標が政府によって定められており、ベナンでも参考に したい」、「カンボジアでは、農民から農民という普及手法が確立され、中 核となる農家が種苗販売によってモチベーションを高めていることが印象深 い」と、感想を述べた。 ベナンの研修員を受け入れたJICAカンボジア事務所は、「カンボジアがこ れまでの経験を共有し、教える立場になるというのは、まだ新しい取り組み であり、ベナンにとって有益なだけでなく、カンボジア側にも良い刺激とな る南南協力の好事例。今後もベナンだけでなく、周辺国との南南協力や技術 交換の機会が持たれることを期待したい」と、している。 ■カンポット州でフェーズ1中核 農家を訪問。ベナンの事業でも養 殖に取り組む女性農家がおり、成 功事例として有意義な情報が得ら れた。 数字で見るカンボジア <動物性たんぱく質と魚> 動物性たんぱく質を魚 で摂取する割合を、国別に 比較したのが、右のグラフ だ。国連の食糧農業機関 (FAO)が調べた。カンボ ジアの割合は68.7%で、隣 国と比べても飛び抜けて高 い。FAOによると、日本も 1960年代には60%台だった が減少した。一方、カンボ ジアは、年々この割合が高 くなっている。 ■グラフのデータは、”FAO Fish- ery and Aquaculture Statistics (2009)”より。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 カンボジア タイ ベトナム 日本 米国 ベナン 動物性たんぱく質摂取における「魚」の割合 (2007年、国連世界食糧農業機関) 68.7% 34.9% 38.3% 39.9% 7.6% 23.2%

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Page 1: JICA カンボジア事務所 July 16, 2012 NoJICA カンボジア事務所 July 16, 2012 No.11 淡水魚養殖、カンボジアに学べ! 1 数字で見るカンボジア「動物性たん

JICA カンボジア事務所    July 16, 2012 No.11

■淡水魚養殖、カンボジアに学べ! 1

■数字で見るカンボジア「動物性たん

ぱく質と魚」 1

■理数科教育改善計画プロジェクト、

フェーズ2完了へ  2

■カンボジア投資セミナー、開催へ 2

■<カンボジアひと模様>カンボジア

開発評議会 ソク・チェンダ長官  3

■カンボジア事務所から 3

■カンボジアの新聞から 4

■今後の活動のご案内 4

淡水魚養殖、カンボジアに学べ!アフリカ・ベナンから研修員「淡水魚の消費量世界一」といわれるカンボジアに6月中旬、JICAが支援する

淡水養殖の普及方法を学ぼうと、西アフリカのベナン共和国から2人の研修員が訪れた。1週間の研修では、タケオ州やシェムリアップ州の養殖農家を訪れた。ベナンでは、JICAの技術協力プロジェクトとして、「ベナン国内水面養殖

普及プロジェクト(PROVAC)」が2010年から実施されている。淡水魚を養殖する内水面養殖の技術を確立するだけでなく、それを農民間に広め、自立運営が可能な事業とすることが目的だ。この点で、カンボジアで2005年から実施されている「淡水養殖改善・普及プロジェクト(FAIEX)」は成功事例としてベナンでのプロジェクトにも役立つと考えられ、研修が実現した。カンボジアのFAIEXが目指すのは、大規模な投資が必要な集約的な養殖で

はなく、一般農家が水田跡地などを利用した小さなため池でできる養殖事業の普及。農村住民たちの現金収入になるだけでなく、淡水魚が貴重なタンパク源である彼らの栄養改善にもつながる取り組みだ。2005年から2010年までのフェーズ1では、タケオ州など4州に種苗生産農

家と呼ばれる稚魚を育てる農家を育成し、地域の中での生産サイクルの核を作った。2011年から2015年までのフェーズ2では、種苗生産農家を中心に農民間で技術を伝え合うというフェーズ1で定着したサイクルを、さらに広い範囲で普及させるべく取り組んでいる。研修員として参加したのはベナン政府水産局の副局長とプロジェクトマネ

ージャー。研修後、「カンボジアでは、1地区に1養殖池、1カ村に1種苗生産農家といった明確な目標が政府によって定められており、ベナンでも参考にしたい」、「カンボジアでは、農民から農民という普及手法が確立され、中核となる農家が種苗販売によってモチベーションを高めていることが印象深い」と、感想を述べた。ベナンの研修員を受け入れたJICAカンボジア事務所は、「カンボジアがこ

れまでの経験を共有し、教える立場になるというのは、まだ新しい取り組みであり、ベナンにとって有益なだけでなく、カンボジア側にも良い刺激となる南南協力の好事例。今後もベナンだけでなく、周辺国との南南協力や技術交換の機会が持たれることを期待したい」と、している。

■カンポット州でフェーズ1中核農家を訪問。ベナンの事業でも養殖に取り組む女性農家がおり、成功事例として有意義な情報が得られた。

数字で見るカンボジア <動物性たんぱく質と魚>

 動物性たんぱく質を魚で摂取する割合を、国別に比較したのが、右のグラフだ。国連の食糧農業機関(FAO)が調べた。カンボジアの割合は68.7%で、隣国と比べても飛び抜けて高い。FAOによると、日本も1960年代には60%台だったが減少した。一方、カンボジアは、年々この割合が高くなっている。

■グラフのデータは、”FAOFish-eryandAquacultureStatistics(2009)”より。

0 10 20 30 40 50 60 70 80

カンボジア

タイ

ベトナム

日本

米国

ベナン

動物性たんぱく質摂取における「魚」の割合(2007年、国連世界食糧農業機関)

68.7%

34.9%

38.3%

39.9%

7.6%

23.2%

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「考える」授業、質向上に貢献理数科教育改善計画プロジェクト、フェーズ2完了へある調査によると、カンボジアの高校で文系・理系の選択制を導入したとこ

ろ、約7割が理系を選択したという。理由は「就職に結びつきやすい」。産業の高度化のためにも理系の人材育成はこの国にとって重要課題となっている。ところが、国内の理科教育事情は充実しているとは言いがたい。教員の教科

知識・教授技術の不足や、実験器材の不足などで、理科の授業は教科書を読んだり質問の答えを教科書から探したりするだけの内容になりがち。「なぜ」を考えさせて科学的思考を伸ばす「探究」が殆どないのが現状だ。JICAは2000年から、「理数科教育改善計画プロジェクト(STEPSAM)」を

通じ、国立教育研究所を中心に、理数科分野の教員の能力向上に継続的に取り組んできた。2008年から始まったSTEPSAM2では、カンボジアの基礎教育(初等教育と、日本の中学校にあたる前期中等教育)における理科授業の質的向上を目的に、教員養成校教官や一部現職教員への研修などを実施し、科学的探究を取り入れた授業作りを支援してきた。8月末にフェーズ2は完了し、今年度内にもフェーズ3が開始される予定だ。プロジェクトには、日本の大学の教員や民間のコンサルタントの専門家が携

わった。さらに日本の大学院に留学して理科教育を学んで帰ってきた人材も研修教官として活躍している。息の長い取り組みは確実に成果を出しており、カンボジア国内の理科授業の質はプロジェクト開始当時に比べて格段に高まったという評価を受けている。フェーズ3では、教員養成校から学校現場へとさらに成果を浸透させる取り組みが始まる。 

■プレイベン州の中学校教員養成校で行った半日研修会。集まった中学教員に、授業での教材の使い方を助言した

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カンボジア投資セミナー25日に大阪、27日に東京で開催

カンボジアの最も新しいビジネス情報を得られる「カンボジア投資セミナー」が7月25日(水)に大阪で、27日(金)に東京で開かれる。JICAのほか、カンボジア開発評議会(CDC)、国際機関日本アセアンセンター、日本貿易振興機構(JETRO)が主催する。セミナーでは、カンボジア政府の投資受け入れ窓口であるCDCのソク・チ

ェンダ事務局長兼首相付大臣が、同国の投資環境について講演するほか、在カンボジア日本大使館の黒木雅文大使が投資促進のための両国政府による支援について説明する。JICA専門家(CDC投資環境改善アドバイザー)の今村裕二氏、JETROプノンペン事務所長の道法清隆氏もそれぞれ講演する。また、プノンペンにショッピングモールを開設する予定の「イオン」、本年5月に自動車部品製造工場の稼動を始めた「住友電装」、日系工場の建設が相次ぎ注目されるベトナム国境バベットにいち早く進出した縫製業の「スワニー」、カンボジアの物流事情に詳しい「郵船ロジスティック」から、具体的な経験談を聞くことができる。セミナー終了後、カンボジア進出を検討する企業を対象に、JICA専門家ら

による個別相談も実施される。セミナー参加、個別相談は申し込みが必要。

■大阪:7月25日(水)ホテルグランヴィア大阪13:30~16:20■東京:7月27日(金)ザ・プリンス パークタワー東京13:30~16:20■申し込み:国際機関日本アセアンセンターのホームページからお申 し 込 み く だ さ い 。(http://www.asean.or.jp/ja/invest/about/eventinfo/2012/2012-17.html)■問い合わせ:国際機関日本アセアンセンター貿易投資部 03-5402-8006

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カンボジアひと模様

皿洗いを手伝ってくれた日本人、生涯忘れないカンボジア開発評議会(CDC) ソク・チェンダ事務局長

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日系企業のカンボジア投資が急増する今、この国のビジネス関係者でソク・チェンダ氏(56)を知らない人はいない。カンボジア政府の投資受け入れ窓口であるカンボジア開発評議会(CDC)の事務局長として、カンボジアビジネスの「顔」となった。25日と27日に日本で開かれる投資セミナーでも講演をする。「日本のビジネスはとにかく慎重。その日本がカンボジアにやっと来てくれ

た」。昨今の日系企業進出熱をチェンダ氏は歓迎する。「日本人は口にしたことは必ず実行する。信じられるのです。それが私の日本人観です」カンボジアの裕福な家庭に生まれ何不自由なく育った。高校卒業後はフラン

スの大学に留学。パリで青春を謳歌していた1975年、祖国はポル・ポト派に支配され、チェンダ氏は帰るべき「国」も財産も失ったという。内戦状態の故国と自分の行く末を憂いながら、レストランの皿洗いで生活費

を稼ぐ日々が続いた。慣れない仕事で倒れそうになったとき、助けてくれたのが同じ厨房にいた2人の日本人だったという。「自分たちの仕事を終えてから、私の皿洗いを黙って手伝ってくれた。彼らがいなかったら、私はあの苦境を乗り越えられなかった。一生忘れない」その後、チェンダ氏はフランスの民間企業で働き、管理職として十分な給料

を得るようになっていた。だが、いつかは故郷に戻り、カンボジアのために働きたいという「胸の火」は消えなかった。パリでカンボジア内戦を終わらせる和平協定が結ばれたのは1991年10月23日のことだ。「私はその翌日に会社に辞表を出し、カンボジアに帰ることにしました」その日から、チェンダ氏の復興に向けた長いたたかいが始まった。カンボジ

ア政府が、外国資本に開放的なのは、「復興と開発には外国資本の力が必要だから」と、言う。「カンボジアという国のキーワードは、『プラグマティズム(現実主義)』。現状を謙虚に認め、民であろうと官であろうと、良きパートナーとともに国づくりに取り組む。それが私たちです」

■援助の現場で手を携えるカンボジア側のカウンターパートをご紹介するシリーズです。

“カンボジアがより発展するために、今必要なのは、人材育成だと思います” (ソク・チェンダ事務局長)

カンボジア事務所から こんにちは、事務所の総務担当次長の竹内です。今年に入ってから、カンボジア事務所関係者を含め、ひったくりや泥棒の被害が相次いでいます。被害にあ

われた方からは財布や携帯、仕事用に一生懸命作った書類などを取られたとの報告を受けています。ひもの細い肩掛けポシェットや自転車の荷物カゴの中などは狙われやすいのでご注意ください。リュックサック、ウェスト

ポーチやチェーン付の財布(写真を参照ください)など、パッと見で盗りにくそうにしているだけで、随分と被害に遭う確率は下がります。以前、テロ対策を担当していた時に「難易度が高いと感じさせてあきらめさせる

こと」が、犯罪防止に最も効果のある方法であると聞いていました。ちょっとした予防策でも犯罪行為者に対し心理的に大きなインパクトを与えるということをご理解いただければ幸いです。なお、私、先日、タイの空港で免許証入りの名刺入れをうっかり忘れて、その

後、見つかっていません。卓上放置のうっかりミスにもご注意ください。               (次長 竹内博史、写真は愛娘の愛ちゃんと)

「犯罪にご注意」

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カンボジアの新聞から(2012年6、7月)■カンボジアで子供が死亡、エンテロウィルスが原因か 世界保健機関(WHO)によると、カンボジア国内で今年4月から、急性呼吸器系疾患で子供が亡くなるケースが多発。当初は「原因不明」と報じられたが、患者の多くから「エンテロウイルス71型」が検出された。エンテロウイルス71型は手足口病を引き起こす。典型的な症状は高熱、呼吸器系や神経系の異常などで、カンボジア保健省は7月5日までに59人の患者を確認し、うち52人が死亡した。患者は生後3ヶ月から11歳の子供で、多くが3歳以下だった。

■大手不動産会社と縫製企業が上場準備 カンボジアの大手不動産会社「ボナ不動産」が、株式市場への上場準備を始めたと明らかにした。ソン・ボナ代表は「上場によって資本の増強が可能になり、国際的な不動産市場へも進出したい」と、している。1年以内の新規株式公開(IPO)を目指すという。また、プノンペン証券によると、縫製業2社(台湾系縫製企業のQMIインターナショナルおよびTYファッション)も年末までの上場を目指して準備を行っている。

■シアヌークビル港公社が増収 シアヌークビル港公社の2012年上半期(1月から6月)の収入は、約1400万ドルに達し、前年同期比で13.6%増であることが分かった。縫製品などの輸出が順調で、石油や建設資材の輸入も増加した。今後、港に隣接し、日本の援助で建設したシアヌークビル港経済特別区が本格稼動すれば、さらに貨物量の増加に寄与するとみられている。

活動のご案内

今後のJICAの活動や国際的な動きをご紹介します。JICAカンボジア事務所では、こうした動向をプレスリリースでもご紹介をしております。ご利用ください。

<予定>7月16日-27日 不発弾対策に関する第1回南南協力ワークショップ<カンボジア-ラオス>(プノンペン)7月25、27日 カンボジア投資セミナー(大阪7/25、東京7/27)8月25日-9月1日 ASEAN経済大臣会合(シェムリアップ)10月14-17日 プチュンバン(お盆、祝日)(プノンペン)11月18-20日 ASEAN首脳会合、東アジアサミットなど(プノンペン)

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■カンボジアの新聞から、政治、経済、社会などのニュースをダイジェストでお伝えします。

発行責任者:JICAカンボジア事務所広報班6th,7th,8thFloors,Preah Norodom Blvd., PhnomPenh,[email protected]掲載記事、写真、イラストなどの無断転載を禁じます。

We’reontheWeb!ウエブサイトはこちらhttp://www.jica.go.jp/cambodia/index.html

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Tel: 023-211673 http://www.jica.go.jp/cambodia/office/about/ngodesk

開館時間:月曜~金曜 8:00-12:00, 14:00-17:00

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