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大阪市に存在する密集市街地の価値・課題を把握し 同市におけるその有効活用法を考案する 密集市街地の現状 研究目的 密集市街地を構成する3つ要素は ここ10年間で約50%減少 松塚充弘 招聘准教授(関西電力株式会社)、山本孝夫 教授 川口 潤 草分剛瑠 津田泰介 乗峯笙汰 張 凌雲 ① ヒューマンスケールの空間 ② 古くから続く長屋・併用住宅・木造 住宅が並ぶ地域 ③ 昔ながらの雰囲気を有する市街地 ① 狭小な敷地に高密度で建築物が建て 並ぶ ② 地域内の道路・公園等の公共施設が 不十分 ③ 老朽木造建築物が多く存在する 密集市街地とは 耐久性や可燃性の観点より 解消すべき負の遺産としてとらえている 減少する密集市街地 このままでは密集市街地が 消滅してしまうのでは…? 長屋住宅 古い木造住宅 古い併用住宅 88, 370 70, 420 43, 900 H.15 H.20 H.25 12, 900 9,4 20 H.15 H.20 84, 020 57, 370 44, 100 H.15 H.20 H.25 我々の定義 国交省による定義 密集市街地の価値 ① 自分のライフスタイルを表現できるまち ② 成果効率ばかりではない働き方 安心互いに顔見知りであり不審者がすぐ分かる 安全通過交通が少なく子供も安全に過ごせる ヒューマンスケール人々が落ち着ける ① 都会の喧騒を離れリフレッシュ 歴史的街並みを体験できる 生のコミュニケーションを味わえる 3つの主体が感じる密集市街地の価値 仮想評価法(CVM)による評価 大阪府における各年代各性別の人口 各年代各性別の平均支払意志額 160 億円 京都の歴史的町並みに対して 2/3の経済価値 中崎町の潜在的経済価値 住む人 働く人 訪れる人 B班 評価対象 支払意志額 (円) 集計額 (億円) 釧路湿原の生態系 16414 361 四万十川の水質 14611 6150 霞ヶ浦の水質 5454 589 琵琶湖の水質 3964 6184 横浜市の水源林 1524~3210 7~37 京都の歴史的街並み 1000~4000 200~1800 ▼主なCVM研究例 世界各国から来日する留学生にヒアリング調査を実施 「観光地として面白い所」 Claire Leung (マカオ) 「私の国では壁に耐火塗料を使って古い街並みを残している」 康子晨 (中国) Ahmed (サウジアラビア) Meriç Kırmızı (トルコ) Stefo(ブルガリア) 吴京(中国) 「日本の歴史は木造の歴史であり、残すべき」 「ビルばがり建てるのは安易過ぎる、残すべきでは」 「補修して使い続ける方が経済的負担が少ないはず」 「ヒューマンスケールの魅力ある空間」 危険性の回避 整備率 (%) 焼失棟数 () 非地震時 地震時 0 2000 1200 30 1000 300 50 250 50 70 10 10 整備率による累積焼失棟数の変化 (着火後360分後の焼失数) 内壁に耐震防火同時補強技術を用いた 密集市街地の延焼シュミレーションに 関する研究 ハード面による対策 ソフト面による対策 補強技術により著しく焼失数を 減少できることが示唆された 避難地・避難経路の設定、避難訓練の実施 消火栓使用方法に関する講習会実施 尼崎市潮江地区密集市街地(兵庫県)では、 密集市街地ならではの防災まちづくりに 取り組んでいる 住民への意識改革といった ソフト面の対策を行なっている 2班の提案 ②大阪市のシンボル化 ①価値の認識とシビックプライドの向上 NPO間の連携 地域やNPO、企業の連携 ライフスタイルの多様化と質の向上 NPO等の活動活性化と 連携促進 CSR活動の増大 観光関連産業の拡大 都市ブランドイメージ向上 新たな観光コンテンツの創出 地域力の向上 住民同士の連携 木密地区ならではの災害対応力 大都市と歴史を同時に感じる名所 メディアへの露出 ③経済活性 都市昔の街並みが混在する 大阪まちづくりの推進 経済活動の拡大 観光客の増加 密集市街地ブランドを活用した新たな産業 大阪観光における一つの候補地 以上のような、密集市街地を大阪における1つのシンボルとして 取り上げた場合のまちづくりによる効果のモデルを考案 密集市街地を大阪市のシンボルへ 区画整備以外による密集市街地の持つ危険性の回避を模索 海外の人から見た密集市街地 環境の価値を金額で評価する手法 大阪市への提案 【椎名辰之氏】 ●大阪市都市整備局 住環境整備課長 ●大阪市内の密集住宅 市街地の住環境整備 を担当 ●それでも市は密集市街地の整備を続けます。 ●しかし、密集市街地を地域資源とする視点は 新しく、可能性としてアリです! ●密集市街地というネーミングを変えてみては? 密集市街地を地域資源とした まちづくりを大阪市へ提案 1. 都市における密集市街地の有用性を研究 2. 密集市街地は近年、減少傾向にあることを把握 3. 失われつつ密集市街地の価値について、中崎町を選択し調査 4. 密集市街地には価値が存在し、日本独自の雰囲気を持つことを認識 5. 密集市街地を1つの資源とみなすまちづくりを大阪市に提案 6.「密集市街地を整備対象」とみなす大阪市に「資源」という捉え方を提供 7. 密集市街地を活かしたまちづくりの具体案創出が今後の課題 まとめ

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Page 1: 密集市街地の現状 - Osaka University › oje › ber-poster › BER14_poster_2.pdf大阪市に存在する密集市街地の価値・課題を把握し 同市におけるその有効活用法を考案する

大阪市に存在する密集市街地の価値・課題を把握し 同市におけるその有効活用法を考案する

密集市街地の現状

研究目的

密集市街地を構成する3つ要素は ここ10年間で約50%減少

松塚充弘 招聘准教授(関西電力株式会社)、山本孝夫 教授 川口 潤 草分剛瑠 津田泰介 乗峯笙汰 張 凌雲

①ヒューマンスケールの空間 ②古くから続く長屋・併用住宅・木造住宅が並ぶ地域

③昔ながらの雰囲気を有する市街地

①狭小な敷地に高密度で建築物が建て並ぶ

②地域内の道路・公園等の公共施設が不十分

③老朽木造建築物が多く存在する

密集市街地とは

耐久性や可燃性の観点より 解消すべき負の遺産としてとらえている

減少する密集市街地

このままでは密集市街地が 消滅してしまうのでは…?

長屋住宅 古い木造住宅 古い併用住宅

88,370 70,

420 43,900

H.15 H.20 H.25

12,900 9,4

20

H.15 H.20

84,020

57,370 44,

100

H.15 H.20 H.25

我々の定義

国交省による定義

密集市街地の価値

①自分のライフスタイルを表現できるまち ②成果効率ばかりではない働き方

①安心:互いに顔見知りであり不審者がすぐ分かる ②安全:通過交通が少なく子供も安全に過ごせる ③ヒューマンスケール:人々が落ち着ける

①都会の喧騒を離れリフレッシュ ②歴史的街並みを体験できる ③生のコミュニケーションを味わえる

3つの主体が感じる密集市街地の価値

仮想評価法(CVM)による評価

大阪府における各年代各性別の人口

各年代各性別の平均支払意志額

160 億円

京都の歴史的町並みに対して

約2/3の経済価値

中崎町の潜在的経済価値

住む人

働く人

訪れる人

B班

評価対象 支払意志額 (円) 集計額 (億円)

釧路湿原の生態系 16414 361

四万十川の水質 14611 6150

霞ヶ浦の水質 5454 589

琵琶湖の水質 3964 6184

横浜市の水源林 1524~3210 7~37

京都の歴史的街並み 1000~4000 200~1800

▼主なCVM研究例

世界各国から来日する留学生にヒアリング調査を実施

「観光地として面白い所」

Claire Leung (マカオ)

「私の国では壁に耐火塗料を使って古い街並みを残している」

康子晨 (中国)

Ahmed (サウジアラビア)

Meriç Kırmızı (トルコ)

Stefo(ブルガリア)

吴京泽 (中国)

「日本の歴史は木造の歴史であり、残すべき」

「ビルばがり建てるのは安易過ぎる、残すべきでは」

「補修して使い続ける方が経済的負担が少ないはず」

「ヒューマンスケールの魅力ある空間」

危険性の回避

整備率

(%)

焼失棟数 (棟)

非地震時 地震時

0 2000 1200

30 1000 300

50 250 50

70 10 10

▼ 整備率による累積焼失棟数の変化

(着火後360分後の焼失数)

内壁に耐震防火同時補強技術を用いた密集市街地の延焼シュミレーションに関する研究

ハード面による対策 ソフト面による対策

補強技術により著しく焼失数を 減少できることが示唆された

避難地・避難経路の設定、避難訓練の実施 消火栓使用方法に関する講習会実施

尼崎市潮江地区密集市街地(兵庫県)では、密集市街地ならではの防災まちづくりに取り組んでいる

住民への意識改革といった ソフト面の対策を行なっている

2班の提案

②大阪市のシンボル化

①価値の認識とシビックプライドの向上

• NPO間の連携 • 地域やNPO、企業の連携

ライフスタイルの多様化と質の向上

NPO等の活動活性化と 連携促進

CSR活動の増大

観光関連産業の拡大

都市ブランドイメージ向上

新たな観光コンテンツの創出

地域力の向上 • 住民同士の連携 • 木密地区ならではの災害対応力

• 大都市と歴史を同時に感じる名所

• メディアへの露出

③経済活性

都市と昔の街並みが混在する 大阪まちづくりの推進

経済活動の拡大 • 観光客の増加 • 密集市街地ブランドを活用した新たな産業 • 大阪観光における一つの候補地

以上のような、密集市街地を大阪における1つのシンボルとして 取り上げた場合のまちづくりによる効果のモデルを考案

密集市街地を大阪市のシンボルへ

区画整備以外による密集市街地の持つ危険性の回避を模索

海外の人から見た密集市街地

環境の価値を金額で評価する手法

大阪市への提案 【椎名辰之氏】 ●大阪市都市整備局 住環境整備課長 ●大阪市内の密集住宅 市街地の住環境整備を担当

●それでも市は密集市街地の整備を続けます。 ●しかし、密集市街地を地域資源とする視点は 新しく、可能性としてアリです! ●密集市街地というネーミングを変えてみては?

密集市街地を地域資源とした まちづくりを大阪市へ提案

1. 都市における密集市街地の有用性を研究 2. 密集市街地は近年、減少傾向にあることを把握 3. 失われつつ密集市街地の価値について、中崎町を選択し調査

4. 密集市街地には価値が存在し、日本独自の雰囲気を持つことを認識 5. 密集市街地を1つの資源とみなすまちづくりを大阪市に提案 6.「密集市街地を整備対象」とみなす大阪市に「資源」という捉え方を提供 7. 密集市街地を活かしたまちづくりの具体案創出が今後の課題

まとめ