成育だより vol25 0107 · 2 days ago · 2 国立研究開発法人...

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〒157-8535 東京都世田谷区大蔵 2-10-1 電話:03-3416-0181 FAX:03-3416-2222 発行:国立成育医療研究センター 五十嵐 隆 編集:企画戦略局広報企画室 村上 幸司 近藤 留衣 田地 美香 国立成育医療研究センターだより NATIONAL CENTER FOR CHILD HEALTH AND DEVELOPMENT NEWS 2021.1.20 発行 Vol.25 初春号 初春号 2021 Vol.25 Contents 医療関連ご案内/NEWS ふれあい通信/センターの取り組み 診療科のご案内/関連施設紹介 専門職(ひと)シリーズ/研究開発のトピックス Information/寄付関連 国立成育医療研究センター 広報 SNS @ncchd https://www.facebook.com/ncchd/ @ncchd_pr https://twitter.com/ncchd_pr 国立成育医療研究センターや、成育医療に関する様々な情報を投稿しています。ぜひ、フォローしてくださいね。 National Center for Child Health and Development 成育だより 体外式補助人工心臓は、さまざまな理由で動きが悪く なった心臓の代わりに、全身に血液を送る医療機器です。 当センターには3台しかなかったため、治療したくてもお 断りせざるを得ない事態が生じておりました。 当センターは国内で5施設目の「11歳未満の小児心臓移 植実施施設」に認定さ れております。この度 のご寄付で5台に増え たことにより、小児用 体外式補助人工心臓 を必要とする子どもへ の治療のチャンスが広 がりました。非常に高 額な機器のご寄付に大 変感謝申し上げます。 多くの方々にご寄付いただきありがとうございます 日本移植支援協会様から体外式補助人工 心臓を2台ご寄付いただきました 当センター中庭には、イルミネーションを設置してい ます。例年は、研究所の壁面に大きなクリスマスツ リーのイルミネーションが点灯していましたが、去年 壊れてしまい設置できませんでした。しかし今年は、 東京世田谷ロータリークラブからのご寄付で、クリスマス ツリーが復活!病棟からも見られるので、入院中の子ども たちもクリスマスの雰囲気を楽しんでいます。1月いっぱい は実施予定です。ぜひご覧ください! 毎年恒例のイルミネーションが点灯されました。 各所連絡先 患者ご家族からのご予約 救急の場合 早期に診療が必要な場合 セカンドオピニオン外来 医療機器の共同利用(放射診断部) 救急センター 03-3416-0181 (24時間受付) 〈代表〉 医療連携室 03-5494-5486 (月~金 8:30 ~ 16:30) 〈直通〉 予約センター 03-5494-7300 (月~金 9:00 ~ 17:00) 〈直通〉 小児集中治療室(PICU)への転送・搬送 03-5494-7073 小児救急搬送チームにつながります 新生児集中治療室(NICU)への転送・搬送 03-3416-0181 NICUにつなぐように伝えてください 母体搬送 03-3416-0181 母体搬送担当の医師につなぐように伝えてください 医療機関の先生からのご予約・お問い合わせ 左から、日本移植支援協会 髙橋和子理事長、 病院長 賀藤、みなみちゃんを救う会 代表 杉山尚也様 子どもたちの命を守るための医療機器の整備や、療育環境の改善のためにご寄付をいただけるとあり がたく存じます。当センターへの寄付は税制上の優遇措置(寄付金控除)を受けることができます。 詳細はHPをご覧ください。 https://www.ncchd.go.jp/donation/application.html

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Page 1: 成育だより Vol25 0107 · 2 days ago · 2 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development 3 東京消防庁成城消防署の副署長より、当センタ

〒157-8535 東京都世田谷区大蔵 2-10-1 電話:03-3416-0181 FAX:03-3416-2222

発行:国立成育医療研究センター 五十嵐 隆編集:企画戦略局広報企画室 村上 幸司 近藤 留衣 田地 美香

国立成育医療研究センターだより

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EWS 2021.1.20

発行 Vol.25

初春号

初春号

2021

Vol.25

Contents医療関連ご案内/NEWS

ふれあい通信/センターの取り組み

診療科のご案内/関連施設紹介

専門職(ひと)シリーズ/研究開発のトピックス

Information/寄付関連

国立成育医療研究センター 広報 SNS

@ncchd https://www.facebook.com/ncchd/

@ncchd_pr https://twitter.com/ncchd_pr

国立成育医療研究センターや、成育医療に関する様々な情報を投稿しています。ぜひ、フォローしてくださいね。

National Center for Child Health and Development

成育だより 体外式補助人工心臓は、さまざまな理由で動きが悪くなった心臓の代わりに、全身に血液を送る医療機器です。 当センターには3台しかなかったため、治療したくてもお断りせざるを得ない事態が生じておりました。 当センターは国内で5施設目の「11歳未満の小児心臓移植実施施設」に認定されております。この度のご寄付で5台に増えたことにより、小児用体外式補助人工心臓を必要とする子どもへの治療のチャンスが広がりました。非常に高額な機器のご寄付に大変感謝申し上げます。

多くの方々にご寄付いただきありがとうございます

日本移植支援協会様から体外式補助人工心臓を2台ご寄付いただきました  当センター中庭には、イルミネーションを設置してい

ます。例年は、研究所の壁面に大きなクリスマスツリーのイルミネーションが点灯していましたが、去年壊れてしまい設置できませんでした。しかし今年は、東京世田谷ロータリークラブからのご寄付で、クリスマスツリーが復活! 病棟からも見られるので、入院中の子どもたちもクリスマスの雰囲気を楽しんでいます。1月いっぱいは実施予定です。ぜひご覧ください!

毎年恒例のイルミネーションが点灯されました。

各所連絡先患者ご家族からのご予約

救急の場合

早期に診療が必要な場合セカンドオピニオン外来医療機器の共同利用(放射診断部)

救急センター 03-3416-0181(24時間受付)〈代表〉

医療連携室 03-5494-5486(月~金 8:30 ~ 16:30)〈直通〉

予約センター 03-5494-7300(月~金 9:00 ~ 17:00)〈直通〉

小児集中治療室(PICU)への転送・搬送 03-5494-7073 小児救急搬送チームにつながります

新生児集中治療室(NICU)への転送・搬送 03-3416-0181 NICUにつなぐように伝えてください

母体搬送 03-3416-0181 母体搬送担当の医師につなぐように伝えてください

●医療機関の先生からのご予約・お問い合わせ

左から、日本移植支援協会 髙橋和子理事長、病院長 賀藤、みなみちゃんを救う会代表 杉山尚也様

 子どもたちの命を守るための医療機器の整備や、療育環境の改善のためにご寄付をいただけるとありがたく存じます。当センターへの寄付は税制上の優遇措置(寄付金控除)を受けることができます。詳細はHPをご覧ください。https://www.ncchd.go.jp/donation/application.html

Page 2: 成育だより Vol25 0107 · 2 days ago · 2 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development 3 東京消防庁成城消防署の副署長より、当センタ

2 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター National Center for Child Health and Development 3

 東京消防庁成城消防署の副署長より、当センターICUの医師2名に「消防総監感謝状」が贈られました。 この医師2名は、臆することなく心肺停止で倒れていた方の救命活動を行い、適切な処置により現在、社会復帰を果たしていることが高く評価されました。 消防総監感謝状は、東京消防庁から与えられる賞で最も上位の賞だということです。

飯田医師コメント 身に余る光栄に存じます。成相先生をはじめとして救急隊の方や救助に力を貸してくださった近隣の方々に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

 当センターは、臨床研究法に基づいて認定された臨床研究審査委員会を設置しています。特定臨床研究を実施する場合は、臨床研究法に基づいて、認定された臨床研究審査委員会への申請が義務付けられています。 特定臨床研究とは、臨床研究のうち、次のいずれかに該当するものをいいます。◎薬機法における未承認・適応外の医薬品等を用いる臨 床研究◎製薬企業等から資金提供を受けて実施される当該製薬 企業等の医薬品等の臨床研究特に、小児・周産期領域などの成育医療に関する特定臨床研究を実施する場合は、当センターの臨床研究審査委員会への申請をご検討ください。 特定臨床研究の進め方や計画立案などのご相談については、「臨床研究相談・支援窓口」

成相医師コメント この度は貴重な賞をいただき、誠にありがとうございました。微力ながら救助にあたらせていただきましたが、ご回復なさったとうかがい大変嬉しく思います。救助の際にご協力くださった周囲の方々や、今までご指導いただいたたくさんの方々にも感謝の気持ちをお伝えしたいです。

ふれあい通信

NEWSニュース

10月31日(土) ミニコンサート

オンライン クリスマス会開催

12月12日(土) プレコンセプションケアを広めるため日米関係者が連携日米合同カンファレンス開催

 奮闘している医療従事者を応援したいと、チェリスト荒庸子さんからお申し出をいただき、ちょうどハロウィーンの昼下がりに、成育庭園にてミニコンサートを開催いたしました。当日は秋晴れながら少し肌寒い中、スマイルなど数曲を演奏してくださいました。同時にイタリアンレストランLA Giocondaが キッチンカーで訪れ、パニーニやパスタなどの食事を提供してくださいました。素敵な音楽と温かい食事に癒され、心温まる時間となりました。この度はありがとうございました。

 「プレコンセプションケア(略称:プレコン)」とは、妊娠前から始めるヘルスケアで、「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と世界保健機関(WHO)で定義されています。若い男女が将来の妊娠を見据えて日々の生活や健康と向き合うことで、次の世代の子どもの健康にもつながるとして、近年、注目されています。

  12月12日に開催された『プレコンセプションケア 日米合同カンファレンス』では、米国でプレコンセプションケアを牽引しているノースカロライナ大学のSarah Verbiest教授を迎え、米国のプレコンセプションケアの現状や課題、広めるための戦略、有益な情報源などについて基調講演をいただきました。また、日本の衛生学・公衆衛生学、産科 / 女性外科、助産師などの専門家が、それぞれの立場から講演を行いました。 当日のプレゼンテーション資料や講演の動画は当センターのHPに公開しています。健やかな次世代の育成のため、プレコンセプションケアを広めていくことにぜひご協力ください。

 12月15日には、ドナルド・マクドナルドハウス主宰で、影絵作家 藤城清治先生の展覧会と東京21世紀管弦楽団と慶応大学の学生の弦楽四重奏の演奏が行われ、オンラインで中継されました。 また、12月24日にはTokyo Great Santa Run主宰のクリスマス会が行われました。このイベントは病気と闘う子ども達を応援するプロジェクトで2018年に始まりました。参加費の一部がクリスマスプレゼントや医療支援に使われてきました。しかし、2020年はコロナ禍で、集まってみんなで走ることが出来なくなりました。それでも子ども達を応援しようと、プロジェクト代表の医学部や看護学部の学生たちが寄付金を募り、患者さん全員にプレゼントを届けてくださいました。 今回は初めてで試行錯誤しながらも、子ども達を励まそうという気持ちや、直接会えなくても繋がることの大切さを実感するイベントになりました。ご尽力いただきました皆様には深謝申し上げます。引き続き応援いただけますと幸いです。

当センターICUの医師2名に「消防総監感謝状」が贈られました

特別講演「小児から成人への移行期における治療や対策が大切な皮膚アレルギー疾患について」(講師:藤田医科大学医学部 総合アレルギー科教授 矢上 晶子先生)、および一般演題

日本医師会生涯教育制度1単位、日本小児科学会小児科領域講習1単位、日本アレルギー学会専門医制度2単位

第25回 国立成育医療研究センターアレルギー臨床懇話会

認定臨床研究審査委員会(CRB)相談について

開催日場 所定 員

対 象内 容

取得単位

申込み方法

問合わせ先

詳細はセンターHPをご覧ください

アレルギーセンター 早瀬、福家

医療関連ご案内

【お問合せ】研究開発監理部 臨床研究管理室TEL:03-3416-0181(代表) 03-5494-7120(内線 5927)E-mail:[email protected]

アレルギー疾患に関心のある医療従事者

先着500名Webinarによるライブ動画配信(当センター 1階講堂より)2021年2月4日(木)

https://www.ncchd.go.jp/scholar/clinical/section/madoguchi.html)

基準遵守義務(GCP省令)

医薬品医療機器等法 臨床研究法

医薬品等の臨床研究

手術・手技の臨床研究

一般の医療治験(承認申請目的の医薬品等の臨床試験)

特定臨床研究未承認・適応外の医薬品等の臨床研究

製薬企業等から資金の提供を受けた医薬品等の臨床研究

基準遵守義務 基準遵守義務(努力義務)

手術・手技の臨床研究については、臨床研究法の対象外。

にご連絡いただきますようお願いします。

 当センターは、プレコンセプションケア外来で相談や検診も行っております。小児期にご病気の治療を受けた方や、現在も通院中の方の将来の妊娠・出産に関するご相談にも力を入れていますので、妊娠・出産に不安がある方にご案内いただければ幸いです。

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National Center for Child Health and Development4 5国立研究開発法人 国立成育医療研究センター

日本で初めて血友病患者さんの遺伝子治療を実施

センターの取り組み

 当センターではこのたび、血友病患者さんの遺伝子治療の治験を行いました。効果が発揮され、今のところ有害な副作用も起きていません。 血友病(けつゆうびょう)は血液を凝固させる第VIII因子または第IX因子が、生まれつき少ないか働きが悪いために、血液が固まりにくい病気で、男児が主になります。昔は、繰り返し出血して関節が壊れていましたが、近頃は治療がよくなり、凝固因子製剤というお薬を定期的に補うことによって、スポーツもできるようになりました。しかし、お薬を毎週1回から3回静脈に注射するのは、子どもにとっても親にとっても大きな負担になっています。 血友病Bは、凝固第IX因子というタンパク質の遺伝子に異常があって起こります。そのため、第IX因子の遺伝子を補ってあげれば、血友病Bが治ることが期待できます。今回の治験では正常な第IX因子遺伝子の運び屋(安全性の高いウイルス)を、第IX因子をほとんど作れない血友病Bの患者さんの静脈に点滴注射しました。遺伝子の運び屋は、第IX因子が元々作られる臓器である肝臓に住み着いて、第IX因子を作り続けます。

今後は3年以上の間、凝固因子製剤を注射することから解放されることが期待され、血友病患者さんに福音となることが望まれます。 遺伝子細胞治療推進センター、臨床研究センターの臨床研究コーディネーター、検査部、看護部、薬剤部など多くの部門が団結して新しいプロジェクトに協力することによって、順調に実施することができました。当センターでは今後も遺伝子治療を進めていきます。感謝と共にお知らせします。

小児がんの中央病理診断について

  血液内科 石黒 精

病理診断部・中央病理診断部統括部長義岡 孝子

中央病理診断とは? 病理診断部では、病院病理部門の日常業務の他に、厚生労働省より指定された小児がん中央機関としての業務の一環で小児がんの中央病理診断を行っています。実際の診断は、成育の病理医のみならず、小児専門病院や小児がん拠点病院などに在籍している小児がんを専門とする病理医が診断を担当するため、病理標本や凍結検体の送付、保管および報告書の送付などを担当する事務局が中央病理診断部に設置されています(図1)。

図1図2

 中央病理診断は各診療施設で行われている日常診療のための病理診断(保険診療)ではなく、臨床研究や観察研究のための病理診断です。よって、各診療施設においては対象となる研究内容を倫理委員会で承認していただいた上で、患者さん(ご家族)には結果が研究に使用されることや診断に使用した検体の保管、二次的な利用など、多くの項目について同意をいただく必要があります。現在進行中の中央病理診断は、2011年から開始された小児固形腫瘍観察研究や2015年に設立された小児がん研究グループ(JCCG, http://jccg.jp)の下で行われている固形腫瘍の臨床研究のために行われています。

中央病理診断の現状 中央病理診断は研究グループの対象腫瘍(リンパ腫、脳腫瘍、神経芽腫、横紋筋肉腫、肝腫瘍、腎腫瘍、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍)と、骨軟部腫瘍や肺芽腫など稀な腫瘍も対象としています。2019年の受付数は1,111件を数え、2020年は11月末で 1,000件を越えています(図2)。リンパ腫や脳腫瘍では組織分類に分子診断が必須となっており、“病理診断(統合診断)=組

織診断+分子診断(遺伝子診断)”という構図が出来上がってきています。この分子診断を追加することによって、これまで組織型確定が困難であった症例の一部が確定可能となりました。中央病理診断では、診療施設で日常的に検索が困難な検査項目を施行可能なため、研究のみならず実臨床からも診断結果を求められています。

中央病理診断の問題点と今後 今年、固形腫瘍観察研究が開始されて10年目の節目を迎え、中央病理診断体制の問題点が明確になってきました。最も大きな問題は、診断結果が実臨床で使用されるため、症例数の増加に伴い、診断体制が人材的、経済的にひっ迫しつつあることです。 中央病理診断が小児腫瘍の治療方針や予後予測のためのリスク分類に必要とされている今、中央病理診断体制を継続するためには改革が必要な時期を迎えています。中央病理診断に関わる病理医、コメディカル、そして臨床研究を実際に行っている臨床医とともに、中央病理診断が小児がん診療に最も貢献できる体制にしていきたいと考えています。

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National Center for Child Health and Development6 7国立研究開発法人 国立成育医療研究センター

高度感染症診断部心臓血管外科 診療部長 金子 幸裕腎臓・リウマチ・膠原病科

診療科のご案内

亀井 宏一・小椋 雅夫

人工心臓と心臓移植 日本の医療は多くの分野で世界をリードしていますが、心臓移植、特に11歳未満の患者(以降、小児と呼びます)の心臓移植は残念ながらそうではありません。遠隔成績は素晴らしいのですが、手術数が少なく移植が必要な患者さんに十分提供されていないこと(小児では渡航移植が約半数を占めている)、手術待機期間が長いこと(小児では平均668日)などが問題といえます。原因としては、1968年の和田移植以来心臓移植が半ばタブー視されたこと、日本人の生死観がドナー数を制約していることなどが考えられます。一方、小児の心臓移植は2019年まで4施設に限られ、施設にとって過重な負担になることが症例数増加の足かせになっている側面があり、2019年12月に国立成育医療研究センターが5番目の小児心臓移植施設として認定されました。当センターでは、多くの肝臓移植や腎臓移植が行われており、その経験、人材や設備を共有できます。大学などに比べ心臓外科医は少ないのですが、外科医の過剰な増員はせずに、一人当たりの手術数を増やし能力を向上させることが重要と考えます。小児心移植の経験豊富な東京大学、東京女子医科大学と連携し、業務の効率化と外科医各人の技能向上を軸にして、日本の小児心臓移植の進歩に貢献する所存です。

複雑な疾患を有する低出生体重児や新生児 低出生体重児や、心臓以外の複数の臓器に問題がある患者は、幅広い集学的医療を必要とします。未熟性が高い患者や複数臓器の問題を抱える患者さんに対して、診療科間で綿密な協力体制を

とることで、適切で高度な治療を提供しています。迅速な前方連携と、患者の利便性につながる後方連携を心がけています。複雑心奇形を持つ重症な患者さんがいましたら、胎児や低体重児から成人まで対応いたしますので、ぜひご紹介ください。

人材育成 当センターでは、ICU管理は集中治療科が行い、循環器疾患の診断は循環器科が行っており、心臓血管外科は手術に特化しています。そのため、医師4名で年間200例以上の手術を行うことができます。若手も術者となる機会が多く与えられます。外部施設との連携も行っています。

①小児腎臓疾患 小児腎疾患については、全ての腎疾患に対応しています。学校検尿の精査はもちろんのこと、難治性のネフローゼ症候群、急性糸球体腎炎、慢性腎炎症候群(経皮的針腎生検を比較的小さいお子さんで行うことも可能です)、腎不全診療(腹膜透析・血液透析・腎移植)まで、小児腎疾患の全てを当施設で完結することが可能です。 当科には腎臓専門医・指導医、透析専門医・指導医、移植認定医と全て在籍しており、小児腎臓での専門診療は日本一と言って過言ではありません。特にステロイドをやめられないようなネフローゼ症候群や、乳幼児の腎不全などは対応できる施設が限られると思いますので、お気軽にご紹介ください。

②小児リウマチ性疾患 小児リウマチ性疾患を診療している施設は非常に少数です(東京都内でみても当施設含め5カ所程度しかありません)。当施設は日本小児リウマチ学会認定の「小児リウマチ中核施設」であり、診療の対象疾患としては、若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、抗リン脂質抗体症候群、混合性結合組織病、強皮症など小児では罹患率の少ない稀有なリウマチ性疾患全般について専門的な診療を行なっています。

 こちらの疾患についてもリウマチ専門医・指導医、免疫療法認定医が在籍し診療にあたっております。リウマチ性疾患は非常に重篤な全身の合併症を併発することがあり、当科以外の関係各科の連携も非常に重要です。そのため、総合医療の力が必須であり、その点、当院は日本一の病院です。安心して、お気軽にご紹介いただければ幸いです。

 当科医療スタッフの想いは、疾患をコントロールし、生活になるべく制限をかけず、薬剤の副作用を最小限にすることです。今後もその想いを大事にして、1人1人丁寧に診療を行なって参りますので引き続きよろしくお願い申し上げます。

【診療メンバー】診療部長:亀井 宏一医長:小椋 雅夫医員:佐藤 舞、西 健太朗専門修練医:村越 未希、鈴木 竜太郎、 灘 大志、横田 俊介、      小池 研太朗

心臓血管外科は、新生児から成人に至るまでのあらゆる先天性心疾患及と、後天性小児心疾患の手術治療を、人工心臓装着や心臓移植を含めて担当しています。

 当科は、小児の腎臓疾患、リウマチ・膠原病疾患について専門診療を行っています。小児腎臓疾患としては、小児の腎不全診療(腹膜透析・血液透析・腎移植)を行える日本でも数少ない施設のうちの1つです。小児リウマチ性疾患の診療も都内で数カ所しか行っていないため当科の果たす役割は非常に重要と考えています。

【メンバー】診療部長:金子 幸裕医員:近藤 良一、武井 哲理フェロー:竹内 絋子他スタッフ

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National Center for Child Health and Development8 9国立研究開発法人 国立成育医療研究センター

管理栄養士

専門職(ひと)シリーズ 

一般社団法人日本小児総合医療施設協議会

はじめに: 日本小児総合医療施設協議会(JACHRI:ジャクリ)は、昭和40年に国立小児病院が開設されてから3年後の昭和43年に発足し、小児医療の不採算性の問題や、小児医療をとりまく様々な問題の解決に向けて、活動して参りました。 当会の会員施設となるための要件は、小児の特殊性に配慮がされた医療、看護、設備等を提供でき、小児関連病床が原則として100床以上設置され、小児医療の研究、教育が行われている小児の専門施設であることです。 令和2年12月現在、会員施設数は全国に38施設あり、国立成育医療研究センター内に事務局があります。

主な活動:●施設長、事務、看護、薬剤、臨床検査の各部門長連絡会や、診療情報管理士、ソーシャルワーカー、医事課それぞれの担当者による連絡会において、情報交換や小児独特の課題について検討しています。

●JACHRIを母体として、小児治験、小児感染管理、歯科のネットワークを組織し、体制整備を行っています。

●昨年のコロナ状況下においては、JACHRIに所属する複数の施設の部門ごとの情報交換が活発に行われ、新型コロナウイルス感染症への対策の向上を目指して協力し合うことができました。

●看護部門長連絡会と薬剤部門長連絡会の協力によって、服薬指導や服薬介助について小児医療現場で培った事例を集積した「乳幼児・小児服薬介助ハンドブック」を作成し、出版することができました。現在本書は多数の医療施設や調剤薬局で

関連施設紹介

利用いただいています。 また、助成金等を活用し、病棟や外来の環境整備のための図書の寄贈や、「おくすりシール」の作成・配布など、小児病院を利用する子どもと家族の支援事業も行っています。

最後に: JACHRI会員施設は、未来を担う子ども達の命と権利を守る砦として、施設間で連携・協力し、子どもたちの健やかな成長に必要な保健・医療・療養・療育環境を実現するために活動して参ります。

The Japanese Association of Children’s Hospitals and Related Institutions(JACHRI)

 令和元年11月に沖縄で開催されたJACHRI年会では、首里城再建への募金を行い、当協議会の理事長五十嵐 隆より、沖縄県立南部医療センター・こども医療センターの宮城 雅也母子センター長へお渡しいたしました。

栄養管理部 栄養管理室長 齊藤 由理

Q、どんな仕事ですか? 入院患者さんたちに病気が良くなる、おいしい献立を考えます。できた献立を調理師と共においしく見せる料理に仕上げます。そんな献立がおうちでも続けられるように、栄養指導でお示しします。また、栄養のことで困ったことが起きないよう、栄養サポートチーム(NST)という活動もしています。これには、医師、看護師、薬剤師など多くの医療職がいて、お互いの専門性を出し合い、栄養状態を早く回復させる特別な医療チームです。成育ならではのイベントメニューや手作りおやつ、中でも、長期入院の子どもたちへ元気を送ろうと、毎月実施している出張おやつは大人気! ひとりひとり、好きな味を選んでもらうことで楽しいひとときを演出しています。

Q、なぜこの仕事を選ばれたのですか? 少し昔にさかのぼります。私は7~15才まで、当センターの前身「国立小児病院」の外来患者でした。検尿で再検査に行くよう学校保健医から紹介されたのが、当時、腎臓内科の大辺先生でした。その日だけ学校を休める私は、通院が楽しみでした。約8年通院し、高校入試結果を報告した3月の 診 察日、「ゆりちゃん、何cmになった?」「165」「すごいな、40cm伸びてるよ」カルテを見ながら高笑い、そんな会話がこの病院の卒業式でした。この時、私は病院で働くことをハッキリ意識したように思います。そして、さらに8年後、就職でこの病院に戻ってきたのです。配置先の希望は言えません。これには驚きでした。働いた期間はわずか半年でしたが、それから7か所の転勤を経て、30

数年経った今年の4月、再び戻ってきました。当センターは何かと縁のある場所です。 栄養士を選んだ理由は、合格した高校が管理栄養士課程の付属校だったこと、36才で父親が2型糖尿病になり、4才の私は母と2人で栄養指導に通っていて、病院栄養士のイメージが何となくわかっていたからだと思います。学校選びも含め、私のことをよくわかっている母親に導かれたのかもしれません。 幼い私がそろばんを高速で操るベテラン医事の女性をカウンター越しに尊敬の念を抱き、笑顔の桃色天使たちに元気をもらい、医療へ憧れを抱く私のような子どもが今もここにたくさんいるでしょう。この成育だよりの愛読者の中にも、同じような体験者がいるのではありませんか?

齊藤 由理 プロフィール東京杉並生まれ。曾祖父は八丁堀の同心、吉田松陰の護送記録に名前が残されている。姉と2人姉妹で育つ。その姉も含め、父方の親族全員が2型糖尿病。1986年7月国立小児病院採用。以来、8か所の転勤を経て、2020年4月より当センター勤務。私生活では、3姉妹の母。日本児童文学者協会会員。特技は、けん玉と折り紙。

イベント時の幼児食

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バイオバンク 副バイオバンク長 秦 健一郎

 最先端の医学研究成果を実用化するには、病変部や治療前後、あるいは発症前の患者さんの状態を調べる必要があります。当センターのバイオバンクは、治療目的で運用されている骨髄バンクやさい帯血バンクとは異なり、医学研究に役立てることを目的とし、厳密な倫理的手続きを経た上で患者さんや一般の方々にご協力いただき、通常は廃棄する検査や治療で生じる残余等を利用して、貴重な検体の精製・保管(図1)、そして研究者への提供を行っています。同様の取り組みとして、英国のUK Biobank(50万人規模のバンク)などが有名ですが、日本でも、バイオバンクジャパン、東北メディカル・メガバンク、そして当バイオバンクを含む6つのナショナルセンターのバイオバンクが集まったナショナルセンターバイオバンク・ネットワーク(NCBN)、という3つの大規模なバイオバンクが存在します。特に

成育バイオバンクは、小児の希少疾患や難病に関する検体を提供可能なことを特徴としますが、乳幼児や小児の検体は、病気の研究だけにとどまらず、たとえば新しく開発した検査法の正常値を決定するための参照データとしても極めて重要な役割を果たします。大人と違い、ボランティアを募集して採血するわけにはいかない乳幼児・小児では、このような研究の問い合わせも多数いただいています。 現在、成育バイオバンクを含む6つのナショナルセンターが保有する検体は、NCBNのホームページ(図2)から一括して検索し、利用申請をすることができます(http://www2.ncbiobank.org/Search/Search_)。ぜひご活用ください!

臨床研究センターARO機能を活用した医師主導治験の成果についてムコ多糖症2型の治療薬 ヒュンタラーゼ脳室内注射液15㎎が承認 当センター臨床検査部統括部長奥山虎之が開発し、主導して実施した医師主導治験結果をもとに、12月2日開催の薬事・食品衛生審議会_医薬品第一部会で承認了承されました。 脳室内に直接投与することで、患者の中枢神経症状の改善が期待される、世界で初めての治療法です。

低亜鉛血症の治療薬 新剤型顆粒剤・小児用量が承認 当センター消化器科診療部長新井勝大が主導して実施した医師主導治験の結果をもとに、12月2日開催の薬事・食品衛生審議会_医薬品第一部会で承認了承されました。 新剤型顆粒剤によって、既存の錠剤の内服ができない低年齢の小児患者や嚥下困難な成人患者への投与が可能となります。

 当センターで、現在募集中の治験をご紹介させていただきます。 候補患者がいらっしゃいましたら、臨床研究コーディネートユニットまでお問い合わせいただけますと幸甚です。<お問い合わせ先> 臨床研究コーディネートユニット          電話:03-5494-7120(内線5371)  時間:9:00-17:00(平日のみ) 

注1) 募集人数に達した場合や担当医師の診察によって参加基準に当てはまらなかった場合は、治験に参加できないこともあります。注2) 治験への参加を希望される方は当センターを受診し、参加基準に該当するか、担当医師が診察・検査を行います。この際の受診料や検査料は、治験に参加    するか否かにかかわらず、通常の保険診療と同様に患者の方の負担になります。

対象疾患 対象年齢 薬の形中等症~重症の活動性潰瘍性大腸炎アトピー性皮膚炎アトピー性皮膚炎慢性肉芽腫症腸炎新生児ヘモクロマトーシスと診断された児を分娩したことのある妊婦

2歳以上18歳未満生後6か月以上~24か月未満6歳以上13歳未満1歳以上16歳以上40歳未満

注射剤軟膏注射剤口腔内崩壊錠注射剤

National Center for Child Health and Development10 11国立研究開発法人 国立成育医療研究センター

治験の募集について

現在募集中の治験

Information 研究開発のトピックス

小児のCOVID-19について

こどもの医療被ばくを考えるサイトPIJON公開開始

研 究 所

臨 床 研 究 セ ン タ ー

 2019年の12月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生が報告されてからあっという間に1年が過ぎてしまいました。この1年で我々の生活は大きく変化し、どこに行くにもマスク着用、3密を避けるなど、息苦しさを感じていらっしゃる方も多いのではないかと思います。流行当初は情報が限られている中で、一斉休校が行われるなど、子ども達の生活にも大きな影響が出ましたが、徐々に小児のCOVID-19の特徴が明らかになりつつあります。それは、成人患者に比べて小児の患者数は少ないこと、小児は感染しにくく、重症化もしにくいこと、小児患者の多くは両親などの、成人が家庭にウイルスを持ち込んで感染が起こっていることなどです。なぜ小児がかかりにくいのか、いまだはっきりはわかっておりませんが、一説にはこのウイルスが感染に必要なレセプターの発現が小児では少ないからではないかとされており、今後のさらなる研究報告が待たれます。とはいえ、患者の数が増えれば、重症になってしまう子ども達も一定

数でることは避けられませんので、やはり国全体としてCOVID-19の患者数を減らす努力を継続することが不可欠です。また、かかりにくい、重症化もしにくいにもかかわらず、COVID-19の流行は子ども達に様々な健康被害を与えていることもわかってきています(図.知見のまとめ:子どものCOVID-19関連健康被害(日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会作成))。我々小児科医は目の前の患者さんの対応のみならず、幅広い視点から、子ども達の健やかな生活を維持するために何ができるか、考えていく必要があります。

 このたび2020年12月1日より当センターHP内「主な取り組み」の中にこどもの医療被ばくを考えるサイトPIJON(ピジョン)が完成し、公開しました。 P I JON(ピジョン)とは、『こどもの画像検査(Pediatric Imaging)の正当化(Justif ication)、最適化(Optimization)を考え、情報を提供するウェブサイト(Network)』というサイトの目的を表す英単語の頭文字をとって名付けました。このようにPIJONは造語であり、鳩を表す英語の天“Pigeon”とは綴りが異なります。 パパ、ママ、地域の医療機関の方や一般の方、そして小児医療に携わる医療従事者のための、子どもの医療被ばくについて広く情報を提供、紹介する総合サイトです。

 コンテンツには、検査方法をパパ、ママにやさしく紹介するコーナーや、医療被ばくと発がんについての解説、医療被ばくの研究コラム、WHOリスクコミュニケーションの冊子の紹介、正当化を紹介するための欧米のガイドラインの紹介、米国の同様の小児被ばく低減キャンペーンのサイトImage Gentlyの紹介などが含まれています。どうぞご覧いただき、ご活用いただければ幸いです。

  感染症科 庄司 健介

出典:http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=342

  放射線診療部 診療部長PIJON責任者 宮嵜 治

図2図1