5g 須藤 - university of electro-communications · ディープラーニング ......

所 属 大学院情報理工学研究科 情報・ネットワーク工学専攻 メンバー 須藤 克弥 助教 所属学会 米電気電子学会(IEEE)、 電子情報通信学会 E-mail [email protected] リソース割当方式、レイヤレス無線方式、 エッジコンピューティング、エナジーハー ベスティング、周波数共用、遠隔操作、 対災害ネットワーク、 分散ネットワーク、 ディープラーニング キーワード 12 OPAL-RING http://www.ainet.lab.uec.ac.jp Beyond 5G 須藤 克弥 Katsuya SUTO 私達が目指す次世代無線ネットワーク 将来の無線NW=(無線基地局+計算機)✖ 一人当たり1無線基地局と1計算機を利⽤できる環境 エッジコンピューティングによるゼロクライアントの実現 ユーザ端末は無線基地局を介してアプリを実⾏ CPUやストレージを必要としない超省電⼒なユーザ端末を実現 人工知能により安定かつ高速な無線環境を提供 アプリ実⾏ 結果 将来の端末 将来の無線基地局 OS コンテナ コンテナ アプリ アプリ アプリ アプリ x axis y axis z axis 次世代の無線基地局 高速な通信と耐障害性に優れた計算機能を提供 ミリ波通信機を備えた小型の計算機の集合による円柱型の基地局 外側のミリ波通信機:ユーザ端末ー計算機間の通信 内側のミリ波通信機:計算機間の通信 ⼤量の計算機によりビックデータ解析や深層学習など⾼速な並列計算が可能 γ ζ δ Illustration of each story Millimeter wave TX/RX Illustration of each rack Small computer Illustration of wireless computing system

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Page 1: 5G 須藤 - University of Electro-Communications · ディープラーニング ... 自動運転にも応用コストに運用できるのです。 ... 影し、撮影した高画質の仮想現実使って360度すべての方向を撮動運転技術では、車載カメラを究にも乗り出しました。

所 属大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻

メンバー 須藤 克弥 助教

所属学会米電気電子学会(IEEE)、電子情報通信学会

E-mail [email protected]

リソース割当方式、レイヤレス無線方式、エッジコンピューティング、エナジーハーベスティング、周波数共用、遠隔操作、対災害ネットワーク、分散ネットワーク、ディープラーニング

キーワード

12 OPAL-RING

http://www.ainet.lab.uec.ac.jp

AIによる新しい無線通信手法の提案

須藤研究室

第5世代移動通信システム(5

G)、さらにその先のBeyond

5G

に向けて、ユーザ端末(エッジ)

側で計算処理するエッジコン

ピューティングの本格運用が望ま

れています。これまでユーザ端末

は高性能化の方向で進化し、その

結果、消費電力は増加の一途をた

どってきました。

しかし、今後は身体に装着でき

るウェアラブル端末や環境エネル

ギーを利用して稼働するセンサ端

末など、小型で低消費電力の機器

の普及が見込まれるため、利用者

付近で分散処理するエッジコン

ピュータの活用が一層求められて

いるのです。

一人ひとりに基地局と計算機を

将来の無線システムのあり方に

ついて、須藤克弥助教は、一人当

たり1無線基地局と1計算機を整

備する構想を提唱しています。現

在の4G基地局は、多いときには

数百台規模の端末を同時に接続し

ています。また、インターネット

を介して、離れた場所に設置され

たサーバにその都度データを送っ

て計算処理しているため、通信の

遅延などが避けられない状況に

なっています。

こうした問題を解決するため、

須藤助教は「いずれは計算機能付

きの基地局を導入すべきだ」と考

えています。一人ひとりに個別の

安定した無線環境を与えることが

できれば、その人に合った最適な

計算資源を提供できるようになり

ます。人工知能(AI)を活用する

ことによって、ネットワークの機

能や構成を自律的に決定でき、各

資源を柔軟に制御できるため、全

体としても効率良く周波数を利用

できるのです。

多数の計算機を備えた基地局

を提案

須藤助教がエッジコンピュータ

の一つとして理論提案しているの

は、ミリ波通信機を備え、かつ

100個の小型サーバを敷き詰め

た円柱型の無線システム(小型基

地局)です。基地局と計算機の機

能を一体化したこのシステムを利

用すれば、1基地局において

100個の端末と同時接続させら

れるだけでなく、大量の計算機で

即時処理するため、ビックデータ

解析や深層学習などの大規模な並

列計算を遅延なく実行させること

ができます。

須藤 克弥Katsuya SUTO

私達が目指す次世代無線ネットワーク

将来の無線NW=(無線基地局+計算機)✖︎︎ ︎︎︎

� 一人当たり1無線基地局と1計算機を利⽤できる環境

� エッジコンピューティングによるゼロクライアントの実現

� ユーザ端末は無線基地局を介してアプリを実⾏

� CPUやストレージを必要としない超省電⼒なユーザ端末を実現

� 人工知能により安定かつ高速な無線環境を提供

アプリ実⾏

結果

将来の端末 将来の無線基地局

OS

コンテナ コンテナ

アプリ

アプリ

アプリ

アプリ

x axis

y axis

z axis

次世代の無線基地局

高速な通信と耐障害性に優れた計算機能を提供

� ミリ波通信機を備えた小型の計算機の集合による円柱型の基地局

� 外側のミリ波通信機:ユーザ端末ー計算機間の通信

� 内側のミリ波通信機:計算機間の通信

� ⼤量の計算機によりビックデータ解析や深層学習など⾼速な並列計算が可能

���

γ

ζ

δ

Illustration of each story

Millimeter wave

TX/RX

Illustration of each rack

Small computer

Illustration of wireless computing system

Page 2: 5G 須藤 - University of Electro-Communications · ディープラーニング ... 自動運転にも応用コストに運用できるのです。 ... 影し、撮影した高画質の仮想現実使って360度すべての方向を撮動運転技術では、車載カメラを究にも乗り出しました。

情報通信

製造(ものづくり)

ナノテクノロジー・材料

ライフサイエンス

環  境

エネルギー

社会基盤

Information and Communication Technology

13OPAL-RING

信空間にどのくらいの強度で伝搬

しているのかを調べる電波環境セ

ンシングの研究も進めています。

AI技術の一つである深層学習を

使い、少数の観測データから、観

測エリア全体の電波環境のマップ

を構築する手法を開発しました。

ユーザが持っているスマート

フォンをセンサとして活用し、通

信時に得られる受信電力と位置情

報から、統計処理によって空間上

の電波強度を把握できるようにし

ました。現在は専用の高価な機器

が使われていますが、AIによっ

てユーザ端末から得られる数少な

これに付け加える形で提案する

のが、AIを使って、ユーザの利

用アプリに応じた必要な通信性能

を提供する「ユーザ指向型」の無線

アクセスの基盤技術です。過去の

トラヒックパターンから未来に必

要な通信品質を予測し、ユーザの

個々のアプリを遅延なく実行させ

るための通信資源と計算資源を割

り当てる新しいアクセス方法で

す。

電波環境をマッピング

一方、別のアプローチとして、

周波数を有効利用して通信を高速

化させるために、実際に電波が通

い情報からでもマッピングできる

ため、新たな機器を導入せずに低

コストに運用できるのです。

自動運転にも応用

さらに須藤助教は、このセンシ

ング技術を自動運転に応用する研

究にも乗り出しました。現在の自

動運転技術では、車載カメラを

使って360度すべての方向を撮

影し、撮影した高画質の仮想現実

(VR)映像を遠隔地へ送り、その

映像を見ながら遠隔操作すること

によって安全性を担保していま

す。しかし、その際に電波環境が

悪いと、映像を送信できなかった

り、送信できても遅れてしまった

りという問題があり、最悪の場合

は交通事故を引き起こしかねない

状況でした。

そこで深層学習を使って、電波

環境の良し悪しに関係なく、安定

した画質の映像を送れるストリー

ミング技術を開発しました。自動

運転車から低画質の映像を送るこ

とで電波環境が悪くても安定的な

送信を可能にし、いったんそれを

基地局に送って超解像技術による

畳み込みニューラルネットワーク

(CNN)によって高画質の映像

に変換し、遠隔操作者に送信する

という仕組みです。こうした工夫

によって、将来、自動運転はより

安全に運用できるようになるはず

です。

「AIを駆使して、無線通信を今

よりももっと使いやすい形に変え

ていきたい――」(須藤助教)。こ

のような新しいアイデアを生み出

すことが理論研究の醍醐味なので

す。

 【取材・文=藤木信穂】

エッジコンピューティングを実現するための資源割り当て方式

� トラヒックパターンから実⾏中のアプリに必要な通信品質を予測

� ユーザ個々の体感品質を満足できるように細かく通信・計算資源を決定

ユーザ指向型無線アクセス方式

過去のトラヒックから将来のトラヒックを予測

過去

トラヒック量

将来

ユーザ1

ユーザ2

新手法の資源割り当て

従来の資源割り当て

時間

周波数

時間

周波数

必要な資源

を決定

少数の観測データから観測エリア全体の電波環境マップを構築する

ための深層学習モデルを開発

ユーザ参加型電波環境センシング

無線基地局

ユーザ端末

ユーザ端末

位置情報:(x, y)

受信電⼒:p

電波環境データベース

位置情報:(x, y)

受信電⼒:p

観測データ

補間データ真のデータ

空間補間畳み込み

ニューラルネット

ワーク

ユーザ参加センシングの概要図

観測

データ

遠隔操作のための無線環境適応型ストリーミング技術

無線環境に関係なく安定した画質の動画を配信可能にする

深層学習モデルを開発

従来 提案

低画質画像送信 高画質画像受信

遠隔操作者基地局

超解像CNN