藤 本 正 男* - jim
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第8號 Pt-Ru合 金の硬度,磨 耗,組 織 及び用途に就 いて 377
Pt-Ru合 金 の硬度,磨 耗 組織及 び用途 に就 いて
藤 本 正 男*
Pt-Ru合 金 の硬 度,磨 耗 組織 に就い ての研究結 果を述 べた.こ の合 金に關 しては簡 單 な報 文 も未だ獲表 され て
ない様であ る.硬 度はRu80%で 最 大で ヴィッカースで約510,磨 耗 はRu 30%で 最小で ある.鑄 造 組織に就いても
簡單に述べ た.用 途 としては電氣接點 及 び計器用尖軸 があ る.或 る場合にはPt-Irに 勝 る特 性を示す こ とが ある.
(昭 和19年2月21日 受 理)
I.緒 言
曩に發 表せ るPt-Ir, Pt-Os合 金 と 同 様 に して 製 作
せるPt-Ru合 金 に就 い て硬 度,磨 耗,及 び 組織 を 研 究
した.こ の合 金 に 關 す る組織 的 な發 表 は未 だ 見 當 らぬ様
なので,簡 單 で は あ るが著 者 の得 た る結 果 を簡 單 に發 表
し諸賢の参考に供する.
第1圖 Pt-Ru合 金 の硬 度
II.硬 度
硬 度 は 第1圖 に示
す如 くRuにPtを 合
金 せ し め る と硬 度 は
急激 に 高 くな り,Pt
20%で 最 高 とな りそ
の硬 度 は 約510で あ
る.
更にPtを 増すと硬
度は徐々に減少する.
III.磨 耗
Pt-Irと 同様 に して 測 定 せ る この合 金 の 磨 耗 は第2
第2圖 Pt-Ru 合金 の磨耗量
圖 に 示 す 如 く で
Pt 70%で 磨 耗 は
最 小 とな り,必 ず
し も硬 度 と一致 し
な い.Pt-Irと 比
較 す る とPt-Ru
の 方が 少 し脆 い 傾
向 が あつた.
IV.組 織
Pt-Ru合 金 の鑄 造 組織 はRu30~50%の 範 圍 内 で樹
枝 状 構 造 とな り,他 の 範 圍 内 では 粒 状構 造 で あ る.そ の
組織 はRu25及 びSO%で 最 も微細 で あ る.第3圖 に
Pt-Ru合 金 の組 織 の 一 例 を示 した.
第3圖 Pt-Ru合 金 の 組 織(×200)
* 神戸製鋼所
378 研 究 第8巻
V.用 途
Pt-Ru合 金の用途としては從來皆無とされてゐたが,
著者の研究に依 り電 氣接點 及び計器 用尖軸として充分
Pt-Ir合 金の代用となり,或 る點 に於てはPt-Irに 勝
る特性を持つてゐる.
電氣接點 として使用せる場合は接觸面はPt-Ir合 金
に比 し幾分粗なるも,そ の性能 はPt-Irに 勝る場合 も
あ りRu30~90%は 尖 軸 と して 充分 使 用 に 耐 え,殊 に
Ru50~70%は 從 來 使 用 され てゐ たPt-Ir(Ir80%)尖
軸 に勝 る特 性 を有 して ゐ る.
VI.結 言
Pt-Ru合 金は從來用途な く報文 も皆無であつたが上
記の如 く電氣接點及び計器用尖軸 としてPt-Ir合 金に
勝る特性を持つてゐる場合 もある.