平成 30 年 2 月 - metismiles...

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平成 29 年度経済産業省委託業務報告書 平成 29 年度化学物質安全対策 (新規化学物質申出における構造を表すコー ドの記載のあり方に関する調査) 平成 30 2

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  • 平成 29 年度経済産業省委託業務報告書

    平成 29 年度化学物質安全対策

    (新規化学物質申出における構造を表すコー

    ドの記載のあり方に関する調査)

    報 告 書

    平成 30 年 2 月

  • i

    目次

    目次

    1. 業務内容

    2. 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 基本的な方針 ........................................................ 2 少量新規申出事業者に対するアンケート調査 ............................ 2

    2.2.1. 実施概要 ............................................................ 2 2.2.2. 集計結果 ............................................................ 2

    描画ソフトに関するヒアリング調査 .................................... 9 描画ソフトの種類・特徴の整理 ........................................ 9

    2.4.1. 描画ソフトの種類に関する調査 ........................................ 9 2.4.2. 描画ソフトの特徴に関する調査 ....................................... 15 2.4.3. 申出に利用可能な描画ソフトの選定結果 ............................... 19

    同定コードの選定 ................................................... 20 2.5.1. 基本的な考え方 ..................................................... 20 2.5.2. 同定コードの特徴比較 ............................................... 20 2.5.3. 同定コードの選定結果 ............................................... 25

    同定コードの正規化のためのソフトウェアの調査 ....................... 28

    3. 改正後少量新規等申出の同定コード記載のあり方に関する検討 基本的な方針 ....................................................... 29 現行の申出・確認制度における構造同一性の確認方法の整理 ............. 29 改正後の申出・確認制度における構造同一性の確認方法のあり方の検討 ... 30 同定コードの正規化や並び替えに関する詳細なルールの作成 ............. 30 事業者、経済産業省の手続きフローの作成 ............................. 30 事業者向けガイダンスの作成 ......................................... 30 InChI コードを用いたグルーピングの方法 ............................. 31

    3.7.1. 基本的な考え方 ..................................................... 31 3.7.2. グルーピングの具体例 ............................................... 32

    委員会の開催 ....................................................... 34

    4. システムとの連携に向けた検討 基本的な方針 ....................................................... 35 検討結果 ........................................................... 35

  • 1 業務内容 2.1 基本的な方針

    1

    1. 業務内容 平成 29 年度の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下、「化審法」という。)

    改正により、化審法第 3 条第 1 項第 5 号に基づく少量新規化学物質及び化審法第 5 条第 4 項に基づく低生産量新規化学物質の申出制度(以下、「少量新規等申出」という。)が大き

    く変更となった。

    これにより、事業者は年間の製造・輸入予定数量から算出した環境排出量が国内合計で 1 トン以下の新規化学物質については、予定数量の確認をもって新規化学物質の製造・輸入が

    可能となり、また、年 4 回としている少量新規化学物質の申出回数も増加させることを検討している。

    一方、現在、少量新規化学物質の確認では、年間 35,000 件、低生産量新規化学物質の確 認では 1,600 件を超える申出があり、これを受け付け、管理し、申出者に通知を行う一連の業務は事業者においても行政においても膨大なコストとなっている。

    特に、化学物質同一性を確認するために事業者に作成を義務づけている「構造コード」

    は、少量新規等申出に固有のコードであり、事業者における構造コード作成や行政におけ

    る構造コードの確認には特にコストをかけている実態がある。

    これらの状況をふまえ、今後の少量新規等申出時に記載する構造を表すコードの記載の

    あり方について、以下の調査・検討を行った。

    (1)化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査

    (2)改正後少量新規等申出の同定コード記載のあり方に関する検討

    (3)システムとの連携に向けた検討

  • 2

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.1 基本的な方針

    2.2.1 実施概要

    2. 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 基本的な方針

    現在、事業者において化学物質管理に使用している化学構造描画ソフトについての現状

    を調査する。

    具体的には、少量新規申出事業者に対するアンケート(100 社程度)やヒアリング(5 社程度)等により、社内で使用している化学構造描画ソフトウェアの種類やその使用実態等

    について調査を行い、それぞれの描画ソフトの特徴や事業者が作成可能な同定コードにつ

    いてまとめる。また、同定コードの正規化のためのソフトウェアについて調査し、その機

    能等を整理する。

    少量新規申出事業者に対するアンケート調査

    2.2.1. 実施概要

    化審法の少量等新規の申出手続きにおいて、構造式や構造コードの記入に携わっている

    担当者を対象として、構造コードの認知状況、描画ソフトの導入状況等に関するアンケー

    トを実施した。

    アンケート対象 少量等新規申出事業者 130 社

    アンケート期間 2017 年 10 月 2 日~2017 年 10 月 20 日

    アンケート回答数 89 社(回収率 68%)

    2.2.2. 集計結果

    回答者の属性

    図表 2.1 回答者の事業者規模及び業種 業種 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    化学工業 2 11 22 17 22 74 商社/販売業者 5 5 2 2 0 14

    金属製品製造業 0 0 0 0 0 0

    プラスチック・ゴム製品製造業 0 0 0 0 0 0

    機械器具製造業 0 0 0 0 0 0

    その他の製造業 0 0 0 0 1 1

    製造業・商社以外で化学物質を取り

    扱う業種 0 0 0 0 0 0

    その他 0 0 0 0 0 0

    合計 7 16 24 19 23 89

    図表 2.2 回答者の少量等新規申出事務手続き経験年数

    経験年数 回答数

    経験なし 0

    1年未満 8

    1年~3年 22

    3年以上 59

  • 3

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.2 少量新規申出事業者に対するアンケート調査

    2.2.2 集計結果

    現在の少量等新規申出における構造式描画方法

    図表 2.3 事業者規模ごとの構造式描画方法(複数回答あり) 現在の構造式描画方法 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    化学物質の構造描画ソフトを使用 3 12 20 16 22 73 社外のデータベースから引用 2 4 3 6 2 17

    SDSから引用 0 1 0 0 0 1

    手書きで記入 0 1 1 0 0 2

    画像編集ソフト(ペイント等)を使用 2 2 2 6 8 20 過年度の申出時のデータを流用 5 10 15 13 13 56 その他 1 0 1 2 0 4

    SMILES、InChI の認知状況

    (a) SMILS の認知状況

    図表 2.4 事業者規模ごとの SMILES の認知状況

    1

    図表 2.5 経験年数ごとの SMILES の認知状況 SMILES認知状況 経験なし 1年未満 1年~3年 3年以上 合計

    活用している 0 0 5 6 11

    認知はしている 0 1 5 29 35 知らなかった 0 7 12 24 43

    (b) InChI の認知状況

    図表 2.6 事業者規模ごとの InChI の認知状況

    InChIの認知状況 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    活用している 0 0 0 1 0 1

    認知はしている 0 2 4 5 4 15

    知らなかった 7 14 20 13 19 73

    図表 2.7 経験年数ごとの InChI の認知状況

    InChIの認知状況 経験なし 1年未満 1年~3年 3年以上 合計

    活用している 0 0 1 0 1

    認知はしている 0 0 2 13 15

    知らなかった 0 8 19 46 73

    SMILES認知状況 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    活用している 0 0 2 2 7 11 認知はしている 2 4 11 7 11 35 知らなかった 5 12 1 10 5 43

  • 4

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.2 少量新規申出事業者に対するアンケート調査

    2.2.2 集計結果

    ポリマーや繰り返し構造、反応生成物等は SMILES や InChI でも変換不可な場合があるため、そのような化合物はどのように対応するのか。詳細なルールがあれば対応は可能ではある。

    SMILES、InChI 共に見たことがないので相当細かなガイダンスがないと理解が難しいと思われる。 SMILES 等の知識が無く、一からの取得が必要である。一方で新規化学物質は構造が複雑なものが多くなって

    いるため、ガイダンスが有ったとしてもこのような状況でどこまで正確に対応できるか判断できない。

    ガイダンスや構造式からコードを自動生成するための無料ソフトは必要。 有機低分子以外の化学物質でもこれらのコードが使用できるのかという疑問が残るため対応可能かどうか

    判断できない。

    描画ソフトを使用すれば SMILES に変換は可能(InChI は無理)。WEB サイト等で無料で変換可能なものもあるようだが、何を使用すればよいかの指針がなく、今のままでは難しい。国で、SMILES や InChI の変換ソフトを

    準備すべき。

    単一構造を表現できない重合物、反応生成物等の場合に、コード対応ができるのかどうか不明。 多成分の反応生成物や、UVCB 物質もあり、全ての成分について構造特定するのは難しい。 高分子や反応生成物はコード化できない。 実務担当者への教育時間、理解度に不確実性があるため、現段階では同定コードの正確性確保の見通し

    について回答できない。

    同定コードの対応可否

    図表 2.8 同定コードの対応可否 対応の可否 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    問題なく対応することができる 0 0 1 1 3 5 同定コードを記載するためのガイダンス

    があれば対応できる 6

    11 17

    12

    14 60

    対応が難しい 0 2 2 2 3 9

    わからない 1 3 4 3 2 13 その他 0 0 0 1 1 2

    対応が難しい、わからない、その他と回答した理由として、以下のような意見が得られ

    た。

  • 5

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.2 少量新規申出事業者に対するアンケート調査

    2.2.2 集計結果

    描画ソフトを導入している場合

    (a) 描画ソフトの導入状況

    図表 2.9、図表 2.10 の通り、描画ソフトの導入率は 7 割程度であり、101 名以上の企業 の場合、8 割以上の事業者が導入していた。一方、事業者の規模が小さくなると導入率が下 がる傾向が見られた。

    図表 2.9 描画ソフトの導入状況(回答件数ベース) 描画ソフトの導入状況 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    導入している 3 11 20 16 20 70 導入を検討している 0 0 0 1 0 1

    導入していない 4 5 4 2 3 18

    合計 7 16 24 19 23 89

    ※「導入を検討している」という1件の回答は「少量等新規で推奨されるソフトウェアを導入したい」と

    いう回答であった。

    図表 2.10 描画ソフトの導入状況(割合ベース) 描画ソフトの導入状況 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 平均

    導入している 43% 69% 83% 84% 87% 73% 導入を検討している 0% 0% 0% 5% 0% 1%

    導入していない 57% 31% 17% 11% 13% 26%

    (b) 導入している描画ソフト

    アンケート回答全事業者のうち、約 6 割の事業者(1,001 名以上の大企業においては、8 割以上)が ChemDraw を導入していた。一方、ChemDraw は費用負担が大きいため、中小規模の事業者は導入率が低い傾向が見られた。

    図表 2.11 導入している描画ソフトごとの導入状況(複数回答あり) 描画ソフト名 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 平均

    ChemDraw 29% 50% 71% 68% 87% 61% ACD/ChemSketch 0% 0% 0% 5% 0% 1%

    BIOVIA Draw(旧Accelrys Draw) 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    CAS Draw 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    Marvin JS 0% 0% 0% 5% 0% 1%

    JchemPaint 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    EPI Suite 0% 6% 0% 11% 17% 7%

    QSAR Toolbox 0% 6% 0% 5% 4% 3%

    BKChem 14% 0% 8% 0% 0% 5%

    JSME 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    自社システム 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    その他 0% 19% 4% 26% 9% 12%

    ※その他として、MDL ISIS Draw(※現在の BIOVIA Draw()5 社)、Symyx Draw(※現在の BIOVIA Draw) (1 社)、Chemistry 4-D Draw Pro(1 社)、Chem doodle(1 社)、chem form V2 Word Free(1 社)が挙げられた。なお、その他はどれも有償ソフトに分類されると思われる。

  • 6

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.2 少量新規申出事業者に対するアンケート調査

    2.2.2 集計結果

    図表 2.12 導入している描画ソフトの用途(複数回答あり) 描画ソフトの用途 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    化審法少量新規申出等の事務手続 2 10 16 15 16 59 研究開発 0 6 14 8 14 42 化学物質関連データの管理 0 5 9 10 10 34 その他 1 1 2 0 5 9

    図表 2.13 使用している描画ソフトの機能(複数回答あり)

    使用している機能 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    化学構造・化学反応式描画 2 11 20 16 17 66 分子モデリング 0 2 2 0 1 5

    化学反応の計算・物性予測 0 2 4 1 3 10

    データベースとの連携 0 0 2 2 3 7

    特になし 1 0 0 0 1 2

    その他 0 0 0 0 3 3

    図表 2.14 使用している保存形式(複数回答あり)

    保存形式 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    MOL形式 0 1 1 3 3 8

    SDF形式 0 0 0 1 0 1

    CML形式 0 0 0 0 0 0

    ChemDraw形式 1 6 16 10 19 52 SMILES形式 0 0 0 1 2 3

    InChI形式 0 0 0 1 0 1

    保存していない 2 0 2 0 0 4

    その他 0 6 3 5 5 19 ※その他として gif 等画像形式での保存方法が挙げられていた。

    描画ソフトを導入していない場合

    (a) 導入していない理由

    図表 2.15 描画ソフトを導入していない理由(導入経験なし)

    理由 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    必要が無い 3 3 2 1 1 10 導入環境が整っていない 1 3 0 0 0 4 会社の方針によりインストールが許

    可されていない 0 0 1 0 0 1

    その他 0 0 0 0 1 1

    図表 2.16 描画ソフトを導入していない理由(過去に導入経験あり)

    理由 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    不要となった 0 1 0 0 0 1 求めている機能がない 0 0 0 0 0 0

    導入環境が整っていない 0 1 1 0 1 3

    費用が高い 2 0 0 0 1 3 会社の方針によりインストールが許

    可されていない 0 1 0 0 0 1

    セキュリティ上の不安がある 0 1 0 0 0 1

    その他 0 0 1 1 1 3

  • 7

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.2 少量新規申出事業者に対するアンケート調査

    2.2.2 集計結果

    (b) 描画ソフトを導入していない事業者が認知している描画ソフト

    描画ソフトを導入していない事業者において、すべての事業者が ChemDraw を認知していた。

    図表 2.17 描画ソフトの認知状況

    描画ソフト名 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    ChemDraw 100% 100% 100% 100% 100% 100%

    ACD/ChemSketch 0% 20% 25% 0% 0% 9%

    BIOVIA Draw(旧Accelrys Draw) 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    CAS Draw 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    Marvin JS 0% 0% 0% 0% 33% 7%

    JchemPaint 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    EPI Suite 0% 0% 0% 0% 33% 7%

    QSAR Toolbox 0% 0% 0% 0% 33% 7%

    BKChem 0% 0% 0% 0% 33% 7%

    JSME 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    自社システム 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    その他 0% 0% 0% 0% 0% 0%

    (c) 描画ソフト導入にあたっての課題

    図表 2.18 描画ソフト導入にあたっての課題(複数回答あり)

    課題 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    特に課題はない 0 1 1 0 0 2

    導入環境を整える必要がある 1 2 1 1 1 6 導入費用の負担がある場合、導入が

    難しい 3 1

    2 1 1 8

    描画ソフトの使用方法がわからない 0 2 0 1 2 5

    会社の方針により、インストールが困

    難 0

    2

    2 0 1 5

    セキュリティ上の不安がある 1 0 1 1 1 4

    その他 0 0 0 1 1 2

    データベースの利用状況

    図表 2.19 データベース別の利用状況 描画ソフト名 20名以下 21~100名 101~300名 301~1000名 1001名以上 合計

    NITE CHRIP 6 14 21 19 23 83 CAS(ケミカルアブストラクツサービス) 1 1 7 8 10 27 ChemACX 1 0 0 0 0 1

    PubChem 1 0 1 3 1 6 J-Global(旧日化辞) 3 7 6 10 10 36 日本ケミカルデータベース 2 0 3 3 5 13 ChemSpider 0 1 0 2 2 5 その他 0 1 2 5 4 12 ※その他として、インターネット上で CAS 番号を検索、SciFinder、Ariel、CHEMID PLUS、Reaxys 等が挙げられた。

  • 8

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.2 少量新規申出事業者に対するアンケート調査

    2.2.2 集計結果

    同定コード(SMILS、InChI 等)の導入に関する意見・要望

    以下のような意見が得られた。

    分類 意見・要望

    セミナーの開

    導入する場合は事業者向け説明会や工業会向け説明会を開催してほしい。通常、化学物質管理 に関するセミナーは定員に達するスピードが早く、なかなか出席する事が出来ない。

    申出作業全

    数百種の複雑な構造の化合物の少量新規申請を毎年行っているため、コードへの変換は作業量的に困難。当面はコード無しでの申請も受け付けてほしい。

    件数の多い第 1 回の申請でいきなり対応するのは厳しいので、第 3 回又は第4 回の申請から適用して頂きたい。

    早急にソフトの操作やコード化のマニュアル等を公開して、準備期間を確保してほしい。 同定コードを導入したとしても、書類申請は残してほしい。

    ソフトウェア

    について

    無料ソフトを社内の PC に導入するには、管理部門と協議が必要。そのため、SMILES や InChI への変換ソフトは国が準備すべき。

    CHRIP にも SMILES 等の同定コードを収載して欲しい。 既に届出に用いられている構造式(gif 等形式)、又はCAS 番号等の情報を用いて容易に同定コー

    ドに変換するシステム及びサイトを提供して欲しい。

    同定コードを転記するような形式では、記入ミスの懸念が拭えない。 構造式ファイルをそのまま送信できるようなシステムが必要。

    構造コードの

    作 成 時 の 問

    題点

    InChI に変換できない構造式もあるようなので、SMILES か InChI かを選択できるようにすべき。 同定コードを記入するためのガイダンスは具体的な記述にして頂きたい(オニウム塩、錯体、ポリ

    マー、反応物等の構造不明物の記入方法等)。

    ポリマーや反応生成物等の構造不定物質は記載不要として頂きたい。 InChI かつ手書きの場合、「スラッシュ(/)」と「1」の区別がつきにくいことが予想される。 ポリマーや UVCB 物質の場合、モノマーや原料の SMILES を列挙する形式にした場合、どのように

    反応させているかについて情報が無く、同じ原料から別構造の高分子や UVCB を合成している場合

    に同一物質として見なされる恐れがあるのではないか。

    多くの例外が生じることによって事業者の作業負担が大幅に増えてしまうのではないか。現行の電算処理コードは不正確だが、その分柔軟である。

    簡単な構造式であれば、構造式→SMILES→構造式とすることで事業者側においても変換内容に間違いがないかについて確認することが可能だが、複雑な構造式になればなるほど、SMILES→

    構造式の過程できれいに表現することができず、官能基等が重なって表示されるため、申出対象

    物質の構造式に間違いがないかについて確認することができない。そのため、SMILES で表現され

    たものが申出対象物質と同一かどうかに関する確認及び保証を申出者に求めることができるよう

    な仕組みにして頂きたい。

  • 9

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.3 描画ソフトに関するヒアリング調査

    描画ソフトに関するヒアリング調査

    2.4.3 節において選定した描画ソフトについて、これを少量新規・低生産量新規申出手続きの範囲において利用して良いか、承諾頂ける場合には具体的にどのような周知の仕方をす

    れば良いか、(フリーの描画ソフトについては)事業者向けの簡単な操作説明に係るガイダ

    ンスを作成して良いかについて、合計 5 社に対してヒアリングを行った。 その結果、申出手続きの範囲において利用可能とすること、経産省ホームページでの周

    知で問題はないこと、事業者向けガイダンスを作成して良いとの回答を得た。

    描画ソフトの種類・特徴の整理

    2.4.1. 描画ソフトの種類に関する調査

    描画ソフト及び構造コード変換ソフトについて、フリーソフトを中心にインターネット

    上で公開されているソフトを調査した結果を図表 2.20 に示す。

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.4 描画ソフトの種類・特徴の整理

    10

    図表 2.20 描画ソフト及び構造コード変換ソフトに関する調査結果(一覧表示)

    ソフト

    の種

    ライセンス

    ソフトウ

    ェア製品

    version

    公開

    対応コード及び機能 ソフトの安定度

    指標

    費用

    対応 OS

    対応

    言語

    対応ファイル形式

    開発元

    開発元 URL

    備考

    InChI SMILE

    S

    MOL

    描画

    更新

    状況 *1

    利用

    数*2

    Import

    Export 画像

    export

    InChI

    コード

    変換ソ

    フト

    フリーソフ

    (IUPAC/In

    ChI-Trust

    Licence)

    InChI

    software

    ver.1.05

    v.1.05 2017/

    1/27

    (出力

    のみ)

    (入力

    のみ)

    (入力

    のみ)

    × A 不明 無償 Windows、

    Linux

    英語 MOL, SDF,

    CML

    InChI,

    InChIKey

    (画面上の

    テキスト出

    力)

    - IUPAC http://www.inc

    hi-trust.org/do

    wnloads/

    IUPAC 公式のソフト。

    いくつかのファイル形

    式(MOL 若しくはそれ

    と類似したファイル)

    を公式の InChI に変

    換し、統一させること

    ができる

    描画ソ

    フト

    商用 ChemDr

    aw

    Professi

    onal/Pri

    me 16

    v16 2017/

    1/16

    ○ ○ ○ ○ A 不明 有償

    1 ライセンス当た

    り、

    ・Professional:

    \359,640(税込)

    ・Prime:

    \191,160(税込)

    複数ライセンス

    は問い合わせが

    必要

    Windows、

    Mac OS X

    英語 SMILES,

    InChI, MSI

    Molfile,

    MOL, 等

    SMILES,

    InChI, MSI

    Molfile,

    MOL 等

    GIF, BMP,

    JPG, PNG,

    TIFF

    PerkinEl

    mer

    (Cambri

    dgeSoft)

    https://www.c

    ambridgesoft.c

    om/software/o

    verview.aspx

    複数のソフトウェアが

    内包されたパック内

    の一つに、描画ソフト

    がある

    商用 ChemDr

    aw

    Direct

    1.7.1.291

    →2.0

    2017/

    9/11

    ○ ○ ○ ○ A 不明 ライセンス取得

    が必要

    描画コードの

    ChemDraw

    Direct はクラウド

    上で使用可能

    Windows、

    Mac OS X

    英語 SMILES,

    MOL

    (デモソフト

    からは

    InChI の

    loading が

    確認でき

    なかった)

    SMILES,

    InChI,

    InchIKey,

    MOL 等

    PNG PerkinEl

    mer

    (Cambri

    dgeSoft)

    https://www.c

    ambridgesoft.c

    om/software/o

    verview.aspx

    描画ソフトパート

    カストマーデプロイメ

    ントに使用可能

    商用 ACD/Ch

    emSketc

    h

    Version

    2017.1

    2017/

    1/2

    ○ ○ ○ ○ A 不明 有償

    $799(1 年使用

    権)、$909(2 年

    使用権)、

    $999.00(3 年使

    用権)、$320.00

    /年(サブスクリ

    プション・ライセ

    ンス)

    Windows 英語 InChI,

    SMILES,

    SDF, MOL

    InChI,

    SMILES,

    SDF, MOL

    GIF, BMP,

    PNG, PCX

    (出力の

    み), TIFF

    (出力の

    み)

    JPG (入力

    のみ)

    ACD/La

    bs

    http://www.ac

    dlabs.com/pro

    ducts/draw_no

    m/draw/chem

    sketch/

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.4 描画ソフトの種類・特徴の整理

    11

    ソフト

    の種

    ライセンス

    ソフトウ

    ェア製品

    version

    公開

    対応コード及び機能 ソフトの安定度

    指標

    費用

    対応 OS

    対応

    言語

    対応ファイル形式

    開発元

    開発元 URL

    備考 InChI

    SMILE

    S

    MOL

    描画

    更新

    状況

    *1

    利用

    数*2

    Import

    Export

    画像

    export

    *個人、家庭、教 育用の場合は無

    (http://www.acd

    labs.com/resour

    ces/freeware/)

    商用 MarvinS 17.27.0 2017/ ○ ○ ○ ○ A 不明 商用版は最小の Windows、 英語 InChI, InChI, JPG, BMP, Chemax https://www.c Marvin JS を組み込 ketch 10/26 1~5 指名ユーザ Linux、Mac SMILES, SMILES, PNG 等 on hemaxon.com/ んだ構造描画ソフト。 ーライセンスで、 OS X SDF, MOL SDF, MOL products/marv 基本機能は非商用目 年間ライセンス 等 等 in/marvinsketc 的の場合無料だが、 の場合\96,880、 h/ 化審法における少量 永久ライセンス 新規申出への利用 の場合\221,200 は、営利企業の活動 (各税別) の一環のため、「any for-profit activities」 となり非商業目的とし ては利用不可 フリーソフ Marvin 17.26.0 2017/ ○ ○ ○ ○ A 不明 FreeWeb ライセ ウェブベース 英語 InChI, InChI, PNG, JPG Chemax https://www.c Web アプリケーション

    ト JS 10/25 ンス:ログイン不 アプリ SMILES, SMILES, on hemaxon.com/ に組み込み可能なエ

    (ChemAxo 要で広告のない (Windows、 SDF, MOL SDF, MOL products/marv ディタ

    n FreeWeb 非商業用サイト Linux、Mac 等 等 in/marvin-js/

    ライセン を開発する個 OS X)

    ス) 人・グループに

    与えられる。申

    請必要

    フリーソフ BIOVIA 2017 R2 - ○ ○ ○ ○ A 不明 学生や教員、ア Windows 英語 MOL, MOL, SDF; Bitmap Dassault http://accelrys ソフト名:ISIS/Draw

    ト(アカデミ Draw カデミックの研究 SMILES, SMILES, (copy ベー Systems .com/products → SymyxDraw→

    ック向けラ 者向け無償版 SDF 等 、 InchI スで) Biovia /collaborative- Accelrys Draw→

    イセンス) InchI string/key science/biovia BIOVIA Draw string/key (copy ベー -draw/ 開発元:MDL (paste ベ スで) Information Systems ースで) →Symyx Technologies→ Accelrys→ BIOVIA(2014)

    https://www.chemaxon.com/products/marvin/marvin-js/https://www.chemaxon.com/products/marvin/marvin-js/https://www.chemaxon.com/products/marvin/marvin-js/https://www.chemaxon.com/products/marvin/marvin-js/http://accelrys/

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.4 描画ソフトの種類・特徴の整理

    12

    ソフト

    の種

    ライセンス

    ソフトウ

    ェア製品

    version

    公開

    対応コード及び機能 ソフトの安定度

    指標

    費用

    対応 OS

    対応

    言語

    対応ファイル形式

    開発元

    開発元 URL

    備考 InChI

    SMILE

    S

    MOL

    描画

    更新

    状況

    *1

    利用

    数*2

    Import

    Export

    画像

    export

    フリーソフ SketchEl v.1.62 2015/ × × ○ ○ A 多 無償 Java 動作環 英語 MOL, SDF, MDL MOL, SVG, SketchE http://sketche ト 3/6 境 CML 等 MDL SDF, ODG, PNG I(Dr. l.sourceforge.n

    (GNU (Windows、 CML Alex M. et/

    LGPL ラ イ Linux、Mac Clark)

    センス) OS X)

    フリーソフ JSME 2017-02 2017/ △ ○ ○ ○ A 多 無償 ウェブベース 英語 SMILES, SMILES, - Peter http://peter-e ファイルの読み書き

    ト -26 2/26 (InchI アプリ JME, MOL SMIRKS, Ertl and rtl.com/jsme/ はユーザーがボタン

    (BSD ライ Key (Windows、 SMARTS, Bruno 等を作成する必要あ

    センス) search Linux、Mac MOL Bienfait り ) OS X)

    フリーソフ JchemP 3.3-1210 2012/ ○ ○ ○ ○ B 多 無償 Java 動作環 英語 SMILES, SMILES, SVG, PNG, Christop https://jchemp ト aint 9/24 境 MOL, CML MOL, CML, BMP, JPG h aint.github.io/

    (GNU (Windows、 等 InChI 等 Steinbec

    LGPL ラ イ Linux、Mac k et al.

    センス) OS X)

    フリーソフ BKChem 0.13.0 2009/ ○ ○ ○ ○ C 少 無償 Python 動作 日本 MOL, CML MOL, CML PNG BKChem http://bkchem. ト (stable 2/23 環境 語 SMILES, SMILES, .org zirael.org/inde

    (GNU GPL release) (Windows、 英語 InChI はテ InChI はポ x.html

    ライセン Linux、Mac キスト入力 ップアップ

    ス) OS X) のテキスト

    出力

    フリーソフ ChemDo v 8.0.0 2017/ △ △ ○ ○ A 多 無償 ウェブベース 英語 MOL SMILES, - iChemLa https://web.ch ウェブベースの 2D お

    ト odle Web 7/5 (出力 (出力 アプリ MOL, bs emdoodle.com よび3D 分子データの

    (GNU GPL Compon のみ) のみ) (Windows、 InchI, SDF 視覚化とエディタ

    ライセン ents Linux、Mac 等

    ス) (CWC) OS X) フリーソフ Molsket v 0.5.0.0 2017/ × × △ ○ A 多 無償 Windows 英語 MSK のみ MSK のみ PNG, http://sourcef Qt toolkit の 2D 分子 ト ch -- 10/13 (出力 image→ BMP,JPG, orge.net/proje エディタ、Windows と

    (GNU GPL Boron のみ) MOL の方 GIF (入力 cts/molsketch Android 対応

    ライセン 法は探索 のみ), TIF

    ス) 中 (入力の

    み)

    描画ソ フリーソフ CDK(Th v.2.0 2017/ ○ ○ ○ × A 多 無償 Java 動作環 英語 InChI, InChI, PNG, https://source フト ト e 10/4 境 SMILES, SMILES, JPEG, GIF, forge.net/proje

    (GNU Chemist (Windows、 SDF, MOL SDF, MOL BMP cts/cdk

    http://sketche/http://peter-e/http://bkchem/http://sourcef/

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.4 描画ソフトの種類・特徴の整理

    13

    ソフト

    の種

    ライセンス

    ソフトウ

    ェア製品

    version

    公開

    対応コード及び機能 ソフトの安定度

    指標

    費用

    対応 OS

    対応

    言語

    対応ファイル形式

    開発元

    開発元 URL

    備考 InChI

    SMILE

    S

    MOL

    描画

    更新

    状況

    *1

    利用

    数*2

    Import

    Export

    画像

    export

    LGPL ラ イ ry Linux、Mac 等 等 センス) Develop OS X)

    ment

    Kit)

    フリーソフ RDKit 2017_09_ 2017/ ○ ○ ○ △(出 A 多 無償 Windows、 英語 InChI, InChI, SVG, PNG http://www.rdk Anaconda Python の ト 1 (Q3 9/1 力の Linux、Mac SMILES, SMILES, it.org クロスプラットフォー

    (BSD ライ 2017) み、モ OS X SDF, MOL SDF, MOL ムでスクリプト又はコ

    センス) Release ジュー (Anaconda 等 等 マンドを入力して動作 ル) Python のクロ させる スプラットフォ

    ームの構築

    が必要)

    フリーソフ Open v 2.4.1 2016/ ○ ○ ○ × A 多 無償 Windows、 英語 InChI, InChI, GIF, PNG Noel http://openbab ト Babel 10/11 Linux、Mac SMILES, SMILES, O'Boyle el.org

    (GNU GPL OS X SDF, MOL SDF, MOL et al

    ライセン 等 等

    ス)

    その フリーソフ Convert 2015/ × × ○ × A 少 無償 Java 動作環 英語 MOL, SDF MOL, SDF - http://sourcef フォーマットの変換、 他 ト MAS 7/7 境 orge.net/proje 複数の分子ファイル

    (GNU GPL (Windows、 cts/convertma のマージと分割 ライセン Linux、Mac s

    ス) OS X) フリーソフ QSAR v.4.1.1 2017/ △ ○ △ ○ A 不明 無償 Windows 英語 SMILES, SMILES - OECD https://www.q カテゴリーアプローチ ト toolbox 9/21 (入力 (入力 MOL(最新 sartoolbox.org/ による評価を支援す のみ) のみ) 版から) るためのシステム。 化学物質を検索する 上で、構造式を描画 し、SMILES を出す機 能がある RAM 3GB 以上、HDD 14GB の空き容量が 必要(Windows 7 の場 合) フリーソフ EPI v.4.11 2012/ × ○ △ ○ C 不明 無償 Windows 英語 MDL MOL SMILES - US EPA https://www.e 化学物質の物性を推 ト Suite 11 (入力 file pa.gov/tsca-sc 定するソフト。化学物

    http://openbab/http://sourcef/

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.4 描画ソフトの種類・特徴の整理

    14

    ソフト

    の種

    ライセンス

    ソフトウ

    ェア製品

    version

    公開

    対応コード及び機能 ソフトの安定度

    指標

    費用

    対応 OS

    対応

    言語

    対応ファイル形式

    開発元

    開発元 URL

    備考 InChI

    SMILE

    S

    MOL

    描画

    更新

    状況

    *1

    利用

    数*2

    Import

    Export

    画像

    export

    のみ) reening-tools/ download-epi-

    suitetm-estima

    tion-program-i

    nterface-v411

    質を検索する上で、

    構造式を描画し、

    SMILES を表示させる

    ことができる

    *1 A:18 ヵ月以内に相当な開発が行われた(新規も含む)、B:18 ヵ月以内にバグ修正等のいくらかの開発が行われた、C:18 ヵ月以内に開発が行われた形跡がない1

    *2 多:SourceForge のダウンロード数平均 20 件/月, GitHub の星またはフォークが 20 以上, 10 件/年の引用等、中:18 ヵ月以内に中程度の利用あり、少:18 ヵ月以内のダウンロード数が 50 未満2

    1 Pihadi et al. (2016) J. Molecular Graphics and Modelling. 69. 127-143 に記載されている情報及び当該論文の著者が情報を継続更新しているサイト https://opensourcemolecularmodeling.github.io/を参考にしつつ、みずほ情報総研が判定。 2 Pihadi et al. (2016) J. Molecular Graphics and Modelling. 69. 127-143 に記載されている情報及び当該論文の著者が情報を継続更新しているサイト https://opensourcemolecularmodeling.github.io/の情報を参考に入力。

    https://opensourcemolecularmodeling.github.io/https://opensourcemolecularmodeling.github.io/

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.4 描画ソフトの種類・特徴の整理

    2.4.2 描画ソフトの特徴に関する調査

    15

    2.4.2. 描画ソフトの特徴に関する調査

    基本的な考え方

    従来の少量新規申出においては、化審法が考案した 24 桁から成る電算処理コードを用いてきた。しかし、構造コードは化審法独自のコードであることから、事業者における記入間

    違いが散見されていた。また、化学構造をユニークに同定できない簡易コードだったことか

    ら等から、電算処理コードを代替する新コードの導入を検討することとした。

    代替するコードとして、描画画面をそのまま構造情報として保存できる MOL ファイル形式を採用することとした(MOL ファイルを代替するコードとして選定した経緯及び理由は 2.5 参照)。これにより、申出者は MOL ファイルを作成・提出することで、構造式(画像データ)の提出も兼ねることができる。以降では、MOL ファイルを読込・出力する描画ソフトの機能について個別に検証を行った結果を示す。

    MOL ファイルの読込機能に係る検証

    (a) 目的

    構造表示にあたって(様々な箇所に)留意が必要な構造(図表 2.21 参照)に対して、描画ソフトの読込結果を比較することによって、各描画ソフトの特徴を明らかにする。

    図表 2.21 描画困難な構造として用いた構造式 ((1E, 5S)-1,5-bis(azaniumyl)-5-carboxylato(3-13C)pent-1-en-4-yl)

    (b) 方法

    図表 2.21 を MOL ファイルデータに変換したものを図表 2.22、図表 2.23 に示す。これを図表 2.24 の複数ソフトで読み込んで読込精度を確認する。

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.4 描画ソフトの種類・特徴の整理

    2.4.2 描画ソフトの特徴に関する調査

    16

    図表 2.22 検証に用いた MOL ファイル(V2000) バージョ

    ン MOL ファイル 解説

    V2000 Original mol file (2S5E) V2000

    13 12 0 0 1 0 0 0 0 0 4 V2000

    18.3224 -9.8070 -1.6778 C 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    20.1842 -9.8322 -1.4078 C 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    17.2938 -8.2169 -1.5538 C 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    15.6078 -8.2328 -1.8042 N 0 3 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0

    17.8039 -11.1309 -1.9781 H 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    17.7976 -6.8855 -1.2543 H 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    21.4398 -8.5407 -2.2895 C 0 4 3 0 0 3 0 0 0 0 0 0

    21.8896 -6.8893 -1.0726 C 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    22.7673 -5.3816 -2.1118 C 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    20.4189 -6.0659 -0.3044 N 0 3 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0

    24.3159 -5.3903 -2.5444 O 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    21.9960 -3.7380 -2.5490 O 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    23.6228 -7.7392 0.0000 H 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    1 5 1 0 0 0 0

    1 2 1 0 0 0 0

    1 3 2 0 0 0 0

    3 6 1 0 0 0 0

    3 4 1 0 0 0 0

    2 7 1 0 0 0 0

    8 13 1 1 0 0 0

    8 9 1 0 0 0 0

    8 10 1 0 0 0 0

    9 11 2 0 0 0 0

    9 12 1 0 0 0 0

    7 8 1 0 0 0 0

    M ISO 1 2 13

    M CHG 3 4 1 10 1 12 -1

    M RAD 1 7 2

    M END

    メモ行

    サマリー行 ( 原子

    数、結合等)

    Atom ブロック

    ・各原子のxyz 座標

    • 各 原 子 の mass difference ( 同 位

    体 ) 、 電 荷 チ ャ ー

    ジ、立体構造等の

    状態

    Bond ブロック

    ・各原子のつながり

    ・各原子の結合次

    性質ブロック

    • mass diccerence ( 同位体)、電荷チ

    ャージ等の状態

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.4 描画ソフトの種類・特徴の整理

    2.4.2 描画ソフトの特徴に関する調査

    17

    図表 2.23 検証に用いた MOL ファイル(V3000) バージョ

    ン MOL ファイル 解説

    V3000 Original mol file (2S5E) V3000

    0 0 0 0 0 999 V3000

    M V30 BEGIN CTAB

    M V30 COUNTS 13 12 0 0 1

    M V30 BEGIN ATOM

    M V30 1 C 18.3224 -9.807 -1.6778 0

    M V30 2 C 20.1842 -9.8322 -1.4078 0 MASS=13

    M V30 3 C 17.2938 -8.2169 -1.5538 0

    M V30 4 N 15.6078 -8.2328 -1.8042 0 CHG=1 VAL=4

    M V30 5 H 17.8039 -11.1309 -1.9781 0

    M V30 6 H 17.7976 -6.8855 -1.2543 0

    M V30 7 C 21.4398 -8.5407 -2.2895 0 RAD=2 CFG=3 VAL=3

    M V30 8 C 21.8896 -6.8893 -1.0726 0 CFG=1

    M V30 9 C 22.7673 -5.3816 -2.1118 0

    M V30 10 N 20.4189 -6.0659 -0.3044 0 CHG=1 VAL=4

    M V30 11 O 24.3159 -5.3903 -2.5444 0

    M V30 12 O 21.996 -3.738 -2.549 0 CHG=-1

    M V30 13 H 23.6228 -7.7392 0 0

    M V30 END ATOM

    M V30 BEGIN BOND

    M V30 1 1 1 5

    M V30 2 1 1 2

    M V30 3 2 1 3

    M V30 4 1 3 6

    M V30 5 1 3 4

    M V30 6 1 2 7

    M V30 7 1 8 13 CFG=1

    M V30 8 1 8 9

    M V30 9 1 8 10

    M V30 10 2 9 11

    M V30 11 1 9 12

    M V30 12 1 7 8

    M V30 END BOND

    M V30 BEGIN COLLECTION

    M V30 MDLV30/STEABS ATOMS=(1 8)

    M V30 END COLLECTION

    M V30 END CTAB M END

    メモ行

    サマリー行 ( 原子

    数、結合等)

    Atom ブロック

    ・各原子のxyz 座標

    • 各 原 子 の mass difference ( 同 位

    体 ) 、 電 荷 チ ャ ー

    ジ、立体構造等の

    状態

    Bond ブロック

    ・各原子のつながり

    ・各原子の結合次

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.4 描画ソフトの種類・特徴の整理

    2.4.2 描画ソフトの特徴に関する調査

    18

    図表 2.24 読込機能の検証対象とした描画ソフト 目的 種類 No ソフト名称 対応 OS 対応言語 開発元

    照合元 - (0) IUPAC InChI software

    Windows、Linux 英語 IUPAC(InChI Trust)

    検証対象

    有償ソフト (1) ChemDraw Windows、Mac OS X 英語 PerkinElmer

    (CambridgeSoft)

    フリーソフ

    (2) Marvin JS Windows、Linux、Mac

    OS X 英語 Chemaxon

    (3) BIOVIA Draw Windows 英語 Dassault Systems

    Biovia

    (4) SketchEI Windows、Linux、Mac

    OS X 英語

    SketchEI(Dr. Alex M.

    Clark)

    (5) JSME Windows、Linux、Mac

    OS X 英語

    Peter Ertl and Bruno

    Bienfait

    (6) JChemPaint Windows、Linux、Mac

    OS X 英語

    Christoph Steinbeck et

    al.

    (7) CDK Windows、Linux、Mac

    OS X 英語 (オープンソース)

    (8) RDit Windows、Linux、Mac

    OS X 英語 (オープンソース)

    (c) 検証結果

    描画ソフトの読込機能検証結果を図表 2.25 に示す。

    図表 2.25 描画ソフトの読込機能検証結果

    描画ソフト 読込結果

    (0)IUPAC InChI software 問題なし

    (1)ChemDraw 問題なし

    (2)Marvin JS 問題なし

    (3)BIOVIA Draw 問題なし

    (4)SketchEI ラジカルの表示間違い

    (5)JSME ラジカルを表示できない

    (6)JChemPaint 構造式を表示できない

    (7)CDK 同位体を表示できない

    (8)RDKit 問題なし

  • 19

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.4 描画ソフトの種類・特徴の整理

    2.4.3 申出に利用可能な描画ソフトの選定結果

    MOL ファイルの出力機能に係る検証

    (a) 目的

    描画ソフトを用いて図表 2.21 の構造式を描画した後に MOL ファイルとして出力・保存することによって、各描画ソフトの特徴を明らかにする。

    (b) 方法

    図表 2.21 の構造を図表 2.26 に示す描画ソフトで描画したのち、MOL ファイルデータに出力・保存し、出力精度を確認する。

    図表 2.26 出力機能の検証対象とした描画ソフト

    目的 種類 No ソフト名称 対応 OS 対応言語 開発元

    検証対象

    有償ソフト (1) ChemDraw Windows、Mac OS X 英語 PerkinElmer

    (CambridgeSoft)

    フリーソフ

    (2) Marvin JS Windows、Linux、Mac

    OS X 英語 Chemaxon

    (3) BIOVIA Draw Windows 英語 Dassault Systems

    Biovia

    (4) SketchEI Windows、Linux、Mac

    OS X 英語

    SketchEI(Dr. Alex M.

    Clark)

    (5) JSME Windows、Linux、Mac OS X

    英語 Peter Ertl and Bruno Bienfait

    (6) JChemPaint Windows、Linux、Mac

    OS X 英語

    Christoph Steinbeck et

    al.

    (c) 検証結果

    描画ソフトの出力機能検証結果を図表 2.25 に示す。

    図表 2.27 描画ソフトの読込機能検証結果

    V2000

    出力結果 V3000

    2.4.3. 申出に利用可能な描画ソフトの選定結果

    2.4.2 項の結果を踏まえて、(1)ChemDraw、(2)Marvin JS、(3)BIOVIA Draw を申出に利用可能な描画ソフトとして選定する。

    描画ソフト

    (1)ChemDraw 問題なし 問題なし

    (2)Marvin JS 問題なし(プロパティブロックの使い

    方が MDL MOL の仕様とは異なる)

    問題なし

    (3)BIOVIA Draw 問題なし 問題なし

    (4)SketchEI ラジカルのカウント、Valence の保

    持に不備あり

    (5)JSME ラジカルの保存、Valence の保持に

    不備あり

    電荷以外のプロパティの保持に不

    備あり

    (6)JChemPaint ラジカルの保存、Valence の保持に

    不備あり

  • 20

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.5 同定コードの選定

    2.5.1 基本的な考え方

    同定コードの選定

    2.5.1. 基本的な考え方

    事業者から申し出られた MOL ファイルから文字列データを抽出して、同一物質をグルーピングするのは容易ではない。そこで、MOL ファイルを別の同定コードに変換した上で、国による受付・確認作業を効率化することを検討する。具体的には、同定コードとして

    SMILES コード、InChI コードに着目し、それぞれの特徴を比較することとした。

    2.5.2. 同定コードの特徴比較

    MOL・SMILES・InChI の基本的事項及びメリット・デメリットを図表 2.28 の通り整理した。

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.5 同定コードの選定

    2.5.2 同定コードの特徴比較

    21

    図表 2.28 MOL・SMILES・InChI の基本的事項及びメリット・デメリットの比較

    MOL file

    SMILES

    InChI/InChIKey

    基本的事

    特徴

    行列表記法。 原子ごとの 3D 座標をファイルに保存可能なため、ほぼ全

    ての化合物の立体表記に対応できる。

    原子ごとの 3D 座標をファイルに保存可能なため、描画ソフトで読込・表示させた場合、作成時と同じ形を再生可能

    (保存可能)。

    分子構造以外の情報(物性データ等)も同じファイルに取り込めるという別メリットもある。

    (描画ソフトによって仕様が異なるが、)ファイル作成日日時等が自動的にヘッダーに入る仕様になっている描画ソ

    フトもある。

    (SMILES、InChI と比較して)ファイルサイズが大きめ。

    線形表記法。 化学構造を、少ないバイト長で表現できる。 作成ルールが簡単なので人間でも読み書きが容易に

    可能。

    EPI Suite や QSAR Toolbox 等の(Q)SAR ソフトで、演算データとして利用されるケースが多い。

    原子の 3 次元配列の情報は表現できない。 描画した構造式の向きや置換基が張り出す方向等を

    保存できないため、描画ソフトで読込・表示させた場

    合、描画ソフトで作成した時と同じ形を再生不可。

    Canonical(正規化)SMILES では立体構造を記述するための標準の規則が(これまでのところ)確立されてい

    ないため、ソフトによって正規化ロジックがまちま ち。

    線形表記法。 非営利のコード。オープンソースであることが明言

    されている。

    SMILES 記法よりも多くの情報を表現できる。 構造情報は(SMILES ほどには容易ではないが)人

    が読むことが可能。

    「/」で階層化された記述方式を採っているため、類似構造物を探索するのに都合が良い。

    描画した構造式の向きや置換基が張り出す方向等を保存できないため、描画ソフトで読込・表示さ

    せた場合、描画ソフトで作成した時と同じ形を再生

    不可(SMILES と同様)。

    InChIKey(hashed InChI とも呼ばれる)は、27 文字のハッシュ化された固定長の文字列で、人には構

    造を読めないが、構造をユニークに同定すると共

    にデータベースへの格納・検索性能が高い。

    記述方法

    MOL の意味(略称?)については不明。 対象物質の元素の種類・数、結合関係・様式、立体化学

    及びトポロジー(鎖状/環状)、電荷の状態等がブロック化

    され、Connection table (Ctab)と呼ばれる表(行列)形式で

    表現される。

    1 物質(但し混合物、高分子等も含む)あたり 1 ファイルで構成される MOLfile、複数の構造情報と構造以外のデータ

    の Export/Import 用に利用される SDfile、インターネット用

    のデータフォーマット XDfile 等がある。

    Simplified Molecular Input Line Entry Specification の略。

    対象物質の元素記号と、隣接する元素間の結合様式 (単結合、二重結合等)及び立体異性(不斉炭素等)

    を示す記号を用いて、言わば一筆書きのようにして表

    す記述法。

    Generic SMILES(原子と結合のみを記述)、Isomeric SMILES(同位体や不斉中心についての記述を含

    む)、Canonical SMILES(Generic SMILES を定義に従

    って正規化したもの)等の様式がある。

    International Chemical Identifier の略。 対象物質を、組成→各原子への番号付けと結合

    →互変異性→同位体→立体構造→電荷の各情報

    を階層化(レイヤと呼ばれ、各階層は"/"で区切ら

    れる)で表す記述法。

    InChI には standard と non-standard がある。ほぼ同じ構造を同定する場合に前者が、さらに細かく構

    造同定を行いる場合に後者が用いられる傾向があ

    るが、後者は研究者用途のような位置付け。基本

    的には前者を用いるのが標準。

    InChI をハッシュ関数を用いて変換した 27 文字から構成される InChIKey がある(25 文字の英数文字

    と「-」が 2 文字の構成)。

    記述方

    法の例

    (アラニ

    MOLfile V2000

    6 5 0 0 0 0

    12.5543 -5.8887

    0

    0 0 0999 V2000

    0.0000 N 0 3 0

    0

    0

    0

    0

    0

    0

    0

    0

    0

    【Isomeric SMILES】

    [NH3+][C@H](C)C([O-])=O

    【InChI】

    InChI=1S/C3H7NO2/c1-2(4)3(5)6/h2H,4H2,1H3,(H,

    5,6)/t2-/m1/s1

  • 22

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.5 同定コードの選定

    2.5.2 同定コードの特徴比較

    MOL file

    SMILES

    InChI/InChIKey

    ンの双 性イオ

    12.9667 13.7917 12.5543

    -6.6032 -6.6032 -7.3176

    0.0000 C 0.0000 C 0.0000 C

    0 0 0

    0 0 0

    1 0 0

    0 0 0

    0 0 0

    0 0 0

    0 0 0

    0 0 0

    0 0 0

    0 0 0

    0 0 0

    0 0 0

    【Canonical SMILES】

    [O-]C(=O)C([NH3+])C

    【InChIKey】

    QNAYBMKLOCPYGJ-UWTATZPHSA-N ン) 12.9667 -8.0321 0.0000 O 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    11.7293 -7.3176 0.0000 O 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

    1 1 0 0 0 3 1 0 0 0

    4 1 0 0 0

    5 1 0 0 0

    6 2 0 0 0

    M CHG 1 1 -1 M END

    1979 年以降にMDL 社(現BIOVIA 社)で商用化学構造データ SMILES 表記法は 1980 年代の終わりに David Weininger IUPAC の化学記述子プロジェクト(IChIP)として 2000 ベース(MACCS, etc.)のため開発されたファイルフォーマッ により開発され、その後、多くの研究者らによって変更・ 年に開発開始(最初のバージョンの InChI は 2005 年 ト。開発当初のハードウェア上の制約から、「行の幅」がメイ 拡張されてきた。中でも Daylight Chemical Information 完成、InChIKey は 2008 年、standard InChI/InChIKey ンフレームの入力デバイスに由来する 80 文字、「表現可能な Systems 社の貢献が大きい。標準的な SMILES を拡張さ は 2009 年にリリースされた)。それまで Molfile や

    当該表記 原子又は結合の数」は 3 桁(~999)に設定された(V2000 と せた様々な記法には、Daylight 表記法、OpenSMILES 表 SMILES 等がコンピュータベースの商業製品として開

    法ができ 言われるバージョン)。V2000 の改善版である V3000(上位仕 記法、ブルガス大学の表記法等が存在する。 発されていたが、主に限られた業界(団体)内部での

    た背景や 様)では上記の制限はクリアされている。 データベース構築に利用されていた。インターネット

    経緯 の普及によって(化学)情報の収集が容易になり、そ れによって情報源へのアクセスに利便性・確実性が 求められるようになり、IUPAC による開発途上のプロ ジェクトにデータベース作成のニーズのあった米国 NIST が参加し、共同で開発した。

    メリット・

    デメリット

    (メリット

    ○/デメ

    リット×)

    ①コード

    の作成し

    やすさ

    ×

    基本的に描画ソフトを介してしか作成できない(あえて MOL

    ファイルの中身を手書きしようとする人はいないと思われ

    る)。

    SMILES の作り方を理解すれば手書きで作成が可能。

    ×

    基本的に描画ソフト及び InChI コンバータを介して作

    成するもの(原子骨格の正規番号化等、複雑なアル

    ゴリズムがあるため手書き作成は困難)。

    ②ありえ

    ない構造

    の作成し

    易さ

    (①とトレ

    ードオフ)

    基本的な保存形式はファイルであり、ファイルを開かない限

    りは構造を改編できない。描画ソフトを介して作成するのが

    通常であり、描画する作業自体は、描画ソフトの使い方を理

    解すれば初心者であっても容易に作成可能。

    ×

    手書きで作成可能なので書き間違いを生じる可能性が

    ある。また、描画ソフトを使用した場合であっても、文字

    列を描画ソフトからコピー&ペーストで申出書に転記す

    る作業になると思われるため、コピー&ペーストにおい

    て誤入力の可能性がある。

    テキストファイルである点は SMILES と同じ。描画ソフ

    トを介して作成するのが通常である点は MOL file に

    同じ。

    ③ファイ

    ルサイズ

    ○(SMILES に比べれば△に近い)

    基本的には SMILES よりも多くの情報を記載するため、多少

    分子の数にもよるが、基本的には構造を表現する文字

    SMILES と同様、基本的に構造を表現する文字列で

  • 23

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.5 同定コードの選定

    2.5.2 同定コードの特徴比較

    項 目

    MOL file

    SMILES

    InChI/InChIKey

    ファイルサイズは大きくなるが、数十バイトの違いと思われる。

    列でしか構成されないのでシンプル。また、水素原子を

    明示しない点において文字列としてのサイズはより小さ

    い。

    構成されるが、電荷情報を保持するために SMILES

    よりも文字列が長くなる。

    ④申出者

    が作成せ

    ず、申出

    る可能性

    ×(SMILES に比べれば△に近い)

    MOL ファイルをダウンロード可能な日化辞データ等の既存の

    データベースを活用した場合、日化辞が間違った構造を表現

    していると、申出者は申出違反になる。

    ×

    様々な検索サイト、データベースからコピー&ペーストが

    可能。また手書きが可能かつ容易であり、例えば CAS

    で検索し、異なった構造がであるにも関わらず、確認せ

    ずコピー&ペーストするリスクあり。SMILES の書き方に

    関する方言もバラバラであることから、OpenBabel 等を

    用いた正規化の精度が重要になってくる。

    ×

    SMILES の項に同じ。

    ④’申出

    情報の信

    頼性のチ

    ェック(ト

    レース)

    のしやす

    MOL ファイルは補足情報を保持できる。具体的には、1 行目

    にMOL ファイルを作成したソフト名と作成日時がスタンプされる

    (描画ソフトによって仕様は様々ではある)。これによって、手

    書きなのか、データベースから落手してきたのか、ガイダンス

    で規定した描画ソフトによる出力なのかが判別可能であ

    り、MOL ファイルの出処を確認し易い。

    ×

    特殊な方言で記載されていれば出処がわかることもある

    が、基本的に補足情報を持たない単純な文字列であり、

    間違った SMILES が申出られた場合、その出所が不明。

    △(×に近い?)

    特殊な方言はないと考えて良い。それ以外は基本的

    に SMILES と同じ。

    ⑤正規化

    (文字コ

    ードの並

    べ替え)

    ×

    構造同定を容易に行うためには、InChI or SMILES への変換

    が必要。なお、MOL ファイルの書き方によって、それを変換し

    て得られる InChI や SMILES の結果には影響しないと思われ

    る。

    正規化や文字列の並べ替えのために、OpenBabel 等の

    ソフトを用いる必要がある。

    正規化された状態でInChI が作成されるため、正規化

    不要。

    ⑥描画ソ

    フトの対

    応可能性

    (汎用性)

    基本的に MOL ファイルを出力・保存できるソフトは多い。

    SMILES を出力・保存できるソフトは多いが、事業者が使

    う構造描画ソフトから出力される SMILES は、(いくらガイ

    ダンスでソフトを限定したとしても)Daylight 表記法、

    OpenSMILES 表記法、ブルガス大学の表記法、又はソフ

    ト独自の方言を持った表記法で記載・提出される可能 性

    があるため、汎用的な記法に対応可能な正規化ソフトを

    行政側で用意する必要がある。

    ×

    InChI、InChI キーをを出力・保存できるソフトはまだ多

    くない。

    ⑦化学構

    造(図形)

    の再現

    描画ソフトで作成した構造図をその形態(イメージ)を保持す

    ることが可能。

    ×

    xyz の座標として構造情報を保持しないため、描画ソフト

    で読込・表示させると、描画ソフト毎にイメージは異なる

    ×

    xyz の座標として構造情報を保持しないため、描画ソ

    フトで読込・表示させると、描画ソフト毎にイメージは

  • 24

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.5 同定コードの選定

    2.5.2 同定コードの特徴比較

    項 目

    MOL file

    SMILES

    InChI/InChIKey

    性、視認 性

    ように再現される。 異なるように再現される。

    ⑧数量調

    整時の文

    字数

    MOL ファイルをそのまま数量調整の構造同定に用いるわけ

    ではないため比較できない。

    ×

    SMILES に文字数の上限はない。なお、SMILES を InChI

    キーにすれば 27 文字の固定長になる。

    InChI キーでは 27 文字の固定長。

    なお、同じ文字列になる可能性もないわけではない

    が、第 1 ブロック(65-bit/14 文字)で同じ文字列にな

    る 50%理論確率は約 61 億物質、第 2 ブロック

    (37-bit/8 文字)で約 37 万物質と言われている。

    ⑨申出・

    受付に係

    るセキュ

    リティ的

    な課題

    文字列であり、問題ない。「.mol」の拡張子でファイル化され

    ている。

    文字列であり、問題ない。

    文字列であり、問題ない。

    ⑩メリット

    (総括)

    ほとんどの化合物を記述できる(3 者の中では最も優れている)。

    描画ソフトで作成した構造式をその形態(イメージ)で保持することが可能。

    比較的簡単な化合物であれば SMILES の記述・読取が用意。

    工業用化学物質用 QSAR 等での構造入力に主に用いられている。

    紙媒体でのパンチ入力には適している(3 者間比 較)。

    化合物の同一性を比較するのに最も優れている。 InChIKey に変換すれば 27 文字の固定長になる 紙媒体でのパンチ入力には適している(3 者間比

    較)。

    ⑪デメリ

    ット(総

    括)

    紙媒体での運用には適していない(ネットワークを通じた申出又は CD を用いた申出の必要がある)。

    V2000 バージョンのMOL ファイルは表現に上限がある(表現可能な原子又は結合の数の上限が 999)。なお、これを

    改善したバージョンとして V3000 があるが、構造が非常に

    大きい物質については、V3000 のバージョンで保存する必

    要がある。

    「互変異性体」や「分子内でプロトン(H)又は電荷の移動がある化合物」の物質同定が難しい。

    一部の立体化学的な化合物(非回転性単結合等)や配位結合等は記述できない。

    一部の立体活性物質(金属化合物、アレーン、立体的な制約による非回転性の単結合等)につい

    て、区別して記述できない(同じ InChI を生成する

    ため、構造式又は物質名称に基づき個別に確認す

    る必要があるが、別物質を見なすわけではなく同

    一物質として見なすことからフェイルセーフの前提

    には立っている)。

    異なる物質から同じ InChI キーが生成される可能性がある(確率的には非常に低確率)。

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.5 同定コードの選定

    2.5.3 同定コードの選定結果

    25

    2.5.3. 同定コードの選定結果

    2.5.2 項の比較結果を踏まえて、国の受付・確認の作業においては、構造式(画像データ) と構造コードを兼ねることのできる MOL ファイルを事業者が作成・提出し、国がそれを InChI コードに変換して利用することとした。

    InChI コードを選定した理由を以下に示す。

    文字列の並び替え等の正規化の作業が不要

    InChI コードの表記法上のルールとして、文字列の並び替え等の正規化ロジックが備え付けられている。他方 SMILES コードは、図表 2.29 に示す通り同一構造であっても様々な書き方ができるため、MOL ファイルを SMILES コードに変換した後に、別途文字列並び替えのための正規化を行うことを念頭に置く必要がある。

    図表 2.29 同一の構造を示す SMILES コードの例

    元構造 SMILES

    (ア)国内データベースに収載されている SMILES n1(c(=O)c(c([nH]c1=O)C)Br)C(CC)C

    (イ)海外データベースに収載されている SMILES CCC(n1c(=O)[nH]c(c(c1=O)Br)C)C

    (ウ)SMILES 変換ソフトを用いて MOL から出力した SMILES

    CCC(C)N1C(=O)C(=C(NC1=O)C)Br

    InChI コードをハッシュコード化した 27 文字の「InChIKey」を出力可能

    InChI コードをハッシュコード化した InChIKey を出力することができる。その一例を図表 2.30 に示す。InChIKey は、化学構造に対してユニークなコードであり(第 1 ブロッ クで 61 億パターン、第 2 ブロックで 37 万パターンが存在)、例えば一般的に利用されている CAS 番号のように、「化学物質を同定するコード」として使用が可能である。同一構造であれば同一の InChIKey が作成可能なため、例えば PubChem や Chemspider 等のデータベースで InChIKey での同一構造物質の検索が可能である。

    図表 2.30 InChI コードと InChIKey

    項目 データ

    InChI コード InChI=1S/C9H13BrN2O2/c1-4-5(2)12-8(13)7(10)6(3)11-9(12)14/h5H,4H2,1-3H3,(H,11,14)

    InChIKey CTSLUCNDVMMDHG-UHFFFAOYSA-N

    構造のグルーピングもユニークな同定も容易

    InChI コードは、基本骨格から始まり、後半になるにしたがって付加的な情報が記載されるような記述方法を採っている。これらの情報は「/(スラッシュ)」区切りされており、

    「/」内の情報は「/」の次の文字(例:h や q、p)によって定義されている。したがって、「/」のどの部分までを加味する/加味しないかの判断に応じて、構造のグルーピングの程

    度を自由に調整できる点にメリットがある。つまり、InChI コードは物質を同定しや

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.5 同定コードの選定

    2.5.3 同定コードの選定結果

    26

    すく、グルーピングもしやすい記法であるといえる。

    図表 2.31 InChI コードのレイヤ定義 レイヤ サブレイヤー 接頭文字 概要

    (1)メインレ

    イヤ

    化学式 - -

    原子のつながり c 水素以外の原子の結合状況

    水素原子 h 各原子に結合している水素の数

    (2)電荷レ

    イヤ

    プロトン p プロトンの存在数

    電荷 q 主構造の電荷状態

    (3)立体構

    造レイヤ

    二重結合とクム

    レン b E 体/Z 体(cis-/trans-)

    原子の四面体配

    置とアレーン

    t 四面体配置:R 体/S 体、D 体/L 体(≒鏡像体)

    m アレーン:E 体/Z 体、R 体/S 体以外

    立体化学の種類 の情報

    s 絶対配置(R 体/S 体)、相対配置(D 体/L 体)のタイプ を選択

    (4)同位体

    レイヤ

    i,h(同位体

    に対しては

    b,t,m,s)

    Isotope のこと(例:○○の位置の炭素は C14 等)

    (5)固定 H

    レイヤ - f

    Standard InChI には含まれないレイヤ (6)再接続

    レイヤ - r

    (参考)InChI コードの並び順は以下の通り; InChI=1S/<メインレイヤ>化学式/原子のつながり/水素原子/<電荷レイヤ>プロトンサ (p)/電荷(q) /<立体構造レイヤ>二重結合とクムレン(b)/原子の四面体配置とアレーン(t,m)/立体化学の種類の情報(s)/<同位体レイヤ>(i,h,b,t,m,s)

    共役構造のグルーピングに強い

    互変異性体のように共役構造を有している物質におけるグルーピングにおいては、InChI に優位性がある。互変異性の関係にある構造をそれぞれ SMILES コードと InChI コードで表現した例を図表 2.32 に示す。これらは同一化合物だが共役関係にあるため、構造標記上別構造となり、SMILES は異なる表記となるが、InChI はこれを同一物質として見なすとの考え方から同一の表記となる。なお、共役構造は少量新規の申出用途としても多い電気・電子材料

    や色材用途において多く見られる構造でもある。

    図表 2.32 互変異性の関係にある 4 構造における SMILES コードと InChI コード

    構造式 SMILES コード InChI コード InChIKey

    (a)

    OH

    H N N

    Nc1nc(O)c2c(n1)[nH

    ]cn2

    InChI=1S/C5H5N5O/c6-5-9

    -3-2(4(11)10-5)7-1-8-3/h1 H,(H4,6,7,8,9,10,11)

    UYTPUPDQBNUYGX

    -UHFFFAOYSA-N

    H2N N N

    2-amino-7H-purin-6-ol

  • 2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.5 同定コードの選定

    2.5.3 同定コードの選定結果

    27

    構造式 SMILES コード InChI コード InChIKey

    (b) O

    H HN N

    HN N N

    H 2-imino-1,2,3,7-tetrahydro-6H-purin-6-one

    N=c1[nH]c(=O)c2c([

    nH]1)[nH]cn2

    InChI=1S/C5H5N5O/c6-5-9

    -3-2(4(11)10-5)7-1-8-3/h1

    H,(H4,6,7,8,9,10,11)

    UYTPUPDQBNUYGX

    -UHFFFAOYSA-N

    (c)

    O H

    HN N

    H2N N N

    2-amino-1,7-dihydro-6H-purin-6-one

    Nc1[nH]c(=O)c2c(n1

    )[nH]cn2

    InChI=1S/C5H5N5O/c6-5-9

    -3-2(4(11)10-5)7-1-8-3/h1

    H,(H4,6,7,8,9,10,11)

    UYTPUPDQBNUYGX

    -UHFFFAOYSA-N

    (d)

    O

    HN N

    H2N N N H

    2-amino-1,9-dihydro-6H-purin-6-one

    Nc1[nH]c(=O)c2c(n1

    )[nH]cn2

    InChI=1S/C5H5N5O/c6-5-9

    -3-2(4(11)10-5)7-1-8-3/h1

    H,(H4,6,7,8,9,10,11)

    UYTPUPDQBNUYGX

    -UHFFFAOYSA-N

    混合物表記の場合にも文字列でグルーピングが可能

    混合物を表現しようとした場合、SMILES コードは個別成分の記載順序を別途 SMILES 作成時にルール化する必要があるが、InChI コードの場合は、図表 2.33 に例示した通り、 ①炭素数が大きい順、②分子量が大きい順でメインレイヤに自動的に格納されるよう、表

    記法上のルールが定まっている。

    図表 2.33 混合物表記した場合の SMILES コードと InChI コードの比較

    番号 構造式 SMILES コード InChI コード InChIKey

    (a) (a) (b)

    styrene

    1,4-diethenylbenzene

    C=Cc1ccccc1 InChI=1S/C8H8/c1-2-8-6-4-3-

    5-7-8/h2-7H,1H2

    PPBRXRYQALVLMV-UH

    FFFAOYSA-N

    (b) C=Cc1ccc(C= C)cc1

    InChI=1S/C10H10/c1-3-9-5-7- 10(4-2)8-6-9/h3-8H,1-2H2

    WEERVPDNCOGWJF-U HFFFAOYSA-N

    (a)&(b)

    C=Cc1ccccc1.

    C=Cc1ccc(C=

    C)cc1

    InChI=1S/C10H10.C8H8/c1-3-9

    -5-7-10(4-2)8-6-9;1-2-8-6-4-3

    -5-7-8/h3-8H,1-2H2;2-7H,1H2

    KOLSKAPZYPZSGC-UH

    FFFAOYSA-N

  • 28

    2 化学構造描画ソフトと化学物質の同定コード作成の現状に関する調査 2.6 同定コードの正規化のためのソフトウェアの調査

    同定コードの正規化のためのソフトウェアの調査

    2.5 節で整理した通り、国が利用する同定コードに InChI コードを選定した。 InChI コードを出力するソフトとしては、InChI コードを開発した IUPAC が出資する非

    営利団体 InChI TRUST が MOL ファイルからの変換ソフト(InChI software)及び詳細な利用マニュアルを整備している3。

    したがって、InChI の変換には InChI software を利用することとする。なお、最新バージョン(v1.05)が MOL V3000 に対応したため、InChI software の変換可能な分子数(H 除く)の上限は、少なくとも 32,767 個までの原子にも対応としている4。

    3 InChI TRUST、https://www.inchi-trust.org/ 4 InChI TRUST はこれを「experimental(実験的)」なカウントとしている。

    http://www.inchi-trust.org/

  • 29

    3 改正後少量新規等申出の同定コード記載のあり方に関する検討 3.1 基本的な方針

    3. 改正後少量新規等申出の同定コード記載のあり方に関する検討 基本的な方針

    同定コードによる記載のあり方について検討し、改正後の少量新規等申出における同定

    コード作成のためのガイドラインを作成する。具体的な検討内容は以下のとおりである。

    ① 現行の少量新規等申出における化学物質の同一性の確認方法について整理し、改正後

    の少量新規等申出における化学物質の同一性の確認方法のあり方を検討する。

    ② 様々な化学構造描画ソフトウェアにより記載された同定コードの正規化や並び替えに

    関する詳細なルールを検討する。

    ③ ①及び②の結果を基に、改正後少量新規等申出・確認手続きに関する事業者、経済産

    業省の手続きフローを作成する。

    ④ ①~③の結果を基に、事業者が申出書を作成する際に使用可能な化学構造描画ソフト

    ウェアや同定コードの記載ルール等をまとめた事業者向けのガイダンスを作成する。

    ⑤ 検討にあたっては、業界関係者や有識者等 5 名程度による委員会を 2 回程度開催し、結論を得る。

    現行の申出・確認制度における構造同一性の確認方法の整理

    現行の少量新規申出・確認制度における構造同一性の確認手続きについて、経済産業省

    担当官らへのヒアリングを踏まえて図表 3.1 に整理した。

    図表 3.1 現行の少量新規申出・確認制度における構造同一性の確認手続き

    事業者 3省

    申出(紙)

    (5割)

    受付

    経産省 受付日

    受付

    NITE 形式チェック

    申出(電子)

    (5割) 形式チェック 受理

    仮受理状況を把握 (仮)受理

    構造コード修正反映

    高負荷 パンチ入力

    紙出力 高負荷

    構造コード チェック

    ・前年度に申出がない 初申出物質に対して、構造式と構造コードの差異をチェック

    構造コード 高負荷 チェック

    事業者問合せ

    前年の申出と構造コードが一致しない物質について構造

    コードを目視で確認し、大幅な変更がある物質を抽出

    構造コード チェック

    高負荷

    紙出力

    高負荷

    構造コード 再チェック

    構造式と構造コード が合致しない物質を目視でチェック 専門家確認

    構造コード 修正反映

    合計1t超リスト 作成

    高負荷

    紙出力

    +申出書も添付

    高負荷

    物質同定・グルーピング

    同一の構造コードであっても 物質名称や構造式に基づいて構造の異なる物質は同一グループから除外

    ①受付日から2ヶ月 ②受付日から20日

    確認通知書受領

    数量調整確定 リスト作成

    確認通知書作成・送付

    or

  • 30

    3 改正後少量新規等申出の同定コード記載のあり方に関する検討 3.3 改正後の申出・確認制度における構造同一性の確認方法のあり方の検討

    改正後の申出・確認制度における構造同一性の確認方法のあり方の検討

    改正後の少量新規申出・確認制度における構造同一性の確認手続きと改善が予想される

    点について、経済産業省担当官らへのヒアリングを踏まえて図表 3.2 に整理した。

    図表 3.2 改正後の少量新規申出・確認制度における構造同一性の確認手続き

    同定コードの正規化や並び替えに関する詳細なルールの作成

    事業者から提出された MOL ファイルは InChI コードに変換することとした。InChI コードは、その表記法上のルールとして、文字列の並び替え等の正規化ロジックが備え付け

    られていることから、当該項目に関する調査は不要となった。なお、仮に SMILES コードが採用された場合には、当該ルールを詳細に検討する必要がある。

    事業者、経済産業省の手続きフローの作成

    改正後の少量新規申出・確認制度における事業者、経済産業省の手続きフローを作成し

    た。なお、当該手続きフローは 4 章で作成する手続きフローの中で詳細に検討を行った。

    事業者向けガイダンスの作成

    事業者が申出書を作成する際に使用する描画ソフトを初心者でも利用できるように、事

    業者向けガイダンスを作成した。

    事業者 3省

    申出(紙)

    (5割)

    受付

    経産省 受付日

    受付

    NITE 形式チェック

    申出(電子)

    (5割) 形式チェック 受理

    仮受理状況を把握 (仮)受理

    構造コード修正反映

    高負荷 パンチ入力

    紙出力 高負荷

    構造コード チェック

    ・前年度に申出がない 初申出物質に対して、構造式と構造コードの差異をチェック

    構造コード 高負荷 チェック

    事業者問合せ

    前年の申出と構造コードが一致しない物質について構造

    コードを目視で確認し、大幅な変更がある物質を抽出

    構造コード チェック

    高負荷

    紙出力

    高負荷

    構造コード 再チェック

    構造式と構造コード が合致しない物質を目視でチェック 専門家確認

    構造コード 修正反映

    合計1t超リスト 作成

    高負荷

    紙出力

    +申出書も添付

    高負荷

    物質同定・グルーピング

    同一の構造コードであっても 物質名称や構造式に基づいて構造の異なる物質は同一グループから除外

    ①受付日から2ヶ月 ②受付日から20日

    確認通知書受領

    数量調整確定 リスト作成

    確認通知書作成・送付

    or

  • 31

    3 改正後少量新規等申出の同定コード記載のあり方に関する検討 3.7 InChI コードを用いたグルーピングの方法

    3.7.1 基本的な考え方

    InChI コードを用いたグルーピングの方法 3.7.1. 基本的な考え方

    安全側の運用を行うという方針に基づき、数量調整は基本的にレイヤレベル 1 で行うが、 同一物質に対して複数申出が重なり推計環境排出量が合計 1 トン超になった場合、個別確認が必要な件数等を踏まえつつ、適切なレイヤレベルを設定する方針とする。

    グルーピングの基本的な方法を図表 3.3 に示す。

    図表 3.3 InChI コードを用いたグルーピングの方法 レ イ レ ヤ イ レ ヤ ベ レ ル ベ 1 ル

    2 ベ ル3

    レイヤレベル 4

    グルーピングの順序

    InChI=1S/<メインレイヤー>化学式/原子のつながり/水素原子/<電荷レイヤー>プロトンサ (p)/電荷(q) /<立体構造レイヤー>二重結合とクムレン(b)/原子の四面体配置とアレーン(t,m)/立体化学の種類の情報(s)/<同位体レイヤー>(i,h,b,t,m,s)

    レ ヤ イ レ

    レイヤー サブレイヤー 接頭文字 概要

    (1)メインレイヤー 化学式 - - 原子のつながり c 水素以外の原子の結合状況 水素原子 h 各原子に結合している水素の数

    (2)電荷レイヤー プロトン p プロトンの存在数 電荷 q 主構造の電荷状態

    (3)立体構造レイヤー 二重結合とクムレン b E体/Z体(cis-/trans-) 原子の四面体配置 とアレーン

    t 四面体配置:R体/S体、D体/L体 (≒鏡像体)

    m アレーン:E体/Z体、R体/S体以外 立体化学の種類の 情報

    s 絶対配置(R体/S体)、相対配置(D 体/L体)のタイプを選択

    (4)同位体レイヤー - i,h(同位体 に対しては

    b,t,m,s)

    Isotopeのこと(例:○○の位置の炭