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松浦良充研究会

夏課題

2014.09.10提出

メディアリテラシー教育

日本における教育の可能性と在り方

慶應義塾大学 文学部 教育学専攻 3年学籍番号 11215652松浦良充研究会 13期

宮澤 結

1

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【目次】

序章  アブストラクト、テーマ設定理由

第1章  情報化社会の現状

第1節 若者のメディア環境の変化

第2節 メディアが若者に与える影響

第2章  メディアに関する教育の展開

第1節 メディアリテラシーの定義

第2節 メディアリテラシー教育の必要性

第3節 日本におけるメディアリテラシー教育

第3章  先行研究検討

第1節 カリキュラムでの位置づけに関する先行研究

第2節 日本における実践方法の確立に関する先行研究

第4章  今後の課題と展望

参考文献一覧

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【序章】

アブストラクト

 近年、インターネットやスマートフォンの急速な普及によって利便性を得る一方で、

沢山の情報の中から必要な情報を引き出し主体的に読み解く力、すなわちメディアリテ

ラシーが問われている。この論文では、メディアリテラシー教育に着目し、その課題や

展望を探る。第 1章では現在の情報化社会を概観した上で、近年の若者のメディア環境の変化やその影響をみる。第 2章ではメディアに関する教育の展開を概観し、日本におけるメディアリテラシー教育の展開と課題についてみる。第 3章ではメディアリテラシー教育の実践における先行研究をあげて①カリキュラムでの位置づけ、②日本における実

践方法の確立の面から課題を探った。

テーマ選択理由

 テレビ、雑誌、インターネット、携帯電話…私たちは日々様々な媒体から沢山の情報を

得ている。ところがこれらの情報が全て有益であるとは限らない。多様な情報を見分け

判断し、利用する能力が必要とされているのは自明である。インターネット利用は年々

低年齢化しており、フィルタリングによるネット規制など子どもを守る対策が講じられ

ている。しかし筆者はむしろ情報の受け手として、または発信者としての教育が必要だ

と考える。現在メディアリテラシー教育は、国語や社会、総合的な学習の時間、情報教育

などの一部で実践されているが、学習指導要領にメディアリテラシー教育は明記されて

おらず、制度的に一貫した取り組みはなされていない。

メディアリテラシー教育の授業導入という観点から、日本におけるメディアリテラシー

教育導入の課題とその改善策を明らかにしていきたい。

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第1章 情報化社会の現状

 本章では、以前の若者のメディア環境と現在のそれを比較し、情報化社会のメディアが

若者にどのような影響を与えているのかを確認していく。

第1節 若者のメディア環境の変化

 高度情報化社会と称される現在、メディアからの情報の収集、加工、活用は容易になっ

ている。特に携帯電話やインターネットが日常的に利用されるようになっており、携帯

電話の所有は小学生が 36.6%、中学生が 51.9%1の数値を示す。私たちが日常的に触れ

るメディアには、活字だけではなくテレビ、ラジオ、新聞、映画などが入り混じるが、

そこにインターネットや携帯電話が加わった。さらにそこから送られてくる情報は従来

中心的であったアニメ、CM、ニュースに加えて、コミュニティサイト、ブログ、Twitterなどが挙げられる。 表12の高校生のインターネット利用状況を見ると、従来携帯電話の主要機能であった

メールの利用が減っている以外、全ての利用が増えていることが分かる。特に「SNS等のコミュニケーション」と「チャット等のコミュニケーション」が飛躍的に伸びており、

インターネットの情報を受け手としてだけではなく発信者としても利用していることが

分かる。

表 1 高校生の携帯電話・スマートフォンを通じたインターネット利用状況

1内閣府『平成 25年度 青少年のインターネット利用環境実態調査』(2014年 9月 1日取得)http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/h25/net-jittai/pdf/kekka_g.pdf2 注 1を元に筆者が作成

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メール

SNSサイト等コ

ミュニケーシ

ョン

チャット等の

コミュニケー

ション 調べもの ゲーム

(音楽や動画

等の)閲覧

020406080

100

2000年2007年

単位(%)

第2節 メディアが若者に与える影響

 携帯電話やインターネットの普及により、情報伝達・情報交換の可能性は拡大された。

しかしその利便性とは裏腹にメディアの弊害も指摘されている。

 花豊(2010)3は特に顕著な問題として、①メディアによる人権侵害、②情報通信機器

を介した複雑多様な人権侵害の 2点を挙げている。① メディアによる人権侵害

メディアの商業、視聴率主義的性格を背景とした名誉毀損やプライバシーの侵害に加

え、誤報ややらせ、暴力表現、性表現等による人権侵害を指す。ここではテレビ番組、

漫画、広告における各種表現等、表現の自由に関するあらゆるメディアからの一方向

の情報を対象にしている。そして近年のメディア環境の発展によりメディアが多様化

し、一度人権が侵害されるとその影響が従来に比べて深刻かつ広範囲に及ぶと考えら

れる。

情報量の多大さと伝達方法の容易さに伴い、その信憑性や価値を見いだすことさえも

困難になっている。また、情報の受け手が情報を鵜呑みにすることで、物事を熟考す

る能力が低下しているとの指摘もある。

② 情報通信機器を介した複雑多様な人権侵害

インターネットの出現により、情報の受け手自らが情報提供を行うことも容易になっ

た。その結果誰もが自由に情報の発信者となり参加型のコミュニケーションが可能に

なった。しかし近年はインターネット上に掲載される誹謗中傷、違法・有害情報等が

犯罪助長になっている。なかでも子どもたちが情報通信機器を介して行う「ネット上

3 花豊真希子(2010)「メディア・リテラシーの向上と公教育の役割」、法政論叢、1—3頁

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のいじめ」は、自殺者を出すほど深刻な問題となった。また「出会い系サイト」や

「闇サイト」、「自殺サイト」等を通じて犯罪に巻き込まれるケースも後を断たない。

 以上のように情報化は新しいコミュニケーションの形をつくったが、従来の一方的な

メディアによる人権侵害だけでなく個人対個人のレベルにおいて増加する変化をもたら

した。

第2章 メディアに関する教育の展開

 本章では、先に述べた情報化社会の弊害を解決するための「メディアリテラシー教育」

について見る。まず、時代の要請からメディアリテラシーを育む必要性について述べる。

その後、日本におけるメディアリテラシーの展開と、教育実践の場での課題を探ってい

く。

第1節 メディアリテラシーの定義

 内容に入る前に、そもそもメディアリテラシーという用語の捉え方について考えてお

きたい。一般にメディアは「媒体・媒介」のことで、リテラシーとは「文字を読み書き

する能力」のことである。そしてメディアリテラシーは「メディアを読み書きする能

力」として比喩的に表現された用語である。この抽象的な用語が持つ意味の幅について考

えなくてはならない。

 メディアという言葉は使われる文脈によって意味が異なる。紙の新聞・雑誌・放送電波

をキャッチするテレビ・ラジオなどは、ものとしてのメディアであるし、それを利用し

て情報を伝達するマスメディアという社会的な仕組み自体をメディアと呼ぶ場合もある。

水野(1998)4は、①何らかの「情報」を創出・加工し、送出する「発信者」、②直接的

に受け手が操作したり、取り扱ったりする「(情報)装置」、③そのような情報装置にお

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水野博介(1998)『メディア・コミュニケーションの理論—構造と理論—』、学文社

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いて利用される利用技術や送出内容、④情報「発信者」と端末「装置」、あるいは利用者

(受け手)とを結ぶ流通経路、といった互いに関係し合う 4つを挙げ、「メディア」という言葉の持つ多義性について説明している。

 またリテラシーの意味合いも歴史的変遷の中で幅のあるものになってきている。小柳

(1998)5によると、1956年にウィリアム・グレイがユネスコの要請に応じてまとめた「識字教育に関する調査研究報告書」において機能的リテラシーの概念が登場した。「リ

テラシー:日常生活に関する簡単かつ短い文章を理解しながら読みかつ書くことの両方

ができること」という基礎的なものに加え、「機能的リテラシー:そのものが属する集

団及び社会が効果的に機能するために、読み書き能力が必要とされる全ての活動に従事す

ることができること」までも含められている。つまり単なる識字能力だけでなく、能動

的に社会に関わり、コミュニケーションしていく能力まで広がりを見せている。

 以上のような状況から、メディアリテラシーの定義も決して一様ではない。なぜなら

社会的システムとして機能しているメディアが相手であるだけに、メディアリテラシー

の取り組みもそれぞれの国や地域の社会・経済・政治・文化といった要因で様々に規定さ

れているからだ。

 文部科学省が 2007年に出した「教科書の改善・充実に関する調査研究報告書(国語)」の「メディア・リテラシー教育の教材を改善・充実させる6」という項目では、メ

ディアリテラシーを以下のように捉えている。①メディア使用能力、②メディア受容能

力、③メディア表現能力、の 3 層だ。この 3つの能力はどれが中心で重要だという性格

のものではなく、たがいに関係しつつ全体としてメディア・リテラシーの総体を構成し

ている。つまり、メディアリテラシーとは、人間がメディアに媒介された情報を構成さ

れたものとして批判的に受容し、解釈すると同時に、自らの思想や意見、感じているこ

となどをメディアによって構成的に表現し、コミュニケーションの回路を生み出してい

くという、複合的な能力と言える。

第2節 メディアリテラシーの必要性

5 小柳正司(1998)「『機能的リテラシー』の成立と展開」、鹿児島大学教育学部研究紀要(49)、233−245頁6 文部科学省(2007)「教科書の改善・充実に関する調査研究報告書(国語) 平成−18、19年度文部科学省委嘱事業「教科書の改善・充実に関する研究事業」 」− (2014年9月 1日取得)http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/08073004/002/006.htm

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 第1章で触れたメディアの拡大に伴って、メディアリテラシーの研究が理論と実践の

両方で展開された。

 メディア教育が世界的広がりを見せてきたのは 1980年代である。ユネスコは 1982年の「マスメディアの利用と公教育に関する国際会議」において「メディア教育の挑戦」

を訴える「グリュンバルト宣言7」を採択した。この中で以下のように宣言されている。

 さらに 1990年代に入ると、メディア教育と平行して、メディアリテラシーの概念がユネスコで使われるようになった。

 この領域の先駆的研究者としてレン・マスターマンが知られている。彼は 1985年の時点で、以下の 7点を挙げてメディアリテラシーの獲得を目指す教育的な取り組みの必要

性を説いた8。①メディアが偏在する社会の現出、②意識産業としてのメディアの影響力、

③宣伝情報の増大による情報格差、④メディアの権力化によるデモクラシーの危機、⑤映

7 レン・マスターマン(宮崎寿子訳)(2010)『メディアを教える—クリティカルなアプローチへ』、世界思想社、374頁(Masterman, L. Teaching the Media, London, Comedja,1985)8 注 4に同じ、5−25頁

(グリュンバルト宣言)責任ある教育者は双方向間のコミュニケーションの急速な発達と個人主義化、及び情報のアクセスがもたらす結果を意味付け理解するために、学生とともに歩む必要があろう。(中略)従って私たちは、次のことを正当な権威に対して呼びかける。1. 包括的メディア教育プログラム、すなわち幼稚園から大学、成人教育を通した教育を開始しサポートする。この目的は、クリティカルな気付きを促進する知識、スキルや態度を発展させ、その結果、電子メディア利用者や印刷メディア利用者がより大きな能力を獲得することである。理想的には、このようなプログラムはメディア製品の分析や、創造的表現手段としてのメディア活用、使用可能なメディア・チャンネルでの効果的利用と参加を含んでいなければならない。

2. メディアについての知識と理解を深めるために教師や仲介者のトレーニングコースを発展させ、彼らを適切な教育方法によって訓練する。ここではかなりの学生がすでにかなり多くの、しかも断片的な知識を持っていることを考慮しなければならない。

3. メディア教育のために心理学、社会学、コミュニケーション科学などから研究活動を利用する。

4.ユネスコが企画し、描く行動を支持し、強化する。これはメディア教育における国際協力推進を目指すものである。

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像コミュニケーションの重要性、⑥メディア社会を生きる世代の教育、⑦メディアの私

企業化とグローバル化による情報の商業化、である。特に②メディアの影響力において、

従来メディアが問題になる時には、その影響力の大きさが強調され、子どもをどう保護

するかが議論の焦点となってきた。しかしマスターマンは、メディアパワーが大きいほ

ど、メディアに主体的に関わることのできる力を育成する必要があるとして、メディア

について批判的に学ぶ教育、すなわちメディアリテラシーの教育を提唱した。

 日本において 1990年代は、マスメディアによる「やらせ」や「誤報」の問題が社会問題としてクローズアップされた時代でもある。制作者のモラルが取りざたされるととも

に、受け手による批判的な判断力を高めるための議論が持ち上がった。この流れを受け

て旧郵政省は「放送分野における青少年とメディア・リテラシーに関する調査研究会報告

書9」を出した。この報告書ではメディアリテラシー教育の重要性を以下のように述べて

いる。

 これは「放送分野における」と限定的ではあるものの、日本で初めて公的機関がメ

ディアリテラシーの問題を取り上げたという点で大きな意味がある。

9 旧郵政省(2000)「放送分野における青少年とメディア・リテラシーに関する調査研究会報告書」(2014年 9月 1日取得)

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/hoso/pdf/houkokusyo.pdf

(学校教育におけるメディア・リテラシー教育の推進)我が国においては、メディア・リテラシーという言葉すら満足に認知 されていない状況であり、初等中等教育においては、学習内容の厳選が進む中、早急な学校教育への導入については少なからぬ困難も予想される。このため、今後、各教科や「総合的な学習の時間」の中での実践を 積み重ね、それを広く普及することにより、さらなるメディア・リテラシー教育の広がりを獲得していくとともに、メディア教育の意義や内容を検討していくことが適当と考えられる。

9

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第3節 日本におけるメディアリテラシー教育

 日本においてもメディアリテラシー教育の重要性は認識されつつあることが分かった。

しかし現在メディアリテラシー教育は国語や社会、総合的な学習の時間、情報教育等の一

部で実施はされているが、学習指導要領にメディアリテラシー教育は明記されていない

従って一貫した取り組みにはまだ至っていない。

 NHK文化放送研究所による「NHK学校放送利用状況調査」のメディアリテラシー育成取り組み状況の推移10を引用するが、2006年度には小学校・中学校・高等学校を含めて、6割前後の学校がメディアリテラシー育成の取り組みを行っていると回答している。

 しかし、花豊(2010)11によると「メディア・リテラシー教育を行っている」とする

学校においても、その具体的内容が情報活用能力を高める活動や CM作り、情報通信機器の扱い方に特化した内容、情報モラル教育、「ネチケット」など様々であるという。特

にメディアリテラシー教育として情報モラル教育の授業内容を中心に行っている学校が

存在するそうだ。

 また池水(2006)12は総合的な学習の時間に行われる情報教育について、コンピュー

ターの操作など技術の習得を重視するもので、テクノロジーや情報に対しての批判的思

考を養うことを目的にしたものではないと述べる。総合的な学習の時間自体が、教科の

枠を超え創意工夫に基づいた横断的・総合的な学習を目指すものである以上、教員の工夫

や力量次第であり、授業内容の質に大きな格差が生じているとも指摘した。

このように学校におけるメディアリテラシー教育を見ていくと、①カリキュラムでの位

置づけ、②日本におけるメディアリテラシー教育の実践方法の確立、という 2つの課題が見えてきた。

10 NHK文化放送研究所(2006)「学校教育現場のデジタル化とメディア利用の展開〜2006年度 NHK学校放送利用状況調査から〜」(2014年 9月 1日取得)http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2007_05/070503.pdf11 注 3に同じ12 池水円佳(2006)「メディアとメディア・リテラシー—メディア・リテラシー教育はどうあるべきか 」、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部哲学研究室応用倫理・哲−−学論集(3)、131—132頁

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表 2 メディアリテラシー育成取り組み状況の推移

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第3章 先行研究検討

第1節 カリキュラムでの位置づけに関する先行研究

 現在、日本の学習指導要領には「メディアリテラシー教育」という言葉は明記されてい

ない。「情報教育」として情報活用能力の育成を図ることとしており、このような観点

から各教科や「総合的な学習の時間」においてメディア教育の充実を図っていくことと

している。

 このような状況に対して、花豊(2010)13はカリキュラム化を指摘する。メディアリ

テラシー教育を一教科として独立させ、その実施を義務化しなければメディアリテラ

シー教育の実用性は高まらない。つまり法的拘束力があるとされる学習指導要領に組み入

れ、時間・内容等の体系的一貫性を持たせることが重要だと述べる。

 一方、メディアリテラシー教育の特異性から従来の学校教育に取り入れるのは難しい

と唱えるのは池水(2006)14だ。メディアリテラシー教育にはいまだ確固とした定義も

マニュアルもない。そもそも大衆文化に関わるメディアを、従来の伝統的な国語や数学

や理科といった「格の高い」科目と同様に学校教育に取り入れることが妥当かと疑問を投

げかけている。文字を読み書きする力と、視覚的ヴィションや映像イメージが発する

メッセージを「読み書き」する力とでは、その中身が違うはずであり、活字による理解

が大部分を占めていた時代の子どもと、電子メディアの文化の中で映像イメージによる

理解が多くなった子どもでは、ものの考え方は変わっているのかもしれない。メディア

リテラシー教育の登場は、従来の学校教育の在り方を、教育観のレベルから、問い直す可

能性を持っている。

 2人の意見は異なるが、メディアリテラシー教育を行うにあたり確固たる実践方法を確

立しなくてはならないという点で共通している。メディアリテラシー教育を1つの科目

として扱うならば、従来の学校教育と折り合いをつけながら教材開発や教師の資質の向上、

13 注 3に同じ14 注 11に同じ

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関係者間による連携など解決すべき多くの問題がある。

第2節 日本における実践方法の確立に関する先行研究

ここでは、すでにメディアリテラシー教育が公教育として取り入れられているカナダと

イギリスについて見る。

第5章  今後の課題と展望・ メディアリテラシーの定義づけに分量を割いてしまい、テーマ選択理由でもあるメ

ディアリテラシー教育の実践について詳しく書くことが出来なかった。今後実際の教

育現場でどのような授業が行われているのかを調べていきたい。

・ メディアリテラシー教育はカナダやイギリスなどでは公教育として盛んに行われてい

る。今後は海外の教育にも触れていきたい。

参考文献一覧

【書籍】

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・ 井上尚美、中村敦雄(2001)『メディア・リテラシーを育てる国語の授業』、明治図書

・ 大森哲夫(1991)『人間的映像の教育』、阿部出版

・ 香山リカ、森健(2004)『ネット王子とケータイ姫 悲劇を防ぐための知恵』、中

央公論新社

・ 国立教育政策研究所(2004)『メディア・リテラシーへの招待—生涯学習社会を生

きる力』、東洋館出版社

・ 佐藤洋一(2002)『実践・国語科から展開するメディア・リテラシー教育』、明治図書

・ 児童言語研究会(2005)『メディア・リテラシーを伸ばす国語の授業(小学校

編)』、一光社

・ 菅谷明子(2000)『メディア・リテラシー』、岩波書店

・ 鈴木みどり(1997)『メディアリテラシーを学ぶ人のために』、世界思想社

・ 鈴木みどり(2001)『メディア・リテラシーの現在と未来』、世界思想社

・ 鈴木みどり(2004)『Study Guide メディア・リテラシー【入門編】』、㈱リベ

ルタ出版

・ 鈴木みどり(2006)『メディア・リテラシー教育—学びと現代文化』、世界思想社

・ 田中博之(1995)『マルチメディアリテラシー—総合表現力を育てる情報教育』、日本放送教育協会

・ 中山玄三(1993)『リテラシーの教育』、近代文藝社

・ 藤川大祐(2000)『メディアリテラシー—教育の実践事例集—』、学事出版

・ 水越伸(1999)『デジタルメディア社会』、岩波書店

・ 水野博介(1998)『メディア・コミュニケーションの理論—構造と理論—』、学文社

・ 森田英嗣(2000)『メディア・リテラシー教育をつくる』、アドバンテージサー

バー

・ 山内裕平(2003)『デジタル社会のリテラシー—「学びのコミュニティをデザイン

する」』、岩波書店

・ レン・マスターマン(宮崎寿子訳)(2010)『メディアを教える—クリティカルなアプローチへ』、世界思想社

(Masterman, L. Teaching the Media, London, Comedja,1985)・ 渡辺武達(1997)『メディア・リテラシー 情報を正しく読み解くための知恵 』、− −

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ダイヤモンド社

【雑誌論文】

・ 池 田理知子(2011)「メディア・リテラシーと「当事者性」」、 Speech communication education (24)、51—60頁

・ 池水円佳(2006)「メディアとメディア・リテラシー—メディア・リテラシー教育はどうあるべきか 」、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部哲学研究室応用倫−−理・哲学論集(3)、131—132頁

・ 笠原正大(2012)「日本におけるメディア・リテラシーの変質とその原因—「メ

ディア教育」に関する言説の分析から—」、日本教育メディア学会、13—23頁・ 小平さち子(2012)「メディア・リテラシー教育をめぐるヨーロッパの最新動向:

リテラシーの向上に向けた政策と放送局による取り組み」、放送研究と調査

62(4)、40—57頁・ 小柳正司(1998)「『機能的リテラシー』の成立と展開」、鹿児島大学教育学部研究

紀要(49)、233−245頁・ 中橋雄(2005)「メディア・リテラシー研究の動向と課題」、福山大学人間分科学

部紀要、129—148頁・ 中橋雄(2006)「日本におけるメディア・リテラシー研究の概観とこれからの研究課題」、教育メディア研究 12、71—85頁

・ 中村純子(2010)「メディア・リテラシー基本概念の理解を深める国語科授業実践の開発」、全国大学国語教育学会発表要旨集、126-129頁

・ 花豊真希子(2010)「メディア・リテラシーの向上と公教育の役割」、法政論叢、1—3頁

・ 藤代裕之(2011)「情報発信する私たちの役割とは何か:ジャーナリズムの視点か

ら見たソーシャルメディア」、情報の科学と技術 61、58—63頁・ 水越伸、林田真心子(2010)「送り手のメディア・リテラシー:民放連プロジェク

ト実践者へのインタビューを通して」、東京大学大学院情報学環紀要、65—87頁・ 山澤佳浩、金辰(2014)「メディア・リテラシー育成を目指す社会か授業モデルの

開発:イギリスのメディア教育および日本の教育実践を参考に」、北海道大学紀要、

289—298頁

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Page 16: matsusemi.saloon.jpmatsusemi.saloon.jp/wp-content/uploads/2014/09/94bbcd4a8... · Web view第1章では現在の情報化社会を概観した上で、近年の若者のメディア環境の変化やその影響をみる。第2章ではメディアに関する教育の展開を概観し、日本におけるメディアリテラシー教育の展開と課題についてみる。第3章ではメディア

【Webサイト】・ 旧郵政省(2000)「放送分野における青少年とメディア・リテラシーに関する調査研究会報告書」http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/hoso/pdf/houkokusyo.pdf

・ 国民教育文化総合研究所(2008)「メディア・リテラシー教育研究委員会報告書」

http://www.kyoiku-soken.org/official/report/userfiles/document/2008media.pdf

・ 内閣府『平成 25年度 青少年のインターネット利用環境実態調査』http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/h25/net-jittai/pdf/kekka_g.pdf

・ 文部科学省(2007)「教科書の改善・充実に関する調査研究報告書(国語) 平成−18、19年度文部科学省委嘱事業「教科書の改善・充実に関する研究事業」」− http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/

08073004/002/006.htm・ NHK文化放送研究所(2006)「学校教育現場のデジタル化とメディア利用の展開〜

2006年度 NHK学校放送利用状況調査から〜」http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2007_05/070503.pdf

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