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book 集合と位相 2015 6 8 小森洋平

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集合と位相

2015年 6月 8日小森洋平

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目 次

集合と位相 i

第 1章 集合と写像 1

1.1 数列の収束 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 1

1.2 実数の完備性 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 8

第 2章 距離空間 15

2.1 ユークリッド空間 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 15

2.2 距離空間 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 26

2.3 距離空間の点列と連続写像 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 33

参考文献 45

索引 46

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集合と写像

1.1 数列の収束

∀,∃ を用いた数学の例としてこの節では数列の収束を取り上げる。まずは数列を前節の写像の言葉で定義しよう。

定義 1.1 (数列)数列とは、自然数全体の集合 N から実数全体の集合 R への写像 a : N → R のことである。n ∈ N の像 a(n) = an を用いて数列を {an} と記す。

注意 1点集合と間違う恐れのある場合は {an}n∈N や {an}∞n=1 と記すこともある。

以下では数列の収束について調べる。まずは収束列の定義から。

定義 1.2 (ε-n0 論法による数列の収束)数列 {an} が収束列であるとは、ある実数 a が存在して、任意の正の実数 ε >

0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n ∈ N に対し、|an − a| < ε となることである。論理記号で書くと

∃a ∈ R s.t. ∀ε > 0,∃n0 ∈ N s.t. ∀n ∈ N, n > n0 ⇒ |an − a| < ε

となる。このとき数列 {an} は a に収束する、a を {an} の極限といい、

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2 1 集合と写像

limn→∞

an = a

と記す。

次の命題は明らかだろうか。

命題 1.3 (1) 収束列の定義で「|an − a| < ε」を「|an − a| 5 ε」に変えても「|an − a| < 2ε に変えても同じ定義になる。

(2) 数列 {an} と {bn} がそれぞれ a と b に収束するならば、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n ∈ N に対し、|an − a| < ε かつ |bn − b| < ε となる。

収束列の性質を述べるためさらに定義を続ける。

定義 1.4 (有界列)数列 {an} が有界列であるとは、正の実数 M > 0 が存在して、任意の自然数n ∈ N に対し、|an| 5 M を満たすこととする。

次の命題も明らかだろうか。

命題 1.5 有界列の定義で「|an| 5 M」を「|an| < M に変えても同じ定義になる。

定義 1.6 (部分列)数列 {an} の部分列とは写像 a : N → R に、N から N 自身への狭義単調増加な写像 i : N → N を合成して得られる写像 a ◦ i の定める数列 {aik

} のことである。

つまりは数列 {an} からとびとびに後戻りなしで選んで作った新たな数列ということを、写像の言葉で厳密に言っているだけである。収束列の基本的な性質についてまとめておこう。

命題 1.7 (1) 収束列は有界列である。(2) 数列 {xn} が a にも b にも収束するならば、a = b となる。(3) a に収束する数列 {xn} に対し、ある実数 L が存在して任意の n ∈ N に対し xn = L ならば、a = L となる。

(4) 数列 {xn} が a に収束するならば、{xn} の任意の部分列 {xik} も a に

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1.1 数列の収束 3

収束する。(5) (はさみうちの原理)数列 {xn}, {yn}, {zn} が、任意の n ∈ N に対し

xn 5 yn 5 zn を満たし、{xn}, {zn} がともに a に収束するならば、{yn}も a に収束する。

証明

(1) 示すこと『 limn→∞

xn = a ⇒ ∃M > 0 s.t. ∀n ∈ N, |xn| 5 M』

limn→∞

xn = a より(ε = 1 > 0 として)∃n0 ∈ N s.t. ∀n > n0, |xn −

a| < 1. よって M = max{|x1|.|x2|, · · · , |xn0 |, |a| + 1} とおくと ∀n ∈N, |xn| 5 M となる。

(2) 示すこと『任意の正の実数 ε > 0 に対し |a − b| < ε が成り立つ』数列 {xn} は a に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n1 が存在して、n > n1 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − a| < ε が成り立つ。また数列 {xn} は b にも収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n2 が存在して、n > n2 を満たす任意の自然数 n に対し |xn −b| < ε が成り立つ。よって n3 = max{n1, n2} とすると、n > n3 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − a| < ε かつ |xn − b| < ε が成り立つ。このとき |a− b| = |a− xn + xn − b| 5 |a− xn|+ |xn − b| < ε + ε = 2ε となり示せた。

(3) 数列 {xn} は a に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − a| < ε、特にa > xn − ε が成り立つ。一方仮定から xn = L より a > L − ε が成り立つ。ここで ε > 0 は任意より a = L となる。

(4) 数列 {xn} は a に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − a| < ε が成り立つ。一方部分列の定義よりある自然数 k0 が存在して、k > k0 を満たす任意の自然数 k に対し ik0 > n0 となるので |xik

− a| < ε が成り立つ。このことは部分列 {xik

} も a に収束することを意味する。(5) 数列 {xn} は a に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n1 が存在して、n > n1 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − a| < ε が成り

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4 1 集合と写像

立つ。また数列 {zn} も a に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n2 が存在して、n > n2 を満たす任意の自然数 n に対し |zn − a| <

ε が成り立つ。よって n3 = max{n1, n2} とすると、n > n3 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − a| < ε かつ |zn − a| < ε が成り立つ。一方仮定から任意の自然数 n に対し xn 5 yn 5 zn より、n > n3 を満たす任意の自然数 n に対し |yn − a| < ε となり、{yn} も a に収束する。

次にコーシー列を定義する。

定義 1.8 (コーシー列)数列 {an} が コーシー列 であるとは、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、m,n > n0 を満たす任意の自然数 m, n ∈ N に対し、|am −an| < ε となることである。論理記号で書くと

∀ε > 0,∃n0 > 0 s.t. ∀m,n ∈ N,m, n > n0 ⇒ |am − an| < ε

となる。

コーシー列の基本的な性質についてまとめておこう。

命題 1.9 (1) 収束列はコーシー列であることを示せ。(2) コーシー列は有界列であることを示せ。(3) コーシー列 {xn} の部分列 {xik

} がある実数 α に収束するならば、{xn}自身も α に収束することを示せ。

証明

(1) 数列 {xn} が a に収束するとする。定義より任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n に対し |xn −a| < ε が成り立つ。よって m,n > n0 を満たす任意の自然数 m,n に対しxm − xn| 5 |xm − a| + |xn − a| < ε + ε = 2ε となるので {xn} はコーシー列である。

(2) 数列 {xn} がコーシー列とする。定義より(ε = 1 > 0 として)ある自然数 n0 が存在して、m, n > n0 を満たす任意の自然数 m,n に対し xm −

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1.1 数列の収束 5

xn| < 1 を満たす。よって M = max{|x1|, |x2|, · · · , |xn0 |, |xn0+1| + 1}とすると、任意の自然数 n に対し |xn| 5 M となるので {xn} は有界列である。

(3) コーシー列 {xn} の部分列 {xik} が a に収束するとする。定義より任意

の ε > 0 に対しある自然数 k0 が存在して、k > k0 を満たす任意の自然数 k に対し |xik

− a| < ε が成り立つ。一方仮定から {xn} はコーシー列より定義から任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、m,n > n0

を満たす任意の自然数 m,n に対し |xm − xn| < ε を満たす。ここで部分列の定義より k1 > k0 を満たすある自然数 k1 が存在して ik1 > n0 を満たす。よって n > n0 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − xik1

| < ε

かつ |xik1− a| < ε が成り立つ。ゆえに |xn − a| 5 |xn − xik1

| + |xik1−

a| < ε + ε = 2ε となるので {xn} も a に収束する。

ここでは絶対値という長さを測る道具を用いて数列の性質を述べた。後の章では距離関数が絶対値に替わり、さらには距離関数のない位相空間においても点列の収束を語る。その際には次の ε-近傍という、絶対値を表に出さない考え方が大切な役割を果たす。

定義 1.10 (ε-近傍)実数 a と正の実数 ε > 0 に対し、a における ε-近傍を

U(a; ε) := {p ∈ R | |p − a| < ε}

と定義する。ε-近傍を用いて数列の収束を言い換えると次のようになる。

命題 1.11 数列 {an} が実数 a に収束する必要十分条件は、任意の正の実数ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n ∈ N

に対し、an ∈ U(a; ε) となることである。論理記号で書くと

∃a ∈ R s.t. ∀ε > 0,∃n0 > 0 s.t. ∀n ∈ N, n > n0 ⇒ an ∈ U(a; ε)

となる。

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6 1 集合と写像

1.1.1 演習問題

例題 1.12 (1) {an} が収束列ならば {|an|} も収束列である。(2) {|an|} が収束列でも {an} は収束列と限らない。

証明

(1) {an} が a に収束するならば、任意の正の実数 ε > 0 に対し n0 ∈ N が存在して、n = n0 を満たす任意の n ∈ N に対し、|an − a| < ε となる。一方 ||an| − |a|| 5 |an − a| より {|an|} は |a| に収束する収束列となる。

(2) 例えば an = (−1)n がそのような例である。

例題 1.13 limn→∞

xn = a のとき、次を示せ。

limn→∞

x1 + x2 + · · · + xn

n= a

証明 数列 {xn} は a に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − a| < ε が成り立つ。よって n > n0 で

|x1 + x2 + · · · + xn

n− a|

=1n|(x1 + · · · + xn0 − n0a) + (xn0+1 − a) + · · · + (xn − a)|

5 1n

(|x1 + · · · + xn0 − n0a| + |xn0+1 − a| + · · · + |xn − a|)

<|x1 + · · · + xn0 − n0a|

n+

n − n0

<|x1 + · · · + xn0 − n0a|

n+ ε.

さらにある自然数 n1 > n0 が存在して n > n1 を満たす任意の自然数 n に対し|x1 + · · · + xn0 − n0a|

n< ε が成り立つので

|x1 + x2 + · · · + xn

n− a| < ε + ε = 2ε

となる。よって limn→∞

x1 + x2 + · · · + xn

n= a が成立する。

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1.1 数列の収束 7

例題 1.14 数列 {xn} が a に収束し、数列 {yn} が b に収束するとする。このとき次を示せ。

(1) 数列 {xn + yn} は a + b に収束する。(2) 数列 {xnyn} は ab に収束する。(3) 任意の実数 c に対し 数列 {cyn} は cb に収束する。(4) 数列 {xn − yn} は a − b に収束する。(5) 以下では任意の n ∈ N に対し、yn ̸= 0 かつ b ̸= 0 と仮定する。このとき数列 {1/yn} は有界列である。

(6) 数列 {1/yn} は 1/b に収束する。(7) 数列 {xn/yn} は a/b に収束する。

証明

(1) 数列 {xn} は a に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n1 が存在して、n > n1 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − a| < ε が成り立つ。また数列 {yn} は b に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n2 が存在して、n > n2 を満たす任意の自然数 n に対し |yn − b| <

ε が成り立つ。よって n3 = max{n1, n2} とすると、n > n3 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − a| < ε かつ |yn − b| < ε が成り立つ。ゆえに |(xn + yn) − (a + b)| 5 |xn − a| + |yn − b| < ε + ε = 2ε となるので{xn + yn} は a + b に収束する。

(2) 命題 1.7(1)より収束列は有界列なので、ある正の実数 M > 0 が存在して、任意の自然数 n に対し |xn| 5 M となる。(1)の証明より n >

n3 を満たす任意の自然数 n に対し |xn − a| < ε かつ |yn − b| < ε が成り立つので

|xnyn − ab| = |xn(yn − b) + (xn − a)b|5 |xn||yn − b| + |xn − a||b| < (M + |b|)ε

となり、{xnyn} は ab に収束する。(3) (2)で xn = c とすればよい。(4) (3)より {−yn} は −b に収束し、(1)より {xn − yn} は a − b に収束する。

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8 1 集合と写像

(5) 数列 {yn} は b ̸= 0 に収束するので、|b|/2 > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n に対し |yn − b| < |b|/2、特にyn| > |b|/2 が成り立つ。よって L = min{|y1|, |y2|, · · · , |yn0 |, |b|/2} > 0

とすると任意の自然数 n に対し |yn| = L、つまり |1/yn| 5 1/L が成り立つので {1/yn} は有界列である。

(6) 数列 {yn} は b に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n に対し |yn − b| < ε が成り立つ。また(5)より |1/yn| 5 1/L が成り立つ。よって |1/yn − 1/b| =|yn − b||yn||b|

L|b|となり、{1/yn} は 1/b に収束する。

(7) (6)より {1/yn} は 1/b に収束するので(2)より {xn · 1/yn} は a ·1/b に収束する。

例題 1.15 数列 {xn} と {yn} はそれぞれ a と b に収束する収束列で、任意のn ∈ N に対し xn 5 yn を満たすとする。

(1) a 5 b を示せ。(2) 任意の n ∈ N に対し xn < yn を満たしても a = b となるような収束列

{xn} と {yn} の例を挙げよ。

証明

(1) 例題 1.14(4)より数列 {yn − xn} は b − a に収束する。また仮定より任意の n ∈ N に対し yn −xn = 0 を満たすので、命題 1.7(3)より b−a = 0 となる。

(2) 例えば xn = 0, yn = 1/n がそのような例である。

1.2 実数の完備性

定理 1.16 (上下に有界な集合は上限下限を持つ)R の空集合でない部分集合 A が上に有界ならば上限 supA が存在する。また Rの空集合でない部分集合 A が下に有界ならば下限 inf A が存在する。

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1.2 実数の完備性 9

証明 ??で証明する。

定理 1.17 (上限・下限の特徴付け)

(1) R の空でない部分集合 A が上に有界とする。このとき supA は次の2つの条件を満たす元 b に等しい。

(1) ∀a ∈ A, a 5 b.

(2) ∀ε > 0, ∃a ∈ A s.t. b − ε < a.

(1) R の空でない部分集合 A が下に有界とする。このとき inf A は次の2つの条件を満たす元 b に等しい。

(1) ∀a ∈ A, a = b.

(2) ∀ε > 0, ∃a ∈ A s.t. b + ε > a.

証明 定理 1.16より A の上限 supA が存在する。(1)より b は A の上界の1つである。よって supA 5 b である。ここで b > supA と仮定すると、(2)で ε = b− supA > 0 とすれば A の元 a が存在して b− (b− supA) = sup A <

a となり矛盾。よって supA = b である。inf A についても同様である。

定理 1.18 (有界単調列は収束する)R の単調増加数列が上に有界ならば収束する。R の単調減少数列が下に有界ならば収束する。

証明 数列 {an} は単調増加で上に有界とする。上に有界から定理 1.16 よりsup an が存在する。さらに定理 1.17 より、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して sup an − ε < an0 5 sup an を満たす。一方単調増加から n = no を満たす任意の自然数 n に対し、an0 5 an 5 sup an となるので、| sup an − an| < ε となる。これは lim

n→∞an = sup an を意味する。

数列 {an} は単調減少で下に有界な場合も同様である。

定理 1.19 (カントールの区間縮小法)有限閉区間 In = [an, bn] の列 {In} が任意の n ∈ N に対し In+1 ⊂ In を満たし、 lim

n→∞|an − bn| = 0 を満たすとする。このとき {an} と {bn} は同じ極限 c

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10 1 集合と写像

に収束して∞∩

k=1Ik は1点集合 {c} になる。

証明 仮定 In+1 ⊂ In より数列 {an} は単調増加で 任意の n ∈ N に対し an 5bn 5 b1 より上に有界。よって定理 1.18から数列 {an} は sup an に収束する。この極限を a とすると an 5 a 5 bn となる。同じく数列 {bn} は単調減少で 任意の n ∈ N に対し a1 5 an 5 bn より下に有界。よって定理 1.18から数列 {bn}は inf bn に収束する。この極限を b とすると an 5 b 5 bn となる。an 5 bn より例題 1.15(1)から a 5 b となる。つまり an 5 a 5 b 5 bn となる。仮定lim

n→∞|an − bn| = 0 より a = b となる。これを c と置き直す。このとき任意の

n ∈ N に対し an 5 c 5 bn より c ∈∞∩

k=1Ik となり、

∞∩

k=1Ik ̸= ∅. そこで

∞∩

k=1Ik

の任意の元 d をとると、任意の n ∈ N に対し an 5 d 5 bn より命題 1.7(はさみうちの原理)から c = d となるので、

∞∩

k=1Ik = {c} となる。

定理 1.20 (ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理)有限閉区間の数列は収束部分列を持つ。

証明 以下2分法と呼ばれる証明の方法を紹介する。有限閉区間 [a, b] を

[a,a + b

2] と [

a + b

2, b] に2分割する。[a, b] の数列 {xn} に対し、{n ∈ N | xn ∈

[a,a + b

2]} と {n ∈ N | xn ∈ [

a + b

2, b]} について、N は無限集合よりどちらか

少なくとも一方は無限集合である。無限集合になるほうの分割区間を新たに[a1, b1] とおき、{n ∈ N | xn ∈ [a1, b1]} の元を1つ選んで i1 とする。次に有

限閉区間 [a1, b1] を [a1,a1 + b1

2] と [

a1 + b1

2, b1] に2分割する。数列 {xn} に

対し、{n ∈ N | xn ∈ [a1,a1 + b1

2]} と {n ∈ N | xn ∈ [

a1 + b1

2, b1]} について、

{n ∈ N | xn ∈ [a1, b1]} は無限集合よりどちらか少なくとも一方は無限集合である。無限集合になるほうの分割区間を新たに [a2, b2] とおき、{n ∈ N | xn ∈[a2, b2]} の元のうち i1 より大きい元を1つ選んで i2 とする。この操作を帰納的に続けてゆくと、有限閉区間 In = [an, bn] の列 {In} で任意の n ∈ N に対しIn+1 ⊂ In を満たし、 lim

n→∞|an − bn| = 0 を満たすものが構成できる。このとき

定理 1.19(カントールの区間縮小法)より {an} と {bn} は同じ点 c に収束す

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1.2 実数の完備性 11

る。一方任意の k ∈ N に対し ak 5 xik5 bk より命題 1.7(はさみうちの原理)

から数列 {xn} の部分列 {xik} は c ∈ [a, b] に収束する。

定理 1.21 (実数の完備性)R のコーシー列は収束列である。

証明 {an} をコーシー列とする。命題 1.9(2)よりコーシー列は有界列より、ある有界閉区間に含まれる。よってボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理 1.20

より {an} は収束部分列 {ank} を持つ。以上からコーシー列 {an} は収束部分

列 {ank} を持つので命題 1.9(3)より {an} 自身が収束列となる。

1.2.1 演習:実数の完備性

例題 1.22 (中間値の定理)関数 f(x) が有界閉区間 [a, b] において連続で f(a) ̸= f(b) ならば、f(a) とf(b) の間の任意の実数 r に対し、a < c < b を満たす実数 c が存在して f(c) =

r となる。

証明 f(a) < f(b) の場合、f(a) < r < f(b) を満たす任意の実数 r に対し、r =

f(a + b

2) ならば c =

a + b

2とすればよい。f(a) < r < f(

a + b

2) ならば a1 =

a, b1 =a + b

2とおく。つまり f(a1) < r < f(b1) となる。f(a) < r < f(

a + b

2)

ならば a1 =a + b

2, b1 = b とおく。この場合も f(a1) < r < f(b1) となる。こ

の操作を帰納的に繰り返して行くと、有限閉区間 In = [an, bn] の列 {In} で任意の n ∈ N に対し In+1 ⊂ In を満たし、 lim

n→∞|an − bn| = 0 を満たすものが構

成できる。このとき定理 1.19(カントールの区間縮小法)より {an} と {bn} は同じ点 c に収束する。一方任意の k ∈ N に対し f(ak) < r < f(bk) より f の連続性から定理??と命題 1.7(3)より

f(c) = f( limk→∞

ak) = limk→∞

f(ak) 5 r 5 limk→∞

f(bk) = f( limk→∞

bk) = f(c)

となるので、a < c < b を満たす実数 c が存在して f(c) = r となる。f(a) > f(b) の場合も同様である。

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12 1 集合と写像

例題 1.23 (有界閉区間上の連続関数の最大値・最小値の定理)関数 f(x) が有界閉区間 [a, b] において連続ならば、[a, b] において f(x) は最大値も最小値もとる。

証明 まず f([a, b]) が R の有界集合であることを背理法で示す。f([a, b]) が有

界でないとすると f([a,a + b

2]) か f([

a + b

2, b]) かの少なくとも一方は有界では

ない。f による像が有界でない分割区間を [a1, b1] とする。この操作を帰納的に繰り返して行くと、有限閉区間 In = [an, bn] の列 {In} で任意の n ∈ N に対し In+1 ⊂ In を満たし、 lim

n→∞|an − bn| = 0 を満たすものが構成できる。この

とき定理 1.19(カントールの区間縮小法)より {an} と {bn} は同じ点 c に収束する。一方 f は c で連続より、任意の ε > 0 に対しある δ > 0 が存在してf(U(c; δ)) ⊂ U(f(c); ε) となる。ここで c = lim

k→∞ak = lim

k→∞bk より十分大きい

n で In ⊂ U(c; δ) となるので、f(In) ⊂ f(U(c; δ)) ⊂ U(f(c); ε) となり f(In)

が有界でないことに矛盾する。以上から f([a, b]) は有界である。よって定理 1.16 より sup f([a, b]) と inf f([a, b]) が存在する。以下ではこ

れらが max f([a, b]) と min f([a, b]) であることを示す。まず sup f([a, b]) =

max f([a, b]) を示す。s = sup f([a, b]) とすると定理 1.17より任意の n ∈ N に

対し cn ∈ [a, b] が存在して |s − f(cn)| <1nとなる。このようにして定まる数

列 {cn} は 有界閉区間 [a, b] に含まれるのでボルツァノ・ワイエルシュトラウスの定理 1.20から収束部分列 {cik

} が存在する。その極限を c = limk→∞

ck ∈ [a, b]

とすると、f の連続性から定理??より

s = limk→∞

f(cik) = f( lim

k→∞cik

) = f(c)

となり、s = sup f([a, b]) = max f([a, b]) となる。inf f([a, b]) = min f([a, b]) も同様である。

例題 1.24 (自然対数の底 e の定義)次の極限が存在することを示せ。

limn→∞

(1 +1n

)n

この値を e と記し自然対数の底という。

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1.2 実数の完備性 13

証明 定理 1.18より an = (1 +1n

)n とすると数列 {an} が上に有界かつ単調増

加を示せばよい。まずは上に有界であることを示す。

an = (1 +1n

)n =n∑

k=0

(n

k

)(1n

)k

= 1 +n∑

k=1

1k!

· n − k + 1n

· · · n − 1n

· n

n

5 1 +n∑

k=1

1k!

5 1 +n∑

k=1

(12)k−1 < 3

次に単調増加を示す。

an = (1 +1n

)n =n∑

k=0

(n

k

)(1n

)k

= 1 +n∑

k=1

1k!

· n − k + 1n

· · · n − 1n

· n

n

= 1 +n∑

k=1

1k!

· (1 − k − 1n

) · · · (1 − 1n

) · (1 − 0n

)

5 1 +n∑

k=1

1k!

· (1 − k − 1n + 1

) · · · (1 − 1n + 1

) · (1 − 0n + 1

)

=n∑

k=0

(n + 1

k

)(

1n + 1

)k <n+1∑k=0

(n + 1

k

)(

1n + 1

)k = (1 +1

n + 1)n+1 = an+1

例題 1.25∞∑

n=1|xn| = lim

N→∞

N∑n=1

|xn| < ∞ を満たす実数列 {xn} の全体を ℓ1

とする。

(1) 任意の {xn} ∈ ℓ1 と任意の実数 c ∈ R に対して c{xn} = {cxn} と定義すると、c{xn} ∈ ℓ1 となることを示せ。

(2) 任意の {xn}, {yn} ∈ ℓ1 に対して {xn} + {yn} = {xn + yn} と定義すると、{xn} + {yn} ∈ ℓ1 となることを示せ。

(3) ℓ1 は R 上のベクトル空間となることを示せ。

証明

(1) 任意の自然数 N に対しN∑

n=1|cxn| = |c|

N∑n=1

|xn| 5 |c| limN→∞

N∑n=1

|xn| < ∞

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14 1 集合と写像

となる。よって数列 {N∑

n=1|cxn|} は上に有界かつ単調増加なので定理 1.18

より収束する。つまり∞∑

n=1|cxn| = lim

N→∞

N∑n=1

|cxn| < ∞ より c{xn} =

{cxn} ∈ ℓ1 となる。

(2) 任意の自然数 N に対し三角不等式よりN∑

n=1|xn + yn| 5

N∑n=1

|xn| +

N∑n=1

|yn| 5∞∑

n=1|xn| +

∞∑n=1

|yn| < ∞ となる。よって数列 {N∑

n=1|xn + yn|}

は上に有界かつ単調増加なので定理 1.18 より収束する。つまり

limN→∞

N∑n=1

|xn + yn| =∞∑

n=1|xn + yn| < ∞ より {xn} + {yn} = {xn +

yn} ∈ ℓ1 となる。(3) 各自に任せる。

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距離空間

2.1 ユークリッド空間

2.1.1 平面における直線距離

しばらく2次元平面 R2 で考える(n 次元空間 Rn は演習問題で扱う)。R2

の点 P = (a, b) から Q = (c, d) への直線距離 d(P,Q) を考える。

注意 ここに3角形の図

直角三角形に関するピタゴラスの定理から

d(P,Q)2 = |a − c|2 + |b − d|2

が成り立つ。これは後の節で距離の公理と呼ばれる以下の3つの条件を満たす。

命題 2.1 (1) (正定値性)R2 の任意の2点 P,Q に対して d(P,Q) = 0 である。また d(P,Q) = 0 となるための必要十分条件は P = Q である。

(2) (対称性)R2 の任意の2点 P,Q に対して d(P,Q) = d(Q,P ) である。(3) (三角不等式)R2 の任意の3点 P,Q,R に対して三角不等式

d(P,R) 5 d(P,Q) + d(Q, R)

が成り立つ。

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16 2 距離空間

1番目の「正定値性」は相異なる2点間の距離は正で、2点が一致していることこそ距離がゼロであることだし、2番目の「対称性」は2点間の距離はどちらから測ろうと同じだし、3番目の「三角不等式」は3角形の2辺の和は他の1辺より長いという当たり前のことを並べただけである。点 P から距離が r > 0 未満の点全体を P の r-近傍といい U(P ; r) と記す。

U(P ; r) = {Q ∈ R | d(P,Q) < r}

U(P ; r) の形状は円板で、境界の円周は U(P ; r) に含まれないことに注意する。

2.1.2 平面の点列

R2 の点 Pn = (an, bn) からなる点列 {Pn} を考える。

注意 ここに点列の図

定義 2.2 (有界列、収束列、コーシー列)

(1) 点列 {Pn} が有界列であるとは、正の実数 M > 0 が存在して、任意の自然数 n ∈ N に対し、d(O,Pn) 5 M を満たすこととする。ここで O はR2 の原点 (0, 0) を表す。

(2) 点列 {Pn} が収束列であるとは、R2 のある点 P が存在して、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n ∈ N に対し、d(P, Pn) < ε となることである。近傍の言葉で言えば Pn ∈ U(P ; ε) ということである。

(3) 点列 {Pn} がコーシー列であるとは任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、m,n > n0 を満たす任意の自然数 m,n ∈ N に対し、d(Pm, Pn) < ε となることである。

このとき直線距離の定義から次が分かる。

命題 2.3 点列 {Pn} とその各成分である数列 {an} と {bn} について以下が成り立つ。

(1) 点列 {Pn} が有界列であるための必要十分条件は、数列 {an} と {bn} がともに有界列になることである。

(2) 点列 {Pn} が収束列であるための必要十分条件は、数列 {an} と {bn} が

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2.1 ユークリッド空間 17

ともに収束列になることである。(3) 点列 {Pn} がコーシー列であるための必要十分条件は、数列 {an} と {bn}がともにコーシー列になることである。

証明

(1) 点列 {Pn} が有界列ならば、ある正の実数 M > 0 が存在して、任意の自然数 n ∈ N に対し d(O,Pn) 5 M を満たす。よって

d(O,Pn)2 = a2n + b2

n 5 M2

より |an| 5 M かつ |bn| 5 M となるので、数列 {an} と {bn} はともに有界列になる。

逆に数列 {an} と {bn} がともに有界列にならば、ある正の実数 M > 0 が存在して、任意の自然数 n ∈ N に対し |an| 5 M かつ |bn| 5 M を満たす。よって

d(O,Pn)2 = a2n + b2

n 5 2M2

となるので、点列 {Pn} は有界列になる。(2) 点列 {Pn} が収束列ならば、R2 のある点 P = (a, b) が存在して、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n ∈ N に対し d(P, Pn) < ε となる。よって

d(P, Pn)2 = (a − an)2 + (b − bn)2 < ε2

より |a− an| < ε かつ |b− bn| < ε となるので、数列 {an} と {bn} はともに収束列になる。

逆に数列 {an} と {bn} がともに収束列にならば、ある実数 a, b が存在して、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n ∈ N に対し |a − an| < ε かつ |b − bn| < ε となる。よって

d(P, Pn)2 = (a − an)2 + (b − bn)2 < 2ε2

となるので、点列 {Pn} は収束列になる。(3) 点列 {Pn} がコーシー列ならば、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然

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18 2 距離空間

数 n0 が存在して、m,n > n0 を満たす任意の自然数 m,n ∈ N に対しd(Pm, Pn) < ε となる。よって

d(Pm, Pn)2 = (am − an)2 + (bm − bn)2 < ε2

より |am − an| < ε かつ |bm − bn| < ε となるので、数列 {an} と {bn}はともにコーシー列になる。

逆に数列 {an} と {bn} がともにコーシー列にならば、任意の正の実数 ε >

0 に対しある自然数 n0 が存在して、m,n > n0 を満たす任意の自然数m,n ∈ N に対し |am − an| < ε かつ |bm − bn| < ε となる。よって

d(Pm, Pn)2 = (am − an)2 + (bm − bn)2 < 2ε2

となるので、点列 {Pn} はコーシー列になる。

つまり R2 の点列の性質は、その第1成分と第2成分の数列の性質から決まるということである。命題 2.3と命題 1.7より

命題 2.4 (1) 点列 {Pn} が収束列ならば有界列である。(2) 点列 {Pn} が P にも Q にも収束するならば、P = Q となる。(3) 点列 {Pn} が P に収束するならば、{Pn} の任意の部分列 {Pik

} も P に収束する。

証明

(1) 点列 {Pn = (an, bn)} が収束列ならば命題 2.3(1)より数列 {an} と{bn} もともに収束列である。よって命題 1.7(1)より収束列は有界列なので、再び命題 2.3(1)より {Pn} も有界列である。

(2) 点列 {Pn = (an, bn)} が P = (a, b) にも Q = (c, d) にも収束するならば、命題 2.3(2)より数列 {an} は a にも c にも収束して、{bn} は b

にも d にも収束する。よって命題 1.7(2)より a = c かつ b = d、つまり P = Q となる。

(3) 点列 {Pn = (an, bn)} は P = (a, b) に収束するので、命題 2.3(2)より数列 {an} は a に収束して、数列 {bn} は b に収束する。このとき命

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2.1 ユークリッド空間 19

題 1.7(4)より {Pn} の任意の部分列 {Pik= (aik

, bik)} に対し、数列

{aik} は a に収束して、数列 {bik

} は b に収束するので、再び命題 2.3

(2)より {Pik} は P に収束する。

定理 2.5 R2 は完備である。すなわちコーシー列は収束列である。

証明 {Pn = (an, bn)} をコーシー列とすると、命題 2.3(3)より点列 {Pn}の各成分である数列 {an} と {bn} は共にコーシー列になる。よって定理 1.21

(R の完備性)よりある実数 a, b が存在して {an} と {bn} はそれぞれ a と b に収束する。つまり任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n ∈ N に対し、|an − a| < ε かつ |bn − b| < ε となる。そこで P = (a, b) とすると、n > n0 ならば

d(Pn, P ) =√|an − a|2 + |bn − b|2 <

√ε2 + ε2 =

√2ε

となるので、{Pn} は P に収束する。

2.1.3 平面上の連続関数

平面上の関数 f : R2 → R を考える。つまり f(x, y) は2変数関数である。

定義 2.6 (ε-δ 論法)R2 の部分集合 A 上で定義された関数 f : A → R が A の点 P で連続であるとは、任意の正の実数 ε > 0 に対し、ある正の実数 δ > 0 が存在して、d(P,Q) <

δ を満たす A の任意の元 Q に対して |f(P ) − f(Q)| < ε が成り立つことである。近傍の言葉で言えば Q ∈ U(P ; δ)∩A ならば f(Q) ∈ U(f(P ); ε) ということである。f が A 上の連続関数であるとは、A の任意の点 P で f が連続であることとする。

命題 2.7 R2 の部分集合 A 上で定義された関数 f : A → R が A の点 P =

(a, b) で連続であるための必要十分条件は、1変数関数 f(x, b) と f(a, y) がそれぞれ x = a と y = b で連続になることである。

次は R2 上の連続関数の基本定理であり、定理??の2変数版である。

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20 2 距離空間

定理 2.8 R2 の部分集合 A 上で定義された関数 f : A → R と A の点 P =

(a, b) について、次の(1)と(2)は同値である。

(1) f は P で連続である。(2) P に収束する A の任意の点列 {Pn = (an, bn)} に対し、数列 {f(Pn)} は

f(P ) に収束する。つまり f と limn→∞

は交換可能である。

limn→∞

f(Pn) = f( limn→∞

Pn)

証明

(1) f は P で連続より、任意の正の実数 ε > 0 に対し、ある正の実数 δ > 0

が存在して、d(P,Q) < δ を満たす A の任意の元 Q に対して |f(P ) −f(Q)| < ε を満たす。一方点列 {Pn} が P に収束するとすると、このδ > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数n に対し、d(P, Pn) < δ となる。よって |f(P ) − f(Pn)| < ε となるので数列 {f(Pn)} は f(P ) に収束する。

(2) 対偶命題『f が P で連続でないならば、次の性質を満たす点列 {Pn} が存在する。{Pn} は P に収束するが、数列 {f(Pn)} は f(P ) に収束しない』を示す。f は P で連続でないので、ある正の実数 ε0 > 0 が存在して、任意の δ > 0 に対しある点 Pδ が存在して、d(P, Pδ) < δ かつ|f(P ) − f(Pδ)| = ε0 を満たす。ここで δ > 0 は任意より、任意の自然数n に対し δ = 1/n として Pδ を Pn と記すことにすると、d(P, Pn) < 1/n

かつ |f(P ) − f(Pn)| = ε0 を満たす。これは点列 {Pn} は P に収束するが、数列 {f(Pn)} は f(P ) に収束しないことを意味する。

2.1.4 平面の開集合、閉集合

R の開集合や閉集合とまったく同様にして、R2 の開集合や閉集合が定義できる。

定義 2.9 R2 の部分集合 A が開集合であるとは A = ∅ か、空集合でない A の任意の点 p に対し、ある ε > 0 が存在して、U(p; ε) ⊂ A を満たすこととする。

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2.1 ユークリッド空間 21

例 2.1 R2 は開集合である。点 P の r-近傍 U(P ; r) は開集合である。

証明 R2 が開集合であることは定義より明らか。以下 U(P ; r) が開集合を示す。Q を U(P ; r) の任意の点とすると、定義より r − d(P,Q) > 0 が成り立つ。そこで S を U(Q; r − d(P,Q)) の任意の点とすると、定義より d(Q,S) < r −d(P,Q) が成り立つ。よって三角不等式より

d(P, S) 5 d(P,Q) + d(Q, S) < d(P,Q) + r − d(P,Q) = r

となり S ∈ U(P ; r)、つまり U(Q; r − d(P,Q)) ⊂ U(P ; r) が成り立つ。よってU(P ; r) は開集合である。

注意 ここに U(P ; r) と U(P ; r) の図

定義 2.10 R2 の部分集合 B が閉集合であるとは、B の R2 における補集合Bc が開集合になることである。

例 2.2 R2 や空集合は閉集合である。点 P の r-閉近傍 U(P ; r) を

U(P ; r) = {Q ∈ R2 | d(P,Q) 5 r}

と定義すると U(P ; r) は閉集合である。

証明 空集合 や R2 は開集合であった。それらの補集合である R2 や空集合は定義より閉集合である。以下 U(P ; r) が閉集合、つまり U(P ; r)

cが開集合を

示す。Q を U(P ; r)cの任意の点とすると、定義より d(P,Q) − r > 0 が成り立

つ。そこで S を U(Q; d(P,Q) − r) の任意の点とすると、定義より d(Q, S) <

d(P,Q)− r が成り立つ。よって三角不等式より d(P,Q) 5 d(P, S) + d(S,Q) が成り立つので

d(P, S) = d(P,Q) − d(Q, S) > d(P,Q) + r − d(P,Q) = r

となり S ∈ U(P ; r)c、つまり U(Q; d(P,Q) − r) ⊂ U(P ; r)

cが成り立つ。よっ

て U(P ; r)cは開集合なので U(P ; r) は閉集合である。

次の結果は R2 の閉集合に関する基本定理である。

定理 2.11 R2 の空集合でない部分集合 B が閉集合であるための必要十分条件は、B の元からなる収束列 {bn} の極限もまた B の元になることである。

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22 2 距離空間

証明 B は閉集合とする。B の元からなる収束列 {bn} を1つ固定する。B =

R2 ならば {bn} の極限はもちろん B = R2 の元である。B ̸= R2 ならば Bc は空集合でない開集合である。もし {bn} が Bc の点 p に収束するならば、任意のε > 0 に対しある n0 ∈ N が存在して n > n0 を満たす任意の n に対し bn ∈U(p; ε) となる。しかし Bc は開集合なのである δ > 0 が存在して U(p; δ) ⊂ Bc

つまり U(p; δ)∩A = ∅ となるので矛盾。よって B の元からなる収束列 {bn}の極限もまた B の元になる。逆に B の元からなる任意の収束列の極限もまた B の元になるとする。B =

R2 ならば B は閉集合である。B ̸= R2 ならば Bc は空集合でない。Bc の任意の点 p は B の元からなる収束列の極限ではない。つまりある δ > 0 が存在してU(p; δ)∩A = ∅ つまり U(p; δ) ⊂ Bc となるので Bc は開集合である。よってB は閉集合になる。

定義 2.12 (1) R2 の部分集合 A が有界であるとは、ある正の実数 M > 0 が存在して A の任意の点 P に対して d(P,O) 5 M を満たすこととする。ここで O は R2 の原点 (0, 0) を表す。

(2) R2 の部分集合 C が点列コンパクトであるとは、C の元からなる任意の点列 {Qn} が C の元に収束する部分列を含むこととする。

次の結果は R における点列コンパクトと有界閉集合の同値性の2次元版である。

定理 2.13 R2 の部分集合 A が有界閉集合であることと点列コンパクトであることは同値である。

証明 まず A は点列コンパクトと仮定する。もし A が有界でないとすると、任意の実数 r に対し A の点 Pr が存在して d(Pr, O) = r となる。よって特に任意の自然数 n に対し A の点 Pn が存在して d(Pn, O) = n となる。このとき点列 {Pn} の任意の部分列は有界列でないので、命題 2.4(1)より収束列ではない。これは A が点列コンパクトに矛盾する。よって A は有界である。またもし A が閉集合でないとすると、定理 2.11から A の元からなる点列で極限が A

に含まれない収束列 {Pn} が存在する。命題 2.4(3)より {Pn} の任意の部分列は同じ極限を持つ点列より、A が点列コンパクトに矛盾する。よって A は閉

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2.1 ユークリッド空間 23

集合でもある。以上から A は有界閉集合である。次に A は有界閉集合と仮定する。A は有界より {Pn = (an, bn)} を A の点

列とすると、命題 2.3(1)より数列 {an} は有界列になる。よってボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理 1.20 から収束部分列 {aik

} が存在する。さらに {bik

} も有界列より、再度ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理 1.20 から収束部分列 {bjℓ

} が存在する。よって命題 2.3(2)より {(ajℓ, bjℓ

)} は点列{Pn} の収束部分列になる。一方 A は閉集合でもあるので定理 2.11より収束列{(ajℓ

, bjℓ)} の極限は A に含まれる。以上から A は点列コンパクトである。

2.1.5 演習:ユークリッド空間

R の n 個の直積 Rn = R×R× · · · ×R を考える。Rn の任意の2つの元 x =

(x1, x2, · · · , xn), y = (y1, y2, · · · , yn) と任意の実数 c に対し

x + y = (x1 + y1, x2 + y2, · · · , xn + yn), cx = (cx1, cx2, · · · , cxn)

と定義すると Rn はベクトル空間になる。Rn のユークリッド内積を次のように定義する。Rn の任意の2つの元 x =

(x1, x2, · · · , xn), y = (y1, y2, · · · , yn) に対し

⟨x, y⟩ =n∑

i=1

xiyi

ユークリッド内積は次の性質を満たす。

(1) Rn の任意の元 x に対し ⟨x, x⟩ = 0 である。また ⟨x, x⟩ = 0 となるための必要十分条件は x = 0 である。

(2) Rn の任意の2つの元 x, y に対し ⟨x, y⟩ = ⟨y, x⟩ である。(3) Rn の任意の3元 x, y, z と任意の実数 a, b に対し

⟨ax,+by, z⟩ = a⟨x, z⟩ + b⟨y, z⟩

である。

(2)と(3)から Rn の任意の3元 x, y, z と任意の実数 a, b に対し

⟨x, ay + bz⟩ = a⟨x, y⟩ + b⟨x, z⟩

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24 2 距離空間

も成り立つことに注意する。Rn のユークリッドノルムを次のように定義する。Rn の任意の元 x に対し

||x|| =√

⟨x, x⟩

特に n = 1 の場合 R の元 x のユークリッドノルム ||x|| は絶対値 |x| に等しい。ユークリッドノルムは次の性質を満たす。

(1) Rn の任意の元 x に対し ||x|| = 0 である。また ||x|| = 0 となるための必要十分条件は x = 0 である。

(2) Rn の任意の元 x と任意の実数 a に対し ||ax|| = |a|||x|| である。(3) Rn の任意の2元 x, y に対し

||x + y|| 5 ||x|| + ||y||

である。

Rn の任意の2つの元 x, y に対しユークリッド距離 d(x, y) を次のように定義する。

d(x, y) = ||x − y||

特に n = 1 の場合 R の2つの元 x, y に対し、ユークリッド距離 d(x, y) はこれまで考えてきた R での2点 x, y の長さ |x− y| に等しい。また n = 2 の場合R2 の2つの元 x, y に対し、ユークリッド距離 d(x, y) はこれまで考えてきたR2 での2点 x, y の直線距離に等しい。ユークリッド距離は次の性質を満たす。

(1) Rn の任意の2点 a, b に対して d(a, b) = 0 である。また d(a, b) = 0 となるための必要十分条件は a = b である。

(2) Rn の任意の2点 a, b に対して d(a, b) = d(b, a) である。(3) Rn の任意の3点 a, b, c に対して三角不等式

d(a, c) 5 d(a, b) + d(b, c)

が成り立つ。

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2.1 ユークリッド空間 25

例題 2.14 (1) Rn の2点 a = (a1, a2, · · · , an), b = (b1, b2, · · · , bn) に対し、次のコーシー・シュワルツの不等式を示せ。

(n∑

i=1

aibi)2 5 (n∑

i=1

a2i )(

n∑i=1

b2i )

(2) ユークリッドノルムに関する不等式

||x + y|| 5 ||x|| + ||y||

を示せ。(3) ユークリッド距離に関する三角不等式

d(a, c) 5 d(a, b) + d(b, c)

を示せ。

証明

(1)n∑

i=1

(ait + bi)2 = ||a||2t2 + 2(a|b)t + ||b||2 = 0 より判別式 (a|b)2 −

||a||2||b||2 = 0 となる。(2) Rn の2つの元 x = (x1, x2, · · · , xn), y = (y1, y2, · · · , yn) に対し

||x + y||2 =n∑

i=1

|xi + yi|2

5n∑

i=1

(|xi| + |yi|)2 (絶対値の三角不等式より)

=n∑

i=1

|xi|2 +n∑

i=1

|yi|2 + 2n∑

i=1

|xi||yi|

5 (||x|| + ||y||)2 (コーシー・シュワルツの不等式)

(3) (2)より

d(x, z) = ||x−z|| = ||x−y+y−z|| 5 ||x−y||+||y−z|| = d(x, y)+d(y, z)

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26 2 距離空間

2.2 距離空間

2.2.1 距離関数

R の数列の収束や関数の連続性を議論する際に、絶対値を用いて2点間の距離を測った。この絶対値の役割をする関数を一般の集合の上で考えることがこの節の目標である。ではこの関数にどういう役割を期待すべきだろう。

定義 2.15 (距離関数、距離空間)

(1) 集合 X は空集合ではないとする。X と X 自身の直積集合 X × X 上で定義された実数値関数 d : X × X → R が X の 距離関数 であるとは、次の3つの条件を満たすこととする。

• (正定値性)X の任意の2点 a, b に対して d(a, b) = 0 である。またd(a, b) = 0 となるための必要十分条件は a = b である。

• (対称性)X の任意の2点 a, b に対して d(a, b) = d(b, a) である。• (三角不等式)X の任意の3点 a, b, c に対して三角不等式

d(a, c) 5 d(a, b) + d(b, c)

が成り立つ。

(2) 集合 X と X の距離関数 d の組 (X, d) を距離空間 という。

注意 X の距離関数の定義域は X の直積集合 X × X であって、X 自身ではないことに注意する。

2.1 でみたように Rn のユークリッド距離は Rn の距離関数である。しかしRn で考えうる距離関数はユークリッド距離だけとは限らない。

例 2.3 Rn の2点 x, y の対し d0(x, y) := max{|x1 − y1|, · · · , |xn − yn|} とすると、d0 も Rn の距離関数である。

証明 三角不等式のみ示す。x, y, z ∈ Rn に対し、x, y, z ∈ Rn に対し、d0(x, y) =

|xi−yi|, d0(y, z) = |yk −zk|, d0(x, z) = |xℓ−zℓ| を満たす i, k, ℓ ∈ {1, 2, · · · , n}が存在する。このとき

d0(x, z) = |xℓ − zℓ|

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2.2 距離空間 27

5 |xℓ − yℓ| + |yℓ − zℓ|5 |xi − yi| + |yk − zk|= d0(x, y) + d0(y, z)

となる。

例 2.4 Rn の2点 x, y の対し d1(x, y) :=n∑

k=1

|xk − yk| とすると、d1 も Rn の

距離関数である。

証明 三角不等式のみ示す。任意の k = 1, 2, · · · , n に対し |xk − zk| 5 |xk −yk| + |yk − zk| より

d1(x, z) =n∑

k=1

|xk − zk|

5n∑

k=1

(|xk − yk| + |yk − zk|)

=n∑

k=1

|xk − yk| +n∑

k=1

|yk − zk|

= d1(x, y) + d1(y, z)

となる。

これらの例のように一般に1つの集合にはいくつもの距離関数が定義できる。では距離が定義できない集合はあるのだろうか?

命題 2.16 X を空でない集合とする。任意の x, y ∈ X に対し

d(x, y) :=

1 (x ̸= y)

0 (x = y)

とすると、d は X の距離関数になる。

証明 三角不等式のみ示す。x, y, z ∈ X に対し、x = z ならば d(x, z) = 0 5d(x, y)+d(y, z) となる。また x ̸= z ならば x ̸= y または y ̸= z より、d(x, y) =

1 または d(y, z) = 1 となる。よって d(x, z) = 1 5 d(x, y) + d(y, z) となる。

このように空集合ではないどんな集合にも距離関数が定義できる。

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28 2 距離空間

定義 2.17 (離散距離)上記の距離関数を集合 X の離散距離という。

距離空間を調べる際には、これまでにも登場した ε-近傍という考え方が基本になる。

定義 2.18 (ε-近傍)正の実数 ε > 0 に対し、距離空間 (X, d) の点 p における ε-近傍を次のように定義する。

U(p; ε) = {x ∈ X | d(p, x) < ε}

例えば R2 でユークリッド距離に関する点 p の ε-近傍 U(p; ε) は丸いが、例2.3で考えた距離に関する点 p の ε-近傍は四角い。このように距離によって ε-

近傍の形は様々であるが、U(p; ε) が点 p を(境界ではなく)内部に含んでいることは共通した性質であることに着目してほしい。

定義 2.19 (有界)距離空間 (X, d) の部分集合 A が有界であるとは、X のある点 b と正の実数M > 0 が存在して、A の任意の点 a に対し d(a, b) 5 M を満たすこととする。

ユークリッド空間 Rn には原点 0 という特別な点があったのでそこからの距離を測って有界性を定義できたが、一般の集合 X にはそのような特別な点がないので上記のような定義を採用した。

2.2.2 部分距離空間、直積距離空間

集合の場合に部分集合や直積集合を考えたのと同じ発想で、距離空間 (X, d)

から次々と新しい距離空間を作ることができる。まずは距離空間の部分集合に自然な距離関数が定まることをみてゆく。

命題 2.20 距離空間 (X, d) の部分集合 A に対し、A と A 自身の直積集合 A×A 上で定義された実数値関数 dA : A×A → R を、A の任意の2点 a, b ∈ A に対し

dA(a, b) = d(a, b)

と定義すると、dA は A 上の距離関数になる。

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2.2 距離空間 29

証明 d が距離関数の公理 2.15を満たすことから dA も距離関数の公理を満たす。

定義 2.21 (部分距離空間)

距離空間 (X, d) の部分集合 A に対し、上記の距離関数 dA を考えた距離空間(A, dA) を、(X, d) の部分距離空間という。

この方法によりユークリッド平面や空間内の図形(例えば円や球など)はすべて距離空間となる。例えば 2× 2 の実正則行列全体の集合 GL(2, R) は行列の積に関して群であるが、2 × 2 行列には4つ成分があることから GL(2, R) を R4

の部分集合と思うことで距離空間にもなる。次に2つの距離空間の直積集合に自然な距離関数が定まることをみる。

命題 2.22 2つの距離空間 (X, dX) と (Y, dY ) に対し、直積集合 X × Y の直積 (X × Y ) × (X × Y ) 上の実数値関数 d : (X × Y ) × (X × Y ) → R を

d((a, b), (c, d)) =√

dX(a, c)2 + dY (b, d)2

と定義すると、d は X × Y の距離関数になる。

証明 三角不等式のみ示す。X × Y の3点 (a1, b1), (a2, b2), (a3, b3) に対し、dX と dY は三角不等式を満たすので

d((a1, b1), (a3, b3))2 = dX(a1, a3)2 + dY (b1, b3)2

5 (dX(a1, a2) + dX(a2, a3))2 + (dY (b1, b2) + dY (b2, b3))2

5 (d((a1, b1), (a2, b2)) + d((a2, b2), (a3, b3)))2

さらに n 個の距離空間の直積集合に自然な距離関数が定まることをみる。

命題 2.23 n 個の距離空間 (X1, d1), · · · , (Xn, dn) に対し、直積集合 X1×· · ·×Xn の直積 (X1 × · · · ×Xn)× (X1 × · · · ×Xn) 上の実数値関数 d : (X1 × · · · ×Xn) × (X1 × · · · × Xn) → R を

d(x, y) =

√n∑

i=1

di(xi, yi)2

と定義すると、d は X1 × · · · × Xn の距離関数になる。

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30 2 距離空間

証明 n に関する帰納法で三角不等式のみ示す。n = 1 の場合は仮定である。

n = k − 1 まで成立すると仮定する。つまり d′(x, y) =

√k−1∑i=1

di(xi, yi)2 は三角

不等式を満たすので (X1 × · · · × Xk−1, d′) は距離空間になる。n = k の場合、

X1 × · · · × Xk の3点 x, y, z に対し、

d(x, z)2 =k∑

i=1

di(xi, zi)2

=k−1∑i=1

di(xi, zi)2 + dk(xk, yk)2

= d′(x, z)2 + dk(xk, yk)2

となり、命題 2.22より d は三角不等式を満たす。

定義 2.24 (直積距離空間)n 個の距離空間 (X1, d1), · · · , (Xn, dn) の直積集合 X1 × · · ·×Xn に対し、上記の距離関数 d を考えた距離空間 (X1 × · · · × Xn, d) を、(X1, d1), · · · , (Xn, dn)

の直積距離空間という。

この見方により R2 は R どうしの直積距離空間と思える。R3 は R の3つの直積距離空間とも思えるし、 R と R2 の直積距離空間とも思える。

2.2.3 演習問題:距離空間

例題 2.25 距離空間 (X, d)の任意の2点 x, y ∈ X に対し d′(x, y) :=d(x, y)

1 + d(x, y)とするとき、d′ も X 上の距離関数になることを示せ。

証明 三角不等式のみ示す。距離空間 (X, d) の任意の3点 x, y, z ∈ X に対し、a = d(x, y), b = d(y, z), c = d(x, z) とすると a, b, c = 0 かつ d が三角不等式をみたすので a + b − c = 0 となる。よって

d′(x, y) + d′(y, z) − d′(x, z) =a + b − c + 2ab + abc

(1 + a)(1 + b)(1 + c)= 0

となり、d′ も三角不等式をみたす。

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2.2 距離空間 31

例題 2.26 Rnのユークリッド距離 dと距離 d0(x, y) := max{|x1−y1|, · · · , |xn−yn|} について不等式

d0(x, y) 5 d(x, y) 5√

nd0(x, y)

を示せ。

証明 d0(x, y) = |xi−yi| = max{|x1−y1|, · · · , |xn−yn|}とすると、d0(x, y)2 =

(xi − yi)2 5n∑

k=1

(xk − yk)2 = d(x, y)2 5 n(xi − yi)2 = nd0(x, y)2 となる。

例題 2.27 距離空間 (X, d) の部分集合 A が有界ならば、X の任意の点 c に対し、正の実数 M > 0 が存在して、A の任意の点 a に対し d(a, c) 5 M を満たすことを示せ。

証明 A は有界より、X のある点 b と正の実数 K > 0 が存在して、A の任意の点 a に対し d(a, b) 5 K を満たす。そこで M = K + d(b, c) とすると、距離関数 d は三角不等式を満たすことから、任意の a ∈ A に対し d(a, c) 5 d(a, b) +

d(b, c) 5 K + d(b, c) = M となる。

例題 2.28 (関数空間)閉区間 [a, b] 上の連続関数全体の集合を C[a, b] とする。d1(f, g) = sup{|f(x)−g(x)| | x ∈ [a, b]} は C[a, b] の距離関数になることを示せ。

証明 f, g ∈ C[a, b] に対し、f + g ∈ C[a, b] かつ f ∈ C[a, b] と c ∈ R に対し、cf ∈ C[a, b] となる。実は C[a, b] は実ベクトル空間になる。さらに f ∈ C[a, b]

に対し、|f | ∈ C[a, b] でもある。f, g ∈ C[a, b] に対し、|f − g| ∈ C[a, b] は有界閉区間 [a, b] で最大値を取るの

で、d1(f, g) = sup{|f(x)− g(x)| | x ∈ [a, b]} = max{|f(x)− g(x)| | x ∈ [a, b]}となる。三角不等式のみ示す。f, g, h ∈ C[a, b] に対し、

d1(f, h) = max{|f(x) − h(x)| | x ∈ [a, b]}= |f(x0) − h(x0)| (∃x0 ∈ [a, b])5 |f(x0) − g(x0)| + |g(x0) − h(x0)|5 max{|f(x) − g(x)| | x ∈ [a, b]} + max{|g(x) − h(x)| | x ∈ [a, b]}= d1(f, g) + d1(g, h)

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32 2 距離空間

例題 2.29 (関数空間)

閉区間 [a, b] 上の連続関数全体の集合を C[a, b] とする。d2(f, g) =∫ b

a

|f(x) −

g(x)| dx は C[a, b] の距離関数になることを示せ。

証明 f, g ∈ C[a, b] に対し、f + g ∈ C[a, b] かつ f ∈ C[a, b] と c ∈ R に対し、cf ∈ C[a, b] となる。実は C[a, b] は実ベクトル空間になる。さらに f ∈ C[a, b]

に対し、|f | ∈ C[a, b] でもある。f, g ∈ C[a, b] に対し、|f − g| ∈ C[a, b] は有界閉区間 [a, b] でリーマン可積分

より d2(f, g) =∫ b

a

|f(x) − g(x)| dx は well-defined になる。

三角不等式のみ示す。f, g, h ∈ C[a, b] に対し、任意の x ∈ [a, b] で |f(x) −h(x)| 5 |f(x) − g(x)| + |g(x) − h(x)| より

d2(f, h) =∫ b

a

|f(x) − h(x)| dx

5∫ b

a

|f(x) − g(x)| + |g(x) − h(x)| dx

5∫ b

a

|f(x) − g(x)| dx +∫ b

a

|g(x) − h(x)| dx

= d2(f, g) + d2(g, h)

例題 2.30 (p 進距離)

(1) 0 でない任意の有理数 x は有限個の素数の(負ベキ)も許した積で一意的に表すことができる。p を素数としたときこの素因数分解に現れる p のベキを ordp(x) とする。[x|p = p−ordp(x) とするとき以下を示せ。ただし|0|p = 0 とする。

• Q の2つの元 x, y に対し |xy|p = |x|p|y|p である。また y ̸= 0 ならば|x/y|p = |x|p/|y|p である。

• Q の2つの元 x, y に対し |x+ y|p 5 max{|x|p, |y|p} である。また |x|p ̸=|y|p ならば |x + y|p = max{|x|p, |y|p} である。

(2) Q の2つの元 x, y に対し dp(x, y) = |x − y|p とすると、dp は Q 上の距

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2.3 距離空間の点列と連続写像 33

離空間になることを示せ。

証明

例題 2.31 (数列空間)∞∑

n=1|xn| = lim

N→∞

N∑n=1

|xn| < ∞ を満たす実数列 {xn} の全体を ℓ1 とする。

{xn}, {yn} ∈ ℓ1 に対して d({xn}, {yn}) =∞∑

n=1|xn − yn| とすると d は ℓ1 の距

離関数になることを示せ。

証明 三角不等式のみ示す。{xk}, {yk}, {zk} ∈ ℓ1 とすると、任意の n ∈ N に対し

n∑k=1

|xk − zk| 5n∑

k=1

(|xk − yk| + |yk − zk|)

5n∑

k=1

|xk − yk| +n∑

k=1

|yk − zk|

5∞∑

k=1

|xk − yk| +∞∑

k=1

|yk − zk|

= d({xk}, {yk}) + d({yk}, {zk})

となり、数列 {n∑

k=1

|xk − zk|} は上に有界かつ単調増加より収束する。よって

d({xk}, {zk}) =∞∑

k=1

|xk − zk| 5 d({xk}, {yk}) + d({yk}, {zk})

2.3 距離空間の点列と連続写像

2.3.1 距離空間の点列

距離空間 (X, d) の点列を距離関数 d を用いて調べよう。まずは点列が有界列であることの定義から始める。

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34 2 距離空間

定義 2.32 (距離空間の有界列)距離空間 (X, d) の点列 {an} が有界列であるとは、X のある点 b と正の実数M > 0 が存在して、任意の自然数 n ∈ N に対し、d(an, b) 5 M を満たすこととする。

つまり X の部分集合 {an | n ∈ N} は有界ということである。よって例題2.27より

命題 2.33 距離空間 (X, d) の点列 {an} が有界列であるための必要十分条件は、X の任意の点 c に対し、ある正の実数 K > 0 が存在して、任意の自然数n ∈ N に対し、d(an, b) 5 K を満たすことである。。

数列の場合の絶対値の役割を距離関数が担うことで、収束列やコーシー列も距離空間で全く同様に定義できる。

定義 2.34 (距離空間の収束列とコーシー列)距離空間 (X, d) の点列 {an} について

(1) {an} が収束列であるとは、X のある点 a が存在して、任意の正の実数ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数n ∈ N に対し d(an, a) < ε となることである。先に定義した ε-近傍を用いると an ∈ U(a; ε) となることである。論理記号で書くと

∃a ∈ X s.t. ∀ε > 0,∃n0 ∈ N s.t. ∀n ∈ N, n > n0 ⇒ d(an, a) < ε

または

∃a ∈ X s.t. ∀ε > 0,∃n0 ∈ N s.t. ∀n ∈ N, n > n0 ⇒ an ∈ U(a; ε)

となる。このとき {an} は a に収束する、a を {an} の極限といい、

limn→∞

an = a

と記す。(2) {an} が コーシー列 であるとは、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 m,n ∈ N に対しd(am, an) < ε となることである。論理記号で書くと

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2.3 距離空間の点列と連続写像 35

∀ε > 0,∃n0 ∈ N s.t. ∀m, n ∈ N,m, n > n0 ⇒ d(am, an) < ε

となる。

2.3.2 連続写像

写像の連続性の定義は、ユークリッド直線 R 上の関数の連続性を ε-δ 論法で定義した真似をする。

定義 2.35 (1) 距離空間 (X, dX) から距離空間 (Y, dY ) への写像 f : X → Y

が X の点 a で連続であるとは、任意の ε > 0 に対し δ > 0 が存在してdX(p, a) < δ を満たす X の任意の点 p に対し dY (f(p), f(a)) < ε となることとする。先に定義した ε-近傍を用いると f(U(a; δ)) ⊂ U(f(a); ε)

となることである。論理記号で書くと

∀ε > 0,∃δ > 0 s.t. ∀x ∈ X, dX(x, a) < δ ⇒ dY (f(x), f(a)) < ε

または

∀ε > 0,∃δ > 0 s.t. f(U(a; δ)) ⊂ U(f(a); ε)

となる。(2) 写像 f : X → Y が連続写像であるとは、X の任意の点で連続であることとする。

(3) 特に (X, dX) から R への連続写像を X 上の連続関数という。

次の結果は距離空間の連続写像の基本定理である。

定理 2.36 距離空間 (X, dX) から距離空間 (Y, dY ) への写像 f : X → Y がa ∈ X で連続であるための必要十分条件は、a に収束する X の任意の点列 {xn}に対し、Y の点列 {f(xn)} が f(a) に収束することである。

証明

(1) 写像 f は X の点 a で連続より、任意の正の実数 ε > 0 に対し、ある正の実数 δ > 0 が存在して、d(x, a) < δ を満たす X の任意の元 x ∈ X に対して d(f(x), f(a)) < ε を満たす。点列 {xn} が a に収束するとすると、この δ > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意

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36 2 距離空間

の自然数 n に対し、d(xn, a) < δ となる。よって d(f(xn), f(a)) < ε となるので点列 {f(xn)} は f(a) に収束する。

(2) 対偶命題『写像 f は X の点 a で連続でないならば、次の性質を満たすX の点列 {xn} が存在する:{xn} は a に収束するが、{f(xn)} は f(a)

に収束しない』を示す。f は a で連続でないので、ある正の実数 ε0 > 0

が存在して、任意の δ > 0 に対しある実数 xδ が存在して、d(xδ, a) < δ

かつ d(f(xδ), f(a)) = ε0 を満たす。ここで δ > 0 は任意より、任意の自然数 n に対し δ = 1/n として xδ を xn と記すことにすると、d(xn, a) <

1/n かつ d(f(xn), f(a)) = ε0 を満たす。これは {xn} は a に収束するが、{f(xn)} は f(a) に収束しないことを意味する。

次の結果は写像の連続性が写像の合成で保たれることを表している。

命題 2.37 3つの距離空間 (X, dX), (Y, dY ), (Z, dZ) と2つの写像 f : X → Y

と g : Y → Z について

(1) 写像 y = f(x) が x = a で連続で、写像 w = g(y) が y = f(a) で連続ならば、合成写像 w = g ◦ f(x) := g(f(x)) は x = a で連続になる。

(2) f と g が連続写像ならば、合成写像 g ◦ f も連続写像になる。

証明

(1) ε-近傍を使って示してみよう。g は f(a) で連続より任意の正の実数 ε > 0

に対し、ある正の実数 δ > 0 が存在して、g(U(f(a); δ)) ⊂ U(g(f(a)); ε)

となる。また f は a で連続よりこの δ に対し、ある正の実数 η > 0 が存在して、f(U(a; η)) ⊂ U(f(a); δ) となる。よって

g ◦ f(U(a; η)) = g(f(U(a; η))) ⊂ g(U(f(a); δ)) ⊂ U(g(f(a)); ε)

となるので g ◦ f は a で連続になる。(2) X の任意の点 a に対し仮定より f は a で連続であり、g は Y の点 f(a)

で連続なので、(1)より g ◦ f は a で連続である。

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2.3 距離空間の点列と連続写像 37

2.3.3 演習問題

例題 2.38 (1) 収束列は有界列であることを示せ。(2) 点列 {xn} が a にも b にも収束するならば、a = b を示せ。(3) 点列 {xn} が a に収束するならば、{xn} の任意の部分列 {xik

} も a に収束することを示せ。

証明

(1) 示すこと「 limn→∞

xn = a ⇒ ∃M > 0 s.t. ∀n ∈ N, d(xn, a) 5 M」

limn→∞

xn = a より(ε = 1 > 0 として)∃n0 ∈ N s.t. ∀n > n0, d(xn, a) <

1. よって M = max{d(x1, a), d(x2, a), · · · , d(xn0 , a), 1} とおくと ∀n ∈N, d(xn, a) 5 M .

(2) 示すこと『任意の正の実数 ε > 0 に対し d(a, b) < ε が成り立つ』点列 {xn} は a に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n1 が存在して、n > n1 を満たす任意の自然数 n に対し d(xn, a) < ε が成り立つ。また点列 {xn} は b にも収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n2 が存在して、n > n2 を満たす任意の自然数 n に対し d(xn, b) <

ε が成り立つ。よって n3 = max{n1, n2} とすると、n > n3 を満たす任意の自然数 n に対し d(xn, a) < ε かつ d(xn, b) < ε が成り立つ。このとき d(a, b) = d(a, xn) + d(xn, b) 5 d(a, xn) + d(xn, b) < ε + ε = 2ε となり a = b が示せた。

(3) 点列 {xn} は a に収束するので、任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n に対し d(xn, a) < ε が成り立つ。一方部分列の定義よりある自然数 k0 が存在して、k > k0 を満たす任意の自然数 k に対し ik0 > n0 となるので d(xik

, a) < ε が成り立つ。このことは部分列 {xik

} も a に収束することを意味する。

例題 2.39 (1) 収束列はコーシー列であることを示せ。(2) コーシー列は有界列であることを示せ。(3) コーシー列 {xn} の部分列 {xik

} がある点 a に収束するならば、{xn} 自身も a に収束することを示せ。

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38 2 距離空間

証明

(1) 点列 {xn} が a に収束するとする。定義より任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n に対し d(xn, a) <

ε が成り立つ。よって m,n > n0 を満たす任意の自然数 m,n に対しd(xm, xn) 5 d(xm, a) + d(xn, a) < ε + ε = 2ε となるので {xn} はコーシー列である。

(2) 点列 {xn} がコーシー列とする。定義より任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、m,n > n0 を満たす任意の自然数 m,n

に対し d(xm, xn) < ε を満たす。よって特に m > n0 を満たす任意の自然数 m に対し d(xm, xn0+1) < ε を満たす。そこで M =

max{d(x1, xn0+1), d(x2, xn0+1), · · · , d(xn0 , xn0+1), ε} とすると、任意の自然数 n に対し d(xn, xn0+1) 5 M となるので {xn} は有界列である。

(3) コーシー列 {xn} の部分列 {xik} が a に収束するとする。定義より任意の

ε > 0 に対しある自然数 k0 が存在して、k > k0 を満たす任意の自然数 k

に対し d(xik, a) < ε が成り立つ。一方仮定から {xn} はコーシー列より

定義から任意の ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、m,n > n0 を満たす任意の自然数 m,n に対し d(xm, xn) < ε を満たす。ここで部分列の定義より k1 > k0 を満たすある自然数 k1 が存在して ik1 > n0 を満たす。よって n > n0 を満たす任意の自然数 n に対し d(xn, xik1

) < ε かつd(xik1

, a) < ε が成り立つ。ゆえに d(xn, a) 5 d(xn, xik1) + d(xik1

, a) <

ε + ε = 2ε となるので {xn} も a に収束する。

例題 2.40 距離空間 (X, d) の部分距離空間 (A, dA) の点列 {an} について以下を示せ。

(1) {an} が (A, dA) の有界列であるための必要十分条件は、{an} を (X, d)

の点列をみなしたとき有界列である。(2) {an} が (A, dA) の収束列であるための必要条件は、{an} を (X, d) の点列をみなしたとき収束列である。しかし十分条件ではない。

(3) {an} が (A, dA) のコーシー列であるための必要十分条件は、{an} を(X, d) の点列をみなしたときコーシー列である。

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2.3 距離空間の点列と連続写像 39

証明

例題 2.41 2つの距離空間 (X, dX) と (Y, dY ) の直積距離空間 (X × Y, d) の点列 {(an, bn)} について以下を示せ。

(1) {(an, bn)} が (X × Y, d) の有界列であるための必要十分条件は、{an} と{bn} がそれぞれ (X, dX) と (Y, dY ) の有界列である。

(2) {(an, bn)} が (X × Y, d) の収束列であるための必要十分条件は、{an} と{bn} がそれぞれ (X, dX) と (Y, dY ) の収束列である。

(3) {(an, bn)} が (X ×Y, d) のコーシー列であるための必要十分条件は、{an}と {bn} がそれぞれ (X, dX) と (Y, dY ) のコーシー列である。

証明

(1) 点列 {(an, bn)} が有界列ならば、X × Y のある点 (a, b) とある正の実数M > 0 が存在して、任意の自然数 n ∈ N に対し d((an, bn), (a, b)) 5 M

を満たす。よって

d((an, bn), (a, b))2 = dX(an, a)2 + dY (bn, b)2 5 M2

より dX(an, a) 5 M かつ dY (bn, b) 5 M となるので、点列 {an} と{bn} はともに有界列になる。

逆に点列 {an} と {bn} がともに有界列にならば、ある正の実数 M > 0 が存在して、任意の自然数 n ∈ N に対し dX(an, a) 5 M かつ dY (bn, b) 5M を満たす。よって

d((an, bn), (a, b))2 = dX(an, a)2 + dY (bn, b)2 5 2M2

となるので、点列 {(an, bn)} は有界列になる。(2) 点列 {(an, bn)} が収束列ならば、X × Y のある点 (a, b) が存在して、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0 を満たす任意の自然数 n ∈ N に対し d((an, bn), (a, b)) < ε となる。よって

d((an, bn), (a, b))2 = dX(an, a)2 + dY (bn, b)2 < ε2

より dX(an, a) < ε かつ dY (bn, b) < ε となるので、点列 {an} と {bn}

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40 2 距離空間

はともに収束列になる。逆に点列 {an} と {bn} がともに収束列にならば、あるX,Y の点 a, b が存在して、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、n > n0

を満たす任意の自然数 n ∈ N に対し dX(an, a) < ε かつ dY (bn, b) < ε

となる。よって

d((an, bn), (a, b))2 = dX(an, a)2 + dY (bn, b)2 < 2ε2

となるので、点列 {(an, bn)} は収束列になる。(3) 点列 {(an, bn)} がコーシー列ならば、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、m,n > n0 を満たす任意の自然数 m,n ∈ N に対し d((am, bm), (an, bn)) < ε となる。よって

d((am, bm), (an, bn))2 = dX(am, an)2 + dY (bm, bn)2 < ε2

より dX(am, an) < ε かつ dY (bm, bn) < ε となるので、点列 {an} と{bn} はともにコーシー列になる。

点列 {an} と {bn} がともにコーシー列にならば、任意の正の実数 ε > 0 に対しある自然数 n0 が存在して、m,n > n0 を満たす任意の自然数 m,n ∈N に対し dX(am, an) < ε かつ dY (bm, bn) < ε となる。よって

d((am, bm), (an, bn))2 = dX(am, an)2 + dY (bm, bn)2 < 2ε2

となるので、点列 {(an, bn)} はコーシー列になる。

例題 2.42 線形群 GL2(R) の群演算の連続性。

証明

例題 2.43 距離空間 (X, dX) から距離空間 (Y, dY ) への連続写像 f : X → Y

に対し、X の部分距離空間 (A, dA) への制限写像 f |A : A → Y も連続であることを示せ。

証明 f は X の任意の点で連続より、特に A の点 a でも連続である。よって任意の ε > 0 に対しある δ > 0 が存在して dA(x, a) = d(x, a) < δ を満たす任意の x ∈ A に対し、dY (fA(x), fA(a))= dY (f(x), f(a)) < ε となる。

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2.3 距離空間の点列と連続写像 41

例題 2.44 距離空間 (X, d) 上の連続関数 f, g に対し、関数 f + g, f · g も X

上の連続関数になることを示せ。

証明

(1) 定理 2.36 より『a に収束する任意の点列 {xn} に対し、点列 {(f +

g)(xn)} は (f + g)(a) に収束する』ことを示せばよい。f と g は a で連続より、定理 2.36から {f(xn)} と {g(xn)} はそれぞれ f(a) と g(a) に収束する。よって例題 1.14(1)より {f(xn) + g(xn)} は f(a) + g(a)

に収束する。(2) 定理 2.36より『a に収束する任意の点列 {xn} に対し、点列 {(f · g)(xn)}は (f · g)(a) に収束する』ことを示せばよい。f と g は a で連続より、定理 2.36 から {f(xn)} と {g(xn)} はそれぞれ f(a) と g(a) に収束する。よって例題 1.14(2)より {f(xn) · g(xn)} は f(a) · g(a) に収束する。

例題 2.45 距離空間 (X, d) 上の連続関数 f が任意の x ∈ X で f(x) ̸= 0 のとき、関数 g(x) = 1/f(x) も連続になることを示せ。

証明 定理 2.36より『a に収束する任意の点列 {xn} に対し、点列 {1/f(xn)}は 1/f(a) に収束する』ことを示せばよい。仮定から f は a で連続より、定理2.36から {f(xn)} は f(a) に収束する。よって例題 1.14(6)より {1/f(xn)}は 1/f(a) に収束する。

例題 2.46 距離空間 (X, d) に対し、距離関数 d : X ×X → R は直積距離空間(X × X, d′) 上の連続関数であることを示せ。

証明 X × X の任意の点 (a, b) において d が連続を示せばよい。X × X の任意の点 (x, y) において、d′((x, y), (a, b))2 = d(x, a)2 + d(y, b)2 である。よってd′((x, y), (a, b)) < δ ならば d(x, a) < δ かつ d(y, b) < δ となる。また

d(x, y) − d(a, b) 5 d(x, a) + d(a, b) + d(b, y) − d(a, b)

= d(x, a) + d(y, b) < 2δ

d(a, b) − d(x, y) 5 d(a, x) + d(x, y) + d(y, b) − d(x, y)

= d(x, a) + d(y, b) < 2δ

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42 2 距離空間

となるので、任意の ε > 0 に対し δ = ε/2 > 0 とすると、d′((x, y), (a, b)) < δ

を満たす任意の (x, y) ∈ X × X に対し、|d(x, y) − d(a, b)| < 2δ = ε となり、点 (a, b) において d は連続となる。

例題 2.47 距離空間 (X, d) の1点 a を固定する。このとき関数 f(x) := d(x, a)

はX 上の連続関数であることを示せ。

証明 X の任意の点 p で f は連続であることを示す。まず距離関数 d は三角不等式を満たすのでX の任意の点 x に対し

d(x, a) 5 d(x, p) + d(p, a)

d(a, p) 5 d(a, x) + d(x, p)

となる。よって

f(x) − f(p) = d(x, a) − d(a, p) 5 d(x, p)

f(p) − f(x) = d(p, a) − d(x, a) 5 d(x, p)

より、|f(x) − f(p)| 5 d(x, p) となる。以上から任意の ε > 0 に対し δ = ε >

0 とすれば、d(x, p) < δ を満たす任意の x に対し、|f(x) − f(p)| 5 d(x, p) <

δ = ε > 0 となるので、p で f は連続である。

例題 2.48 距離空間 (X, dX) から距離空間 (Y, dY ) への連続写像 f : X → Y

と距離空間 (Z, dZ) から距離空間 (W,dW ) への連続写像 g : Z → W について、X × Z から Y × W への写像 f × g : X × Z → Y ×W を任意の (x, z) ∈ X ×Z に対し f × g(x, z) = (f(x), g(z)) と定義すると、f × g も連続写像になることを示せ。

証明

例題 2.49 (1) 2つの距離空間 (X, dX) と (Y, dY ) の直積距離空間 (X × Y, d)

から (X, dX) への射影 p(x, y) = x は X ×Y 上で連続であることを示せ。(2) 距離空間 (X, dX) から距離空間 (Y, dY ) への連続写像 f : X → Y について、直積距離空間 X × Y 内の f のグラフ Γ (f) を

Γ (f) := {(x, f(x)) ∈ X × Y | x ∈ X}

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2.3 距離空間の点列と連続写像 43

と定義する。このとき直積距離空間 X × Y の部分距離空間として Γ (f)

は X と同相であることを示せ。

証明

(1) X × Y の任意の点 (a, b) で p は連続であることを示す。まず距離関数 d

の定義より、d((x, y), (a, b))2 = dX(x, a)2 + dY (y, b)2 となる。よって任意の ε > 0 に対し δ = ε > 0 とすれば、d((x, y), (a, b)) < δ を満たす任意の (x, y) に対し、dX(x, a) < δ = ε となるので、(a, b) で p は連続である。

(2) g : X → Γ (f) を g(x) = (x, f(x)) と定義すると全単射かつ連続である。また射影 p の Γ (f) への制限は g の逆写像で(1)より連続である。よって Γ (f) は X と同相である。

例題 2.50 距離空間 (X, d)の任意の2点 x, y ∈ X に対し d′(x, y) :=d(x, y)

1 + d(x, y)とする。

(1) d′ も X 上の距離関数になることを示せ。(2) X から X への恒等写像は、(X, d) から (X, d′) への連続写像であることを示せ。また (X, d′) から (X, d) への連続写像でもあることを示せ。

証明

例題 2.51 Rnのユークリッド距離 d(x, y) =

√n∑

k=1

(xk − yk)2と距離 d0(x, y) :=

max{|x1 − y1|, · · · , |xn − yn|} について

(1) 不等式 d0(x, y) 5 d(x, y) を示せ。(2) 不等式 d(x, y) 5 √

nd0(x, y) を示せ。(3) Rn から Rn への恒等写像は、(Rn, d) から (Rn, d0) への連続写像であることを示せ。

(4) Rn から Rn への恒等写像は、(Rn, d0) から (Rn, d) への連続写像でもあることを示せ。

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44 2 距離空間

証明

(1) d0(x, y) = |xi−yi| = max{|x1−y1|, · · · , |xn−yn|}とすると、d0(x, y)2 =

(xi − yi)2 5n∑

k=1

(xk − yk)2 = d(x, y)2 5 n(xi − yi)2 = nd0(x, y)2 と

なる。(2) 任意の ε > 0 の対し δ = ε > 0 とすると、d(x, y) < δ ならば d0(x, y) 5

d(x, y) < δ = ε となる。よって (Rn, d) から (Rn, d0) への恒等写像は連続である。

また任意の ε > 0 の対し δ = ε/√

n > 0 とすると、(1)から d(x, y) 5√

nd0(x, y) なので、d0(x, y) < δ ならば d(x, y) 5 √nd0(x, y) <

√nδ =

ε となる。よって (Rn, d0) から (Rn, d) への恒等写像も連続である。

例題 2.52 閉区間 [a, b] 上の連続関数全体の集合 C[a, b] 上の2つの距離関数

d(f, g) :=∫ b

a

|f(x) − g(x)| dx と d1(f, g) := sup{|f(x) − g(x)| | x ∈ [a, b]} に

ついて

(1) C[a, b] から C[a, b] への恒等写像は、(C[a, b], d1) から (C[a, b], d) への連続写像であることを示せ。

(2) C[a, b] から C[a, b] への恒等写像は、(C[a, b], d) から (C[a, b], d1) への連続写像でないことを示せ。

証明

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参考文献

[1] 内田 伏一『集合と位相』裳華房, 1986.

[2] 鎌田 正良『集合と位相』近代科学社, 1989.

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46 索引

索 引

か行級数の収束・発散 3

さ行実数の連続性の公理 1

数列の収束・発散 3