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ファームテクジャパン 第30巻第12号 平成26年10月1日発行(毎月1回1日発行) Vol.30 No.12 October 2014

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Vol.30 No.12 O

ctober 2014

ファームテクジャパン 第30巻第12号 平成26年10月1日発行(毎月1回1日発行)

Vol.30 No.12 October 2014

発行所

じほう

(株)

平成二十六年十月一日発行(毎月一日発行)

©

〒  

 東京都千代田区猿楽町一│五│一五 猿楽町SSビル

TEL

03│

3233│

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6336(購読)

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101-8421

定価﹇本体一、九〇〇円+税﹈

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ARTICLES █BCS Biowaiverガイドラインの国際比較/栗林亮佑  7 █【次世代型製剤の製剤技術】アイミクス®配合錠 患者視点の製剤設計/村上貴之  21 █In-lineリアルタイムモニタリングおよびラマンイメージングによる製剤設計と粒子の分布・分散状態の可視化ならびにミクロ的評価 /寺下敬次郎,久田浩史,吉次 寛  25 █プレフィルドシリンジ製剤の要求特性とリスクへの対応/柳澤徳雄  33 █【医薬品包装設計へのユーザビリティ工学からのアプローチ(第4回)】

 複室輸液バッグのユーザビリティの検討 その2/大倉典子  41 █【相図から読み解く界面活性剤の物性(第5回)】ノニオン界面活性剤の相挙動/三宅深雪  47 █微生物試験法Q&A-現場の困った!に答える誌上セミナー(第12回)/関口道子  55 █BEW2014印象記/工藤嵩之  57 █バイオ医薬品の品質分析技術の課題と展望(前編)/本田真也  59 █治験薬をヒトに初めて投与する臨床試験のリスクの特定と 緩和策に関するガイドライン(その1)/羽石達生  67 █【医療機器 薬事業務のトラの穴(第10回)】画像診断医療機器の薬事申請業務事例について ―薬事審査スキームの変革―/井上勇二  71 █製剤研究者が注目する一押しトピック  77 █医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団ニュース(No.84)/津田重城,最上紀美子  81

INTERVIEW █「世界で影響力を持つ科学者」の2001年版に引き続き2014年版でも選出 -長年にわたる第一線での活躍が評価される-/杉山雄一氏  13 █ 日薬連品質委員会委員長にツムラの富塚弘之氏が就任/富塚弘之氏  14

REPORT █日本PDA製薬学会―無菌製品GMP委員会 研究成果発表会を開催―  16 █日本分析機器工業会/日本科学機器協会 JASIS2014開催  18 █ ISPE日本本部―交叉汚染防止限度値(ADE/PDE)設定セミナー開催―  20

Study of GMP █ 【図解で学ぶPIC/S GMP(製剤)第16回】PIC/S GMPガイドをベースにして-品質管理-1/榊原敏之  91

製剤技術 █【製剤と粒子設計】打錠工程におけるスケールアップの影響を予測できる 新規形状杵の開発/青木 茂  101

●行政ニュース 88医療情報データベース基盤整備事業のあり方検討会報告

●News Topics 113●New PRODUCTS 120◆次号予告 160

■World News Topics 121 ガイダンス関連,GMP関連,製剤技術関連,原薬関連,警告書関連

◇編集顧問大矢晴彦 横浜国立大学名誉教授仲井由宣 千葉大学名誉教授

◇編集委員川嶋嘉明 愛知学院大学特任教

授・岐阜薬科大学名誉教授

園部 尚 公立大学法人宮城大学 理事永井恒司 (財)永井記念薬学国 際交流財団理事長長江晴男 NPO-QAセンター 代表副理事

製剤技術とGMPの最先端技術情報誌 2014

1010CONTENTS(Vol.30 No.12)

5(2295) Vol.30 No.12(2014)

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 Biopharmaceutics Classifi cation System(BCS)は,原

薬の溶解性および膜透過性の科学的データに基づき,原

薬を4つのクラスに分類する概念で,Amidonら1)によ

り1995年に提唱された(表1)。ClassⅠは溶解性および

膜透過性の両方が高い医薬品,ClassⅡは溶解性が低く,

膜透過性が高い医薬品,ClassⅢは溶解性が高く,膜透

過性が低い医薬品,ClassⅣは両方が低い医薬品と定義

されている。BCSの目的は,医薬品のin vivoにおける血

中薬物動態を予測することにある。現在,その概念は新

薬の医薬品開発における原薬特性を考える上での1つの

指標として利用されているだけでなく,後発医薬品申請

時にヒト生物学的同等性試験を免除する方法(Biowaiver)

として世界的に利用されている。BCS Biowaiverに関して,

米国2),欧州3)およびWHO4)に加え,今年,カナダから

もガイドライン5)が公表されたところである。各当局とも,

BCS Biowaiverは即放性経口固形製剤に限定されており,

放出調節製剤,舌下錠,バッカル錠等だけでなく,治療

はじめに

濃度域の狭い医薬品(Narrow therapeutic index drug)

も対象外とされている。また,Class分類に加え,標準

製剤(先発医薬品)と試験製剤(後発医薬品)の溶出試験成

績の提出が必要であることも各当局で共通している。一

方,異なる点としては,米国ではClassⅠの医薬品,欧州,

カナダおよびWHOではClassⅠとⅢの医薬品に対して

BCS Biowaiverを許容している(表2)。

 本稿では,公表されている米国,欧州,カナダおよび

WHOのBCS Biowaiverに関するガイドラインに基づき,

原薬特性の溶解性および膜透過性,BCS Biowaiverを利

用する際の製剤の溶出試験条件および添加物基準につい

て,各当局での要求事項の異同について概説する。なお,

本稿は筆者の個人的見解に基づくものであり,独立行政

法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の公式見解を示

すものではない。

表2 BCS Biowaiverガイドライン規制当局 Class BCS Biowaiverガイドライン 発出年

米国Food and Drug Administration

(FDA)ClassⅠ

Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate-Release Solid Oral Dosage Forms Based on a Biopharmaceutics Classifi cation System

2000年

欧州European Medicines Association(EMA)

ClassⅠおよびⅢGUIDELINE ON THE INVESTIGATION OF BIOEQUIVALENCE

2010年

カナダ Health Canada(HC) ClassⅠおよびⅢGUIDANCE DOCUMENT Release of Guidance Document: Biopharmaceutics Classifi cation System Based Biowaiver

2014年

WHO World Health Organization ClassⅠおよびⅢGeneral notes on Biopharmaceut ics C lass i f i ca t ion System(BCS)-based biowaiver applications

2012年

表1 BCS分類溶解性

高 低膜透過性

高 ClassⅠ ClassⅡ

低 ClassⅢ ClassⅣ

BCS Biowaiverガイドラインの国際比較

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 一般薬等審査部

栗林亮佑RYOSUKE KURIBAYASHI

Offi ce of OTC/Generic Drugs, Pharmaceuticals and Medical Devices Agency

International comparison of BCS Biowaiver guidelines

₇(229₇) Vol.30 No.12(2014)

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(2)膜透過性 膜透過性はヒトの胃から腸までの薬物の吸収率を表す

指標である。米国ではその評価法として,ヒトにおける

絶対的バイオアベイラビリティ(BA)試験またはマスバ

ランス試験以外にも,Caco-2細胞を用いた試験系や動

物を用いた試験系も受け入れており,膜透過性の基準値

として90%を採用している(表3)。しかし,トランスポー

ターの基質となる原薬,例えば,P糖タンパク質のよう

な排出型トランスポーターの基質となる原薬では,ヒト

と細胞または動物でトランスポーターの発現量に違いが

あるため,間違ったClass分類になる可能性があり適用

できないとしている。一方,欧州およびカナダでは,吸

収性の評価法として,ヒトにおける絶対的BA試験また

はマスバランス試験のデータのみを受け入れており,吸

収性の基準値は85%としている。細胞や動物を用いたデー

タを参考データの扱いとしている点は米国との違いとい

える。欧州のガイドラインでは,マスバランス試験につ

いて,代謝物(酸化体や抱合体)を吸収率に含める場合は,

吸収後に当該代謝物が生成することを示す必要がある。

よって,尿中の全放射活性を参考にする場合は,胃や腸

で未変化体の分解や代謝がないことを確認しなければな

らない。尿中の未変化体,酸化体および抱合体代謝物の

尿中,糞中からの量が85%以上であれば,高吸収性とし

ている。WHOは,基本的に欧州やカナダと類似してい

(1)溶解性 溶解性について,各当局とも共通して,溶液量は

250mLとしている点,pKaがpHの規定範囲内にある場

合はpKaでの溶解結果,溶解性の評価方法としてShake

flask法を要求している点は共通している。一方,異な

る点として,米国では承認されている製剤の最高含量が

pH1~7.5の範囲(少なくとも3か4点)で,欧州では1

回あたりの最高投与量がpH1~6.8の範囲(少なくとも3

点)で,カナダおよびWHOは1回あたりの最高投与量が

pH1.2~6.8の範囲(少なくとも3点)で250mLの溶液に溶

けることで高溶解性となる(表3)。また,各pHにおけ

る繰り返し回数は,米国,カナダおよびWHOでは少な

くとも3回であるのに対し,欧州では少なくとも2回と

している。

 米国と欧州等で溶解性を検討する用量の考え方に違い

があることでClass分類が異なる場合があり,例えば,

抗マラリア薬であるアモジアキン塩酸塩は,米国の基準

ではClassⅣ,欧州等の基準ではClassⅢに分類される6)。

 また,溶解性のデータとして,欧州,カナダおよび

WHOでは公表論文に基づく説明を受け入れているのに

対し,米国では公表論文に基づく説明は受け入れていない。

1.BCSの溶解性および膜透過性

表3 BCSの溶解性および膜透過性米国 欧州 カナダ WHO

溶解性pH範囲 1~7.5 1~6.8 1.2~6.8 1.2~6.8溶液量 250mL 250mL 250mL 250mL温度 規定されていない 37±1℃ 37±1℃ 37±1℃

検討用量 製剤の最高含量 1回あたりの最高投与量

1回あたりの最高投与量

1回あたりの最高投与量

論文データ受け入れ 不可 可 可 可

膜透過性

ヒトデータ 場合によって,要求 要求(絶対的BA試験かマスバランス試験)

要求(絶対的BA試験かマスバランス試験)

基本的に,要求(絶対的BA試験かマスバラ

ンス試験)

ヒト以外のデータ

・ヒトin vivo小腸灌流試験 ・ 動 物 で のin vivoま た は   in situ小腸灌流試験・ ヒトまたは動物の摘出小

腸in vitro透過性試験・ 単層培養した上皮細胞(Caco-2細胞)におけるin vitro透過性試験

不可 不可 ヒトin vivo小腸灌流試験

論文データ受け入れ 不可 可 可 可

基準値 90 % 85 % 85 % 85 %

BCS Biowaiverガイドラインの国際比較

8(2298) Vol.30 No.12(2014)

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 日本は諸外国と比較して高齢化のスピードが速く,65

歳以上の人口は現在3,000万人を超えているが,今後も

増加し,2025(平成37)年には高齢化率(総人口に占める

65歳以上の人口比率)が30%を超えると予想されている1)。

国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者という超高齢社

会を考えたとき,製剤設計においても従来の患者視点の

製剤設計に加え,高齢患者が服用しやすい剤形を考慮す

ることが重要である。近年,高齢患者の嚥下機能低下に

対応するため口腔内崩壊錠(OD錠)や口腔内崩壊フィル

ム,および嚥下を補助するゼリーなどが積極的に研究さ

れ,各社が持つ製剤技術を駆使した製品が多数上市され

ている。当社でも,アムロジン®OD錠,エバステル®OD

錠やドプス®OD錠といったOD錠を患者視点で製剤設計

し発売しているが,通常の錠剤と同様の取り扱いが可能

な大きさや硬度を有しつつ,原薬の持つ苦みをマスキン

グするなど「服用性の高いOD錠」を製剤設計の目標と

した。

 一方,治療上,多剤を服用している高齢患者も多く,

大学病院老年科5施設で行われた外来患者の処方調査

(660例,平均76±9歳,男性37%)では,年齢が上がれば,

保有疾患数(平均3.5疾患)と処方薬剤数(平均4.4剤)が増

加することが報告されている2)。服薬アドヒアランスを

向上させるためには服用錠数を減らすことが重要と考え

られ,服用錠数を減らすため,併用が多い製品(単剤)を

組み合わせた医療用配合剤が多数開発されている。

 高血圧症治療薬であるアイミクス®配合錠は,ARB(ア

はじめにンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤)であるイルベサルタン

とCCB(カルシウム拮抗剤)のアムロジピンを組み合わ

せた配合剤である。本剤の製剤設計においては,単に服

用錠数を減らす目的だけではなく,服用する機会が多い

と考えられる高齢患者の服薬アドヒアランス向上のため,

容易に服用できかつ,つかみやすい大きさを目標に製剤

設計を行った。また,識別性向上のため錠剤に印刷を

行っているが,患者視点を念頭に置いた含量表示とした。

このような患者視点に基づいた製剤設計を紹介する。

 アイミクス®配合錠には,イルベサルタンとアムロジ

ピンをそれぞれ100mgおよび5mg配合したアイミクス

配合錠LD(以下,LD)と,100mgおよび10mg配合した

アイミクス配合錠HD(以下,HD)があるが,イルベサル

タン単剤のアバプロ®錠とアムロジピン単剤のアムロジ

ン®錠(FC錠)およびアムロジン®OD錠も発売している。

LDはそれぞれの単剤を併用している場合または,どち

らかの単剤投与で効果不十分な場合からの切り替え,

HDは,LDもしくは各単剤の併用で効果不十分な場合か

らの切り替えを想定した。本剤の臨床試験では,図1に

示すようにPhase 2b試験で各単剤の用量組み合わせを決

定し3),さらにPhase 3試験として各単剤を組み合わせ

た配合剤で長期投与時の安全性・有効性を評価した4)。

したがって,各単剤と配合剤では生物学的同等性(BE)

が必要だが,可能な限り早く開発し医療現場に届けるた

めにはBE試験を短期間で成功させることが必須であった。

また,臨床試験が予定よりも早期に完了したことや,審

1.製剤設計コンセプト

AIMIX® Combination TabletsFormulation design considering a patient's view

大日本住友製薬株式会社 製剤研究所

村上貴之TAKAYUKI MURAKAMI

Formulation Research & Development Laboratories, Sumitomo Dainippon Pharma Co., Ltd.

アイミクス®配合錠患者視点の製剤設計

次世代型製剤の製剤技術

21(2311) Vol.30 No.12(2014)

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が8mm,のみやすい錠剤の大きさが7mmであった6)。

アムロジン®OD錠の5mgおよび10mgは,高齢者がつか

みやすく,のみやすい大きさである7~8mmの円形錠

に製剤設計したため,アイミクスでも取り扱いやすさや

服用性が変わらないよう,ほぼ同じ大きさ(7~8mm)

になる製剤設計を目標とした。ただし,単純に配合する

各単剤の処方・製法を足し合わせただけでは「1+1=2」

の大きさとなり,図4に示すとおり,円形錠で直径約

10mmの高齢者には服用しにくい製剤となることが予想

された。服用しやすい大きさとするには薬物の高濃度化

が必須であったため,各単剤では使用していない新規添

加剤を採用することで添加剤を削減した高濃度イルベサ

ルタン顆粒を造粒し,これにアムロジピンを加えること

で小型化を達成した(図5)。添加剤の選択においては,

単剤で使用している添加剤を使用しても配合剤にすると

溶出挙動が合わない場合や,打錠圧の影響を受け他方の

原薬の溶出挙動が変わり,実生産での品質確保が困難な

場合があることから,実際の製剤処方の選択では試行錯

誤が必要であった(図6)。なお,上述の製法を採用した

査期間短縮5)への対応など,開発期間の短縮を図ったため,

短期間での治験薬供給,効率的な生産部門への技術移管,

迅速な申請書の作成等が可能な製剤処方,製法を考慮す

る必要があった。

 一方,上述した製剤開発上の必須目標に加え,図2に

示すとおり患者視点に基づき「適切な形状・大きさ,優

れた識別性,優れた安定性」を目標とした。このような

患者視点での目標は各単剤の処方設計時にも設定した目

標であるが,各単剤の製剤設計者のこだわりが凝縮され

た部分でもあった。このような単剤でのこだわりをどの

ように配合剤に活かすのか,さらに患者視点の目標と必

須目標のバランスを考慮し,いかに両方をクリアしてい

くのかがアイミクスでの製剤設計上の重要なポイントで

あった。

 図3に示す首都圏の老人ホーム等に入居している高齢

者へのアンケート調査では,つかみやすい錠剤の大きさ

2.錠剤の大きさ

Phase 2b(用量を決定)

与試験配合剤長期投与試験

配合剤

アムロジピン不十分例

イルベサルタン不十分例

BE試験

単剤 vs 配合剤

単剤の併用※BE:生物学的同等性

申請申請 承認

申請 承認

Phase 3(安全性評価)

単剤で有効性が不十分な患者に対してもう一方の単剤を投与し,最適な用量の組み合わせを決定

開発期間を短縮するためには

短期間で成功させることが必要

予定よりも早期に終了

審査期間短縮の通知発出

申請時期前倒しと審査期間の短縮を実施 ( 破線は当初の予定)

予定よりも早期に申請

図1 アイミクス®配合錠の開発経緯

•患者視点+必須目標の両方をクリア

例えば・・・適切な大きさだがBE不成立 ⇒ ×

必須目標

・単剤とのBE成立・開発スピードの加速・低コストの処方・製法・自社・他社製剤特許の考慮

・適切な形状・大きさ

・優れた識別性

・優れた安定性

患者視点に基づく目標

図2 アイミクス®配合錠の製剤設計コンセプト

Hashimoto T : Ther.Res.27 (6):1219,2006

調査対象:首都圏の老人ホーム等に居住している高齢者410名

調査方法:個別面談による聞き取り調査,錠剤見本を提示し,服薬方法を確認しながら調査

図3 高齢者がつかみやすい大きさとのみやすい錠剤の大きさ

アイミクス®配合錠 患者視点の製剤設計

次世代型製剤の製剤技術

22(2312)  Vol.30 No.12(2014)

Page 7: Vol.30 No.12 October 2014...Biopharmaceutics Classifi cation System(BCS)は,原 薬の溶解性および膜透過性の科学的データに基づき,原 薬を4つのクラスに分類する概念で,Amidonら

 EU GMPガイドラインPartⅠ第6章「品質管理(QC,

Quality Control)」の改訂版が2014年3月28日に発出さ

れ,2014年10月1日を目途にしてEU各国で改訂が実行

されている。いずれPIC/S GMPガイドにも取り込まれ

るであろう。本連載はPIC/S GMPガイドをベースにし

ているが,近々取り込まれるのであるのなら先取りして

EU GMPガイドラインの最新版を紹介しようと思う。

 図解16.1にEU GMPガイドライン第6章2014年版の

「原則」節および「一般事項」節の筆者日本語訳を示し

た。赤字は旧版にはなく2014年版に追加された箇所であ

る。緑字は旧版と比較して2014年版で変更された箇所で

ある。原則節および一般事項節の内容は旧版とほぼ同じ

である。この2節のポイントを次に解説しよう。

EU GMPガイドライン第6章「品質管理(QC)」

16.1

 EU GMPガイドラインにおける「品質管理(QC)」に

は多くの意味が含まれている(図解16.2)。QCという単

一の意味はなくて,QC部門,QC部・課,QC職員,QC

業務,QC活動という5種の意味を持たせて「QC」を使

用している。「QCは…」という文章を見てQC部門のこ

とが書かれていると早合点してはいけない。QC業務(QC

が実施する仕事の内容)が書かれているかもしれないし,

原則(Principle)

*本章はQCに関連ある本ガイドの他章とともに読むこと。

*QC部門はサンプリング,製品規格,試験に関する業務を行う。

*QCは組織で仕事をし,文書に従って業務を行う。

*QC部門は原料および製品の合否判定を行うために必要かつ適切な試験手順を有する。

*QC部門は品質が合格だと判定されるまで原料を使用させない。

*QC部門は品質が合格だと判定されるまで製品を市場に出荷させない。

EU GMPガイドライン(2014年版)第6章 「品質管理」 筆者訳

赤字:旧版にはなく,2014年版に追加された

緑字:旧版と比較して,2014年版で変更された

*QC業務は試験室作業に限定されない。製品の品質に係るすべての決定に関与しなければならない(must)。

*QC部門は製造部門から独立していること。これは十分なQC活動を行うのに必須の要件である。

一般事項(General)

6.1 製造承認所有者はQC部門を保有すること(should)。当該部門は他の部門から独立していること。自由に使用できる試験室(1つ以上)を有すること。資格および経験を有する者が管理する。すべてのQC活動が効果的かつ確実に実施できるように「適切な資源」が利用可能でなければならない(must)。

6.2 QC部門の長の主要業務は第2章にまとめられている。QC部門はその他の業務として,*QC手順を確立し,バリデートし,実行する*原料および製品の参考品サンプルを保管する(必要なら)*原料および製品容器上の適正表示を確認する

*製品の安定性モニタリングを行う*製品品質に関する苦情の調査に関与する

等を行う。これらすべての作業は文書化された手順に従って実施し,必要なときには記録する。

6.3 最終製品の評価は,*製造条件*工程管理試験の結果*製造文書(包装を含む)の照査*製品試験結果(製品規格合格)*包装製品の検査結果

を含むすべての関連事項にて行う。

6.4 QC職員はサンプリングおよび調査のために製造区域に立ち入る。

図解16.1

第₁₆回

品質管理-1Quality Control-1

ジーエムピーコンサルティング有限会社

榊原敏之TOSHIYUKI SAKAKIBARAGMP Consulting, Inc.

図解で学ぶPIC/S GMP(製剤)PIC/S GMPガイドをベースにして

91(2381) Vol.30 No.12(2014)

Page 8: Vol.30 No.12 October 2014...Biopharmaceutics Classifi cation System(BCS)は,原 薬の溶解性および膜透過性の科学的データに基づき,原 薬を4つのクラスに分類する概念で,Amidonら

 QC部門の具体的な仕事はEU GMPガイドライン第2

章「職員」2014年版の第2.8項と第2.9項にある「QC部門

の長の職責」にまとめられている。EUの仕事に対する

考え方では,日本のそれと比較して「長」に責任を負わ

せている。「長」がすべての権限を有し責任を負うとい

う考え方である。

 本連載の前回(2014年3月号)の図解15.5と重複するが,

図解16.4にQC部門の長の職責を載せた。

 QC部門の長は上級経営者が任命し,フルタイム勤務

者であること,そして組織的に他の部署から独立してい

ることが求められている。上級経営者とは2014年版のガ

イドラインで初めて登場した医薬品製造業者における職

位で,医薬品製造の実質的責任者を指す。

 QC部門の長はサンプリング,試験,合否判定を実施

する。自身で実施するのではなく,実施を指図し,結果

に責任を持つ。工場長がいて,QC部長がいて,QC課長

およびQC係長がいる日本の組織では責任が分散されて

おり,QC部門の長が試験結果に責任を持つという感覚

がない。EUと日本には「職責」に対する感覚に差があ

QC活動(QCの仕事の進め方)が書かれているかもしれな

い。文脈から5種のなかのどのQCを指すかを判断しな

ければならない。

 本連載においては,quality controlをQC部門やQC業

務等と意味を限定して訳すようにしている。しかし,

QCが5種のなかの複数の意味を持っているときはQCと

訳している。ご了解願いたい。

 QC部門の仕事を品質関与,サンプリング,試験,合

否判定の4点でまとめることができる(図解16.3)。

 QC部門は品質に係るすべての決定に関与する。製品

規格,原料の品質規格,安定性試験条件,安定性モニタ

リング,委託製造の品質関係等の決定時には必ず関与す

る。また,品質が関係する返品や苦情の調査にも関与す

る。

 サンプリングはQC部門の重要な仕事である。自身が

サンプリングに責任を持ってこそ,その試験結果に責任

を持てる。そしてEU GMPでは,本連載の次回で紹介す

るようにサンプリングに関して詳しく規定している。そ

の内容は日本のGMPでは見られないほど詳細である。

 試験はQC部門の日常業務の中心である。この試験に

は試験機器の管理,試薬や試液の管理,試験方法の改善,

安定性試験の実施等の周辺事項も含まれていることはい

うまでもない。

 品質が合格だと判定されるまで,原料も製品も使用ま

たは出荷させてはいけない。出荷または使用させないの

はQC部門の責任である。

 以上のように,EU GMPにおけるQC部門は,日本の

医薬品製造業者におけるQC部門より存在感があり,強

い権限と責任性を持った部署であると思う。「EUのQC

感」を日本でも育てる必要性を感じる。

品質管理(QC)には多くの意味が含まれる

品質管理部門(QC部門)

品質管理部・課(QC部・課)

品質管理部員(QC職員)

品質管理業務(QC業務)

品質管理活動(QC活動)

文脈からどの意味を表すのかを判断する

図解16.2

図解16.3

品質関与品質に係るすべての決定に関与する

製品規格の決定に関与する

試 験

サンプリングの責任はQC部門にある

文書に従ってサンプリングを行うサンプリング

必要かつ適切な手順を持つ

文書に従って試験を行う

合否判定品質が合格だと判定されるまで原料を使用させない

品質が合格だと判定されるまで製品を市場に出荷させない

QC部門の仕事EU GMPガイドライン第6章の「QCの原則」節をまとめると

EUGMPにおける「QC部門の存在感」はたいへん大きい ・・・・筆者の感覚

品質管理-1図解で学ぶPIC/

GMP(製剤)

第16回

92(2382)  Vol.30 No.12(2014)

Page 9: Vol.30 No.12 October 2014...Biopharmaceutics Classifi cation System(BCS)は,原 薬の溶解性および膜透過性の科学的データに基づき,原 薬を4つのクラスに分類する概念で,Amidonら

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月号予告Vol.30 No.1311

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Study of GMP

製剤技術

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■図解で学ぶPIC/S�GMP(第17回)� 榊原敏之(ジーエムピーコンサルティング)

■【製剤と粒子設計】粉末吸入システムの開発と評価 � 山下親正(東京理科大学)

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