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Title 台湾・沖縄観光調査報告書 Author(s) 圓田, 浩二; 平良, 俊; 平田, 健人; 前田, 毅志 Citation 沖縄大学法経学部紀要(28): 97-114 Issue Date 2018-03 URL http://hdl.handle.net/20.500.12001/22386 Rights 沖縄大学法経学部

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Title 台湾・沖縄観光調査報告書

Author(s) 圓田, 浩二; 平良, 俊; 平田, 健人; 前田, 毅志

Citation 沖縄大学法経学部紀要(28): 97-114

Issue Date 2018-03

URL http://hdl.handle.net/20.500.12001/22386

Rights 沖縄大学法経学部

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1.台湾の概要

 本稿では、東アジアに属し、日本への多くの観光客を送り出している台湾での現地調査と、多

くの来沖台湾人観光客を受け入れており、国際観光地を目指す沖縄での来沖台湾人観光客を対象

とした調査との比較調査から、沖縄観光の発展にとって、何が必要かを調査し、報告し、考察する。

 台湾は中国大陸東部の洋上浮かぶ島嶼で、人口約4,000万人、面積約36,000平方キロ(日本の

九州とほほ同じ大きさ)で、耕作地は全体の30%ほどである。台湾の正式名称は、「中華民国」

であるが、中華人民共和国が打ち出した「一つの中国政策」により、外交を断絶した国も多い。

日本もその一つである。スポーツの国際大会で見ることのできる代表チーム「チャイニーズ・タ

イペイ」(中国の台北って何?)は、台湾の抱える国際関係問題を象徴している。言語は北京語

を国語としており、首都機能をもつ台北市は人口約270万人を抱える。しかし、歴史的経緯もあっ

て、公式には首都ではない。経済が発展しており、2016年の一人あたりのGDP(購買力平価)

は世界19位である。また、医療環境が安定しており、平均寿命は2015年には女性が83.62歳、男

性が77.01歳である。

 台湾は国際観光国でもある。2015年には、1,000万人を超えた観光客が外国から訪れた(台湾

観光局の調べ)。台湾の観光の特色・魅力は何か、現地でフィールドワークを行いながら、台北

市内で台湾人を対象に、アンケート調査を行った(2016年6月23日から26日 60部回収)。また、

比較調査として、沖縄でも台湾人観光客に、同じ内容でのアンケート調査を行った(2017年9月

29日、9月30日、10月2日の計3日間 50部回収)。

【調査報告】

台湾・沖縄観光調査報告書

Investigation report on tourism in Taiwan and Okinawa

圓 田 浩 二*1

Koji MARUTA

平 良   俊*2

Syun TAIRA

平 田 健 人*2

Kento HIRATA

前 田 毅 志*2

Takeshi MAEDA

専 門 分 野:観光社会学

キーワード:観光、沖縄、台湾、フィールドワーク

─ 97 ─

沖縄大学法経学部紀要 第28号

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2.台湾の歴史・政治

 台湾は東アジアの島嶼である。1912年に建国され、1949年に中国共産党が中華人民共和国を建

国した時、中国国民党が率いる中華民国政府は台湾に移り、台湾、膨湖、金門、馬祖、そして周

辺の島々の統治を維持して以来、台湾海峡の両岸は別々の領土として統治され、それぞれにアイ

デンティティを発展させてきた。「アイデンティティとは、あなたは何者なのか」という問題で、

台湾の中では「認・同」(レントン)という言葉があてられる。台湾におけるアイデンティティ

問題は政治・社会・文化などあらゆるレベルで極めて重要な問題である。世論調査も政府、研究

機関、メディアが活発に行っている。なぜなら台湾ではアイデンティティにおける主要な要素で

ある「××人」という呼称について、「(台湾人ではなく)中国人」「(中国人ではなく)台湾人」「台

湾人であり、中国人でもある」という三つのタイプが併存しており、政党支持やナショナリズム

の動向にも結びついているからである。

 歴史的な経緯を振り返ると、日本統治時代における台湾人の自治拡大運動のなかで、台湾アイ

デンティティの萌芽が生まれた。しかし、それは同時に「祖国」としての中国の存在を強く意識

したもので「台湾」は中国という大きな枠組みの中のサブ・エスニックな感覚で捉えられていた。

1945年の終戦時における台湾は、「台湾志向」「祖国(中国)志向」「日本志向」の三者が混在す

る複雑きわまりない状態にあった。現在、総統選挙での「現状維持」の支持は圧倒的に高い。台

湾の人々の心の中は、中国の大国化という事態を受けて、台湾の将来を描きにくくなっているの

かもしれない。民主化が始まってから30年、「現状維持」を望みながら、内部で刻々と変貌して

きた台湾は今も昔も変わらない。新しい台湾の鍵となる勢力が「天然独」である。天然独は「生

まれながらの独立派」という意味になる。今の台湾で70年代以前に生まれた40歳以上の人々は、

国民党の「中国化教育」を受けた。彼らが台湾意識を持つには、教育で植え付けられた中国意識

を、自主的かつ意識的に打ち捨てるプロセスが必要になり、この世代は「天然独」ではなく、「転

向独」ということになる。天然独は、「台湾は独立している、または独立すべきである、なぜな

ら台湾は台湾だからだ」と考える人たちである。

 しかし、中国にとって中台関係は「未だ統一されていない状態にある台湾は中国の内政問題

である」と定義されている。その大前提は「中国は台湾も含めて一つである」という「一つの中

国」論だ。しかし、現実に台湾は中国の支配下にはない。その解決策として中国は「平和的統一・

一国二制度」を提案している。「平和的」という言葉を使う理由は、武力行使の裏返しである。

1970年代まで中国は台湾を「武力解放」すると主張していた。しかし、台湾の蒋経国総統は「三

不政策」を掲げて拒んだ。「三不」とは三つのノーという意味で、「一交渉せず、二談判せず、三

妥協せず」という考え方だった。この一国二制度は、香港、マカオに適用されたことで有名になっ

たが、もともとは台湾向けに中国が編み出した方法である。変わりゆく台湾に、中国として一定

の歯止めをかけるために生まれた最も新しい台湾政策は「一つの中国の枠組み」だった。

 「一つの中国」というのは、本来は、国際社会に向けた台湾問題の扱いを勝ち取っていくため

の理念だが、これは交流が深まった台湾そのものに向けた発展形であり、台湾という存在を飼い

ならす「一つの中国」の籠でもある。台湾とは交流する、貿易もする、投資もどんどん受け入れる、

農産品も買う、観光客も送り込む、政治体制を選ぶ自由も認めてもいい、たくさんの「善意」を

示すことができる。しかし、すべてそれは「一つの中国」の中にいればこそだと示したものと言

─ 98 ─

台湾・沖縄観光調査報告書

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える。「一つの中国の枠組み」は中国語では「一個中国的框架」である。これは、言葉のニュア

ンスとしては「囲い込む」「枠にはめる」という印象を与える。台湾という小鳥が籠のなかから

飛び出したら、それはすなわち台湾独立であり、認めることはできない。生々しい言い方をすれ

ば、「籠の鳥になりなさい。エサはたっぷり与えます。しかし、飛び出そうとしたら、殺しますよ」

ということになるだろう。

 2009年頃から中国人による台湾への自由旅行が認められるようになると、台湾体験を語る人の

中には、ツアーには参加しないようなオピニオンリーダーなど、中国世論に影響を与える人々が

現れるようになる。中国人観光客の台湾に対する第一印象はたいてい「中国の方が進んでいる」「中

国の方が豊か」「街が古い」「高いビルがない」といったネガティヴなものから入る。その後、数

日滞在すると、拝金主義、競争社会のなかで他人を信じない文化が定着した中国では考えられな

い優しさを、同じ顔、同じ言葉を喋る台湾人のなかに見出すのである。

 中国は文化大革命で伝統文化を大きく破壊し、中国人のなかの「文化的価値観」まで損なわれた。

中国人には「文化の失われた国」に暮らしているという、まるで失楽園にいるような罪悪感を持

つらしい。そんな中国人は、台湾にくると、次のような気持ちになるのだという。「台湾は『民国風』

に満ちているいいところだ。台湾は伝統的中国文化を守っている」と中国人から評価される。台

湾で中国人がそう感じるのは、特に、中華風のお寺があるとか、盛大な葬儀をやっているとかそ

ういうことではなく、他人から頻繁に「謝謝(ありがとう)」「不好意思(すみません)」という

言葉が聞けることだけで、中国人たちは「本当の中国がここにある」と思ってしまうらしい。失

われた中華が台湾にある。そんな思いを、台湾を訪れる中国人は大陸に持って帰っている。その

ことが、中国そのものや中台関係にどのような変化をもたらしていくのか。

 日本が台湾を領土的に中国と奪い合うことはもはやないが、台湾をめぐる地政学的な構図は未

来もそう簡単には変わらないだろう。台湾の人々は常に「日本と中国」を意識しながら生きてい

く運命にあることを強く自覚している。一方中国は中国なりに台湾の統一を国家目標とするその

立場から台湾についてこの半世紀以上、あらゆる面から考え抜いてきた。それらに比べて日本の

台湾に対する当事者意識はまだまだ弱く、社会全体の台湾理解も不足している。まず日本は、台

湾への「思考停止」を停止させることが、その状況を変えていく第一歩になる。その上で、台湾

を台湾として認識し、等身大の台湾理解を自らのなかに創り出していく。これは台湾の固有の領

土をみなして疑わない中国にはできないことであり、日本が台湾という「鏡」を使って自らを見

つめ直すことにも役立つはずである。それは、日本と台湾が初めて出会った19世紀の頃から現在

に至るまで、台湾の人々が日本に最も望んできたことに違いない。

3.台湾観光の特色

 中華民国の通称として「台湾」と表記される。活気あふれる下町の賑わいや、神秘的な景観、

美味しい料理このすべてを堪能できることが台湾の魅力の1つだ。特に台湾の夜市は非常に賑

わっていて、夜になると明かりが灯り、靴や洋服、台湾の下町グルメ、雑貨などを売っている屋

台が1キロ近く並んでおり、溢れかえるほどの人と多彩な商品が並ぶ光景は、日本では決して目

にすることができない、まるで映画の中にいるような不思議な光景を味わうことができる。国が

変われば味覚も変わり、夜市全体が中国圏特有の香辛料の匂いがする。この独特な匂いが苦手と

─ 99 ─

沖縄大学法経学部紀要 第28号

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いう日本人も少なくないだろう。しかし、安い

値段でさまざまな料理食べることができること

も夜市の魅力の1つであり、その国の現地の人

達が好むものを食すことが海外旅行の楽しみ方

の1つである。行った際にはぜひ台湾の下町グ

ルメを食べることをオススメする。ショッピン

グや食べ歩きなど、自分の目的にあった夜市を

見つけ足を運ぶのがいいだろう。

 台湾には日本人が好む多くの観光スポットが

あるが、1番に上がるのはやはり九份だろう。

九份とは地名で、古きよき街並みや伝統を残し

つつ、どこか新しくおしゃれな文化も混ざり、

まるでタイムスリップしたかのようなレトロな

雰囲気を味わうことができる。夕暮れ時の九份

の街並みは非常に神秘的で、一説には日本のジ

ブリ製作の映画「千と千尋の神隠し」の舞台の

モデルとなったとも言われている。しかし、た

いへん人気のある観光スポットのため、前に進

めないほど人で賑わっており、観光客を狙った

スリの被害などもあるそうなので、訪れる際は

気をつけた方が良いだろう。もちろん、台湾に

はその他にも多くの観光スポットが存在し、例

えば世界四大美術館の1つとされ、代表的観光

スポットとして人気を集める國立故宮博物院が

ある。そこでは、中国の歴代王朝による収蔵品

を中心に、長い歴史が育んだ名品や珍品が多く

収められている。テーマや時代ごとに細かく展

示品が分かれており、古代から近代に至るまで

の歴代王朝の秘宝を鑑賞することができる。

 このように台湾は、観光客を充分に満足させ

るものが充実しており、日本人に人気の旅行先となっているのも頷ける。その他にも日本人から

人気の理由の1つとして日本のアニメやアイドルなどのサブカルチャーも人気があり、親日の人

が多く、現地の人が片言の日本語で話しかけてくれ、観光地はほとんど日本語で会話をすること

ができる。日本から近く、治安も良いことから、外国であるが安心して足を運ぶことができるの

が人気の理由と考えられる。

画像1 夜市の風景(2017.6.24撮影)

画像2 九份の風景(2017.6.25撮影)

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台湾・沖縄観光調査報告書

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4.台湾現地アンケート調査

4-1.アンケート分析

 私たち圓田ゼミは、2017年6月23日から6月26日までの

4日間、台湾を訪れ、現地の台湾人にアンケート調査を

行った。質問数は20で、回答数は60あった。回答者につ

いて男性が19名、女性が41名あった。女性の回答が多かっ

た理由として、台湾人女性はアンケート調査の協力をお

願いすると快く協力してくれる人が多く、私たちが女性

に多く声を掛けたため、女性の票が多数となった。図表

2の年齢に対する質問では、20代が最も多く34名、19歳

以下が17名と大学でアンケート査を行なったため、19歳

以下と20代の学生の解答が多くなっている。私たちが宿

泊したホテルのスタッフの皆さんにもアンケートをお願

いしたため30代の票も複数入っている。

 図表3の職業についての質問では、大学のキャンパス内

で多くのアンケートを取ることができたので学生の回答

が集まった。会社員の票が入った理由としては、ホテル

内でアンケート調査を行ったためだと考えられる。他に

も食事を取る際に飲食店のスタッフの皆さんにアンケー

トをお願いしたため、その他の自営業やパートにも票が

入っている。「台湾が日本の統治下だったことをご存知で

すか?」という質問では図表4を見ての通り、「はい」と

いう意見が54名いて、日本との歴史関係もしっかり教育

がされていることが考えられる。またこのアンケート結

果で台湾人は歴史に詳しいことがわかった。

 「日本が台湾を統治していた時代をなんと呼びます

か?」という質問は図表5を見てわかるように、「日治」

と答えた方が38名、「日據」と答えた方が18名いた。台湾

人は日本統治時代の呼び名を変えていて、「日治」は日本

に統治されていた時代、「日據」は日本に支配・占領され

たというイメージでそれぞれ使っている。メディアなど

の報道で日治と日據を使い分けており、判断が難しいと

いう理由から「わからない」と答えた人も3名いた。

 「尖閣諸島を領有しているのはどこの国ですか?」とい

う質問では図表6を見ての通り、台湾のものであるとい

う意見が36名で多数だったのだが、中国派が7名、日本

派も8名と少数いて、今の台湾の歴史・政治状況がわか

る解答となっている。

男性26%

女性66%

無回答8%

図表1 男女比

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

無回答

60代

50代

40代

30代

20代

19歳以下

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

サービス業

学生

主婦

大工

公務員

サラリーマン

自営業

はい54

いいえ0

図表2 年齢

図表3 職業

図表4 台湾が日本の統治下だったことについて

─ 101 ─

沖縄大学法経学部紀要 第28号

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 「あなたは何人ですか?」という質問は図表7を見ての

通り、自らを台湾人と認識している人が39名と最も多く、

台湾では植民地時代を経験した世代とそうでない世代と

で教育、考え方が違う。若い世代に多く解答してもらった

このアンケート結果は若い世代の台湾を国として意識して

いるというアイデンティティの高さを表す数字となってい

る。

 「東日本大震災について知っていますか?」という質

問で、図表8を見ての通りはいと答えた方が55名、いい

えと答えた方が5名、アンケートに協力してくれた方ほ

とんどの人が東日本大震災のことを知っていることがわ

かった。

 「その震災に支援金を送ってくれたことをご存知です

か?」という質問で、図表9を見てわかるように、「はい」

と答えた方が52名、「いいえ」と答えた方が7名で、「はい」

と答えた方が多数を占めた。どちらも日本に対しての関

心の高さが分かる数字となっている。総額200億円の支援

金を送った台湾には日本人の私たちは感謝の気持ちを忘

れないようにしなければならない。

 「日本に来たことがありますか?」という質問に対して

図表10を見てわかるように、「はい」と答えた方が半数以

上いた。この結果から台湾人が海外旅行に行く際、日本

が代表的な旅行先の1つとなっていると考えられる。若

い世代を中心としたアンケート調査だが、多くの台湾の

若い世代も日本に訪れていることから、若い世代からも

日本が人気あることが分かる。「どこに行ったことがある

か?」という質問に対し図表11を見ての通り1番多かっ

たのが東京の27票、その次が京都の22票、大阪の18票が

上位3都道府県だった。沖縄は北海道の4位についで5

位だった。北海道が上位にあがった理由として考えられ

ることは、四季があって季節によって風景が違うこと、

豊富な温泉、特に雪を体験できること点において台湾人

が北海道に行きたいと答えた理由だと考えられる。その

他の上位3都道府県も四季がありショッピングを行う際

の施設も充実していることから、この結果は妥当だと思

われる。

 「あなたが日本に訪れた際に行ってみたい所を教えてく

ださい?」この質問に対し、図表12を見ての通り1番多

0

5

10

15

20

25

30

35

40

無記入

日本

中華人民共和国

中華民国

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

無記入

両方

台湾人

中国人

はい55

いいえ 5

図表6 尖閣諸島を領有しているのは

図表7 何人ですか

図表8 東日本大震災について

日治38

日據30

わからない 3

図表5 日本統治時代の呼称

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台湾・沖縄観光調査報告書

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かった答えは、北海道の26票で、次に京都、東京となっ

ており図表11と少し順位に変化がでた。1位の北海道は

近年台湾人にとって憧れの地とされており、その理由の

1つとしては、台湾から北海道間の航空運賃が高いこと

から簡単には行けないからだと思われる。しかし、これ

から北海道に訪れる台湾人は増えていくと考えられる。

 「日本のことが好きか?」という質問で、「大好き」と

答えた方が22人、「好き」が31人、「ふつう」が7人、「嫌

い」、「大嫌い」が0だった。この結果から、「ふつう」と

いう解答もあったが、「嫌い」、「大嫌い」が0票だったため、

台湾人は日本に対してあまり悪い印象をもっていないこ

とがわかった。しかし、日本人の学生がアンケートを取っ

たため気を使ってこの結果になったとも考えられる。

 日本人のイメージについて「かわいい」というイメー

ジが32票で1番多く、次に「忍者」と「やさしい」が20票、「プ

ライドが高い」が18票でした。その他にも「汚い」「臭い」「貧

乏」という否定的なイメージも合計12票入っていた。そ

れ以外にも「賢い」「メガネをかけている」などの文化的

なイメージも合計14票入っていて、「ポケモン」や「ハロー

キティ」などの日本のサブカルチャーも26票と多くあり日

本のサブカルチャーの影響を受けていることもわかった。

 「あなたの好きな日本食を教えてください」という質問

で1番多かったのは「ラーメン」の39票、次に「寿司」33票、

「たこ焼き」32票、「うどん」29票が上位にあがった。意外

にも「刺身」や「焼肉」よりも「たこ焼き」が多いことが

わかった。図表11で「大阪」と解答した人も多かったこと

から、日本の粉物も台湾人に多く受け入れられていること

がわかる。台湾にも日本のラーメン屋があり、上位に上

がっているものは台湾でも食べることができる。「ラーメ

ン」や「寿司」が上位になのは妥当だが、「うどん」や「た

こ焼き」が多いことは意外な結果だった。 「食べてみたい

日本食はありますか?」という質問では、1番多くの票

を得たのは「お好み焼き」で、やはり日本の粉物料理に

興味を示していることが図表15と16の質問からわかった。

その次に「和菓子」が16票、「牛丼」「すし」がどちらも

12票だった。この質問では、あまり大きな票の差はつかず、

私達が思い付く代表的な日本食はどれも台湾人が食べて

みたいと思っていることがわかった。

0

5

10

15

20

25

30

無記入

その他

東北

名古屋

北陸

広島

九州

大阪

北海道

沖縄

京都

東京

0

5

10

15

20

25

30

無記入

その他

東北

名古屋

北陸

広島

九州

大阪

北海道

沖縄

京都

東京

はい52

いいえ 7

はい37

いいえ 23

図表11 日本のどこへ行ったことがありますか

図表12 日本の行ってみたい場所

図表9 東日本大震災の義援金について

図表10 日本に来たことがありますか

─ 103 ─

沖縄大学法経学部紀要 第28号

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 「好きな日本語や知っている日本語はありますか?」という質問では、「アニメ」「アイドル」「かっ

こいい」「ガンダム」「クレヨンしんちゃん」「桜」「人間失格」などの解答があった。「クレヨン

しんちゃん」や「ガンダム」の解答があることから、日本のサブカルチャーに非常に興味を示し

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

その他

和菓子

焼肉

おにぎり

和そば

お好み焼き

刺身

寿司

牛丼

天ぷら

うどん

ラーメン

日本式カレー

たこ焼き

0

5

10

15

20

25

その他

和菓子

焼肉

おにぎり

和そば

お好み焼き

刺身

寿司

牛丼

天ぷら

うどん

ラーメン

日本式カレー

たこ焼き

0

5

10

15

20

25

30

無記入

ハローキティ

ポケモン

芸者

サムライ

忍者

自然

マナーの良さ

交通の良さ

アイドル

アニメ

時間を守る

四季

治安良さ

接客

食文化

夜景 0

5

10

15

20

25

30

35

40

無記入

その他

津波

地震

汚染

食事

風俗

宿泊

言葉

交通

治安

お金

図表15 好きな日本食 図表16 食べてみたい日本食

図表17 日本の魅力 図表18 日本で心配なこと

0

5

10

15

20

25

30

35

大嫌い

嫌い

ふつう

好き

大好き

0

5

10

15

20

25

30

35

サムライ

忍者

貧乏

臭い

かっこいい

怒りっぽい

賢い

汚い

金持ち

美しい

かわいい

図表13 日本について 図表14 日本人のイメージ

─ 104 ─

台湾・沖縄観光調査報告書

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ていることが分かった。その他にも太宰治の『人間失格』などの解答もあることから、日本の文

学にも台湾人が興味を持っていることが分かり、「桜」も漢字で解答されていた。 

 「日本の他国にはない魅力は何だと思いますか?」という質問で図表17の解答が割れているこ

とから海外の人から見て日本はとても魅力がたくさんある国として見られていることがわかる。

特に多い質の高い接客と食文化、マナーの良さが評価されている理由としては、日本人が世界か

ら評価されていることなので妥当の結果だと考えられる。他にはアニメやアイドル、忍者などが

多くの票を集めており日本のサブカルチャーの影響を受けていると考えられる。意外だったの

が、日本が世界に誇るハローキティが2票と少なかったので台湾ではあまり人気がないと考えら

れる。

 「あなたが旅行等で日本に訪れる際に心配なことを教えてください」という質問の結果が図表

18である。「言葉」が34票集めた理由としては、外国旅行に行く際に言葉のことを心配になるの

は妥当だと考えられる。また、日本人は他の先進国に比べ世界共通語である英語をあまり喋るこ

とのできないことから、この結果になったと考えられる。「地震」と「津波」にも多く票が入った。

この結果は2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響だと考えられる。7年たった今でも台湾

人の頭にも強く印象付けられており、あの震災が世界的に見ても非常に大きなニュースであった

ことがわかる。

 「沖縄のことについて知っていることを教えてくださ

い」という質問では、「美ら海水族館」や「青い海」に多

く票が集まったことから、沖縄のマリンリゾートとして

のイメージが台湾人にも定着していることがわかる。「オ

リオンビール」にも11票入っておりその理由として、台

湾でもオリオンビールの商品が販売されているため、台

湾人からの認知度も高く、票を集める結果になったと考

えられる。また意外にも、「琉球王朝」や沖縄の「基地問

題」にも多く票が集まった。理由として考えられることは、

台湾人は沖縄に強く関心があり、観光地や特産品のみな

らず沖縄の歴史や政治的部分にも関心があり、この結果

になったと考えられる。

 「どこに行きましたか?」という質問では、アンケー

ト結果からやはり沖縄の定番となっている観光地に票が

入った。国際通りが一番多かった理由としては、免税店

やドラックストア、沖縄の特産品など、国際通りで沖縄

でのショッピングや飲食の目的がある程度行えることか

ら、この結果になったと考えられる。また、沖縄本島の

他にも石垣島や久米島など離島にも票が入っていること

から、台湾人は沖縄の離島にも関心があり足を運んでい

ることがわかった。

0

5

10

15

20

25

30

35

無記入

その他

紅芋タルト

ちんすこう

泡盛

オリオンビール

三線

琉球舞踊

白い砂浜

空手

沖縄戦

沖縄そば

青い海

基地問題

琉球王朝

美ら海水族館

無記入

その他

今帰仁城跡

琉球村

斎場御嶽

古宇利島

石垣島

宮古島

勝連城跡

久米島

ビーチ

国際通り

美ら海水族館

首里城

0

5

10

15

20

25

30

35

40

図表19 沖縄について

図表20 沖縄のどこへ行きましたか

─ 105 ─

沖縄大学法経学部紀要 第28号

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4-2.まとめ

 アンケート調査を通して、台湾人が日本に抱くイメージが非常に良いものとわかった。中には

否定的な回答もあったが、肯定的な回答が圧倒的に多く、この結果から日本に好印象を抱いてい

ることがわかる。それだけではなく、台湾の大学で20部以上アンケートを収集したことから、若

者を中心としたアンケート結果になった。半数以上の人が日本に訪れたことがあると回答してい

る。台湾人の海外旅行の行き先として日本が代表的なものになっていること、なおかつ、台湾の

若者にも日本への観光が非常に人気をもっていることがわかる。東京や京都は多くの観光スポッ

トがあり台湾人にも人気があるのは妥当だと思われる。意外な結果が表れたのは、訪れてみたい

日本の都道府県で北海道が上位にランクインしていたことだ。理由として考えられるのは、四季

を感じられ、温泉があり、台湾では降らない雪に触れられることだ。しかし、台湾から北海道へ

は航空運賃が高いことから、台湾人にとって日本の行きたい観光地として北海道は憧れの地とし

て定着しつつあると考えられる。問4の「あなたは何人ですか?」という質問の結果から、自分

は中国人ではなく台湾人だと回答する人が多く、この台湾人であるというアイデンティティは若

者にもしっかりと刻み込まれており、今後も中国人ではなく台湾人としてアイデンティティが定

着していくことが予想される。

5.沖縄における台湾人観光客アンケート調査

5-1.アンケート調査結果

 今回のアンケート調査は9月29日、9月30日、10月1日、

10月2日の4日間、来沖する台湾人観光客に対して那覇

国際空港ターミナルで行った。質問の数は20で、回答数

は50あった。

 図表21は男女比のグラフである。無回答の4人につい

てその理由は分からない。女性が66%と多かった理由は

図表2を見るからに20代、30代の観光客が多く、女性の

方がきさくで優しい性格であるため、今回のアンケート

結果になったと考られる。

 図表22を見ると台湾からの来沖観光客は、30~40代が

メインで、60~70代は予想外に少なかった。20代も全体

の18%と多いことから、沖縄は中高年をメインとして若

年層からも人気があるといえる。LCCの飛行機に搭乗し

た台湾人がほとんどなので若い人が多かったのかもしれ

ない。

 図表はないが滞在期間への質問では、3泊4日と答え

た人が22名、4泊以上と答えた人が24名おり、長期滞在

する台湾人が92%で大部分を占めた。沖縄を時間をかけ

て観光する人が多いことがわかった。

 「何人で来ましたか?」という質問では、5人以上と答

男性26%

女性66%

無回答8%

図表21 男女比

無回答

60代

50代

40代

30代

20代

19歳以下

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

図表22 年齢

─ 106 ─

台湾・沖縄観光調査報告書

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えた人が19人と1番多く、その多くが家族や親族と来沖

していると考えられる。その次に2人旅が14人で、カッ

プルや女子旅で来ている観光客は調査地の那覇空港で多

く見られた。

 図表23のアンケートでは交通手段としてレンタカーが

40%と多いことが分かった。沖縄のレンタカー会社は各

社、社員が空港にプラカードを持って立っているので台

湾人観光客も便利で使いやすいことが人気の秘訣だと考

えられる。2番目に多かったのがバス、3番目にモノレー

ルという順で、バスは北部などを観光する際の観光バス

の利用、近距離移動にモノレールを利用していると考え

られる。

 図表24では職業についてアンケートを行った。1番多い

回答がサービス業で17名、その次にサラリーマンが13名、

次に自営業が11名という結果になった。少数だが、学生

も5人いて学生にも沖縄観光が魅力的に映っていること

がわかった。

 図表25の「今回の訪問で何度目ですか?」という質問

に対し、初めての訪問と答えた人が7割を占めている。

2回目以降のリピーターが少ないことから、そのほとん

どが日本観光の入り口として沖縄に来ているのではない

かと考えられる。

 図表26の宿泊先についての質問では、やはり交通面で

便利な那覇を拠点に観光を行っている観光客が圧倒的に

多い結果となった。那覇を拠点に中部や北部の観光をし

ていると考えられる。その他に石垣島が入っていたので、

離島観光もこれから伸びしろがあると言える。長期滞在

する台湾人観光客に、1泊すれば楽しめる離島の魅力を

どう伝えるかが課題となるだろう。

 図表27の「誰と訪れましたか?」という質問では、家

族と答えた人が23名で1番多く、次に友達の17名、恋人

が7名という順になった。今回の調査では若年層に偏っ

てしまったが、那覇空港にはさまざまな世代の台湾人が

いたので、家族で来ているという回答が多いのは納得で

ある。

 図表28の「1人あたりの予算」への質問では日本円で18万円から26万円と答えた人が一番多

く、台湾人は旅行にお金をかけることがわかる。アンケート回答者で宿泊期間が長い回答が多

かったので妥当といえるだろう。当時のレートは1台湾ドル=3.76円であった。(https://info.

徒歩

レンタカー

タクシー

バス

モノレール

0

5

10

15

20

25

サービス業

学生

主婦

大工

公務員

サラリーマン

自営業

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

無回答

5回以上

4回目

2回目

1回目

0

10

20

30

40

図表23 移動手段

図表24 職業

図表25 訪問回数

─ 107 ─

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finance.yahoo.co.jp/fx/convert/?a=1&s=TWD&t=JPY

2017.11.6閲覧)。

 図表29の「今回の旅行はどのようにして申し込みました

か?」という質問では48名が個人で手配したと答えてお

り、一昔前のパッケージツアーではなくインターネットな

どで航空券とホテルを予約し、自分の観光に合ったプラン

を組んで観光を楽しむのが主流となっている。

 図表30の「沖縄について知っている事はなんですか(複

数回答可)」の質問では1位に観光地として有名な「美ら

海水族館」の回答が32名、2位に「青い海」20名、3位に「白

い砂浜」と答えた人が17名いた。アンケート調査から台湾

人観光客が期待しているのはマリンリゾートとしての沖

縄である。4位に「泡盛」、5位に「紅芋タルト」が入り、

沖縄のローカルな物産の認知もあることがわかった。ちな

みに1位の「美ら海水族館」は2016年度の入園者数が480

万人を突破しており、沖縄人気を支える存在となってい

る。(http://www.dc.ogb.go.jp/kouen/ocean/riyousha.

html 2017.10.20閲覧)。

 図表31の「また沖縄に来たいと思いますか?」という質

問では、「はい」と答えた人が8割、「いいえ」と答えた

人が2割いた。「いいえ」と答えた観光客が持つ沖縄の印

象を今回、調査できなかったのが残念である。来沖した

ばかりのまだ沖縄観光をしていない人たちにアンケート

を取ったので出国する前の台湾人観光客に同じようなアン

ケートを行えば違った結果が得られたかもしれない。

 図表32の「沖縄が琉球王国だったことを知っています

か?」という質問では「はい」と答えた人が7割以上いて、

図表13の「米軍基地への反対運動について知っています

か?」という質問でも「はい」と答えた人が8割を占める

結果となった。この結果から台湾人は現代の沖縄の歴史に

ついて知っていたということがわかった。その理由として

考えられるのが尖閣諸島問題である。学校教育やマスメ

ディアの報道などを通して、知識を持っているのではな

いだろうか。今でも台湾の一部の空港では「沖縄」表記ではなく「琉球」と表記する空港もあり、

沖縄を特別に意識する台湾人も少なくないのかもしれない。

 図表34から図表37では交通、宿泊施設、食事、物価について質問を行った。料金については交

通、宿泊施設、食事、物価とそれぞれ妥当な金額という意見が多く、総合的にみて金銭感覚が近

いことがわかる。問14の交通費用と問15の費用総合のグラフを取り出して比較してみたい。

その他

北部

中部

那覇

0

10

20

30

40

50

その他

親戚

社員

恋人

家族

個人

0

5

10

15

20

25

図表26 宿泊場所

図表27 誰と訪れましたか?

無回答

28万~56万

18万~28万

8万~18万

5万~8万

3万~5万

1万~3万

1万

0

5

10

15

20

25

30

図表28 予算

─ 108 ─

台湾・沖縄観光調査報告書

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 図表36と図表37を比較してみると、来沖観光客は自然などに憧れて来ていることがうかがえる。

「ふつう」、「満足」の声がアンケートのほとんどを占めたが、交通に関しては「ふつう」と答え

た人が多かった。台北の鉄道と地下鉄は発達しており、ほとんどの観光地へ地下鉄で行くことが

できる。共通乗車カード兼電子マネーである「悠遊カード」(現地ではヨウヨウカードと読んで

はい35

いいえ4

無回答 1

図表33 基地問題について

とても不満

不満

ふつう

満足

とても満足

0

10

20

30

40

図表34 交通費用

その他

個人旅行

空港会社の

ツアー

旅行会社の

ツアー

0

10

20

30

40

50

60

図表29 チケットの取得方法

その他

紅芋タルト

ちんすこう

泡盛

オリオンビール

三線

琉球舞踊

白い砂浜

空手

沖縄戦

沖縄そば

青い済み

基地問題

琉球王朝

美ら海水族館

0

5

10

15

20

25

30

35

図表30 知っていること

はい39

いいえ9

無回答 2

はい80%

いいえ20%

図表31 また訪れたい? 図表32 琉球について

─ 109 ─

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いる)もとても利便性が高く、台湾人観光客は沖縄に対

して交通面の不便さと決済の不便さ(サービスや商品の

購入)を感じるだろう。日本人観光客からも指摘されて

いるように、交通手段の選択の幅の狭さや渋滞の改善が

課題となっている。

 このアンケート全体を通して台湾人はイメージ通りの

沖縄観光に期待し、沖縄観光を楽しめるといえるだろう。

しかし改善すべき点も見つかった。満足の声が少なかっ

た交通インフラの整備や、台湾人を始め外国人観光客に、

離島観光の魅力が伝わるPR方法を考え直すことが、今回

のアンケート調査から見えてきた沖縄観光向上への課題

である。

とても不満

不満

ふつう

満足

とても満足

0

5

10

15

20

25

30

35

とても不満

不満

ふつう

満足

とても満足

0

5

10

15

20

25

30

35

40

とても不満

不満

ふつう

満足

とても満足

0

5

10

15

20

25

30

35

図表36 風景満足度

図表35 費用総合

図表37 総合満足度

─ 110 ─

台湾・沖縄観光調査報告書

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5-2.アンケート調査結果からの考察

 a.来沖台湾人観光客アンケート分析と考察

 このアンケートの結果から、台湾から訪れる観光客の年齢層は、年配の方よりも若者層の旅

行者が多いことがわかる。気候も似ており、距離も近く足を運びやすいことから、国際観光の

入門地として沖縄が選ばれていると考えられる。意外な結果がでたのは、琉球や沖縄の基地問

題について知っていると回答した人が8割以上いたことだ。若者の回答者が多いにも関わらず

この結果で考えられることは、台湾の若者は沖縄での遊びや観光スポットだけではなく、沖縄

の歴史や政治的な部分にも関心があると思われる。ある程度の知識をもって沖縄を訪れている

と考えられる。滞在期間が長く、沖縄で多くお金を使い消費し、マナーもよく、沖縄にとって

良質な外国人観光客といえるだろう。

 しかし、沖縄が台湾に比べ安価な交通機関がないことに対して、来沖台湾人は不便さを感じ

るだろう。より利便性の高い交通機関を導入し、外国人観光客が今以上に快適に観光が行える

ように考えていくことが、今後の沖縄観光の課題となるだろう。改善策の一つとして、外国人

観光客にも簡単に発行できる、交通機関専用の電子マネー決済システムを沖縄でも導入するこ

とだ。実際に台湾でも「悠遊カード」という電子マネーカードを導入しており、電車やその他

の交通機関はもちろんコンビニエンスストアでも利用することができ、移動と決済を円滑に進

めてくれる非常に便利なカードだ。このようなカードを導入することで、外国人観光客がより

満足できる沖縄観光を提供できるだろう。

 b.台湾における現地アンケート調査と来沖観光客アンケート調査との比較

 今回行ったアンケート調査と前回台湾で行ったアンケートの比較をし、そこから見えてくる

ことや考えられることを書く。前回のアンケートの結果から、台湾人の海外旅行の行き先とし

て日本が代表的なものになっており、その中でも沖縄は行ってみたい都道府県で5位にランク

インしている。

 年齢層はどちらも若く、特に台湾で行ったアンケートは、台湾の大学のキャンパス内で多く

取ることができたので、19歳以下と20代の回答者が大半を占める結果になった。ちなみに、年

配の人より若い人のほうがアンケート調査に応じてくれる可能性が高い。これは台湾でも沖縄

でも同じだった。

 「沖縄について知っていること」では、双方に違いが見られた。台湾で収集したアンケート

では、「青い海」が一番多く回答されており、次に「琉球王朝」という結果だった。大学で多

くアンケートを収集できたことから、若年層に片寄ったアンケートになったが「琉球王朝」に

多く票が集まったのは意外な結果だった。「オリオンビール」と回答している人も多く、その

理由として考えられるのは、台湾でも販売されているため認知度が高く票が集まったと考えら

れる。逆に沖縄で行ったアンケートでは「青い海」を抑え「美ら海水族館」が一番多く票を集

めた。上位には「泡盛」や「紅芋タルト」と沖縄の物産の認知も高く、沖縄に訪れる際事前に

観光スポットや名産品について調べてくることから、この結果になったと考えられる。台湾で

の現地調査では、日本と沖縄に関する認知度を中心にアンケートを行い、来沖調査では沖縄の

観光イメージや物産の認知度を中心に調査を行ったことから、沖縄のマリンリゾートとしての

─ 111 ─

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イメージが強く、「美ら海」が多く票を集める結果になったと考えられる。

 c.来沖台湾人と来沖香港人の比較と考察

 2016年度に同様のアンケート調査を、香港人を対象にして行った。香港人と台湾人の両者の

アンケートを比較してみると、それぞれの違いや共通点が見えてきた。共通点としては、両者

とも4泊以上の宿泊と回答した人が多く、のんびりと過ごせる沖縄のリゾート感に期待してい

るのではないかと推測される。宿泊場所は、どちらも那覇市内が多く、空港から近いことや交

通の利便性の高さが理由としてあげられる。また、「沖縄の基地問題について知っていますか?」

と質問したところ、両者とも「はい」と答えた人が半数を超えており、この結果から沖縄の歴

史、政治にも関心があり、ある程度の知識をもっていると考えられる。しかし、沖縄へのリピー

ターが少ないのも両者の共通点となっている。

 比較すると違いもいくつか見えてくる。年齢層では、香港は10代、20代が少なく50代、60代

が多く、逆に台湾は20代、30代の旅行者が多い。そのことから、台湾人は若年層が国際観光の

最初のステップとして距離も近いことから沖縄を選んでいると考えられる。香港からは時間に

も金銭的にも余裕のある層が沖縄に訪れていると考えられる。

 また、移動手段にも違いが見られ、レンタカー*3を利用すると答えた人が多い台湾人に対し、

香港人はモノレールで移動すると回答した人が全体の半数近くいた。両者に違いがでた理由と

して考えられることは、台湾人観光客は本国の運転免許所とその日本語訳を持てば、日本で自

動車を運転でき、レンタカーを利用しやすい環境にある。しかし、香港人観光客は沖縄で自動

車を運転する際には、国際免許の申請が必要で時間も手間もかかる。このことから、台湾人に

比べ香港人はあまりレンタカーを利用しないのではないかと考えられる。

6.東アジアから見た沖縄観光の課題

 2017年に日本を訪れた観光客は、2800万人を超え、そのうち東アジア(中華人民共和国、大韓

民国、台湾(中華民国)、香港)からの割合が4分3の75%近くに達する(中国と韓国でその約

半分を占める)。沖縄県の場合、2017年(1月から12月)には939万人を超える観光客が訪れ、そ

のうち外国人観光客は約254万人で、入域観光客数の約3割、27%を占める。

 本調査報告で扱った台湾人観光客のアンケート調査は、その実態を知る一つの手がかりとなる

だろう。調査人員と予算が限られていたため、大量のデータを集めることができなかったが、そ

の傾向はうかがい知ることができた。調査回答者が比較的若い女性に偏っていることは、台湾の

若い女性は好奇心をもち物腰が柔らかく調査リテラシーを身につけているからだろう。

 調査で面白かったのは次の3点である。一つ目は、日本に行ったことのある場所での質問で、

東京が27票、京都が22票、大阪が18票で上位3位を占め、次に北海道の4位、沖縄は5位だった

ことだ。それに対して、「あなたが日本に訪れた際に行ってみたい所を教えてください?」の質

問に対して、1番多かった答えは、北海道の26票だった点だ。来沖台湾人観光客調査でもわかる

ように、沖縄を訪れる台湾人観光客の7割が初めてで、航空運賃が安くて、気候も似ている沖縄

を「マリンリゾート」として訪れている。台湾人には、冬の北海道は魅力的だが、航空運賃が高

く憧れの地となっている。

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台湾・沖縄観光調査報告書

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 二つ目は、2017年に行った来沖台湾人調査と、2016年に行った来沖香港人の比較と考察である。

注目すべきは年齢層の違いである。二つの調査は那覇国際空港でLCC発着便時に行ったが、香港

人が50代と60代が多いのに対して、台湾人は20代と30代が多い。沖縄から同程度の距離にあり気

候も似ていて同じ人種で同じ言葉をもっているが、沖縄観光のニーズに違いが出た。また、この

一年で外国人観光客がレンタカーを利用できるようになり、その違いが来沖台湾人観光客の移動手

段調査結果に表れている。つまり、この一年で来沖外国人観光客がレンタカーを利用できるように

なった。

 三つ目は尖閣諸島問題である。よく「台湾人は親日」と言われるが、それはもう一つの大陸に

ある中国との対立と微妙な政治的距離感から生まれたものと考えられる。「尖閣諸島を領有して

いるのはどこの国ですか?」という質問では、台湾に所属するという意見が36名で多数をしめた。

そして、大陸の中国7名、日本が8名であった。若い20代を中心とする現地アンケートだったの

で、この結果は台湾を「独立国」と見なす認識とその国境線を意識した世代が育ってきた証では

ないだろうか? 尖閣諸島を巡る、日本・中華人民共和国・台湾(中華民国)と領有問題と歴史

的経緯はこの際、問題にはしない。

 沖縄県は「2021年に来沖観光客1,200万人」を目標に掲げている。現在の数字から見れば、少

子高齢化の問題を抱える日本国の県外観光客の伸びしろは期待できず、その半数近くを外国人観

光客で補わなければならない。さらなる観光資源の開発と維持・宣伝、宿泊場所の確保や交通イ

ンフラの整備、決済(商品やサービスなどの対価の支払い)方法の改善を行っていかねばならな

い。今回の台湾における現地調査と、来沖台湾人観光客の調査は、その端緒としてみれば、役立

つ物となるはずである。

謝辞

 本研究は、2017年度沖縄大学教務部、沖縄大学法経学会のゼミ活動助成費を得て行われた。こ

こに明記して、感謝の意を表したい。

           *1 沖縄大学法経学部法経学科 教授*2 沖縄大学法経学部法経学科 4年次

   本稿は、圓田浩二が1節と6節、平良俊が4節、平田健人が1節、前田毅志が3節と5節

を執筆している。*3 沖縄のレンタカー業界の最大手の一つであるOTSレンタカーに問い合わせたところ、8月

9月の一番観光客が多いシーズンで、外国人観光客がレンタカーを利用する場合、トヨタの

アクアやホンダのフィットの値段は、事前にインターネットで予約すれば24時間あたりイン

ターネット割引を含めて約6,000円だそうだ。この値段は、すべての事故をカバーしてくれ

る保険のオプションを付けた値段で、日本人にも同じ値段で提供しているそうだ。ちなみに、

一番高い車種は、トヨタのヴェルファイヤやアルファードなどのファミリーカーで、一番高

いプランでさらにオプションを付けると、3泊4日で12万円近くの値段がかかるそうだ。し

かし、高い値段にもかかわらずファミリーカーを利用する観光客も多く、台湾人にアンケー

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沖縄大学法経学部紀要 第28号

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トを行った際も5人以上で訪れたと回答した人も多かったことから、7人乗りのファミリー

カーを利用する台湾人観光客も多いと考えられる。

参考・参照文献

阿多静香編 2016 『地球の歩き方aruco台湾』 ダイヤモンド・ビッグ社

米谷奈津子編 2016 『るるぶ台湾』 JTBパブリッシング

圓田浩二・平良俊・平田健人・前田毅志 2017 「香港・沖縄観光調査費報告書」『沖縄大学法経

学部紀要第26号』pp.47-58

野嶋剛 2016 『台湾とは何か』 岩波新書

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