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Title 陽イオン選択性ガラス電極の応答特性とその微量分析へ の応用に関する研究( Dissertation_全文 ) Author(s) 秋元, 直茂 Citation Kyoto University (京都大学) Issue Date 1977-05-23 URL https://doi.org/10.14989/doctor.r3332 Right Type Thesis or Dissertation Textversion author Kyoto University

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Page 1: Title 陽イオン選択性ガラス電極の応答特性とその微量分析へ ......するとともに,新しい電極原理の探索が各地で開始された。その後もRoss?Simonゆ石橋11)らによる

Title 陽イオン選択性ガラス電極の応答特性とその微量分析への応用に関する研究( Dissertation_全文 )

Author(s) 秋元, 直茂

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 1977-05-23

URL https://doi.org/10.14989/doctor.r3332

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion author

Kyoto University

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命起

陽イオン選択性ガラス電極の応答特性

とその微量分析への応用に関する研究

秋 元 直 茂

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目 次

総論の部

第1章緒  論・一・………・一・・…・…・ ・…・…・・… @ 1

第2章 陽イオン選択性ガラス電極の電位発生機構と選択特性 ・………・・…………・・………・……… @  3

第3章 陽イオン選択性電極によるナトリウム及びカリウムイオンの直接精密電位差測定

 3-1 電位差測定の際の問題点 ・……・…・…・………・……・・……・・……・………・…・・……

 3-2 0亘on 94-11A電極によるナトリウムイオンの微量定量 …・…………・……・

 3-3 Comhユg NAS 27-4電極によるカリウムイオンの微量定量…・……・・一・…・

9

9

12

17

第4章 NAS l1-18電極を終点指示電極に用いる銀滴定 ・…・・  …

 4-1 複合応答をするイオン選択性電極の滴定曲線と終点誤差   ・…

 4-2 ハロゲンイオンの微量沈殿滴定 …・……・………・…・……・・…・…・

 4-3 シアンイオンの微量錯滴定 …・…・・……………・……・……  …・・

…21

 22・・ Q6

・・ R1

第5章 陽イオン選択性ガラス電極の過渡応答特性 ・………………・……………      ……・…・36

 5-1 電極電位の過渡応答パターン ・…………一…・…一…………・・・…一      …………36

 5-2 NAS 11-18電極の陽イオンに対する過渡応答電位の測定 …一…     一……・39

 5-3 過渡応答現象の解釈 ・…・……………・…・…・・……………一・・……・…・      ・一一44

第16章 NAS 11-18電極の多価陽イオンに対する過渡応答現象を終点検出に利用する電位差滴定

             ● , 辱 o 幽 ■ ● ■ 隣 ● ■ ● ● r ■ 駒 ■ ■ ● ■ 昌 g r 血 ● ■ ■- b ・ ■ , ウ ・ 県 昌 O 昌 吟 ・

6-1 硫酸イオンの微量沈殿滴定 ……・…………・……・…・

6-2 数種金属イオンの微量キレート滴定 …・………’…”

……・……・……・………・・………………@47

.一・.一・・・・・・・・・・・・・・…@噛喝一・・… 一・r・・・… 9・… 」・ 47

・..・・・…@一・’・・・・… ’軸… 一・… 一・一・一・・・・・・・…  52

第7章フラスコ燃焼法を併用する有機微量分析への応用 ・………・…………………………・・………”57

7-1 直接電位差測定法によるナトリウムの定量 ・……………

7-2 直接電位差測定法によるカリウムの定量 ………………・

7-3 銀滴定法によるハロゲンの定量 ・……・…………・・…・…・・

...・..・.....,_・・.・・.・・・・・・・・・・・・… @一・… 一 57

・一一・・・・・・・…@一・・… 一・・・・・・・・・・・・・・・・・…  59

一....6__9...・・.一.・・・…@も・・… 一購嘔・・噛…  61

一i一

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 7-4 キレート商定法によるカルシウムの定量 …一…………’……”…”…’…”     62

第8章結 ’論 …・・+……・…一・一・・一・……一…『・・……………………  ・………    一64

謝 辞…………・・……・…………・・

実験の部…………………………・…・

引用文献・…・………・・’…・…曾’〒’……凸

.._.........,.......  .....      ....冒                 ・一・・ 66

........噸,...........@          一_...            .._..     67

..、.、...…............... .......                 .........     72

一ii一

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第1章 緒 論

 近年,新しいイオン選択性電極が各種のイオンに対して多数開発され,分析化学の各分野で広く活用さ

れているP岡)これらのイオン選択性電極を形状の上から分類すれば,!)ガラス電極,2)固体膜電極,

3)液膜電極となり,固体膜電極は更に単結晶,均一成型膜,不均一成型膜電極に,液膜電極はイオン交

換膜型及びニュートラルキャリヤー型電極に分けられる。又最近ではガス透過性膜とガラス電極などを組

み合わせたガス感応電極も市販され,プラスチック膜電極や酵素電極なども試作されている。

 イオン選択性電極の発展の後を振り返って見ると,最初に作成されたものは今世紀初めCre皿er 5)によ

って考案された水素イオンに選択的に応答するpHガラス電極である。その後pHガラス電極は理論及び

応用の面で著しい進歩を遂げたが,水素イオン以外の陽イオンに対する関心は“アルカリ誤差”として認

識される以上の高まりを示さなかった。1957年Eisenman 6)らは pHガラス電極におけるアルカリ誤差

を減少する目的で感応膜成分のアルカリけい酸ガラスに少量のA1203又はB203を添加したところ,逆

にアルカリ誤差は著しく増大することを発見し,これを積極的に利用して水素以外の1価陽イオンにも強

く応答する陽イオン選択性ガラス電極の開発に成功した。次いで1964年Pungor7)らはシリコンゴム支持

体に難溶性塩を分散させていわゆるPungor型電極を登場させ,更に1966年にはFrant8)らによるフッ

化ランタン単結晶を感応膜とするフッ素イオン選択性電極の開発があり,イオン選択性電極の概念が定着

するとともに,新しい電極原理の探索が各地で開始された。その後もRoss?Simonゆ石橋11)らによる

液膜型電極,平田12)卍14)らによるセラミック膜電極などの新しい電極が次々に研究開発されてきている。

 Pungor型電極や液膜電極は実験室でも比較的容易に作成することができ,特に液膜電極は選択性の良

いイオン会合抽出系を見いだすことにより,無機イオンのみならず有機イオンにも感応する多くの種類の

イオンを対象とする電極が製作可能となるなど興味ある研究分野である。しかしながら,これらの固体膜

や液膜電極では電位の応答速度や再現性が必ずしも優れているものばかりではなく,希薄溶液に対し極め

て高い精度が要求される当字へ応用するにはあまり適当なものとは言えない。又,液膜電極では半透膜の

取り替え・や内部液の補給がしばしば必要であるなど実用分析の素材としては不便な点も多い。

 .一方,これらの電極よりも比較的早い時期に開発され,実用にも供されている陽イオン選択性ガラス電

極は陽イオン間の選択性には問題もあるが,電位の応答速度は迅速で再現性の良いことが知られており,

かつ感応膜がガラスであるから丈夫であり,半永久的に使用できる長所がある。著者はここに着目し,こ

の陽イオン選択性ガラス電極の応答特性をいろいろな角度から調査し,その究極的精度を明らかにして微

量定量分析へ応用するために本研究を開始した。

 陽イオン選択性ガラス電極の感応膜のいろいろな組成のうち,代表的なものはナトリウムイオンに優れ

た選択性を持つCorning NAS 11-18(11Na20・18AI203・71SiO2の組成を有することを意

味する)とカリウムイオンに対して最も大きな選択性を示すが他の1価陽イオンにも平均的に応答する

Cor皿ing NAS 27-4であり,それぞれ“ナトリウムイオン選択性電極”及び“1価陽イオン選択性

一1一

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電極”の名称で市販されている。これらの電極は主として工業用水のナトリウムイオン濃度のモニタリン

グあるいは血糠,尿など生体液中のナトリウムやカリウムイオン濃度の計測などに利用されているが,こ

のような目的における電極電位の測定値の精度要求はそれほど高いものではなく,精密分析に応用した例

は見られない。

 そこで著者はこれら電極に関して次のような点の検討を行った。

1)いろいろの1価陽イオンに対する電極の選択係数を精密に実測し,主応答イオンであるナトリウム及

  びカリウムイオンがNemst式に正確に追従できる条件を設定する。又応答電位の究極的な再現精度

  を求め,直擦電位差測定によるナトリウム及びカリウムイオンの微量定量分析の可能性を探る。

2)NAS 11-18電極の銀イオンに対する特異な感応性を利用して,ハロゲンなどの電位差滴定の終点

  検出の可能性を検討する。

3)多価陽イオンに対する応答性についてはほとんど研究が行われておらず,未解決の問題が多いので,

  その実態を知るとともに,もし応答性がある場合,何らかの形で分析化学的応用の途がないかを考究

  する。

 すなわち,1)についてはO.0005pH(±O.05 mV)の最小読み取り精度を有するペックマン超精密電

位差計を使用し,ナトリウムイオン選択性及び1価陽イオン選択性電極によってそれぞれ10-3-10-4M

範囲のナトリウム及びカリウムイオン濃度を直接電位差測定法で求め,標準偏差σ=0.002(p[Cation])

が得られることを実証した。又2)については,NAS 11-!8電極がナトリウムイオンより銀イオンに

はるかに強く応答することが知られており優れた銀イオン選択性電極ともなり得ることから,これを銀滴

定の終点指示電極に応用したところ,通常の銀電極への応答とは異なる興味ある応答曲線を与え,これを

用いてハロゲン及びシアンイオンの精密微量滴定が可能となった。3)については,陽イオン選択性ガラ

ス電極の多価陽イオンに対する応答がごく一部のイオンについては観察されているが明細なものではない

ため改めて総合的に調査研究を行ったところ,NAS 11-18電極がほとんどの多価陽イオンに対し,定

常状態では応答電位を示さないにもかかわらず,濃度の急激な変化に対してはいずれも過渡的な応答箪倖

を発現することを発見するとともに,得られた現象を多価金属イオンの滴定終点の検出手段に応用できる

ことを知った。陽イオン選択性ガラス電極の応答特性に関する研究では,従来から測定イオン液に対する

定常状態での電極の平衡電位についての議論に偏っており,測定イオン濃度の変化に対する電極電位の応

答挙動のような動的特性についてはほとんど検討がなされていない。この電極の多価金属イオンに対する

過渡応答は興味ある現象であり,一方NAS 27-4電極がほとんどこの種の過渡応答を示さないことと

合わせて,その理論的解釈について若干の新しい知見を得ることができた。

 以上の研究調査によって設定できた定量条件の幾つかを利用し,これにフラスコ燃焼法を併用して有機

微量定量分析への応用を試みた。

 以下,これらについて詳述する。

一2一

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第 2章 陽イオン選択性ガラス電極の電位発生機構と選択特性

本章では第 3章以下の記述に用いられる陽イオン選択性ガラス電極の応答理論 を Eisenmanの説を中心

にして略述する。

陽イオン選択性ガラス電極は, pHガラス電極が水素イオンに特に高い選択性 を示すのに対 し,アルカ

リイオンにも選択性が拡がるfL='けで.動作原理から言えば両者は同一の種穀に属するものである。従って,

陽イオン遇択性ガラス電極の応答理論 と pHガラス電極のそれ とは本質的には同 じであるD

pI-1ガラス電極は溶液中の水素イオン括貴に応答するものであり,その電極電位は次の Nemst式で表

される。

RT

E-const+ - ln aH'F

ここで,耳は電極電位,Rはガス定数,Tは把

対温度,Fはプ アラディー定軌 aH十は水素イオ

ン活量である。式 (2.日 は電極電位 Eと水素イ

オン活魚の逆数の対数すなわち pHとの関係が

Nernstこう配 2.3031叩/Fを持つ直線 となるこ

とを示 している。しかし,実際には Fig.2-1に示

されるように, pllが高 くなるにつれ電位はNemst

こう配からはずれ,次第に pllに無関係に一定電

位を示すようになる。この現象が "アルカリ誤差"15)

と呼ばれるものでアルカリ性 を保つために加えた

陽イオンの種規や温度によって変化する。

このアルカリ誤差原因については,醇綬中のア

ルカリ金属イオンとガラス電極膜表面に存在する

けい酸ゲル層中の水素イオンとのイオン交換によ

るものであることが SchilaTlG)やHoroyitz17)I18)ら

によって早 くから示唆されていた。 NicolskyZ)

はこのイオン交換説 を熱力学的な立場から考察 し,

次式で表されるガラス電極の界面電位且を導いた。

RT

丑-const+ - ln(aH十+ KaM十)F

-800

:>・

岩 -GOO

【=■lOA..

-もoo

0 2 4 6 B IO 12 tApH

Fig.2-1"AlhlineerrDrnOfpHglasselectrode(cor血 g015)1)

I-L--・・--- (2.2)

ここで, aM'は溶液中の7ルカl)金属イオンの活量であり・Kは

-3-

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H+ iガラス)+M阪鰍);⇒M+(ガラス)+H卜(溶液) 一・・・・・… @一・『  (2.3 )

の置換平衡にお’けるイオン交換平衡定数で,次式で示されるものである。

       ・藷・・H・    K=                                                 ・・・・・・・・・・… 。・ ( 2.4)

       ・M…蓋・

ここで,・長㍉やはそれぞれガラ噸ゲル層中の水素及びアルカリ金属イオン活量である。

 1957年目ise皿man 6)らはNa 20-A}203-SiO2系のガラスについて,その組成比を系統的に変えて電

極膜を作成し,一方、2種の1価陽イオン1+,J+を選んで溶液中の一方のイオンの活量を一定に保った

まま他方のイオンの活量を変化させ,それぞれの電極膜電位Eを測定すると・Eとaドajとの関係は

    ・一・…t÷・〔・、客+(Kff・・、)塩〕・  ・…一…・・…

縦うことを明らかにした・ここで・Kπ匹nはかラ・と溶液中の1価陽イオ・1㌔J÷との組み合わ

せで決まる経験的定数である。ただし,nは水素イオンと他の1価陽イオンとの組み合わせではほぼ1と

なる。又,Sio2を50%に保ったままNa20とAI203との組成比を変えたときのガラス膜の水素イオン

に対するアルカリ金属イオンの選択係数K爵1を測定し,アルミニウム含量との関係を求めた囎 その結

果はFig.2-2で示されるように,アルミ

ニウム捻まないときには瑠tは・じ10

以下となり水素イオンに優れた応答性を示

すが,アルミニウムの少量の添加によって

ガラス膜は急激にアルカリ金属イオンに応

答するようになワ,8%前後ではどのアル

カリ金属イオンにも同程度の応答性を有す

るようになる。アルミニウムの含量を更に

増加してゆくとK龍の値はそれほど変化

しないカ・喘1,K鮭やK畠の値1漣

に低下してゆきこれらイオンに対するナト

リウムイオンの選択性は相対的に増加して

ゆくことが明らかとなった。Eisenmanは

更に,ガラス膜のカリウムイオンに対する

他の1価陽イオンの選択係数K留tの実測

1『日

1『6

1『‘

10.7

C5φ

Rb→

   0    5    10    15   20    25

              A亀om5 .’, Al

Fig・2-2 Sele¢ti・ity・f glass electr。des t・H+, Li壷, Na+,

    K+,Rb+, and Cs+as function of aluminum

    c。ntentU

    The abscissa represents atomic per cent AI jn

    91asses of composition

    {Na20)25一・〔Al・0・!・(Sio・}5・・

値をK齢の大きさごとにプ・ッ・した図を作成…れによ・てあ・繊のガ・・の噸Σの値さえ分

かればそのガラスにおける他の任意の1価陽イオンの組み合わせからなるK?flのすべての値を知ること

ができることを示し,又,このK畠1の値はNAS系ガラスの場合唖+/A皇3+のモル組成比によって支配

されることを発見した。この関係はFig2-3で表されるように, Na+/A13+比が十分小さいところで

一4一

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≦1q。

1、0

K凸 SeleこtlΨe 潤。ψ 5el●ui》o

  0.1      ロロ     ロ       むロ    コロロ     ユむむ

          一5610gK踏ロ.mV

                ヰ       ロ ロFig.2-3 Dependence of Na-K 3electlvlty on    Na+ノA13中Iatio in gla5ses of oomposition    {Na20)25一.(Al,。,)、(Sio,}5。1)

                      コ    The vertical line sep団rates K-select且Ψe                          ロ コ    From Na-selective comPOSLtlons・

は一定のナトリウムイオン選択性を示すが,NaツA且3+が1より大きくなるとガラス膜は,

               キ    1・gK畏凱一・・2・㎎器一・2    ・…一……’(且6)

の直欄髄保ちながらカリウムイわ選択性の加一移行して暗聾・÷/A13富力・ある繊以上大き

くなると一定のカリウムイオン選択性を示すようになる。

その後Ei、enm㎜1)鴫)2。)らは2っの溶液がガラス膜齢して接触しているとき・ガラス鶴位はそれ

ぞれの溶液とガラス膜との闇の2つの界面電位及びガラス膜内部の拡散電位の総和

     ・.一 ・ζ +V。+ ・’  ………・・…・(・の    総括電位 溶液(り側界面電位 拡散電位 溶液(”}側界面電位

で表されるとし,次のような理論式を誘導した。

 .まず,界面電位vl, V‘はイオン1, Jを含む溶液相とガラス相の電気化学ポテンシャルが相等しいと

いう条件から次の式(2,8),(2.9)で与えられる。

    ,‘.、。。、t+」塑・。〔。、’堵+(・・、つ垢〕   ……・・…」・(a・・

           F

    ,‘三一。.。、、一一1。〔.。、〃垢+(・・,)渚〕   ・一一…・・a・)

             F

 ここで,。’及び、〃は溶液のと溶液のとにおけるそれぞれのイオン活量であり・Kは式(2・4}で

表され。材。交換平衡離であ・.又,・はかラ・膜のゲル層中における材・灘を活量噸鍬

る係数で膜の性質のみに依存する定数であり,式(2、5)中の経験的定数nに対応するものである。

_方,ゼ蝿流下、こおける騰離V。・こ関しては・N・m・t-Pl・n・kの・ラ・ク斌噸似式かち・

一5一

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㌦一?kll蕩士i鴇・課1綜1;i篭笥一四

が導かれる。ここで,Ui,Ujはそれぞれガラス膜内のイオンの易動度である。式(2.8),(2.9),(2.

10)を式(2.7)に加えると,

        。RT.・、脇(・、/・、)(K・、’)κ

%=醐+下1nし。、〃κ+咽(論、〃、塚〕  ”●’’”幽…(21D

となる。

 溶液(のを電極膜の内側溶液とするとその濃度は一定であるから,ガラス膜電位は結局

㌔一一n撃s・〔・、’κ+(馬/・、)(・・、’㍍〕 一・……・・(・12・

の形で表される。ここで式(2.12)と式(2.5)を比較すれば,

            ロ

Kヤト(苛).K      …’凸一・一(a13・となることが分かり,これが陽イオン選択性ガラス電極の選択係数と呼ばれるものである。

 現在のところ,式(2.12)が陽イオン選択性ガラス電極の一般的な電位式として認識されているもので

あるが,この外にもpHガラス電極のアルカリ誤差機構を対象としたものでは松下2? Lengyel 22)騨

Landqvist助らの界面電位説に基づく理論式や永沢劉らの拡散電位説に基づく理論式が提出されている。

又,ガラス電極電位が式(2.並)には単純に従わないものも観察されており,このため最近ではガラス膜

の固体論を基礎にして電極電位式を導いた鋤ck2¢27)の報告なども見られる.

 陽イオン選択性ガラス電極のイオン選択特性は式(2.13)から分かるようにイオン交換平衡定数とガラ

ス膜内言動度の比との積によって決められるが,Ei5enmanはこのイオン選択特性についてガラス膜の構

造論的立場から次のような考察を加えた。溶液とガラス膜との間のイオン交換平衡をGibbsの自由エネル

ギー変化を考慮に入れて書き表す≧,

  ・÷(ガ・・)+J+(四八J+(ガ…+1+(瀦)+・F、1・・………『…(・1・・

          ロとなる。ここで,4:Fijは反応の標準自由エネルギーで・

  4鴫一一RTI・K           ………・・一(2.・5)

の関係i・よって式(2・12)の材・交換平衡定数K、、の値鹸める・すなわち必F亀の大きさ1・よ・て

電極の選択特性が支配されることが分かる・このJFilを溶液とガラスとにおけるイオンの相互作用の点

から見ると,次のように書くことができる。

  4F島一(瓦・h一τ、・h)+(真・9-F、・9)     ……………(・16)

一6一

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ここで,否hはイオンの水和の部分モ′レ自由エネルギー,面gはイオンとガラスの相互作用の部分モル

自由エネルギーを表す。育hは各々のイオン種について既に実測されているが1,膏gはガラスの化学構造

に依存 している.そこで Eisenmanは,アルカリけい酸ガラスの変換基 SiOJとアルミノけい酸ガラスの

交換基 A10Si~をそれぞれ 王13SiO了 及び rl。AIO/ の原形で置き換えられると仮定 し,これらのモノマ-

イオンと1価陽イオン間のそれぞれの静電エネルギーを算出 した。そして得 られた値 を用いて AF.oiを計

算 した結果から,S10I基はアルカリイオンよりも水素イオンを取 り込みやすく,逆にAIOSiI基はアル

カリイオンのほうを取 り込みやすいことを明らかにした。又,これらの変換基の1価陽イオンに対する親

和力を交換基の陰イオン性電界強度の関数 として表すために SiO~基及びAIOSi-基の有効イオン半径 を0

求め,それぞれ0.9±0.2且及び 1.95±0.15Aの値 を得た.従って,水素イオンに対 して親和力の大き

い SiO~基のほうがアルカリイオンに対 して親和力の大きい AIOSi~基よりも陰イオン性電界強度が大き

いことが分かる。このことは次の麻子モデルからt,理解 される.

7ルカLjけい酸ガラスはFig.2-4(a)のよ

うに 1個のけい素原子に4個の酸素原子 を共

有 している SiO.の四面体を単位 とする網 目

構造 をとるれ 所々に1個のけい素原子 とし

か結合 していない非架橋酸素が負電荷を持っ

て露出 している。この酸素原子にはガラス状

態でアルカリ金属イオンが取 り込まれ,電気

的に中和されている。一方,アルミノけい酸

ガラスではFig.2-4(b)に見られるように,

3価のアルミニウム麻子がけい素原子 と同 じ

(ql (bl

O oW n ・5・"on oAIu-inlu- ◎ sd.U-

Fig・2-4Schematictwo-dimensionalrepresenta-tionsofatomicstnlcblreOfsodaglass(a)andalumhosilicateBlass(b)2)

ように四面体構造 を形成 している.ここでは

結合原子価の不足分の負恵荷は四面体を構成している周 りの4個の酸素原子全体に分散 してお り,このた

め薗荷の集中性が著しく弱まり,Fig.2-4(a)の7ルカL)けい酸ガラスに比べアルカリ金属イオンとの親

和力は小さくなっているb

今,これらガラスを水に浸演すると,ア ルカリけい酸ガラスでは SiO一基の有効イオン半径が小さく陰

イオン性電界強度が大きいため,ガラス膜内のアルカリ金属イオンよりも裸のイオン半径の小さい溶綬早

の水素イオンのほうをはるかに取 り込みやすく,従って,水和エネルギ-がかなり大きいにもかかわらず

水素イオンはガラス膜内のアルカリ金属イオンと置き換わる結果ガラス障表面層は水素でイオン交換され,

水素イオンに応答するようになる。これに対 し,アルミノけい酸ガラスでは A10Si~基 の陰イオン性電

界強度が小さいため水和エネルギ-の大きい水素イオンは溶液中に存在するほうが安定であり,このため

ァルカリ金属イオンはガラス膜内に留まったままでガラス膜はアルカリ金属イオンに選択性を示す。7ル

ヵリ金属をナ トt)ウムとした場合,Fig・212で示した Na'/AL3十のモル組成比によって左右されるKPN誌の値はガラスの構造論から見ればこの A10Si~基の陰イオン性電界強度の有効な大きさに支配されること

になる.すなわち, A.a十/Al3'が 1以下の範囲では AIOSi-基はナ トリウムイオンの数 しかできず.

-7-

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過剰のアルミニウムは網 目構造からはずれ酸化物のような形でガラス内に分散するものと考えられる。従

って,その電界強度の大きさは変化しないからガラス膜はナ トリウムイオンに対 して一定の選択性 しか示

さない。しか し, Na'/A13+が 1以上になるとAIOSi-基 に結合する以外のナ ト・)ウムイオンがガラス

陵内に次第に増加 L,これがAJOSi~基に対するしゃへい効果を示す結果その有効電界強度が低下するO

有効電界強度の低下はナ トリウムイオンよりイオン半径の大きいカリウムイオン-の膜内安定性を増加 し,

電極は次第にカリウムイオン選択性の方向-移っていく。

次に,実際のガラスの交換基半径の実測値はこれまでに得られていないために,交換基と1価腸イオン

間の静電引力に基づいて理論的に算出される棲準自由エネルギーAFIOJEFigL2-5に示すように・ガラス

交換基半径 r~の関数で表 した。

Fig.2-5において各曲線の交点を通る

垂線によって区切 られる領域 1-nからイ

オン間の選択序列を知ることができるが,

これによって5種のアルカリ金属イオン間

の選択序列の組み合わせ を求めると次の 11

通 りのみとなることが判明 したo (可能な

組み合わせの数は51-120)

l Cs>Rb>K>Na>Li

皿 Cs>K>Rb>Na>Li

皿 K>Cs>Rb>Na>LJ

N K>Rb>Cs>Na>Li

∩)

0

」U

0

0

1亡

-

1

つ一

l

+

atouJtt)uN.rJj

V

10 14 1.8 2.2 26

r~■ A

Fig・2-5AFijselectivitiesp】olledasrunctioT10fr~3)

Y K>Rb>rJa>Cs>Li

Yl K>Na>Rb>Cs>Li

Ⅶ Na>K>Rb>Cs>Li

Ⅷ Na>K>Rb>Li>Cs

Ⅸ Na>K>Li>Rb>Cs

X Na>1,j>K>Rb>Cs

n Li>Na>K>Rb>Cs

これらの喜択序列は実験的にもほぼ確謎されている。

Eisenmanは更に,交換基が水和されている場合についても検討を行ったが,その結果は水和の程度が

増 しても選択序列には影響せず,選択係数の大きさのみが減少することが明 らかにされた。

- 8 -

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第3章 陽イオン選択性電極によるナトリウム及びカリウ      ムイオンの直接精密電位差測定

 イオン選択性電極を用い,試料イオン溶液の起電力を測定して直接その濃度を求めることは,電極電位

が測定液のイオン強度や温度の影響を受けること,通常のpHメーターでは読み取り精度が十分でないこ

とや,メーター指針を標準溶液で目盛に正確に合わせても実際の試料溶液を連続的に計測する間に多少の

ドリフトがあり得ることなどの問題点があるため,従来あまり精密な定量には利用されていない。しかし,

ナトリウムやカリウムなどアルカリ金属イオンの定量法としては外に簡単で正確な方法がなく,イオン電

極法による精密定量ができれば甚だ便利である。そこで,電位差計による起電力の一般的な測定条件につ

いて検討を加えた後,市販のナトリウムイオン選択性電極及び1価陽イオン選択性電極を用い,高感度電

位差計によってそれぞれ微量のナトリウム及びカリウムイオン活量の精密測定を試みた。

 K融』が比較的大きく,畷設の小さいCorning NAS 11-18電極はナトリウムイオン選択性電極の

最も標準的なものであり,多方面で実用に供されている。しかしながら,この電極はpHガラス電極に比

べ応答速度がやや遅く,外部からの電界の影響を受けやすいなどの障害があった。このため最近になって,

ガラス組成比は公表されていないが,多分MS 11-18に近似のものとされ,かつ応答速度の改善され

た電極がOrion社から開発された。この新しい電極Orion 94-11Aは微量定量のような電極電位の読み

取り精度の高い分析を能率的に処理するには特に好都合と思われる。

 一方,カリウムイオンに対して最も大きな選択性を示すComing NAS 27-4ガラスは1価陽イオン

選択性電極の素材として代表的なものであり,そのガラス組成はSio267 mol%,N勉027 m。1%,

Al、Q、3m・1%の外1・Z・03・・1%が加わ・たもので・ナトリウムイオン選択性電極よ畷ラス表面

の水和層が深部にまで達しており,カリウムのイオン交換平衡が容易であるため応答速度が大きく,電極

電位も安定であると言われている。

 本章ではOdon社の迅速応答性ナトリウムイオン選択性電極及びCorning社の1下町イオン選択性NAS

27-4電極の動作特性について検討を行い,電極電位の応答速度,Nernst応答の直線域・再現性など

の実態から微量分析に適した濃度10-3-10一lM領域における測定条件を設定したことについて述べる。

3.1 電位差測定の際の問題点

3.1.1 電位差計読み取り誤差と濃度誤差関数

 陽イオン選択性電極のNernst応答の直線域における電極電位Eは測定液の金属イオン活量をaM+とす

れば次式で表される。

          RT    Eニ・…t+一司・配          ・一・・……・(3・1)           F

一9一

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変形すると,

                F    lna痘・一(E一・・n・t)一         ………・一(32)                RT

 これから相対濃度誤差daM+/~+と電位差計の読み取り誤差dEとの関係を導くためEについて微分

すると,

    ⊥.三宝一」:_             _____(a3)

    aM+  dE  RT

 式(3・3)より・誤差関数(daM+/aM+)/dEは一定値:となり,比色計の読み取り誤差の理論として知

られるTwyman-Lothia皿の法則とは相違して,一定温度においては電位差計の読み取り誤差は金属イオ

ン濃度に関係なく同じ相対濃度誤差を与えることになる。このことはNernst応答範囲のいかなる濃度で

測定しても定量精度が同じであることを意味するが,電極電位の応答速度を考慮に入れれば測定イオン濃

度はなるべく高いところのほうが電位が早く安定する点で好ましい。

3.1.2 総括イオン強度の変化によるイオン活量の変動

 測定液の目的イオン濃度及びこれと共存するイオン濃度の変化は総括イオン強度を変化させ,同時に目

的イオンの活量を変化させる。

 イオン強度μと活量係数γiとの間には,比較的希薄な溶瓶に対しDebye-H恥ke1によって導かれた次

の近似式が成立する。

         Azlσ    1nr…=一                   …………・・邑(3.4)         1+Baπ

係数A,Bは溶液の繍と温度との騰で,2げCの水溶液ではそれぞれL1642(m。r掩8%),

α3286・1・8 i㎝一’,・・「%,4%)の徹とり,Z、は材・の電荷、・iま水和イオ・の有効直径を

表す。                                   ・ ’・

 式(3.4)をμについて微牙すると,

    1d7、   Azl   三π=一・σ・・+師・・    “レか”一’…(351

となる・これから・a・dμdアi/riの値が決まればμの値を求めることができる。ナトリウムの水和イオ

ンの有効醗は35凡力艸ムでは盛とiまぽ同懲であるから,。の値を3.5且とL測定イオ職

度(o川max)の変化に伴なう総括イオン強度の変化dμ及び活量係数の許容変化率d7i/7iをTable 3

-1に掲げる値に規制したとき,測定液のイオン強度をどの位にしておくべきかを著者は式(3.5)から

求めた。

 一般的に,総括イオン強度が大きいほど測定イオン濃度の変動による活量係数の変化は小さくなるが,

塩類濃度をあまり高くすることは測定するイオンの活量を不必要に下げて計測することになり,好ましく

一10一

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Table3-1 Appropriateionicstrengthnecessaryintestsolutionfor

tolerable%changesofactivitycoefficient,0・3%and0.5%

ChangeofionicStrengthderivedfrom

max. con°.oftestsolution,dPNecessaryionicstrength,Lt

0.001(M)0.002 〝

0.005 〝

0.010 〝

l

つ】5

0

0

0

nU1

0

0

0

0

0

0

nV0

0.02(M)0.06 -I

0.19 〝

0.41 ''

1

3

0

3

0

0

1

つム

nu(U

0

0

I:dT/T=0.3%;ll:dTh = 0.5%

ない。ナ トリウムや力.Jウム量数mgの微量定量においては測定液量の関係から計測は通常 10~3-10~4M

濃度の範囲で行うのが便利であるが,この範囲ではナトリウム又はカI)ウムイオン濃度のみの変化によるイ

ォン強度の射 ヒは最大0.001Mであり,測定対象以外のイオン強度の変化をこれと同程度とした場合,絶

括イオン強度の変化は0.002Mとなる。従って,活量係数の変化を0・37To以下に抑えるためには・Table

3_lからイオン強度0.06Mを必要とすることが分かる。

3.1.3 温度変化によるNernstこう配の変動

測定椎の温度変化による金属イオン濃度の変化,すなわち dT/Tと daM+/ahl十の関係を導 くため・

電極の内部再植の金属イオン活量 ahl・'を考慮に入れて式 (3・1)k書き改めると一・.a

RT ahl'E-conSt+- In -

F a√′

式 (3.6)をTについて微分すると,

空 = ヱ .n聖 亡dT F ah4+/

式 (3.7)を式 (3.3)に代入すると,

dT 1 也a山十 1 damヰ

T ln(ahl./aM十I) aM十 2・303 1喝 (aM・/ahl十′) ahl十

- l l -

・・.・.・・-I.-・・(3.6)

(3.7)

・・・・=・= (3.a)

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電極の内部には通常 10~lMの金属イオン溶液が使用されているからaM十′-10~lとし,金属イオンの

それぞれの計測浪度において,測定値の相対誤差を0,370又は0.570以下に抑えるた糾 こ必要な測定硬の

温度変化の許容率を式 (3.8)から算出し これを常温付近の温度に換算 してTable3-2に示 Lた.

Table3-2 Temperaturechangeallowedfortolerable% errorsof

concentration,0.3% and0.5%,duringmeasurementof

electrodepotential atroom temperature

CorlC_Oftestcomponent,aN+ AllowanceoftemperattlTeChange,dT

~ヽノM〃

′_Iつーrr)4

Lh

l

l

∧U

0

0

0

HUF::

つ一

3

4

Lr)

1

0

0

0

0

1

1

1

1

0.38(oC)0.19 ''

0.13 JJ

0.10 J′

4

2

1

′b

∠U3

2

1

0

人U0

0

Ⅰ:dan+/aN+=0.3%;Il:dan+/a♪「≡0.5%

これから,10I3-10~4Mの範囲においては測定値の相対誤差を0.3発償 度に抑えるためには温度変

化は約±o・15℃ 以内 としなければならないことになる。従って,微量分析においてはこの程度の精度の

恒温重又は恒温水そうを用い,一連の分析をなるべく短時間内に終了することが望ましい。

3・2 0rion 94-11A電極によるナ トリウムイオンの微量定量

3.2.1 定量操作法

ナ トリウムイオンを含む水溶性試料を,最終濃度が 10~3-10¶lMとなるようにピペットで正確にrlOO

ml容量のメスフラスコに量 り取 り・pH818・ イオン強質0・2Mのト.)ス緩衝液 10m)を正確に加えた復

水で操線まで満たすO一九 指示電極及び参照電極の先端を10~1M の塩化ナ トリウムを含む トリス緩衝

液で洗った後ティッシュペーJト で軽くふき取る。試料液を100mlのビーカーに移 し,これに電極を浸 し,

ビーカーを揺 り動か して試料液を電極に良くなじませ,5分後電極電位を読み取る。別に,同様の操作に

より塩化ナ トリウム標準溶液を用いて作成 Lた測定電位対対数濃度の検量線から試料中のナ ト.}ウムの畳

を求める。

3.2.2 定量条件の検討

A)ナ トリウムイオン浪度とNernst応答 ナ トリウムイオン濃度と応答電位の関係を調べるため,

塩化ナ トリウムの10~1-10J5M範囲の水溶液を= ス緩衝綾を用いて pJigに調整 して電極電位をAIJ定

した。その結果をFig.3-1 に示す。

-12-

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 Fig.3-1において,黒丸は濃度と電位から得られ

たプロットを示し,実線はそれらをっつったもので

ある。又白丸のプロΨトは黒丸におけるナトリウム

イオン濃度をDebye一派ckelの式に従って活量に換

算したものであり,破線は測定時の液温における

Nernstこう配(58.3 mV/pNa,21.5℃)を高濃度域

の白:丸に最近似させて引いたものである。これによ

ると,この電極はpH 9において10-4 M付近まで

はNernstこう配に従うが,これ以下の濃度では若

干ずれてくることが認められる。これは水素イオン

への重複応答が現われはじめたためと考えられる。

 B)選択係数の測定  イオン選択性電極が1価

の目的イオンゴ以外のイオン」+に応答する強さは

式(2.12)及び式(2.13)より,

    ・一÷・(・、+・r11 a、)

             ・・・・… 一・・・…  ( 3.9)

のように表される。

選択係数岬を求めるために賦(39)におい・・

をそれぞれ測定し,その差から求めるのが通常である。

一150

蓋一100

 一50

+50

     1   2   凄   4   5           P}轄

Fi鼻3-1 Electr。de p。ten宅圭盆s。f露磯e¢宅呈・e

    glaSs electr。de(0貞・nタ4-11A)v&Nゴ

    concentrations (solid cilC正e} an“ ca1巴換一

    1ated act至Ψities (open cilde)

    The me旦surements were ca肛ied out

                 む    with NaCI solutions at pH 9,21.5 C.

1+又は」+のみを含む同一濃度溶液の電極電位.

    Er馬一丁h誌一÷Kllt  一…一(鋤

ここで,E、,Ejはそれぞれ1+, J+のみを含む溶液の旧師位である・

 しかし,実際には著しく応答性の弱いイオンのみを含む溶液からは正しい電位が得られにくいことがあ

り鋤2『1又,混合溶液甲で測定した値のほうが相互作用の実際の状況を良く反映して信頼性が高いと思わ

れる。

 すなわち,式(3.9)においてaj=0の溶液を作り・その時の電極電位を式(3・11)のようにE’とする

と 、’一、.。,t+里1呵       …,・・……」(3・・)

          F

式(a9)と式御・)から次式により・K号ltが求められる・

Kぞ1、一

  (B-E’)F・・PRT }・∫・・{

aj

輔う嚇辱’…争”…@(.3.12)

一13一

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そこで,ナ トリウムイオンのみを含む溶液及びこれ と同濃度のナ トリウムイオンに水素, リチウム,刀

リウム,7ンモニウム各イオンを同時に含む混合溶液を調製 し,電極 を浸し,電位読み取 りのための待ち

時間を30分 として電極屯位を測定 した。 モル濃度を活量係数によって活聾に換算 し,式 (3.12)に従っ

て求めた選択係数 をTable3-3に示す。

Table3-3 Selectivity constantsofli+?Li+,K+,andNH4+[oNa+uslngOrion94-llA electrode

CollC.Ofcabon(M) Selectivityconstant

+2:a+E

+ZdLJ

l

つ山

つ.)

l

つJ

1

5

1

l

l

I

I

I

I

l

i

nU(U

0

0

0

0

nU0

1

1

I

1

11

1

1

KEoatH - 13

KLoatu -4,7X 10-3

KBDatK - 1・4X 10-3

KBoatNH。- 1・lX 10~4

これによると,水素イオンはナ トリウムイオンに対 L約 10倍強 く応答 L, 水素イオンの影響を0・1To

以下に抑えるためにはナ トリウムイオン濃度の pNa値より4単位以上高い pH値 で測定 しなければなら

ないことが判明 した。又カ リウム及びアンモニウムイオンの選択係数はそれぞれ 10~3,lot"程度であり・

試画溶液中これらイオンがナ トリウムイオン溝度を超えなければほとんど影響を与えないことも分か-,たD

なお,Table3-3の選択係数から判断すると本章の実験に使用した新 しいナ トリウムイオン選択性ガラス

電擾0rion9卜 11Aは NASlト 18のそれに比較的掛 以LでおりiI,) ガラス組成が選択係数の主決定要

因であるとすれば,この新 しいナ トリウムイオン選択性電極のガラス組成は公表されていないが N̂ S ll

-18 からさほど隔たった組成のものではないと推定される。

C)電極電位の応答速度と再現性 イオン選択性電極 を目的イオンを含む溶掛 こ浸 したとき,電極が

前に置かれていた状態の履歴を早 く解消 して,短時間内に目的イオン濃度と電気化学的な平衡に達 し安定

電位を示すことは,電位の測定値の再現性を良くし,特に微量分析のように迅速な精密計測を必要とする

場合には重要な要素である。しかし,電極の応答速度30)31)に関してはこれまであまり的確な評価掛 こ基

づいた報告がなされていないb

最近,電位差滴定の電位プロ・ソトを直線化するために使用されるGran'splot用紙を用い,これに若干

の修正 を加えた新 しい経験的な応答速度の評価法32)が提案された。二g)GraJl・splot用鰍 ま縦軸にAntilog

IA/(RT/F)1目盛で電位 EmVが,横軸には耐 瞳 Vmlが刻まれており・電位差滴定7ot"Jト曲線が当

量点までとそれ以後 とでそれぞれ直線化され,2直線の交点を当畢点とできるものである。この用紙 を用

い横軸を時間軸に換え,かつ無限時間を一点に収れんさせるために1/l目盛 としたところ,電極を測定

一・一14-

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液に浸した後の時間tと電極電位Eは図上で直線に近い関係が得られることが見いだされた。

 本章の実験に使用したOrion 94-11A電極を

10-2M塩化ナトリウム溶液に15分間浸してお

いた後ティッシュペーパーで軽くふき取り,直ち

に10-3廻塩化ナトリウム溶液に浸し,ビーカー

を揺り動かして電極を溶液に良くなじませ,1分

後からの各時間における電位を読み取り,RTI F

を58mVとして作図した。 FiE.3-2にその結果

を示す。

 これによると,1分以外の各プロットはかなり

良い直線関係を示している。この直線のこう配の

大きさが応答速度のパラメータであり,こう配の

小さいほど応答速度が大きいことを表し,又,こ

の図においてt二。。に外そうしたE。。の値が

平衡電位を表している。市販されている他の2種

のナトリウムイオン選択性ガラス電極を,比較の

ためFig.3-2と同じ条件で実験を行ったところ,

Fig,3-3破線及び鎖線のようになった。ただし,

ここではそれぞれのE。。の読みを1点に集めるよ

う作図し応答速度の相互比較を容易にした。

 これら3本の電極はそれぞれ応答速度にかなり

の相違があるが,Fig.3-3の実線で示したよう

に,Orion 94-11A電極が比較的大きい応答速

度を持っていることが量的に証明された。更に,

異なった濃度における応答を知るために94-11A

電極を用いて測定液の10倍高い濃度の溶液に15

分間浸した後,電極を引き上げ水洗後直ちに10一工

~10-5Mの塩化ナトリウム溶液に浸して同様の

実験を行い作図した。その結果をFig.3-4に示

す。

Fig 3_4に‡5いては10-2-10一5 Mの範囲で

大体濃度の順位に速い応答性を示しているが,

極を測定液に浸す前に毎回水で洗浄を行ってお喚,

過程を入れると,

宅一4巳

ε

 一46

雷44

   0 10 54 3   2           1

           Tlme, min

Fiε.3-2 Time response of Orion 94-11A    e且ectrode in 10-3 M NaCl solutiOn

3

喜、

4

 o  oo lO 54 3   2           1

         Timo minFig.3-3 Timc r¢sp・nse。f Orion 94-11A

                       e且ectrode(一)v£. conΨentional Na-

    selective g!ass e且ectrodes(一一一,一・一)

    in lO-3 M NaCl solut圭on

                    10-1Mでは逆に10-4 Mより悪くなっている。これは電

                      1Mでの前処理と10-1 Mでの測定の中間に水の洗浄

        ガラス電極表面の水和層におけるナトリウムイオンのイオン交換平衡が極端に変化し短

時間に追従しにくくなるためではないかと思われる。このことは大なり小なり他の条件の測定においても

一15一

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ロム

£

2

  Oo31054ヨ2  1

          Timo, min

Fi8.3-4 Tim…sp。・se・f O・i・・94-11A             キ    electlode at variou8 Na  concentra一

    セ む ヨ

    一pNa 1;一一一pNa 2;一一pNa 3;

    一、・一 pNa 4;一・一一 pNa 5

言4雇

2

0   加  10  54  3    2               1

           Timr min

Fig.3-5 Time respons亭aftcr washing elect-

    rode with water having same Na+

    concentratlolls as snmp!e solutions

    -pNa I;…pNa 2;一一pNa 3;    _._ pNa 4;一_一 pNa 5

起っているはずである。そこで著者は,水で洗浄を行う代わりに測定液と同濃度の塩化ナトリウム溶液で

沈浄を行った。結果はFig.3-5に示すように,10-4 Mまでは電極の応答速度が著しく改善された。微

量定量においては試料量及び測定液量の扱いやすさの点から,測定液のナトリウムイオン濃度は10-3-

1期目の範囲となるので,あらかじめ,H8.aイオン搬0.。6Mのトリス緩衝灘麗日えた10-4M塩

化ナトリウム溶液を用い,これを電極洗浄液とすればFig.3-5と同様又はこれに近い応答速度特性が得

られる。

 次に10-3-10-4Mの範囲の応答電位の再現性を調べるため,10-3Mと10-4 Mの塩化ナトリウム溶

液を用いて3.2.2の定量操作に従って,それぞれの同一溶液を10回ずつ交互に繰り返し測定したところ,

測定値のばらつきとしてそれぞれ標準偏差σ=0.001(pNa)及びσ=0.002(pNa)を得た。又,10回

目測定範囲内では電極電位のドリフトは観察されなかった。

 又,このOrion 94-11A電極はガラス感応膜部分がプラスチック円筒の下端に支持されており,円筒

自身が静電シールドを施されているため,外部からの静電妨害がまったくなく,合繊衣服その他の帯電物

体の妨害を受けない。ガラス電極と超精密pHメーター作動時の指針のわずかなふらつきが主として外部

的な静電妨害であることを考えると,この電極の構造も測定精度に大きく寄与していると言い得る。

 なお,測定液をかき混ぜた時磁気かき混ぜ機自身の発熱の影響を受けやすく,又,かき混ぜ速度が異な

ると電極電位がわずかに不安定となるので,高精度の計測には静止液中で測定するほうが良い結果が得ら

れる。

 D)検量線  塩化ナトリウム標準溶液を用い,10-3~10-4Mの範囲で濃度を変え32.2の定量操作

に従って電極電位を計測し,これらのプ・ットから検量線を作成するとFig 3-6の実線の結果が得られ

た。これによると,10-3M溶液で電位差計のメーター指度を3.0000に合わせれば, pNa計算値とメ

ーター指示値は良く一致するが,それ以下の濃度では破線で示されたNernstこう配からわずかにずれて

くることが認められる。しかし,高い精度の計測では検量線は極めて大きく図示しなければならないので

一16一

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取り扱いに不便であり,直線化した計算式によ

って求めるほうが便利である。そこで,10-3

-10『lMの全範囲をpNaの計算値と測定値に

ついて最小二乗法を用いて直線回帰し,回帰直

線からのばらつきを求めると,不偏分散の平方

根としてO.002〔pNa)が得られた。これをナ

トリウムイオンの濃度に対する相対誤差に換算

すると0.43%となり,この回帰直線を検量線と

してもかなりの精度で測定が可能である。もっ

と厳密にはpNa 3.O~3.5及びpNa 3.5-4. O

に分けて直線回帰し,それぞれを検量線として

用いれば良い。

40

.ゼ昌

§

;3β

3.4

ヨ2

 30   3{⊃    3.2    3.4    3ご6    3.B    ム。

           pNロ 〔:oにd.

               キ            ロFig,3-6 CaHbra廿on curv¢ for Na conce皿廿atlon

    (Or韮on 94-lIA)

    ・一一Experimental cロrve;一一一艮emstia皿slOpo

3.3 Corning NAS 27-4電極によるカリウムイオンの微量定量

3.3.1 定量操作法

 カリウムイオン濃度が10-3~10司Mの範囲に入るようにカリウムイオン数㎎を含む水溶性試料をピ

ペットで正確に100mlのメスフラスコに量り敢り, pH 8,イオン強度0.6Mのトリス緩衝液10皿1を加え,

水で全量玉00mlとする。これを100皿1の容量のビーカーに移し替え,指示電極と参照電極をそう入し,ビ

ーカーを揺り動かして測定液を数秒間電極になじませてから,更に,正確に10分後その起電力を測定す

る。一方,あらかじめ塩化カリウム又はフタル酸水素カリウムで求めた検量線により,カリウムイオン濃

度を求める。

3.3.2 定量条件の検討

 .A)カリウムイオン濃度と電位こう配  カリウムイオンの応答電位を縦軸に1カリウムイオン濃度の

pK.l(二p〔K+〕)を横軸にとって描いた電位こう配をFig.3-7に示す.

 Fig.3一・7において,1酔泣イオン選択性電極はユ〇一4M付近まではほぼNemstこう配に従うが,10-5

Mではかなりはずれてくることが認められた。

 B)選択係数の測定  本章の実験に使用した1価陽イオン選択性電極のカリウムイオンに対する水素,

ナトリウム,アンモニウム各イオンの選択係数を求めるため,それぞれの0.1M溶液の電位を測定し,式

(3.10)の簡便法により算出した。その結果をTable 3-4に示す。

 これから,カリウムイオン濃度の測定の際pH値がカリウムイオン濃度のpK値より3単位以上大きけ

れば良く,例えばカリウムイオン濃度を10-4Mまで測定しようとするならばpH 7以上とすれば良いこ

とが推測できる。

一17一一

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 又,本実験データから試料溶液中に含まれるナト

リウム,アンモニウム各イオン濃度のpN自,pNH4値

はそれぞれカリウムイオン濃度のpK値より2単位

以上高くないと定量が妨害されることになる。

 C)電極電位の応答速度と再現性  塩化カリウ

ムの10-1削10-5Mまでの水溶液をp}{8に調整

して,測定液に1時間電極を浸し,かき混ぜないで

起電力の時間的経過を記録したものをFig,3-8に

示す。

 10-4M以上の濃度では5-10分でほぼ一定と

                   一5なり,以後1時間安定電位が得られた。10                    Mに

おいては1時間経過してもなお安定電位は得られな

かった。

 次に,10-3-10-4Mの範囲の応答電位の再現

一200

一9 |150茎

£

 一博。

一50

     1    2   3   4    5

            pK

Fig.3-7 Elect・。d…sp。…。f m。n・valent

    c旦tion e上ectrode(Coming NAS 27-4)           キ            ロ    as function of K  conccnlranon

Table 3-4 Selectivity constants of 皿onovalent cation

electrode(Coming NAS 27-4)for H+, N…f,

and NH4+relative to K+

K謡

K譲、

K擶H、

1.5

1、5XIO『1

4.7 X lOF且

性を調べるため,10-3Mと10-4Mの

塩化カリウム溶液を交互に12分ごとに

測定し,その経過を追跡した。Fig.3-9

は10-3M及び10-4Mの液の最初のpK

測定値をゼロとし,その後の測定値の変

動のプロットである。

Fig.3-9のデータから・10-3,1。一4

Mにおける測定値のばらつきは,それぞれ

標準偏差としてσ=0,001(pK)及び

0.003(pK)となり,低濃度側でのばら

つきが比較として大きくなっているか,

 一214

_・一 Q06ε

岳一172歪

 一164

 -115

m

1】

一107

i

   o  .  .      30           60

              Tlmo mh

Fig.3-8 Time track晃of巳1ectrode potential騙at djffe爬nt

    concenlra吐ions of KCI solロUons(Corning NAS    27-4)1、1r3 M;II・104 M;IIL lr5 M

_1息一

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式 (3.3)より理解されるように pK変

化に対応するカリウム畳も小さくなって

いるので絶対誤差は大きくなっているわ

けではない。

測定のための待ち時間は 10分間 とし

たが,待ち時間を長 くすれば,必ずしも

より安定電位が得られるとは限らないの

で,むLろ温度変化などの電極電位に及

ぼす影響 を考慮に入れると測定はなるべ

く短時間で終わるほうが望ましいb著者

の経験からは10分間の待ち時間で十分

な再現性が得られた。

又,本章の実験に使用した Corning

NAS 27-4竜極のように,ガラス感応

膜が高絶縁性のガラス筒の下端に融着さ

れている標準的な形態のガラス電極では

一般に必ず しも静電シール ドが十分でな

く,Orion 94-11A の構造と異なり再

現性を向上させるためには外部からの電

界の影響 を受けないように測定液や電極

を金網又はアルミニウム板で静電 しゃ-

いすることが必要である.

n)検量線 10~3M 塩化カリウム

標準溶液によって屯位差計の pK指度を

3.0000に合わせ, 10~3-10-4M の間

を階段的に変化させた測定碑を使用して

pK を測定 し 測定値 と理論浪産の間に

・8010

→0加 5

5 0

-ODO5

-OD18.0010

・OOPS

D

-0005

-00100 60 120 180

TiTTle.mirL

Fig.3-9AltemativeTneaSurementSOfresponsepoten-tialsa110-3 M andlo一lM KCIsolutions

usinBCornlngNAS27-4electrodel:10-3M;ll:1014 M

Ll.0

3月_●1⊂1⊃ロ4),E3,6(1

34

32

30

3.0 3.2 3J. 3.6 38

pK ⊂qltd

4.0

Fig・3-10Calibfalioncurv+eofpK readingaBalnStactualconcentrationorX十

一 originalcurve;一一一一Linca.itycorrection

Fig.3-10の実線部分に示される関係が得られた。

これによると.検亀線は Nemstこう配よりわずかにゆるやかであり. pK 3.0-3・7 の範囲では良い

直線性を示していることが分かる。しかし, pK 3.7-4.0の間ではわずかにわん曲しているのが常めら

れたDこのわん曲の程度は大きなものではないので pK 3.0- 4.0 の全範囲を直線回帰 しても良いが.ち

っと厳密には曲線として扱 うか, pK 3.0-4.0の間を2本の検量線で直線近似しても良い。

しかし,このわん曲の状態はカリウムイオンのき応答に対する副成分の応答のオ-′ト ラップ現象に似

ており式 (3.1)の概念を利用すれば.

PK reading ニ ー logt〔Kつ 十 両

-19-

・.・・・---・・L・l.'・'・(3.13)

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によってFig.3-10の実線が衷されている。従って. pKの読みから求められるカリウムイオンの見掛け

の濃度は 〔Kつ + aであり.aを差 し引 くことによって Nernstこう配に近づき真のカLJウムイオン濃度

が求められるのではないか七考えられるDそこで,式 (3,13)のaに0-0.2×10~̀tの範囲でいろいろ

の値を代入 し各々の場合についてFig.3-10のプロットを修正 し.式 (3,13)の左辺を縦軸 y・右辺を横

軸 xとして最′J、二乗藩を用いて修正曲線を回帰分析 L.回帰直線からの70ロットのばらつきによって直線

性を評価 した。力')ウムイオンの計算量のモル濃度に対 し野単位で表 したばらつきを不偏分散の平方根

√可㌻言 として求め, aとの関係をEg]示するとFig.3-11のようになった。

Fig・3-11からI Cf-0・08×10-4 - 0・10

xlO~4のとき√再=~は極小値をとり,Fig.

3-10の実線部分の検量線は最 も良い直線に修

正できることになる。例えば. ct-0_08×10~4

として √両 二言 を求めると0.3070とな りa-0

の場合 よりばらつきは1/3になる。

このαの値の最適値は検量線を作成する場合

のカリウムイオンの濃度範臥 こよって異なり.

又,電極の個体差があ り得ると考えられるが,

同じ電極 を用い 10r3-10~1Mの凍度における

aの値 を0.08×lord_0,10x0,10-伍範囲の

ある値 を選び固定すれば,かなりばらつきの少

ない計測が可能である。例えば αの値を0.08X

IO~4としてFig.3-10の実線で示された検量

10

08

瞳 06

04

02

Yo o01. 00白 012 016 0.20

tl.XIO-i

Figl3-llStandard deviationderived From lineiLTregTeSSionasrunetion8rCOrrCCtionvalueαinEq.(3-131

線を式 (3.13)によって修正するとFig.3-10

の破線で示されたように直線化された。

又.この破線で示された直線のこう配は1より若干大きくなってお り. Nernstの理論 こう配を正確に

示してはいないが, 10I3M 及び 10lJIM 濃度のカlJウム標準溶液を用い式 (3.13)の 〔K+〕+ a の値

に直 して電位差計のメーター精度を合わせれば,メーター指度から検量線 を用いずに直接その曲度を知る

ことも可能である。

一20-

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第 4葦 NAS ll-18電極を終点指示に用いる銀滴定

ナ トリウムイオン選択性ガラス電極の銀イオンに対する応答はMattock33)らによって兄いだされ.その

後 Eisenmanl)によりその応答特性の検討がアルミノけい酸ガラス全般について行われた。その結果,水

素イオンに対する銀イオンの選択係数 K呂.041gの値では NASll-18は103であ。,最適 の値 を示す

NAS 28.8-1g・1の 105に比べやや小さいが電位の安定性の良い点で銀イオン濃度の測定に適 している

ことが認められた。 Eisenmanは又アルミ′けい酸ガラスの中でも陰イオン性電界強度の高いガラスが大

きな銀イオン選択性を示し,これは銀イオンが大きい分極率を有 しているからであるとしている。すなわ

ち,陰イオン性電界強度の低いガラス交換基では分極能が小さいため銀イオンの分極はほとんど無視でき

るが・陰イオン性電界強度が高 くなり交換基の分極能が大きくなると. Iaアルカリ族の2倍のイオン化

電位を持つ銀イオンでは分極性が増大し.交換基との相互作用は共有結合性を帯びてくる。この結果,衣

換基と銀イオン間の相互作用のエネルギーは銀イオンが分極 しないときに比べ増加する。従って.イオン

間の静電引力に基づいて理論的に算出された標準自由エネルギーAFiOlの借から予測されるよ。も電極は

大きな銀イオン選択性を示すことになる。

ナ トリウムイオン選択性電極が銀イオンに対して優れた応答性を示すことから.これを-pゲンやシア

ンイオンなどの銀滴定の際の指示電極に応用 L得ることが容易に想起 される。しかしながら.従来銀イオ

ンによる微量電位差滴定では銀線電極3J)~37もミ主として用いられており.ナ トリウムイオン選択性電極の

利用は常塵分析の範囲内でなされた報告38)~do)がわずかに見られる程度にすぎない。しかもこれ らの報告

では滴定精度に関する詳細な検討まではなされていない。又.銀線電極による滴定では銀線の表面にハロ

ゲン化銀が付着 して銀イオン応答の感度や終点の再現性が轟 くなりやすい。従って,特に微量分析のよう

に希蒋な滴定液を使用し再現性のある終点を得るためには.電極面をときどき希硝酸に浸 して表面の汚れ

を離 し.良く水洗 して常にきれいな状態に保っておかなければならない。-方,ガラス電極ではこのよう

な問題がないことからこれを指示電極としてハロゲンイオンなどの微量銀滴定に応用すれば便利と思われ

る。

著者はまず.微量塩素イオンを含む試料液について自動滴定を検討 したところ.水溶液中では予想 した

S字形の滴定曲線が得られたが,有機溶媒中においては滴定曲線は当量点近傍で鋭敏に折れ曲がり.極め

て再現性のある滴定終点が得られることが判明した。後者の滴定曲線は電極の水素及び銀イオン-の複合

応答によるもので,有機軒媒中では塩化銀の溶解度積が小さく,このため当量点手前までは電極電位は水

素イオン濃度に支配されてある値に保持されているが.当量点近傍にくると遊離の銀イオンの発現によっ

て喪然銀イオン-の強い応答が現れることで説明される。又.シアンイオンの滴定に用いたところ,ジシ

アノ銀錯イオンの生成反応による第 1当量点で類似の滴定曲線のパターンが観察された。

本章でははじめに複合応答 をするイオン選択性電極の電位差滴定曲線のパターンについて考察 し.応用

例 としてハロゲンイオン及びシ7ンイオンの微量滴定法について述べる。

-21-

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4.1 複合応答 をす るイオ ン選択性電極の滴定曲線 と終点誤差

イオン選択性電極を用いて滴定を行 うときに滴定反応に関与せず.かつ電極に選択性を持つ共存イオン

の浪度によって滴定曲線のパターンがどのように変化してゆくかを考えてみる。

イオン種Aをイオン種 Tで滴定して1:1の沈殿が生成される場合.すなわち

A十で≒ AT l

の化学平衡が成立っとき・滴定進行甲のAの濃度 CA又はTの強度 CT は次式に従ってそれぞれ変化して

ゆく。なお,イオンの電荷は便宜上省略 したD

(cA)2- cA(

(cT J2+cT(

V呈C三- v TC言

vl+ v T

VヱCニー VTC言

V;+VT

ト Ks。=0

ト Ks。ニ 0 (4.2)

ここでIC三・V三 はそれぞれ蘭定前の試料液のAの粒度及びその液量・C;,VTは滴定液のTの濃度

及びその蘭加量であるC又 KspはATの溶解度積で・

Kらp- CA・CT(4.3)

で表される。

一方,イオン選択性電極がイオン種 1及びJに応答するとき,混合溶綬中で示す電極電位 Bは式 (3.9)

より-,

RT

E-cOnSt'T ln(Ci+K7,oLcj) ・・・-・・・・・・-~- (4-4'

ここで・ C・,Cjはそれぞれ 1及びJの酸度7KF?Lは1に対するJの選択係数を意味 し,又 1,J のL I活量係数は等 しくかつ一定 としたO

イオン竜 LがA又はTであるとき滴定曲線は式 (4.4)で示される。そこでCarr41)は滴定曲線の変曲点

を終点としたときの理論当量点からのずれ,すなわち静定誤差を次のようにLて求めた。聴聞電位差及び

轄tciは滴定中一定 と仮定し,変曲点の条件から式 (4・4)を滴定率 VTCT/V:;C三で2回微分 Lて 0

と置 き,これに式 (4・1)又は式 (4・2)を代入し.これからKsp・hlPPLcJの値 をいろいろに定めたときの1j

滴定誤差を算出した。その中からイオン種Tが電極に応答する場合のro滴定誤差の一部を技すいして

Table4-1 に掲げる。

ただし,表中の P・bはそれぞれ p-Ks。/(Cユ)2, b-K?pIci/C三で表され,これらは与えられたI】

試料溶液の初渡度に対する生成物の溶解産穣及び電極の副応答の程度のパラメ-ターである。滴定誤差が

負となっているのは変曲点が当量点より後にくることを意味している。なお Table4-1の値は滴定液による

試料碑の希釈 を無視して計算 したものである。又,特に l) p-10~3,b-0, A) β-10M3,b-10-,2

-22-

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Table 4-1 Percentage analytical e1丁or in Precipitation titrations using

ion selective electrodes responsive to titrant41)

10-1 10-2 1o曽3 0

10”1

10-2

ユ0-3

10-4

10-5

10-6

10■7

10 8

10一9

一1321-8.64

-4、86

-2.49

-1.21

-G57-0,27

-G.13

・一 Z.06

一1.88

-1.69

-L32-0.86

-0.48

-0.25

-0.12

一α06

・一 Z.03

一〇.20

-O.20

-0.19

-0.17

-O.13

-0.09

-O,05

0

The dat且were computed融suming that d韮u亡ion effbct wa$

negHgible.

β・K、p/(Cゐ2・b・K書otq1C且

          ワm β=0,b=10一の3つの場合について

の滴定曲線をFig.4-1に示した。

 滴定曲線1はβがある値をとり,b二〇の

場合,すなわち滴定液のイ.オン種のみが電極

に応答するときであり,Fig.4-1に見られ

るように滴定曲線は当量点を対称にしてS字

形となり変曲点は当量点と一致するから滴定

誤差は生じない。βを固定してbを大きくす

ると滴定曲線旺のような非対称のS字形とな

り,Table 4-1から滴定誤差が大きくなる

ことが分かる.又bがある値をとり,すなわ

ち試料液中に第2の応答するイオン種が存在

するとき,βすなわち溶解度積を小さくしてゆ

くと滴定誤差は次第に小さくなってゆき,

βをOにする.とFig.4-1の滴定曲線趾に

 o宕。.5

ビ1.o

二1.5

 2.0

 2.5

 3.o

  0    0.2   0.4   0.6   0.8    1    1.2   1.4    1.6

             VTCT’VムC武

Fig.4-1 Computed precipitation titration curves using

    ion se正ectiv¢e正ectrodes responsive to硅trant41)

        ’3,b・0;ll・β・10-3,b・10-2;    1:β=10    聡㍊b量’ゴ;β置穐・1(C且ノ;b=

見られるように電極電位は当量点まで式(4.4)のK71tCjの大きさに支配されているが,当量点でイオ

ン種Aが消費されイオン種Tが過剰となったところではじめて電極はTに応答し電位変化が急激に起こる

ことが分かる.そしてこの場合も変曲点は一致し滴定誤差は解消される。このことから,イオン選択性電

極の摘定曲線のパターンと終点誤差を決定づける要因となるのは,滴定反応に無関係で電極に応答する共

存イオン種の濃度と滴定液のイオン種に対するこの共存イオン種の選択係数との積及び滴定反応によって

一23一

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生成される沈殿の溶解度積の総合作用であることが理解される。

又,滴定されるイオン雇Aが電極に応答するときの滴定誤差は Table4-1の絶対値 と一致するが符号

は正 となり変曲点は当量点より手前にくる。

ca汀42)は更に,

A十で≠AT

の 1:1の錯体を生成する場合の滴定誤差についても求め,Table4-2,Table4-3の値を得た。

Table412 Percentageanalytical errorincomplexometrictitrationusing

ionselectiveelectrodesresporlSivetotitrant42)

rq

3

4

5

′O

E.・・

009

0(U

nU

0

0

0

0

0

1

1

11

1

11

1

4

3

7

1

7

7

つ】′D

1

7

4

つ】5

つ】I

nU

7

4

rlL

o

o

o

D

l▲つ〟5

005

「⊥′D3

0

1

【84

つ山1

0

(U

,11

0

0

0

0

0

0

5

0

4

3

凸7LJ1つんl

つ】-

1

1

0

0

0

0

3

0

0

0

(U0

0

nU

I

I

-3.58

-0.31

-0.03

TlledatawerecomputedasuminB山atdilutionerfectwasnegligible.

β■--KO'Cヱ;b-K.;Otcl/Cヱ

Table4-3 Percentageanalytical errorincomplexometrictitrationsusing

ionselectiveelectrodesresponsivetoanalyte42)

1011 1012 1013 0つ4

3

4.Ln

′07

EO

q′

{U{U

00

O

ハU

nV

0

0

1

1

11

1

1

1

1・l

-23.21 -11.88 110.20

-9.64 -2.68 -1.20

14.96 -1.42 -0,28

-2.49 -0.87 -0.18

-1.21 -0.49 -0-13

-0.57 -0.25 -0.09

-0.27 10.12 10.05

-0.13 -0.06 -0.03

-0.06 -0.03 -0.02

一10.00

-1.00

-0.10

-0.01

nLe血tawerecomputedasumingthatdilution・errecIWasnegligible.

p -Kユ′Cヱ;b-畔 cj/Cヱl

- 2 4 -

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 この場合は電極に応答するイオン種がAのとき

とTのときとで滴定誤差の絶対値も異なってく

・。㈱藁屑でβ’一K.’cXであり, K.’ぼ

反応の生成定数である。

 Fig.4-1の滴定曲線皿は通常の電位差滴定

ではあまり見かけない特徴的なパターンを示し

ている。著者は,ナトリウムイオン選択性ガラ

ス電極を用いる微:量塩素イオンの銀滴定におい

て,塩化銀の溶解度積を下げる目的で有機溶媒

を加えて自動滴定を行ったところ,Fig.4-1

の皿と類似のパターンを持つ滴定曲線が得られ,

これをFig,4-2に示した。

 式(44)のイオン種1回目」をそれぞれ滴

定壷中の銀イオン及び試料液中の水素イオンと

して滴定曲線を計算によって描くため,まず実

験に使用した電極の応答特性を調べ,銀イオン

に対する螺イオンの選択係数魂≠求めた・

 Fig.4-3は銀,水素及びナトリウムイオンに

対する電極のNem8t応答をプロットしたもの

であり,銀,ナトリウムイオンに対しては中性

水溶液中でそれぞれpAg 6, pNa 4付近まで

Nemst応答が見られるがそれ以下の濃度では

水素イオン濃度による電位レベルで支配されて

しまう。又,Table 4-4の選択係数は式(3.

10)によって算出した。90%アセトン溶液中

り選択係数は水溶液甲のものに比べ小さくなっ

ていることが分かるが,これは非水溶媒甲では

 一50宅

£.100

一150

  1    1.5    2    25     3        0、005M or O.OOO5M AgNO3, ml

Fig 4.2 Ti・…i。・・uw…fcf wi血Aガi・9。・。1%

    acetone medium usin呂NAS 11-18 electrod¢

                    キ  (1)2.500m1・fα005 Mσwithα005 M Ag;+   (2)2.500ml ofO.0005 M CI-with O.0005 M Ag

一150

 一100宅

葺一5。

£

o

←50

争100

N回.

H◎

AgG

    1  2  3  4  5  6  7  8           P【Cq胴Oh】

Fig.4-3 Elcctrode responses of NAS U-18 as    f。ncti。・s。f Ag+, H+, and Na+・。n・・皿t-

    rations

水素イオン活量が他の金属イオン類より著しく低下2)することによるものと考えられる。90%アセトン

溶液中の塩化銀の解麟は文献娼〕・こよるとK、p-1…一16であるからこ素式(42)}こ代入した後・

更賦(4.4)、こ代入し,T、b1・4-4から得られるK謡一a5・・じ3を式(4・4)・こ代入して螺イ

わ面すなわちC、をいろいろに変え・当齢髄の齪曲学描くとF禦一4のようになった・

,、。、一、の齪曲線の油点の位置・こ関・ては・いず描βの値・:L6・・。→と鋤て小さいため

T、bl。4.1から齢当量点とほとんど一致頻・とが分かるが・ゼ・で1まないためFi・4-1の滴定曲

線皿とは異なり,pH 3-7の範囲では当量点の手前から電位の変化が起こるようになる。しかしながら

Fi晋4.4で示される当量点からの・のずれは・。μ1繊であり・.実際・こは記鰍幅250㎜あたり1。OmV

一25一

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Table 4-4S,1。。ti吻。。n・t・・t・・f NAS I1-18・1ect・。d・b・tw…Aご

and H+in aqueous and 90Ψol%acetone media

Conc. of cations

   (M)

Potential fOI Aず

  (mV)

Potential for H+

  .(mV)

K矯。

1

H

0.1

G.01

0.l

O.01

119

71

183

140

44

-4.

64

20

2.5XlO-2

2、5×10-2

2.5XlO 3

2.OXl『ヨ

1:Aquc。us me山uml II:90 v。1% acetone medium

の電位幅で自動摘下を行ってもF塩4-2

に見られるようにペンの軌跡は当量点にお

いて明りょうな屈折点を描くことが分かる。

従って,この屈折点の位置を直接読み取り,

滴定終点に採用しても滴定誤差はほとんど

無視し得ると考えられる。

4.2 ハロゲンイオンの微量沈殿滴定

乙.2.1 滴定操作法

 5皿1以下のハロゲンイオンを含む水溶性

試料を100皿1の容量のビーカーに正確に量

り取り,必要であればアンモニア水中1ま硝

酸でpH 2-7に調整する。これにアセト

ン50皿1を加えてアセトン濃度約90%と

した後指示電極及び参照電極をそう坐し,

串150

宅+1。。

謹“5。

o

一50

一100

{1}

131.一

..・ド・” @   (つ

(5}

2.4  2.5        2.6

0,005M AgNOヨ,而1

Fig,4-4℃omputed tit【atlon curves of 2500 mI                               サ    ofO.005MCI withα005MA呂in    90Ψd%acetone medium at equivalence

    point    (1)pH 7: (2)pH 5; (3)pH 3;

    (4)pH 2; (5)pH 1

α。。5Mあるいは。.。。。5M硝酸銀溶液を用い・瀧藪・・5・1/・i・で酬日光を避けながら自踊定を

行う.齪雌行す。につ縄鵬位齢・嚇少・てゆくが当鯨近傍におい・雛の突然の増加によ

嫡舳線は鋭い屈折を示し,・れ備定終点とする・硝醐瀧液繭らかじめ5m1のハロゲン化カリ

ウム標準溶液を用いて同儀の操作を行って標定しておく。

4.2.2 滴定条件の検討

幻,、。ゲ。材。の齪鹸・.・・5Mの麟・螺及び・ウ素材・をそれぞれa500・1つっ量り取

り詠溶液中で瀧を行。たと・ろFig.4一・・こ示す齪醐鶴た・螺イオ・の縦曲線【1〕は塩{ヒ

一26一

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銀の水甲溶解度積が比較的大きいためにFig

4-1の晒と類似の非対称なS字形となる。こ

れに対し,臭素及びヨウ素イオンではハロゲン’

化銀の水団溶解度積が非常に小さいため滴定曲

線は当量点近傍で折れ曲がりFig.4-1の皿と

類似のパターンを示す。滴定曲線{1)と{2)及び

〔31の相違はハロゲン化銀の溶解度積によるも

のであるから,塩素イオンの場合でも有機溶媒

を加え溶解度積を下げると臭素やヨウ素イオン

と同じ滴定曲線が得られるはずである。

 B)有機溶媒の種類と濃度  塩素イオン試

料溶液にいろいろの有機溶媒を加え90%濃度

溶液として滴定を行い,得られた滴定曲線を比

較するとFig.4-6のようになった。

 これによると,屈折点はいずれの有機溶媒を

用いても理論当量点とほぼ一致しているが,ア

セトンの場合他の有機溶媒に比べ当量点近傍に

おける電位の増加は急激で滴定曲線は鋭い立上

りを示している。このアセトンを使用するとき,

屈折点の位置をチャート紙上から直接読み取る

ことができる濃度範囲は塩素イオンでは90%

以上,臭素イオンでは70%以上となりヨウ素

イオンでは水溶液甲の滴定でも明りょうに読み

取ることができる。しかしながら,3種のハロ

ゲンイオンを一連の分析作業の中で定量しなけ

ゼ1。。

£ .50

o

⊂1)

12)

13)

   1        コ.5        2        2.5        3

             0.005M AgNOユ, ml

Fi昏4-5 Titration curves of 2.500 ml of balides with

    O.005MAガin aqueous medium

    (1)Cl; (2)Br; (3)1

宅 。

8 -50

一100

〔1,

〔2⊃

(3)

(4}

1 1,5 2     z5     3  0.005M AgNQ3, ml

Fig,4-6 Tit・ati・…四・・。f 2・5。0㎡・fα005 M Cl

    with O.005 M A9←in 90 vo1%organic solvents

    (1)瓢ethano1; (2) Acetone; (3)Isopropanol;

    (4)Etha皿01

ればならな嘆用分析では繰作灘統一しておくために9・%アセト熔液中で・・ずれの・・ロゲ・備

定を行うのが得策である。硝酸銀水溶液で滴定する場合,滴下量が大きくなるにつれ被滴定液のアセトン

灘が低くなり,従。て,屈折点額接読み取ることは困難なる・従・て・…。5Mあるいはα0005M

硝酸鉦標準溶液の調製には蒸気圧の低いイソプロパノールなどを使用して80%有機溶媒性としておく必

要がある。

9。%アセト.溶液中興合…ゲンィわを齪するときは銀線電概使肘る場合と異なり混合

ハロゲンイオンの総量が滴定されたところではじめて電位飛躍が起こり屈折点は1箇所でしか得られない。

C),H及び共存鋸付・の影響電極が水素イオ・に応答することによる瀧曲緑一の脚を実

験的,。調べるため,麟イオ・溶椥こ硝酸を厭,・Hをいろいろ蘭整して滴定師・た・概れ嫡

定曲線はFig 4.7で示されるように,・Hが{氏くなる縦・て屈折以後磯位飛蹴抑制され・H 1で

一27一

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はもはや屈折点は得られなくなる。

 又,ナトリウムやカリウムイオンなどのア

ルカリ金属イオンについても濃度を高くすれ

ば水棄イオンと同鎌に屈折以後の電位飛躍は

抑制されるが,被滴定液の濃度が0.1M以下

であれば屈折点の読み取りには差し支えなか

った。カルシウムや銅などの2価金属イオン

は滴定曲線にほとんど影響を及ぼさず,これ

らの金属イオンがかなり多量に共存する試料

の分析も可能と思われる。

 D)滴定速度と再現性  通常の自動電位

差滴定法のようにS字形の滴定曲線から変曲

点を作図法によって求め滴定終点とする場合,

 +100セ

三 。£

一100

一200

(1)

(2〕

〔3)

   1讐.52Z53             0.005M AgNO3, ml

Fig.4-7 Effβc!of pH on ti吐lation culve of 2.500 ml                                    ofO.005』1Cl withO.005MAg    (1)pH l; (Z)pH 2; (3)pH 3; (4)pH 5

滴定の進行に伴う電極電位の変化を検知して滴定液の滴加速度を制御し,終点付近での滴定反応がゆっく

り遂行されることによって再現性ある滴定曲線が得られるように自動丁丁制御を行うことが多い。しかし

ながら,本法のように終点までほとんど電位変化が起こらないときは自動二曲制御は有効に働かなくなる。

そこで,塩素イオンを用いTable 4_5に掲げたように滴定速度を変えて終点までの丁丁量と再現精度を

比較した。

Table 4-5 Effect 6f delivery speed of titrant on 2.500 ml of O.005 M chloride

Dehveτy speed

 (ml/m血) VoL ofα005 M AgNO3(mDMean vo1.

 (ml)

S.D.

(μ1)

0.25

05

1

2.505

2.505

2.510

2.510

2、510

2、515

2.515

2.510

25152.520

2.510

2.530

2.510

2.525

2.530

2.510

2.505

2.505

2.510

2.500

2.520

2.515

2.515

2、515

2.515

2.525

2.515

2.515

2.515

2,525

2.505

2.510

2.505

2.505

2.515

2.515

2.520

2.520

2.515

2,510

2.510

2、520

2.525

2.530

2.525

2.507

2.5]6

2.521

4

4

8

一28一

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 これによると,滴定速度が早くなると終点までの滴加量は若干大きくなり,再現性もやや乏しくなるこ

とから05ml/minが滴定速度として適当と思われる。

 E)滴定精度  塩素,臭素及びヨウ素イオンのそれぞれについて0.5m1/minの滴定速度で繰り返し

滴定を行って終点の再現性を調べた。その結果をTable 4-6に示す。

Table 4-6 Sequential titrations of 2500 ml of O.005 M hahde with

sUver nitrate solution at deliveΨ speed of O.5皿1/n廿皿

・HalideS Mean voL of 15 titrations(ml) S.D.(μ1)

KCI

KBrKI

2.516

2.509

2.502

45

6

 これによると,いずれのハロゲンイオンについても極めて再現精度の高い終点が得られることが分かり,

又,ハロゲ’ンイオンの穂類による滴定値の相違はほとんど見られない。従って,実際には硝酸銀標準溶液

の標定はどのハロゲンイオンを用いて行っても良いことになる。

 次に,ハロゲンイオン量と硝酸銀の滴加量との直線関係を調べるために0.005M塩酸の採取量を階段的

に変えてそれぞれiこついて滴定を行い,得られた結果をTable 4-7に示す。

Table 4-7 Titrations. of valy血g volume of O.005 M hydrochloric acid

with O.005 M snver n辻rate solution

0.005MHCI taken   (ml)

Vol. of O.OO5 M AgNOヨ

     (mD

1.GOO

2.000

3.000

4.000

5.000

6.000

7.OOO

8.000

9.000

10.000

11.000

12.000

13.000

14.000

15,000

LO102.000

2.985

3.985

4.965

5.980

6.975

7.980

8.965

9.975

10.960

11.965

12.950

13.930

14.940

…ea・・g・e…。・・y…99硬α。…西π・1・ω

一29一

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 これから,塩酸の採取量をx,硝酸銀の滴加量をyとして最小二乗法を用いて回帰分析を行ったところ,

回帰直線y=O.996x+0,003が得られた。

 又,滴定値の回帰直織からのばらつきとして不偏分散の平方根而=10(μ1)が得られた。従って,

試料量と滴定値は極めて良い直線性を保っていることが明らかとなった。なお,回帰直線のy軸との切片

O.003は空試験値に相当するがこれは実際上ほとんど無視することができる。

 更に,10倍に希釈した0.0005M塩素イオン溶液について0.0005M硝酸銀滴定液を用いて同様の実験

を行い,得られた結果をTable 4-8及びTable 4-9に示した。

Table 4-8 Sequential titrations of 2.500 ml of O.0005 M hydrochloric acid

with O.0005 M silver nitrate solution

VoL ofα0005 M AgNO3(ml)Mean vol.

 (ml)

S.D.

(μ1)

2.550

2.530

2.540

25402.5:35

2.545

25402.535

2.550

25452.545

2.545

2.530

2.555

2.545

2.542 7

Table 4-9 Titrations of varying volume of O.0005 M hydrochloric acid

with O.0005 M silver nitrate solution

0.0005MHCl taken    (1nl)

VoL of O.0005 M AgNOヨ

     (mD

1.000

2.000

3.000

4、000

5.000

6.OOO

7,doO

8.OOO

9。000

工0,000

11.000

12.000

1.045

2,055

3.100

4.075

5.115

6.155

7.140

82009.215

10.220

1123512,255

・・,、r【,騨・1…,・1.。・。・+・.・…凡「・15(・1)

T、b1。4-8の滴定値は理論値よりも高くなっているが,これは溶媒中iこ含まれている不純物やガラス

器具に付着している汚染物によるものと考えられ完全に除去することは困難である・しかしながら・終点

の再現性はこの澱の範囲でもな娘好に保たれている.又,T・b正・4-9の実験・こよ・て得られた回帰

一30一

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直:線y=LO20x+0.021の中に示される空試験値0.021m止はこの場合無視することができなくなる。従

って,この場合はハロゲンイオン標準溶液であらかじめ検量線を作成しておくことが望ましい。

4.3 シアンイオンの微量錯滴定

4、3.1 滴定操作法

 シアンイオンを含む水溶性試料数m1を50mlの容量のビーカーに正確に量り取り,炭酸カリウムー炭酸

水素カリウム緩衝液5皿1を加えpH 10.5に調整した後水を加えて全量50Inlにする。これに指示電極及

び参照電極をそう卑し,0.005M硝酸銀標準溶液を用いて滴定速度0.5m1/minで自動滴定を行う。試料

の量り取りから滴定開始まではなるべく短時間内セ操作することが望ましい。第1当量点での急激な増加

によって記録紙上に描かれた滴定曲線の屈折点を滴定終点とする.あらかじめ試料を含まない溶液につい

て無試験値を求めておく。

4.3.2 滴定条件の検討

 A)シアンイオンの滴定曲線

ることが知られている。

銀イオンによるシアンイオンの滴定は次の2段目反応によって進行す

     う                                Ag →一2CN  ≒  Ag(CN)2

    Ag++Ag(CN)∫⇒Ag〔Ag(CN)『〕

 第1段はジシアノ銀錯イオンの生成反応によるものでその安定度定数は1021と非常に高く,一方,第

2段の反応はシアン化銀の沈殿生成によるものでその溶解度積はIO-12と比較的大きく,第1段と第2段

の平衡定数が大きく離れていることから2つの明りょうなpAg飛躍があることが予想される。

 NAS li-18電極を指示電極として炭酸カリウムー炭酸水素カリウム緩衝液でpH10}こ調整した

0.005Mシアン化カリウム溶液2.500m1を0.005M硝酸銀溶液で滴定を行った結果, F厄4-8に示す滴

定曲線が得られた。pHの調整にははじめに

アンモニア糸あるいは有機アミン系の緩衝液

を使賦したが,銀イオンと比較的安定な錯イ

オンを生成するため微量滴定においては第1

段の電位飛躍はまったく観察されず,第2段

の電位飛躍も鈍く,変曲点を見いだすことは

困難であった。

Fig.4-8の滴定曲線においては,越㌔

CN一 フモル比が.1=2及び1=1の2箇所

で電位飛躍が認められる。第2段の電位飛哩

は第1段に比べかなり大きいが,非対称で比

 一250崔

喜.,。。

 一350

一400

  0     1     2     3     4     5     6

            0.oo5断AoM)コ, m[

Fjg.4-8 Titrat韮on curve of 5.000 ml of O.005 Ml CN-

    with O.005 M AガatpH 10

一31一

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較的ゆるやかなS字形滴定曲線であり,終点の変曲点を作図によって求めるに適していない。又,緩衝液

中の炭酸イオンは銀イオンと沈殿を生成し,その溶解度はシアン化銀の溶解度とそれほど異ならないため

共沈によって第2当量点では滴定誤差を生ずることが懸念され,外に銀イオンと反応しない適当な緩衝液

が見当らない。一方,第1段の電位飛躍はかなり小さく,当量点までの滴加量は第2段までのものの1/2

であり滴定値のばらつきも大きくなるが.ジシァノ銀錯塩の安定度定数が極めて大きいため突然の銀イオ

ン応答の発現によって滴定曲線は鋭敏に折れ曲がり,屈折点を明りょうに読み取ることができる。又,第

1当量点では炭酸銀の沈殿生成も無視し得ると考えられることから,本滴定ではこの第1段の屈折点を滴

定終点に採用した。なお,試料中に塩素イオンが共存していても第1段の電位飛躍にはほとんど影響が見

られないのに対し,第2段では塩素イオン量が増すにつれ電極飛躍は抑制され,変曲点の位置も当量点手

前につれ負の滴定誤差を生ずることが認められた。従って,このことからも第1当量点を終点にすること

が好ましいと思われる。

 次に,緩衝液量を調節して被滴定液のカリウムイオン濃度を一定に保ったままp日のみをいろいろに変

えて滴定を行い第1当量点付近の前幅曲線を描いたところF遮4-9に示すようにpH lo.5のときの電

位飛躍がそれ以下のときに比べ若干大きくなることが認められた。

 一400宅

聾.41。

ε

一4zo

(1)

(2}

(3〕

〔5)

 一430   1         1.5         2         2.5         3

             0.GO5 M AgNO3. rn[

Fig.4-9 Effect of pH on titration curve of5』OO ml of        ロ                    キ    0.005CN wi曲O.005MAg    {1)pH 9; (2)pH 9.5;,{3)pH IO;

    (4}pH 10.5; (5)pH ll

    Titlation was carried out in 3amp且e solution

    ,・。面・i。g4×10-2MK+、

 B)シアンイオン標準溶液の安定性

5100

ξ,8

蓋96

彗94

::

’-’.一”,』 @輪へ・’書.告ろ‡よ.二、t了晶;轟講

。τ___一___一___L__一___⊥_    0     24     48     72     95     120

               Tlm㊤, hr

Fig,4-10 Stab皿ity of O.005 M IくCN stored in

    polyεthy且ene botde

    Media:一〇.OI M KOH、一一一〇.001 M KOH,

    _._WaIer

                  シアンイオンは空気中の二酸化炭素によってシアン化水素とな

り揮散してゆく傾向があるためアルカリ溶液中に溶存しておかなければならないが,その分解程度は保存

容器や方法によってかなり異なっており鋤~4?特に微量分析では希薄溶液を取り扱うため標準溶液の安

定性について把握しておく必要がある。そこで,水溶液,0・0⑪1M及びO・01 Mの永酸化カリウム溶液に

溶かして500皿1ポリエチレンびん}こそれぞれ保存しておいた0・005Mシアン化カリウム溶液について,そ

の濃度の経日変化を調べた。その結果をFig.4-10に示す。

一32一

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これによると,o・olM 水酸化カリウム溶液に溶存 しておいたものは他の2つのものに比べ幾分安定性

が良いが一二の場合でも1-2日間で若干濃度が低下する傾向が見られる。水酸化カ[)ウム濃度を上げ

pHを高 くすればシアンイオン溶液の安定性は更に改善されるものと考えられるが,蘭定時に試料液を弱

アルカリ性に保つため多量の緩衝液を加えなければならない。このことはアルカリイオン波度を増すこと

になり,電極は銀イオンに対する応答性を低下させて電位飛躍が得られ難 くなる。従って, 0.005Mシア

ンイオン標準溶紋は0・lM水酸化カリウム溶液に溶かして調製 した0.05M シアン化カリウム溶液 を原液

とし,これを使用に先だって毎日10倍に希釈 して用いるのが望ましい。

次に,シ7ンイオン溶液を空気中にさらLておいたときの揮散度を知るため,0.005M シアンイオン標

準溶液を内径約 5C.nの100ml及び内径約 4cmの50mlガラスピーカ-にそれぞれ5mlづつ量 り取 り,そ

のまま放置 Lておいたときの浪度の経時変化を追跡した. 口径約 2.5cmのポリエチレンぴんに500ml貯 え

て放置 しておいたものは5時間経過 しても湊度変化はほとんど見られなかったのに対 し, Fig.4-11に示

すように少量の再植をビーカーの底に入れ空気との接触面積の大きい状態で放置 したとき,100皿lビーカ

ーでは50mlビーカーに比べ, 2-3分の経過で明らかな浪度の減少が認められた。又,0.005Mシアン

イオン標準溶液を100ml及び50m1ガラスビ-カーにそれぞれ 5mlづっ量 り取 り.直ちに緩衝液で pHを

10・5 に下げ,水で全量 50mlとしたものについても同株の実験 を行ったところFig.4-12に示すように,

Fig.4-11と類似の結果が得 られた。

8

U

4

71

0

9

9

q}

q}

19T

luq!lT)JtU巴UoU

2 4 6 8 10TlrTl亡.min

0

nU

LP

一叫

2

0

0

9

Cr7

9

9

9

.I.

.uOJlt)上uB

U

OU

2 11 6 8 10Time.nin

Fig.4-llStability of5mlof0.005M KCN Fig.4-12Stabilityof50mi of0.0005M KCNstandardsolutionexposedtoairin50mi staJldardsolutionatpH10.5exposedtobeakeT(-)and100mlbeaker(- ) airin50m王beaker(- )and100ml

beaker(-一一)

これらの実験結果から,滴定用 ビーカーは液位は高 くなってもなるべく内径の小さいものを使用するの

が望ましい.又、シアンイオン溶碑の量 り取 りから滴定開始までなるべく短時間内で換作する必要がある。

C)有機溶媒中における滴定曲線 第 1当量点はシ7ノ錯イオンの生成に基づくものであり,原系も

生戒系も水和 Lてお り,水和エネルギーの差に由来する有機溶媒添加の効果はあまり大きくないと予想さ

れる。

0,005M シアンイオン操準溶液 5mlに p1110.5の緩衝液 5mlを加えた雀トアセ トン濃度をいろいろに

ー33-

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変えて滴定を行った8結果はFig.4-13の滴

定曲線に示されるように,アセ トン濃度が増

加するにつれ第 1当量点での電位飛粗は水溶

液中での滴定に比べ多少大きくなるが,滴定

曲線の屈折はかえって鈍くなってゆき,アセ

トン渡度 607fDでは屈折点はかなり鈍化 して

くる。な払 第2当量点では滴定曲線の形状は

Fig.4-8の水溶液中のものと同様の非対称

のS字形 となり,電位飛躍は逆に小さくなる。

従って,水溶液中で滴定したほうが第 1段

の電位飛躍は小さいが癖折点を明 りょうに読

み取ることができ, 特に有枯溶媒 を使用す

ー360=■∈

⊂1

苫 13BDEL

-LOO

l l.5 2

Fig,4-13Effectofa亡et。netioncuryeof5.0000.005M Ag+at

(1)60vo1%;(2)(4)30yol%

2.5 3

0.005M AgNO3+ml

concentrationsontitla-mlof0.005MCN-withrlTStequivalencepoint

50vol%;(3)_40yol%;

る必要はないことが結論づけちれた。

D)滴定精度 滴定終点の再現性を調べ

るため,0.005M シアンイオン標準停液を5mlづっ量 り取 り,0.005M硝酸銀標準宿根を用いて水溶確

中で繰 り返し滴定を行って滴定借のばらつきを求めたところ,Table4-10に示すように蔑準偏差 q-8

(ill)が得られた.

Table4-10 Repeatedtitrationsof5.000mlof0.005M potassium cyanidesolutionwith0.005M silvernitratesolution

γol.or0.005M AgNO3 (ml)MeanVOL S.D.

(ml) (pl)

2.500 2.495 2.500 2.495 2.505

2.495 2.500 2.510 2.505 2.510 2.502 8

2.500 2.510 2.505 2.490 2.510

次に,0,005祉 シアンイオン標準溶液の採取鼻を階段的に変化させて滴定を行 い,それぞれについて得

られた帯定値をTable4-11に示す。

これから,ジシ7ノ銀錯イオンの生成においではシアンイオン1モルは 1/2当量であるから シアンイ

オンの採取量の1/2を x, 硝酸銀の繭定借をyとして最小二乗法を用いて回帰分析 を行 うと,回帰直線

y-0.991x+0.024となり,又 不偏分散の平方根は√両二言 -6(JLl)となった4

回帰直線のy軸との切片0.024は空研削直に相当するものであるが,実際の空試験値 を異観的に求めると

約15PJであった. 従って,シアンイオン畳と硝酸銀の滴定値 とは厳密には直線関係を示 していないこ

とになる。しかし,希薄なシアンイオン常夜は安定性に間圏が多く,試料の保存等の前処軌 こよる誤差に

比敏すれば滴定値の回帰直線からのずれは無視し得る程度であると考えられる.又,より精密な滴定が必t

要なときはあらかじめ検量線を作成 しておくか,試料硬tこ近いシアンイオン標準溶液の強度で滴定液を標

-34-

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Table 4-11 Titrations of

solution with

varying volurne

O.O05 M silver

of O.O05M potassiumnitrate solutien

cy anide

O.O05 M KCN (ml)

taken VoL of O.O05 M (ml)

AgN03

1.000

2.000

3.000

4.000

5.000

6.000

7.000

8.000

9.000

10.000

O.51S

1.015

1.520

2.ole

2,500

2.990

3.495

3.995

4.485

4.975

Linear regresslon: y = O.991x + O.024; VV;yJ;.x= 6 in1)

ML(ts{XiRui.

-35-

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第 5章 陽イオン選択性ガラス電極の過渡応答特性

陰イオン選択性ガラス電極の基礎的分野における研究は,現在まで1価陽イオンを含む溶根から得られ

た電極電位を基にしてガラス膜の電位発生機辞を説明 し,更に,ガラス膜の組成比と1価陽イオン間の選

択係数 との関係を解明することに重点が置かれてきた。しかも,これらの応答特性に関する研究の多くは,

電極を測定痕に浸潰 してガラス膜 と溶液との電気化学的平衡関係が成立 した後の平衡電位から解析がなさ

れたもので,平衡電位に達するまでの電極の過渡的性質についての検討はあまりなされていない。

1957年 Friedman48)らはNAS ll-18竜極がカ.)ウムイオンに対して次のような興味ある応答挙動

を示すことを観察 した。すなわち,ナ トリウムイオン溶液に電極を浸漬し,この状潜をバックグラウンド

として,これにナ トリウムイオンとの選択係数から予測 して電極電位の変化が無視 し得るほどわずかの畳

のカリウムイオンを加えると,電極は一時的な過渡応答を示した後,やがて時間とともにもとのバックグ

ラウンド捧液のときの電位 レJ<ルにまでもどってしまう。その後 Rechnitz49)らもペック17ン杜の HSodium

IonGlassElectrodeHで同様の現象が起こることを報告 している.Rechnitzらは更に"cationicGlass

Electrode''がストロンチウム,カJレシウムイオンなど2価陽イオンに対 しても類似の挙動を示すことを

観察 しているが,この場合の過津電位の発現時間は極めて短 く10ms程度で消滅 してしまうことを指摘

している。

著者は,ナ トリウムイオン選択性ガラス電極の2価陽イオンに対する応答を調査 しているうちに,この

ガラス電極が′てリウムイオンの急激な濃度変化に対 して上に述べたような過渡電位を発現することを兄い

だした。しかも過渡電位の大きさと消滅速度は通常の電位差計で容易に追跡できる。′iLjウムイオンのよ

うに選択係数の極めて小さな陽イオンに対する過渡応答は注目すべき現象であり,更に, 1価及び多価陽

イオンの全般について調査 を拡大 した。又,ナ トリウムイオン選択性ガラス電極の外に, 1価陽イオン選

択性ガラス電極と pHガラス電極についても調査 を付け加えるとともに,過渡的電位の発現理由について

ガラス膜表面の水和層の存在を考慮に入れて若干の理論的解析 を試みた。

5.1 電極電位 の過渡応答パ ターン

5,1.1 ナ トリウムイオン選択性ガラス電極の応答パターン

はじめに,ガラス組成比が明らかにされてお り,代表的なナ トリウムイオン選択性電極の 1つである

comi JIBNABll-18電極を選んで実験を行った。実験方法の概略はFig.511に示 Lたように2つの

液だめを電極セルから高さ約 1mの所に置いておき,この落差によって被検液を電極セル内に流 し込み,

コックの切 り替えによって両液の変換をすばやく行った。電極セ/レは,電極先端のガラス感応膜部分がわ

ずかの液量で接触できるようにL)ング状のシリコーンゴムパッキ>.デで園のように閉じ,液の変換が迅速

に行えるように作成 した。

- 36-

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 一方の雁だめにはバックグラウンド溶液として

pH 7.2,イオン強度0.005Mのトリス緩衝液を

入れ,他方の液だめにはバックグラウンド溶液に

被検陽イオンを加えたものを入れ,相互の液を急

速に切り替えた後の電位の時間的変動を追跡した。

被検液の流量は大きくなるほど同じ陽イオン濃度

の変化に対する電位の瞬間的飛躍も大きくなるが,

1.5mi/』以上ではほぼ一定fヒするので流量は2ml/s

とした。電位の追跡にはオシロスコープは必要で

なく,コーニング社製デジタル112pHメーター

で十分可能であった。この電位差計の応答時間は

10msでありこれをモニタリングに用い,出力を

ペンレコーダーにつないで電位の変化を記録させ

た。本装置において,あらかじめ一方の液を流し

ておき,O-2皿レsの範囲で流量変化による電位

の変動を測定したが,イオγ強度10弓M以上で

では変化量最大O.3mVであり,従って,流動電位

はほとんど無視することができた。なお,本章の

実験はすべて室温25℃の恒温室で行った。

 Fig.5-2はナトリウム及びリチウムイオンを

被検陽イオンとしたものであり,いずれもイオン

選択性電極の通常の応答に見られるように,バッ

クグラウンド溶液のときを基準電位として時間と

ともに一方的に[Cation】=10-5M又は[Cation】

ニOMのときの平衡電位に近づいてゆくことが分

かる。銀インに対しても同横の挙動を示すが,こ

の揚合はナト.リウムイオンより約1000倍選択性

11)  ..二・

!偶

!倒

{4}

{5}

{6; (η

Fig.5-1 Schematic diagram  of test appa聡tus fbI

    monitoring transientτesponse of electrode

    (1)ReserΨok; (2)Three-way stopcock;

    (3) Ion se1昭ctive glas5 electrod¢;

    (4) Silver-silver chloride electrode;

    (5) S皿icone rubber ring;  (6) Ion meter;

    (7)Recorder

 +40

一噛 {309量

£鼻20

呼10

o

o→10-5MNα‘

0 → 10 5 M   LiO

10-5→OM No・

コ O-5  →  0 州  しi9

0   10   20   30 轟0   50   607im書、  min

Fig5-2 Transiβnt responses of NAS 11-18 dect【od¢

             キ                 コキ    tQ sudden chan呂e of]Na and Ll concentra・

    tions in tris buff釘of pH 7、2

が大きいため基準電位からの電位変化も大きくなる。

一方,カリウムイオンを急激に加えると,Fig.5-3のAのように電極電位は基準電位から正の方向へ

すばやくオーバーシュートをした後反転して徐々に減少を示しながら約20分後には一定となり〔K申〕=

10喝Mの平衡電位に達する。逆にカリウムイオンを取り除くと電位は負の方向へ移行した後徐々にもと

の基準電位にもどってゆく。

 アンモニウム,ルビジウム,セシウムイオンに対しても同様の挙動を示すことが認められたが,カリウ

ムイオンに比べ更に選択性の小さいこれらイオンの平衡電位における基準電位からの電位差は一層小さく

なる。次に2価陽イオンに対しては,ほとんどすべてがFig.5-3のAに類似の過渡的電位を発現すること

一37一

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0

(リ

(U

3

つ▲

+

>∈

.一t)llUaIQd

0 10 20 30 J.0 50 6OTirne.mEn

FiB・5-3TransientresponsesorMa†-selectiveglasselectrodestosuddenchangeofK'con-centlationintrisbufferofpH7.2

A:亡く⊃mingNASll-18;a:Orion94-llA;C:Domesticproduct

>L11

.]

Dl]uitOd

0 10 20 30 L,0 50 60Tlme.min

Fig・5-4Trans]-entresponsesorNa'-SElecliveglasselectrodestosuddenchangeofBa2+con-centrationintrisburFerorpH 7.2

A:CorningNASll-18iB:Orion94-1lA;C:Domesticproduct

を観察 したが,鉛,銅イオンの例外を除き,平衡に達すればもとの基準電位にもどり′てリウムイオンの例

で示 した Fig,5-4 のAのように定常状態におけるこれら2価陽イオンの電位応答は見られなくなる。

なお,ランタン,アルミニウムイオンのような3価陽イオンについても類似の応答を示すことが認めら

れたが,本草の実験では水素イオンに対する応答性をなるべく′トさくするために比較的高い pHレベルで

測定 しなければならず,この場合水酸化物の溶解度積の小さい2価や 3価陽イオンは溶液中での実際の活

量が把握 しにくくなり,定量的な扱いができなくなるので調査の対象からは取 り除いた。

Fig.5-3のA及び Fig.5-4のAに見られるコ一二ング社製ナ トリウムイオン選択性ガラス電極の過

渡応答観象が他の銘柄のものについても見られるかどうかを確かめるたれ 0rion社製及び代表的な国内

メーカーのものを用い,カ リウム及びバ リウムイオンについて同様の実験を行った。OTion社製電極は第

4章で述べたようにナ トリウムイオン迅速応答性を示し,そのガラス組成は公表されてはいないが1価陽

イオンに対する選択係数の実測値からNAS ll-18と近似の組成であると推定されているものである。

又国内メーカーの電極のガラス組成は NAS ll-18と同 じであると称されている。 Fig.5-3のBは

orion社製,Cは国内メーカ-電極のカリウムイオンに対する応答′くターンでありいずれもcoming社製

電極と共通の性格 を示すことが分かった。しかし,電極 Bは電極Aに比べ電位飛躍のピークは同程度であ

るが,その後の過渡電位の消滅は親分速 く,速やかに平衡電位に達して,カリウムイオンに対 してもナ ト

リウムイオンと同様の迅速応答性が碁付けられている.一方,電極Cは最初の電位変化が大きく,電位が

ピークに遺 した後徐々に反転 しながら平衡電位に近づいてゆき,かつ定常状態においでも′キックグラウン

ド辞液の基準電位からの電位差は大きく,このことからカリウムイオンに対 しでは他の銘柄 と異なり,か

なり大きな選択性 を有することが静められた。

Fig.5-4 に示すように,′ilJウムイオンに対する応答では電極 Cの選択係数が電極A,Bにかなり近

くなることの外ほぼ薪似の結果が得 られたo Fig.5-3,5-4から‡ Corning社製電極が他の銘柄に比べ

穏当な応答パターンを示すことが分か り,以下の実験ではCorningNAB ll-18をナ トリウムイオン選

-3Bl

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択性電極の代表として使用した。

5.1.2 1価陽イオン選択性ガラス電極の応答パターン.

 Corning NAS 27-4電極ではFig.5-5に示すように,カリウムやバリウムイオンに対してはもちろ

ん,その他調査した陽イオン種についてもFig.5-3, Fig.5-4に見られるような過渡電位は発現せず,一

方的に平衡電位に到達した。なお,NAS 27-4

電極ではバリウムイオンに対して,定常状態に

おいてもわずかではあるが基準電位からの電位

変化が見られバリウムイオンに対して若干の選

択性を有することが認められる。このことは,

MS 11-18電極に比べ有効陰イオン性電界

強度の小さなNAS 27-4電極では2価陽イオ

ンに対してわずかではあるが選択性を示すであ

ろうというEi5enmanの指摘を裏付けている。

》+為0「

豆中30蚕

£←20

噌10

o

0→1『5団K.

0→沿一5MBq2・1『5→OM K・

10-5一→・OM 8ロユ・

5.1.3 pHガラス電極の応答パターン

 水素イオンの濃度変化に対するpHガラス電

極の電位変化は当然Fig.5-2, Fig.5-5と同じ

応答パターンになる。又,pHガラス電極は

pHの高い範囲ではアルカリ誤差原因となるナ

                  田)トリウムイオン応答を示すが」(arlberg                   は

pHガラス電極がナトリウムイオンに対して

Fig,5-3, Fig.5-4と類似の過渡応答を示すこ

とを観察している。そこで,本章の実験におい

てもComing 476024 pH電極を用い0.01M

ジイソプロピルァミン(pH 11.5)をバックグ

ラウンド溶蔽として同様にナトリウムイオン濃

度を変化させ電極電位の変動を追跡したところ,

Fig.5-6に見られるように極めて短時間内で

   0    10   20   30   40   50   右O             Ti而。 量   min

Fig,5-5 Transient respons巳s of Coming NAS 27-4

    electrode to sudden ch臼nge of K+and Ba2+

    concentratlons ln tris buffer of pH 7.2

 .5

 ロ壱一5

宣・5

至。£一5

 雫10

 }5

 0 ■5

 吻

O→10弓MNゼ 1『3→OM No昏

。→10一ユHN{1◎ 10-2→OH No+

O→10一】隔No+ 10冒1→OM No・

   0   10  20  30  40  50  60             τim響. min

FiB.5_6 Transient responses of Coming 476024 pH

                     十    electrode to sudden dユange of various Na

    concentrations in O.01 M diisopropylamine

    501ution

はあるが過渡電位を発現す.ることが確認された。なお,ナトリウム以外の陽イオンでは選択係数が極めて

小さいため0→10-1Mの濃度変化に対してもまったく電位変化を観察することはできなかった。

5.2 MS11-18電極の陽イオンに対する過渡応答電位の測定

5.2,1 1価陽イオンに対する過渡応答とその消滅速度

一39一

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 バックグラウンド溶液としてナトリウムイオン濃度10-3Mに調整したpH5.3の酢酸一酢酸ナトリウ

ム緩衝液を用い,.一方これにナトリウム以外の陽イオンを加え濃度を10-3Mにしたものを被検液として,

前者から後者へ切り替えたとき,又その逆のときに発現する過渡応答電位を測定した。更に,過渡電位の

消滅速度のパラメーターとして,電位飛躍がピークから平衡電位に達する電位変化の半分まで復帰するに

要する時間を半減期としてt%を求め・これで消滅速度を比較した。1価陽イオンについて得られた結果

をTable 5-1に示し,過渡電位の大きさの序列をTableの下に表した。

Table 5-1 1nstantaneous electrode responses to皿onovalent cations in      acetate buffeτof pH 5、3 containing lO『3 M Na+

Monovaleロt

 Oation

0→IO-3 M 10一ヨ→OMResponse

(mV)

t1!2

(s)

Response

(mV)

t1/2

(s)

K+

NH 4+

Rb+

Cs+

{‡ll:1

+18.8{

十1曾.2

+28.2{

+28.5

{‡1::1

34

36

25

27

29

26

22

20

にll:1

-17.2{

一17.6

に髪:1

にll:1

26

24

23

25

24

23

21

21

tV2・Tim・bロ・・t。・i・g。・・h訓f。f tne di・t・・c・f「。m出e peak p。int t。

  the ¢qu飢ibrium potential;

Magnitude of the transient responses:NH♂<Cs+<Rb+,ピ

 ガラス膜表面の履歴状態が同じ程度であるように留意すればTable 5-1に見られるように,それぞれ

のイオンに対する過渡電位はかなり良い再現性を示すことが分かる。それぞれのイオンを加えたときと取

り除いたときの過渡電位の絶対値は必ずしも一致していないが,これは電位飛躍のピークに達する時間が

両者の間で若干異なるためである・%の値で表した過鵬位の消滅速度は過灘位の小さいものほど大

きくなっている。

 次に,10-3Mのナトリウムイオンを含むトリス緩衝液をバックグラウンド溶液とし・これを基準にし

てカリウムイオン濃度をいろいろに変えたときの電位の変動の様子をFig.5r7に示した。

 バックグラウンド溶液からの濃度変化が大きくなるにつれt%の値は小さくなり,従って過渡応答の消.

滅速度は大きく,・・一2Mでは逆に・%の値は大きくな・ている・これはカリウムィわに対するN・mst

応答がこのあたりから顕著に現われはじめるためと考えられる。

                       ロ F塩5-7で得た過渡電位の値と,更にいろいろにカ.リウムイオン濃度を変化させたときの値をTable

5-2に示した。

一40一

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 ・50

 惜。

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一一一・ P『3→響…・… @10凸4→r一・・ P0■5→5・一一・・ P0,5→・

o 5   10丁im■ ,  min

15

Fi呂.5-7 Tran5ient responses of NAS l l-18dec-

    U・ode to sudden change ofvarying con一

           キ    α∋ntration of K  in tris buffer of pH 7.2

    ・・nt・i・i・glO冒3MN、+

Table 5-2 Instantaneous electrode responses to sudden change of varying concentl』atユo皿

of K+in tris buffer of pH 7,2 conta加ing 10■3 M Na+

K+Response

imV)

t1/2

is)

K+Response

imV)

t王12

is)

0→10-7 M 0一

10一ツ→OM 0㎜

     一6”→10” +0.6 97 10-6→ ” 一〇5 96

”→10-5 ” +3.2 50 1『5→ ” 一2.8 54

”→1『4 ” +12.4 34 10-4→ ” 一10.4 34

”→10-3 置’ 十30.2 33 10-3→ ” 一25.3 26

”→10-2 置7 +55.8 42 エ0-2→ ’・. 一43.7 28

1r6→1r3 ” +29.3 37 1r3→10-6 M 一25.6 28

ir5→1r3 仰 +26.5 36 10-3→10-5 「「 一13.9 29

10 4→10-3 〃 +17.9 37 lr3→10-4 「’ ∴16.4 32

                                                 一6 これによると,例えばO→10-6Mのカリウムイオン濃度変化に対する過渡電位の値+O.6㎡Vと10

→10-3Mのときの値+29.3 mVの和はちょうど0→10}3 Mの濃度変化に対するときの過渡電位の値+

302mVに対応しており,同横に0→10而Mと10二5→10-3 Mの値の和も0→10一与Mのときの値に一

致している。このことから濃度変化に対する過渡電位の大きさは加成性を有していることが結論づけられ

た。

一一 S1一

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5.2.2 2価陽イオンに対する過渡電位とその消滅速度

 著者はさらにTable 5-1と同様の実験を2価陽イオンについて行い,得られた結果をTable 5-3に

示した。

Table 5-3 1nsta血taneous electrode responses to divI」ent cations in

      acetate buffer of pH 5.3 containing 1『3 M Na+

Divalent

cation

O→工0-3M 1『3→OMResponse

(mV)

t1/2

(s)

Response

(mV)

t112

(s)

Mgユ+

Ca2+

Sr2+

Ba2+

Co2+

C颯2+

Ni2+

Zn2+

Mn2+

Cd2+

Pb2+

{‡ll:;

+15.3{

+14,6

{‡ll:1

+2L2{

+20.1

+13.6{

+13.5

{‡11:1

十13.6{

十13.8

十132{

+13.8

+142{

+15.1

{‡ll:1

{‡;1:8

2

3

3

5

6

6

11

16

2

3

7

7

2

3

4

3

2

2

3

4

29

28

一1ユ.8{

一12.6

_13.5{

_13.2

-13、8{

一15.o

に{;:;

{ゴ1:;

一17.4{二175

{:1::1

 -132{

一14.0

{二ll:1

{ゴ::1

{=1::;

5

5

12

13

16

14

22

26

4

5

9

10

5

5

6

6

5

4

8

8.

46

4雪

M、g。it。d。。f tlle t・an・i・ht…戸・n・es・Mg2+<C・2+, Ni2“,

 Z。2+<C。2kMn2+<S~+<Cd2k〔h2+くB・2+<Pb2+

 2価陽イオンでは過渡電位の消滅速度は1価陽イオンに比べかなり大きく・急速に平衡電位に近づいて

ゆくことが分かる。又,過渡電位の大きさの序列はブルカリ土類金属イオンに関して見ればアルミノけい.

酸ガラスの選択係数の序列(Mg2+<Ca2+〈Sr2÷<Ba2+)と一致する結果が得られている。

 Fig 5_8はFig.5_5の実験をバリウムイオンについて行ったもので・バックグラウンド溶液からの濃

度変化の小さいところではカリウムイオンよりもむしち過渡電位の発現は大きくなっている・又・カリウ

ムイオンと同様曝厳化猷きくなるほど・%の値は小さくなるが・1・瓢唖のあたりではカリウムイ

一42一

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 +50

 ■40

老帝コ。

重・2。

輩.1。

£ o

ト唱

基軽、...

鳳F・、刷目欄,書

   Bロ2亭

_ o→量。■2団

・昌・・ @μ →10智3.

、・、..・. @厘 →10昂4置

一引.愚. @曽→10凶5暫

_一._@」→10一后・

o

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-50

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…一@ 10叫→ 口

m・… @10幽5→ ‘

一・一 @10-6→ 」

0 5   10Timε rnin

15

Fi呂.5_8 Tran3iellt responses of NAS l l-18elec一

     【rode to sudden chan呂e of vary圭皿g con-

     centration of Ba2+ in tris buffer of

     pH 7.2 containing 10-3 M Nゴ

Table 5_4  1nstantaneous electrode re5ponses to sudden cha皿ge of varyi血g conce皿tra廿on

       of Ba2+in tri$buffer of pH 7.2 conta.ining 10-3 M Na÷

Ba2+Response

imV)

t1/2

is)

Ba2+Response

imV)

t112

is}

0→10-7 M. 0一 10-7→GM o

一”→10■6 ’, 十1.5 70 10-6→・ ” 一1.1 89

”→ 10-5 〃 +53 34 10-5→・ 月 一3.5 56

”→10-4 κ +11.8 24 10-4→ ” 一フ.4 43

・→10-3 置’ 十20.4 16 玉0-3→ ” 一13.3 36

”→ 10-2 押 +36.1 11 10昌2→ ” 一24.3 20

10-6→10-3 岬 +18.7 18 10-3→10”6 M 一13.5 31

10-5→10-3 ” 十14.1 17 10『3→IO-5 「’ 一11.9 2与

lr4→10冒3 ’7 十8.9 15 10-3→10-4 ” 一7、5 19

オンと異な腿択性が一層小さいため・%の値は1・一3Mの場合よ順に・1・さくな・ている・

 バリウムイオンについてTable 5_2と同様.の測定を行うとTable 5_4のようになり,この場合でも

濃度変化に対する過渡電位の大きさは加成性を保っていることが認められた。

一43.一

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5.3 過渡応答現象の解釈

ナ トリウムイオン選択性ガラス電極の過渡応答現象はこれまでに Friedmanらがか )ウムイオンで観察

してお り,又,類似の現象が RechIi比 らによっても指摘 されている。これらの現象について Eisenmall

は次のような概念的な解釈を下 している。ガラス電極膜の表面にはカリウムイオンに対 して選択性の大き

な水和層が,ガラス内部 とは異なった性質を持って形成されてお り,カリウムイオンは最初イオン交換に

よって速やかに水和層内に取 り込まれる結果電極は一時的にカリウムイオンに対する応答を示すが,その

後はナ トリウムイオンに比べガラス膜内部での易動度が小さいため内部へ拡散 してゆくことができず,こ

のため定常状態に到達すれば結局電極はナ トリウムイオンに対 して大 きい選択透過性を持つガラス膜内部

の性質に支配 されてLまうとしている。この解釈 を援用 しながら更に若干の考秦 を発展させて Fig.5-3,

Fig.5-4の形の過演応答現象の説明を試みた.

今, Fig.5-9において試料溶絞中 1価陽イ

オンAの活量が al,内部溶液のそれが aZで平

衡状態にあるとき,第 2の1価陽イオンBが活

量 blで試料溶液中に添加 されたとすると,これ

に積する水和層表面がBにより一部イオン交換

され,水和層内の陰イオン性変換基のイオン交換

平衡定数 Eの大きさに支配されて水和層内表面層

/ "ydrqtedlayer

l

j.T

iEB

FiB・5-9Schematicdiagram OfかsSmembraneimmersedinionicsolutions

にそれぞれの活量 a.′,bユ′が得られ,試料溶液

と水和層,及び水和層 とガラス膜内部のそれぞれの界面で準静的に熱力学的平衡が成 り立っものとする。

このとき試料溶液側のガラス膜の界面電位 VSlをイオン種 Aについて書き表せば,

vsl-竺 In二 十 COnSt ・日日・・-・・・・. (5・1)F al

で表 される。又,内部溶碑側の界面電位 vs2は,これに揺する水和層内のイオンAの活量 を a2/とすると

き,

RT a2vs2--- 1n-I-COnSt

F a2となる.

一方拡散電位に関 しては,これを試料溶液及び内部溶液に按する水和層内の柾散電位 VDl,VD之と,ガラ

ス膜内部の拡散電位 vDJとに分割 して考えると,それぞれの拡散電位は次のように表されるD

まず試料捧碑側の水和層内の拡散電位は,

v,1-竺 〔lntalI・漂 )bll)- Intal〝・濫 )bl〝 ) ト ・・・-..・・.・・.・. (5・3,F

ここで, al〝,bl〝,uA′, uB′は Fig・5-9に示 したようにそれぞれ試料啓舷側の水和眉 とガラス膜

-44-

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内部の境界でのイオンA,Bの活量及び水和層内易動度であり,又標準化学ポテンシャルは水和層内及び

ガラス膜内部の位置に無関係に一定とした。ナ.トリウムイオン選択性ガラス電極では水和層の厚さは極め

て薄く10且程度とされており,定常状態では水和層内のイオンは均一に分布しており活量こう配は存在

しないとみなせるから内部溶液側の水和層内の拡散電位VD2は,

    V,,一・     .     ”…’…’(5・4)

となる。ガラス膜内部の拡散電位VD’は,

    ・・’一班〔           UBl・{・1”+(           UA)・・〃}一呵〕  ・一一・・…(翫・)

で表される。ここで,UA,UBはイオンA, Bのガラス膜内部での易動度である・

 従って,ガラス電極電位Vは式(5.1)一(5.5)の総和で表され,内部溶液濃度.は不変であるから,こ

れらの定数項をまとめると結局次のようになる。

    ・÷・詐+1・{・〆+(器)・・’}一1・一景)・’}

+1・.oa1”+(UBUA)b1つ〕+・・n・t

・一・・・・・…@。一・ ( 5.6)

 ここでもし試料溶液中に第2のイオ:!Bが存在しなければbユ’二b1”ニ0となるから式(5.6)は,

    ,一里1、a、+・…t      …・一・……(…)      Fとなり,電極電位は試料溶液中のイオ.ンAの活量・1のみ1・よって決まる・これはNAS・・一18電極を

ナトリウムイオン単独溶液に浸潰した場合に相当する。

 イオンBの添加によって水和層の表面層でイオン交換が行われ速やかに平衡が完成に近づくが,a1”と

・、〃はまだ添加前とはほとんど変わ・ないか蝿位の変化は式(a・)の右辺〔〕内4撒項のうち第

1項と第2項の和として現れる。この第1項と第2項の和vをイオン交換平衡定数

       ・1’b、’             ._....__.(5.8)    Kコ      a1” bユ

を用いて試料溶液中の活量で表すと,

    ・÷・{a1+・(景)bl}    ・…「・1’‘’””(鋤

となり,電極電位vはK(UB’/uぺ)の大きさに依存して速やかに増大する・水和層の表面層でイオン

交換が行われた後イオンBは水和層内部へ,Aは表面へ拡散してゆき, a1”→a1’, bl”→b1’となるに

つれ,(。B’/。。’)〉(・,/・A♪であれば式(臥6)の第顕と第・項の和は・1・さくなり・Vl坂転して減

少の方向をとる。最終的にはa1”二al’, b1”臨bユ’となるから第2項と第3項の和で表される水和層内の

拡散電位は消滅してしまい式(5・6)は・

一45一

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    ・÷・{・1キK壁)bl}剛   ”“’…”(巳1。)

の形で表され,平衡電位はK(UB/UA)が決定する。

 ナトリウムイオン溶液をバックグラウンドとしてカリウムイオンを加えた場合について考えると,水和

層内でKKッNa+(UK÷’/へ。+’)はかなり大きく,このため式(5.9)による初期の電位の発現は大きいがガ

ラス本体甲では(UK+/UNa+)が著しく小さいため,式(5.6)の電位はやがて減少の方向をとり,最後に

式(5,10)の値で平衡する。この経過はFig.5-3のAの形の過渡応答を良く説明している・又・バリウ

ムイオンの例ではガラス本体中で(UB。2+/UN。+)がほとんどゼロと考えられ,式(5.10)の平衡電位では

バリウムイオンを加える前の電位式(5.7)と同じ値に復帰し,この状態はFig.5-4のAの形に表される。

なお,Fig.5-3, Fig,ゴー4ではナトリウムイオンを含まないpH 7.2の緩衝液をバックグラウンドとし

ており,従ってFig,5-9のイオンAは又水素イオンとみなすことができる。すなわち,ナトリウムイオ

ン選択性ガラス電極では水素イオンもナトリウムイオンと同様,カリウムやバリウムイオンなどに比べガ

ラス膜内部への選択透過性が大きいため,ナトリウムイオンをバックグラウンド溶液としたときと同じ解

釈によってFig.5-3, Fig.5-4の過渡電位が発現するものと考えられる。

 ところで,Fig.5-9に示した水和層とガラス膜内部は実際には明確な境界で区別されているものでは

なく,水和の程度は電極表面から深くなるにつれ漸次小さくなっているものと推定される。従って,水和

層はイオンA,Bに対して均一な性質を持っておらず,易動度の比も電極表面から(UB4 uぺ)→(UB

/UA)と連続的に変化してゆくと考えられるが,説明を簡便にするため水和層内では一定としたもので,                       表面母式(59)のなかに示される易鍍の比1ま実際には水和膚興おけるものと理解される・

 一方,NAs 27-4電極ではNAS 11-18電極と異なり,いずれの陽イオンに対してもFig.5-3,

Fig.5-41、見られるような過渡電{立醗現しないが, Ei・enm・n2)5DによればNAS 27-4電極では水

和層の深さはガラス膜表面から105・星にまで達しており,イオン交換によってガラス膜内に取り込まれた

陽イオ:!はこの深さにまで内部拡散してゆくには長時間を要するとしている。従って,NAS 27-4電極,

はMS 11-18電極と異なりガラス電極膜を均一な相とみなすことができ,過渡応答は見られないこと

が理解される。すなわち,式(5.5)で示されるガラス膜内部の拡散電位は有限時間内では一定であり,式

(5.3)で示される水和層内の拡散電位との時差発現は起こらないことになる。

 pHガラス電極は又ナトリウムイオンに対してFi呂.5-6に示す過渡電位を発現するが,この場合の過

渡電位は極めて短時間内に消滅する。従って,Fig、5-6の実験に用いたpHガラス電極ではナトリウム

イオンの水和層内易動度が大きくイオン交換指すばやくガラス膜内部との境界に達してしまうか,あるい

は又ナトリウムイオンが拡散し得る水和層がガラス電極膜表面からごくわずかの範囲に限られており,イ

オン交換後ナトリウムイオンはほとんどガラス膜内部へ拡散してゆくことなくガラス膜表面に留まってい

るかのいずれかであると想像される。

 本章の実験によってナトリウムイオン選択性ガラス電極は1価陽イオンのみならず,ほとんどの多価陽

イオンに対して過渡的ではあるが応答することが明らかとなり,その応答の経過を電極ガラス面の水和層

及びガラス本体内の拡散電位の時差発現によるものとして説明した.

一46一

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第6章N鵠11一ユ8電極の多価陽イオンに対する     過渡応答を終点検出に利用する電位差滴定

 ナトリウムイオン選択性ガラスNA串11-18電極の多価陽イオンに対する応答はその選択係数が極め

て小さいために定常状態においてはほとんど見られない。しかしながら,前章で明らかにしたように1価

陽イオンのみならずほとんどすべての多価陽イオンに対してもその濃度を急激に変化させたときには電極

電位は瞬間的に変動する。この一時的な過渡電位はそれほど大きなものではないため応答電位を計測して

直接被検陽イオン濃度を求めることは困難である。しかしながら,多価金属イオンによる沈殿滴定やキレ

ート滴定の際には,当量点近傍での遊離の金属イオン濃度の急激な変化があり,電極電位の過渡応答現象

によってこの滴定終点を検知し得ることは十分考えられる。そこで,沈殿滴定の例としてNAS 11-18

電極を指示電極としてまずバリウムイオンによる微量硫酸イオンの自動滴定を試みた。水溶液中での滴定

では硫酸バリウムの水中溶解度積が比較的大きいことから当量点での電位変化はほとんど観察されなかっ

たが,有機溶媒を加えて硫酸バリウムの溶解度積を下げて滴定すれば当量点付近において電位飛躍が得ら

れることが判明した。そして更に滴定条件を検討した結果,70%有機溶媒甲の滴定では当量点近傍にお

ける突然の電位の増加により,第3章の銀滴定の場合と同様に滴定曲線は鋭い屈折を示し,再現性のある

滴定終点が得られた。

 次にキレート滴定では,キレート試薬を数種の多価金属イオンでそれぞれ滴定したところ,錯体安定度

定数が極めて大きいため水溶液中においても,70%有機溶媒中でのバリウム滴定と類似の滴定曲線が得

られた。なお,金属イオンのキレート試薬による直接滴定では滴定曲線は非対称の逆S宇形となり明確な

終点を得ることは困難である。従って,本法によるキレート滴定では目的金属イオンに過剰のキレート試

薬を加えた後目的金属イオンと同じものあるいはこれより安定度定数の低い金属イオンを滴定液とする逆

滴定法に応用するのが良いことが分かった。

6.1 硫酸イオンの微量沈殿滴定

6.L1 滴定操作法

 硫酸イオンを含む水溶性試料数mlを100mlのビーカーに正確に量り取り,試料がアルカリ性であれば塩

酸を加えて一度酸性とし,酸性であればそのまま0.2Mヘキサミン1m1を加えpH 5-6に調整した後ア

セトン濃度が約70%となるように水及びアセトンを加え全量50mlにする。一方,指示電極MS 11-18

及び参照電極を(LOIM塩酸で良く洗浄した後試料液にそう入し,0.005M塩化バリウム標準溶液を用い,

滴定速度0.5m1/minで自動滴定を行う。当量点近傍における電位の突然の増加によってチャート紙上に

描かれた滴定曲線の屈折点を終点とする。なお,試料液中にアルカリ金属イオンが含まれていれば負の滴

定誤差を生ずるため,これは滴定に先だって試料液をイオン交換カラムに通して取り除いておかなければ

一47一●

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ならない。

6.1.2 滴定条件の検討

 A)非水系における濁定曲線  NAS 11-18電極を用い, pH 5.5に調整した0.OO5M硫酸2.500

皿1を90%アセトン溶液中で0.005泌塩化バリウム溶液を滴定液として自動滴定を行ったところ,Fig.6-1

に示す滴定曲線が得られた。

 Fig.6-1はイオン選択性電極を用いた場合

の電位差滴定に良く見られる非対称のS字形滴   》                       E-140定曲線を示しており,当量点付近での電位飛躍   言

はそれほど大きq、ないが,かな痴り、うで 薯

                       臨_150あることから硫酸イオンの微量定量に利用する

ことが可能と思われ,以下の滴定条件の検討を

                        一180行った.

 なお,Fig.6-1における非水溶媒甲での電

位飛躍がNA.S 11-18電極のバ.リウムイオン

に対するNemst応答に基づくものでないこと

をFig.6-2に示す結果によって確認した。す

なわち,塩化バリウム濃度をいろいろに変えた

90%アセトン溶液中にNAS 11-18電極を

浸し,ほぼ安定電位に達したときの電極電位を

それぞれ読み取り,電位とバリウムイオン濃度

の逆数の対数すなわちpBaとの関係を表したも

のがFig.6-2である。比較のため水素,ナト

リウム,カリウムイオンについても同憬の実験

を行った。これから,バリウムイオンに対する

Nemst応答は非水溶媒中においてもほとんど

ないと考えて良い。又,水素,ナトリウム,カ

リウムイオンについては水溶液の場合とほぼ同

程度のNemstこう配を示しているが,非水溶

媒中では水素イオン活量が低下しているため水

素イオンの選択性は水溶液中のときとは逆にナ

トリウムイオンより小さくなっていることが分

かる。

 更に,非水溶媒中においても電極がバリウム

イオンに対して過渡応答を示すことを次の簡単

  1     1、5     2     Z5     3

             0.005M BロC12, ml

                     ユーFig.6-l Tit写a面oncurΨeof2500ml ofO.005MSG4    with O.005 M Ba2+jn 90 vo且%a¢etone at

    pH 5.5 using NAS ll-18 el¢cIrode

 一200

宅一15。

5-100歪

 一50

■50

φtoO

    1  2  3  4  5  6  ?          P【Cotion]

Fig.6-2 Eleじtrode response50f NAS 1レー18

             ユ       キ   キ              to Na,H , K . and B聞  concεntτ初一

    1ions in gO vol%ac¢tonc medium

    So且u星io而s containing melai cations

 監     ar¢ adjusted at pH 5,5、

一48一●

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な実験によって確かめた。すなわち,pH 5.5

の90%アセトン溶液を用意し,電極をそう入・

して電位が安定した後0.OO5M塩化バリウム溶

液をビュレットから1滴滴加したときの電極電

位の変動を追跡したものがFig.6-3の且である。

又,皿は水溶液中での実験結果である。

 且,五の比較から,非水溶媒中におけるバリ

ウムイオンの過渡応答は水田液中のものに比べ

大きいことが分かる。これは水素イオン活量が

非水溶媒中では水溶液中より低下しているため

水素イオンに対するバリウムイオンの相対的活

量が大きくなることによるものと考えられる。

 B)pHの影響  塩酸及びヘキサミン52)を

用いて0,005M硫酸のpHをいろいろ変え,90

%アセトン溶液として滴定を行った結果を

Fig.6-4に示す。

もloゴ

8

  G

o→2趣10一触B。2φ

+10

o

0→2.3犀lO-6M B{1Z。

11

 これによると,pH 2では電位飛躍はほと

んど見られず,pH 3より高くなるにつれ電

位飛躍も大きくなるが,pH 5以上では電位

飛躍の大きさは同程度となる。又,トリス緩

衝液を用いてpH 7以上で滴定すると電位飛

躍の位置は当量点以後にずれてくる。従って,

被滴定液のpHは02 Mヘキサミン緩衝液1

皿1を用いてpn 5-6付近に調整しておくの

が適当である。

 C).有機溶媒の種類と濃度  有機溶媒と

してメタノール,エタノール,イソプロパノ

ール,アセトンを選び,それぞれの90%濃

度溶液における滴定曲線を作成した結果はFig.

6-5に示すとおりである。

     0     10     20     30

            τimo min

Fi呂6-3 T・an・ient…p・n・e・。f NAS I 1一 u    electrode to sudden chan昌。 of Ba

    concentration in 90 vo1% acetone

    medium(1)and aqueoug medium{II)

    at pH 6.5

寺100

ゴ o登

ε

一、oo

一200

〔1〕

(3〕

(5】

   0      0」5      1      1.5      2      2.5      3

              α005M目回C12,mI

Fig.6-4 Eff6ct of pH on titlation curve of 2.500 ml of

    O.OO5 M SO42-with O.005 M Eaユ+in 90 vol%

    acetone

    (1)pH 2:(2)pH 3;{3)pH 4;(4)pH 5;(5)pH 6

 メタノールを用いた場合の電位飛躍は当量点の手前で起こり,又電位飛躍も小さい。他の3者はほぼ似

通った滴定曲線となっているが,アセトンを用いた場合が若干鋭敏な電位飛躍を示した。

 次に,被滴定液のアセトン濃度を変えて滴定した結果をFig.6・一6に示した。

 これによると,アセトン濃度90%では非対称のS字形滴定曲線となっており,アセトン濃度が低くな

るに従づて当量点前後の電位飛躍は小さくなるが,滴定曲線は当量点付近までは電極電位が水棄イオン濃

「49一

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一100

慧一125

一150

一1,5

〔D

〔2)

 一150

 -170

し150喜.17。

£一150

 -170

 -150

 -170

 -150

 -170

1

{3)

lll

lV

⊂4〕

   1       1.5        2       2,5       3

              0.005M BαC12、ml

Fig.6-5 Titration curves of 2.500士nl of O.005 M    SO、2-with o.0。5 M Ba2+in 9。・。1%。,Bani・

    solΨe口tS at pH 5.5

    (1)Isopエopano1; (2)Methanol; (3)E廿1ano1;

    (4)Acetone

V

   1      1.5      2     25      3

              0.OO5ト4 日oCiz, ml

Fig.6_6 Effect of acetone concentrations on titration

                    2+                     with    curve of 2.500 ml of O.005 M SO4         2+    0.005MBa           at pH 5.5

    1: 90 Ψ01%:  II: 80 vol%;  111: 70 vo1%;

    IV=60 vol%; V:50Ψo且9ち

度のみに支配されているため電位飛躍はほとんど見られず,当量点付近において突然バリウムイオンに対

する過渡応答が起こるようになる.特にアセトン濃度70舞とした場合,滴定曲線は鋭く屈折し,チャー

ト紙上から直接この屈折点を読み取ることができる.従って,滴定は,70%アセトン溶液中で行うのが良

いが,このアセトン濃度を滴定終了まで維持するためにはバリウムイオン標準溶液も70%イソプロパノ

Table 6-1 Effec重of de王ivery.speed of O.OO5 M bariuエn chloride solution

agahlst 2.5GO ml ofαOO5 M sulfnric acid

De工圭very speed

 of titrant

 (mllmin)

VoL of O.005 M BaC12(ml)Mean vol.

 (m1)

S.D.

(μD

0.25

05

1

2.483

2.478

2.483

2.493

2.48言

2.488

2.497

2.483

2,497

2.497

25022.507

25022.507

2.488

2.488

2.493

2.488

2.488

2.488

2.493

2.493

2,493

2.493

2.497

2.507

2.488

2.502

2.4臭8

2.49宕

2.488

2.483

2.488

2.493

2.493

24972.493

2.493

2.497

2.488

2.502

2.498

2.493

2.507

2.502

2,488

2.493

2500

4

4

7

一50一

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一ル性としておく必要がある。なお,アセトン濃度50%になると電位飛躍はほとんど判別し難くなる。

 D)滴定速度と再現性  滴定速度による本法の終点の再現性を調べるため,Table 6一王のように滴

定速度を変えて繰り返し滴定を行った。

 Table 6-1の結果はいずれも満足すべき再現性を示しているが,総合的にみて,0.5ml/minが滴定速

度として適当であると判断される。又,70%アセトン溶液においても滴定を連続的に繰り返し行うと,

電極応答に多少履歴現象が認められ,終点前から電位が徐々に増加するようになり,終点での明りょうな

屈折点が得られなくなる。この影響は滴定開始前に電極を被滴定液のpHより低い0.01 M程度の塩酸溶

液で洗浄すればほぼ避けられることが分かった。

 次に,本法による硫酸イオン量とバリウムイオンの滴加量との直線関係を調べるため,O.OO5M硫酸標

準溶液の採取量を階段的に変化させ,6.1.1の滴定操作法によってそれぞれの滴定値を求めた。その結果

をTable 6-2に示す。

Table 6-2 Titration50fΨary血g volume of O.005 M sulfu亘。 acid

      withα005 M barium chloゴde solution

0、005MH2SO4 taken    (ml)

Vol. of O.005 M BaC12

    (m1)

0.500

1.000

1.500

2.000

2.5GO

3,000

3.500

4,000

4.500

5.000

55006.000

6.500

7.000

7,500

8.000

8.500

9.000

9.500

10.000

0.508

LOO7L4961.989

2.493

2.981

3.495

3.978

4.477

4.960

5.469

5.972

6.446

6.954

7.458

7.951

8.455

8.943

9.447

9.945

・・・…re、・e・・・…y・・.993 x+・.・・7・4マ葺・・ω)

 これから,最小二乗法を用いて回帰分析を行い,滴定値の回帰直線からのばらつきとして不偏分散の平

方根7(μDが得られた。従って,電極のバ’ 潟Eムイオンに対する過渡応答の開始点を本滴定法の終点と

すれば試料量と滴定値とは十分良い直線性を保つことが明らかとなった。

一51一

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6.2 数種金属イオンの微量キレート滴定

6.2.1 滴定操作法

 目的金属イオンを含む水溶性試料数皿1を100m[のビーカーに正確に量り取り,5ml又は10m1の一定過

剰のEDTA-2LiあるいはEDTA-2 NH 4標準溶液を加えた後,目的金属イオンと・錯体を作り難い有機

アミン又はピリジン緩衝液51n1を加えて所定のpH値に調整し,更に水を加えて全量50 m1にする。アル

カリ土類金属イオンの丁合は有機溶媒濃度が70%となるようにエタノール及び水を加えて全量を50m1

にする。指示電極としNAS 11-18電極,参照電極に飽和カロメル電極を用い,過剰のEDTAを目的金

属イオンあるいはこれより安定度定数の低い金属イオン標準溶液を用い,滴定速度O.5皿i/minで逆滴定を

行う。

6.2.2 滴定操作の検討

 A)pH値とカドミウムイオンのキレート滴定曲線  金属キレートの安定度はp}{に支配されており,

又NAS 11-18電:極は水素イオンに強く応答するから滴定曲線の形は当然被滴定液のpHに依存するも

のと考えられる。そこでまずEDTAとの安定度が高く,しかも比較的大きな過渡応答を示すカドミウム

イオンを選び,pHをいろいろに変えたEDTAの水溶液を0.005Mカドミウムイオン溶液で滴定し,得

られた滴定曲線をFig.6_7に示した。

 NAS 11-18電極のアルカリ金属イオンに

対する影響を取り除くためEDTA.溶液は遊離

酸をモノエタノールアミンに溶かしたものを用い

た。pH 5では滴定中電位の変化はほとんど見

られないが,pH 6-10の範囲では当量点近傍

における突然の電位の飛躍により滴定曲線は鋭

く屈折し,滴定終点を容易に読み取ることがで

きる。Cd-BDTAの条件安定度はpH 10付近

まではp}{が高くなるほど大きくなるため謝屈

折以後の電位飛躍もこれに相当して大きくなっ

ている。これらの滴定曲線は6ユの硫酸イオン

のバリウム滴定によるものと類似の形態を示し

ているが,硫酸バリウムの水中溶解度積がそれ

 一320

 -330彊

のロ ?ソロ

じ ロユアむ

且一一4zo

 -430

 -450

 -460

 -470

(1〕

〔2,

〔3,

   1      1.5      2      2.5      3

             丁itrqnt     ml

FIB.6-7 Titration curve50f 2.500 ml of O.005 M    EDTA w」th O.005 M Cd2+・nd・, va・yi・8 pH

    valロes

    (DpH 5 by Hexamine一}{G; (2}p}{6by

    Hexaminε一Hα;(3)pH B by triethanolamine・

    蚤{(コ; (4)pH 10「by mo血oethanolamine・H(]

ほど小さくないためバリウム滴定では非水系でなければ電位飛躍が得られないのに対し,この場合はCd-

EDTAの安定度定数が非常に大きいため水溶液中での滴定においても十分な電位飛躍が観察される。エ

タノールアミン類は多価金属イオンと錯化合勃を生成するため緩衝液の濃度を高くすれば当量点以後にお

一52一

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ける電位飛躍は抑制される・従って,緩衝液を多量に加えることは望ましくないが,本法の滴定終点の判

別は作図法によるものではなく,滴定曲線の屈折面の位置を直接読み取ることにあるから終点前後におい

てpHの変化による多少の電位変化が生じても差し支えなく,滴定中厳密にpHを一定に保っておく必要

はない。緩衝液として外に2,4,6一・トリメチルピリジンー塩酸,トリスー塩酸緩衝液についても検討を

加えたがpHが同じ値であればFig,6-7に見られる電位飛躍¢)大きさと特に相違はなかった。

 B)亜鉛,コバルト,銅,鉛,ランタンイオン.のキレート滴定曲線  キレート滴定法に良く用いられ

る代表的な2価金属イオンとして亜鉛,コバルト,銅,鉛イオン及び3価金属イオンとしてランタンイオ

ンを選び・Fig.6-7と同横の実験を行った。銅イオンはエタノールアミン類との錯体安定度定数が高く,

従って,エタノールアミン系緩衝液を用いれば当量点以後における電位飛躍が著しく抑制されるため,2,

d,6一トリメチルピリジンー塩酸緩衝液を使用した。滴定曲線の屈折点の位置が読み取れるpHの範囲

は亜鉛イオンでは6~8.5,コバルトイオンでは6.5’一10,銅イオンでは5.5創9,鉛,ランタンイオン

では5.5-10であった。最適PH値による滴定曲線をFig.6-8に示す.

 更に,それぞれの金属イオン濃度を10倍に希釈して。.0005Mを滴定液としたときの滴定曲線をFig.

6-9に示した。

 一400套

1-42・

一440

一460

             ,」三)

             〆{諭

             ~            ’・曼

              (4)

        __._才            ノ5齢二二瓢蝿濫寵====:コ====二」   〔5)            ,’〒陽’■噛-貼隔」.圏

            ノ           闘ノ

    1         1.5         2        2.5         3

              τitrqn豊.   ml

Fi呂6-8 Tltration curΨes of 2.500 ml of O.005 M

    EDTA with O.OO5 M polyvalent cation$

    (1) Cu2+, pH 8 by 2,4,6-trime出y且pyridine■

      Hα;    (2)La3+, pH 8 by t,iethan。且、mi。@HCi;

    (3}Pb2+, pH 8 by triethanolamine-HC1;

    (4)Z・ユ+、pH 8 by tri。th、n。1。mi。・・HCI;

    (5)Co2+, pH 8.5 by triethanolamine-HCI

宅一42。

£.440

一460

11)

【2)

3

15)

(6)

   1      隼.5      2      2.5      3

             ηtrunl m量

Fig.6-9 Titfation curΨes of 2500 ml of O.0005 M

    EDTA with O.0005 M polyvalent cahons    {1)C・2+,pH 8 by 2,4,6・t貢m・thylpyridin6

      HC1;    {2)La3+, pH 8 by triethanolamin{>HC1;

    (3)Zn2』㌧pH 8 by triethanolamine-HC1;

    (4)Pb2+, pH 8 by triethanolamin昏Hq;

       ユキ    {5)Co , pH 8.5 by triethanolamine-Hα;    {6)Cd2+, pH lO by monoethanolamine-HCl

 終点での滴定曲線の屈折はかなり鈍化してくるがおおよその終点の判別はこの濃度の範囲でもなお可能

である。

 C)アルカリ土類金属イオンのキレート滴定曲線  アルカリ土類金属イオンはEDTAとの安定度定

数.ェ小さいため水溶液中における滴定では当量点の手前から電位変化が現われ滴定曲線の屈折は鈍くなり,

pHを10に上げても明りょうな終点を得ることは困難ζ.なる。これは非水系で滴定を行うことでかなり

一53一

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改善され,特にEDTAとの安定度定数が比較的大きいカルシウムイオンではFig.6-10に見られるよう

に明りょうな屈折点が得られるようになる。バ

リウムイオンでは70%エタノール溶液中でも

なお屈折点は若干鈍くなっているが,これはバ

リウムイオンとの安定度定数がEDTAよりも

大きいCy DTAを使用するか,ジイソプロピル

ァミン等の強塩基アミン類を緩衝液に用いて

pHを高くすることにより更に改善されるもの

と考えられる。

 D)共存1価陽イオンの許容濃度  1価陽

イオンが滴定曲線に及ぼす影響を調べるため

EDTA溶液にナトリウム,カリウム,リチウム

及びアンモニウムイオンのそれぞれを加え,滴

定液には過渡応答の比較的大きなカドミウムイ

オンと比較的小さなロバルトイ才ンを選びそれ

ぞれについて滴定を行った。

 一320喜

1一…

一360

一ユ日0

川〔2〕

{3}

て4〕

   1         t5         2         2.5         3

              了i亀rqn吐, ml

Fig.6-10 Tit【塾tion cロrvεs or 2,500 ml of O.005 M

    EDTA wit玉10.005 M a且kI」ine earth metaI

    ions in 70 vol%ethanol solvent at pH iO

    (1)Ba2+; (2)Ca2+; (3)Mg2+: (4)Sr2+

             1価陽イオン濃度が高くなるにつれ滴定曲線はpHを低くした場合と同じよ

うに屈折点の位置は変化しないが屈折以後の電位飛躍は抑制され,Table 6-3に掲げた濃度以上ではも

Table 6-3 Tolerable concentration of coexisti1191rnonovalent cations

il}titration of EDTA with metal cations

TitlantCOnCen tration(M)

Na+ K+ Li+ NH叫+

Co2+

Cd2+

2× 10”3

2× 10-3

1X 1『32× 1『3

1×10嘗21X lO-2

5X l『31× 1『2

はや電位飛躍は観察されず滴定曲線の屈折点を読み取ることは不可能となる。

 E)カドミウムイすンのEDTAによる直接滴定  カドミウムイオンを0.OO5 M EDTA溶液で直接

滴定を行ったところ,Fig.6-11に示すように当量点付近では非対称の逆S字形のような滴定曲線が得ら

れた。

 Fig.6_7の逆滴定のように当量点近傍での過剰のカドミウムイオンの発現によって滴定曲線が屈折を

示すのとは異なり,遊離のカドミウムイオンの急激な減少によっても,既にイオン交換によっ七電極膜表

面の水和層内に取り込まれているカドミウムイオンの電極界面に対する供給が継続され,電位応答が突然

消滅してしまうものではないため,このような非対称の逆S字形曲線になるものと考えられる。このこと

から,直接滴定法では滴定曲線が非対称の逆S字形となることと,多価陽イオンに対する電極の過渡応答

がそれほど大きいものではないため電位飛躍が小さいこととの理由で,再現性のある終点を得ることはや

一54一

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や困難であると思われる。

 F)滴定精度   EDTA標準溶液の作製に

遊離酸を用いることは水に難溶性であるため不

便である。しかし,Table 6-3の結果からリ

チウムあるいはアンモニウムイオンが比較的高

濃度で共存していても滴定曲線の屈折点は読み

取れるから,EDTAのリチウムあるいはアン

モニウム塩を使用するのが便利である。αOO5

MEDTA一一2h標準溶液2.500mlとり,0.OO5

Mカドミウムイオン標準溶液で繰り返し滴定し

て終点の再現性を求めたところTable 6-4の

結果が示すように,滴定値のばらつきとして標

準偏差8(μ1)と精度良い値が得られた。

  Table 6-4

ごロるユロ聲

£

 一440

一450

   1      1.5       2      z.5      3

              Titrqn止 而l

Fig.6-11 Titration c町ve of 2500 ml ofαOO5 M    Cd2+with O.005 M EDTA at pH 8

R,peat,d tit,ati。・・。f 2.500 ml。fα005 M EDTA-2Li withα005 M Cd2+

VoL ofO.005 MCd2+(ml)Mean vo1.

 (m1}

S.D.

(μ1)

2.485

2.485

2.4.95

2.480

2.495

2,480

2.490

2.495

2.485

250025102.495

2,490

2.490

2.490

2.491 8

 Table 6-5はEDTA量とカドミウム滴定量との直線関係を求めたもので,実験結果から最小二乗法

を用いて回帰分析を行い,滴定値の回帰直線からのばらつきとして不偏分散の平方根8(μ1)を得た。

Table 6-5 Titrations of varying volume of O.005 M

EDTA-2Li with O.005 M Cd2+

α005MEDTA-2Li taken     (mエ}

VGLofO.005MCd2+    (m1)

05001.000

1.500

2.000

2.500

3.000

3.500

4.OOO

4.500

5.000

0.510

1.OIO

l.495

L9902.485

2.975

3.475

3.985

4.475

4.950

Li・…r・g・e・・i。・・y・・。989・+。.・15・、犀「・8いD

一55一

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 又,一定量のカドミウムイオン溶液に過剰のEDTA溶液を加えた後0、OO5Mカドミウムイオン標準溶

液で滴定を行っても終点の再現精度に変化はなく,更にこの溶液をカドミウムイオンの代わりに亜鉛イオ

ンで滴定を行っても滴定曲線はEDTA溶液を直接亜鉛イオンで滴定したものと特に相違は見られなかっ

た。従って,本法は試料溶液に一定過剰のキレート試薬を加えた後試料イオンあるいはこれより安定度定

数の低い金属イオンを滴定液とする逆滴定による金属イオンの微量定量に適していると考えられる。

一56一

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第7章 フラスコ燃焼法を併用する有機微量分析への応用

 陽イオン選択性ガラス電極の有機微量分析への応用例として,有機物質中のナトリウム,カリウム,ハ

ロゲン及びカルシウムをフラスコ燃焼法鋤削茄)によって定量した。すなわち,有機試料をフラスコ中で分

解し,ナトリウム及びカリウムはそれぞれナトリウムイオン選択性電極と1価陽イオン選択性電極を用い

直接電位差法で,ハロゲン及びカルシウムはナトリウムイオン選択性電極を指示電極としてそれぞれ銀滴

定法及びキレート滴定法によって定量した。フラスコ燃焼法は炉紙に包み込んだ試料を白金ホルダーに取

り付け,吸収液を入れて酸素を満たしたフラスコ内で試料を瞬間的に焼却し,吸収液中の目的成分を適当

な方法で定量するものである。

 有機物質中のナトリウム及びカリウムの微量定量は従来試料を空気又は酸素気流中で焼却して得た灰分

を水に溶解するか,ケルダール分解あるいはカリウス封管法によって湿式分解した後前者は酢酸ウラニル

亜鉛を加えナトリウム塩として,後者はヘキサク必罰白金酸を加えカリウム塩として沈殿させる重藍絵58)

が良く用いられてきたが,操作がはんざつなうえ定量値の再現性はあまり高いとは言えない。本章では水

を吸収液としてフラスコ燃焼法により試料を分解した後,吸収液を一定体積に希釈し,ナトリウム及びカ

リウムイオン濃度をそれぞれ該当する電極で測定し,有機化合物甲のナトリウム及びカリウムの含有率を

求めた。

 一方,有機ハロゲンの微量定量はこれまで,フラスコ燃焼後ジフェニルカルバゾンを指示薬とし硝酸第

二水銀による目視滴定が良く行われているが,ジフェニルカルバゾンは多くの金属イオンと有色錯化合物

を作るため金属含有試料では滴定終卓の判別が困難である。そこで第4章で述べたようにナトリウムイオ

ン選択性電極を指示電極に用い,非水溶媒に近い状態で硝酸銀滴定液による自動滴定を行った。

 又,有機物質甲の微量カルシウムはナトリウムやカリウムと同様に灰化法によって試料を分解後,ピク

リン酸を加えカルシウム塩の形にして重量測定する定量法59)がこれまで主に採用されてきたが,これをフ

ラスコ燃焼により迅速に定量することを試みた。燃焼によって生成した酸化カルシウムを塩酸吸収液に溶

解させ,これに一定過剰量のキレート試薬を加えた後ナトリウムイオン選択性電極を指示電極としてカル

シウムイオンで逆滴定を行い,第6章で述べたように電極のカルシウムイオンに対する過渡応答現象を利

用して滴定終点を求めた。

7.1 直接電位差測定法によるナトリウムの’定量

7.1.1 定量操作法

 ナトリウムを含む有機試料数㎎を炉紙上に正確に量り取る。石英製の試料ホルダーを付けた燃焼フラス

コ内に吸収液として水10mlを入れ,酸素ガスを満たし、試料をその中で焼却する。.フラスコをときどき

振り混ぜ吸収液を試料ホルダーに良く接触させ,15分後吸収液を水を用いて100ml容量のメスフラスコ

「一57一

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内に完全に洗い込む。 トリス緩衝液 10mlを加え,水で標線まで満たす.これを100ml容量のビーカ-に

移 し替え,指示電極 (Orion94-llA)と参照電極 (ダブルジャンクション型 )をそう入 し,ビーカ-杏

揺 り動かして測定液を数秒間電極になじませ,5分後電極電位を読み取る。別 に ,塩化ナ トリウム標準溶

液で求めた検量線から有機物中のナ トリウムの含有量を求める。

試料中のナ トリウムの含有率は次式に従って算出する。

Antilog(- pNa測定値 〕x2299

試料量 皿g

7,1.2 定量結集

一般に燃焼フラスコの試料ホルダーには白金バスケットを使用 しているものが多いが,最初これ を用い

て標準試料の酒石酸ナ トリウム1-10mg を燃焼すると, Fig.7-1白丸のようなプロットが得られたD

酒石酸ナ トリウムを直接 フラスコの吸収硬に加え,

燃焼過程を経ないで同様に処理 した測定液はXの

プロットを与え,塩化ナ トリウム標準溶根で作成

した検量線と一致する。このことから白金バスケ

ット中で燃焼 したときの酒石酸ナ トリウムの分析

値は相対誤差 として平均 2,8%低い値が得 られる

ことが分かった。

この負の誤差原因はおそらく,ナ トリウムが燃

焼時に高温の白金網内に拡散 L ,攻収液中にナ ト

リウムイオンとして溶け出さないためかと思われ

る。そこで,白金バスケットの代わ りに石英フォ

ークを有する燃焼フラスコを用いて同様にして測

定値をプロットすると, Fig,7-1黒丸のような

結果が得 られ,ナ トリウムの回収率はほぼ 10070

に近づいたDただL,白金/1スケットを用いて作

成 した検量線も一応の直線性を示 しており,これ

BulP

E)巴

t}Hd

I=_ 二 ∴ -_ _

Fig.7-1CaIJ'brationJirIesobtainedfromdirrcTenl

typesorsilmPleholderjneombuStionnask

- .- PIutinunl即uZebasket;-●- Quart.iho一der:

- x- StandardsarnplelvこlSdjsso)vcd

direetJy in absorption 一iquid wirholltcombuslion.

を最小二乗法を用いて回帰分析すると,回帰直線

からのばらつきとして不偏分散の平方根 0.010(pNa)を得た。 これをナ ト[)ウムの理論値に対する相対

誤差に換算するとはぽ2罪'となり,従って,試料中のナ トリウム含有率が 2570以下のもので許容誤差を

0,5罪■程度とするならば通常の白金バスケtyトを付けた燃焼フラスコを用いて良 く,この場合ナ トリウム

標準試料をフラスコ内で燃焼 させて作成 した検量線を用いさえすればかなり良い精度で定量 し得ると考え

られる。

石英製試料ホルダーを付けた燃焼フラスコを用い,ナ トリウムを含む数種の標準物質を選び, 7.2.1の

定量操作に従って分析 した結果を Table7-1に示 した。

- 58-

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Table 7-1 Microdeterm㎞ation of sodium in organic substances

using Orfon 94-11A electτode

SampleAmOUnt

 (mg)

Na(%)

Calc. Found Dev.

Sodium OXalate

Sodium propionate

Tiron

 3.841

1211

 3.8531桧:ll;

 3.94工

il:ll:

34.31

23.93

13.84

34.36

34.08

34.49

23.54

23.77

23.87

13.88

13.62

13.69

+0.05

-0.27

+0。18

-0.39

-0.16

-0.06

+0.04

-0.22

-0.15

S.D.=021(%)

 これから,分析誤差のばらつきとして標準偏差σ‡0.21〔%)が得られた。Table 7-1の有機物質は水

溶性であり,必ずしもフラスコ燃焼によらずともナトリウムを定量し得るが,燃焼過程を含めた場合の分

析誤差を知るためフラスコ燃焼により定量した。

 以上の結果から,水に不溶性の有機試料例えば高分子材料,油脂,生物試料中のナトリウムでも精度良

く定量し得ると考えられる。

7.2 直接電位差測定法によるカリウムの定量

7.2.1 定量操作法

 カリウムを含む有機試料数mgを炉紙上に正確に量り取る。吸収液として水10mlを入れ酸素で置換した

燃焼フラスコ中で焼却する。焼却後吸収液を白金バスケットに良く接触させるためにときどきフラスコを

激しく振り混ぜる。15分後吸収液を水約50m且を用いてIOOml容量のメスフラスコに移し替え,トリス

緩衝液10mlを加え,更に水で全量100 miとする。これを100 ml容量のビーカーに入れ,指示電極(CGrn

ing NAS 27-4)と参照電極(ダブルジャンクション型)をそう入し,ピーーカーを揺り動かして測定液を

数秒間電極になじませてから,更に正確に10分後その起電力を測定する。検量線は塩化カリウム又はフ

タル酸水素ゐリウム標準溶液で作成したものを用いる。

 試料中のナトリウム含有率は次式に従って算出する。

       Ant皿og(一pK測定値)x3910    K%=               X100            試料量 mg

一59一

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7.2.2 定量結果

 白金バスケットを試料ホルダーとする燃焼フラスコで焼却したカリウムの回収率を調べるため,カリウ

ムとして400-2000μgの範囲でフタル酸水素カリウムを量り取り,一方でフラスコ燃焼を,他方でその

まま標準試料を作りそれぞれの測定値を求めた。これからカリウムの理論値をx,測定値をyとし,式

(3.13)のαを0、08xユ⑪ 4とおいてそれぞれ最小二乗法を用いて回帰分析を行い,検量線として回帰直

線y=LO168x-O.0531及びy=LO179x-O.0578を得た。2つの検量線を比較するためフタル酸水

素カリウム標準溶液を用いた検量線を基準にしてフラスコ燃焼により求めた9回の測定値を処理し,.カリ

ウムの回収率を求めると平均99.78%となり,回帰直線からのばらつきとして不偏分散の平方根V嘱

二〇.003(pK)を得た。これをカリウムの理論値に対する相対誤差に換算すると0.64%となる。従って,

ナトリウムと異奪り試料ホルダーに自金バスケットを使用しても,燃焼時におけるカリウムの白金内への

拡散は無視し得る程度であると考えられる。又,カリウムの含有量が特に高いものでない限り,検量線は

塩化カリウム又はフタル酸水素カリウムのような標準溶液を用いて作成したもので十分である。

 フタル酸水素カリウム標準溶液を検量に用い,数種のカリウム含有有機試料を分析し,その結果を

Table 7-2に示した。

Table 7-2 M三crodetermination of pota5sium in organic substances

      using Corning NAS 27-4 electrode

Sample Amoun亡(mg)

K(%)

Calc. Found DeV.

Potassium bitartrate

Pota琴siロm propionate

Potassium gluco血ate

14.362

11:lll

j3.970

闇13,943

il:1量

20,78

3486

16.69

20.93

20.72

20.94

34.50

34.88

34.65

16.85

16.79

16.94

1+0、15

一α06

+0.16

一α36

+0.02

-0.21

+O.16

+O.10

+O、25

S.D.= 0.20{%)

 これから,分析誤差として標準偏差σ=0.20(%)が得られた。なお,Table 7-2の実験は,ナトリ

ウムの定量の場合と同様フラスコ燃焼による分析誤差を知るため水溶性のカリウム含有有機標準物質を用い

たが,これから当然水に不溶の有機試料中のカリウムもこの許容誤差内で定量し得ると考えられる。

一60一

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7.3 銀滴定法によるハロゲンの定量

7.3.1 定量操作法

 有機ハロゲン試料3~6mgを正確に量り取り,炉紙に包み込む。これを水5皿1及び5%抱水ヒドラジン

5滴を入れた酸素フラスコ内で燃焼させる。少時フラスコを激しく振り混ぜた後約30分放置する。吸収

液を50皿1のアセト:!を用いて100皿1のビーカーに移し替え,指示電極(Coming NAS 11-18又は

同等品)及び参照電極(ダブルジャンクション型)をそう入し,直射日光を避けて0.005M硝酸銀標準溶

液で自動滴定を行う.。あらかじめ0.005M硝酸銀標準溶液のファクターはp一クロル安息香酸のような標

準試料を用いて標定しておく。又別に,試料を含まない場合についても同様の操作を行って空試験値を求

めておく。

 試料中のハロゲンの含有率は次式に従って算出する。

        (試料滴定値m且一空試験滴定値ml)XF×fx    X%=                     X100            試料量 mg

 ただし,FはαOO5M硝酸銀標準溶液のファクターであり,又fxは, X=Clのとき0.1773, X=

BrのときO.3996, X=1のとき0.6345である。

7.3.2 定量結果

塩素及び臭素の定量には燃焼生成ガスを塩素及び臭素イオンに還元して吸収するため吸収液として過酸

化水素が用いられ,又ヨウ素の還元には抱水ヒドラジンが良く用いられている。硝酸第二水銀滴定におい

て過酸化水素吸収液が好都合なのは有機ハロゲン化合物にイオウが含まれているとき,燃焼によって生じ

た二酸化イオウを硫酸イオンにする酸化剤としても働くためで,過酸化水素が存在しなければ二酸化イオ

ウは亜硫酸イオンとならて吸収液甲に溶存し,これが滴定終点における指示薬の変色を著しく妨害するこ

とになる。しかしながら,本法の銀滴定では亜硫酸イオンもヒドラジンの存在も滴定終点の検出には障害

とならないため,塩素,臭素及びヨウ素の吸収液を統一するため抱水ヒドラジンを吸収液として使用する

ことができる。

 数種の異種ハロゲン化合物について分析を行ったところ,Table 7-3に示すように分析誤差の標準偏

差としてO.15(%)を得ることができた。本法は常用分析としても極めて再現性が良く,精度の高い方法で

あり,終点が鋭い屈折点として与えられること,又,従来の硝酸第二水銀による目視滴定のように試料液

中の金属イオンを避ける必要のないことなど大きな利点がある。既に京都大学元素分析センター(薬学部)

では数年来この方法で依頼分析を処理し,成果を挙げてきている。

一61一

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Table 7-3 Microdetermination of organic llalogens with argen亡ometric titration

       using sodium selective glass electrode as indicator

Sample

      Titrant for Sample

      -titrant for blank

Amou皿t O,005 M AgNO3  X(%) (mg)      (m1)     Found Dev.

P℃h】orobenzoic acid

  C1 =・ 22.65 %

2,4,5-Thchloroannine

  Cl= 54.13 %

1,2,3,4,5,6・Hexachlorocydohexane

 Cl 冨 73.14 %

2,4-Dinitrochlorobenzene

 C1=1750 %

S-Benzyltれiuronium chloride

 Cl= 17.49%

P-BromoaCetan丑ide

 Br器37.33%

1・2・3・4・5・6H・x・b・。m。・y・1。hrk・n・

 BI= 85.99 %

Iodobenzoic acid

 I=5L17%

3.572

3.268

3.459

3.300

3.370

3567

355135983.532

3.605

32813.532

3.471

3.595

3.488

3.959

3.889

4.058

3.492

35083、780

6.301

5.989

5210

 4.575

 4.415

 4,175

10,090

10245

1α895

14.585

14.830

14.560

i義

 3.418

 3.553

 3.463

 3.711

 3.601

 3.796

 7.532

 7.532

 8.721

i;ili

22,71

22。65

22.63

54.21

53.90

54」5

72.82

73.08

73.09

17.58

17.51

玉752

17.46

17。53

17.6工

37.45

37.00

37.37

86.17

85.78

85.83

51.36

51」2

5α98

 +0.06

 ±0

一一 Z.02

 +G.08

-O.23

 +0.02

一〇.32

-0.06

-0.05

 +α08

+0.01

+0.02

1il舅

三ilii

lil誓

十〇.19

-0.07  ..

一〇.19

                                        S.D.=0」5 (%)

7.4 キレート滴定法によるカルシウムの定量

7,4.1 定量操作法

 カルシウムを含む有機試料数mgを炉紙上に正確に量り取る。吸収液としてO.5M塩酸溶液10m[.を入れ

た酸素燃焼フラスコ中で焼却する。弊分後フラスコを激しく振り混ぜ,試料の焼却によって生成され,樹

金ホルダーに付着している酸化カルシウムを吸収湿田に完全に溶解する。吸収液を35mlのエタノールを

用いて100mlのビーカーに移し替える。これに0.005 M EDTA-21,i標準溶液5.000 mlを加え, 更に

ジイソブβピルアミン3m1を加えてpHを10-11に調整した後,指示電極(Coming NAS 11-18)

                        一62一

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及び参照電極(ダブルジャンクション型)をそう入し,過剰のEDTAを0,005 M塩化カルシウム標準

溶液を用いて逆滴定する・あらかじめ・試料を含まない炉紙を用いて同様の操作を行い空試験値を求めて

おく。

 試料中のカルシウム含有率は次式に従って算出する。

        (空試験滴定値ml一試料滴定値圃)XFXO,2004    Ca%;                      x 100             試料量 mg   .

 ただし,Fはカルシウム含有量既知の標準物質を用いて求めたαOO5 M塩化カルシウム標準溶液のファ

クターである。

7.4.2 定量結果

 プロピオン酸カルシウムを標準物質に選び,Table 7-4に掲げた数種の試料について定量操作法に従

って分析したところ,分析誤差のばらつきとして標準偏差σ=0.10(%)が得られた。

Table 7-4 Microdetermillation of calcium in organic substances with chelatome士ricback-titration using sodium selective glass electrode as indicator

SampleAmount (mg)

Titrant for blank

-titrant for sample

O.005MCaC12  「(mD      Ca上。.

Ca(%)

Found Dev.

Calcium acetate

Calcium創uconate

Calcium lactate

 3305 

 3.266

 3.132

liliii

3.720

3.726

3.539

1.617

1.615

L706

22032,038

2.198

22.75

931

13.39

 22.56

 22.86

 22.65

 9.41

 9.41

 9.24

{ 13.28

 13.42

 13.34

一〇.19

+0.11

-Oユ0

+0.10

十〇.10

γ0.07

-O.11

+0.03

-O.05

S.D.含O.10(%)

一63一

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第8章 結 論

 ナトリウム及び1価陽イオン選択性電極の名称で市販されている陽イオン選択性電極の二,三の代表的な

ものについて,微量分析へ応用する目的でその応答特性の実態を調査し,次の知見を得た。

1)ナトリウムイオン選択性電極(Orion 94-11A)及び1価陽イオン選択性電極(Corning NAS 27

 -4)を用いてナトリウム及びカリウムイオン溶液の起電力を高感度電位差計で精密に測定することに

 より,微量分析に適合した10 3~王O呵M領城におけるそれぞれのイオン濃度を直接求めることを検討

 した.Orion 94-11AのNemst応答はナトリウムイオン濃度10-1-10-4 Mの範囲において良い直:

線性を保っているが,10吋M以下ではかなり湾曲が著しくなる。一方,coming NAs 27-4ではカ

 リウムイオン濃度10-4廻に近いところでわずかに検量線が曲がる傾向があるが,これはNemst式に

修正項を与えて近似させることができるので,この修正項を実験的に求め検量線を直線化した。その結

果,ナトリウム及びカリウムイオンの濃度をそれぞれの濃度に対する相対誤差0.43%及び0.30%以内

で計測し得ることが明らかにされた。

2)NAS 11-18電極の銀イオン応答性を利用し,微量ハロゲン及びシアンイオンの自動滴定を試みた。

有機溶媒中における塩素及び臭素イオンの滴定や水溶液甲におけるヨウ素イオンの滴定のように生成さ

れるハロゲン化銀の溶解度積が極めて小さい場合,電極は当量点近傍において突然電位飛躍を起こし滴

定曲線は鋭い屈折を示す。これによって生ずる屈折点の位置は理論的には当量点より挙止程度手前と

なるが,極めて再現精度が高いことからこれを滴定終点に採用することができた。このような現象は電

極の水素及び銀イオンの複合応答によるものとして説明される。又,シアンイオンの滴定曲線ではジシ

アノ牛王イオンの生成反応による第!段の電位飛躍で類似の形態が観察され,これを終点とすれば良好

な滴定精度が得られることが判明した。

3)1価及び2価陽イオン濃度の急激な変化に対してMS 11-18電極が示す応答特性について調査.し.

た。ナトリウム,銀,リチウムイオンに対してははじめの電位から新しい平衡電位に一方的に接近して

ゆくが,カリウム,ルビジウム,セシウム,アンモニウムイオン及びほとんどの2価陽イオンに対して

は一時的な過渡電位を発現した後,やがて時間とともに消滅してゆくことが観察された。このような過

渡的な応答は,電極膜表面の水和層中における拡散電位とガラス脚本体中における拡散電位が時差発現

することによるものであり,イオンの甲骨度が手相において異なるとすることによって説明される。

 又この現象から,通常のナトリウムイオン溶液の計測において試料中に無視できるほど選択係数の小

さい金属イオンが共存する場合,電極を被検液に浸した後十分時間が経過して共存イオンによる過渡電

位が消滅するまで待ってから電極電位を測定すべきであることが示唆された。なお,NAS 27-4電極

ではいずれの陽イオンに対しても上述のような過渡電位は観察されなかったが,これはガラス電極膜表

面からの水和層が深いため,ガラス膜内部の拡散電位は有限時間内では一定となり,水和層内の拡散電

位との時差発現を起こさないからであると考えられる。

一64一

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射NAS 11-18電極の多価金属イオンに対する過渡応答現象を滴定終点の検出手段に応用することを

検討した・微量硫酸イオンのバリウム滴定では硫酸バリウムの水中溶解度積が大きく水溶液中の滴定では

電位飛躍を認めることはできないが,有機溶媒性とすれば当量点近傍において遊離のバリウムイオンの

急激な増加に対する電極の過渡応答によって滴定曲綿は鋭敏に折れ曲がり,明確な終点を得ることがで

 きた。又キレート試薬を滴定液とする多価金属イオンの直接滴定では明りょうな終点を得ることは困

難であるが,一定過剰のキレート試薬を加え被検イオン又はこれより安定度定数の小さい金属イオンを

滴定液とする逆滴定法によれば,金属キレートの安定度定数が極めて大きいため水溶液でも有機溶媒に

おけるバリウム滴定と類似の明確な終点が得られた。

5)有機ナトリウム及びカリウム化合物を燃焼フラスコで焼却し,それぞれOrion 94-11A電極及び

 Coming NAS 27-4電極を用いて直接電位差法で微量定量を行った。カリウムの定量では白金バス

 ケットを試料ホルダーに用いてもほぼ100%の回収率が得られるのに対し,ナトリウムの定量では燃

焼時にナトリウムの白金内への浸透により低い分析値を与えるが,これは石英ホルダーを用いることで

解決できた。

 又,有機ハロゲン化合物をフラスコ燃焼後NAS 11-18を指示電極として銀滴定を行った。本法は,

目視水銀滴定における試料中の共存金属イオンや銀線電極による銀滴定の際の銀線部へのハロゲン化銀

沈殿の付着による滴定障害が取り除かれるとともに従来と変わらない定量精度が得られることから多数

の試料を迅速に定量することが要求される実用分析に特に推奨できる。更に,NAS 11-18電極を用

 いるキレート滴定法の応用例として有機物質中のカルシウムをフラスコ燃焼四丁滴定法によって定量し,

ナトリウムやカリウム,ハロゲンと同程度の分析精度を得ることができた。

以上,陽イオン選択性ガラス電極特にナトリウムイオン選択性MS11-18電極は主応答イオンのナ

トリウムのみならずさまざまのイオンに対して,微量分析のような極めて精度の高い定量法にも適用でき

るなど分析化学の分野において多目的に活用し得るイオン選択性電極であることが明らかにされた.

一65一

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謝 辞

 終りに臨み,本論文の御校閲を賜り,種々の貴重な御助言を頂いた京都大学薬学部宇野豊三教授に深甚

の謝意を表します。

 :又,本研究に際し,終始御懇篤なる御指導と御鞭提を賜った京都薬科大学穂積啓一郎教授(元 京都大

学薬学部助教授)に心からの感謝の意を表します。更に,本研究の機会を与えて下さった京都大学元素分

析センター主任犬伏康夫教授並びに同センターの諸氏に感謝いたします。

一66一

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実  験 の 部

各章の実験に用いた試薬及び器材を列挙する。

第3章

 3.2の実験

  {1〕試  薬

 ナトリウム標準溶液:特級塩化ナトリウム0.5844gを精密に量り取り,水を加えて正確に16にし,10}2

M原液とした。これを使用のつど必要な濃度に希釈して用いた。

 トリス緩衝液;特級トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン121.14gを水に溶解し,特級塩酸17.6

mlを加えて16とし, pH 8,8,イオン強度0.2Mの緩衝液とした。

 電極洗浄液:トリス緩衝液を1/10に希釈したものに塩化ナトリウムを加えて約10 4Mのナトリウム

溶液とし,ポリエチレンの噴射びんに貯わえた。                     ・

  ②器 ’材    ’

 指示電極:オリオン社製ナトリウムイオン選択性ガラス電極model 94-11A。電極膜は従来のガラス

電極と異なり,円板状で,プラスチック円筒の下端にはめ込まれエポキシ樹脂で固定されている。この電

極は測定時以外,トリス緩衝液を加えた10-3M塩化ナトリウム溶液に浸しておいた。

 参照電極:オリオン社製ダブルジャンクション塩化銀電極mode190-02。 内部電極のカリウムイオ

:/が測定時に試料溶:町中に混入するのを防ぐため,外部電橋液には0.1M硝酸アンモニウム溶液を毎日測

定に先だって入れ替えた。

 電位差計:ペックマン社製超精密pHメーター1019形“Research”。高精度のポテンショメーターによ

るゼロ毎帰式のものであり,pHの最小目盛は0,002 pHとなっているので,これを目測で0.OOO5 pH

まで読み取った.

 なお本実験は恒温室に近い状態の室で行い,試料液の温度変化による補正はpHメーターに備えてある

0.1℃目盛の温度補正を用いた。

 3。3の実験

  に}試  薬

 カリウム標準溶液;特級塩化カリウム0.7456g又は特級フタル酸水素カリウム2.0423 gを水14.に溶

解し10-2M溶液とした。これを適宜希釈して用いた。,

一67一

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トリス緩衝液 :特級 トリス(ヒドロキシメチル )アミノメタン121.14gを水に溶解 し, 特級塩酸52.8

mlを加えて1gとし, pH8, イオン強度0.6M の緩衝椎とした。

121器 材

指示電極 :コーニンダ社製 1価陽イオン選択性ガラ,-JL電極 NAS 27-4 CatalogNn476220。 この電

極を使用しないときには トリス緩衝液 を加えた10J3M塩化カリウム溶液に浸 しておいたD

参照電極 :3.2の実験 と同様のもので,外部電橋液には試料溶液と同親度の トリス緩衝液を入れて使用

したO

電位差計 :3.2の実験 と同様のものを使用 した.

第 4章

4.1及び4.2の実験

(1)試 薬

0.005M及び 0.0005M硝酸銀嶺準溶液 :特級硝酸銀 0.8494g及び 0.0849gをそれぞれ塵 り取 り,200

mlの水に溶解 した後イソプロパ ノ-ルを加えて全量leとLた。

0.005M 及び 0.0005M ハロゲンイオン溶液 .'特級′、ロゲン化カリウム塩 をそれぞれ計算量畳 り取 り,

水に溶解 して1gとした。

有機溶媒 :アセ トンは一級試薬を常法に従ってアルカリ蒸留したものを用い,その他のものは市販特級

品をそのまま用いた,

(2)器 材

指示電極 :堀場製作所製ナ トリウムイオン選択性ガラス電極 1512-05T(NAB ll-18相当 )。電

極を使用 しないときは 0.01鮎 硝酸銀啓掛 こ浸 しておいた.

参恩電極 ・'堀募製作所軌削、俸稗測定用飽和カロメル電極 1826-05TDこの電極の先矧 こ0.1M硝酸7

ンモニウム溶液を満た し下端にコルク栓をはめた円筒 を取 り付け,電極の塩化カリウム内部液が試料溶液

甲に混入するのを防いだ。

自動電位差滴定装置 :メトローム社製 potentiographi436D 記録計の記偉紙幅 25Urnmあたり10O

mVの電位幅で使用したB

4.3の実験

(11韓 薬

0.005M硝酸銀壊準再植 :特赦硝酸銀 0.8494gを量 り取 り,水に溶解 して1Cとした.

0.005hlシアンイオン標準溶綬 :特級シアン化カリウム3,256gを量 り取 り,18の0.1M水酸化カリ

ウム溶液に宙解 して0.05M シアンイオン浴液を調製 し,これを毎日水で10倍 に希釈 したものを標準溶液と

-68-

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した。

炭酸カリウムー炭酸水素カリウム緩衝液:0.02Mの炭酸カリウム溶液と炭酸水素カリウム溶液を4:1

に混合してpH 10.5の緩衝液とした。

  ②器  材

指示電極:コーニング社製ナトリウムイオン選択性ガラス電極NAS 11-18 Catalog Na 476210.

参照電極=堀場製作所製ダブルジャンクション飽和力『メル電極M2535。外部電橋液には1M硝酸カ

リウム溶液を入れて使用した。

 自動電位差滴定装置=4.1及び4.2の実験と同横のものを徒用した。

第5章

 5.1及び5.2の実験

  田試  薬

 トリス緩衝液:特級トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン67.3gを水に溶解し,特級塩酸42.7皿

を加えて16とし,pH 7.2,イオン強度0.5Mの緩衝液とした。

 1Mジイソプロピルアミン溶液:特級ジイソプロピルアミン140皿に水を加えて1石とした。

 これらの緩衝液は使用に際し100倍に希釈して用いた。

その他の試薬はすべて市販特級品をそのまま用いた。

  ②器  材

ナトリウムイオン選択性ガラス電極:コーニング膿血NAS ll-18電極ICatalog Nぽ476210。オリオ

ン並製model 94-11A。国産品NAS 11-18相当電極。

 1行違イオン選択性ガラス電極=コーニング社製NAS 27-4電極Catalog M 476220。

 pHガラス電極1コーニング社製Catalog Nq 476024。

参照電極=オリオン社製 銀一塩化銀電極Model 90-01。

電位差計:コーニング社製デジタル112pHメーター。

記録計=柳本製作所RA-2512型。感度1mV。応答1s。

第6章

 6.ユの実験

  U〕試  薬

 0.005阯塩化バリウム標準溶液:特級塩化バリウムニ水塩L122gを量り取り,300 m1の水に溶解した

後イソプロパノールで全量16とした。これをZn-EDTAによる置換滴定法で標定しておいた.

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 αOO5 M硫酸:炭酸ナトリウムによる中和滴定法で標定しておいた。

 α2Mヘキサミン緩衝液;特級ヘキサミン28.049を量り取り,水に溶解して12とした。

 0.01M塩酸:電極洗浄液としてポリエチレンの噴射びんに貯わえた。

  {2〕器  材

指示電極:4,3の実験と同様のものを使用した。

 参照電極=3.2の実験と同嶺のもので,外部電血液にはα2Mヘキサミン緩衝液を入れて使用した。

 自動電位差滴定装置=4.2及び4,3の実験と同際のもので,記録計の記録紙幅250㎜あたり500mV

の電位幅で使用した。

 6.2の実験

  〔1}試  薬

 0.005M金属イオン試料溶液:各々の金属の塩酸二又は硝酸塩の特級試薬を計算量量り取り,水に溶解

して16とした。

又O.00G5 M金属イオン試料溶液はこれを10倍に希釈して用いた。

 0.005Mカドミウムイオン標準溶液:金属カドミウム(純度99.999%)の0.562gに特級硝酸2、8m1

を加え加温して溶解し,更に,特級塩酸5.6皿1を加え加温,冷後水を加えて1βとした。これをエリオク

ロームプラックTを指示薬とするEDTAの目視キレート滴定法によってあらかじめ標準しておき, F)

の実験に使用した。

 0.005M EDTA一モノエタノールアミン溶液:特級EDTA(遊離酸)1.461 gを温湯に懸濁させ,特

級モノエタノールアミン0.6皿1を加え溶解し,冷後水を加えて全量12とした。又0.0005M BDTA一モ

ノエタノールアミン溶液はこれを10倍に希釈して用いた。

 α005M EDTA-2Li標準溶液:ドータイトED望A-2Li・}1201.701gを水に溶解して16とLF)

の実験に使用した。

 有機アミン及びピリジン緩衝液二〇.4Mトリエタノールアミン溶液,0。4Mモノエタノールアミン溶液,

0.4M 2,4,6一トリメチルピリジン溶液の各々とO,2 M塩酸の両液を適当に混合して各種pH値の緩衝液

を調製した。

  〔2}器  材

 指示電極=4.3の実験と同様のものを使用した。

 参照電極:4.3の実験と同様のもので,内部電極のカリウムイオンが試料溶液中に混入して滴定曲線に

影響を与えることを防止するため外部電血液には上記の有機アミン緩衝液を入れて使用した。

 自動電位差滴定装置:4.2及び4.3の実験と同様のものを使用した。

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第 7章

7.1の実験

(11試 薬

3.2の実験 と同様のものを使用 した。

12)器 材

燃焼フラスコ:300ml容量の1線硬質ガラス製のもので,試料ホルダーが白金′,'スケット及び石英製

のものを使用 した。

その他の器材は3.2の実験と同様のものを使用した。

7.2の実験

tl)試 薬

3.3の実験と同様のものを陸用した。

(2)器 材

燃焼フラスコは7.1の実験の白金ホルダーを,その他の器材は3.3の実験 と同様のものを使用した.

7.3の実験

(1)試 薬

570抱水ヒドラジン'.特級 809も抱水ヒドラジン1mlを毎日水15mlで希釈したものを使用 した。

その他の試薬は4.1及び4.2の実験と同様のものを使用 した。

(2】器 材

燃焼フラスコは7.1の実験の白金ホルダーを,その他の器材は4.1及び4.2の実験と同様のものを使用

した。

7.4の実験

(1)試 薬

ジイソプロピル7ミンは市販特級試薬をそのまま,その他の試薬は6.2の実験と同様のものを使用 した。

(2)器 材

燃焼フラスコは7.1の実験の白金ホルダーを,その他の器材は6.2の実験 と同様のものを使用 した。

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引 用 文 献

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