title 一般米語における母音体系の再解釈 京都大学言語学研究...

17
Title 一般米語における母音体系の再解釈 Author(s) 山本, 武史 Citation 京都大学言語学研究 (2001), 20: 71-86 Issue Date 2001-12-24 URL https://doi.org/10.14989/87806 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University

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  • Title 一般米語における母音体系の再解釈

    Author(s) 山本, 武史

    Citation 京都大学言語学研究 (2001), 20: 71-86

    Issue Date 2001-12-24

    URL https://doi.org/10.14989/87806

    Right

    Type Departmental Bulletin Paper

    Textversion publisher

    Kyoto University

  • 一般 米 語 にお ける母音体 系 の再 解 釈

    山 本 武 史

    1.は じめ に

    英語は母音 の多 い言語である。例 えばWells(1982)は 英語 の諸方言 の強勢音節 に

    現れ る母音 を記述す るために24の"keywords"3を 選 んで いるが 、 これを彼がGA4

    とRP5を 記述す るため に用 いて いる音素記号とともに下表 に掲 げる。6

    (1)

    1.

    2.

    3.

    4.

    5.

    6.

    7.

    8.

    9.

    蓋0.

    11.

    Keywords

    KIT

    DRESS

    TリP

    LOT

    STRUT

    FOOT

    BATH

    CLOTH

    NURSE

    FLEECE

    FACE

    GA RP

    /iIi/

    /ele/

    /��

    /aIu/

    /nIn/

    /uIu/

    /…迫1α:/

    ノolDノ

    /srIs:/

    /iIi:/

    /ei'lei/

    ship, sick, bridge, milk, myth, busy,...

    step, neck, edge, shelf, friend, ready,...

    tap, back, badge, scalp, hand, cancel,...

    stop, sock, dodge, romp, possible, quality,...

    cut, suck, budge, pulse, trunk, blood,...

    put, bush, full, good, look, wolf,...

    staff, brass, ask, dance, sample, calf,...

    cough, broth, cross, l ong, Boston,...

    hurt, lurk, urge, burst, jerk, term,...

    creep, speak, leave, feel, key, people,...

    tape, cake, raid, veil, steak, day,...

    1本 論 文 は 山 本(1999)に 加 筆 し、 修正 を施 した もの で あ る 。

    2筆 者 の メ ー ル ア ド レ ス は[email protected]で あ る 。

    3``lElach of ltheml stands for a large number of words which behave the same way in

    respect of the incidence of vowels in different accents"(Wells�82,119-2●).

    4General American(一 般 米 語)。"lIt l is a term that has been aPPIied to the two―thi「ds of the

    American population who do not have a recognizably local accent..."(Wells 1982,117).

    sReceived Pronunciation(英 国 容 認 発 音)。"【Ilt is generally taken as a standard throughout

    southern Britain(i.e. in England and perhaps Wales, but not in Scotland)"(Wells 1982,

    117).

    6例 語 はWells(1982, pp. xviii-xix)に よ る 。

    7後 述す るよ うにGAは 質 の違 いを捉えた表記で あるので/e/と すべきであるが、

    一71一

  • 12,PALM

    13. THOUGHT

    14.GOAT

    15.GOOSE

    16. PRICE

    l7. CHΩICE

    18.MΩ 翌TH

    19.NEAR

    20, SQUARE

    21.START

    22.NORTH

    23.FORCE

    24,CURE

    /ala:/

    /0b:/

    /oIau/

    /uIu:/

    /alIai/

    /01101/

    /aulau/

    /r(r$lra/

    /ε(rlEa/

    /a(rla:/

    /0(rb:/

    /o(rglo:/

    /u(rluaノ

    psalm, father, bra, spa, lager,...

    taught, sauce, hawk, jaw, broad,...

    soap, joke,-home, know, so, role,...

    loop, shoot, tomb, mute, huge, view,...

    ripe, write, arrive, high, try, buy,...

    adroit, noise, join, toy, royal,...

    out, house, loud, count, crowd, cow,...

    beer, sincere, fear, beard, serum,...

    care, fair, pear, where, scarce, vary,.,.

    far, sharp, bark, carve, farm, heart,...

    for, war, short, scorch, born, warm,...

    four, wore, sport, porch, borne, story,...

    poor, tourist, pure, plural, jury,...

    こ れ ら は 、 後 続 子 音 を 伴 わ ず に は 語 末 に 現 れ る こ と が で き な い 抑 止 母 音(checked

    vowel)(1~8)と 、 そ の よ う な 制 限 の な い 自 由 母 音(free vowel) (9~24)に

    二 分 さ れ る が 、 前 者 が 短 母 音(short vowel)に ほ ぼ 対 応 す る の に 対 し て 、 後 者 の 中

    に は 長 母 音(10ng vowel)に 対 応 す る の か 二 重 母 音(diphthong)に 対 応 す る の か が

    は つ き り し な い10.FLEEcE/i l i:/(左 がGA、 右 がRP。 以 下 同 じ 。),11.F△CE/eI I el/,

    14GOAT/olauノ.15.GΩ ΩSE/ulu【/の よ う な も の が あ る 。10ま た 、 こ の2つ の グ ル ー

    プ の 中 に は1.KIT II l I/と10. FLEECE/i【i=/、2. DRESS/e l e/とll.F△cE/eI―eI/、3.

    TR△p/ae i ae/と12. PALM/a I a:/、6. FΩΩT/σ1σ/と15. GOOSE/U I u:/の よ う に 音 声 的

    に 類 似 し て い る(と 言 わ れ る)対 が 存 在 す る 。 こ れ ら は 普 通 、RPに お い て は 長 さ

    (length)ま た は 量(quantity)で 、 GAに お い て は 緊 張 度(tenseness)ま た は 質(quality)

    で 、 そ れ ぞ れ 対 立 し て い る と 言 わ れ(Lindsey l990参 照)、(1)のWellsの 表 記 に も

    そ れ が 現 れ て い る が 、II明 ら か にGAに お い て も 量 的 な 違 い は 存 在 し 、 ま た 明 ら

    2.DRESS/E l e/と の 混 乱 を 避 け る た め に/el/と し て い る(Wells藍982,121)。

    819~24に お い てGAで/(r/と な つて い るの は、 この部 分 を子 音/r/と 考 え て い

    るか らで あ る。

    9GAに お い て も23は22に 吸収 され つ つ あ る。

    1010.FLEECE/i I 1:/、15. GOOSE/u I u:/はGA・RPと も に そ れ ぞ れ[i:~ 司 、[u:~uu]。

    11.F△cE/eI―eI/、14. GΩ △T/o―au/はRPで は そ れ ぞ れ[ei]、[au]と 明 ら か に 二 重

    母 音 で あ る が 、GAで は そ れ ぞ れ[e1~e:】 、[ou~o:】 と な る 。

    11正 確 に言 えば、GAは 質 の違 いを捉えた表記で あるの に対 し、 RPで は質 の違 い

    と量の違 いが余剰的 に表記 されている。

    一72一

  • か にRPに お いて も質 的 な違 いが 存在 す る。 また 、 tense/laxと い う概 念 は特 に低 母

    音 で あ る3.TリP/�と12. p△LM/α/の よ うな対 につ い て は存 在 が 疑 わ しい。

    さ らに、 質 的 な対 立 の み を認 め る分 析 法 では2.DRESS/11.FACEの よ うな対 にそ れ

    ぞ れ/ε/と/e/と い う別 々 の 母 音 を与 え る た め に母 音 の 種 類 が 多 くな り、 ま た 、

    量 的 な対 立 の み を 認 め る 分 析 法 で は、/e/と 表 す こ とが で き る2.DRESSに 対 して 、

    ll. F△CEを/ei, e:, ee/な どの うち 、 どの よ うに表 す のが 適 当か 、 また 、 両 者 の 質

    の違 い を どの よ う に説 明 す るか 、 な どが 問題 にな って くる。 以 上 を整 理 す る と、 可

    能 な分 析 は概 略次 の よ うに な る 。

    (2)

    」,KIT

    10. FLEECE

    2.DRESS

    11.FACE

    3.TリP

    j2, PALM

    6, FOOT

    15.GOOSE

    表記法A

    質の対立

    /r/

    /i/

    /E/

    /e/

    /�

    /a/

    /u/

    /u/

    表記法B

    量の対立

    長母音主体/i/

    %i:/

    /e/

    /e:/

    /a/

    /a:/

    /u/

    /u:/

    表記法C

    量の対立二重母音主体

    /i/

    /ii�

    /e/

    /ei/ま た は 〆ee/

    /a/

    ノaa/

    /u/

    /uu/

    また 、分析 の方法 の適否 とは別 に、従来 の研究 で は(1)に 挙 げた ような、 いわ

    ば事実 として の母音体 系 を弁別素性(d﨎t匤ctive feature)を 用 いて分類す る ことに

    主 眼が置かれ、そ もそ もなぜ英語 の母 音が(Dの よ うな種類 にな るのとい うよ う

    な問いには解答が用意 されて いない。

    このよ うな問題点が ある英語の強勢音節に現れ る母音 について、特 にGAの 体 系

    につ いてす つき りした説 明を与えるのが本論文の 目的で ある。

    次節ではそれ に先立 ち、語 末の無強勢 開音節の音節核 の分析 を行 う。GAに お い

    て はその母音 として[a,i,(j)U, ouエ が現れ るが、 この うち最後 の ものは通常、強勢

    音節 に現れ る14.GΩ △T/o/と 同 じものであるとされる。 しか し、無強勢音節 に しか

    現れない他 の3つ と異 なつてなぜ これだ けが強勢の有 無に関わ らず現れ るのか にっ

    いては今 まで説 明されて いないように思われる。 この問題 につ いて解答 を与え、強

    勢音節に現れ る母音 の分析 の足掛か りとする。

    2.語 末の無強勢開音節に現れる母音

    語末の無強勢開音節に現れる母音を次に挙げる。

    一73一

  • (3)語 末 の 無強 勢 開音 節 に現 れ る母 音:[a,i,①u, og]

    [a] quot�

    [i] pitX

    【G)u]value

    [ou] aut�

    この4つ の 母 音 の うち 、 まず 囹 は 〃a〃 と認 定 して よ い だ ろ う。izま た 、 国 は

    atticな どの無 強 勢 閉音 節 に現 れ る 国 の異音 で あ る と考 え られ よ う。 さ らに、[①u]

    も、contributeな どの 無 強 勢 閉音 節 に現 れ る こ とが あ る[① σ]や 、 uniteな どにお い

    て 強勢 音 節 の直 前 の無 強 勢 開音節 に現 れ る[①u]の 異 音 で あ る と考 え られ よ う。

    しか し、通常、強勢音節 に現れる14。GΩ△T/o/と 同 じものである とされる残 る[ou]

    は、無強勢音 節に しか現 れない他 の ものとは一緒 にできない異質 の要素であるよ う

    に思 われ る。(3)のautoの ような例 において この第2音 節の母音が無強勢である

    ことは、直前 の/t/が 弾音化する ことか ら明 らかで ある。これ を他の例 とともに(4)

    に示す。

    (4) quot� [ra]

    pi躯 [fi]

    aut� [rou]

    また 、 語 に よ つ て はvetoの よ う に/tノ が弾 音 化 す る 形 と しな い形 が併 存 す る場 合

    が あ るが 、/t/の 後 の母 音 は前 者 の場 合 には無 強 勢 、 後 者 の場 合 には あ る程 度 の 強

    勢 を持 った14.GΩ △T/o/で あ る と考 え られ る。 t3この よ うな 揺 れ は通 常 、他 の母 音

    には 見 られ な い 。 同 じ よ うに2つ の強 勢型 を持 つandanteを 見 る と、 この場 合 には

    あ る程度 の強 勢 を持 つ11.F△CE/eI/は 強 勢 を全 く失 う と[i]に 変 わ つて しま う こと

    が 分 か る 。 っ ま り、[ou]だ け が強 勢 の あ る位 置 に も無 強 勢 の 位 置 に も現 れ るの で

    あ る。 以 上 を(5)に 示 す 。

    (5) ve1Ω [―to~~ ~ fO~~]

    andante [―ter~ri,*rer]

    12Wells(1982)に お け る音 素記 号 と区別 す るた め に、 本 論 で の分 析 は 〃 〃 の 中 に

    示 す 。

    13Bolinger(1986,347-60、 特 に350―52,358-60)は こ の 「あ る 程 度 の 強 勢 」 に つ い て

    否 定 的 な 見 方 を し て い る 。

    一74一

  • ま た 、(3)で[G)u]と 表 示 した もの は必 ず//i〃(昌 田)を 伴 い 、 単 独 の 〃u〃 と

    考 え られ る もの は現 れ な い。14こ れ らの 問 題 を ど う考 え れ ば よ い の だ ろ うか 。

    この無 強 勢 音 節 に現 れ る[ou]と され て い る音 は 実 はGAで は[u]に 近 い 音 で あ

    り、15ま た、 母 音 が 後 続 す る とfollowing['fE:louzrJ~ ―f叫gwn]】 の よ うに[aw]と 交

    替 す る(Merr僘m―Webster 1961/1993, pp.35a―36a)。 同 じく無 強 勢 音 節 に現 れ る 音 節

    主 音 的子 音[1,m,司 が そ れ ぞ れjal, am, an]と 交 替 す る こ と を考 え る と、 こ の環

    境 で 見 られ る[oり 】 とされ て い る音 はわ た り音 の 〃u〃 で ある と解 釈 で き、 そ の 【+

    round]の 素 性 の た め に 、挿 入 され る 〃a〃 が他 の共 鳴 音 の場 合 とは違 つ て[o」 に近

    い音 に な るの だ と考 え られ る。 同様 に[ju]もcontinuing[kgn'tlnjuIη ~kgnltInjowIη 】

    のよ うにOgw1と 交 替 し(Merriam―Webster 1961/1993, pp.35a-36a)、//iu〃 と解 釈 で

    き る。 こ こで も 〃u〃 の 【+round]の ため に 〃a//が 【+round1に な るが 、 同 時 に先

    行 す る//i〃 の 【+highlの 影 響 も受 け て[u]に 近 い音 に な るの だ と考 え られ る。 こ

    う考 え る と、 この位 置 に[ju]は 来 るが[.,IUJは 来 な い 理 由は 、//ni i u〃 は[u】 で は な く

    [og]と して実 現 す るか らだ と言 え る。 さ らに[i]も 単 に 〃i〃→[i]と な つ た の で は

    な く、l+frontjの//i〃 の 前 に 同 じ く 【+front lの 〃i〃 が 挿 入 さ れ て 〃i增V→ 田

    ( [il) に な つた と言 う こ とがで き る。 以 上 をま とめ る と次 のよ う にな る。16

    (6)語 末 の無強勢 開音節 に現れ る母音(()内 は挿入母音。)17

    [∈}] [i} [o~~】 1=ju]1

    //∈》ノ/ /ノ(i)i// //(∈))~尋// /ろ真(g)り//

    14表 層 で はi∬ue, statueの よ うに[司 が現 れ て い る よ うに見 え る もの もあ る が 、 そ

    れ らは 先行 す る子 音 が後 部 歯 茎 音 の/∫,tf/で あ り、//i〃 が そ れ らの子 音 に 吸 収 さ

    れて い る と考 え られ る 。Hammond(1997,7)は 一 般 に無 強勢 音 節 で は単 独 の/u/が

    現 れ な い こ とを 指 摘 し、理 由 は分 か らな い と述 べ て い る 。

    s≪The ending ‐ow is seldom pronounced ...with a full o as in elbow. The commonest

    prons. are with an advanced 6, nearly like u l=IRへ のu、 筆 者 注1, and with a"(Kenyon and

    Knott 1953,313:"-ow").

    16Bolinger(1986,347-60:"Vowel Reduction, Derivation, and Stress";1998)は 英 語 の

    "reduced vowels"を[i, a, e]の3っ と し て お り 、 そ れ ぞ れ ほ ぼ 本 論 の//i, a, u〃 に

    相 当 す る 。Bolinger(1986,397n7)は[}, e]が そ れ ぞ れ 音 節 主 音 の[y[=IPAのJ1, w】

    で あ る 旨 の こ と を 述 べ 、[i,e]と い う 特 別 な 記 号 を 避 け る と す れ ばmany['meni],

    minnow['mmou]は そ れ ぞ れ[mEnyJ,[mmw]と 表 す こ と が で き る だ ろ う と 言 つ て い

    る 。

    17〃a〃 につ いて は次 節 を参 照。

    一75一

  • 3.強 勢音節 に現れ る母音 の体 系

    最 初 に 、(1)を 分 析 の対 象 とな るGAに つ いて 再 整 理 し、 よ く見 られ る音 声的 実

    現 と と も に次 に挙 げ る。18抑 止 母 音 とされ て い る3.TリP/7. BATH/ae/が 音 声 的 に は

    長 母音 ま た は 二重 母 音 で あ る こ とに注 意。

    (7) Wells(1982)

    Keywords 音 素 記 号

    典型的な音価

    1.

    2.

    3.

    7。

    5.

    6.

    KIT

    DRESS

    TリP

    BATH

    STRUT

    POOT

    9,NURSE

    10. FL旦ECE

    11.FACE

    12.PALM

    4, LOT

    13.THOUGHT

    g,CLOTH

    14.GOAT

    15.GOOSE

    16. PRICE

    l7. CHΩICE

    j$,MOUTH

    19.IVEAR

    20,SQUARE

    21,START

    22.NORTH

    23 FORCE

    24,CURE

    /1/

    /ε/

    }/�/n/

    /u/

    }

    }

    /sr/

    /i/

    /er/

    /a/

    /0/

    /0ノ

    /u/

    /az/

    /01/

    /au/

    /1(r/温9

    /e(r/

    /a(r/

    /0(r/

    /o(r/

    /σ(r/

    抑止母音

    自由母音

    }

    [ll

    [ε]

    [�~Ea]

    [3~ 今]

    [u]

    [{:」

    [i:~11]

    [ei~e:]

    [e: �]

    [P=~o:]

    [ou^-o.]

    [u:~uり]

    [EI~ 餌 ~ar]

    [o雲]

    [ae~~~ 写~~~aiF/~~a~ ~」

    [lg{~ iO{]

    [aε{]

    [ず{~(ノ{]

    [oo{]

    [σo{~uo石

    184 .LΩT/α/と12. PALM/a/、8. CLΩTH/o1と13. THΩ 旦GHT lo/の よ うに元来 抑 止 母音

    で あ つた もの と 自由母 音 で あっ た ものが 類 と して融 合す る と、 語 末 に現 れ るか 否 か

    とい う分 類 の定 義 上 、 自由母 音 に な る。

    19本 論 に お い て は/r/の 部 分 も 含 め て 母 音 と 考 え て い る の で、19.NEAR II(r/、20。

    sQuARE/ε(r/、24. CURE/u(r/は 語 末 に 現 れ る こ と に な り 、 自 由 母 音 に 分 類 さ れ る 。

    一76一

  • Wells(1982,藍20)は こ れ を 次 の よ う に ま と め て い る 。

    (g>,

    i u i u

    E A eI o互 0 3 0

    � ai au Q

    checked free

    IAJ fBlfreeJlC.1

    図 中のA~DはWells(1982)

    次 の 通 りで あ る。

    肋副lD1

    が"part-system"と 呼 ぶ も の で 、 そ の 説 明 は そ れ ぞ れ

    Part-system A comprises the traditional stressatile short vowels. These are the

    vowels phonotactically restricted to occurrence in checked syllables(at Least in the

    case of stressed mnnngvlf疉lPg).,,. (P.168)

    Part-system B comprises those of the traditional long vowels and diphthongs which

    have a front rnid to close quality or(if diphthongal)endpoint. (p.171)

    Part-system C comprises those of the traditional long vowels and diphthongs which

    have a back mid to close quality or(if diphthongal)endpoint. (p.173)

    Part-system D comprises those of the traditional long vowels and diphthongs

    which have a relatively open quality or(if diphthongal)endpoint, including under

    `relatively open'the mid central quality[a]. (p.175)

    次 に竹林(1996,286)の 分 類 を掲 げ る。

    (9) GA A B C D E

    前舌狭 /1/ /i:/ /ju:/zo /1{勢/

    前舌半狭 /E/ /er/ /Fリ/

    前 舌広21 /諠m /a:ノ /aIノ /au/ /agi/

    中舌非狭 /n/ ノa・:/

    後舌非狭円唇 /n:/ /0互/ /ou/ /0a・/

    後舌狭円唇 ノu/ 争 /u:/ /ua・/

    20こ れ につ い て は後 述 す る。

    21単 に 「広 」 と しな けれ ばな らな い と思 わ れ る。

    一77一

  • 竹 林 の 説 明 に よ る と 、Aは 抑 止 母 音(checked vowel)、 B以 下 は 開 放 母 音(free vowel)

    で あ り 、Bは 長 母 音(long vowel)、 C~Eは 二 重 母 音(diphthong)で あ る 。 ま た 、

    C、D、 Eは そ れ ぞ れ 前 方 狭 ま り 二 重 母 音(front-closing diphthong)、 後 方 狭 ま り

    二 重 母 音(back-closing diphthong)、 R音 性 二 重 母 音(rhotacized diphthong)で あ る 。

    ま た 、 説 明 は な い が 、 「前 舌 狭 」 な ど は 出 だ し の 部 分 に 対 す る 記 述 で あ る 。

    この表 を見てす ぐに気づ くことは、E欄 のみがすべて詰 まつてお り、他 の欄は空

    所 が多 い ことであ る。また、音声的実現が長母音 と二重母音の問で揺れがあるもの

    は後 者で あると解釈 して いるが、 これで は/aI, au, OI/の ように常 に二重母音 とし

    て現れ る もの と区別 で きない。そ こで、改めて(7)を 音 声学的な観点か ら、短母

    音 のA群 、長母音で現れ ることがあ り、比較的低舌のB群 、 同 じく長母音で現れ

    る ことが あ り、比較的高舌 のC群 、常 に二重母音 のD群 、国 の要素 を含 むE群 に

    分 け、番号 をつ け直 してみ る。

    (io)

    A群

    B群

    C群

    D群

    E群

    1.

    2.

    3.

    4.

    5.

    6.

    7.

    8.

    9.

    10.

    11.

    KIT

    FOOT

    DRESS

    STRUT

    Wells(1982)

    TリP/BATH

    PALM/LOT

    THOUGHT/CLOTH

    FLEECE

    GOOSE

    FACE

    GOAT

    」2, PRICE

    j3, MOUTH

    14. CHOICE

    15. NEAR

    j(, CURE

    l7. SQU△RE

    18. NORTH/FORCE

    19. START

    20, NURSE

    /I/

    /u/

    /ε/

    ノA/

    /�

    /a/

    /0/

    /i/

    /u/

    /er/

    /o/

    /ar/

    /au/

    !01/

    /r(r/

    /u(r/

    /e(r/

    /0(r/

    /�r/

    /sr/

    典 型 的 な 音 価

    [ll

    [u]

    [E]

    [3~ 今]

    [�~ ε貧]

    [サ:~9:j

    [P:~o:]

    [i:~II】

    [u:~uu]

    [ei... e:]

    [ou~o:]

    [EI~ α1~aITn }n ‐n]

    [誦~2u~GU~aσ ( マ A 寺 A - A]

    [(填]

    [Igモ ~i∂{]

    [σ9{~uaモ]

    [ε9{]

    [aoモ]

    [ず{~99{1

    [孔:]

    以下では、この分類 を基 に して、複雑 に見え るGAの 母音体系 を明 らか にしていく。

    まず、二重母音 について次の ことが観察 され る。

    ―78一

  • (11) a.第1要 素 よ り も 第2要 素 の 舌 の 位 置 の 方 が 高 い(closing diphthong)。

    b.第2要 素 は 辰,1,U,U,畩で あ る 。

    二重母音の第2要 素は第2節 で見 た語末の無強勢音節 に現れ る母音 と同 じで あ り、

    U,11=/4〃 、[u,g]雷 〃u〃 はわ た り音の性質 を持つ と考 え られ る。一般 にわた り音は

    隣接す る母音 と比べて相対 的 に舌の位置が高いだけで、絶対的 な舌 の高 さが決 まつ

    ているわ けではない。22また、[畩は ひとまずおいてお く。

    次 に二 重母 音 の第1要 素 に 目を移す 。12.ARICE/ai/と13. MOUTH/au/の 第1要 素

    は 舌 の前 後 位 置 が 未 指 定 にな って い る 〃2〃23で あ る と考 え られ る 。13.MOUTH/au/

    の 第1要 素 と して12.PRICE/ar/に は許 され な い[訃が 見 られ る理 由 にっ いて は後

    で触 れ る と こ ろが あ る。

    以上 のことか らD群 を次 のように分析す る。

    (12)

    D群 12.PRICE

    13. MOUTH

    14. CHOICE

    Wells(1982)

    /ar/

    /au/

    /01/

    典 型 的 な音 価 本 論 の分 析

    嫁 ~餌 ~ar] "B2〃

    [誦~ 駁 ~au~au】 〃uu〃

    [(羽 〃o凄〃

    次 にC群 を分析 す る。 まずll. GΩ△T/o/で あるが 、 これ は14. CHOICE/ol/と 共 通

    の 第1要 素 を持 つ 〃。り〃 で あ り、 第2要 素 〃u〃 の 【+high1の た め に第1要 素

    〃o〃 の舌 の位 置 が 高 くな つ た も の だ と考 え られ る 。 ま た 長 母 音 で 実 現 す る もの は

    前 後 の要 素 の 同化 が完 全 に 進 ん だ もの で ある。同様 に10.FACE/ez/は3. DR旦ss/ε/を

    第1要 素 に持 つ 〃E1〃 で あ る と考 え られ 、そ の 実現 形 も 同様 に説 明 され る 。

    8.FLEECE/i/、9. GOOSE Ju/は そ れぞ れ 〃ii, uu//で あ り、 二 重 母 音 で 実現 す る もの

    は 、 この 方 言 に存 在 す る と思 わ れ る(lla)の 制約 に よ っ て 第1要 素 の 舌 の位 置 が

    下 が っ たの だ と考 え られ る 。

    以上 のことか らC群 を次 のように分析する。

    (互3)

    C君 羊 8. FL旦ECE

    g, GOOSE

    jQ, FACE

    Wells(1982)

    ノi/

    /u/

    /er/

    典 型 的 な 音 価

    [i:~ 司

    [u:...uu]

    [er~e:1

    本 論 の 分 析

    //ii//

    //uu//

    //ei//

    22例 え ば 同 じ//i〃 で も、翼傭 に お いて は(eastと 区別 す る た め に)田 で な けれ

    ば な らな いが 、ンαハ4に お いて はu~e]で あ る。

    23便 宜上音声記号で表す が、本来は素性で表さな ければな らない。

    一79一

  • 11. GOAT /o/ [ou~o:] 〃oり〃

    B群 は単 母 音(monophthong)で は な く、 次 の よ うに 二 重母 音 と考 える。

    (14)

    B群 5.

    6.

    7.

    Wells(1982)

    TリP/BATH /�

    PALM/LOT /a/

    THOUGHTICLOTH /o/

    典 型 的 な 音 価

    [�~Ea〕

    [撃:~9:】

    【P:~o:]

    本 論 の分 析

    〃ε翼〃

    〃2翼〃

    〃o翼〃

    第2要 素 で あ る 〃翼〃 は 、 弱 ま って[畩に な る(後 述)か 、そ のi+且ow1の 素 性 が

    第1要 素 の 舌 の 位 置 を下 げた 上で 前後 の要 素 の 同化 が 起 こる。7.THΩUGHT/cLΩTH/o1

    に[p=]を 使 う話 者 で も 〃L〃+母 音 の 前 では[ojの 音 色 にな る こ とや 、 S. TリP/BATH

    /ae/に[�]を 使 う話 者 で も 〃{〃+母 音 の前 で は[ε 」の音 色 に な る こ とが あ る こ と

    にっ い て はE群 の と ころ で述 べ る。

    こ こで もう一度(10)を 眺め、同時にここまでの分析 を振 り返 ってみると、次 の

    ような問題点が ある ことに気づ く。

    (15) a. [3~ 引 が4.STRUT/A/に し か 現 れ な い 。

    b.二 重母音 の第2要 素 と無強勢音節に現れ る母音 の類似性 を指摘 しなが ら、

    (14)で はB群 の第2要 素 を 〃a〃で はな く 〃翼〃 と分析 して いる。

    また、 これ とは別 に、次 のような事実の存在がある。

    (16)再 強 勢 形(restressed form)に お い て は 弱 形 の[a]は4. STRUT/A/に な り 、 し

    か も 元 の 強 形 の 母 音 は 通 常6.p△LMILΩT/α/で あ る 。

    再 強 勢 形 とは 、 「い っ た ん母 音 弱化 を受 けた 弱 形 が 何 らか の理 由 で再 び 強 い 強 勢 を

    受 け,本 来 の強 形 の母 音 に戻 らず に弱母 音 の/a/な い し/訓 に近 い/Ala/[=4.

    STRUT(左 がGA、 右 がRP)、 筆 者 注]ま た は/ひ:Ia:/[=20. NURSE(左 がGA、 右

    がRP)、 筆 者注]を 持 っ よ うにな っ た強 形」(竹 林1996,405)で 、 fr�,鉱w旦 ∫, what

    な ど に見 られ る 。 この 事 実 か ら次 の ことが推 論 され る。

    (17)a.無 強 勢 音 節 に 現 れ る[a]や 二 重母 音 の第2要 素 の[畩は[3~ 今}が 「弱

    ま つた 形 で あ る。

    b.〃2〃 と[3~ 引 は 「関 係 」 が あ る 。

    :1

  • 一 般 に 母 音 は 強 勢 を 失 う 、 つ ま り 「弱 ま る 」 と 中 央 化 さ れ る(mid-centralized)が 、

    こ の 「弱 ま り 」 は1。KIT/1/と8. FLEECE/i/、2. FOOT/u/と9. GOOSE/u/を 見 れ ば 分

    か る よ う に 短 母 音 〃i,u〃 に お い て も 現 れ る 。24そ う す る と[3~dも6. P△LM/LΩT

    /α/,12.PRICE/ar/,13. MOUTH/au/の 第1要 素 で あ る 〃2〃 が 「弱 ま つ た 」 も の で あ る

    と 見 な す こ と が で き よ う 。25

    (18)

    i: l l 司

    i i1 u

    a

    3 ~ n十

    i i 1障 ・一ゆ・ i

    (+fr)

    [+hiI

    1-hil

    1―loi

    (-frj

    1-bki [+bk]

    J+loJ

    従 つてA群 は次 のよ うに表 され る。

    (19)

    A群 1.KIT

    2, FOOT

    3. DR旦SS

    4, STRUT

    Wells(1982)

    /rノ

    /u/

    /e/

    /n/

    典 型 的 な音 価

    [u]

    [El

    [3~ 今]

    本論の分析//i//

    //u//

    //e//

    〃2〃

    最 後 にE群 を考 え る。B群 の分析 の と ころで触 れ たが 、7. THΩ 旦GHT/cLΩTH/o/に

    [p:]を 使 う 話 者 で も 〃モ〃+母 音 の 前 で は[o]の 音 色 に な る 、 つ ま り18.

    NΩRTHIFΩRCE/o(r/が 現 れ る 。 また 同様 に、5. TリP/�に[ae:]を 使 う話 者 で も 〃{〃

    +母 音 の前 で は[ε]の 音 色 にな る、 つ ま り17.SQU△REノ ε(rノが 現 れ る ことが あ る 。

    この よ うな 場 合 、 次 の よ う に音 節境 界 も移 動 して い る よ うに思 わ れ る 。

    24こ の理 由につ いて は今後の課題 とする。

    258.FLEECE/�、9. GΩ ΩsE/u/の 変 異 形[11, uu]の 第1要 素 が そ れ ぞ れ 期 待 さ れ る[i,

    u]に な つ て い な い の は 、(11a)の 制 約 に よ る 。

    一81一

  • (20) a. [PL{」 →[ooモ.] (SiO1〔y,91Ω 亙y, mΩ 】〔a,_)

    b. [a∂:.モ]→[εo{.] (c旦1工y,m旦 工」〔y, H旦1〕〔垂s,_)

    これは次 のよ うに 〃{〃が直前の母 音 を 「食 う」 ことか ら生 じる現象で あると解釈

    できる。

    (21) a. 〃o喫.{〃 → 〃o翼{,〃

    b. 〃ε喫.モ〃 → 〃ε貼 〃

    よ ってE群 の分析 は次 のようになる。

    (22) Wells(1982)

    E君 羊 15. NEAR

    16. CURE

    17, SQUARE

    l8. NORTH/FORCE

    19. START

    2Q, NURSE

    /r(r/

    /u(r/

    /e(r/

    /o(r/

    /a(r/

    /sr/

    典 型 的 な 音 価

    [19司L~ i9{]

    [u∂{~u。{]

    [ε9{]

    [oo{1

    げ{~ ず{]

    [{=】

    本 論 の分 析

    〃玉翼{〃

    〃u凱〃

    〃ε則〃

    〃o凱〃

    〃2則〃

    〃q〃

    最後 に、 出現が予測 され るのに26実際には(7)に 現れて いな いものについて簡単

    に述べ る。

    (23) a.

    b.

    C.

    d.

    e.

    〃o〃

    〃ε具〃

    //iu//

    //ui//

    〃i翼,u喫 〃

    ま ず 〃o〃 で あ るが 、 これ は この方 言 で は体 系 上 の ギ ャ ッ プ に な って いる 。 しか

    しresult[3を ~ 醐 な どが[。1]に な る のは この ギ ャ ップ と無 関係 で はな いだ ろ う。

    次 の 〃ε翼〃 で あ る が 、 これ も体 系 上 のギ ャ ッ プ に な つて い る。 しか し前 に触 れ

    た よ う に、〃2り〃 の第1要 素 と して 〃毎〃 には許 され な い[ae]が 見 られ 、しか も 「全

    米 的 に広 が る傾 向 に あ る」 (竹林1996,251)と い うの は興 味 深 い事 実 で あ る。

    26〃{〃 を 除 く と、第1モ ー ラ には 〃i,u,e,o,2〃 の5つ 、第2モ ー ラには/仙 り,翼〃 と

    ゼ ロの 合 わ せ て4つ が 可 能 で あ る ので 、そ の組 み 合 わせ は20通 り。しか し(10)の

    A群 ~D群 には そ の うち14通 りしか現 れて いな い。

    一82―

  • 次 に//iu〃 につ い て で あ る が 、(7)に 掲 げ た竹 林 に よ る表 の/ju:/、 つ ま りcute,

    musicな どの 下 線 部 の 母 音 が これ に相 当 す る もの と思 わ れ る。 この 組 み 合 わ せ は

    (11a)の 制 約 に抵 触 す るが 、 i+frontlと[+back lが 衝 突 す る た め//ii, uu〃 の よ う

    に融 合 で き な い 。 こ の母 音 は通 時 的 に は、16世 紀 か ら18世 紀 に か けて 次 の よ う

    な変 化 を受 けて 生 じた(中 尾1985,290)。27

    (24) [I~~]→ 【Iu1→[エ σ』→[ju]→[ju=」

    Wells(1982,206―07)に よ る と[lg]タ イ プ の二重 母 音 は今 で も一 部 の地 方 に残 つて

    お り、 少 し古 い がKenyon and Knott(1953)に も記 録 され て い る。 ま た 、 Davis and

    Hammond(1995,166)は 言 葉 遊 び の 一種 で あるPig Latinの 観 察 を通 じて 、 この タイ

    プの 二 重母 音 の存 在 を論 じて いる。第2節 で 論 じた よ うに 、無 強勢 開音 節 に も 〃iu〃

    が 現 れ る こ とに注 意 。

    次 に 〃U1〃 で あ るが 、診辺 Σ の母 音[u:.i]が これ に相 当 す るか も知 れ な い。 こ の

    組 み 合 わせ も(lla)の 制 約 に よ つ て排 除 され 、や は り素 性 の衝 突 に よ つて 融 合 で

    きず 、2音 節 で 実 現 す るの だ と思 わ れ る 。しか しこの母 音 は非 常 に周 辺 的 で 、わ璽 に

    お い て も14.cHΩlcE/oI/を 代 わ りに用 い る こ とも ある 。 この 〃ui〃 が な ぜ 〃iu〃 と

    違 つて周 辺 的 で あ る のか は 不 明 で あ る。

    最後 に 〃頃,UB〃 で あ る 。 前者 につ いて はidea, realな ど の母 音[i:.a]が これ に

    相 当 す る よ うに も見 え るが 、 後者 につ い て は実 際 の母 音 に対 応 物 が見 つ か らな い。

    これ は 、〃項,u翼 〃 そ れぞ れ にお いて 、第1要 素 が1+highl、 第2要 素 がi+Iow)で

    あ つて 舌 の 高 さが 大 き く異 な り、(lla)の 制 約 によ っ て組 み合 わせ そ の も のが 排 除

    され て存 在 しな い、と考 え た方 が 良 いで あ ろ う。 〃EE, o眞〃 と違 つて 、 i+highiと1+

    lowlが 衝 突 す るた め 、融 合 も起 こ らな い。

    4.終 わ りに

    今 まで見 て き た よ うに 、GAの 母 音 は 〃モ〃 を除 くと5種 類 の構 成 素 〃i, u,ε,。,2〃

    か ら成 る。

    英 語 の二 重母 音 は言 い誤 りの際(Fromkin 1971,33-34)や 言 葉 遊 び の 際(Jensen l 993,

    37)に1つ の 一単位 を成す とい うこ とが言 わ れ て い るが 、Yamamoto(1996)が 再 分 節

    (resyliabification)の 過 程 と して示 して い る次 の よ うな例 を見 て も、 二 重母 音 の 可

    分解 性 は明 らか で あろ う。

    27表 記 は筆者が変更 した。

    ―83一

  • (25) a.

    b.

    C.,

    英語の二重母音は、

    Maya [厚【.j] →[LI.(j)」

    〃LL.1〃7シ 〃B更.q)〃

    1鋤 乙er [P:.jj → [⊂)1.(」)]

    〃o娑.i〃→ 〃o更.ω〃

    Kawasaki [厚:.w】 →[顕]

    〃uu.0〃 → 〃uu.〃 A A A

    結 局 、 破 擦 音 の/tf,(i3/の よ う なcontour segmentな の だ ろ う 。

    一84―

  • 引用文献

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    Stanford: Stanford UP.

    1998. "The Double Triangle: Two Kinds of Vowels in English." Conference

    Papers on American English and the International Phonetic Alphabet. Ed. Arthur

    J. Bronstein. Publication of the American Dialect Society 80. Tuscaloosa: U of

    Alabama P. 61-66.

    Davis, Stuart and Michael Hammond. 1995. "On the Status of Onglides in American

    English." Phonology 12: 159-82.

    Fromkin, Victoria A. 1971. "The Non-Anomalous Nature of Anomalous Utterances."

    Language 47: 27-52.

    1997.~,___.lQualityinEnglish."Ianouaoe Hammond, Michael."v~wei.1ual,~yandSyllabificationLanguage

    73: 1-17.

    Jensen, John T. 1993. English Phonology. Amsterdam: Benjamins.

    Kenyon, John Samuel and Thomas Albert Knott. 1953. A Pronouncing Dictionary of

    American English. Springfield: Merriam-Webster.

    Lindsey, Geoff. 1990. "Quantity and Quality in British and American Vowel Systems."

    Studies in the Pronunciation of English: A Commemorative Volume in Honour of A.

    C. Gimson. Ed. Susan Ramsaran. London: Routledge. 106-08.

    Merriam-Webster. 1961/1993. Webster's Third New International Dictionary. 1993 ed.

    Springfield: Merriam-Webster.

    中尾 俊 夫.1985. 『音 韻 史 』.英 語 学 体 系11.東 京:大 修 館 。

    竹 林 滋.1996. 『英 語 音 声 学 』.東 京:研 究社.

    Wells, J. C. 1982. Accents of English. 3 vols. Cambridge: Cambridge UP.

    Yamamoto, Takeshi. 1996. "On the Syllabification of English Intervocalic Glides."

    『言 語 学研 究 』[〃 η8〃∫頭cRθ ∫θακ屑15.京 都:京 都 大 学 言 語 学 研 究 会.

    49-76.

    山本 武 史.1999. 「一 般 米 語 に お け る母 音体 系 の再 解 釈 」.平 成10年 度 京 都 大

    学研究 報告.京 都:京 都大学.

    一85一

  • A Reinterpretation of the Vowel System in General American

    Takeshi YAMAMOTO

    Abstract

    The English language has a relatively large and complicated inventory of vowels.

    The complication includes the equivocal status of the syllable nuclei in fleece, goose, face,

    and goat, each of which wavers between a long vowel and a diphthong in General American

    Previous studies on English vowels not only disagree as to this issue, but, more importantly,

    fail to discuss what makes the inventory as it is.

    This paper attempts to analyze the vowel system of General American and concludes

    that all bimoraic vowels appearing in stressed position are analyzed as two-member

    clusters, of which the first members consist of //i, u, c, o, n/l, and the second members, of

    ti,

    -86-