tamaki graduate thesis -...

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目次 1 1 2 多目的最適化問題 3 2.1 ...................................... 3 2.2 パレート ....................................... 4 2.3 .................................. 4 3 多目的遺伝的アルゴリズム 7 3.1 アルゴリズム .................................... 7 3.2 アルゴリズム ................................. 8 3.3 パレート ................................... 12 4 多目的 GA と単一目的 GA の分散協力型モデル 14 4.1 ............................................. 14 4.2 GA GA モデル ...................... 14 5 数値実験 18 5.1 0/1 ナップサック ................................ 18 5.2 サイトにおけるネットワーク .................... 23 5.3 ........................................ 26 6 37 i

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目 次

1 序 論 1

2 多目的最適化問題 3

2.1 多目的最適化問題 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3

2.2 パレート最適解 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

2.3 多目的最適化問題の解法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

3 多目的遺伝的アルゴリズム 7

3.1 遺伝的アルゴリズム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7

3.2 多目的遺伝的アルゴリズム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

3.3 パレート解の評価方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12

4 多目的GAと単一目的GAの分散協力型モデル 14

4.1 背景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14

4.2 多目的GAと単一目的GAの分散協力型モデル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14

5 数値実験 18

5.1 0/1多目的ナップサック問題 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18

5.2 携帯電話用サイトにおけるネットワーク設計問題 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23

5.3 数値計算結果 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 26

6 結 論 37

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1 序 論

実世界には様々な最適化問題が存在している.最適化問題とは,与えられた制約条件の下で,ある

目的関数を最大 (小)にする解を決定すると定義することができ,数理的問題や最短経路問題の様な

身近な問題だけではなく,システム工学が扱うあらゆる対象とその計画や制御の方法論に密接に関連

するようになってきている.

実問題の最適化問題を考えたとき,その多くは単一の評価基準ではなく複数の評価基準で定式化さ

れる.例えば,ある製品を購入する場合,その製品の機能,価格,外見,重量,大きさなど,その製

品の評価基準は複数に及ぶ.また,一般に全ての評価基準が最適となる製品は存在することはほとん

どなく,各評価基準は何らかの形で互いに相反するトレードオフの関係にある.このようにトレード

オフの関係にある複数の評価基準から最適解を求める問題を一般に多目的最適化問題と呼ぶ.

多目的最適化問題では,その性質から解は複数もしくは無限個の集合として存在する.従来の多目

的最適化問題に対する手法として,複数の目的関数を任意の重み付けにより単一化する重みパラメー

タ法,任意の目的関数以外の目的関数を制約条件化し,任意目的関数の最適化に集約するε制約法な

どが提案されている 1) .これらは多目的最適化問題を単一目的の問題に変換するスカラー化手法で

ある.しかし,これらの手法では複数もしくは無限にある解集合の中の一つの解しか求めることがで

きないという意味でも,多目的最適化における目的関数間でのトレードオフをバランスさせた妥協解

を得るという意味でも不十分である場合が多い.

一方,多目的最適化の理論について見ると,目的関数間のトレードオフをバランスさせる解に関し

て,パレート最適性が重要な概念として挙げられている 2) .パレート最適性とは,多目的最適化問

題において,その解が他の任意の解と総合的に比較して決して劣らないことを保証したことである.

すなわち,必ずしも他のどの解よりも優位にあるとは言い切れないが,より優れた解が他には存在し

ないことが言える.一般に,このパレート最適性を満足する解(パレート最適解)は複数個あり,こ

れらを集合として求めることが,多目的最適化問題において多くの場合,重要な目的となる.

遺伝的アルゴリズム (Genetic Algorithm: GA)は,生物の進化を工学的にモデル化した確率的探索

手法の 1つである 3) .GAは,世代を構成している個体集合の中で,環境への適応度の高い個体が

次世代により多く生き残り,また交叉および突然変異を起こしながら,次の世代を形成していく課程

を模倣した最適化法である.GAを用いた最適化問題を解く試みは非常に多くなされており,従来の

最適手法では最適解の探索が困難であった,離散的な問題や多峰性のある問題に対してその有効性が

検証されている 3, 4, 5, 6) .

近年,多目的最適化問題にGAを適用する,多目的GAに関する研究が数多く行われている 3, 7, 8)

.その理由は,GAが多点探索であり,一度の探索で複数のパレート解集合が求まることにある.多

目的GAは,SchafferらのVEGA 8) に始まり,パレート最適解集合のフロンティアを明示的に取り

扱うGoldbergのランキング法 3) や FonsecaらのMOGA 7) などが代表的な研究としてあげられる.

また,玉置らの並列選択と同時に,得られているパレート最適個体を保存する手法の提案,村田らの

多目的関数にそれぞれ重みを加え単一目的として解を求める方法 9) などの提案も行われている.

多目的 GAにおいて,得られた解が解空間上の広範囲かつ真のパレート解付近に求まっているこ

とは最も重要な要素といえる.解空間上の多様性を維持するという点に関しては,従来よりシェアリ

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ングといった多様性を保持する手法がHornらによって考案され,その有効性が確認されている 10) .

しかしながら,シェアリングは解の集中を防ぐことで多様性を維持する手法であり,明示的な解の広

がりを目指したものではないため,必ずしも広範囲に及ぶ解候補が得られるとは限らない.

そこで本研究では,各最適解の探索とパレートフロントの前進を同時に行う新たな多目的分散GA

モデルを提案する.提案手法は大きく 2つのアルゴリズムから構成されている.1つは従来通り,多

目的最適化を行うための個体群(多目的 GA個体群)を用いてパレート解の探索を行いものであり,

他方は各目的関数ごとに単一目的最適化を行う個体群(単一目的GA個体群)を用いるものである.

提案手法では,単一目的GA個体群で得られた各目的ごとの最適点を多目的GA個体群に探索点とし

て加え,これらの最適点を元にその間に存在するパレート解を探索し,バランスのとれたパレート解

集合を得ようとするものである.そのため,本提案手法を用いることで,より広範囲に及ぶパレート

解の探索と,探索速度の向上を期待することができる.本研究では幾つかの数値実験例を通して,従

来の手法(単一母集団GA)との比較を行い,提案手法の有効性の検証を行っている.

本論文の構成について述べる.本論文は,6章から構成されている.第 1章は序論であり,本研究

の位置づけについて説明している.第 2章では,多目的最適化問題の数学的な定義,パレート最適解

の定義,幾つかのスカラー化手法について説明している.第 3章では,GAとGAを多目的最適化問

題に適用した多目的GAについて説明する.第 4章では,本研究の主目的である新しい分散モデルの

仕組み,および特徴について説明する.第 5章では,多目的 0/1ナップサック問題に対してGAの最

も一般的な手法である単一母集団モデルと提案する手法を適応し,その結果から提案するモデルの有

効性について検証を行っている.そして,第 6章で本研究のまとめとして結論を述べている.

2

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2 多目的最適化問題

多目的最適化問題とは,目的関数が複数に及ぶ最適化問題であり,各目的関数間にはトレードオフ

の関係が存在するという特徴を持つ.そのため多くの場合において,解は複数もしくは無限個存在し,

これをパレート最適解と呼ぶ.本章では,このような多目的最適化問題の定義,パレート最適解の概

念,多目的最適化問題を解くスカラー化手法について説明する.

2.1 多目的最適化問題

多目的最適化とは「複数個の互いに競合する目的関数を与えられた制約条件の中で何らかの意味で

最小化する問題」と定義される.

単一の目的関数に集約することのできない複数の目的関数を明示的に取り扱い,競合する目的間

の関係を明確にしながら合理的に解を求める問題が多目的最適化問題 (Multiobjective Optimization

Problem:MOP)である.

MOPは,k個の互いに競合する目的関数

f1(x1, x2, . . . , xn)

f2(x1, x2, . . . , xn)...

fk(x1, x2, . . . , xn)

(2.1)

を,m個の不等式制約条件

g1(x1, x2, . . . , xn) ≤ 0

g2(x1, x2, . . . , xn) ≤ 0...

gm(x1, x2, . . . , xn) ≤ 0

(2.2)

のもとで最小化するという問題として定式化される. あるいは等価的に,ベクトル最小化 (vecter-

minimization)の形式で

minimize f(x) = (f1(x), f2(x), . . . , fk(x))T

subject to x ∈ X = {x ∈ Rn | gi(x ≤ 0, j = 1, . . . ,m}(2.3)

と定式化される.

上式における x = (x1, x2, . . . , xn)T は n次元の決定変数のベクトルで,

fi(x) = fi(x1, x2, . . . , xn), i = 1, . . . , k

gj(x) = gj(x1, x2, . . . , xn), j = 1, . . . ,m

は与えられた n変数 x1, x2, . . . , xn の非線形実数値関数 (real-valued function)で,X は実行可能

領域 (feasible region)を表す.

多目的最適化問題では,一般的に単一目的関数の最適化のように最適解は存在しない.そのため,

最適解の概念の代わりにパレート最適解の概念が導入されている.

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2.2 パレート最適解

パレート最適解とは,他の任意の解と総合的に比較して決して劣らない解のことである.ある解が

他の解より優れているとは,2つの解の目的関数値を比較した場合,少なくとも 1つの目的関数値で

優位であり,かつ残りの目的関数値で同等もしくは優位である場合を意味する.また別の見解から定

義すると,解がある目的関数の値を改善するためには少なくとも他の 1つの目的関数の値を改悪させ

なければならない解と定義できる.

p次元定数ベクトル a, b間の不等式関係を,

a ≤ b ⇔ ai ≤ bi(i = 1, . . . , p) (2.4)

a ≤ b ⇔ ai ≤ bi(i = 1, . . . , p)かつある iについて ai < bi (2.5)

a ≤ b ⇔ ai ≤ bi(i = 1, . . . , p) (2.6)

で定義する.ただし,aiおよび biは,それぞれ aおよび bの第 i要素である.ここで,

f(x) ∼= (f1(x), . . . , fp(x)) (2.7)

とすると,多目的最適化問題における解の優越関係は次のように定義される.

定義 x1, x2 ∈ F とする.

(1) f(x1) ≤ f(x2)のとき,x1は x2に優越するといえる.

(2) f(x1) < f(x2)のとき,x1は x2に強い意味で優越するといえる.

もし,x1は x2に優越しているならば,x1のほうが x2よりもよい解である.したがって,ほかの

いかなる解にも優越されない解を選ぶことが合理的な方法であるといえる.

定義 パレート最適解:x0 ∈ F とする.

(1) x0に強い意味で優越する x ∈ F が存在いないとき,x0を弱パレート最適解という.

(2) x0に優越する x ∈ F が存在しないとき,x0を(強)パレート最適解という.

(3) 任意の x ∈ F について f(x) > f(x0)が成り立つとき,x0を完全最適解という.

Fig. 2.1に,2目的 (p = 2)の場合のパレート最適解の例を示す.図中の太線がパレート最適解を,

破線が弱パレート最適解を示している.

定義により,最適解が存在するときには,それがパレート最適解であり,それ以外のパレート最適

解は存在しない.したがって,パレート最適解は多目的最適化問題に対する最も合理的な解(の集合)

であるといえる.

2.3 多目的最適化問題の解法

多目的最適化問題のパレート最適解を求めるための手法としては,もとの問題をなんらかの工夫

により単一目的の問題に変換するという,スカラー化手法が一般的である.ここでは,代表的なスカ

ラー化手法について説明する.

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Feasible Region

Weak Pareto

optimal solution

Pareto optimal solution

f(x0)

f(x4)f(x3)

f(x2)

f(x1)

f1

f2

Fig. 2.1 Pareto Optimal Solution and Feasible Region

2.3.1 重みパラメータ法

重みパラメータ法は,重みパラメータwiを用いて各目的関数に重みを設定し,得られる加重和を

単一目的とし,パレート最適解の 1つを求める手法である.

minx∈X

wf(x) =k∑

i=1

wifi(x) (2.8)

wi ≥ 0k∑

i=1

wk = 1 (2.9)

wを可変パラメータとして解探索を繰り返すことにより,変化させながら解探索を行うと f 空間に

おける可能領域が凸の場合には,すべてのパレート最適解を得ることも可能である.しかし,非凸の

場合には相対ギャップが生じ,すべてのパレート最適解を求めることができない.

2.3.2 ε制約法

ε制約法は j番目の目的関数以外の目的関数に上限を設定して制約条件に変換するというスカラー

化手法である.すなわち,任意の fj(x)のみを目的関数とし,残りの (k − 1)個の目的関数には上限

値 εi, i = 1, 2, . . . , k, i �= kを設定して,ε制約とよばれる不等式制約に変換する.そして,以下の制

約問題を解くことにより,パレート最適解を求める手法である.

minx∈X

fj(x) (2.10)

subject to wifi(x) ≤ εi, i = 1, 2, . . . , k, i �= j (2.11)

iや εkを順次変化させることで,f 空間における可能領域が非凸の場合でも,すべてのパレート最適

解を得ることができる.

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2.3.3 辞書式配列法

辞書式配列法では,目的関数に優先順位を付け,その優先順位に従って解探索を行う.すなわち,

f1が一番優先される場合,f1のみによって順位付けを行い,f1が同じ場合には,その次に優先され

る f2により,さらに同じ場合には f3によるというように解を求める手法である.

この手法では,明らかに先に採用される目的関数が重視されるため,その優先順位の決め方が重要

である.

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3 多目的遺伝的アルゴリズム

一般に,多目的最適化問題において求めるパレート最適解は 1つではなく,集合となる.前章で説明

した解法では,パラメータを変化させ,探索を繰り返すことで間接的に複数のパレート最適解を得る

ことは可能であるが,パレート最適解集合全体の情報を知りたい場合には膨大な試行回数が必要とな

り,パラメータの設定も非常に困難である.そこで,遺伝的アルゴリズム (Genetic Algorithum:GA)

を適用することによってパレート最適集合を一度の探索で求めることを考える.GAでは,集団(解

候補の集合)を用いて探索が進められるため,パレート最適集合を直接的・効果的に求めることが期

待できる.

3.1 遺伝的アルゴリズム

遺伝的アルゴリズム (GA)は生物の遺伝と進化を模擬した確率的探索手法の 1つである 3) .最適

化問題を解くには,未知領域の探索能力と得られた情報の有効利用のバランスをうまくとることが重

要であるといわれる.ランダムサーチや山登り法では,これらのバランスが悪いため,準最適解が多

く存在するような多峰性のある問題や離散的な問題を解くことが困難である.しかし,GAはこれら

のバランスをうまくとることが可能であり,GAを用いて最適化問題を解く試みは非常に多くなされ

ている.特に従来の最適化手法では解くことのできなかった,準最適解が多く存在するような多峰性

のある問題や離散的な問題に対してその有効性が検証されている 3, 4, 5, 6) .

基本的なGAとして,Goldbergによって提案された単純GA(simple genetic algorithms: SGA)が

あり,そこから様々なバリエーションが提案されている.GAでは,自然界における生物の進化の過

程と同様に,ある世代 (generation)を形成しているいくつかの個体 (individual)の集合,すなわち個

体群 (population)の中で,環境への適合度 (fitness)の高い個体が高い確率で選択 (selection)される.

その個体に対して,遺伝子の交叉 (crossover)や突然変異 (mutation)が,ある確率で発生することに

よって次の世代の個体群が形成されてゆき,最後に得られた個体群の中で最も適合度の高い個体が最

良のものとなる.

遺伝的アルゴリズムの一般的手順

ここでは,GAにおける一般的な流れを示す.

手順 1(初期化)ランダムな染色体をもつ個体をN 個生成して,初期世代の個体群を設定する.

手順 2(再生)各個体の適合度を計算して,適合度に依存した一定の規則で個体の再生を行う.ここ

で,適合度の低い幾つかの個体は淘汰され,その個数だけ適合度の高い個体が増殖する.

手順 3(交叉)設定された交叉確率や交叉の方法により交叉を行い,新しい個体を生成する.

手順 4(突然変異)設定された突然変異確率や突然変異の方法により突然変異を行い,新しい個体を

生成する.この結果,新しい世代の個体群が生成される.

手順 5(終了判定)終了条件を満たせば,そのときに得られている最良の個体を問題の準最適解とす

る.そうでなければ手順 2へ戻る.

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終了判定条件は適用する問題に依存するが,以下のような評価基準で終了するのが一般的である.

• 個体群の中の最大の適合度が設定されたしきい値を超えた時点

• 個体群全体の平均適合度が設定されたしきい値を超えた時点

• 世代交代の回数あるいは評価関数の計算回数が,あらかじめ設定した回数を超えた時点

3.2 多目的遺伝的アルゴリズム

GAでは複数の個体を用いて解探索を進めるため,探索の各段階で個体評価における多目的性を直

接取り扱うことが可能であり,パレート最適解集合を直接求めることも可能になる.そのため,GA

を多目的最適化問題に適用する多目的GAの研究が多くなされている 3, 7, 8) .

3.2.1 遺伝的アルゴリズムによるパレート解生成法

多目的GAでは単一目的GAとは異なり以下のような要求を満たす必要がある.

• パレート最適解を適切に評価・選択し,次世代に残していくこと.この点に関して Fonsecaら

は種々提案されている手法をパレート最適性を明示的に扱うアプローチ(パレート的アプロー

チ)とそうでないアプローチ(非パレート的アプローチ)に分類している.

• パレート最適解集合をうまく特徴付けるように個体集合の多様性を維持し,パレート最適解を極端な隔たりなくサンプリングすること.

• 交叉や突然変異などの遺伝演算子がパレート解を効果的に生成するように構成すること.

これまでに,これらの要求を満たす多くのGAによる多目的最適化問題の手法が提案されてきた.

以下では代表的な多目的GAの手法について概説する.

3.2.2 非パレート的アプローチ

VEGA

Schafferは,ベクトル評価遺伝的アルゴリズム (Vector Evaluated Genetic Algorthms: VEGA) と

呼ばれる手法を提案した.

VEGAは,図 3.1に示すように,個体集合を目的関数の数に等しい部分個体集合に分割し,各目的

関数値に応じて独立に個体を選択してそれぞれの部分個体集合を生成する.そして,生成された部分

個体集合をすべて合わせて一つの個体集合としたものに対して交叉,突然変異を行う手法である.

しかし,ある一つの目的関数値のみが極端に良い解が生成されやすく,すべての目的関数がバラン

スよく達成されているという意味での妥協解が得られ難いという問題がある.(Fig. 3.2)

3.2.3 パレート的アプローチ

パレートランキング法

解の優劣関係に基づいて定められるランクとして適応度関数を作り,これにより選択を行う手法で

ある.この手法はパレート的アプローチであり,Goldbergにより提案された.

8

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generation

tgeneration

t +1

popration popration

The partial popration 1

The partial popration P

The objrctive function

f1

fP

Selection Crossover & Mutation

Fig. 3.1 VEGA

f1

f2

Real ParetoOptimal solution

Pareto Solutions

Fig. 3.2 Distribution of Pareto Solutions in VEGA(2 Objects)

9

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各個体のランクは次のように決定される.個体集合中で他に優越されない個体をパレート最適個体

とし,個体集合の中からパレート最適個体を求め,これらのランクを r = 1とする.次に,得られた

パレート最適個体を個体集合から除き,r = r + 1とする.この手続きを個体すべてのランクが決定

されるまで繰り返し,ランクが決定される.

この手法に類似した手法として Fonsecaらは,個体X が nX 個の個体に優越してるときに,X の

ランク rxを

rX = 1 + nX (3.1)

のように定める,ランクの決定法を提案している.このランキング法の適用例を図 3.3に示す.この

手法では,Goldbergのランキング法で区別できなかった個体のランキングが可能になる.

1

1 1

1

4

2

1

f1

f2

Fig. 3.3 Ranking Method

パレートトーナメント戦略

優越関係に基づくトーナメント選択を基本とし,これを適合度のシェアリング 3) を組み合わせた

手法として,Hornらによって提案されている 10) .

この手法は,Fig. 3.4に示すように,個体集合の中からランダムに 2つの個体を選び出す.それと

ともに,優越関係のテスト用としてあらかじめ定められた数の個体集合(比較集合)Cを選び出し,

トーナメント個体と比較個体との間で優越関係を調べる.そして,一方のトーナメント個体がすべて

の比較個体に優越していて,他方がそうでない場合は前者を選択する.これにより選択される個体が

定まらない場合は,シェアリングによってニッチ数の小さい個体を選択する手法である.

パレート保存戦略

パレート保存戦略では,原則として個体集合中のパレート最適個体を選択し,次世代へ残す手法で

あり 11) ,これは,単目的の問題におけるエリート保存戦略 3) に対応するものである.

3.2.4 シェアリング

多目的最適化問題に対しGAを適用する場合,個体集合がパレート最適解集合上に偏って存在する

ことがある.多様性を維持し,より広範囲にかつ均等に分布するパレート最適解集合を求めることは

10

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f1

f2

Comparison set

Competing individuals

Fig. 3.4 Tournament Method

重要であり,有効的な手法としてHornらによって提案されたシェアリングがある 10) .

まず,各個体Xについて,その個体の近傍がどの程度込み合っているかをニッチ数 (niche count)mX

として計算する.ニッチ数については一般的に

mX =∑Y ∈P

s(d(X,Y )) (3.2)

と定義される.ここで,d(X,Y )は,個体X と Y との距離で,その定義としては幾つかの方法が提

案されている.シェアリングの適用に関し,表現空間で行うことを提案しているもの 4),目的関数空

間で行うことを提案しているもの 3)があるが,本研究では,個体 iと jの表現型でのユークリッド距

離を用いるものとする.

また,s(d)は,シェアリング関数 (sharing function)と呼ばれ,距離 dについて単調減少関数であ

る.s(d)としてニッチの大きさを表すパラメータ σshareをあらかじめ与えておくものとし,次式を用

いる.

s(d) = max{0,1 − d

 σshare} (3.3)

このようにして算出したニッチ数mxi でその個体の適合度 g(i)を割り,それを新たな適合度 gs(i)

とする.

gs(i) =g(i)mxi

=g(i)∑

j

s(d(xi, xj)(3.4)

上式により再計算された適合度は,個体間の集中度合いも考慮に入れているため,この適合度を用

いた選択を行うことにより個体が均一に分散された状態で次世代に受け継がれるものと考えられる.

11

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シェアリングにおいて,個体間の近傍を求めるパラメータ σshareは重要なパラメータである.本研

究では各設計変数空間ごとに最大値と最小値の差を求め,その差の 2乗和に根号をかけたものを変数

空間における個体間の最大距離Dとする.

D =√

(xmaxi − xmin

i )2 + (xmaxj − xmin

j )2 (3.5)

シェアリングレンジというパラメータを導入し,求めた最大距離Dをこのパラメータで割ること

により,シェアリングパラメータ σshareを求める.

本研究においてシェアリングは,個体数の膨張を防ぐ目的で用いる.そのため,シェアリングは毎

世代行うのではなく,個体数がある一定数(limit population size)を越えた場合のみ適用する.具

体的には,シェアリングを用いて計算した適合度より,ルーレット選択を用いて任意の選択個体数

(select population size)を選択するというものである.Fig. 3.5に 2次元空間におけるシェアリング

の概念図を示す.

xi

xj

mi = 4

mj = 0

f1

f2

share Parameter

share

Fig. 3.5 Sharing

3.3 パレート解の評価方法

得られたパレート最適解に対する評価方法は,適用したモデルの性能を評価する上でも不可欠であ

る.しかし,多目的最適化の分野において,幾つかの評価方法は提案されている 12, 13) ものの未だ

確立には至っていない.これは,単一目的の場合と異なり,多目的では解の評価のポイントとして,

• 真のパレート解へどれだけ近づいているか(精度)

• 真のパレート解をどれだけ被覆しているか(被覆)

の両方を考慮して判断する必要があり,この 2つのポイントを適切にかつ定量的に判断するような評

価方法は非常に難しいためである.特に,真のパレート最適解が未知であった場合にはこれらの評価

項目を適切に評価することは非常に困難である.

12

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本研究では,比屋根 12) が提案している定量的な評価方法を参考に,幾つかの評価項目を設けて総

合的に解の評価を行った.具体的な評価項目について以下で説明する.

3.3.1 誤差 (error)

真のパレート解が既知の場合,各パレート最適個体と真のパレート解とのユークリッド距離の平均

は誤差とすることが可能である.ただし,この評価基準は真のパレート解が既知の場合でなければ使

用できない.

3.3.2 被覆率 (cover rate)

パレート解を探索する場合,得られた解が真のパレート解上の 1点に集中していては解集合が十分

とは言えない.そのため,解の広がりを示す指標が必要となる.被覆率とは,いかに真のパレート解

を隙間なく詳細に求めているかを評価する基準である.被覆率の概念図を Fig. 3.6に示す.

f1

f2

Max

MaxMin

Min

Fig. 3.6 被覆率 (cover rate)

被覆率は,各目的関数の最大値および最小値を検索し,その領域を任意の数で分割する.それぞれ

分割された領域の中に解が存在する場合は 1,存在しない場合には 0とする.本研究では,これらの

数値を合計し,領域の数で割ったものを被覆率として用いている.そのため,この被覆率が 1に近い

程すべての領域に解が存在していることになり,解が集中することなく全体に行き渡っていると解釈

することができる.本研究の数値計算では分割された領域の数を 100としている.また,真のパレー

ト解が既知でない場合には,経験的に得られたパレート解を基準に各目的関数値の最大値,最小値を

用いて被覆率を計算している.

13

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4 多目的GAと単一目的GAの分散協力型モデル

4.1 背景

前章で説明したように,多目的GAにおいて種々のモデルが提案され,その有効性が検証されてい

る.多目的GAにおいて,得られた解が解空間上の広範囲かつ真のパレート解付近に求まっているこ

とは最も重要な要素といえる.従来,真のパレート解に近い解を得るためには,パレート保存戦略,

また広範囲に及ぶ解を得るためには,シェアリングが有効な手法として提案されている.しかしなが

ら,シェアリングは解の集中を防ぐことが目的であり,明示的に広がりを持った解を得ることができ

るとは限らない.

本研究では,解空間上の広範囲に分布するパレート最適解を得ることを目標とし,パレートフロン

トの前進と各最適解の更新とを同時に行う新しい多目的GA分散モデルを提案し,以下で説明を行う.

4.2 多目的GAと単一目的GAの分散協力型モデル

多目的GAでパレート最適解を求める場合,真のパレート最適解にできるだけ近い解集合を得るこ

とが重要である.真のパレート最適解に近い解集合,すなわち良いパレート最適解とは以下のように

定義できる.

• 真のパレート最適解上に分布している

• 真のパレート最適解の全域をカバーしている

上記の内,前者に関しては,各世代でのパレート最適解を必ず次世代に残すパレート保存戦略が有

効な手法である.後者では,シェアリングが有効な手法として提案されている.

シェアリングは,パレート最適解上に偏って存在する個体集合をより広範囲にかつ均一に分布させ

るための手法である.個体周辺の混み具合を示すニッチ (niche)数を用いて適合度を再計算し,その

値を元に選択を行う.すなわち,偏って存在する個体はニッチ数が大きくなり,選択されにくい.そ

のため,選択された個体が解空間上に極端に偏って存在することを防ぐ.

シェアリングでは,各世代で得られている個体集合の中から個体が均一に分布するように選択が行

われる.しかし,広範囲に広がるパレート最適解を明示的に探索するわけではない.そのため,問題

によっては真のパレート最適解全域を覆うようなパレート最適解を得ることは困難である.特にある

目的関数値が極端に良いパレート最適解を得ることは難しい.

そこで本研究では,明示的な解の広がりを持ったパレート最適解の探索を目的とし,各目的関数の

最適値の探索とパレートフロントの前進を同時に行う多目的 GAと単一目的 GAの分散協力型モデ

ル(Distributed Cooperation model of MOGA and SGA:DCMOGA)の提案を行う.DCMOGA

では,真のパレート解全域を覆うようなパレート解集合を得ることを目標としている.そのため,従

来の手法では得ることが困難であった,各目的関数における最適解を得ることが DCMOGAの重要

な目的となる.このことは,予備実験で得た各目的関数の最適解を初期個体に導入して多目的GAを

行った場合に,従来の多目的GAよりも良い結果を得たことからも重要であるといえる.

14

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DCMOGAでは多目的GAを行う従来の個体群(MOGA個体群)とは別に,各目的間数における

最適値を得るための個体群(SGA個体群)を用いてパレート最適解の探索を行う.提案手法の概念

図 Fig. 4.1を示す.MOGA個体群の個体数はパラメータとして変化させ,SGA個体群の個体数は一

定とし,本研究では SGA個体群の個体数を経験的に 4または 2と設定した.

また,それぞれの最適値を知ることが解探索に良い影響を与えると考えられるため,任意の世代間

隔で各個体群の最適解を移住させる.移住間隔は一定とし,移住を行うまでの各個体群の評価回数は,

その時点での各個体群の最適解により以下のように決定する.

(1)移住間隔をある一定の評価回数毎とし,その評価回数を各個体群に均一に分割する.

(2)各個体群が一定の評価回数(移住間隔)に達すると,SGA個体群とMOGA個体群における最

適解を各目的関数ごとに比較する.

(3) (a) MOGA個体群の最適解の方が良ければ,MOGA個体群の評価回数を減らし,減らした評

価回数分を SGA個体群の評価回数として加える.

(b) 等しいかあるいは SGA個体群の最適解の方が良ければ逆の操作を行う.

(4)終了評価回数でなければ,(2)に戻る.

このように移住を行い,ある一定の世代(評価回数)まで解探索を進めて行く.この手法の概念図

を Fig. 4.2に示す.

15

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f1

f2

f1

f2

f1

f2

Seach for f1

Seach for f2

Seach for f1 and f2

Fig. 4.1 Distributed Cooperation model of MOGA and SGA

16

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MigrationMigration

Simple GA

Poplation Set

Simple GA

Poplation Set

Multiobjective GA

Population Set

Fig. 4.2 Migration in DCMOGA

 

17

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5 数値実験

本章では,提案した多目的GAと単一目的GAの分散協力型モデル(DCMOGA)を実際に幾つか

の対象問題に適用し,従来手法との比較を通じて DCMOGAの有効性の検証を行う.まず,本実験

における対象問題として取り上げた多目的 0/1ナップサック問題,ネットワーク設計問題について,

またそれらに対するGAの構成とパラメータについて説明する.本実験では,荷物数の異なる 3つの

多目的 0/1ナップサック問題とネットワーク設計問題に対して実験を行っている.

本数値実験では,それぞれの対象問題に対し,従来の手法とDCMOGAを用いて数値実験を行い,

多目的GAにおける提案手法の有効性を検証行う.

さらに,DCMOGAでは移住間隔毎に各個体群の目的関数値を比較し,評価回数を変化させるとい

う方法を用いている.この評価回数の推移についても考察を行う.

5.1 0/1多目的ナップサック問題

多目的 0/1ナップサック問題は,0/1ナップサック問題を単純に多目的化した問題であり,問題自

体は非常に単純な問題である.ここでは多目的 0/1ナップサック問題の定義,この問題に対するGA

の構成とGAパラメータについて概説する.

5.1.1 0/1ナップサック問題の定義

一般に 0/1ナップサック問題は,荷物(item)のセットから成り立っている.各荷物には重さと利

益が付随し,上限制約としてナップサックの容量がある.この問題の目的は,荷物全体を総和した利

益が最大になるような荷物の組み合わせを見つけることである.ただし,選んだ荷物の組み合わせは

全てナップサック内に収まらなければならない.つまり重量和は,ナップサックに定められた許容量

を超えてはいけない.

この単一目的問題は,ナップサックの数および付随する荷物のセットを複数にすることによって直

接的に多目的問題へ拡張することができる.ここでの多目的 0/1ナップサック問題は,以下の式に

よって定式化される.

pi,j = ナップサック iに関する荷物 jの利益

wi,j = ナップサック iに関する荷物 jの荷物の重さ

ci = ナップサック iの許容重量,

設計変数値であるベクトル x = (x1, x2, · · · , xm) ∈ 0, 1m(mは任意の正の整数)は以下の制約条件

を満たさなければならない.

∀ ∈ 1, 2, . . . , n :m∑

j=1

wi,j · xj ≤ ci (5.1)

その上で, 次式によって求まる f(x) = (f1(x), f2(x), . . . , fn(x))の最大化を目的とする.

fi(x) =m∑

j=1

pi,j · xj (5.2)

18

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(尚,上式において xj = 1 ならば荷物 jは選択された荷物であることを意味する)

多目的ナップサック問題は多目的における多くの研究に用いられている代表的なテスト関数の 1つ

であり,特に離散的な問題における良質なテスト関数として知られている 13, 14) .

尚,本研究では使用例題として 100荷物 2目的,250荷物 2目的,750荷物 2目的の 3つのナップサッ

ク問題を用いた.今回用いた例題の内,100荷物 2目的の問題を Table 5.1に,250荷物 2目的の問

題をTable 5.2,5.3に示す.

Table 5.1 100item 2 Knapsack problems1 Knapsack(capacity ≤ 2732)

weight 94 74 77 74 29 11 73 80 81 82 75 42 44 57 20 20 99 95 52 81

profit 57 94 59 83 82 91 42 84 85 18 94 18 31 27 31 42 58 57 55 97

weight 68 16 79 30 16 90 21 49 70 78 77 21 84 19 65 38 25 43 99 75

profit 79 10 34 100 98 45 19 77 56 25 60 22 84 89 12 46 20 85 42 94

weight 80 10 44 26 21 74 20 22 81 89 15 35 24 16 43 75 25 76 48 75

profit 20 65 27 34 27 91 17 56 23 89 18 11 91 79 14 99 45 73 81 96

weight 15 23 10 81 81 67 58 77 49 16 65 74 14 41 74 74 17 12 95 29

profit 51 96 63 40 93 87 71 54 74 15 32 57 70 62 12 71 57 97 48 33

weight 75 61 59 37 75 90 17 79 15 88 76 93 98 80 33 39 96 71 39 49

profit 42 15 39 91 17 63 81 49 60 90 87 25 15 30 76 76 53 59 40 59

2 Knapsack(capacity ≤ 2753)

weight 55 10 97 73 69 23 62 47 90 62 96 88 95 61 94 16 91 61 27 18

profit 20 19 20 66 48 100 13 87 62 73 53 79 17 93 78 22 85 86 56 56

weight 96 77 14 36 17 56 83 41 52 69 97 45 94 45 47 28 82 13 82 39

profit 44 86 94 93 57 31 20 35 70 79 58 24 84 12 17 43 35 47 92 38

weight 28 41 55 12 50 32 97 87 36 11 20 37 87 91 19 22 89 54 20 78

profit 93 50 27 100 36 30 23 22 56 73 55 32 75 42 82 80 55 48 93 28

weight 52 35 18 96 54 10 39 17 51 40 25 84 54 31 97 37 63 39 60 87

profit 26 42 96 93 16 39 46 80 24 87 37 73 81 38 98 13 91 85 17 59

weight 63 37 13 31 84 90 84 57 21 64 63 21 95 83 81 45 68 89 100 14

profit 58 56 93 66 64 17 10 33 28 97 25 42 17 23 37 46 52 33 26 90

5.1.2 ナップサック問題における多目的GAの構成法

本研究では対象問題の 1つとして多目的 0/1ナップサック問題を用いた.本適用問題は,荷物の数

によってその難易度が大きく異なってくるものの,問題自体は非常にシンプルで制約も緩いため最も

一般的と思われるGAの構成を用いた.

5.1.3 個体の表現方法

通常のGAと同様,0, 1からなるビット列を用いた.具体的には,問題の荷物の数分のビット列を

用意し,遺伝子のビット位置とアイテム番号の位置を適合させることにより遺伝子の持つアイテム情

報を表現した.

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Table 5.2 250item 2 Knapsack problems ~ 1 Knapsack(capacity ≤ 6536)~weight 79 25 99 41 94 75 40 59 95 99 95 93 74 83 14 89 41 53 75

profit 100 49 54 12 78 30 65 31 90 50 80 84 53 72 94 60 74 58 17

weight 70 49 19 84 16 25 66 68 79 16 93 14 20 99 93 100 56 62 69

profit 24 45 19 33 39 91 69 48 56 84 66 60 95 49 63 22 71 83 36

weight 91 52 86 43 76 45 21 57 45 41 58 33 68 22 66 83 50 64 35

profit 15 64 28 49 41 14 17 28 65 27 65 28 21 17 33 68 51 91 97

weight 42 33 66 38 57 69 90 79 89 28 70 38 71 46 41 49 43 36 68

profit 28 91 82 54 12 47 33 30 65 56 57 91 88 77 99 29 23 39 86

weight 92 33 84 90 22 93 92 89 47 23 13 11 34 11 60 82 10 16 81

profit 12 85 22 64 33 95 32 10 44 56 86 38 72 10 57 30 28 92 68

weight 20 85 52 92 31 24 83 76 15 38 63 32 99 39 97 28 42 80 21

profit 54 34 93 35 41 46 82 66 15 89 70 46 43 60 36 63 18 67 13

weight 99 11 91 24 45 28 89 31 81 78 48 72 36 77 84 40 65 43 49

profit 12 94 19 65 59 28 91 37 24 86 23 100 38 21 42 58 91 26 69

weight 23 82 41 22 67 96 58 56 81 42 55 31 38 33 10 43 84 52 96

profit 72 89 34 84 30 24 62 20 45 11 24 54 61 14 97 79 65 68 93

weight 92 51 50 63 70 46 30 45 41 15 82 52 25 69 62 26 64 93 78

profit 54 36 41 62 90 10 58 57 46 85 19 15 15 44 70 17 25 24 37

weight 82 71 65 40 25 20 24 19 10 12 31 22 96 79 31 98 80 10 31

profit 45 97 85 64 46 74 86 89 12 83 24 40 99 27 28 65 57 66 75

weight 42 99 26 21 83 78 66 54 100 22 48 16 25 97 95 70 22 20 16

profit 50 42 34 12 59 100 12 61 98 14 68 64 46 87 68 33 43 28 24

weight 17 19 49 90 44 53 18 42 26 87 55 58 32 61 32 10 11 12 61

profit 25 29 13 59 20 66 84 16 40 69 55 73 85 25 17 81 32 74 90

weight 96 59 94 25 30 70 53 35 54 91 51 20 87 70 50 52 31 43 32

profit 88 11 98 59 12 93 16 97 37 59 57 16 73 74 65 12 33 28 66

weight 25 40 78

profit 17 88 86

20

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Table 5.3 250item 2 Knapsack problems ~ 2 Knapsack(capacity ≤ 6489)~

weight 17 63 65 19 79 11 83 88 29 75 83 47 77 19 43 30 89 70 48 39

profit 40 16 42 50 99 12 46 43 97 28 41 15 36 96 69 24 36 21 54 38

weight 17 54 28 73 71 99 50 19 55 25 43 10 49 83 57 41 42 80 33 19

profit 43 17 19 48 81 50 28 34 51 98 24 61 11 78 86 89 45 20 16 74

weight 78 61 50 56 58 36 44 82 49 90 46 37 31 98 51 48 14 94 36 58

profit 11 92 99 92 15 50 54 30 97 85 19 11 78 73 47 96 47 74 96 19

weight 44 52 65 98 39 22 12 21 17 88 93 16 86 41 10 10 32 45 13 87

profit 12 34 78 26 30 95 99 68 84 28 79 61 56 99 95 27 16 38 28 38

weight 39 70 49 45 11 16 55 15 42 80 43 42 31 61 41 21 51 55 43 41

profit 85 62 62 18 65 83 65 86 76 55 74 94 80 91 71 20 42 90 100 75

weight 15 76 72 24 32 11 90 78 20 21 11 68 31 18 14 19 65 14 11 83

profit 99 32 17 59 10 88 55 95 44 41 69 10 41 83 10 62 75 24 26 55

weight 22 60 90 21 44 93 50 66 41 90 88 63 42 89 50 53 39 64 39 41

profit 34 25 60 72 78 64 62 93 97 92 21 36 99 94 65 27 96 69 76 32

weight 33 79 46 39 78 95 56 41 24 68 90 12 10 33 30 72 74 13 71 77

profit 75 43 55 77 13 64 65 50 16 73 96 66 43 15 76 58 86 29 26 20

weight 66 30 87 69 16 76 94 33 94 23 92 59 66 99 88 38 54 46 32 76

profit 31 26 54 38 75 21 30 93 58 82 92 24 32 34 41 36 25 54 55 77

weight 67 27 15 84 73 84 78 81 56 45 23 59 91 70 86 44 35 83 26 87

profit 67 11 56 74 51 32 53 54 92 53 23 34 91 27 25 75 13 65 47 52

weight 57 55 80 22 62 20 47 69 11 38 59 17 35 25 39 58 67 31 83 17

profit 51 55 27 78 74 73 85 10 41 70 92 67 30 11 54 34 96 32 87 65

weight 82 53 53 55 81 16 16 39 34 60 95 56 85 82 47 88 100 77 82 75

profit 12 39 21 98 24 19 60 77 10 18 96 23 93 19 73 93 16 60 77 54

weight 95 74 84 18 17 17 58 36 60 59

profit 78 50 94 15 90 54 78 90 36 36

21

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5.1.4 交叉

本適用問題は,0,1のビット列により個体が表現される非常にシンプルな問題であるため,最も

一般的な 1点交叉を用いた.

5.1.5 突然変異

突然変異には,ビット反転を用いた.また,個体の適合度改悪を防ぐために,ランクが 1(各世代

におけるパレート最適解)である個体に対しては突然変異を行わないように設定した.

5.1.6 選択

選択では,各世代におけるランク 1の個体のみを選択するパレート保存戦略を用いた 11) .しかし

各世代における個体数は一定であるため,この一定数を超えた場合,シェアリングにより各個体に適

合度を与えルーレット選択行い,この一定数以下の場合,ランクに基づくルーレット選択を行った.

5.1.7 制約外への個体の対応

今回用いたナップサック問題では重量の制約があるため,この重量を超えるような目的関数値を持

つ個体に対して何らかの対処が必要となる.本数値実験では,初期個体発生時において定義域外に存

在する個体は認めず,制約を満たす個体数が必要個体数となるまで,個体の生成を行うものとする.

しかし,交叉もしくは突然変異といったGAオペレータにより個体が定義域を越える場合もある.こ

のような場合,この問題の特性を考え,制約を満たしていない個体の詰め込むべき荷物を,ランダム

に 1つずつ減らすという方法を用いた.

5.1.8 GAパラメータ

数値計算で使用したそれぞれの手法におけるGAパラメータを Table5.4に示す.提案手法におけ

る多目的GA個体群でのパラメータは従来の手法でのパラメータと同様の値を用いた.

Table 5.4 Used Parameter in Knapsack Ploblems

MOGA DCMOGA

SGA MOGA

Crossover Rate 1.0

Mutation Rate 0.01 1/L 0.01

L:染色体長

多目的GAにおいて,用いる個体数,シェアリング半径や終了条件は,得られるパレート最適解の

精度に影響すると考えられる.これらのパラメータは多くの手法で解に大きく影響することが報告さ

れている 15) .さらに,最適な値を求めることは非常に難しい.そこで,本数値実験では個体数とし

て 100,200,400の値を,また,シェアリングレンジとして各個体数を使用し,終了条件として評価

回数を 180,360,720万回と設定する.シェアリングレンジとは,シェアリング半径を決定するサブ

パラメータであり,パレート最適個体のうちユークリッド距離の最も離れた 2個体の距離をシェアリ

22

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ングレンジで分割することによシェアリング半径を求めている.すなわち,シェアリングレンジが大

きくなるとシェアリング半径は小さくなる.

5.2 携帯電話用サイトにおけるネットワーク設計問題

携帯電話ネットワークの技術には大きな問題が 2つ存在する.1つは,ネットワークの設計であり,

他方は周波数の設定である.ネットワークの設計は,アンテナを設置するための候補サイト群より実

際に設置するサイト群を決定することであり,周波数の設定は,BSにおいて用いる周波数基準を設

定することである.本研究では,上記の内,前者の問題を対象としている.

アンテナの位置決定のためには,決められたアンテナの数やアンテナの持つパラメータなども決定

する必要がある.また,求められる目的も,電波の分布領域の広域化だけでなく,設計コストの最小

化,電波が途切れないための電波ごとの十分な重なり具合など複数に及ぶため多目的最適化問題とし

て定式化することができる.

本章では,ネットワーク設計問題の扱う設計空間,および問題の目的と制約について説明する.

5.2.1 設計空間

ネットワーク設計問題は,与えられた領域内における候補サイトの中から,実際にアンテナを設置

するサイトの決定とアンテナの構成を決定する.そのため,問題の扱う設計変数は,候補サイトに設

置するアンテナに付随するパラメータである.本来,サイトに設置するアンテナは,無指向性,有指

向性の 2種類存在するが,本研究では単純化のため無指向性アンテナのみを対象として扱った.無指

向性アンテナに付随するパラメータを以下に示す.

• 2次元の位置座標 (x, y)

• 電波の強さ r

上記の内,電波の強さ rは,アンテナが最低限の電波の質的しきい値を保ったまま,どの程度の範

囲まで電波を発信しているかに関するパラメータである.電波の質的なしきい値とは,携帯電話が受

信できる最低限の電波の強さを意味する.本研究では,単純化のためこのパラメータを,アンテナが

電波を発信できる半径の距離と設定した.

本研究では対象とする領域,すなわち各アンテナの電波によりカバーされる領域として,100(m)

× 100(m)の正方形の架空エリアを用いた.さらに,アンテナを配置できる候補サイトを,縦横とも

に 5(m)間隔と設定した.そのため,対象とした領域における候補サイトの数は,400である.また,

用いたアンテナの強さおよび付随するコストをTable 5.5に示す.

5.2.2 目的

本研究において想定した目的を以下に示す.

• 電波のカバー領域の最大化

• 設計コストの最小化

23

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Table 5.5 The kind of antenna powerPower(m) Cost

10 10

15 15

20 20

上記におけるコストの最小化とは,以下の 2つのことを実現することにより達成することが可能で

ある.

• 用いるアンテナ数の最小化

• 用いるアンテナを電波の強いものからより弱いものとする

そのため,ネットワーク設計問題では,より少ない(もしくは電波の弱い)アンテナを用いてより

広範囲の領域をカバーする必要がある.すなわち,より無駄のないアンテナの配置を実現することが

本問題の目的であるといえる.

5.2.3 制約

本研究では,以下の事柄を制約として考慮した.

• 電波の重なりに関する制約

• 電波のカバー領域に関する制約

• コストに関する制約

上記の制約の内,電波のカバー領域に関する制約とコストに関する制約は,満足すべき目的関数の

範囲を限定するために用いている.

制約の 1つである電波の重なりについては以下で説明する.本研究において対象としている携帯電

話は,いつでも移動することができるため,電波が連続して途切れないようにアンテナの位置および

強さを設定する必要がある.そのため,各アンテナの発信できる電波の境界線上は,他のアンテナの

発信する電波のエリアと重なっていなければならない.この点に関して本研究では,各アンテナの発

信する電波の境界線が,どれだけ他のアンテナの発信する電波と重なり合っているかを計算し,重な

りの平均がある一定値以上になるようにペナルティーを課すという方法を用いている.

5.2.4 実験に用いた関数

本研究の数値実験において設定した目的関数および制約のためのペナルティー関数について説明

する.

対象問題の目的である電波のカバー領域,および設計コストに関して用いた関数式を以下に示す.

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f1 = 5 ∗ (cover

100) − 4 (5.3)

f2 =n∑

i=1

Costi (5.4)

上式の (5.3)における coverは,全領域に対してどれだけの領域をカバーしているかを示す割合値で

ある.また,式 (5.4)における Costiは,i番目のアンテナにおけるコストを意味している.

5.2.5 ネットワーク設計問題における多目的GAの構成法

本研究では対象問題の 1つとしてネットワーク設計問題を用いた.本適用問題も多目的 0/1ナップ

サック問題同様,非常にシンプルな問題と思われる.そのため最も一般的と思われるGAの構成を用

いた.

5.2.6 個体の表現方法

通常のGAと同様,0, 1からなるビット列を用いた.具体的には,3種類のアンテナを用いるため,

アンテナを設置しない場合を含め各サイトは 4パターンで表すことができる.そこで,サイト数× 2

のビット列を用意し,遺伝子のビット位置と各サイトを適合させることにより遺伝子の持つ各サイト

のアンテナ情報を表現した.

5.2.7 交叉

本適用問題は,0,1のビット列により個体が表現される非常にシンプルな問題であるため,最も

一般的な 1点交叉を用いた.

5.2.8 突然変異

突然変異には,ビット反転を用いた.また,個体の適合度改悪を防ぐために,ランクが 1(各世代

におけるパレート最適解)である個体に対しては突然変異を行わないように設定した.

5.2.9 選択

選択では,各世代におけるランク 1の個体のみを選択するパレート保存戦略を用いた 11) .しかし

各世代における個体数は一定であるため,この一定数を超えた場合,シェアリングにより各個体に適

合度を与えルーレット選択行い,この一定数以下の場合,ランクに基づくルーレット選択を行った.

5.2.10 制約外への個体の対応

本対象問題では制約条件外の個体に対し,下記の式に示す線形のペナルティー関数を用いて目的関

数値にペナルティーを課すという方法を用いた.

f ′(u) = penalty(u) ∗ f(u) (5.5)

制約の内,電波の重なりに関するペナルティー関数として,

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penaltyh(u) =

2 ∗ (handover100 ) − 1 if handover > 50%

0 Else(5.6)

を設定した.

また,カバー領域に関するペナルティー関数として式 (5.7)を,コストに関するペナルティー関数

として式 (5.8)を設定した.

penaltycover(u) =

1 if cover > 80%

0 Else(5.7)

penaltycost(u) =

1 if Total cost ≤ 2000

0 Else(5.8)

5.2.11 GAパラメータ

数値計算で使用したそれぞれの手法におけるGAパラメータを Table5.6に示す.提案手法におけ

る多目的GA個体群でのパラメータは従来の手法でのパラメータと同様の値を用いた.

Table 5.6 Used Parameter in Knapsack Ploblems

MOGA DCMOGA

SGA MOGA

Crossover Rate 1.0

Mutation Rate 0.025 1/L 0.025

L:染色体長

本数値実験では個体数を 10とし,また,シェアリングレンジとして個体数を使用し,終了条件と

して評価回数を 600回と設定する.

5.3 数値計算結果

本実験では,対象問題として 100荷物 2目的,250荷物 2目的,750荷物 2目的の 2種類の多目的

0/1ナップサック問題とネットワーク設計問題をとりあげた.それぞれの対象問題に対して,従来の

手法(以下:MOGA)と提案手法(以下:DCMOGA)を用いて実験を行った.

多目的 0/1ナップサック問題を用いた場合に得られた結果の内,10試行平均の被覆率をFig. 5.1と

Table 5.7に示す.また,被覆率が 10試行平均に最も近い値を持つパレート最適解集合のプロット図

を問題別に Fig. 5.2,Fig. 5.3,Fig. 5.4に示す.また,今回適用した多目的 0/1ナップサック問題場

合,真の解が未知であるため,評価項目の内,誤差に関してのデータは得ることができなかった.

DCMOGAでは,各個体群の評価回数が移住間隔毎に変化する.個体の探索におけるMOGA個体

群の評価回数が 10試行の平均値に最も近い結果を持つ,評価回数推移のプロット図を Fig. 5.5,Fig.

5.6,Fig. 5.7に示す.

26

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ネットワーク設計問題に適用した結果得られた,パレート最適解のプロット図を Fig. 5.8に示す.

Table 5.7 Cover Rate in Knapsack Problems

Knapsack items Population size Method Cover rate

100 100 MOGA 0.41

DCMOGA 0.37

200 MOGA 0.60

DCMOGA 0.48

400 MOGA 0.61

DCMOGA 0.53

250 100 MOGA 0.37

DCMOGA 0.35

200 MOGA 0.54

DCMOGA 0.56

400 MOGA 0.68

DCMOGA 0.65

750 100 MOGA 0.29

DCMOGA 0.36

200 MOGA 0.45

DCMOGA 0.58

400 MOGA 0.56

DCMOGA 0.79

5.3.1 提案モデルと従来のモデルとの比較

4章で提案した,新しい分散モデルと従来のモデルを 0/1多目的ナップサック問題に適用し,結果

の比較を通じて提案手法の有効性を検証する.

まず,得られたパレート最適解の広がりについて考察を行う.Fig. 5.1や Table 5.7から分かるよ

うに,MOGAでは問題が難しくなるにつれて,被覆率が下がり,個体数が増すにつれて被覆率が上

昇している.100荷物の問題では,400個体と 200個体を用いた場合を比較した場合,ほとんど差が見

られない.これは問題が離散問題であり,パレート最適解が無限に存在しないためであると考えられ

る.これに対し,DCMOGAでは,個体数の増加とともに被覆率が良くなる点では同様であるが,問

題が複雑になったとしても,同等あるいはそれ以上の被覆率が得られている.さらに,Fig. 5.2,Fig.

5.3,Fig. 5.4に示した得られたパレート最適解のプロットからも,DCMOGAがより広範囲に分布

するパレート最適解を得られていることが分かる.ただし,問題が比較的簡単な場合(ここでは 100

荷物の場合)には,多くの個体を用いることによって,広範囲に分布するパレート最適解を得ること

が可能である.

次にパレート最適解の進行状況,すなわち真のパレート最適解へどれだけ近づいているかという観

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MOGA(100) MOGA(200) MOGA(400)DCMOGA(100)DCMOGA(200)DCMOGA(400)0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

Cov

er R

ate

Population Size

100 items 250 items 750 items

Fig. 5.1 Cover Rate in Knapsack Problems

点から考察を行う.Fig. 5.2,Fig. 5.3,Fig. 5.4からも分かるように,それぞれの手法において大き

な差はない.しかし,問題が難しくなった 750荷物の個体数が少ない(ここでは個体数 100)場合,

MOGAの方がわずかに精度が良いと言える.

以上の結果より,以下のことが言える.

• 個体数が多く,問題が簡単な場合には,MOGAを用いたとしても広範囲に分布するパレート最

適解を得ることができる.

• 難しい問題の場合には,MOGAに比べDCMOGAの方が広範囲に分布するパレート最適解を

得ることができる.

• それぞれの手法において精度に大きな差はない.

• 個体数が少なく,問題が難しい場合には,DCMOGAに比べMOGAの方が精度が良い.

MOGAでは,ある目的関数値が極端に良い解,すなわち真のパレート最適解の両端部分の探索が,

問題の難度が上がるにつれて困難になる.これは広範囲に分布するパレート最適解を明示的に求めよ

うとしていないためであると考えられる.

それに対しDCMOGAでは,SGA個体群を用いて各目的関数の最適解を探索するため,広範囲に分

布するパレート最適解を得ることが可能になる.さらに,各目的関数の最適値を持った個体をMOGA

個体群に導入することが,パレート最適解の進行(解の精度)にも良い影響を及ぼしていると考えら

れる.

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MOGA DCMOGA

3000

3200

3400

3600

3800

4000

4200

4400

fx2

3200 3400 3600 3800 4000 4200 4400

fx1

3000

3200

3400

3600

3800

4000

4200

4400

fx2

3200 3400 3600 3800 4000 4200 4400

fx1Population Size 100

3000

3200

3400

3600

3800

4000

4200

4400

fx2

3200 3400 3600 3800 4000 4200 4400

fx1

3000

3200

3400

3600

3800

4000

4200

4400

fx2

3200 3400 3600 3800 4000 4200 4400

fx1Population Size 400

3000

3200

3400

3600

3800

4000

4200

4400

fx2

3200 3400 3600 3800 4000 4200 4400

fx1

3000

3200

3400

3600

3800

4000

4200

4400

fx2

3200 3400 3600 3800 4000 4200 4400

fx1Population Size 200

Fig. 5.2 Knapsack 100items

29

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MOGA DCMOGA

7000

7500

8000

8500

9000

9500

10000

fx2

7500 8000 8500 9000 9500 10000

fx1

7000

7500

8000

8500

9000

9500

10000

fx2

7500 8000 8500 9000 9500 10000

fx1Population Size 100

7000

7500

8000

8500

9000

9500

10000

fx2

7500 8000 8500 9000 9500 10000

fx1

7000

7500

8000

8500

9000

9500

10000

fx2

7500 8000 8500 9000 9500 10000

fx1Population Size 200

7000

7500

8000

8500

9000

9500

10000

fx2

7500 8000 8500 9000 9500 10000

fx1

7000

7500

8000

8500

9000

9500

10000

fx2

7500 8000 8500 9000 9500 10000

fx1Population Size 400

Fig. 5.3 Knapsack 250items

30

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MOGA DCMOGA

Population Size 100

22000

24000

26000

28000

30000

fx2

24000 26000 28000 30000

fx1

22000

24000

26000

28000

30000

fx2

24000 26000 28000 30000

fx1

Population Size 200

22000

24000

26000

28000

30000

fx2

24000 26000 28000 30000

fx1

22000

24000

26000

28000

30000

fx2

24000 26000 28000 30000

fx1

Population Size 400

22000

24000

26000

28000

30000

fx2

24000 26000 28000 30000

fx1

22000

24000

26000

28000

30000

fx2

24000 26000 28000 30000

fx1

Fig. 5.4 Knapsack 750items

31

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0 1000000 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000 70000000

2000

4000

6000

8000

10000

12000

Num

ber

of E

valu

atio

ns in

eac

h su

bpop

ulat

ion

Number of Evalustions

0 500000 1000000 1500000 2000000 2500000 3000000 35000000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Num

ber

of E

valu

atio

ns in

eac

h su

bpop

ulat

ion

Number of Evaluations

0 400000 800000 1200000 16000000

500

1000

1500

2000

2500

3000

Num

ber

of E

valu

atio

ns in

eac

h su

bpop

ulat

ion

Number of Evaliations

Popuration Size 100

Popuration Size 200

Popuration Size 400

SGA1 SGA2 MOGA

Fig. 5.5 Number of Evaluations (100items)

32

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Popuration Size 100

Popuration Size 200

Popuration Size 400

SGA1 SGA2 MOGA

0 1000000 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000 70000000

2000

4000

6000

8000

10000

12000

Num

ber

of E

valu

atio

ns in

eac

h su

bpop

ulat

ion

Number of Evalustions

0 500000 1000000 1500000 2000000 2500000 3000000 35000000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Num

ber

of E

valu

atio

ns in

eac

h su

bpop

ulat

ion

Number of Evaluations

0 400000 800000 1200000 16000000

500

1000

1500

2000

2500

3000

Num

ber

of E

valu

atio

ns in

eac

h su

bpop

ulat

ion

Number of Evaliations

Fig. 5.6 Number of Evaluations (250items)

33

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Popuration Size 100

Popuration Size 200

Popuration Size 400

SGA1 SGA2 MOGA

0 1000000 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000 70000000

2000

4000

6000

8000

10000

12000

Num

ber

of E

valu

atio

ns in

eac

h su

bpop

ulat

ion

Number of Evalustions

0 500000 1000000 1500000 2000000 2500000 3000000 35000000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Num

ber

of E

valu

atio

ns in

eac

h su

bpop

ulat

ion

Number of Evaluations

0 400000 800000 1200000 16000000

500

1000

1500

2000

2500

3000

Num

ber

of E

valu

atio

ns in

eac

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bpop

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ion

Number of Evaliations

Fig. 5.7 Number of Evaluations (750items)

34

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1000

1200

1400

1600

1800

2000

fx2

0.8 0.85 0.9 0.95 1

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1000

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1400

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1800

2000

fx2

0.8 0.85 0.9 0.95 1

fx1

DCMOGA

MOGA

Fig. 5.8 Network Design Problems

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5.3.2 各個体群における評価回数の推移

提案手法における各個体群の評価回数の推移について考察を行い,パレート解探索における最適解

の移住の有効性を検証を行う.

100荷物の場合,Fig. 5.5から分かるように,探索の初期段階においてはMOGA個体群の評価回数

が増加し,多目的GAの計算が多く行われている.しかし,それ以降の評価計算の大部分を SGA個

体群の 1つが占有しており,多目的GAの計算はほとんど行われていない.問題が難しくなるにつれ

て,MOGA個体群の評価回数が多い状態が長く続いていることが Fig. 5.6,Fig. 5.7から分かる.特

に 750荷物の場合には,MOGA個体群の評価回数の多い状態が,解探索の終盤まで続いている.ま

た,MOGA個体群の個体数が増えると評価計算回数も減少している.

MOGAと比較して,DCMOGAの多目的GAを行っている評価計算回数は明らかに少ない.しか

しながら,Fig. 5.2,Fig. 5.3,Fig. 5.4より,MOGAと同等,あるいはそれ以上のパレート最適解

が得られていることが分かる.

以上の結果より以下のことが言える.

• 探索の初期段階においてはMOGA個体群の評価回数が多くなる.

• 問題が簡単な場合には,大部分の評価計算が SGA個体群で行われる.

• 問題が難しくなるにつれて,MOGA個体群の評価計算回数が増加する.

• 個体数が増えるとMOGA個体群の評価計算回数が減少する.

• 多目的GAを行っている評価計算回数は少ないが良好なパレート最適解を得ることができる.

DCMOGAでは,探索の初期段階ではMOGA個体群における評価計算回数が増加している.その後,

ある程度の探索が進むと,ほとんどの評価計算が SGA個体群で行われる.このことから,DCMOGA

ではこの切り替わる時点で,MOGA個体群の探索がある程度進んでいると考えられる.

また,MOGA個体群における評価計算回数は少ないが,良好なパレート最適解を得ることができ

ている.これは SGA個体群とMOGA個体群の間での最適解の移住が,解探索に良い影響を及ぼし

ていると考えられる.

5.3.3 ネットワーク設計問題への適用

実問題であるネットワーク設計問題に適用し,提案したDCMOGAの有効性を検証する.

まず,パレート最適解の広がりについて考察する.Fig. 5.8に示したパレート最適解のプロット図

から,DCMOGAを用いたときにより広い範囲に分布するパレート最適解が得られたことが分かる.

このことは,多目的 0/1ナップサック問題に適用した場合と同様である.しかし,精度においては,

従来のMOGAを用いた場合により良い結果を得ている.実問題であるネットワーク設計問題に適用

した場合,提案したDCMOGAは従来の手法と比べ,より広範囲に及ぶパレート最適解を得られた.

このことから,提案手法が離散的大規模多目的最適化問題にも充分有効であると言える.

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6 結 論

本論文では,多目的GAにおける新たな手法として,多目的GAと単一目的GAの分散協力型モデ

ル(DCMOGA)を提案し,その有効性を検証した.

本手法は,明示的な解の広がりを持ったパレート最適解の探索を目的とし,パレートフロントの前

進と各最適解の更新とを同時に行う分散モデルである.対象問題には,0/1多目的ナップサック問題

と実問題であるネットワーク設計問題を用いた.これらの問題に従来のMOGAとDCMOGAを適用

し,数値実験を行い,提案したDCMOGAの有効性を検証した.得られた結果を以下に示す.

• 従来のMOGAでは,問題が難しい場合,また用いる個体数が少ない場合に,広範囲に分布す

るパレート最適解を得ることができなかった.これは,MOGAでは広がりを持ったパレート最

適解の探索を明示的に行っていないためである.

• 提案したDCMOGAでは,従来の手法と比較し,精度においてはほぼ同等,解の幅広さではそ

れ以上の結果を得ることができた.これは,パレート最適解の探索にMOGA個体群と SGA個

体群を用いたことが有効に作用したと考えられる.すなわち,SGA個体群で得られた最適解を

MOGA個体群に移住させることで,幅広く分布したパレート最適解を得ることが可能になった.

• DCMOGAでは,各個体群の評価計算回数を適応的に増減させることで,各個体群が協調した

良好な解探索が行われている.このように,各個体群の評価計算回数の推移を明確にすること

により,本提案モデルの探索アルゴリズムを解明することができた.

• 実問題であるネットワーク設計問題においても,パレート最適解の幅広さでは,提案したDC-

MOGAは従来の手法以上の結果を得た.このことから,提案手法が離散的大規模多目的最適化

問題にも充分有効であると言える.

本研究では,提案したDCMOGAの有効性を検証した.今後の課題を以下に示す.

• さらに多くの実問題に適用し,提案したDCMOGAの有効性を検証する.

• 提案したDCMOGAは分散モデルであり,容易に並列化モデルへの移行が可能である.そこで,

今回提案したDCMOGAを元に並列モデルの提案を行う.

• DCMOGAでは,評価計算回数は各個体群のある時点での最適解によって決定される.DCMOGA

における評価計算回数の決定方法と解探索の関係を検証する.

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謝 辞

本研究を遂行するにあたり,多大なる御指導,そしてご協力を頂きました同志社大学 工学部 知識

工学科 三木光範教授, 廣安知之助手に心より感謝いたします.

また,日頃から指導院生としてご指導頂いた同志社大学大学院 工学研究科 知識工学専攻 近藤健史

さん,さらに,研究テーマの決定から本論文の完成に至るまで 1年間,ご指導,ご協力を頂きました

同志社大学大学院 工学研究科 知識工学専攻渡邉真也さんに深く感謝いたします.

最後に,本研究を進める上でプログラムの作成に多大なご協力を頂きました 同志社大学大学院 工

学研究科 知識工学専攻 川崎高志さん,同志社大学 工学部 知識工学科 佐野正樹くん,また,ともに

研究を進めてきた 同志社大学 工学部 知識工学科 岡田靖男くん,および知的システムデザイン研究

室の皆様に心より感謝いたします.

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