ste 池田介護研究所起業にあたり、日本政策金融公庫か...

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S T E P 3 15 5 1 2 80 20 1 泊 2 日、「星野リゾート 青森屋」へ介護旅行。 農業リハビリから働く喜びも生まれた。 三村申吾青森県知事より最優秀賞の賞状を授与。 「大切なのはご利用者様一人ひとりとちゃんと向き合うこと」 10 40 姿東日本大震災発生間もない被災地 で介護職として働き、利用者の願い を叶える新しい介護の実現を決意し、 2013 年、株式会社池田介護研究 所を設立。 株式会社 池田介護研究所 代表取締役 池田右文さん Point of note トラベル ヘルパーとは 利用者それぞれの身体・ 健康状況を把握した介護 の技術に加え、交通機関 を利用した移動の補助、 臨機応変な対応が求めら れる介護旅行にも精通す る「外出支援」の専門家。 特定非営利活動法人日本 トラベルヘルパー協会に よる認定資格。 Profile 9 起こす!50 ー 地域を起こす創業企業 森県 Aomori 八戸市 Hachinohe S T E P 1 15 S T E P 2 株式会社  池田介護研究所 http://facebook.com/ikedacarelab 利用者が本当に望む介護を追求した 池田介護研究所が出した答えは、 “ できないことの補助 ” ではなく、 “ やりたいことをサポート” する介護。 所 在 地:青森県八戸市大字長苗代字内舟渡 73-3 業  種:介護事業 資 本 金:700 万円 設  立:2013 年 9 月 従業者数 :8 会社概要 8 起こす!50 ー 地域を起こす創業企業

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Page 1: STE 池田介護研究所起業にあたり、日本政策金融公庫か 県のベンチャー企業向けのコンテスト「でも何よりも大きかったのは、青森創出対策事業の助成金も受けた。らの融資のほかに、青森県の緊急雇用

起業にあたり、日本政策金融公庫か

らの融資のほかに、青森県の緊急雇用

創出対策事業の助成金も受けた。

「でも何よりも大きかったのは、青森

県のベンチャー企業向けのコンテスト

『あおもり起業家グランプリ

ビジネス

プランコンテスト』で最優秀賞を受賞

できたことかもしれません」

プランの内容は、事業所で決めた

サービスを提供する既存のデイサービ

スはなく、受けたいサービスを利用者

から教えてもらう「個別支援型デイ

サービス」。それは池田さんが思い描

く新しい介護のカタチだった。

同研究所で行われるイベントは実に

多種多様だ。だしソムリエによる料理

教室、農業リハビリ、ネイルサロン、

陶芸教室……。各イベントの講師や協

力者は前述のコンテストで知り合った

人たちが非常に多い。

「受賞により、県のバックアップと賛

同者が得られたのが、今の事業の何よ

りの財産になっています」

農業に携わっていた利用者の要望で

始めた農業リハビリでは、新しい事業

アイデアも生まれた。

「ご利用者様はこのリハビリで、自分

の知識経験を教える喜びも味わってい

ます。さらには、働きたいというご要

望を実現すべく、リハビリのイベント

を通じてつくった成果物の販売のプラ

ンを立てています。つくった大豆を味

噌商品にし、陶芸教室でつくった瓶に

入れて商品にする予定です」

利用者の要望を受け止めると、そこ

に隠れていた利用者の本当の喜びが見

つかることがあるという。

今後の展望

STEP3

利用者の願いを徹底的に叶えたい

池田介護研究所が、今後、力を入れ

ていきたいイベントが介護旅行だ。東

京で働いていた頃に取得した「トラベ

ルヘルパー」の資格が大いに役に立っ

ている。旅行を望む利用者のために、

15年5月、「星野リゾート

青森屋」へ

の1泊2日の温泉旅行を企画した。参

加者はみんな80代、入浴介助を受け温

泉に入り、旅館の夕食を楽しみ、寝る

前のお喋りは深夜まで続いた。「まる

で修学旅行のように楽しんでいた」と

池田さんは嬉しそうに語った。

来年は、新幹線開通に合わせ、函館

生まれの利用者の夢を叶える函館旅行

を企画し、さらなる個人旅行への対応

も準備中だ。そして、20年には東京オ

リンピックへの介護旅行と、夢は続

く。その実現のためにはトラベルヘル

パーの育成が欠かせないが、同研究所

では池田さんの指導のもと着実に後進

も育っている。

1 泊 2日、「星野リゾート 青森屋」へ介護旅行。 農業リハビリから働く喜びも生まれた。 三村申吾青森県知事より最優秀賞の賞状を授与。

「大切なのはご利用者様一人ひとりとちゃんと向き合うこと」

人手不足が叫ばれる介護事業、10年

後には約40万人の介護職員が足りない

といわれ、最近では介護の質、そして

モラルも問題視されている。池田介護

研究所で行われていたのは〝もっと悔

いなく生きることへの手助け〞。理想

の介護の姿がそこにはあった。

東日本大震災発生間もない被災地で介護職として働き、利用者の願いを叶える新しい介護の実現を決意し、2013 年、株式会社池田介護研究所を設立。

株式会社池田介護研究所代表取締役池田右文さん

Point of note

■ トラベル  ヘルパーとは利用者それぞれの身体・健康状況を把握した介護の技術に加え、交通機関を利用した移動の補助、臨機応変な対応が求められる介護旅行にも精通する「外出支援」の専門家。特定非営利活動法人日本トラベルヘルパー協会による認定資格。

Profile

9 起こす! 50ー 地域を起こす創業企業

青森県Aomori

八戸市 Hachinohe

創業のきっかけ

STEP1

何気ない利用者へのひと言。

「ちょっと待って」

介護職に就いて今年で15年の池田右

文さんは、以前東京にある大手のホー

ムヘルパー会社に勤務し、結婚を機に

奥様の実家のある青森に居を移した。

東北福祉大学で本格的に介護を学びな

がら、介護職を続ける日々のなか、心

に余裕がないときもあったという。

「私を呼び止めたご利用者様に対して

何気なく言っていた『ちょっと待って』

という自分の言葉にずっと違和感を感

じていたんです。ご利用者様からすれ

ば、勇気を振り絞って言ったひと言、

もしかしたら最後の言葉だったかもし

れない。でも、業務に追われるとそう

言わざるを得ない現状もありました」

2011年、池田さんは被災後間も

ない宮古市へ介護の専門職として派遣

された。そこでも繰り返された現場で

の「ちょっと待って」への自問、「利

用者のことを第一に考えると、やっぱ

り『ちょっと待って』なんて言えな

い」、被災地で答えを見つけた池田さ

んは〝ちょっと待って〞のない介護を

自分で始めることにした。

事業スタート

STEP2

ビジネスプランコンテストで、

最優秀賞を受賞

株式会社 池田介護研究所http://facebook.com/ikedacarelab

利用者が本当に望む介護を追求した池田介護研究所が出した答えは、“できないことの補助 ”ではなく、“やりたいことをサポート”する介護。

所 在 地 : 青森県八戸市大字長苗代字内舟渡 73-3業  種 : 介護事業資 本 金 : 700万円設  立 : 2013 年 9月従業者数 :8 名

会社概要

8起こす! 50ー 地域を起こす創業企業