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TRAVEL JOURNAL 2018.10.22 TRAVEL JOURNAL 2018.10.2222 23
JNTO発SEMINAR
外客攻略のヒント
JNTO発 外客攻略のヒント
建設が進む北京新空港資料:国土交通省航空局
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●日中間の航空旅客便数の推移
中国人訪日客数は15年にほぼ500万人に達した後も年々増加し、昨年は過去最高となる735万6000人を記録した。今年に入ってからも、日中関係の改善を背景に、8月までで約580万人、前年同期比18.7%増と好調に推移している。 しかしながら、日中間の航空旅客便数は、15年冬ダイヤに羽田空港の昼間時間帯枠で中国路線が増便されて以後、次第に減少傾向にある。特に日本の地方空港と中国各地を結ぶ路線の縮小が目立っている。 例えば、ある日系航空会社の北京と羽田を結ぶ路線では、今年の夏休み期間の平均搭乗率は97%に達し、シーズンオフもほぼ満席の状態で、まさに主要幹線の混雑が激化している一方、ここ2~3年で一部の地方路線は運休となっている。
しかし、中国人訪日客は日本の地方に行かなくなったのかというと、必ずしもそうではない。観光庁の宿泊旅行統計によれば、数としてはまだ少ないものの、東北、中国、四国、九州の各地方では、中国人延べ宿泊者数が15年から2年連続して増加している。 また、訪日外国人消費動向調査のうち、中国人観光客の都道府県別訪問率を見ると、いわゆるゴールデンルートとされる東京・神奈川・山梨・静岡・愛知・京都・大阪の各都府県では、16年と比べ17年には軒並み訪問率が低下しているのに対し、四
ない。 とはいえ、羽田・成田・北京・上海の各空港は混雑空港で、主要幹線では直ちに増便はできない。航空各社には主要幹線の機材の大型化を期待するが、同時に中国人訪日観光客の地方への拡散を踏まえ、日本の地方空港には一層積極的な路線誘致や増便の働きかけを期待している。 日本の地方への直行便を開設する際、通常はプログラムチャーターから始めることになろう。乗客の主なターゲットは、中国人訪日客のなかでも日本に何度か行ったことがあり、次はまた違う地方を見てみたいとする、急増中のリピーターとなる。ただし、リピーターが好む個人旅行頼みでは、路線を安定的に運営することは困難なため、当面旅行会社に当該チャーター便を利用した団体ツアー商品を販売してもらうことになる。成功するか否かは、ツアー商品がどれだけ売れるのか、すなわち中身がどれだけ魅力があるかと、どれだけ購買されるかによる。後者については、やはりある程度のボリュームで訪日リピーターが見込まれる北京や上海などの大都市を市場とする必要がある。
しかしながら、先述のとおり北京や上海の空港は混雑しており、新規路線の開設や増便、チャーター便の運航も当面望めない。北京では市の南方46kmに新空港である北京大興国際空港を建設中であり、来年9月30日の供用開始が決まった。これに伴う北京からの増便の可能性にわずかながら期待していたが、当地の最新の新聞記事によれば、今年8月1日、中国民用航空局が北京・上海・広
州を起点とする国内線増便の要件について通達を出したようだ。同記事は国際線増便についても専門家の意見を引用し、将来の可能性を示唆したものの、当面は難しそうだ。 そのような厳しい状況のなかで、どうやって直行便に取り組めばよいのか、参考となる事例を紹介する。まず1つ目は奥凱航空による天津と青森を結ぶ路線である。17年1月から週2便のチャーター便であったが、同年5月から定期便化された。ほとんどの搭乗客は北京からの団体客で、奥凱航空は増便できない北京首都空港ではなく、天津空港を出発空港に選んだ。青森県は県内だけでその恩恵を独占することなく、南北海道や北東北も含めた団体旅行商品を開発することにより、ツアーの魅力を高めている。17年に東北地方の中国人延べ宿泊者数が前年比88%の大幅増となったのは、まさにこの直行便効果であり、地域に与える影響が絶大であることが証明された。 2つ目は、中国聨合航空による煙台経由の北京南苑/福岡線である。17年12月から週4便のチャーター便で運航されており、今年8月からは一部が定期便化された。北京南苑空港は北京で首都空港以外にも民間機に開放されている空港で、中国聨合航空だけが利用している。CIQ施設がない国内線専用空港だが、煙台を経由することにより北京/煙台間は国内線として扱われ、福岡へ行く乗客は煙台でいったん降機して出国手続きを経て再搭乗する。航空会社によれば国際線の乗客の多くは北京からの客だそうだ。 日中関係が正常な軌道に戻った今、日中航空路線網をさらに充実させるチャンスであり、JNTOとしても今後の発展に期待したい。
国や九州には0.5ポイント以上顕著に増加している県があり、地方への拡散は着実に進んでいることがみてとれる。 こうした中国人訪日観光客の地方への拡散は、リピーターの急増が支えているものと推測される。近年、中国人訪日観光ビザの発給条件が数度にわたって緩和されたことにより、マルチビザの取得が急増している。これを背景に、15年までは3割前後で推移していた中国人訪日観光客のリピーター率は、16年には3分の1に達し、17年にはほぼ4割となっている。人数としては14年と比べて約5倍に達している。 リピーターの実態について、昨年の訪日外国人消費動向調査でトピックスとして行った調査によると、初めての訪日時には、いわゆるゴールデンルートを含む関東・中部・近畿の訪問率が高いが、リピーターになるとこれらの地域への訪問率が大きく減少し、代わって北海道と沖縄が急増する。そして10回以上訪日経験のあるヘビーリピーターになると、これらの地域でも訪問率が下がり、中国・四国・九州などの地域が増加することが判明し、リピーターになればなるほど、地方へ拡散するという実態が明らかになった。 日中間の航空旅客便数に話を戻そう。現地旅行会社によると、この夏、訪日旅行商品の売れ行きは好調で、販売開始早々に完売、それ以上は売りたくても航空座席がないので売れない、という状況だった。このままでは、航空座席数が今後中国人訪日客数を増加させていくうえでの制約となりかね
航空座席が逼迫するなかで爆買いが話題となった15年以後も年々増加し続ける訪日中国人。しかし、日中間の航空旅客便数は同年冬ダイヤ以後、逆に微減しており、主要幹線を中心に航空座席数が逼迫している。期待される地方路線開設の可能性を探る。
vol.79
可能性示す好事例
進む地方拡散
服部真樹 JNTO北京事務所長
(次回は11月19日号に掲載します)