sample - m-revie · 2017-06-21 · t j ¬tsz 7 s é j orum o rthopaedic f vol.6 no.1 2017 [ w¨ m...
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—整形外科領域における様々な話題—o r u m
r t h o p a e d i cOF
Vol.6 No.1 2017
術後の遺残疼痛について ―足(下肢,外反母趾)―須田 康文 Yasunori Suda
国際医療福祉大学塩谷病院 病院長
外反母趾に対する第1中足骨骨切り術による侵害受容性の疼痛は,術後1~2週間で軽減する。しかし骨切り部を約1ヵ月間免荷するため,術後2ヵ月頃から骨萎縮に伴った前~中足部痛が出現することがある。また術後6ヵ月以降の前~中足部痛は,術後に生じた第1中足骨の変形に起因する可能性がある。したがって外反母趾術後遺残疼痛に対しては,術後経過期間によりその原因が異なることを踏まえた上で治療を行う必要がある。
はじめに
外反母趾は,高齢女性のおよそ3人に一人の割合で発生する前足部の代表的変形で,若年女性や男性での発生も珍しくない1。母趾の変形に起因して靴を履く際に生じる母趾つけ根の内側痛は代表的症状であるが,隣接趾足底部の中足骨痛やリスフラン関節背側部の痛みなど母趾以外の部位の痛みや,上手く歩けない,躓きやすいなどの機能障害を訴える例も少なくない。その病態は,①第1中足骨に対する第1基節骨の20度以上の外反,②第2中足骨に対する第1中足骨の10度以上の内反,③第1中足骨および母趾の回内変形と種子骨偏位,④母趾中足趾節(metatarsophalangeal joint;MTP)関節外側軟部組織の拘縮に集約される2, 3。これらを考慮して,手術では一般に第1中足骨の骨切りと必要時に母趾MTP関節外側軟部組織の解離が行われている。本稿では,当施設で施行している低侵襲中足骨遠位骨切り術(distal lineal metatarsal osteotomy;DLMO)法4(図1)を中心に外反母趾手術に関連した術後遺残疼痛とその対策について,手術後の経過期間に分けて解説する。
DLMO法における後療法
後療法の期間と内容は,術後遺残疼痛の原因究明と対策を練る上で重要となる。DLMO法では原則外固定は行わず,術翌日より前~中足部が免荷となる装具を用いて踵部荷重歩行を開始する。骨片固定用の直径2mmのキルシュナー鋼線を抜去する術後3~4週より,装具を外し足底全体での荷重を行う。術後6~8週より前足部での踏み返しを開始する。術後3ヵ月より,骨癒合の状況を確認しながら運動復帰を許可している4。術後6週以降の経過は,DLMO法もほかの術式も大きな違いはない。
術後遺残疼痛の原因と対策
1.早期(術直後~2週)
術後早期の痛みは厳密には遺残疼痛ではないが,全身麻酔覚醒後の侵害受傷性の痛みを軽減しないと,創傷治癒機転を阻害する,痛みの悪循環をきたす5などの恐れがあるため,疼痛対策は重要である。当施設では全身麻酔に坐骨神経ブロック(膝窩部アプローチ)を併用して手
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