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はじめに 新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威を振 るっている。2020 年 4 月 7 日には新型インフルエ ンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言も発さ れ、不要不急の外出、移動に対する厳しい自粛の要 請がなされている。こうした状況を踏まえ、企業に おいても、役職員の勤務時間短縮、テレワークが急 速に進んでいる。BCPの観点から、役員同士の濃 厚接触を避けたり、当面の間、社長の本拠を地方の 事業所に移したりといった例もみられる。日本企業 においては、従来、取締役会等の役員が出席する法 定の会議体は、本社において、全メンバーが現実に 出席することを原則として開催する場合が多数派で あったが、こうなると、メンバーの一部又は全部が 現実に出席することができないことを前提とした方 法を否が応でも検討せざるを得ない。そこで、本稿 では、筆者が直近でクライアントからご相談を受け た事項のうち一般化し得ると思われるもの等も含 め、取締役会等の運営に関する整理を試みることと したい。 書面等による決議省略等、電話会議、テレビ会 議、Web会議の可否 【表】各会議体別の対応可否 取締役会 監査役会 監査等委員会 三委員会 1 書面等による決議省略 (いわゆる「書面決議」) 2 × × × 全員への通知による報告省略 3 電話会議 テレビ会議、Web 会議 ⑴ 書面等による決議省略(いわゆる「書面決議」) 取締役会に関しては、会社法上、書面等による決 議省略の方法が認められている(会社法 370 条) 。取 締役会につき、定款に定めを置くことにより、取締 役が決議の目的である事項について提案し、それに 対し、①議決に加わることができる取締役の全員が 書面又は電磁的記録により同意の意思表示をするこ と、及び②監査役が異議を述べないことの 2 点が充 足されることをもって、決議があったものとみなさ れる。現状、大多数の上場企業の定款にこの定めが 置かれている。この方法によれば、取締役会の招集 及び開催自体を省略して決議があったものとみなす ことが可能となる。 一方、監査役会、監査等委員会、三委員会に関し ては、会社法上、いわゆる書面決議を認める条項 (取締役会に関する会社法 370 条参照)が置かれてお らず、いわゆる書面決議は認められないものと解さ れている。 ⑵ 全員への通知による報告省略 一方、全員への通知をもって会議体への報告を省 略する方法に関しては、取締役会、監査役会、監査 等委員会、及び三委員会の全てにおいて許容されて いる(会社法 372 条 1 項、395 条、399 条の 12、414 条) ただし、取締役会に対する代表取締役及び業務担 当取締役による 3 か月に 1 回以上の職務執行状況の 報告(会社法 363 条 2 項)に関しては、この方法に より省略することは認められていない(会社法 372 条 2 項) 。このため、会社法上、取 締役会設置会社にあっては、最低限 3 か月に 1 回以上は、実際に会議を 開催する方法(なお、下記の電話 会議その他の方法を利用することは可) により、取締役会を開催することが 必須となる。 ⑶ 電話会議、テレビ会議、Web会議 電話会議、テレビ会議、Web会議の方法による 開催も、現に会議として開催され、かつ出席者間に おいて、現実に一堂に会する場合と同様の意思疎通 1 2 18 No.11692020.5.1NBL 特集 新型コロナウイルス感染症への実務対応 Feature 取締役会等の運営 弁護士 山田和彦 Kazuhiko Yamada * 中村・⻆田・松本法律事務所

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はじめに

新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威を振るっている。2020 年 4 月 7 日には新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言も発され、不要不急の外出、移動に対する厳しい自粛の要請がなされている。こうした状況を踏まえ、企業においても、役職員の勤務時間短縮、テレワークが急速に進んでいる。BCPの観点から、役員同士の濃厚接触を避けたり、当面の間、社長の本拠を地方の事業所に移したりといった例もみられる。日本企業においては、従来、取締役会等の役員が出席する法定の会議体は、本社において、全メンバーが現実に出席することを原則として開催する場合が多数派であったが、こうなると、メンバーの一部又は全部が現実に出席することができないことを前提とした方法を否が応でも検討せざるを得ない。そこで、本稿では、筆者が直近でクライアントからご相談を受けた事項のうち一般化し得ると思われるもの等も含め、取締役会等の運営に関する整理を試みることとしたい。

書面等による決議省略等、電話会議、テレビ会議、Web会議の可否

【表】各会議体別の対応可否取締役会 監査役会 監査等委員会 三委員会1

書面等による決議省略(いわゆる「書面決議」) ○2 × × ×

全員への通知による報告省略 ○3 ○ ○ ○電話会議 ○ ○ ○ ○テレビ会議、Web 会議 ○ ○ ○ ○

⑴ 書面等による決議省略(いわゆる「書面決議」)取締役会に関しては、会社法上、書面等による決

議省略の方法が認められている(会社法 370 条)。取締役会につき、定款に定めを置くことにより、取締

役が決議の目的である事項について提案し、それに対し、①議決に加わることができる取締役の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をすること、及び②監査役が異議を述べないことの 2 点が充足されることをもって、決議があったものとみなされる。現状、大多数の上場企業の定款にこの定めが置かれている。この方法によれば、取締役会の招集及び開催自体を省略して決議があったものとみなすことが可能となる。

一方、監査役会、監査等委員会、三委員会に関しては、会社法上、いわゆる書面決議を認める条項

(取締役会に関する会社法 370 条参照)が置かれておらず、いわゆる書面決議は認められないものと解されている。

⑵ 全員への通知による報告省略一方、全員への通知をもって会議体への報告を省

略する方法に関しては、取締役会、監査役会、監査等委員会、及び三委員会の全てにおいて許容されている(会社法 372 条 1 項、395 条、399 条の 12、414 条)。

ただし、取締役会に対する代表取締役及び業務担当取締役による 3 か月に 1 回以上の職務執行状況の報告(会社法 363 条 2 項)に関しては、この方法により省略することは認められていない(会社法 372

条 2 項)。このため、会社法上、取締役会設置会社にあっては、最低限3 か月に 1 回以上は、実際に会議を開催する方法(なお、下記⑶の電話会議その他の方法を利用することは可)により、取締役会を開催することが必須となる。

⑶ 電話会議、テレビ会議、Web会議電話会議、テレビ会議、Web会議の方法による

開催も、現に会議として開催され、かつ出席者間において、現実に一堂に会する場合と同様の意思疎通

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18 No.1169(2020.5.1)NBL

特集 新型コロナウイルス感染症への実務対応Feature

取締役会等の運営

弁護士*

山田和彦 Kazuhiko Yamada * 中村・⻆田・松本法律事務所

_NBL1169号.indb 18 2020/04/24 19:45

が可能な態様である限り、取締役会、監査役会、監査等委員会、及び三委員会の全てにおいて許容される4,5。それぞれの会議体の議事録の作成について規定する会社法施行規則の条項において、開催場所が議事録の法定記載事項とされているところ、開催場所の記載に際しては、当該場所に存しない者が「出席をした場合における当該出席の方法を含」めて記載することとされていることから(会社法施行規則101 条 3 項 1 号、109 条 3 項 1 号、110 条の 3 第 3 項 1 号、111 条 3 項 1 号)、会社法下においては、法令上もこれらの方法による開催が認められていると解されている。

これらは、会議自体は開催することを前提とした、開催場所に実際に出席できないメンバーの代替的な出席方法という位置付けである点で、会議の開催自体を行わずに、決議、報告があったものとみなす制度である書面決議(上記⑴)及び報告省略(上記⑵)とは異なる。

なお、現実に一堂に会する場合と同様の意思疎通ができることが条件となるため、例えば、開催場所以外の場所に存する出席者が、開催場所に出席している出席者の 1 人と電話で会話が可能なだけでは要件は充足されない6。最低限、スピーカーフォン等によって、リアルタイムに、開催場所の全ての出席者の発言が開催場所以外の場所に存する全ての出席者に伝わると共に、開催場所以外の場所に存する全ての出席者の発言も開催場所の全ての出席者に同時に伝わることが必要となる。

取締役会の書面決議を用いる場合の留意事項等

以下、取締役会の開催をいわゆる書面決議(上記2⑴)の方法で省略する場合の留意事項及び論点等について検討する。

⑴ 書面決議を利用可能な事項取締役会書面決議の要件は、①定款に会社法 370

条に基づく定めが置かれていること、②取締役の提案に対し、議決に加わることができる全取締役が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をすること、③(監査役設置会社においてのみ)監査役が異議を述べないことの 3 点である。会社法上は、例えば、重要な事項に関しては書面決議を利用できないといった決議事項の内容に関する制約や、緊急時しか用いることができないといった制約はない。

従前から、例えば、定時株主総会の招集決定や計算書類等の承認を書面決議の方法で実施している上場企業もある。

もっとも、取締役の善管注意義務の判断基準の中で、意思決定の過程の合理性が検討され(いわゆる経営判断の原則)、時間をかけた慎重な検討は合理性を基礎付ける事実の一つと解されるため、決議事項の内容によっては書面決議を回避するべきとの見解もあり得るとされる7。とりわけ、特に重要な意思決定に際して書面決議を用いる場合、各取締役への事前説明や意見の聴取等によって、取締役会を開催して審議を行う場合と比較しても大きく見劣りしない程度に慎重な検討を行った証跡は残しておくべきであろう。

関連して、近時の取締役会の議題の中には、コーポレートガバナンス・コード等を踏まえ、意思決定ではなく、実質的な議論が想定される事項がみられる。例えば、取締役会の実効性評価等である。こうした事項に関して書面決議を用いるのは相当でなく、全部又は一部の取締役等の議場への出席が難しい場合には、電話会議、テレビ会議、Web会議といった、開催を前提とした手段を検討すべきであろう。もっとも、準備その他の状況次第では、こうした議題の付議自体、延期することも考えられよう

(下記5⑵参照)。⑵ 監査役の異議の確認方法監査役設置会社では、監査役に異議がある場合に

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1 指名委員会等設置会社における指名委員会、報酬委員会、監査委員会を指す。以下同じ。 2 定款に、会社法 370 条に基づく定めが必要。 3 ただし、代表取締役及び業務担当取締役による 3か月に 1回以上の職務執行状況の報告(会社法 363 条 2 項)に関しては、利用不可(会社法

372 条 2 項)。 4 法務省「規制緩和等に関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について」商事 1426 号(1996)32 頁、平成

14 年 12 月 18 日民商 3045 号民事局商事課長通知、相澤哲ほか編著『論点解説 新・会社法』(商事法務、2006)363 頁。なお、情報伝達の双方向性及び即時性が確保されれば、インターネットチャット等の方式であっても認められ得るとされている。

5 取締役会の電話会議の方法について、全取締役の同意を要するとの見解も存する(江頭憲治郎『株式会社法〔第7版〕』(有斐閣、2017)420頁)。 6 取締役会が開催されている会議室の固定電話から遠隔地に存する取締役に架電し、電話は繋がっていたものの、当該固定電話にスピーカー

フォンの機能はなく、会議室に存する取締役においては受話器に耳を当てないと遠隔地の取締役の発言を聞き取ることができず、他方、遠隔地に存した取締役においては、会議室にいる誰かが受話器に向かって話さなければ、会議室における話の内容を殆ど聞き取れなかったという事案において、遠隔地に存した取締役が取締役会に適法に出席したと判断することはできないと判示した裁判例が存する(福岡地判平成 23・8・9 裁判所ウェブサイト掲載)。

7 澤口実『Q&A取締役会運営の実務』(商事法務、2010)135 頁。

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特集 新型コロナウイルス感染症への実務対応▶ 取締役会等の運営

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は取締役会の書面決議が成立しない。この異議がないことに関しては、法令上、特段、確認の要否及び方法が定められていないが、実務上は、全取締役の同意を書面又は電磁的記録により取得する際に、併せて、各監査役から異議がないことを確認する旨を、同等の方法により通知してもらっている。

⑶ 停止条件付の書面決議取締役会の書面決議を、停止条件付で行うことが

認められるであろうか。具体的には、定時株主総会において新任の取締役が選任され、就任予定である場合において、定時株主総会直後に、本来であれば開催される予定の取締役会における代表取締役選定等の決議に関し、定時株主総会開催に先立って、新任の取締役も含めて(定時株主総会における選任及び就任を停止条件とした)同意書を取得しておくことにより、定時株主総会直後の取締役会の開催を省略することが可能であろうか。新型コロナウイルス感染症対策として、定時株主総会に関しても、BCPの観点から、登壇役員を限定することを検討している企業も存する。そうした中、定時株主総会後の取締役会に関しても、上記のような方法により、開催を省略できないかという発想である。

この点、一般論として停止条件付の意思表示は可能であるところ、例えば、定時株主総会において、役員が改選された直後に開催される取締役会につき、招集手続をどのように行うかという論点に関し、事前に停止条件付の同意を得ておくという方法が用いられることがある。すなわち、取締役会の招集は、原則として、所定の期間前に招集通知を発する方法で行うことが必要であるが(会社法 368 条 1項)、定時株主総会において役員が改選される場合、所定の期間前の段階では、とりわけ新任の候補者は未だ「取締役」「監査役」ではないため、定時株主総会前の時点では招集通知の名宛人にはならない。定時株主総会後の取締役会に、新任役員も含めて、取締役・監査役全員が出席できれば、その場で全員の同意を得て招集手続を省略するという方法を採ることができるが(会社法 368 条 2 項)、一部の役員が都合により出席できない場合には、この方法も採ることができない。こうした場合、予め、定時株主総会後の取締役会に出席困難な役員から、選任及び就任を停止条件として取締役会の招集手続の省略に同意する旨の書面を取得しておくという方法が採られることがある8。やや局面は異なるものの、取締役会に関し、取締役候補者から、定時株主総会における選任を停止条件とする同意を取得しておくという

方法が採られる一場面という意味では、類似する部分があるかとは思われ、理論的には、これに準じて可能と考えてよいのではないかと思われる。

⑷ 議事録書面決議を行った場合、次の事項を内容とする議

事録を作成しなければならない(会社法施行規則101 条 4 項 1 号)。

① 決議があったものとみなされた事項の内容② 提案をした取締役の氏名③ 決議があったものとみなされた日④ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏

名取締役会を開催した場合には、出席取締役及び監

査役が、議事録に署名又は記名押印する義務を負うが(会社法 369 条 3 項)、書面決議の方法により開催自体省略した場合には、取締役及び監査役の署名又は記名押印の義務は生じない(ただし、後述の通り、書面決議により代表取締役の選定を行った場合の記名押印等に関しては、留意を要する。)。

全取締役(議決に加わることができるものに限る。)の同意の意思表示を記載し又は記録した書面又は電磁的記録は、決議があったものとみなされた日から10 年間、本店に備え置く必要がある(会社法 371 条1 項)。

書面決議を行った事項が登記事項に関するものである場合、商業登記の申請時には、上記書面決議に係る議事録を添付することとなる(商業登記法 46 条3 項)。当該登記申請時には、定款に会社法 370 条の定めが存することを確認するため、定款の添付も必要となる(商業登記規則 61 条 1 項)。

また、商業登記手続上の特例として、取締役会の決議により代表取締役を定めた場合、当該議事録に変更前の代表取締役が届出印を押印していない限り、出席取締役及び監査役は市区町村長に届け出た印鑑で議事録に押印した上で、登記申請時に印鑑証明書を添付しなければならないとされているところ

(商業登記規則 61 条 6 項 3 号)、登記実務上、書面決議を行った場合には、当該規定を類推解釈して、取締役会議事録に変更前の代表取締役が届出印を押印していない限り、①同意の意思表示をした取締役の全員が議事録に市区町村長に届け出た印鑑で記名押印し(監査役は積極的な意思表示をしていないため、記名押印の必要はない。)、代表取締役の変更の登記申請書には、取締役の全員に係る印鑑証明書を添付するか、又は②議事録作成者の記名のある議事録に加え、書面決議に際して各取締役が作成した同意書

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(市区町村長に届け出た印鑑で記名押印したものに限る。)及び取締役の全員に係る印鑑証明書を添付するか、何れかの対応が必要とされている9。

電話会議、テレビ会議、Web会議を用いる際の留意事項等

以下、取締役会、監査役会、監査等委員会、及び三委員会の開催に当たって電話会議、テレビ会議、Web会議(以下、併せて「電話会議等」という。)を用いる場合(上記2⑶)の留意事項及び論点等について検討する。

⑴ 電話会議等を利用することの決定権各出席者の側から、電話会議等により取締役会に

出席することを要求し得るか。裏を返すと、電話会議等を利用することにつき、誰が決定権を有するか。

この点に関しては、開催場所や開催時刻を決定する権限が招集権者(取締役会に関し、会社法 366 条 1項参照)に存する以上、電話会議等を利用するか否かに関しても招集権者に決定権があり、招集権者でない者が権利として要求し得るものではないと解されている。もっとも、特定の出席者の参加を困難とするために、合理的な理由なく電話会議等による参加を拒否した場合、決議に瑕疵が生ずる可能性がある10。

なお、前述の通り、取締役会を電話会議の方法で開催することに関しては、全取締役の同意を要するとの見解も存するため11、電話会議を利用する場合、全メンバーの同意を得ておくことが無難である。

取締役会規程等の内規に明示的な定めがあれば格別、そうでない限り、招集通知に、電話会議等を利用する旨を明記することは、法的に必須ではない。

⑵ 機器・回線トラブル等電話会議等による場合、使用する機器や回線のト

ラブルにより、映像や音声が途切れてしまったり、切断されてしまい復旧ができなかったりといった場合にどうなるか。電話会議等を用いる場合に、事務方として最も気懸かりな事項である。

まず、映像に関しては、一時的なトラフィックの増大等により遅延が生じたり、時折途切れたりといったことがあったとしても、音声の授受に支障が生じていなければ問題はない。

他方、音声まで途絶えると、法的には、その間の審議に関しては、当該出席者は会議に出席していな

いものとして取り扱わざるを得ない12。このため、実務上は、機器や回線のトラブルによ

り、映像や音声が途切れたり切断されたりといった場合、一時休憩とし、まずは、再接続を試みて、最低限、音声の授受が支障なくできることが確認されてから議事を再開している。テレビ会議、Web会議を用いていた場合で、再接続を試みても、再接続ができないか、又は音声の授受にすら支障がある場合には、電話会議の方法に切り替える(このような場合に備え、テレビ会議、Web会議を用いる場合は、予め、バックアップとして電話会議の準備もしておく。)。

そうした対処を試みてもなお音声による通信すら復旧できない場合、会議を中断して、後刻又は後日に延期とするか、急を要する議題が存する場合には、定足数の問題がない限り、トラブルにより参加できなくなってしまった出席者から電話又はメール等の方法で同意を得た上で当該出席者を途中退席の扱いとして議事を継続せざるを得ない。

⑶ 利用サービスの選択Web会議サービスの利用が急速に進んでいる中、

特定のツールに関する脆弱性も指摘されている。比較的新しいサービスを利用する場合、こうした

リスクの可能性は付きものと考えられるところ、その選択は、一般論としては善管注意義務に基づき行うべきとしか言い得ないように思われる。もっとも、一般に公開されており、世間においても、相応に認知され利用されているサービスを利用するのであれば、その安全性等に関しては、公表されていて、入手に格別の労力を要しない程度の情報を基礎に判断すれば足りるものと考えられる。利用に際して具体的に思い当たる懸念があれば格別、そうでない限り、安全性等の検証のために個別に提供事業者に照会を行うといったことまでの必要はないであろう。

無論、当該サービスにおいて準備されているセキュリティ対策は、全て活用すべきである。例えば、ツールを常に最新版に更新し、パスワード設定を行うといったことである。

そうした注意を払って利用し、かつ、利用開始後、報道等により脆弱性を認識するに至った場合には、利用を一時中止して、元のサービスの安全対策等が確認できるまでは別のサービスで代替する等、

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8 東京弁護士会会社法部編『新・取締役会ガイドライン〔第 2版〕』(商事法務、2016)362 頁、中村直人編著『株主総会ハンドブック〔第 4版〕』(商事法務、2016)431 頁。

9 松井信憲『商業登記ハンドブック〔第 3版〕』(商事法務、2015)174 頁。10 澤口・前掲注⑺ 132 頁。11 江頭・前掲注⑸ 420 頁。12 大阪株式懇談会編『会社法実務問答集Ⅲ』(商事法務、2019)284 頁〔北村雅史〕。

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合理的な対応をする限りにおいて、比較的新しいサービスを利用するとしても、そのこと自体をもって直ちに善管注意義務に違反することにはならないように思われる。

⑷ 参加者側の利用機器及び環境(セキュリティ・秘密保持の観点)

参加者側の利用機器につき、平時であれば、会社側において、セキュリティ対策も講じた機器を会社の費用負担で準備し、配布するといった対応も可能であろうし、昨今の状況下にあっても、そうした対応が可能であればその方が安心であることは確かである。もっとも、事務局を担う役職員もテレワークという環境下では、こうした対応もままならず、やむなく、(とりわけ社外役員に関して)各自の手持ちの機器を用いざるを得ない状況も十分想定される。そうなると、とりわけPC等に関して、セキュリティ対策等が懸念事項となる。

この点に関しては、各社のセキュリティポリシー等次第のところもあるかとは思われるが、法的には、各自の手持ちの機器を業務に用いてはならないといった規制はない。理屈としては、役員は、会社との委任関係(会社法 330 条)に基づき負担する善管注意義務(民法 644 条)の一環として秘密保持義務を負うものと考えられ、電話会議等により会議に参加するに際しても、会社の秘密が漏えいしないよう合理的な注意をすべき義務を各自負担するものと考えられるから、各自の手持ちの機器を用いるのであれば、セキュリティ対策も各自に委ねるという割り切りもないではない。もっとも、IT機器のリテラシーが必ずしも高くない役員も存するであろうから、例えば、利用機器のOSのバージョン等の確認

(セキュリティ上問題のあるバージョンである場合は、利用しないで頂く)及び更新手順の案内や、Web会議等の最中に同時に起動しているとセキュリティ上問題が生じ得るアプリケーションを閉じる手順の案内、会社側で推奨するセキュリティソフトのインストールの案内等、現在の環境下でも採り得る対策は模索することが望ましい。なお、セキュリティソフト等の費用は、委任事務の処理に要する費用として会社が負担すべきであろう(会社法 330 条、民法 649条、650 条)。

また、電話会議等による出席者につき、周囲に他の人物が存在しないかといったことも、秘密保持の観点からは問題となり得る。この点は、予め事務局等から、秘密保持のため、外部から電話会議等により出席する場合には、映像、音声等が漏えいしない

よう、参加場所等にご留意願いたい旨を周知しておき、議事進行中に、電話会議等による出席者の映像の背景に頻繁に他の人物が映り込むとか、背後の音声から他の人物が近くに存在することが推測されるような場合には、議長から、確認、注意喚起を行うといった方法で対応せざるを得ないように思われる。

⑸ 本人確認の方法電話会議等による出席者が本人であることの確認

をどのようにするか、という点も一応問題となり得る。まず、テレビ会議、Web会議の場合、映像の確

認によって、本人であることが確認できるであろう。電話会議の場合、出席者の電話番号や、電話会議システム利用時の会議ID、パスコード等と、声音により確認することとなろう。

⑹ 資料等の共有のあり方議案や説明用の資料は、予め、電子データにより

メール等で共有しておくのがよい。とりわけ、Web会議の場合、資料を画面上共有する方法で説明することを念頭に準備する場合もあるかと思われるが、上記⑵の通り、機器や回線のトラブルによって急遽電話会議に切り替えざるを得ない場合もあり得る。事前に全ての資料が共有され、出席者が皆手元で確認できる状態になっていれば、こうしたトラブル時の対応も円滑である。

⑺ 議長の議事進行上の留意事項まず、会議の冒頭で、議長は、電話会議等の方法

により、開催場所に実際に出席しない出席者それぞれとの間で会話を交わし、一堂に会するのと同等に支障のない意思疎通が可能であることを確認する13。

議案や報告事項の説明に際して、とりわけ音声のみで出席していると、対面の場合と比較して、手元の資料のどこが説明されているかが分かり辛いことがある。議長や説明者は、全員が開催場所に実際に出席している場合と比較して、資料との対照関係につき、丁寧な説明を心がけるとよい。

質疑に際して、全員が開催場所に実際に出席している場合、議長は、「何かご質問等ありますか?」と問いかけ、議場を見渡して発言希望者を確認するが、電話会議等の方法による出席者がある場合、当該出席者には個別に発言希望がないことを確認することが望ましい。

採決に際しても、全員が開催場所に実際に出席している場合には、議長から「ご異議ございませんか?」と問いかけ、議場を見渡して異議がないことを確認することをもって決議成立としている例も多いかと思われるが、電話会議等の方法による出席者

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がある場合、当該出席者には個別に賛否を確認することが望ましい。

⑻ 議事録前述の通り、それぞれの会議体の議事録の作成に

ついて規定する会社法施行規則の条項において、開催場所が議事録の法定記載事項とされているところ、開催場所の記載に際しては、当該場所に存しない者が「出席をした場合における当該出席の方法を含」めて記載することとされている(会社法施行規則 101 条 3 項 1 号、109 条 3 項 1 号、110 条の 3 第 3 項1 号、111 条 3 項 1 号)。

このため、電話会議等による出席者に関しては、「出席の方法」を記載する必要がある。一例として、【参考例】の通りである。

電話会議等による出席者については、「出席の方法」を記載することとされているため、「電話会議の方法により」、「Web会議の方法により」等の付記をする。具体的な所在場所等を記載する必要はない。

なお、議長を含め、全出席者が自宅等、会社の事業所ではない場所に存した場合、開催場所をどのよ

うに整理した上で議事録に記載するかという問題がある。一つの選択肢としては、議長の所在場所(自宅等)を開催場所として取り扱うことが考えられる14。他方、こうした場合においても、例えば本社会議室等、平時の開催場所をもって「開催場所」と取り扱う余地があるであろうか。この点、会社法施行規則において、上述のように「開催場所」が議事録記載事項とされていることからも明らかな通り、会議体である以上、招集決定時に「開催場所」を決定し、それを招集通知において周知することが必要と解されている15。もっとも、例えば「開催場所」に議長は最低限実際に存しなければならないとか、そうでなくとも、出席者の 1 名以上は存しないと

「開催場所」になり得ないとの規律は、少なくとも、会社法及び会社法施行規則の条文上は定められていない。物理的な取締役会の開催場所を観念できない完全にヴァーチャルな取締役会では、取締役会が開催されたとは会社法上評価できないと解されている16 ものの、開催場所を予め特定し、招集通知において明示することが必要とされる趣旨は、出席者の出席機会を保証することにあると考えられる。そう

13 前述の通り、取締役会の電話会議に関しては、全取締役の同意を要するとの見解も存するため、電話会議を用いる場合には、このタイミングで、全出席者に異議がないことを確認しておくことが無難である。

14 弥永真生『コンメンタール会社法施行規則・電子公告規則〔第2版〕』(商事法務、2015)508頁。なお、議事録における開催場所の記載に関し、本社以外の公示性のない場所で開催する場合、住所を記載するのが望ましいとされている(東京弁護士会会社法部編・前掲注⑻ 421 頁、今井宏監修『株主総会・取締役会・監査役会議事録作成マニュアル〔新訂第 4版補訂版〕』(商事法務、2008)177 頁)。

15 落合誠一編『会社法コンメンタール 8』(商事法務、2009)276 頁〔森本滋〕。16 弥永・前掲注⒁ 508 頁。

【参考例】

取締役会議事録1. 開催日時 ○○○○年○○月○○日 ○○時○○分2. 開催場所 当社本店 ○○会議室3. 出席者  取締役○○○○、○○○○、○○○○、○○○○、○○○○       (○○○○及び○○○○はWeb会議の方法により出席)       監査役○○○○、○○○○、○○○○4. 議長   代表取締役社長 ○○○○5. 議事の経過の要領及びその結果    定刻、代表取締役社長○○○○が議長となり、開会を宣した。    議長は、取締役○○○○及び○○○○はWeb会議の方法により本取締役会に出席する旨を説明し、

Web会議システムにより、出席者の映像と音声が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意思表明を相互に行い得る状態であることが確認され、議事に入った。

(中略)    Web会議システムを用いた取締役会は終始異常なく、議題の審議を全て終了したので、議長は○○時○

○分、閉会を宣した。(以下略)

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特集 新型コロナウイルス感染症への実務対応▶ 取締役会等の運営

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すると、「開催場所」とは名ばかりで、会議の実施場所と評価し得る実態がおよそないとか、仮に、出席者が指定された日時にその場に出向いても審議に参加できないとなると、さすがにそのような場所を

「開催場所」とみなすことはできず、その場所において会議が開催されたとは言い得ないとの評価もやむを得ないように思われる。一方、例えば、事務局が本社会議室で会議の運営を補助するような場合で、かつ(現実には出席者は全員別の場所から参加する前提ではあるものの、理論的な可能性として)当日の急な予定変更等によって、「開催場所」たる本社会議室に来場する出席者があった場合には、当該出席者が、現に本社会議室から審議に参加し得る態勢にあるとのことであれば、出席者全員がその場に存しなくとも会議の実施場所として評価し得る実態がおよそないとまでは言えないように思われ、本社会議室を「開催場所」として取り扱い、議事録にそのように記載することも許容され得るように思われる。

電話会議等の最中、映像のみが途切れた場合であれば、議事録上、格別の記載は要しないと考えられる一方、音声まで途切れた場合には、議事録には、音声が途切れたことと、音声が途切れた間に審議された議題等を記載すべきとされる17。なお、音声まで途切れて途中退席扱いとなった者も、一部でも審議に参加したのであれば、上記の通り審議に参加していない部分が明確化されていることを確認した上で、議事録への署名又は記名押印をすべきである18。

事務局を担う役職員も含めてテレワーク環境下となると、議事録の作成、及び出席者の署名又は記名押印の手続に平時より時間を要することも十分想定されるが、こうした非常事態の状況下では致し方なく、現実的に可能な時期に対応すればよいものと思われる19。なお、「署名」とは、本人自らサインすることを意味するため、これを第三者が代行することは性質上あり得ないという見解もある。このため、たとえ本人の了解があったとしても「署名」を事務局が代行するといったことは避けるべきである。一方、議事録ドラフトを、メールやFAX等の手段で回覧し、出席者が内容を確認した上での了承を得て、「押印」という事実行為のみを第三者が代行することは許容されると解されている20。平時であっても、例えば、来社する頻度が低い社外役員に関しては、事務局において認印を保管しておき、メールやFAX等の手段でドラフトの確認と押印の了承を得た上で事務局が「押印」するという対応をしている例も少なからずある。外出自粛要請が長引

く場合、こうした選択肢も一案となろう。

その他

⑴ テレワーク環境下における事務局機能緊急事態宣言の下、テレワーク等が強く推奨され

ているところ、事務局を担う役職員に関してもテレワーク対応となっている企業も少なからずあろう。事務局を担う役職員に関しても、平時であれば、現実に議場に同席する形で会議に陪席するところ、テレワーク対応中、電話会議等の方法により陪席することは、格別、法的な問題はない。

もっとも、従前、必ずしもテレワークが浸透していなかったにも拘わらず、今般、急遽、テレワークを開始することとなった場合等、不慣れな環境下では、事前準備段階における事業部からの議案や資料の集約等に際して、平時にオフィスに出勤している状況とは全く異なる環境で対応せざるを得ないことも想定される。根本的な解決策は見出し難いところではあるが、次項⑵で述べるように、議題を極力不可欠なものに限定しつつ、電話、メール、社内の情報共有システム等を用いて、可能な範囲で対応するしかないところであろう。

⑵ 先行きの見通し辛い状況下における議題の選別上述の通り、事務局の機能も限定的とならざるを

得ない状況の中、決議事項に関しても報告事項に関しても、急を要するものを除き、付議自体を延期することも検討すべきと考えられる。

これは、そもそも事務方も含めた準備が現実的に可能かという問題に加え、とりわけ取締役会の決議事項に関しては、取締役の善管注意義務の観点での問題もある。新型コロナウイルスの蔓延により世界的な景気後退が懸念されており、その影響はリーマン・ショック以上に深刻とも見込まれているところ、先行きが極めて見通し辛い状況にあることは各社共通と考えられる。今後の事業計画について、大幅に見直さざるを得ない企業も少なくないと思われる。そうした状況下において、例えば、設備投資やM&A等に関し、意思決定を急ぐことが合理的な経営判断と言い得るかという問題である。これは、自社の将来の経営環境、財務状況等の見通しの問題もあるし、投資、買収案件であれば、対象会社の企業価値評価の問題もある。自社及び相手方等の状況や、案件の進捗度合い次第のところもあると思われ、一概には断じ難いが、不確定的要素が多い状況下における経営判断を避けるべき場合もあると思われる。

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上述の通り、取締役会の報告事項に関し、代表取締役及び業務担当取締役による 3 か月に 1 回以上の職務執行状況の報告(会社法 363 条 2 項)に関しては、全員の通知による省略ができないが、逆に言えば、最低限という意味では 3 か月に 1 回で足りる。平時には、毎月の定例取締役会において、月次決算及びその他の重要な業務執行に関する報告をしている上場企業は少なくないと思われるが、とりわけ緊急事態宣言が発されている状況下においては、職務執行状況の報告に関しても、状況次第で、簡素化や見送りを検討することもあり得よう。

⑶ 監査報告作成に当たっての審議・決議監査役会が監査役会監査報告を作成する場合、監

査役会は、1 回以上、会議を開催する方法又は情報の送受信により同時に意見の交換をすることができる方法により、監査役会監査報告の内容を審議しなければならないとされている(会社法施行規則 130条 3 項、会社計算規則 128 条 3 項)。

会社法の立案担当者によれば、ここにいう「会議を開催する方法」とは、開催場所を設定して行う場合を指し、開催場所に存しない者がテレビ電話等を用いて当該会議に出席することができる場合も、これに含まれるとされる。一方、「情報の送受信により同時に意見の交換をすることができる方法」とは、テレビ電話等による会議への出席と異なり、開催場所を設定することなく、意見交換の全てをテレビ電話等で行う場合を指すとされる21。そして、監査役会監査報告作成に際して、当該審議が 1 回以上

行われさえすれば、監査報告の最終的な決定は持回り決議等適宜の方法で行うことも妨げられないとされる22。

現在発されている緊急事態宣言の期間は 2020 年5 月 6 日までであり、3 月期決算会社における期末監査の実施期間と重複する。そもそも、期末監査実務にも少なからぬ支障が生じているものと思われ、日本監査役協会も、「現行法令の範囲内で必要に応じて適切に監査手続きを合理化又は取捨選択することも含め、出来うる限りの活動を行って監査意見を形成し、その結果を監査報告にまとめていただくことが肝要」とのコメントを発している23。上記2⑴の通り、監査役会に関しては、いわゆる書面決議の方法は認められないものの、上述の会社法施行規則及び会社計算規則の規律及び解釈を踏まえると、監査役会監査報告の確定までの間に、電話会議等を用いた意見交換を最低 1 回行えば足りる。

なお、監査等委員会設置会社における監査等委員会監査報告の内容、及び指名委員会等設置会社における監査委員会監査報告の内容については、それぞれの委員会の「決議をもって」定めることとされている(会社法施行規則 130 条の 2 第 2 項、131 条 2 項、会社計算規則128条の2第2項、129条2項)。このため、これらにあっては、最終的な監査報告確定時に「決議」が必要となるところ、上記2⑶の通り、電話会議等の利用は可能であり、こうした方法も活用しつつ対応することが考えられる。

17 大阪株式懇談会編・前掲注⑿ 284 頁〔北村〕。音声まで途切れたことにより途中退席扱いとなる者からすると、議事録に明示的に記載がない場合、審議に参加できなかったにも拘わらず、議事録に異議をとどめていないものとして決議に賛成したものとの推定(会社法 369 条 5 項、393条 4 項、399 条の 10 第 5 項、412 条 5 項)が働いてしまうことになりかねない(同書 281 頁〔北村〕参照)。

18 取締役会に関して、大阪株式懇談会編・前掲注⑿ 281 頁〔北村〕、桃尾・松尾・難波法律事務所編『会社法の議事録作成実務――株主総会・取締役会・監査役会・各委員会』(商事法務、2016)110 頁。

19 この点、平時に関する議論として、取締役会議事録の作成時期につき、会社法上、明示的な定めが置かれているわけではないものの、取締役会終了後、合理的な期間内に作成される必要があると考えられ、会日から約 1か月後の次回の定例取締役会の際に作成することでは遅いといった見解(東京弁護士会会社法部編・前掲注⑻ 419 頁)や、1週間程度が目安といった見解(藤原俊雄「判批」判評 573 号(2006)33 頁)も存した一方で、当該合理的期間については、会社の規模、取締役・監査役の数、議事内容等を考慮して判断されるべきとの見解(落合編・前掲注⒂ 302 頁〔森本〕)も示されている。とりわけ、社外取締役の員数も増加し、各取締役等から議事録ドラフトへの加除訂正等の指示等がなされることも珍しいことではなくなった昨今にあっては、平時であっても、議事録の作成に例えば 1か月程度を要したとしても強ち不合理ではないと考え得るように思われる。そうすると、テレワークが強く要請されている現状、議事録の作成に平時以上の時間を要したとしても、それが不合理との誹りを受けることは考え難い。

20 松井秀樹『会社議事録の作り方〔第 2版〕』(中央経済社、2016)62 頁。21 相澤ほか編著・前掲注⑷ 410 頁。かかる見解によると、「会議を開催する方法」と「情報の送受信により同時に意見の交換をすることができる

方法」とは、開催場所を設定するか否かで区別されることとなる。もっとも、監査役会議事録の作成について定める会社法施行規則の規定上、開催場所が法定記載事項とされており(会社法施行規則 109 条 3 項 1 号)、開催場所を設定せずに「情報の送受信により同時に意見の交換をすることができる方法」により審議を行った場合、それは監査役会として取り扱われるのか否か(監査役会議事録の作成を要するのか否か)が必ずしも定かでないように思われる。実務的には、全監査役が自宅等から電話会議等の方法により参加する場合であっても、上記4⑻のような整理の下、法的にも監査役会を開催した(したがって、会社法施行規則 130 条 3 項、会社計算規則 128 条 3 項との関係では、「会議を開催する方法」を選択した)ものと扱い、監査役会議事録を作成しておく方が無難なように思われる。

22 相澤哲=和久友子「計算書類の監査・提供・公告、計算の計数に関する事項」商事1766号(2006)68頁。ただし、立法の経緯から疑義が残り、単なる修文のレベルを除いて最終的な監査役会監査報告の決定は監査役会の決議によるべきとの学説も存する(弥永・前掲注⒁ 664 頁)。

23 日本監査役協会「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた期末監査に向けて」(2020 年 4 月 8 日)。

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