press release...x w?vl [\]n ?&`3abtcn < !g ;3óª wnxyz? jk x 6f sbu£ w< ghn !vl' ª...

4
30 6 27 054-238-4526 080-3640-2270 054-238-4526 [email protected] http://www.shizuoka.ac.jp/ 422-8529 TEL 054-238-5179 FAX 054-237-0089 Press Release

Upload: others

Post on 09-Jul-2020

3 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Press Release...X W?VL [\]N ?&`3abTcN < !G ;3óª WNXYZ? jk X 6F SbU£ W< ghN !VL' ª Sb'G ?gh qN YZVS Zm*& ? »/' !" ð *iX # B? $ ,

平成 30 年 6 月 27 日

静岡県庁社会部

各報道機関 御中

国立大学法人静岡大学

学長 石井 潔

やはり肉食系男子がモテる?

メスが魅力的なオスを見分ける仕組みを鳥類で解明

静岡大学の笹浪知宏教授らは、鳥類、ウズラのメスが繁殖期に魅力的なオスを見分けるメカニズムを解明

しました。生物にとって次世代に優秀な子孫を残すためには、優秀な配偶者と交尾をすることが重要です。

多くの生物では、オスはメスを巡って争ったり、派手な飾りや美しい声などでメスを誘ったりします。ウシ

やシカなどの角、クジャクの飾り羽、鳴禽類の歌などはその例です。しかし、なぜそのようなオスがメスに

選ばれるのかの仕組みは不明でした。本研究では、ウズラを用いた行動実験に加え、生化学的、分子生物学

的実験により、メスにとって魅力的なオスの特徴を明らかにし、メスがそれを見分ける仕組みを明らかにし

ました。魅力的なオスは血中の男性ホルモン(テストステロン)濃度が高く、これに依存して、頬羽の赤み

と黄みが強くなることがわかりました。メスはこの色の違いを視覚で判別しますが、繁殖期と非繁殖期では

網膜の光受容体の量が変化し、繁殖期にだけ、この違いを見分ける能力を発揮することもわかりました。メ

スの視覚が季節によって変動し、情動に影響することが判明したため、本研究の成果は、例えば、季節性情

動障害(季節性鬱)のメカニズムの解明や治療分野への応用も期待できます。

本研究は、静岡大学、北海道大学、麻布大学、広島大学、東北大学、(株)CrowLabおよび宇都宮大学の

研究者で構成する共同研究チームによる成果で、英国科学雑誌、Scientific Reports (サイエンティフィック

リポーツ)に掲載される予定です。

お問い合わせ先

部局名 農学部

担当者 笹浪知宏

電話番号 054-238-4526・080-3640-2270

FAX番号 054-238-4526

メールアドレス [email protected]

国立大学法人 静岡大学 ウェブサイト http://www.shizuoka.ac.jp/

○広報室 〒422-8529 静岡県静岡市駿河区大谷836 TEL:054-238-5179 FAX:054-237-0089

Press Release

Page 2: Press Release...X W?VL [\]N ?&`3abTcN < !G ;3óª WNXYZ? jk X 6F SbU£ W< ghN !VL' ª Sb'G ?gh qN YZVS Zm*& ? »/' !" ð *iX # B? $ ,

<研究の背景と経緯>

動物の生殖は次世代に自身の子孫を残すために必須であり、種類を問わず動物にとっての最重要課題と位

置付けられます。高等動物では交尾により生殖が行われますが、その交尾相手によって生まれてくる子供の

能力が左右されることは周知の事実です。メスは妊娠、出産、子育てなど、生殖に費やすエネルギーが高く、

逆にオスは低いため、多くの動物でメス側が交尾相手であるオスを選ぶ傾向があります。オスはメスに選ば

れるための戦略を進化させてきましたが、その戦略は動物によって大きく異なります。これまでの研究では、

オスの形質(角、飾り羽など)と生殖行動との因果関係を調べることが主体であり、「どのような仕組みで

オスの形質が変化し、どのようにしてその変化をメスが区別するのか」のメカニズムはほとんど不明のまま

残されてきました。

<研究の内容>

本研究では、図 1 のような装置を用い、メスがどちらのオス側の区画で過ごす時間が長いかを調べること

でメスのオスに対する嗜好性を調査しました。その時間とオスの様々な形質との相関を調べたところ、メス

は血中のテストステロン濃度の高いオスを好むことがわかりました。精巣を除去したオスや短日条件下(10

時間明期-14 時間暗期)で飼育したオスはメスに好まれなくなりました。短日条件下では、ウズラは非繁殖

状態になるため、繁殖状態にあるオスがメスに好まれるということです。また、オスの頬の羽を除去したと

ころ、メスの嗜好性が消失したため、オスの頬羽の特性を調査しました。その結果、オスの頬羽の色は、血

中テストステロン濃度が高いほど赤みと黄みを帯びることがわかりました(図2)。

図 1:メスのオスに対する好みを調べる装置

両端にオスを、中心の各区にメスを置き、メスがオスに近寄った時間を計測した。

図2魅力的なオスとそうでないオス

左側のオスは精巣を除去したオスで右側のオスは未処置のオスである。人には分かりにくいが、右のオスの

方が頬の羽(*の部分)が⾚みと⻩みを帯びている。

Page 3: Press Release...X W?VL [\]N ?&`3abTcN < !G ;3óª WNXYZ? jk X 6F SbU£ W< ghN !VL' ª Sb'G ?gh qN YZVS Zm*& ? »/' !" ð *iX # B? $ ,

実験装置の照明をシャープカットフィルターという長い光の波長をカットする特殊なフィルムで覆うと、

メスは魅力的なオスを見分けることが出来なくなったことから、メスは視覚で魅力的なオスとそうでないオ

スを見分けていることがわかりました。また、メスも短日条件下で飼育すると魅力的なオスを見分けること

ができなくなりました。目の網膜には視覚をつかさどる視細胞があり錐体細胞が色覚を担っています。鳥類

の錐体細胞には視物質として赤、緑、青、紫オプシンが含まれており、研究グループは短日条件と長日条件

で飼育したメスの視物質の遺伝子発現を調べました。その結果、短日条件下では赤オプシンの発現のみが顕

著に低下することがわかりました(図3)。

図3メスの網膜の光受容体の発現量の変化

繁殖状態(LD)と非繁殖状態(SD)で飼育したメスの網膜の光受容体の発現量を調べた。その結果赤オプ

シンだけが短日条件で低下した。

<研究成果の意義>

動物は交尾相手を決定するために様々な戦略を用いていますが、本研究では、鳥類、ウズラを用いてその

メカニズムを解明しました。ウズラでは繁殖期になるとオスの男性ホルモン濃度が上昇し、その上昇に呼応

して頬羽の色が変化し、メスも目の感度を上げて、その変化に鋭敏に反応することで繁殖の成功率をあげて

いると考えられます。男性ホルモンは男らしさを発揮させるホルモンであり、オスの攻撃行動も男性ホルモ

ンに依存して発現することが知られています。男性ホルモンは環境の悪化やストレス、栄養状態の悪化に敏

感に反応して低下しますので、男性ホルモンの濃度の高いオスはコンディションの良いオスであるというこ

とになります。メスはコンディションの良いオスと交尾することによって生まれてくる子孫にもそのような

優良な遺伝子を残そうとしているのだと解釈されます。また、今回発見された色覚の季節変化という現象は

魚類などでも知られているため、この現象は鳥類にとどまらず、様々な動物に広く保存された現象であると

推測されます。また、メスの視覚が季節によって変動し、情動に影響することが判明したため、本研究の成

果は、季節性情動障害(季節性鬱)のメカニズムの解明や治療分野への応用出来るかもしれません。

原著論文情報

著者: Gen Hiyama, Shusei Mizushima, Mei Matsuzaki1, Yasuko Tobari, Jae-Hoon Choi, Takashi Ono, Masaoki

Tsudzuki, Satoshi Makino, Gen Tamiya Naoki Tsukahara, Shoei Sugita and Tomohiro Sasanami*(*責任著者)

Page 4: Press Release...X W?VL [\]N ?&`3abTcN < !G ;3óª WNXYZ? jk X 6F SbU£ W< ghN !VL' ª Sb'G ?gh qN YZVS Zm*& ? »/' !" ð *iX # B? $ ,

Female Japanese quail visually differentiate testosterone-dependent male attractiveness for mating

preferences

(メスウズラはテストステロン依存的に発現するオスの魅力を視覚で識別する)

雑誌名:Scientific Reports

共同研究チーム

静岡大学:檜山源(現職は福島県立医科大学)、松崎芽衣、崔宰熏、笹浪知宏

北海道大学:水島秀成

麻布大学:戸張靖子

広島大学:小野貴史、都築政起

東北大学:牧野悟士、田宮元

(株)CrowLab:塚原 直樹

宇都宮大学:杉田昭栄