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研修「パイプラインコース」テキスト パイプラインシステム (水理計算・水撃圧計算) パイプラインの圧力変動 バルブ閉鎖時間t=240sec 0 10 20 30 40 50 60 70 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 経過時間(sec) 動水位(m) 動水位(m) 南綿屋町米穀店 T O T O

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研修「パイプラインコース」テキスト

パ イ プ ラ イ ン シ ス テ ム

(水理計算・水撃圧計算)

パイプラインの圧力変動バルブ閉鎖時間t=240sec

0

10

20

30

40

50

60

70

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

経過時間(sec)

動水位(m)

動水位(m)

南綿屋町米穀店

T O T O

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パ イ プ ラ イ ン シ ス テ ム (水理計算・水撃圧計算)

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目 次

1 パイプラインの定常流水理計算 ....................................................................................1 1.2.1 例題1 管径・管種の選定 .................................................................................2 1.2.2 例題2 水頭差から流量を求める ......................................................................3 1.2.3 例題3 バルブ開度の決定 .................................................................................4 1.3.1 樹枝状配管における C 値について .....................................................................5 1.3.2 例題4 逆算C値の求め方 .................................................................................5 1.4.1 管網水理計算手法 ...............................................................................................7 1.4.2 節点水頭法の計算手法 ........................................................................................8 1.4.3 節点水頭法の計算例............................................................................................9

2 パイプラインの非定常水理計算 .................................................................................. 11 2.2.1 水撃作用と水撃圧による害 ...............................................................................12 2.2.2 水撃圧の推定方法 .............................................................................................12 2.2.3 水撃圧対策 ........................................................................................................13 2.3.1 一般的事項 ........................................................................................................14 2.3.2 特性曲線法による計算例 ..................................................................................14 2.4.1 剛体理論について .............................................................................................16 2.4.2 剛体理論の支配方程式の解法 ...........................................................................16

3 補足説明 ......................................................................................................................18 3.1.1 水槽~管路一弁系 .............................................................................................18 3.1.2 ポンプ~管路一水槽系 ......................................................................................19 3.2.1 サージング ........................................................................................................20 3.2.2 圧力脈動 ...........................................................................................................21 3.3.1 キャビテーションとは ......................................................................................23 3.3.2 キャビテーションの強度レベルについて .........................................................24 3.3.3 キャビテーションの検討 ..................................................................................24

付録 合成角の計算 ...........................................................................................................26 このテキストの注意使用上の注意

このテキストで使われている「基準書」及び「技術書」とは、農林水産省制定の土地改

良事業計画設計基準「パイプライン」(平成 10 年 3 月制定)の「基準書」及び「技術書」を

指しています。

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1 パイプラインの定常流水理計算

1.1 定常流の計算に使用する式 パイプラインの定常流1は次の2つの基礎式を利用して解析することができる。まず図1

に示すようなパイプラインを考える。 断面 A 及び B でのそれぞれパ

イプラインの中心高をそれぞれ

ZA、ZB、また圧力を hA, hB 、管

内流速を VA, VB、断面積をAA,

AB、とすれば、次のふたつの式

が得られる。

)1(2

22

2

LHg

VhZ

gVhZ

BBB

AAA

∆+++=

++

( )2LBBAA VAVAQ == ただし、ΔHは区間ABの損失水

頭の総和、Qはパイプラインを流

れる流量、g:重力の加速度である。 (1)式は、ベルヌーイの定理を表現する式で、エネルギー保存則を示している。また(2)式

は、連続式と呼ばれ、質量保存則を示している。また、損失水頭の総和(ΔH)については、

( )32

2

Lg

VDLfffffH ovbe

++++=∆ ∑∑

ただし、fe: 入口損失係数、fb:湾曲による損失係数、fv:バルブの損失係数、fo:出口損

失係数、f:摩擦損失係数、L:管の全長、D:管の口径、V:管内流速とする。 これは、技術書(7.2.35)式である。ただし、損失については、技術書 P174~191 に示され

るように各種の損失があるので、実際の計算では、適宜該当する損失を見込まなくてはな

らない。 また、(2)式は技術書(7.2.36)式のように書き換えられる。

( )44

2 LVDQ π=

パイプラインでは平均流速公式としてヘーゼン・ウィリアムズ(Hazen-Williams)公式を

1 パイプライン中の流速および圧力が時間的に変化せず、一定に保持されている状況の流れ。

Flow

A B

基準面

ZA ZB

hA

hB

VB 2

VA 2

VA

VB

ΔH

図 1 定常断面管路

エネルギー線

動水勾配線

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使用することになっている2。したがって、(4)式の流量 Q は、 ( )5279.0 54.063.2 LIDCQ ⋅⋅=

ここで C:流速係数、I:動水勾配。これは技術書(7.2.3b)式となる。また、流速について

は、 ( )6355.0 54.063.0 LIDCV ⋅⋅=

となり、これは技術書(7.2.3a)式である。 パイプラインの損失水頭の中で大きいのは、摩擦損失水頭であるが、これはダルシー-ワ

イズバッハ(Darcy-Weisbach)式により求められる。

( )72

2

Lg

VDLfh f ⋅⋅=

また摩擦損失水頭 hf は、 LhI f= であることから、(6)式のヘーゼン-ウィリアムズの平均

流速公式から

( )867.10 85.187.485.1 LLQDChf ⋅⋅⋅= −−

となる(技術書(7.2.8)式)。また摩擦損失係数fは、

)9(7.13315.017.085.1 L

VDCf

⋅⋅=

となるが、技術書の(7.2.6)式では指数部分の小数点以下第3位までを表示している。 以上のここに掲げた式を使えば、ほぼパイプラインの定常流の水理計算はできるであろ

う。

1.2 定常流水理計算の例題 1.2.1 例題1 管径・管種の選定

図2に示すようなパイプラインにおいて、適切な管径と管種の組合せを求めよ。なお、fb1=0.377、fb2=0.264、fv=0.30(全開時)、fe=0.50、fo=1.0 として、計画最大流量は Q=1.12m3/s、

2 基準書p36、基準の運用(構造改善局長通達)による。

L

fv

fb1

fb2 fo fe

HWL

LWL

図2 例題のパイプライン

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路線延長は L=1,200m である。また、上流側水槽の最低水位(LWL)を 42.00m、下流側水槽

の最高水位(HWL)を 40.00m以上確保する。 【回答】 題意より(3)式のΔH=2.00m であることから、(8)式又は技術書(7.2.8)式より、摩擦損失水

頭を計算できる。さらに流入による損失水頭は技術書(7.2.9)式、流出による損失水頭は技術

書(7.2.10)式、屈折による損失水頭は技術書(7.2.15)式、バルブによる損失水頭は技術書

(7.2.30)式によりそれぞれの損失水頭が計算できる。管種、管径を変えて計算した結果を表

1 に示す。

計算結果より鋼管を使用する場合は管径を 1,200mm とする。また FRPM 管の場合は管

径を 1,000mm であればいい。また、自然流下式パイプラインであることから最小流速の

0.3m3/s 及び平均流速の限界値 2.0m3/s の範囲内であることから技術書 p167 の記述にも合

致している3。

1.2.2 例題2 水頭差から流量を求める

図2のパイプラインにおいて、管径 1,000mm の FRPM 管で設計した時に、パイプライ

ン内を流れる流速と流量を求めよ。 【回答】 この場合、水頭差の 2.0m を最大限利用した時の流速と流量を計算する。そのためには、

例題1の要領で流速を幾通りかに変化させて試算的に損失水頭が 2.0m を満足させる流速

と流量を求めればよい。4 結果は表2に示すとおりで、流速 V=1.536m/s、流量 Q=1.206m3/s を得る。これは末端

のバルブを全開にしていると計画最大流量以上の流量が管内を流れていることを意味して

いる。

3 実際の管種選定では、工事費などの要素も考慮して管種管径の決定を行うことは言うまで

もない(筆者注)。 4 実際には表計算ソフトの Excel についているソルバー機能を利用して計算すればよい。

損失水頭計算書平均流速 摩擦損失 流入損失 バルブ損失 屈折管(1) 屈折管(2) 流出損失 損失計

case1 1.761 3.239 0.079 0.047 0.060 0.042 0.158 3.625 鋼管D= 0.9case2 1.426 1.939 0.052 0.031 0.039 0.027 0.104 2.192 鋼管D= 1.0case3 0.990 0.798 0.025 0.015 0.019 0.013 0.050 0.920 鋼管D= 1.2case4 1.761 2.486 0.079 0.047 0.060 0.042 0.158 2.872 FRPM管D= 0.9case5 1.426 1.488 0.052 0.031 0.039 0.027 0.104 1.741 FRPM管D= 1.0case6 0.990 0.612 0.025 0.015 0.019 0.013 0.050 0.735 FRPM管D= 1.2

表1 例題 1 の損失水頭計算書

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1.2.3 例題3 バルブ開度の決定

例題2の結果から、計画最大流量に抑えるため末端のバルブを操作する必要がある。ま

た、バルブについては、今までの計算では、口径 1,000mm のバタフライ弁を想定したが、

経済性を考慮してバルブについては、口径 700mmを使用することした場合のバルブ開度を

求めよ。ただし、バルブの損失係数については、技術書 p187 に示す図 7.2.17 の大口径に

従うものとする5。また片落ち管の損失係数 fgc=0.02 とする。

【回答】 この場合、バルブ損失係数を変化させて試算しながら最大計画流量 Q=1.12m3/s が水頭差

ΔH=2.0m で流れるようなバルブ損失係数を求めればよい6。その際、片落ち管の損失水頭

の計算は技術書(7.2.19)式を利用する。また、バルブの損失水頭と片落ち管損失水頭に使用

する流速は D=700mm の場合の流速を使用することに留意する。 計算結果は、表3に示すとおりで、バルブ損失係数fv=0.394 を得る。そのときのバル

ブ開度は 82~83 度程度になることがわかる。

以上の例題からわかるように、パイプラインでは弁などを操作し流量や水圧をコントロ

ールしてなければならない。そのための施設として水管理施設が導入されることになる。

5 一般に、バルブの損失係数についてはメーカー等の提示する資料を参考に検討すべきであ

る。また、ここで使用したバタフライバルブ以外にも流量制御に適したバルブも各種開発

されているので、経済比較やキャビテーションに対する検討などを踏まえて、適切なもの

を選ぶようにする。バルブの選定等については「水管理制御方式技術指針(バルブ編)」な

どが参考となる。 6 これも Excel のソルバー機能を利用した。

表 2 例題 2 の水頭計算書

例題2 平均流速・流量の逆算 2摩擦損失 流入損失 バルブ損失屈折管(1) 屈折管(2) 流失損失 損失計 流速

試算1 1.634 0.057 0.034 0.043 0.030 0.115 1.914 1.500試算2 1.736 0.061 0.037 0.046 0.032 0.123 2.035 1.550… … … … … … … … …

決定 1.706 0.060 0.036 0.045 0.032 0.120 2.000 1.536

例題3 平均流速・流量の逆算 D1.0流速= 1.426 D0.7流速= 3.705 2摩擦損失 流入損失 バルブ損失屈折管(1) 屈折管(2) 流失損失 片落管 損失計 fv

試算1 1.488 0.052 0.231 0.039 0.027 0.104 0.014 1.955 0.330試算2 1.488 0.052 0.280 0.039 0.027 0.104 0.014 2.004 0.400… … … … … … … … … …

決定 1.488 0.052 0.276 0.039 0.027 0.104 0.014 2.000 0.394

表3 例題3の損失水頭計算

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1.3 樹枝状配管の場合の水理計算 1.3.1 樹枝状配管における C 値について

さて今まで述べたものは、単一管径の単純なパイプラインであったが、実際に取り扱う

パイプラインは図3ように、幾つかの管径が組み合わさった樹枝状配管となる。その場合、

最終段階では詳細な水理計算を行い損失水頭を得るとしても、概略設計で路線の比較検討

を行う場合、または非定常流況の解析を行う場合等には煩雑となることから、モデルとな

る区間のパイプラインにおいて摩擦損失水頭およびその他の損失水頭のすべてを詳細に計

算して、その結果から逆算して求めた流速係数(C値)を用いて水理計算を行うこともで

きる。

1.3.2 例題4 逆算C値の求め方

図3に示すパイプラインが表5

に示すような延長、管径、流量及び

分水量が与えられている場合の時

の逆算 C 値(等価流速係数)を計

算する。ただし管種は FRPM 管と

する。また、配管を考慮した各種損

失水頭の計算書は、表 6.1~6.4 に示す通りである。

【回答】 (8)式を変形して次式を得る。

( )1067.10 85.11

85.187.4

L

⋅⋅=

fhLQDC

この式を使い、得られた損失水頭計算書から流速係数を計算した

結果を表7に示す。結果より安全側の値をとることとして C=130とする。

LWL

L1 L2

L3L4

Q1,D1 Q2,D2

Q3,D3

Q4,D4 q1

q2

q4

q5

図3 樹枝状配管パイプライン

Z1 Z2

Z3 Z4

区間1 区間2

区間3 区間4

L(m) D(m) Q(m3/s) q(m3/s)区間1 800.0 1.2 1.5 0.2区間2 1,500.0 1.2 1.3 0.3区間3 1,000.0 1.0 1.0 0.2区間4 1,200.0 0.9 0.8 -

表5 例題4の諸条件

C区間1 131.77区間2 135.85区間3 136.28区間4 137.63平均 135.79

表 7 :逆算 C 値

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損失水頭計算書区間1延長L 800.00 流量Q 1.50 分水量q 0.2管径D 1.20 管種 FRPM 流速 1.33

ヶ所数 損失水頭摩擦損失 800.00 0.701 C= 150流入損失 1 0.045 fe= 0.500流出損失 0 0.000 fo= 1.000漸縮損失 0 0.000 fgc= 0.025分流損失 1 0.001 fγ= 0.006バルブ損失 1 0.023 fv= 0.260屈折損失 10 0.027 10°fbe= 0.030屈折損失 6 0.027 15°fbe= 0.050屈折損失 3 0.067 45°fbe= 0.250

損失計 0.891

備考

表 6.1 損失水頭計算書

損失水頭計算書区間2延長L 3.00 流量Q 1.30 分水量q 0.3管径D 1.20 管種 FRPM 流速 1.15

ヶ所数 損失水頭摩擦損失 1500.00 1.008 C= 150流入損失 1 0.045 fe= 0.500流出損失 0 0.000 fo= 1.000漸縮損失 0 0.000 fgc= 0.025分流損失 1 0.000 fγ= 0.001バルブ損失 1 0.023 fv= 0.260屈折損失 15 0.040 10°fbe= 0.030屈折損失 6 0.027 15°fbe= 0.050屈折損失 3 0.067 45°fbe= 0.250

損失計 1.211

備考

表 6.2 損失水頭計算書

損失水頭計算書区間3延長L 3.00 流量Q 1.00 分水量q 0.2管径D 1.00 管種 FRPM 流速 1.27

ヶ所数 損失水頭摩擦損失 1000.00 1.006 C= 150流入損失 1 0.045 fe= 0.500流出損失 0 0.000 fo= 1.000漸縮損失 1 0.002 fgc= 0.025分流損失 1 0.000 fγ= 0.001バルブ損失 1 0.027 fv= 0.300屈折損失 10 0.027 10°fbe= 0.030屈折損失 6 0.027 15°fbe= 0.050屈折損失 3 0.067 45°fbe= 0.250

損失計 1.201

備考

表 6.3 損失水頭計算書

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1.4 管網での定常流況の水理計算 送配水施設を管網に組んだ場合、網状に組まれた各パイプラインの流量は、一連の組織体

として水理的拘束を受けるため、樹枝状パイプラインのように末端分水工流量の積み上げ

で定量的に計画流量を定めて管径を決定することはできない。一般に管網パイプラインに

おける水理計算では、管径を仮定して流量計算を行い管内流速の制限、分水圧力の制限等

の条件を考慮し、その制限条件の内で得られる最も小さな管径を決定する。従って管網パ

イプラインの水理計算は1回の計算で管径が定まることは少なく、数回の試算が必要であ

り、特に分水点の分水量や分水位置が変動する場合には更に多くの試算を繰り返して使用

管径を決定することになる。

1.4.1 管網水理計算手法

管網水理計算にはハーディ・クロス(Hardy-Cross)法(流量法)と節点水頭法(水位法)

の2方法が代表的である。いずれの手法を用いても管網であれば同様の結果を得ることが

できるが、前者は水理バランスをとるためのパラメーターを流量に置き、流量を修正する

ことにより圧力の均衡を求めるため管網状でなければ使用することができない。 節点水頭法では各節点のへの圧力を仮定してパイプラインの流量を求める方法であり、

この手法によれば、管網だけではなく樹枝状配管の場合でも検討することが出来るので、

一般に節点水頭法の方が利用範囲が広く汎用性があるといわれ、また、多元連立方程式の

解法であることから、コンピューターによる処理に適している。 また、技術書でも節点水頭法による計算を紹介しているので、以下では節点水頭法の計

算について説明する。

損失水頭計算書区間4延長L 3.00 流量Q 0.80 分水量q 0管径D 0.90 管種 FRPM 流速 1.26

ヶ所数 損失水頭摩擦損失 1200.00 1.334 C= 150流入損失 1 0.045 fe= 0.500流出損失 0 0.000 fo= 1.000漸縮損失 1 0.002 fgc= 0.025分流損失 1 0.003 fγ= 0.030バルブ損失 2 0.059 fv= 0.330屈折損失 10 0.027 10°fbe= 0.030屈折損失 6 0.027 15°fbe= 0.050屈折損失 3 0.067 45°fbe= 0.250

損失計 1.564

備考

表 6.4 損失水頭計算書

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1.4.2 節点水頭法の計算手法

今、2つの節点i,jが管路で結ばれていると考える。節点i,jを結ぶ管路の区間流量 qij

をヘーゼン・ウィリアムズの式で公式を用いれば技術書(7.3.5)式にあるように、

( )1127853.054.0

63.2L

−⋅⋅⋅=

ij

jiijij L

hhDCq

ここで、C:流速係数7、Dij:区間ijの管径(m)、Lij:区間ijの管路長、hi:I 点の動水

位、hj:j点の動水位、である。 節点iの隣接点をそれぞれjとすれば、節点iについての流量に関する節点方程式は、

( ) ( )1201

L∑=

∈=+i

jiij INRiQq

ここで、qij:節点iと節点jを結ぶ管路の区間流量(m3/s)、Qi:節点 I からの流出量(m3/s)、INR:配水基地以外の節点の集合、である。 管路数を(J)、節点数を(N)、動水位が一定(あるいは予め決まっている)の節点数を(M)

とすれば、(12)式の節点方程式は(N-M)元の連立方程式を立てることができる。また、

(11)式は、

( )( )13

27853.046.063.2 L

−⋅⋅⋅⋅=

−=−

jiijij

jiijij

hhLDCk

hhkq

となる。(13)式を(12)式に代入して、

( ) ( )141

LjihhkQn

jjiiji ≠−−= ∑

=

を得る。(14)式を展開すると

( )151

2211 LLL inini

n

jijii Qhkhkhkhk =++

−+++ ∑

=

となり、(N-M)個の hiを未知数とする(15)式の連立方程式を得る。この連立方程式を解

いてそれぞれの節点における hiを求めることはできるが、(13)式に示すように kijは hiを含

む非線形の式であるため、得られた解 hi が次式を満足するまで反復して計算を行うことと

なる。

( )161 Lami

mi hh ε<−+

ここで、mih :i点の第m回目の演算結果(初回は仮定した

0ih を代入して計算)、

1+mih :

7 ここでは前節で求めたような逆算した C 値を使うとよい。

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i 点の第 m+1 回目の演算結果、 aε :許容誤差である。

1.4.3 節点水頭法の計算例

図4に示すパイプラインに

おいて管網水理計算を行う。な

お、許容誤差は 0.001m とする。 a) 第 1 回試算 節点 1 の動水位 h1 は既知で

あり、h1=40.00m とする。ま

た h2=39.00m 、 h3=38.00m, h4=37.00m と仮定する。

(15)式より、

( ) ( )( ) ( )( ) ( ) 434324244342

34342321313343231

24243231212242221

QhkhkhkkQhkhkhkhkkkQhkhkhkhkkk

=⋅+⋅+⋅+−=⋅+⋅+⋅+⋅++−=⋅+⋅+⋅+⋅++−

また(13)式より、

0036.00.390.40400100.014027853.0

27853.046.054.063.2

46.021

54.063.2122112

=

−××××=

−⋅⋅⋅⋅==−−

−− hhLDCkk

同様にして、 0017.0,0011.0,0020.0,0011.0 4334422432233113 ======== kkkkkkkk

を得る。また、Q2、Q3、Q4 を連立方程式に代入して、

=−+−=+−−=++−

0045.00028.00017.00011.00435.00017.00048.00020.01430.00011.00020.00067.0

432

432

432

hhhhhhhhh

*管種は VP とし、C=140 とする

*図中の矢印は仮定の流水方向を示す

図 4 モデル管網図

1 2

3 4

Q=6.00 l/sec

Q=1.00 l/sec

Q=0.50 l/sec Q=4.50 l/sec

D=100 L=400m

D=75 L=500m

D=75 L=400m

D=75 L=500m

D=75 L=300m

+

+

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- 10 -

これを解いて、 mhmhmh 922.36,325.38,845.38 432 === を得るが、(16)式より、

NoNoNo

→>=−→>=−→>=−

001.0078.00.37922.36001.0325.00.38325.38001.0155.00.39845.38

従って2回目の試算を行う。 以下、6回目の試算を経て、 mhmhmh 692.36,453.38,705.38 432 === を得た。ま

た、これを基に各区間の区間流量を(11)式により計算できる。

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11

2 パイプラインの非定常水理計算

2.1 非定常流況の基礎方程式 パイプラインにおける非定常流況の基礎式8は弾性体理論に基づく場合は、 (運動方程式)

( )17022

11 2

L=+∂∂

+

∂∂

+∂∂

gV

DVf

xHV

xgtV

g

(連続方程式)

( )180sin2

L=∂∂

++∂∂

+∂∂

xV

gaV

xHV

tH α

ここで、V:管内流速(m/s)、x:距離(m)、t:時間(s)、H:基準面からの圧力水頭、f:摩擦損失係数、D:口径(m)、α:管路の基準線に対する傾き角度、a:水撃波の伝播速度(m/s)、g:重力の加速度(m/s2)。 これは、技術書(8.2.1)式で、H を管軸からの圧力水頭に変え、摩擦損失係数fをヘーゼンウィ

リアムズ式の流速係数で表現し、 αsin⋅+∂∂⋅ VxHV を微小項として省略すれば、(8.2.2)式を得

られる。さらに時間に関する流速や速度の変化がない定常状態であれば、(17)式と(18)式はそれぞ

れ(1)及び(2)式となる。 水の圧縮性を考慮しない剛体理論による場合は、次式を用いることとなる。

(運動方程式)

( )19082.6

21

167.185.1

852.02

L=⋅

⋅+

++

∂∂

+∂∂

DCVV

zhg

Vxt

Vg

(連続方程式)

( )tQAV =⋅ または ( ) ( )200 L=⋅∂∂ AVx

ここに、h:管軸からの圧力水頭、A:管の通水断面積、Z:基準線から管軸までの高さ(m)、C:流速

係数、Q(t):通過流量(m3/s)。 弾性体理論と剛体理論の使い分けは技術書 P218 の記述にある通りであるが、一般的には水撃

圧の予測など短時間(数分)の水管理操作に伴うシミュレーションが必要な場合には弾性体理論

による解析を行う。また水管理操作による流況への影響が数時間または数日といった場合、例え

ば、揚水ポンプの吐水槽容量やファームポンドの調整容量の確認といった場合には剛体理論によ

8 基礎式は偏微分方程式で表されるが、偏微分方程式を、大胆に表現すれば、 xV ∂∂ という表現

は dxdV という表現と大差はない。ただし、 tV ∂∂ という項もあるので、xの方向を南北方向、

tの方向を東西方向と考えれば、Vは、あたかも斜面の上に立つ人間のようなもので、南北方向

には何度傾いているか、東西方向には何度傾いているかを、記号として表現しているようなもの

である。斜面に立って偏微分の気分を味わってみよう。

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- 12 -

る解析を行う。

2.2 水撃圧の計算 2.2.1 水撃作用と水撃圧による害

管路内の流体の流速が急激に変化したことにより圧力が変化する現象を一般に水撃作用という。

水撃圧作用の原因としては種々あるが、分水バルブ、給水バルブ、調圧バルブ、ポンプ等の起動・

停止操作などをあげることができる。この水撃圧によるパイプラインへの害としては、つぎのよ

うな例が報告されている。 (1) 管内圧力の上昇による管体、弁、ポンプなど、器材の破損事故 (2) 管内圧力の低下により負圧が発生し、このため管体が圧潰する事故。 (3) 管内の負圧の値が大きくなると、水柱分離(水に溶け込んでいる空気が分離する)あるい

はエアーハンマー現象を誘発し、この高圧によって起こる破損事故。 (4) 空気が混入したパイプライン系を再稼働させるためには、空気抜き注水という人手と時間

のかかる作業が必要となり、施設の主目的である送水機能が長時間に渡って停止する。

2.2.2 水撃圧の推定方法

水撃圧の推定は、管体の構造計算上、またパイプラインの水管理操作を決定する上で必要であ

る。水撃圧の推定方法は図5に示すような方法があるが9、基本的には基準書 P38~39 の基準の

運用に示されるように、経験則による方法を原則として、その範囲に収めるための手段を明確に

するために数値解法を利用することになる。 ここで、アリエビの式をみてみよう。基礎方程式の(17)および(18)式は解析的に解くことは難し

いので、いくつかの省略を行い誘導した式がアリエビの式である。この式は、バルブの等価閉そ

く時間 tv(s)、管路の延長をL(m)、a を圧力波の伝播速度(m/s)とする時、 aLtv 2= なる状態で適

9 ここに書いた以外にも図式解法などが以前は使われていた。

経験則による方法

計算等による方法

理論解法

数値解法

瞬間及び急閉そく ジューコフスキー(Joukowsky)の式

緩閉そく アリビエ(Allievi)の式

摩擦損失を省略

摩擦損失を考慮

特性曲線法

中心差分法

特性曲線法

図5 水撃圧の予測方法

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13

用する。

( )2142

2

1

11

1max

L

⋅⋅

⋅=

++=

vo

o

tHgVLK

KKKH

H

ここで、Hmax:バルブ閉そくによって発生する水撃圧水頭(m)、Ho:バルブ位置における静水頭

(m)、V:管内の初期および終期の定常状態の流速差(m/s)、g:重力の加速度(m2/s)である。 この式からわかるように、水撃圧の発生は、管路の長さ、断面積、流量の変化量、圧力波の伝

播速度、弁の操作時間と操作具合によって変化する。このうち管路の長さ、断面積、流量の変化

量などは、一般に水利用計画、路線計画によって与えられ、圧力波の伝播速度も管材によって定

まると考えられる。それゆえ農業用パイプラインにおいては、分水工、機場のバルブ特性或いは

操作時間による影響が大きいともいえる。しかしながら、このように水撃作用にはパイプライン

の総合的なシステムが反映されることを踏まえて、水撃圧対策、あるいは水管理操作を検討する

という姿勢は重要であろう。 2.2.3 水撃圧対策

水撃圧対策については、技術書 p232~p234 の記述を参考にすればよいが、全般的に考慮すべ

きポイントしては以下のものが考えられる。 (1) パイプラインの幾何学的形状の変更

水撃圧は流速の変化に伴っておこるのであるから、変化率を小さくする。或いは設計流速

を小さくするなどの対策がある。また、山間部などでパイプラインが高位部を通過する場合

は、その地点で負圧が発生する可能性もあるので、路線の変更も有効である。 (2) 圧力波の伝播速度の減少をはかる

管内に空気を混入して圧力の伝播速度を小さくする方法もあるが、エアーハンマーの発生

やその後のパイプラインへの注水作業を考えると好ましくはないので特殊なケースとなろ

う。また、変形しやすい管材を使うという方法も考えられる。 むしろ伝播速度については、水撃作用の最終的なチエックを数値シミュレーションなど行

う際に、圧力波の伝播速度は管材に加えて埋設条件なども影響することから、現地での圧力

波の伝播速度を測定しその結果をもってシミュレーションすることなどでは重要である。 (3) 圧力制御装置の設置

ワンウェイサージタンク、コンベンショナルサージタンク、圧力タンク、リリーフバルブ、

逆流防止弁などの検討を行うことが相当する。また、自動減圧弁などもこの中に含まれるで

あろう。特に注意が必要なのは、減圧弁などは微小なゴミ等の影響により作動に支障が出る

こともある。 (4) 機器の可動、操作時間の変更

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- 14 -

弁の操作時間、ポンプのフライホイールなどの検討である。しかし、弁を手動で操作する場

合には、注意が必要で、そのためには余水の発生なども考慮した調整施設の検討も必要であ

る。また、ポンプについては水撃圧の発生がポンプの故障や停電といったことが原因となる

ので水撃圧の防止対策が重要であろう。

2.3 弾性体理論による非定常流況解析 2.3.1 一般的事項

一般に数理モデルを作成しコンピューターにシミュレーションが行われる。また、水理モデル

とともに水管理施設の動作方法(例えば、定流量弁を使う場合の制御方法10など)を組み込んだ

コントロールモデルの作成も必要である。 数理モデルの作成にあたっては、基本的に(17)式および(18)式を解くことである。そのため手法

としては特性曲線法11や中心差分法が利用される12。 2.3.2 特性曲線法による計算例

水槽~管路~弁系からなる簡単なパイプラインについて、特性曲線法を使った非定常流況解析

の結果を図6a及び6bに示す。解析に用いたのは技術書(8.4.3)式~(8.4.6b)式に基づく差分式で

ある。プログラムには Excel2000 の VBA を利用している。なお、計算に使った条件は以下のと

おりである。 管径:900mm、管種:鋼管、マニングの粗度係数:0.015、管厚:10mm、管路延長:2000m、

分割メッシュ数:21、差分時間:1sec、上流端水槽水位:30m(固定)、下流端バルブ閉そく時間:

240sec 及び 600sec、流量:1.2m3/s→0m3/s なお、弁の流量係数 C は閉鎖時間に直線的に比例するものとして、Co を全開時の係数(=1.0)、

tv を閉そく時間、tを経過時間として、 ( )vo ttCC −= 1 とした。 実際は、バルブの特性があるので、それにあわせた流量係数を採用すべきであることはいうま

でもない。 結果からわかるように弁の閉そく時間を長くすれば、最大水撃圧の発生は小さくなる。また、

図6bにパイプラインの縦断をプロットすれば、必要な設計内圧が求められるであろう。

10 定流量弁であっても圧力や流量の微小な変化に逐一追従しているわけではない。PID作動に

よる制御を採用していれば、不感帯と呼ばれる反応しない変動幅もあり、また、制御の仕方も直

線的ではなく、弁の特性や変動の傾向に影響されるものである。 11 特性曲線法による非定常流況解析の手法については、臼杵宣春ほか:「パイプラインにおける

水理解析手法について(第1回)~(第 4回)」、 ARIC情報No.62~65などに詳しく記述されている。 12 実際は偏微分方程式を数値解析により解くのであるから、解の安定性の高い他の差分スキーム、

例えば Two Step Lax-Wendroff scheme など、を使うことも可能と思うのであるが、筆者の浅学

のため実例は知らない。

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15

パイプラインの圧力変動末端バルブ位置

0

10

20

30

40

50

60

70

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

経過時間(sec)

動水位(m)

t=240sec

t=600sec

図6a 水撃圧計算結果

管路縦断方向最大最小動水位

0

10

20

30

40

50

60

70

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21

メッシュ番号

動水位(m)

MAX(600)

MIN(600)

MAX(240)

MIN(240)

図6b 水撃圧計算結果

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- 16 -

2.4 剛体理論による非定常流況解析

2.4.1 剛体理論について

剛体理論(或いは剛体

モデル)による非定常流

況の支配方程式は、パイ

プラインの分岐点間或い

は水槽(自由水面を持つ

調整池又はファームポン

ド)間の各単一管路区間

について、水の慣性効果

を表す運動方程式と分岐

点や水槽等で成立する流

量の連続方程式から成る。

すなわち、図7に示すよ

うな単一管路において、運動方程式の(19)式は、

( ) ( )222

Lgvv

DlfHH

dtdv

gl

io ⋅⋅−−=⋅

流量表示すれば、(22)式は、

( ) ( )232 2 L

gaQQ

DlfHH

dtdQ

gal

io ⋅⋅−−=⋅⋅

管路区間における連続方程式の(20)式は、 ( )24LconstavQ =⋅=

上流側の水槽と組み合わせた場合には、

( )25LQQdt

dHA o

oo −=⋅

となる。 この4つの常微分方程式を解くことにより、剛体理論による非定常流況解析を行うことができ

る。 2.4.2 剛体理論の支配方程式の解法

技術書には直接差分法による差分式が紹介されているので、それに基づいて説明する。まず、

(23)式を次のように差分化する。

Ho

Hi

ai, li

Qi

Qout

Ai

基準線

図7 剛体モデルの例

Ao

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17

( )26

222

11

22

22L

+⋅⋅=⋅⋅

−=

−∆−

⋅=⋅

∆+

∆+∆+

∆+

ti

tti

ti

tto

ttioi

ti

tti

QQga

Q

Dlf

gaQQ

Dlf

lHH

lHH

tQQ

gdtdQ

g

ここで、添え字のtはt時刻の諸量を意味し、t+Δt はΔt 時間経過後の諸量を示している。よっ

て、既知量である t 時刻の流量 Q から未知量である t+Δt 時刻の流量は、

( )27

4

4

22

21

11

2

L

⋅⋅−∆⋅

=

⋅⋅+∆⋅

=

−+=∆+

i

ti

i

ii

i

i

i

ti

i

ii

i

i

ioti

tti

ga

QDlf

tgalP

ga

Q

Dlf

tgalP

PHHQ

PPQ

となり、技術書(8.5.1)式となる。また、スタンド内の水位に対しては、

( )2801

L=−

+∆− ∆+∆+∆+

AQQ

tHH tt

outtt

iti

tti

であり、これを変形して、

( )29Li

ttout

ttit

itt

i AQQHH

∆+∆+∆+ −

−=

すなわち、技術書の(8.5.2)式を得る。よって、(27)式と(29)式を連立させて解くことにより非定常

流況解析が可能となる。

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- 18 -

3 補足説明

3.1 代表的管路系における水撃作用 水撃作用の概念をつかむため,水槽~管路~弁から成る系で弁を瞬時に閉じた場合と、ポンプ~

管路~吐水槽から成る系でポンプが急停止したときの圧力波の伝わり方をつぎに示す。

3.1.1 水槽~管路一弁系

図8の(a)の管路系で末端の加減弁を急に閉じた場合には、弁の直上流に急な圧力上昇を生じる。

この圧力波は a なる速度で上流に向かう。このとき波の後方の水の速度はゼロとなり、管は拡大

図8

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19

され、水の密度は増大する(図8の(a)、(b))。この波が水槽に到達すると、水槽近くの管内圧力

は静圧よりも大きくなっている(図8の(c))。この不安定な状態を破るように管内から水槽に水が

流れ出す。この速度変化の結果として水槽端において反射波が発生し、これは水槽から弁に向っ

て伝わる(図8の(d),(e))。この反射波の後方では、水は水槽に向って流れるから、管は拡大した

ものが収縮し、水の密度は減少する。この波が末端弁に達すると反射がおこり、反射波が水槽に

むかう。 この反射波の後方では管はさらに収縮し、水の密度は減少する(図 8 の(f))。波が水槽に達する

と、水槽での静水圧が優るので水槽から弁への流れが発生し、管は再び拡大し、水の密度は増大

する(図8の(g),(h))。この波が末端の加減弁に達すると、波の1サイクル ( )aLt 4= が終ること

になる。 摩擦等による損失がなければ、このサイクルが繰り返されることになる。弁で発生した圧力波

が弁にもどってくるまでの時間は aLt 2= である。

3.1.2 ポンプ~管路一水槽系

図7は、ポンプ吐出側に逆止弁のない場合に、ポンプが停電または重故障で停止したときの現 象を示している。この現象は、つぎの 3 段階に分けることができる。 ①第 1 段階(ポンプ特性範囲、正転一正流) 運転中のポンプが急に動力を失うと、回転体の慣性力のみによって運転するため、回転数は急

速に低下する。従ってポンプが発生する揚程も一流量も共に減少するが、一方ポンプから離れた

下流側の送水管内の流体は、慣性により今までの流速に等しい運動を続けようとするため、ポン

プに接した吐水管の部分にマイナスの圧力波が生じ、ポンプ直後の圧力は正常な圧力よりも下が

りはじめる。この圧力低下の程度は、主としてポンプ回転体の慣性と管路内の水の慣性との相対

的な関係によって決まるものである。ポンプの回転速度がある限度以下になれば、ついには揚水

不能となり、送水管内の流体は一度停止する。 ②第 2 段階(制動特性範囲、正転~逆流) 一度停止した水はつぎの瞬問から逆流を始

め、正回転している羽根車は逆流に対する抵抗

となる。そして第 1 段階で発生したマィナスの

圧力波が下流端の水槽で反射してプラスの圧

力波となり、それがポンプ側に到達してくるの

と相まって、第 1 段階では降下を続けていた圧

力が上昇し始める。一方ポンプは逆流する水の 図9

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- 20 -

制動作用により、ますます回転数が低下し、ついには停止する。

③第 3 段階(水車特性範囲、逆転~逆流) つぎの瞬問からポンプは逆流する水に

より水車状態となり逆転を始め、逆流量

が増すにしたがって逆流に対する羽根車

の抵抗が増大し、逆流量の増大は制限を

受け、圧力は上昇を続ける。その後、逆

流量と逆回転速度と羽根車の抵抗とが影

響し合う圧力変動が続き、最後には無負

荷の水車として一定の走り放し状態に達

し、安定した状態になる。この状態にな

るまでに、逆回転数も逆流量も共に最大

値を示すが、走り放し状態では、これら

の値はかえって減少し一定の状態になる。 以上述べた 2 つの事例は代表的なもので

あるが、ここで注意すべきことは、水撃

圧がかなり短い時聞間隔で繰り返し作用

する力であるということである。この時

間間隔は aL4 で計算されるが、圧力波の

伝播送度がかなり速いことを考え併せる

とこの値はかなり小さいものである。

3.2 参考:サージング現象などその他パイプラインに起こる水理現象

3.2.1 サージング

パイプライン系がオープンタイプの場合、流速の変化に伴って管路途中

の自由水面部の水位が上昇下降を繰り返す現象である。また、水撃作用に

よる圧力上昇や圧力低下を軽減するためにサージタンクと呼ばれる施設

を設置する場合もある。 サージングの原理は、基本的には U 字管振動である。図 10 に示すよう

に両管内で異なる水面を持つ水柱は周期的に振動する。しかし、この管路

が長い場合には摩擦により振動は減衰していく。 サージタンクは、例えば、ポンプ急停止の場合にはサージタンク内の水

図 10 異なる水面を

持つU字管

図11

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21

が一時的に補給されて異常な圧力低下が発生するのを防止できる(但し、パイプライン中にサー

ジタンクを設ける場合、静水位の高さを確保するため、設置場所が限られる、また、水圧が上昇

する時に一時的に余水が発生するので、その処理も考慮しなくてはならない)。 3.2.2 圧力脈動

また、サージングと似た現象で圧力

脈動と呼ばれる現象がある。これは流

れの状態の変化が一定の時間間隔をお

いて繰り返される現象であり。セミク

ローズドタイプのパイプラインが直列

に並んでいる場合にそれぞれのディス

クバルブが共振する現象が起こること

がある。この場合は、一般的にファー

ムポンドなどの水面積を大きくして振

動を吸収する方法がとられることが多

い。前出のY川下流域地区の例もそれに近いと思われるが、この場合、ゲートが敏感に水位

を調整しようと働くため、水槽面積の拡大は効果が薄かったようである。 また、自動応答型の減圧弁(図 12)を直列に配列する場合にもこのような現象が発生する

ことがあるので、注意が必要である。 このタイプの弁は、流量の変動や弁操作によって管内圧力の変動が生じた場合に下流側のパ

イロット弁内のダイヤフラムに作用する二次圧の変動にともなって、その開度を変更させる

ことにより主弁ピストンが作動し二次圧を一定に保つような仕組みである。この弁の動きを

コントロールモデルに組み込んで、減圧弁を直列及び並列に配置したモデルに対して、通常

の弾性体モデルによる水撃圧解析を行った結果を図 13~15 に示す13。 図 14 は減圧弁を並列配置した場合の応答であり、外乱に対してバルブの一次圧(上流側)

は収束性の振動を示し、2次圧(下流側)は一定に維持されている。これに対し、図 15 は

減圧弁を直列配置した場合であり、外乱に対して1次圧、2次圧ともに定常振動を示してい

る。

13 長 勝史、長 智男、黒田正治:管水路における減圧弁の動特性(1)、農土論集 127、pp.43-50、(1982)

図 12 自動応答型の減圧弁

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- 22 -

図 13

図 15

図 14

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23

3.3 キャビテーション

3.3.1 キャビテーションとは

圧力調整装置として各種のバルブ、オリフィスあるいはノズルが用いられる。例えば、

定常流の計算の例題3に示したようなケースで圧力を調整することにより流量をコ

ントロールするような場合もそうである。また、畑地かんがいで使用する給水栓部に

オリフィスプレートと呼ばれる管径よりも小さい穴の開いた円盤をつけ、散水機での

給水圧を低下させる例もある。 これらの装置は一次側で流れを急縮させ、これを二次側で急拡させることによって、

急拡部で流れのじょう乱を利用して圧力減殺を行うものである(図 16)。

流れが断面急縮部を通過するときベルヌーイの定理に知られるように、流速が増大し

圧力が低下する。圧力が水温度に対応する水蒸気圧以下に低下すると、水は気化して

流れの中に水蒸気の空洞を生じる14。このような現象をキャビテーションという。こ

の空洞は、流れの低圧部から高圧部に移動すると、そこで急激に圧潰、消滅して大き

な衝撃を生ずる。この衝撃によってノイズ及び振動を発生する。また空洞の圧潰が管

壁上あるいは、その近傍で起これば、ピッチングによって管壁に浸食、損傷を生じる。 このようにキャビテーション現象は管路に好ましくない作用であることから、バルブ、

オリフィスあるいはノズルの設置にあたっては、キャビテーションが発生しないよう

な水理設計が必要である。 また、このキャビテーションは管水路やポンプなどに限らず、固定堰を流下する場合

14 したがって、高い山の上では水は早く沸騰する。今度登山した時は温度計を持参して確

かめてほしい。

図 4 圧力調整装置の前後の圧力分布

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- 24 -

などでも発生する。

3.3.2 キャビテーションの強度レベルについて

キャビテーションについては次のような強度レベルがある。 ① 初生キャビテーション

これは、キャビテーションの初生状態を示し、ノイズは軽い間けつ的な「プチッ、プ

チッ」という音からなる。この強度レベルは、従来、多くの設計基準レベルとして使

用されている。とくに、絶対に損傷あるいは振動を回避すべき重要施設では、この強

度レベル以下で設計することが望ましい。しかし、この基準の使用は、過大設計の結

果を生むおそれがある。

② 臨界キャビテーション これは、目玉焼きをつくるときの音に似た軽い安定したキャビテーション・ノイズに

よって特徴づけられる。また、ノイズ発生の周期はかなり長い。損傷はほとんど発生

しない程度であり、振動も無視できるほど小さい。

③ チョーキング・キャビテーション これは、圧力調整装置のすぐ下流の平均圧力が水の蒸気圧に達し、上流圧力を一定に

して、下流の管内圧力を減少させた場合、流量がそれ以上増大しない様な状態である。

上流圧力をさらに増大させるか、下流圧力を減ずるかすると、蒸気ポケットはさらに

下流に移動し、スーパー・キャビテーションを生ずる(流れは完全にチョーキングを

起こしている)。 チョーキング・キャビテーション付近で、キャビテーションの強度は最大に達し、過

度のノイズと振動を伴う。また、装置にはなはなだしい損傷を与える可能性がある。 このレベルがスーパー・キャビテーションにまで進むと、空洞圧潰ははるか下流の管

路部分に生じ、ノイズ、振動および損傷が生ずる。この状態が管路システム内で発生

する可能性がある場合には、厳重な注意が必要である。

3.3.3 キャビテーションの検討

キャビテーションの状態を評価する指標として、現在、いくつかのキャビテーション係

数が用いられている。これらの係数はキャビテーションを抑制しようとする圧力とキャビ

テーションを生じさせようとする圧力差(又は速度水頭)との比で与えられる無次元数で

ある。キャビテーション係数は次のような式で求められる。

( )3010

221

22

21

2 LHH

H

gVHH

HHH va

−+

≈+−

−+=σ

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パ イ プ ラ イ ン シ ス テ ム (水理計算・水撃圧計算)

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ここで、σ:キャビテーション係数、H1:バルブ上流水頭(m)、H2:バルブ下流水頭(m)、Ha:大気圧(一般に 10:33m)、Hv:その温度における水の絶対飽和蒸気圧(25℃において 0.33m)、V:管内平均流速(m3/s)である。 一般に速度水頭は小さいため(30)式のようになる。また、 (30)式で求めたキャビテーシ

ョン係数が、バルブに与えられている固有のキャビテーション係数を上回っていたらその

バルブはキャビテーションに対して安全である。また、キャビテーションを起こさない範

囲に減圧できるように複数のバルブを直列に設置する場合がある。その際には、一般に弁

と弁の間隔を 5~6D(D は管径)にとる。

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パ イ プ ラ イ ン シ ス テ ム (水理計算・水撃圧計算)

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付録 合成角の計算 パイプラインの路線において、路線が水平面で折れ曲がっている点(IP点)と縦断方

向に折れ曲がっている点が重なっている場合がある。その際の曲管の角度を計算するには、

次の合成角の計算を行う。 【使用公式】

BACBAX sinsincoscoscoscos ⋅±⋅⋅= ただし、X: 合成角ベントの上下流管を含む実角

A,B: 管路を含む鉛直面への管路の投影が水平線となす角、すなわち、縦断面図

に示される角度 A,B それぞれ上流側、下流側とする。 C: 水平面への管路投影の折曲り角、すなわち平面図に示される折曲り角度

符号の取り方 負符号(-)は A,B いずれも水平線より上又は下に向かう場合 正符号(+)は A,B いずれか一方が下に向かい他が上に向かっている場合。

B

(+)

管路

A B

(-)

C