p 進l 関数の構成 - u-toyama.ac.jpiwao/ss2003/bin/reports/ss03rep...p-進l-関数の構成...

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p-L-関数の構成 [Iwa1] [Iwa2] -Leopoldt [KL] p- L- § 1. Kummer 合同式 Riemann ζ (s) Bernoulli B n ζ (1 - n)= - B n n , (1 n Z ) (1.1) p a =1 Kummer [Kum] 定理1 ( Kummer 合同式 )p m n 60 ( mod p - 1) mn a m n ( mod (p - 1)p a-1 ) (1 - p m-1 ) B m m (1 - p n-1 ) B n n ( mod p a ) Z p Kummer 、ゼ p- p- 久保田-Leopoldt p-L-関数 Kummer ζ (s) p- L- ζ (s) Dirichlet L- p- Dirichlet χ f χ Bernoulli B n,χ Q[[T ]] fχ X a=1 χ(a)Te aT e f χ T - 1 = X n=0 B n,χ T n n! (1.2) Dirichlet L- L(s, χ) Bernoulli L(1 - n, χ)= - B n,χ n , (1 n Z ) (1.3) χ 1 f 1 =11(1) = 1 Bernoulli B n = B n,1 p Q Q p- Q p Q p C p Dirichlet 1

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Page 1: p 進L 関数の構成 - u-toyama.ac.jpiwao/SS2003/Bin/Reports/ss03rep...p-進L-関数の構成 水沢靖(早大理工) 本稿の目標は、岩澤[Iwa1] [Iwa2] に基づいて、久保田-Leopoldt

p-進L-関数の構成

水沢 靖( 早大理工 )

本稿の目標は、岩澤 [Iwa1] [Iwa2] に基づいて、久保田-Leopoldt [KL] によって発見された p-進 L-関数とその構成法について解説し、岩澤主予想に向けて考察を行うことである.

§ 1. Kummer合同式

Riemannのゼータ関数 ζ(s)の負の整数点での値は、Bernoulli数Bnを用いて

ζ(1− n) = −Bn

n, ( 1 ≤ n ∈ Z )(1.1)

と表される.これらの値の間には、次のような pの冪による合同関係が存在する.( a = 1

の場合にKummer [Kum] によって与えられた合同式が発端である.)

定理1 ( Kummer合同式 ). 奇素数 pと、m ≡ n 6≡ 0 ( mod p − 1 )なる正の偶数m、n

に対して、ある正の整数 aでm ≡ n ( mod (p− 1)pa−1 )であるならば、

(1− pm−1)Bm

m≡ (1− pn−1)

Bn

n( mod pa )

なる合同関係が成り立ち、両辺共に Zpの元である.

このKummer合同式は、ゼータ関数の負の整数点での値を p-進位相によって比較しているものと考えられる.このようなゼータ関数の p-進的側面を記述するのが、これから述べる久保田-Leopoldt の p-進L-関数である.Kummer合同式はゼータ関数 ζ(s)の値に関するものであるが、p-進 L-関数はより一般に ζ(s)も含めてDirichlet L-関数の p-進的側面を担う関数として定義される.

Dirichlet指標 χに対して、その導手を fχとおく.一般Bernoulli数Bn,χは形式的冪級数環Q[[T ]]における母関数

fχ∑a=1

χ(a)TeaT

efχT − 1=

∞∑n=0

Bn,χT n

n!(1.2)

によって定義され、Dirichlet L-関数 L(s, χ)の負の整数点での値は一般 Bernoulli数を用いて

L(1− n, χ) = −Bn,χ

n, ( 1 ≤ n ∈ Z )(1.3)

と表される.χが単位指標 1である場合には f1 = 1、1(1) = 1と定めておけば、Bernoulli

数Bn = Bn,1の母関数が得られる.以下では各素数 pに対して、有理数体Qの代数閉包Qから p-進数体Qpの代数閉包Qp

の完備化 Cpへの埋め込みを一つ固定して考える.この埋め込みを通して、Dirichlet指標

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は必要に応じてCpに値をとるものとし、また母関数 (1.2)もCp[[T ]]において考える.こうして一般Bernoulli数Bn,χはCpの元としても定義される.各素数 pに対して qを、p 6= 2ならば q = p、p = 2ならば q = 4として定め、ωをそ

のTeichmuller指標とする.即ち a ∈ Z×p に対しては ω(a) ≡ a ( mod q )なる唯一の 1のφ(q)乗根 ω(a) ∈ Zpを対応させ、a ∈ pZpに対しては ω(a) = 0とするZpの指標である( φ

は Euler関数 ).このTeichmuller指標 ωも( Q(ζp−1)のQpへの埋め込みを介して)導手 qのDirichlet指

標とみなすことができ、χ = ωiとして母関数 (1.2)をQp[[T ]]において考えて、一般Bernoulli

数Bn,ωi ∈ Qpが定義される.p-進L-関数の性質を用いることで、Kummer合同式だけでなく次の合同式も導かれる.(これらの合同式の証明は第 5節で与える.)

定理2. 奇素数 pと、n 6≡ 0 ( mod p− 1 )なる正の偶数 nに対して、

B1,ωn−1 ≡ Bn

n( mod p )

なる合同関係が成り立ち、両辺共に Zpの元である.

また、Bernoulli多項式とその母関数

Bn(X) =n∑

i=0

(−1)i

(n

i

)Bi X

n−i,  TeXT

eT − 1=

∞∑n=0

Bn(X)T n

n!(1.4)

を、Bn,χの母関数 (1.2)と比較することにより、fχの任意の倍数 Fχについて

Bn,χ = F n−1χ

Fχ∑a=1

χ(a) Bn

( a

)(1.5)

なる等式が得られる.これを用いることで次の定理が導かれ、特にBernoulli数の分母は完全に決定される.(証明は [Was]または [AIK]等参照)

定理3( Clausen-von Staudtの定理 ). 正の偶数 nに対して

Bn +∑

p−1 |n

1

p∈ Z

である.ここに和は、p− 1が nを割るような素数 pに関する有限和である.

§ 2. 久保田-Leopoldt の p-進 L-関数

| p |p = p−1と正規化されたCpの乗法付値を | |pで表す.また一般に、連結開部分集合D ⊂ Cpを領域と呼ぶ.まず、p-進有理形関数等の定義と、それに関する命題を述べておきたい.

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定義( p-進有理形関数 )領域D上の連続関数 f : D → Cpがp-進有理形関数であるとは、任意の α ∈ Dに対して、ある αの近傍Dαが存在し、任意の s ∈ Dα\{α}で収束する級数によって

f(s) =∞∑

n=k

an(s− α)n, k ∈ Z, ak 6= 0, an ∈ Cp

と表されることを言う.またこの右辺の級数を fのαにおけるLaurent展開と言い、k < 0

の時は αを |k|位の極、akをその留数と言う.さらに Laurent展開が k ≥ 0として取れる時、fはαにおいてp-進解析的であると言う.任意のα ∈ Dにおいて p-進解析的である時、f を領域D上のp-進解析関数と呼ぶ.

命題4.( 証明等の詳細は、[Gou] Prop.4.4.2 を参照 ) 冪級数 f(s) =∞∑

n=0

an sn ∈ Cp[[s]]

は、その収束領域D内の任意の点 α ∈ Dに対して、

f(s) =∞∑

m=0

bm (s− α)m , bm = f (m)(α) =∞∑

n=m

(n

m

)an αn−m ∈ Cp

と表され、右辺の級数はDにおいて収束し、両辺の値は一致する.

次の定理が、久保田-Leopoldt [KL] によって発見された p-進L-関数Lp(s, χ)の定義とその存在を示すものである.

定理5 ( 久保田-Leopoldt の p-進 L-関数 ). Dirichlet指標 χに対して、領域D = {s ∈Cp

∣∣ |s|p < qp−1/(p−1) ( > 1 )}上の p-進有理形関数( χ 6= 1の時は p-進解析関数 )Lp(s, χ)

で、

Lp(1− n, χ) = −(1− χω−n(p)pn−1)Bn,χω−n

n, ( 1 ≤ n ∈ Z )(2.1)

なるものが一意的に存在し、Lp(s,1)はD\{1}上の p-進解析関数で、s = 1で留数 1− p−1

の 1位の極を持つ.

p-進 L-関数が p-進有理形関数(または p-進解析的関数)であることは、領域D = {s ∈Cp

∣∣ |s|p < qp−1/(p−1)}において

Lp(s, χ) =a−1

s− 1+

∞∑n=0

an(s− 1)n, an ∈ Qp, a−1 =

{0 : χ 6= 1

1− p−1 : χ = 1(2.2)

と展開され、χ 6= 1の時は任意の s ∈ Dで、χ = 1の時は任意の s ∈ D\{1}で、上記の級数が収束することから従う.実際に命題4によって、(2.2)式で表される p-進 L-関数が上記の定義の p-進有理形関数( または p-進解析関数 )であることがわかる.特に、任意のα ∈ D\{1}に対して領域Dα = { s ∈ Cp

∣∣∣ | s− α |p < |1− α|p } ⊂ D\{1}において

1

s− 1= − 1

1− α· 1

1−( s− α

1− α

) = − 1

1− α

∞∑i=0

( s− α

1− α

)i

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と Laurent展開されるので、Lp(s,1)はD\{1}上の p-進解析関数である.また p-進L-関数が p-進解析関数として一意的に定義されるのは、次の定理による(証明は複素関数論の場合と同様である).

定理6 ( 一致の定理 ). 領域D ⊂ Cp上の p-進解析関数 f(s)の零点の集合がD内に集積点を持つならば、f(s)は恒等的に零関数である.

証明  領域D ⊂ Cp上の p-進解析関数 f(s)の零点の集合がD内に集積点αを持つとする.f(s)が零関数でないとすると、αの近傍Dα ⊂ Dにおいて

f(s) = (s− α)kf(s) , f(s) =∞∑

n=0

an (s− α)n , k ≥ 0 , a0 6= 0

と表される.αは集積点なので、f(s)の零点から成る点列 {αn }n ⊂ Dα で、αn 6= α、lim

n→∞αn = αなるものが取れる.すると (αn − α)kf(αn) = f(αn) = 0ゆえ f(αn) = 0とな

り、a0 = f(α) = limn→∞

f(αn) = 0となって矛盾.よって f(s)は恒等的に零関数である.■

負の整数全体は領域D = {s ∈ Cp

∣∣ |s|p < qp−1/(p−1)}内に集積点を持つので、上記の一致の定理によって (2.1)式を充たすp-進解析関数は一意的に定まる.さらにχが奇指標( χ(−1) =

−1)である場合、母関数 (1.2)から全てのn ≥ 1に対してBn,χω−n = 0であることが示されるので、(2.1)式と一致の定理から奇指標 χに対する p-進 L-関数 Lp(s, χ)は恒等的に零関数となる.また (2.1)式と (1.3)式を比較して、n ≡ j ( mod p− 1 ), 0 ≤ j < p− 1とすると

Lp(1− n, χ) = (1− χω−j(p)pn−1)L(1− n, χω−j), ( 1 ≤ n ∈ Z )(2.3)

となる.即ち p-進 L-関数 Lp(s, χ)は各整数点 1 − nにおいて、nの p − 1を法とした値 j

によって、Dirichlet L関数L(s, χω−j)と結びついている.また p-進的な収束性を保つために、Dirichlet L関数の Euler積表示

L(s, χω−j) =∞∑

N=1

χω−j(N)

N s=

l:素数

(1− χω−j(l)l−s)−1, Re(s) > 1(2.4)

において p |N なる項に寄与する Euler因子が、補正項 1 − χω−j(p)pn−1として (2.1)および (2.3)式に現れていると考えられる.ゼータ関数 ζ(s)の s = 1での留数は 1であったが、Lp(s,1)の s = 1での留数 1− p−1も、補正による Euler因子と考えられる.また第5節で見るように、前述のKummer合同式に現れる補正項もこの Euler因子に他ならない.偶指標 χ 6= 1に対するDirichlet L関数の s = 1での値は

L(1, χ) = −τ(χ)

fχ∑a=1

χ−1(a) log|1− ζafχ| , τ(χ) =

fχ∑a=1

χ(a)ζafχ

(2.5)

と表され、L(1, χ) 6= 0であることが知られている.ここに τ(χ)はGauss和である.この公式はDirichlet L関数と円単数とを結びつける重要な意味を持つ公式であるが、p-進L関

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数の s = 1での値も Euler因子の補正によって

Lp(1, χ) = −(1− χ(p)p−1)τ(χ)

fχ∑a=1

χ−1(a) logp(1− ζafχ

)(2.6)

(ここに logpは p-進対数関数)と表され、Lp(1, χ) 6= 0であることも知られている.このLp(1, χ) 6= 0であるという事実は、Leopoldt予想および p-進解析的類数公式を通して導かれる.このことに関して簡単に述べておこう.

有限次代数体Kと素数pに対して、p上の各素イデアルpによる完備化Kpを考える.局所体Kpの局所単数群Up = {u ∈ Kp

∣∣ |u |p = 1 }と主局所単数群U1,p = {u1 ∈ Kp∣∣ | u1−1 |p <

1 }が定義され、U =∏

p|pUpおよび U1 =

∏p|p

U1,pが定まる.Kの単数群Eを、diagonalに

Uへ埋め込む(即ち、各成分にコピーする)ことによってUの部分群と見なし、E1 = E∩ U1

の U1における閉包 E1を定める.この時、U1と E1は乗法に関してZp加群となる.KのCへの実な埋め込みの個数を r1、虚な埋め込みの個数を 2 r2とすると、Dirichletの単数定理によりE1のZ-rank は r1 + r2 − 1であるが、E1のZp-rank についても

Leopoldt予想  Zp-rank E1 = r1 + r2 − 1

であろうと予想されている.δ = r1 + r2 − 1− (Zp-rank E1 ) ≥ 0と定めると、類体論からKの独立な Zp拡大は丁度 r2 + 1 + δ本存在することが示される.現在、Leopoldt予想はKが有理数体上もしくは虚2次体上のアーベル拡大である場合に成立することが知られており( Ax-Brumerの定理 )、特に実アーベル体の Zp拡大は円分 Zp拡大以外には存在しないことがわかる.以下ではKが実アーベル体である場合を考えよう.即ち r1 = n = [K : Q]、r2 = 0である.Kの実数体Rへの埋め込み、即ち自己同型を σ1, σ2, · · · , σnとする.p上のKの素イデアル pと、K ⊂ CからKp ⊂ Cpへの埋め込みを与えておく.一般にUp = W ×U1,p( W

は位数が pと素なKp内の 1の冪根全体 )と分解されるので、u ∈ Upに対して u = w〈u〉、w ∈ W、〈u〉 ∈ U1,pと表す.K の基本単数系 ε1, ε2, · · · , εn−1に対して、与えられた埋め込みを通してp-進単数基準 Rp(K) = det( logp 〈εσj

i 〉 )1≤i, j≤n−1が定義される.Kに対応するDirichlet指標群をXとすると、次の3条件が同値となる.

Lp(1, χ) 6= 0 ( ∀χ ∈ X\{1} ) ⇐⇒ Rp(K) 6= 0 ⇐⇒ Zp-rank E1 = Z-rank E1 = n− 1

後者の同値関係は、一次独立性を行列式で表すことで得られる.一方、前者の同値関係は次の公式を通して得られる.h(K)と d(K)をそれぞれK の類数と判別式とする時(埋め込みK → Cpの適当な取り替えによって)、

p-進解析的類数公式  2n−1h(K)Rp(K)√

d(K)=

χ∈X\{1}( 1− χ(p)p−1 )−1Lp(1, χ)

が成り立つ.この p-進解析的類数公式にも、Euler因子 1 − χ(p)p−1が現れている.K に対する Leopoldt予想が肯定的であることは上記の3条件が成立することを意味し、特に

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Lp(1, χ) 6= 0が成立する.(2.6)式からもわかるように、このように p-進L-関数は単数群とも深く結びついている.(以上の詳細については、[Was]等を参照.)

§ 3. 岩澤冪級数の構成

Dirichlet指標 χを取り、fχと qの最小公倍数 lcm(fχ, q)を、

lcm(fχ, q) = dqpe, e ≥ 0, (p, d) = 1(3.1)

と表す.この dについて κ = 1 + dq、qn = dqpn ( n ≥ 0 )と定める.各自然数 nに対して、自然な準同型の核

Ker(

(Z/qpnZ)× → (Z/qZ)× : a mod qpn 7→ a mod q)

(3.2)

は位数 pn の巡回群であり、κ mod qpn で生成される.pと素な各整数 aに対して 〈a〉 =

ω(a)−1a ∈ Zp と定めると、〈a〉 ≡ 1 ( mod q )であるので 〈a〉mod qpn は (3.2)に含まれ、生成元を用いて一意的に

〈a〉 ≡ κin(a) ( mod qpn ), 0 ≤ in(a) < pn(3.3)

と表される.すると次の可換図式のように対応するGalois群およびその元が定まる.

a mod qn 7→(

a mod d , ω(a) mod q , 〈a〉mod qpn)

3 3 3 3(Z/qnZ)× ' (Z/dZ)× × (Z/qZ)×︸ ︷︷ ︸ ×

⟨κ mod qpn

←− ∼

'

(Z/dqZ)×

' ←− ∼

Gal(Q(ζqn)/Q) ' Gal(Q(ζdq)/Q) × Gal(Q(ζqn)/Q(ζdq))

= =

∆ Γn

∈ ∈ ∈

σa 7→(

δ(a) : ζdq 7→ ζadq , γn(a) : ζqn 7→ ζκin(a)

qn

)

以下ではここに現れる同型を全て同一視し、直積成分は部分群と見なして

σa = δ(a)γn(a) ∈ Gal(Q(ζqn)/Q) = ∆× Γn(3.4)

と表す.さらに χは qn ( n ≥ e )を法として定義された指標として考えると、対応する指標群も分解されるので一意的に

χ = θψ ∈ (Z/qnZ)× = ∆× Γn, θ ∈ ∆, ψ ∈ Γn(3.5)

と分解される.θ ∈ ∆は第一種の指標と呼ばれ、導手はdまたは qdである.特にTeichmuller

指標 ωは第一種の指標である.一方 ψ ∈ Γnは第二種の指標と呼ばれ、導手は qpe ( e ≥ 1 )

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または 1であり、対応する体はQ(ζqpe)に含まれるQ上 pe次の実巡回拡大体Qe( 円分Zp

拡大Q∞/Qの e-th layer )であるので常に偶指標である.以後χは偶指標( 即ち第一種の指標 θも偶指標 )と仮定する.さて、円分拡大Q(ζqn)/Qにおける Stickelberger元の−1倍を

ξn = −∑

σa∈Gal(Q(ζqn )/Q)

{a

qn

}σ−1

a ∈ Q[Gal(Q(ζqn)/Q)]

= − 1

qn

0<a<qn, (a,qn)=1

a δ(a)−1γn(a)−1 ∈ Q[∆× Γn]

(3.6)

とおく.ここに{

x}は有理数 xの小数部分、即ち [ x ]で xを超えない最大の整数を表し

た時、{

x}

= x− [ x ]として定まる.ここで ξn ∈ Qp[∆× Γn]と考えて、奇指標 ωθ−1 ∈ ∆

に関するQp[∆]の冪等元

εωθ−1 =1

|∆|∑

δ∈∆

ωθ−1(δ) δ−1 ∈ Qp[∆] ⊂ Qp[∆× Γn](3.7)

を作用させることにより、

εωθ−1ξn = ξn(θ) εωθ−1

ξn(θ) = − 1

qn

0<a<qn, (a,qn)=1

a θω−1(a)γn(a)−1 ∈ Qp[Γn](3.8)

なるQp[Γn]の元 ξn(θ)( εωθ−1-固有値 )が得られる.これを補正して計算した元

ηn(θ) = (1− κγn(κ)−1) ξn(θ)

=∑

0<a<qn, (a,qn)=1

{a

qn

}−

{aκ

qn

})θω−1(a)γn(aκ)−1 ∈ Qp[Γn]

(3.9)

を定める.m ≥ n ≥ 0に対して、自然な制限写像 φm,n : Γm → Γnから群環の全準同型

φm,n : Qp[Γm] → Qp[Γn], γm(a) 7→ γn(a)(3.10)

が誘導される.また第一種の指標 θが値をとる局所体Qp(ζfθ)の整数環をOとおく.

定理7.第一種偶指標 θに対して、( i ) ηn(θ) ∈ 2O[Γn]、( ii ) ξn(θ) ∈ 2O[Γn], θ 6= 1、(iii)

φm,n(ηm(θ)) = ηn(θ), φm,n(ξm(θ)) = ξn(θ), ( m ≥ n ≥ 0 ) が成り立つ.

証明 以下、aで表される整数は常に 0 < a < qn, (a, qn) = 1なる条件は充たしているものとする.

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(3.9)式においてC(a) = κ

{a

qn

}−

{aκ

qn

}∈ Zであることから、p 6= 2である場合に ( i )

が成立することは明らか.p = 2として (3.9)式から ηn(θ)を計算すると、

ηn(θ) =∑

a≤qn/2

C(a) θω−1(a)γn(aκ)−1 +∑

a≤qn/2

C(qn − a) θω−1(qn − a)γn((qn − a)κ)−1

=∑

a≤qn/2

(C(a)− C(qn − a)

)θω−1(a)γn(aκ)−1

となる.{

a

qn

}+

{qn − a

qn

}= 1,

{aκ

qn

}+

{(qn − a)κ

qn

}= 1であることに注意して計算

するとC(a)− C(qn − a) = 2C(a)− qn ∈ 2Zpであるので、p = 2の場合にも ( i )が成立.γn(a) = γn(qn − a)、θω−1(qn − a) = −θω−1(a)、〈qn − a〉 = 〈a〉 − ω(a)−1qnに注意して

ξn(θ)を計算すると、

ξn(θ) = − 1

qn

∑a

〈a〉 θ(a)γn(a)−1

= − 1

qn

( ∑

a≤qn/2

〈a〉 θ(a)γn(a)−1 +∑

a≤qn/2

〈qn − a〉 θ(qn − a)γn(qn − a)−1)

= − 1

qn

(2

a≤qn/2

〈a〉 θ(a)γn(a)−1 − qn

a≤qn/2

ω(a)−1θ(a)γn(a)−1)

= − 2

qn

a≤qn/2

〈a〉 θ(a)γn(a)−1 +∑

a≤qn/2

θω−1(a)γn(a)−1

となる.ここで θ 6= 1を仮定すると、第一項の和は∑

a≤qn/2

〈a〉 θ(a)γn(a)−1 =∑

b mod qn ∈Γn

( ∑

a≤qn/2, 〈a〉≡b (mod qn )

〈a〉 θ(a)γn(a)−1)

≡∑

b mod qn ∈Γn

( ∑

a≤qn/2, 〈a〉≡b (mod qn )

b θ(a)γn(b)−1)

mod qnO[Γn]

=∑

b mod qn ∈Γn

( ∑

a≤qn/2, 〈a〉≡b (mod qn )

θ(a))

b γn(b)−1

となり、各 b mod qn ∈ Γnに対して指標の直交性から∑

a≤qn/2, 〈a〉≡b (mod qn )

θ(a) =1

2

〈a〉≡b (mod qn )

θ(a) =1

2

δ ∈∆

θ( δ ) = 0

である.よって∑

a≤qn/2

〈a〉 θ(a)γn(a)−1 ≡ 0 mod qnO[Γn]、即ち− 2

qn

a≤qn/2

〈a〉 θ(a)γn(a)−1 ∈

2O[Γn]となる.これで p 6= 2である場合には ( ii )が成立することがわかるが、p = 2として第二項の和を計算すると、

a≤qn/2

θω−1(a)γn(a)−1 =∑

b mod qn ∈Γn

( ∑

a≤qn/2, 〈a〉≡b (mod qn )

θω−1(a)γn(a)−1)

=∑

b mod qn ∈Γn

( ∑

a≤qn/2, 〈a〉≡b (mod qn )

θω−1(a))γn(b)−1

≡∑

b mod qn ∈Γn

( ∑

a≤qn/2, 〈a〉≡b (mod qn )

θ(a))γn(b)−1 mod 2O[Γn]

8

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となり、第一項の計算と同様に指標の直交性から 0 mod 2O[Γn]であることがわかり、p = 2

の場合にも ( ii )が成立する.また任意のm ≥ n ≥ 0に対して

φm,n(ξm(θ)) = − 1

qm

0<a<qm, (a,qm)=1

a θω−1(a)γn(a)−1

= − 1

qm

0<b<qn, (b,qn)=1

0≤i<pm−n

(b + iqn) θω−1(b)γn(b)−1

= − 1

qm

0<b<qn, (b,qn)=1

θω−1(b)( ∑

0≤i<pm−n

(b + iqn))γn(b)−1

= − 1

qm

0<b<qn, (b,qn)=1

θω−1(b)qm

qn

(b + qn

pm−n − 1

2

)γn(b)−1

= ξn(θ)− pm−n − 1

2

0<b<qn, (b,qn)=1

θω−1(b)γn(b)−1

となって、第二項の和は∑

b

θω−1(b)γn(b)−1 =∑

b

θω−1(qn − b)γn(qn − b)−1 = −∑

b

θω−1(b)γn(b)−1

ゆえ 0となるので φm,n(ξm(θ)) = ξn(θ)が成立.また φm,n(1− κγm(κ)−1) = 1− κγn(κ)−1であるので φm,n(ηm(θ)) = ηn(θ)も言えて、(iii)が成立する.■

(3.9)で与えられた射影系 φm,nによって、円分 Zp拡大のGalois群

Γ = Gal(Q(ζdp∞)/Q(ζdq)) = lim←−

Γn ' κZp = 1 + pZp ' Zp

とその位相的生成元 γ = lim←−

γn(κ) : ζqn 7→ ζκqn

(∀n ≥ 0 )が得られるが、その完備離散付値

環O上の完備群環O[[Γ]] = lim←−

O[Γn]は、O上の一変数冪級数環Λ = O[[T ]]と同型になる

のであった(伊藤氏の講演参照).さらに定理7によって、

lim←−

ξn(θ) ←→ f(T, θ) , θ 6= 1

lim←−

ηn(θ) ←→ g(T, θ)

1− κγ−1 ←→ 1− κ(1 + T )−1

γ ←→ 1 + T

3 3

O[[Γ]] ' Λ

← ←

O[Γn] ' Λ/(1 + T )pn − 1

∈ ∈

γn(κ) ←→ 1 + T mod (1 + T )pn − 1

ηn(θ) ←→ g(T, θ) mod (1 + T )pn − 1

(3.11)

9

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なる図式とそれぞれに対応する元が定まる.θ 6= 1の時はΛの元として

f(T, θ) =g(T, θ)

1− κ(1 + T )−1(3.12)

であるが、θ = 1の時にはこの (3.12)式を f(T,1)の定義とする.こうして Stickelberger元から得られた冪級数 f(T, θ)は、岩澤冪級数と呼ばれる.また図式 (3.10)の最下段の元の対応と (3.9)式によって、

g(T, θ) ≡∑

0<a<qn, (a,qn)=1

{a

qn

}−

{aκ

qn

})θω−1(a)(1 + T )−1−in(a)

mod (1 + T )pn − 1

(3.13)

なる合同式を得る.

§ 4. p-進 L-関数の構成

p-進対数関数は冪級数

logp(1 + X) =∞∑

n=1

(−1)n+1Xn

n(4.1)

で定義され、収束半径は 1である( ∵ n√| (−1)n+1/n |p = p

vp(n)

n → 1, n →∞ ).よってlogp(1 + X)は 1 + X = κ = 1 + dqで収束し、その値は

| logp κ |p = | logp(1 + dq) |p ≤ | dq |p =1

q(4.2)

と評価される.一方、p-進指数関数も冪級数

exp(X) =∞∑

n=0

Xn

n!(4.3)

によって定義され、 n− p

p− 1− log n

log p< vp(n!) <

n

p− 1, p

n−pp−1

− log nlog p <

∣∣∣ 1

n!

∣∣∣p

< pn

p−1  と

評価されるので収束半径は p−1/(p−1) ( < 1 )である(詳細は [Was]または [Gou]を参照).さ

らに∣∣∣ 1

n!

∣∣∣p∈ pZであるので、p = 2の場合には

∣∣∣ 1

n!

∣∣∣p≤ 2n−1であることから一般に

∣∣∣ 1

n!

∣∣∣p≤ q−1p

np−1

+1 ( p 6= 2の時は “ < ” )(4.4)

と評価される.(4.2)より、領域D = {s ∈ Cp

∣∣ | s |p < qp−1/(p−1) }において

| s logp κ |p = | s |p · | logp κ |p < qp−1/(p−1) · 1

q< p−1/(p−1)(4.5)

10

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であるので、この領域D上の p-進解析関数

κs = exp( s logp κ ) =∞∑

n=0

( logp κ )n

n!sn(4.6)

が定義される.特に sが整数の時の κsの値は、通常の κを s乗した値に一致する.ここで

κs − 1 =(

1 +∞∑

n=2

( logp κ )n−1

n!sn−1

)( s logp κ )

であるが、自然数 n ≥ 2に対して

n = (p− 1) k + j , 1 ≤ j ≤ p− 1( p = 2の時は n = k + 1、j = 1とする.)

と表すと、(4.4)から∣∣∣ 1

n!

∣∣∣p≤ pkと表され、s ∈ Dに対して

∣∣∣ (logp κ)n−1

n!sn−1

∣∣∣p

=∣∣∣ 1

n!

∣∣∣p· | logp κ |n−1

p · | s |n−1p

< pk · q−n+1 · qn−1p−n−1p−1 = pk · p−k− j−1

p−1 < p−j−1p−1 ≤ 1

となる.よって n ≥ 2に対して

∣∣∣ (logp κ)n

n!sn

∣∣∣p

< | s logp κ |p、 および ∣∣∣

∞∑n=2

(logp κ)n−1

n!sn−1

∣∣∣p

< 1(4.7)

であり、特に s = 1 ∈ Dとして κsの係数( logp κ )n

n!∈ Zpを評価すると、

∣∣∣ ( logp κ )n

n!

∣∣∣p≤ | logp κ |p ≤ 1

q

となる.よって、

κs ∈ 1 + q sZp[[s]]、 および  |κs − 1 |p = | s logp κ |p < p−1/(p−1) ( ∀s ∈ D )(4.8)

となる.ここで第二種の指標 ψに対して、1の p冪乗根

ζψ = ψ(κ)−1 = χ(κ)−1(4.9)

を定め、局所体Qp(ζψ)の素元を π = ζψ − 1、整数環をOψとおくと、(4.6)より ζψκs− 1 ∈πOψ[[s]]となるので、命題4を用いて s− 1で展開することによって

ζψκs − 1 =∞∑

n=0

cn (s− 1)n, cn ∈ πOψ (∀n ≥ 0 )(4.10)

なる表示を得る.この右辺の冪級数も領域Dにおいて収束することに注意する.

11

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定理8( 岩澤関数としての p-進 L-関数 ). 偶指標 χ = θψ( θは第一種、ψは第二種の指標 )に対して、θに関する岩澤冪級数を f(T, θ)とする.この時、

Lp(s, χ) = f( ζψκs − 1 , θ) .(4.11)

( このように ζψκs − 1を冪級数に代入して得られる関数を、岩澤関数と呼ぶ. )

証明 step 1( p-進解析性 ) θ 6= 1である時、f(T, θ) =∞∑i=0

zi Tn ∈ Λ = O[[T ]]であっ

て、任意の s ∈ Dに対して (4.8)から

| ζψκs − 1 |p = | ζψ( κs − 1 ) + ( ζψ − 1 ) |p < 1

である.よって | ( ζψκs − 1 )i |p → 0 ( i →∞ )となり、f( ζψκs − 1 , θ)は領域Dにおいて収束する.また、

f( ζψκs − 1 , θ) =∞∑i=0

zi

( ∞∑n=0

cn (s− 1)n)i

=∞∑i=0

∞∑n=0

zi

( ∑t1+t2+···+ti=n

ct1ct2 · · · cti

)(s− 1)n

となり、∣∣∣

∑t1+t2+···+ti=n

ct1ct2 · · · cti

∣∣∣p≤ | π |ip → 0, ( i →∞ ) であるので

an =∞∑i=0

zi

( ∑t1+t2+···+ti=n

ct1ct2 · · · cti

)

は収束し、f( ζψκs − 1 , θ) =∞∑

n=0

an (s− 1)n ∈ Qp[[s− 1]]と表される.

θ = 1である時、同様に g( ζψκs − 1 ,1)がQp[[s− 1]]の元として表され、領域Dにおい

て収束することがわかる.f(T,1) =g(T,1)

1− κ (1 + T )−1であったので、

f( ζψκs − 1 ,1) =ζψκs g( ζψκs − 1 ,1)

ζψκs − κ

となり、分母と分子の関数は共にDにおいて収束する s− 1の冪級数で表される.ここで

分母を与えている関数1

ζψκs − κについて考えよう.ψ 6= 1の時、ζψ 6= 1であるので分母

はDにおいて零点を持たない( ∵ ζψκs − κ = 0 ⇒ κpn(s−1) = 1 ( n À 1 ) ⇒ s = 1 ).また、|κ− ζψ |p = | (1− ζψ) + dq |p = | 1− ζψ |p ≥ | 1− ζp |p = p−1/(p−1)と (4.8)より、s ∈ D

において∣∣∣ ζψ(κs − 1)

κ− ζψ

∣∣∣p

=|κs − 1 |p|κ− ζψ |p < 1となるので

1

ζψκs − κ= − 1

κ− ζψ

· 1

1−( ζψ(κs − 1)

κ− ζψ

) = − 1

κ− ζψ

·∞∑i=0

( ζψ(κs − 1)

κ− ζψ

)i

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と展開できる.さらに (4.8)からζψ(κs − 1)

κ− ζψ

∈ q

πOψ[[s]]であって、命題4を用いて s− 1で

展開してζψ(κs − 1)

κ− ζψ

=∞∑

n=0

cn (s− 1)n, cn ∈ q

πOψ (∀n ≥ 0 )と表示される.よって θ 6= 1

の時と同様の議論により、1

ζψκs − κは s ∈ Dにおいて収束する s− 1の冪級数に展開され

る.即ち、領域Dにおいて f( ζψκs − 1 ,1) ∈ Qp[[s− 1]]である.一方、ψ = 1 即ち χ = 1の時、D\{1}において

1

ζ1κs − κ=

1

κ(s− 1)· 1( κs−1 − 1

s− 1

) =(κ logp κ)−1

s− 1· 1

1 +( ∞∑

n=2

(logp κ)n−1

n!(s− 1)n−1

)

と表される( κs κ−1 = κs−1 および ζ1 = 1 であることに注意 ).s− 1 ∈ Dに対して (4.7)

から∣∣∣

∞∑n=2

(logp κ)n−1

n!(s− 1)n−1

∣∣∣p

< 1 であり、

1

ζ1κs − κ=

(κ logp κ)−1

s− 1·∞∑i=0

(−

∞∑n=2

(logp κ)n−1

n!(s− 1)n−1

)i

と展開される.(4.7)等から n ≥ 2に対して∣∣∣ (logp κ)n−1

n!

∣∣∣p

< 1であるので、先の場合と

同様に1

ζ1κs − κはD\{1}において収束する 1

s− 1Qp[[s − 1]]の元に展開される.よって、

f( κs − 1 ,1)も領域D\{1}上で収束する s− 1の Laurent級数で表され、s = 1で 1位の極をもつ.以上により、任意の偶指標 χに対して f( ζψκs − 1 , θ)は

f( ζψκs − 1 , θ) =∞∑

n=−1

an (s− 1)n an ∈ Qp, ( χ 6= 1の時は a−1 = 0 )

なる領域D上の p-進有理形関数( χ 6= 1の時は p-進解析関数 )である.

step 2( 負の整数点での値 )nを自然数とし、0 < a < qn, (a, qn) = 1なる各整数 aに対し

て、κa = (1+dq)aを qnで割った余りを a1、商を a2で表す.すると a2 = κ

{a

qn

}−

{aκ

qn

}

であり、κin(a1) ≡ 〈a1〉 ≡ 〈κa〉 ≡ κin(a)+1 ( mod qn )即ち in(a1) = in(a)+1、また θω−1(a) =

θω−1(a1)であるので、(3.13)式より、

g(T, θ) ≡∑

0<a<qn, (a,qn)=1

a2 θω−1(a1)(1 + T )−in(a1) mod (1 + T )pn − 1

なる表示を得る.nは十分大きな自然数とし、これに T = ζψκ1−m − 1 ( m ∈ N )を代入して計算すると

(1 + T )pn − 1∣∣∣

T=ζψκ1−m−1= (ζψκ1−m)pn − 1 = ((1 + dq)pn

)1−m − 1 ≡ 0 ( mod qn )

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であるので、qnを法として

g( ζψκ1−m − 1 , θ) ≡∑

a

a2 θω−1(a1) ζ−in(a1)ψ (κin(a1))m−1

≡∑

a

a2 ω−1(a1) θ(a1) ψ(a1) 〈a1〉m−1 ≡∑

a

a2 χω−m(a1) am−11 ( mod qn )

となる.一方、(κa)m = ( a1 + a2qn )m ≡ am1 + mam−1

1 a2qn ( mod q2n )ゆえ q2

n を法として

g( ζψκ1−m − 1 , θ) mqn ≡∑

a

χω−m(a1) mam−11 a2qn

≡∑

a

χω−m(a1)(

(κa)m − am1

)≡

∑a

χω−m(κa) (κa)m −∑a1

χω−m(a1) am1

≡ ( χω−m(κ) κm − 1 )∑

a

χω−m(a) am ≡ ( ζ−1ψ κm − 1 )

∑a

χω−m(a) am ( mod q2n )

となるので、

g( ζψκ1−m − 1 , θ) ≡ ( ζ−1ψ κm − 1 )

1

mqn

∑a

χω−m(a) am ( modqn

m)

するとqn

m→ 0 ( n →∞ )ゆえ、この式は右辺が左辺に収束することを意味し、

f( ζψκ1−m − 1 , θ) =g( ζψκ1−m − 1 , θ)

1− ζ−1ψ κm

= − 1

mlim

n→∞1

qn

0<a<qn, (a,qn)=1

χω−m(a) am

(4.12)

となる.ここで (1.5)式から

Bm,χω−m =1

qn

qn∑a=1

χω−m(a) qmn Bm

( a

qn

)(4.13)

なる表示が得られるが、(1.4)式と定理3をふまえて右辺を qn−1を法として計算すると、

Bm,χω−m =1

qn

qn∑a=1

χω−m(a)(

am − m

2am−1 qn + q2

n( · · · ))

≡ 1

qn

qn∑a=1

χω−m(a) am − m

2

qn∑a=1

χω−m(a) am−1 ( mod qn−1 )

となることがわかる.第二項の和は

qn∑a=1

χω−m(a) am−1 ≡qn∑

a=1

χω−m(−a) (−a)m−1 ≡ −qn∑

a=1

χω−m(a) am−1( mod qn )

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となるので qn−1を法として 0である.n →∞に関して右辺が左辺に収束するので、( 1− χω−m(p)pm−1 ) Bm,χω−m

= ( 1− χω−m(p)pm−1 ) limn→∞

1

qn

qn∑a=1

χω−m(a) am

= limn→∞

1

qn

qn∑a=1

χω−m(a) am − χω−m(p)pm−1 limn→∞

1

qn−1

qn−1∑a=1

χω−m(a) am

= limn→∞

1

qn

qn∑a=1

χω−m(a) am − limn→∞

1

qn

qn−1∑a=1

χω−m(pa) (pa)m

= limn→∞

1

qn

0<a<qn, (a,qn)=1

χω−m(a) am

となり、(4.12)式と合わせて

f( ζψκ1−m − 1 , θ) = −( 1− χω−m(p)pm−1 )Bm,χω−m

m(4.14)

を得る.ここで χ = 1と仮定する.すると d = 1、qn = qpn、ζψ = 1であり、任意の整数 aに対して 1(a) = 1である.s = 1−m、m = (p− 1)pM とおくことにより、(4.12)から

lims→1

(s− 1) f( κs − 1 ,1) = limM→∞

− (p− 1)pM f( κ1−(p−1)pM − 1 ,1)

= limM→∞

limn→∞

1

qpn

0<a<qpn, (a,p)=1

1(a) a(p−1)pM

= limn→∞

1

qpn

0<a<qpn, (a,p)=1

limM→∞

〈a〉(p−1)pM

= limn→∞

1

qpn

0<a<qpn, (a,p)=1

1

= limn→∞

(p− 1)qpn−1

qpn= 1− 1

p

となり、f( κs − 1 ,1)の s = 1での留数は 1− p−1である.以上のことと一致の定理から、p-進解析関数 f( ζψκs − 1 , θ)は定理5で述べた p-進L-関

数に他ならず、定理8および定理5と (2.2)式の表示が同時に証明された.■

§ 5. Kummer合同式の証明

岩澤関数として構成された p-進L-関数の解析的な性質から、Kummer合同式等が簡潔に導かれる.以下、 pは奇素数とする.

定理1の証明 m ≡ n 6≡ 0 ( mod p− 1 )、m ≡ n ( mod (p− 1)pa−1 )なる正の偶数m、nと自然数 aに対して、(4.8)より κs ∈ 1 + p sZp[[s]]であったので、

( κ1−m − 1 )− ( κ1−n − 1 ) = p(m− n)× ( p-進整数 ) ≡ 0 ( mod pa )

15

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である.岩澤冪級数 f(T, ωm)の係数は p-進整数なので定理5と定理8から

(1− pm−1)Bm

m= −Lp(1−m,ωm) = −f( κ1−m − 1 , ωm)

≡ −f( κ1−n − 1 , ωn) = −Lp(1− n, ωn) = (1− pn−1)Bn

n( mod pa )

となり、両辺共に Zpの元である.これでKummer合同式が証明された.■

定理2の証明  n 6≡ 0 ( mod p− 1 )なる正の偶数 nに対して、κs ∈ 1 + p sZp[[s]]であることから κ1−n − 1 ≡ 0 ( mod p )である.岩澤冪級数 f(T, ωn)の係数は p-進整数なので定理5と定理8から

B1,ωn−1 = ( 1− ωn−1(p) ) B1,ωn−1 = −Lp(0, ωn) = −f(0, ωn)

≡ −f( κ1−n − 1 , ωn) = −Lp(1− n, ωn) = (1− pn−1)Bn,1

n

≡ Bn

n( mod p )

となり、両辺共に Zpの元である.■

§ 6. 岩澤主予想に向けて

解析的類数公式から見られるように、Dirichlet L-関数は Bernoulli数だけでなく、アーベル体の類数および単数群と深く関係していた(木村氏の講演参照).一方、岩澤冪級数、即ち p-進 L-関数を構成している Stickelberger元は、イデアル類群のGalois加群としてのannihilatorであった(Stickelbergerの定理、山本氏の講演参照).このことから、p-進 L-

関数がイデアル類群の構造とも深く関わってくることが見て取れる.さらに (2.6)式からは、円単数とも関係してくることが示唆される(実際に、p-進L-関数は円単数からも構成される.都地氏の講演参照).実はこれらの関係を記述するのが岩澤主予想であり、その主張は解析的類数公式、Stickelbergerの定理、Herbrand-Ribetの定理などの精密化と考えられる.p-進L-関数はまさに、Dirichlet L-関数が持っていた数論的情報の p-進的側面をより精密に記述する関数であると言えるだろう.以下では上述の p-進L-関数の構成方法に基づき、p-分体の場合における岩澤主予想を考察する.より詳しい解説および一般的な定式化等は、尾崎氏の稿を参照されたい.以下、pは奇素数であると仮定する.

0 ≤ i < p − 1なる整数 iに対して、Teichmuller指標の冪 χ = θ = ω1−iは第一種の指標であり、ωθ−1 = ωiである.i 6= 1ならば fω1−i = pであるので、対応して p-分体の円分 Zp

拡大Q(ζp∞)/Q(ζp)を考え、Galois群

∆ = Gal(Q(ζp)/Q)、 Γ = Gal(Q(ζp∞)/Q(ζp))、 Γn = Gal(Q(ζpn+1)/Q(ζp))

が定まる.κ = 1 + pであり、Γの位相的生成元 γ : ζpn+1 7→ ζ κpn+1 (∀n ≥ 0 )を固定する.ま

た、Λ = Zp[∆][[Γ]]とおき、∆に関する冪等元を

εi =1

p− 1

δ∈∆

ωi(δ) δ−1 ∈ Zp[∆] ⊂ Λ

16

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とおく.各 iに対して、これらを作用させて得られる Λの ωi-成分を、次の同型によって一変数冪級数環Λ = Zp[[T ]]と同一視する.

γ εi ↔ γ ↔ 1 + T

3 3 3

εiΛ = Zp[[Γ]]εi ' Z(i)p [[Γ]] ' Z(i)

p [[T ]] = Λ∈ ∈ ∈

lim←−

ξn(ω1−i) εi ↔ lim←−

ξn(ω1−i) ↔ f(T, ω1−i) ( i 6= 1が奇数の時 )

(6.1)

( 位相群として Z(i)p = Zpだが、Z(i)

p には δ ∈ ∆が ωi(δ)-倍写像として作用する.)

さらに 1でない奇数 iに対してω1−iは第一種偶指標であり、Stickelberger元 ξnの εi-固有値ξn(ω1−i)に対応して、岩澤冪級数f(T, ω1−i)が定まるのであった.この岩澤冪級数f(T, ω1−i)

を用いて p-進 L-関数は

Lp(s, ω1−i) = f( κs − 1 , ω1−i)(6.2)

と表される.一方、円分 Zp拡大Q(ζp∞)/Q(ζp)の n-th layer Q(ζpn+1)のイデアル類群の p-Sylow部分群をAnとし、そのωi-成分をA

(i)n = εiAnで表す.するとノルム写像による射影極限によっ

て岩澤加群

X = lim←−

An =

p−2⊕i=0

X(i) 、 X(i) = εiX = lim←−

A(i)n

が定まる.上記の同一視 (6.1)によって、これらは有限生成 torsion Λ-加群の構造を持つのであった(藤井氏の講演参照).上記の岩澤冪級数 f(T, ω1−i)と有限生成 torsion Λ-加群X(i)に対して、p-分体の場合の岩澤主予想は次のように定式化される.

岩澤主予想( Mazur-Wilesの定理 ) 1 < i < p− 1なる奇数 i に対して、

charΛX(i) = f(T, ω1−i) Λ(6.3)

が成立する.

ここに charΛX(i)は、Λ-加群の構造定理の完全系列

0 −→ ( finite ) −→ X(i) −→⊕

k

Λ/g(i)k Λ −→ ( finite ) −→ 0(6.4)

( g(i)k は p の冪または既約 distinguished多項式の冪であり、

k

は有限直和 )によって定

まる特性イデアル charΛX(i) =∏

k

g(i)k Λである(伊藤氏の講演参照).

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以下では岩澤主予想を仮定せずに、その主張の意味を考察する.また特に断らない限り、i は 1 < i < p − 1なる奇数を表すものとする.Weierstrassの準備定理により、(6.3)の両辺は、それぞれある distinguished多項式 P alg

i 、P anai によって

charΛX(i) = pµalgi P alg

i Λ , pµalgi P alg

i =∏

k

g(i)k , λalg

i = degP algi

f(T, ω1−i) Λ = pµanai P ana

i Λ , λanai = degP ana

i

(6.5)

と表される.ここに現れる多項式の次数 λalgi 、λana

i と p-冪の指数 µalgi 、µana

i が、それぞれの岩澤λ-, µ-不変量であった.この不変量に関して、岩澤主予想を仮定せずに岩澤冪級数の性質および解析的類数公式から次の事実が示される.(これらの定理に代表されるように、岩澤主予想が証明される以前からも岩澤不変量の計算と研究が進められてきた.福田氏の講演、田谷氏の講演、および [Was]を参照)ここに、和は 1 < i < p− 1なる奇数 i を渡る.

定理9. ∑

i

λalgi =

∑i

λanai 、 

∑i

µalgi =

∑i

µanai

定理10( Ferrero-Washingtonの定理 ). µalgi = µana

i = 0

さらに CM体の理論からX(i)は非自明な有限 Λ部分加群を持たないことが知られており(詳細は [Was]等を参照)、よって Zp-加群として

X(i) ' Zλalgi

p 、 Λ/f(T, ω1−i)Λ ' Zλanai

p(6.6)

であることがわかる.以下ではこれらの主張を認めることにする.ここで2つのQp上の線型空間

V algi = X(i) ⊗Qp '

k

Qp[T ]/( g(i)k ) , dimQp

V algi = λalg

i

V anai = Λ/f(T, ω1−i)Λ⊗Qp ' Qp[T ]/(P ana

i ) , dimQpV ana

i = λanai

を定め、T 倍線型作用素 T : x 7→ Tx を考える.単因子論および線型代数から、V algi に関

する固有値の積の p冪部分と固有多項式は

p-det(T |V algi ) = |X(i)/TX(i) | = |A(i)

0 | = pvp(A(i)0 )

char(T |V algi ) =

k

g(i)k = P alg

i

(6.7)

である.一方、f(0, ω1−i) = Lp(0, ω1−i) = −B1,ω−i であるので、V ana

i に関する固有値の積の p冪部分と固有多項式は

p-det(T |V anai ) = |Λ/( T, f(T, ω1−i) ) | = |Zp/f(0, ω1−i)Zp |

= |Zp/(−B1,ω−i)Zp | = pvp(B1,ω−i )

char(T |V anai ) = P ana

i

(6.8)

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となる.ここで、解析的類数公式から得られる等式

h−(Q(ζp)) = 2 p∏

1≤i<p−1 ,奇数

(− 1

2B1,ω−i

)(6.9)

によって、f(0, ω1−i) 6= 0、即ち Tとf(T, ω1−i)は互いに素であることに注意しておく.(6.7)

と (6.8)を比較すると、

V algi V ana

i

p-det(T |V algi ) = pvp(A

(i)0 )

char(T |V algi ) = P alg

i

p-det(T |V anai ) = pvp(B1,ω−i )

char(T |V anai ) = P ana

i

(6.10)

となる.この両者の固有多項式を、

定理11( Stickelbergerの定理 ). pと素な整数 cに対して (c− σc) ξn ∈ Z[Γn]であり、(c− σc) ξnAn = 0 となる.(山本氏の講演参照)

を用いて比較してみよう.σc = δ(c)γn(c)であって、1 ≤ i < p− 1なる奇数 i に対して

(c− ωi(c)γn(c)) ξn(ω1−i)A(i)n = εi( (c− σc) ξnAn ) = 0(6.11)

である.特に 1でない iに対しては、cとして pを法とした原始根をとっておけば

lim←−

(c− ωi(c)γn(c)) = c− ωi(c)(1 + T )i∞(c) ∈ Λ× , c− ωi(c)γn(c) ∈ Zp[Γn]×

であるので、

f(T, ω1−i)X(i) = lim←−

ξn(ω1−i)A(i)n = 0(6.12)

となる.完全列 (6.4)に岩澤冪級数 f(T, ω1−i)を作用させると f(T, ω1−i)( ⊕

k

Λ/g(i)k Λ

)は

有限Λ加群となるが、⊕

k

Λ/g(i)k Λ は非自明な有限Λ部分加群を持たないので

f(T, ω1−i)( ⊕

k

Λ/g(i)k Λ

)= 0(6.13)

となる.このことから、次の系が導かれる.

系12. ( f(T, ω1−i) ) ⊂⋂

k

( g(i)k ) 即ち、P ana

i は P algi の任意の因子 g

(i)k で割り切れる.

さらに、(6.10)の両者をそれぞれ張り合わせた空間⊕

i

V algi 、

⊕i

V anai ( 1 < i < p − 1

なる奇数 i についての直和 )を考える.すると (1.5)から

B1,ω−1 =1

p

p−1∑a=1

aω−1(a) ≡ p− 1

pmodZp

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であること、および A(1)0 = 0( ∵ (6.11)において i = 1、c = κ = 1 + p とすれば

pB1,ω−1A(1)0 = 0 )であることをふまえると、(6.9)式によって

p-det(T |⊕

i

V algi ) =

∏i

pvp(A(i)0 ) =

∏i

pvp(B1,ω−i ) = p-det(T |⊕

i

V anai )

となっている.さらに固有多項式については、定理9から

deg(char(T |

⊕i

V algi )

)= deg

(∏i

P algi

)= deg

(∏i

P anai

)= deg

(char(T |

⊕i

V anai )

)

となり、特に両者のQp上の線型空間としての次元は等しい.このように張り合わせた空間を比較すると、両者はいくらか類似しているように見える.岩澤主予想の主張は (6.10)の両者が一致することに他ならず、張り合わせた空間全体としてだけでなく、指標ωiによる固有空間分解の各成分について両者が等しいことを主張するものである.特に固有値の積の p-冪部分に関しては、

定理13( Herbrand-Ribetの定理 ). 1 < i < p− 1なる奇数 i について、

A(i)0 = 0 ⇔ p 6 | Bp−i

と定理2から

vp(A(i)0 ) = 0 ⇔ vp(B1,ω−i) = 0(6.14)

なる対応が導かれる.実際にこの定理の証明が、Mazur-Wilesの証明の原型となっている(栗原氏の講演参照).以上のような観点から、岩澤主予想は各種の定理の “ 精密化 ”であると言えるだろう.では、ここから岩澤主予想へと続く道において遭遇する困難は何であろうか? ここで次の条件を仮定しよう.

仮定A.  1 < i < p− 1なる奇数 i に対して、“ k1 6= k2 ⇒ ( g(i)k1

, g(i)k2

) = 1 ”

すると上で見たように、各 iに対して P anai は P alg

i で割り切れる.さらに deg(∏

i

P algi

)=

deg(∏

i

P anai

)であるので、各 i についても次数が一致しなければならず、P alg

i = P anai 、

即ち岩澤主予想が成立する.実は上記の仮定Aは非常に強いことを主張しており、例えばP alg

i が重根を持たない場合もしくはX(i)が Λ加群として巡回的である場合には成立するが、岩澤主予想が証明された現在でも常に成り立つかどうかは知られていない.この仮定が必ずしも成立しない状況における困難を克服することによって、岩澤主予想は証明されるのである(青木氏の講演および栗原氏の講演参照).

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参考文献

[AIK] 荒川恒男・伊吹山知義・金子昌信, “ベルヌーイ数とゼータ関数 ”牧野書店, 2001.

[Gou] F. Q. Gouvea, “ p-adic Numbers ” 2nd ed. Universitext, Springer, 1997.

[Iwa1] K. Iwasawa, “ On p-adic L-functions ” Ann. of Math., 89 (1969), 198–205 ( 全集 II 612–619 ).

[Iwa2] K. Iwasawa, “ Lectures on p-adic L-functions ” Ann. Math. Studies #74,

Princeton University Press, 1972.

[KL] T. Kubota and H. Leopoldt, “ Eine p-adische Theorie der Zetawerte ( Teil I:

Einfuhrung der p-adischen Dirichletschen L-Funktionen ) ” , J. Reine. Angew.

Math., 213 (1964), 328–339.

[Kum] E. E. Kummer, “ Uber eine allgemeine Eigenschaft der rationalen Entwick-

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Reine. Angew. Math., 41 (1851), 368–372 ( 全集 I 358–362 ).

[KKS] 黒川信重・栗原将人・斎藤毅, “ 数論3 岩澤理論と保型形式 ” 岩波講座 現代数学の基礎, 岩波書店, 1998.

[Was] L. C. Washington “ Introduction to cyclotomic fields ” 2nd ed. Graduate Texts

in Math. vol.83, Springer-Verlag New York, 1997.

水沢 靖(Yasushi Mizusawa)早稲田大学大学院 理工学研究科 数理科学専攻〒 169-8555 東京都新宿区大久保 3-4-1  e-mail : [email protected]

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