地下経済と gdp 及び景気の相関y-gokan/ono.pdf · 2008. 3. 22. · 2 地下経済とgdp...

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1 地下経済と GDP 及び景気の相関 12230500450 小野英明 12210501175 小村 孟 12210503313 吉澤直晃 目次 はじめに 第1章.地下経済について 第2章.日本国内における地下経済 3 .世界各国における地下経済 おわりに

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地下経済と GDP 及び景気の相関

1223050045-0 小野英明 1221050117-5 小村 孟

1221050331-3 吉澤直晃

目次

はじめに 第1章.地下経済について 第2章.日本国内における地下経済 第 3 章.世界各国における地下経済 おわりに

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地下経済と GDP 及び景気の相関

はじめに 現在の経済学において私たちは経済の状況や景気の判断をする際にGDP統計を最重要視し

ている。GDP 統計は原則として市場で取引された財やサービスの生産を示しているため、

おおよその経済を掴むためには最適な指標である。しかし、経済は GDP 統計に記載されて

いない部分も多数あるため、GDP 統計のみによって景況を判断することは危険である。 実際 1970 年代後半から 80 年代前半のアメリカでは不況が生じ、失業率が高くなったとい

う事例がある。この時、GDP 統計において記載されていない事項があり、実際には好況で

あったにも関わらず、不況だと思い込んだ政府が金融政策の緩和を行ったため、インフレ

がさらに増加し、不況に至った。この原因は GDP 統計で表せられない経済活動が行われた

ことにあり、その中から私たちは地下経済に注目した。 地下経済についての詳細は1章でするが、実際 2004 年に日本国内における地下経済の規

模は約 22.4 兆円に達すると言われている。 日本における地下経済の規模の算出方法は2章で詳しく説明するが、日本においても地

下経済の規模は一時期上昇している。図1と図2から日本における地下経済の GDP の推移

を表している。日本における地下経済の GDP は 90 年頃まで上昇し、その後は下降するか

横ばいになっている。このことから、地下経済は景気がよくなるとともに上昇し、景気が

悪くなると縮小傾向になることが予想される。 図1

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図2

本論文では以上の仮説が正しいかどうかを検証するためにまず1章地下経済の概要を説

明し、2章で日本の地下経済を算出し、3章の世界の地下経済と比較する。 第1章.地下経済について 地下経済とは主に統計に表れない経済活動のことであり、本来市場経済活動に含まれてい

る課税を不当に免れている『脱税』や社会のルールで禁じられている麻薬、売春、密輸等

の犯罪活動から成り立っている。また、この中では脱税による地下経済活動が全体の約半

数を占めている。地下経済を発生させる要因は税率と規制があり、かつてアメリカの経済

学者であるラッファーは税収と税率の関係を曲線で表し、税率が一定の基準を超えてしま

うと人々が働く意欲をなくすため、税収が低下するという説を出した。地下経済について

も同様のことが言え、税率が厳しくなれば脱税する傾向が強まることが予想される。また、

政策による規制緩和や経済格差、雇用状況も地下経済の規模に関わる大きな要因となって

いる。具体的な例としてタイ経済を挙げると、1970~80 代にかけて南部の大都市を中心に

工業化が急速に進展し、工業部門の賃金が農業部門をはるかに上回ったことにより、農業

をしていた若者の多くが南部に流れ込むという現象が生じた。しかし、農村から出てきた

労働者の多くは今までほとんど教育を受けてこなかったことから工場などの正式なところ

で働くことができず、労働環境が不当な所しか働くことができないため、地下経済の拡大

を促進する結果となっている。また、政治情勢の不安が生じ場合、国民は政府を頼らない

生活を実行しようとする。その結果統計上に載らない経済活動が増え、地下経済の規模の

拡大が予想される。 では、次に地下経済の拡大によって生じる問題点を考察する。地下経済の拡大による問

題点は大きく2つあり、1つ目は最初に例を挙げたような景況判断のミスが生じる可能性

があることである。これは地下経済の拡大により、GDP 統計で表示される数値の妥当性が

欠け、経済を正確に判断することが難しくなることである。 2つ目には税収面での問題である。地下経済活動を行っている人々は地下経済によって得

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た利益を税金として支払うことはない。その結果、政府の税収減少、財政赤字の拡大を引

き起こすことが考えられる。税収の減少により政府はさらに増税を課すことが想定され、

脱税をしようとする動きから地下経済の増大が促進される可能性がある。 このような理由で地下経済の拡大は現実の経済に良い影響を及ぼさないことが考えられ

るため、地下経済の規模を拡大させないようにする必要性がある。以上の考えを踏まえた

上で日本国内における地下経済の割合を検証する。 第2章.日本国内における地下経済 冒頭で説明したように、日本国内においても地下経済は存在する。しかし、地下経済と

は本来統計に表れないため、規模の大きさを測定することはかなり困難であるが、今まで

に地下経済の規模を測定する方法はいくつか提案されていて、その中の1つで、通貨的ア

プローチを中心とする間接統計法の1つである『ガットマンの推計方法』による推計を行

う。 ガットマンモデルは、P.M.Gutmann が 1977 年に現金預金比率を用いた計算方法で、要求

払い預金に対する現金通貨の比率に注目し、現金通貨比率の上昇が地下取引における現金

通貨需要の増加をもたらすと考えて開発された推計方法である。ガットマンはこのモデル

の成立条件に 4 つの仮説を設けた。これは当時のアメリカにおいて経済取引のキャッシュ

レス化が進展する中で米国における現金・預金比率が上昇したため、地下経済において現

金需要が拡大すると予想したことが挙げられる。 (1) 地下経済における取引は発覚を防ぐためにすべて現金取引によって行われる。 (2) 地下経済が存在しない基準年を設定する。 (3) 基準年における現金預金比率は正常な値である。 (4) 地上経済における貨幣の所得流通速度と、地下経済における所得の流通速度は等しい。

以上の4つの仮定を基にガットマンの推計方法は次のように定式化することができる。

=

UGDP:地下 GDP、 GDP:公式 GDP M:マネーサプライ M1、 :基準年における現金預金比率 r:ある年における現金預金比率、 A:ある年の要求払い預金

以上の式から算出した地下 GDP を表1に示し、図3は現金預金比率をグラフにしたもの

である。図3より、日本国内における現金預金比率は 1973 年から 1990 年まで右肩上がり

に上昇していることが分かる。また、日本の名目 GDP を推移したグラフ(図5)と、日本

の地下 GDP を推移した(図1)から、名目 GDP に占める地下 GDP の割合が算出される

(図2)。図2によると 1980 年代後半のバブルが発生した頃から 1990 年にかけて地下経済

が急拡大していき、バブルの終焉とともに地下経済は減少傾向をたどっていることが分か

る。図1と図4のグラフは形状が似ていることから、現金預金比率の上昇が地下経済を拡

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大させ、現金預金比率の減少が地下経済を縮小させていることが言える。 また、1973 年から 1990 年まで現金預金比率は上昇した理由については、国民所得と租

税負担率の関係が考えられる。表1と図4より日本の国民所得は 1950 年代、60 年代から

上がり続けてきた。特に 1970 年から 1990 年までの 20 年間の国民所得の増大は 300 兆円

となり、1990 年における国民所得は 1970 年の約7倍となっている。そして、図6で表さ

れている租税負担率は、国税と地方税を合わせた租税負担の国民所得比を示し、国民所得

の増大と比例して 1975 年の 18.3%から 1990 年の 27.4%まで上昇している。1990 年以降

国民所得が減少するにしたがって租税負担率も減少している。これらのことから所得上昇

による高租税負担を回避するために申告漏れ所得や無申告所得が増え、地下経済活動が横

行したと考えられる。また、申告漏れ所得の推移の変化は図7に挙げてあるが、主な要因

は現金による申告漏れ所得や無申告所得が形成されたため、現金通貨需要が増加し現金預

金比率が上昇したことが考えられる。 以上のことから日本における地下経済の拡大は現金預金比率に相関していると考えられ

る。 図3

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図4

図5

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図6

図7

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表1 国民所得に対する租税負担率

租税負担額 租税負担率

区分 国民所得

(A) 国税

(B) 地方税

合計

(C)

国税

(B)/(C)

合計

(C)/(A)

昭和 9 年~11 年度

(1934~ 1936)

昭和 25 (1950)

昭和 30 (1955)

昭和 35 (1960)

昭和 40 (1965)

昭和 45 (1970)

昭和 50 (1975)

昭和 55 (1980)

昭和 60 (1985)

平成 2 (1990)

平成 7 (1995)

平成 8 (1996)

平成 9 (1997)

平成 10 (1998)

平成 11 (1999)

12 (2000)

13 (2001)

14 (2002)

15 (2003)

億円

144

33,815

69,733

134,967

268,270

610,297

1,239,907

1,995,902

2,602,784

3,507,152

3,764,542

3,887,107

3,724,334

3,805,335

3,746,015

3,504,499

3,700,468

3,669,000

3,661,000

億円

12

5,702

9,363

18,010

32,785

77,732

145,043

283,688

391,502

627,798

549,630

552,261

556,007

511,977

492,139

527,209

499,684

462,828

438,566

億円

6

1,883

3,815

7,442

15,494

37,507

81,548

158,938

233,165

334,504

336,750

350,937

361,555

359,222

350,261

355,464

355,488

334,214

326,298

億円

19

7,585

13,178

25,452

48,279

115,239

226,591

442,626

642,667

962,302

886,380

903,198

917,562

871,199

842,400

882,673

855,172

797,042

764,864

%

8.5

16.9

13.4

13.3

12.2

12.7

11.7

14.2

15.0

17.9

14.6

14.2

14.2

13.5

13.1

13.9

13.5

12.6

12.0

%

12.9

22.4

18.9

18.9

18.0

18.9

18.3

22.2

24.0

27.4

23.5

23.2

23.4

22.9

22.5

23.2

23.1

21.7

20.9

(http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/report/2003/japanese/tab/tab06.htm より抜粋)

第 3 章.世界各国における地下経済

1 章で現金預金比率が地下経済の大きさに関係していることが分かった。この章では諸外

国における地下経済においてGDP統計と景気と相関があるかどうかを考察する。 まず、諸外国を発展途上国と先進国の2つに分け、それぞれの国々のGDPの動きを見る。

図8~11はエジプトにおける現金預金比率、GDP、地下GDP、GDPに占める地下

GDPの割合を『ガットマン方式』で示したものであり、図 12~15はメキシコを同様に

示したものである。この結果から発展途上国の国々ではエジプトが最大 35%、メキシコが

最大 30%近く占めているため、地下GDPの割合が日本に比べて高いことが分かる。また、

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GDPの成長と地下GDPの規模の拡大についても違いが生じている。では、地下GDP

が拡大する要因は何であるか。ここで考えられることは不安定な雇用、経済格差および政

局に対する不安、規制緩和等が挙げられる。 具体的な例としてエジプトを挙げると、2004 年 7 月に発足したナズィーフ首相(前通

信相)を首班とする内閣は、前オベイド内閣下での経済低迷に対する国民の不満を受け、

経済改革を前面に掲げ、民間人を含む改革派の人材を登用し、経済活動の自由化、外国

直接投資の誘致や工業生産・輸出の拡大を通じて、経済成長と雇用創出の実現を目指し

た。しかし、経済改革の一方で、貧富の差が 2001/2002 年の 18.4%から 19.6%に上

昇拡大しているといわれ、税収の低下から低所得者保護のための補助金が財政を圧迫し、

補助金制度の合理化に対する市民の反対があった。 図11はエジプトにおける地下 GDP の推移であるが、04 年に急速に上昇している。こ

の原因に政策の改定による経済の一時的な不安が人々を政府に頼らない経済活動を行う傾

向に流れたことが予想される。また 04 年は経済改革による規制緩和が行われたことから経

済成長に重きが置かれていたところがある。そのため、違法行為を経済成長優先のために

目を瞑ったことが考えられる。このことはタイやメキシコでも似たような兆候が見られて

いたため、エジプトのみが例外ではないことが考えられる。 発展途上国は先進国に比べて経済規模が小さいことから政府の政策によって経済が左右

されやすい。このようなことから景気の拡大とともに地下 GDP が拡大されるように見える

が、図10のように地上 GDP は一定の割合で拡大していることから地下経済は国内情勢に

よって決まると考えられる。 次に先進国における地下 GDP と景気の相関について考察する。

図16~19はアメリカ国内における現金預金比率、GDP、地下GDP、GDPに占め

る地下GDPの割合を日本やエジプトと同様に『ガットマン方式』で示したものである。 アメリカの場合、今までの発展途上国と違って地下GDP の急激な成長がほとんど存在し

ない。しかし、01 年頃から地下 GDP の割合が増えている。この要因として同時多発テロ

による軍備拡張があり、政府が軍事力に重心を置くようになったところから国民の政府に

対する不安が生じ、地下経済の拡大につながったことが予想される。 次にアメリカと他の先進諸国の関係においてだが、これらの国々における地下経済の規

模は MIMIC モデルによって分析できる。 MIMIC モデルは,観測変数の因果関係に1つの潜在変数を仮定するモデルアプローチで、

今回は直接税負担の増加、失業率の上昇、政府規制の緩和の合計3つが地下経済の規模拡

大に関わっているとして考察する。これらの3つの変数を使い、方程式を作成する。(図 20) そのため、地下経済の規模は年次についての平均が 100、分散が1となるという条件の下に

方程式を算出すると、

地下経済の規模=0.73×直接税負担+0.45×失業率―0.18×政府規制

の式ができる。

この結果を 85 年と 95 年のOECD諸国のデータを基に計算すると図 21 のようになる。

このグラフから大部分の国々では地下経済の規模は増大しているが、オランダ、ドイツ、

日本においては地下経済の規模は減少している。

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日本は90年代平成不況となり、2002年まで景気が上向きになることはなかった。しかし、

オランダにおいては 93 年までは低迷していたものの、93 年~95 年にかけて輸出が増加し、

95 年においては 2.4%の成長率であった。したがって景気と地下経済の規模については相

関関係があまりないことがいえる。 今までの結果から諸外国においても景気がよくなる時に地下経済の規模は上昇するが、

原因は現金預金比率、租税負担率、雇用環境、国内情勢等であると考えられる。 図8

図9

エジプト国内における GDP の推移

0

100000

200000

300000

400000

500000

600000

19921993199419951996199719981999200020012002200320042005

エジプトにおける現金預金比率

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

19921993199419951996199719981999200020012002200320042005

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図10

図11

エジプトにおける GDP が占める地下 GDP の割合(%)

0.00

5.00

10.00

15.00

20.00

25.00

30.00

35.00

40.00

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

エジプトにおける地下GDP(1992 年基準)

0.0020000.0040000.0060000.0080000.00

100000.00120000.00140000.00160000.00180000.00200000.00

1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

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12

図12

図13

メキシコにおける GDP の推移

0 1000000 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000 7000000 8000000 9000000

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

メキシコにおける現金預金比

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

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図14

図15

メキシコにおける地下 GDP の推移

0.00

500000.00

1000000.00

1500000.00

2000000.00

2500000.00

3000000.00

1994 1995 19961997 1998 19992000 2001 20022003 2004 2005

メキシコ国内における GDP が占める地下 GDP の割合(%)

0.00

5.00

10.00

15.00

20.00

25.00

30.00

35.00

199419951996199719981999200020012002200320042005

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図 16

図17

アメリカ国内における GDP

0.00

2000.00

4000.00

6000.00

8000.00

10000.00

12000.00

14000.00

1963 1966 1969 1972 1975 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005

アメリカにおける現金預金比率

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

1.40

1963 1966 1969 1972 1975 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005

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15

図18

図19

おわりに 今回の論文において地下経済の規模は景気ではなく、現金預金比率、あるいは国内の情勢

が関係していることが日本だけでなく、諸外国においても成立していることが分かった。

そのため、日本において地下経済は景気がよくなるとともに上昇し、景気が悪くなると縮

小傾向になると見られた理由は現金預金比率が景気の流れと偶然類似していたためだと考

えられる。

アメリカにおける GDP が占める地下 GDP の割合(%)

0.00 5.00

10.00 15.00 20.00 25.00 30.00 35.00 40.00 45.00

1963 1966 1969 1972 1975 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005

アメリカにおける地下 GDP

0.00

1000.00

2000.00

3000.00

4000.00

5000.00

6000.00

1963 1966 1969 1972 1975 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005

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私たちは経済指標を用いる際に様々な統計を使用するが、どの統計を用いても経済を正

確に把握することは難しく、分析するためには様々な要因を調べる必要がある。また、私

たちは捉えられる限り全体を占めているGDP統計が経済を正確に捉える指標であると思

い込む傾向があるが、あくまでGDP統計は幅広い経済活動の一部を集計したものであり、

必ずしも日本経済全体を正確に映し出している訳ではない。経済全体を捉えようとするな

らばGDP統計で表わされていない統計の1つである地下経済にも注目をする必要がある。

本論文では地下経済の拡大に対して否定的な理由を述べたが、日本においては 90 年代前

半から地下経済に対する活動の規制が行われたため、地下経済の規模は現在他の先進諸国

よりも低い割合を占めている。この結果から日本は地下経済の対策に一応成功していると

いえる。しかし規制を厳しくするのみが地下経済を縮小させる方法ではない。

オランダにおいては地下経済の拡大を阻止するために麻薬の使用と販売を一部合法化す

ることによって別の面からの管理を行ったというケースがある。その結果マフィアの弱体

化、凶悪犯罪の減少が生じている。また地下経済の規模も 90 年以降伸び悩んでいることを

考慮すると、地下経済の縮小に対して前向きな政策であることが言える。

以上のことから地下経済に対する取り組みはまだ始まったばかりであるが、地下経済は

これから先存在することが予想されるため、私たちはどのようにすれば拡大を抑えるかを

考察する必要がある。

最後にこれからの課題についてだが、今回私たちが地下経済の分析方法としてガットマ

ンモデルを主に使用した理由には地下経済に関する分析方法がまだほとんど確立していな

いことにある。しかし今回用いた方法以外に、ラムゼーモデルを用いて発展途上国におけ

る地下経済との相関にインフレ率が関係するという資料があった。そのため、別のアプロ

ーチから地下経済についての分析をすることを今後の課題にしたいと思っている。(6104

字)

図 20

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図 21 [参考文献・参考サイト]

ベトナムにおける地下経済規模 http://www.grips.ac.jp/vietnam/JVEC/pdf/WS040221MrNakatomiJ.doc ・統計局ホームページ http://www.stat.go.jp/ ・門倉貴史『日本の地下経済』講談社、2002 年

・名東孝二『地下経済ネットワーク』東洋経済新報社、1986 年

・島袋栄一『現金通貨-預金通貨比率と地下経済 : 日本とアメリカ』商経論集 14(2),1-12 ・オランダ経済概況 http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/yojin/arc_96/olanda/o_gaikyo.html ・論文 A guantitative analysis of inflation as a tay on the under ground economy Tatyana A.Koreshkva 雑誌 IFS