振動工学 - chiba...
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振動工学
第14回 免震と制振
地震による建物の揺れを低減する方法
① 地震の起こる場所に建てない
② 地震動が小さい場所を選ぶ
③ 建物を地盤から切り離す(⑧と関連)
④ 建物の質量を小さくする
⑤ 建物の復元力特性を非線形にする
⑥ 建物の強度・剛性を大きくする
⑦ 建物の減衰定数を大きくする
⑧ 建物の固有周期を長くして建物に作用する
力を減らす
1
実現困難
技術開発により実現可能
②地震動が小さい場所を選ぶ
2
崖地形の断面(稲毛区小仲台)
同じ地震でも,場所によって地震動の大きさは2倍以上異なる
例えば,原子力発電所はすべて岩盤に上に立てられている
かつ,地震が起こりにくい場所を選定
震度Iと加速度α(Gal): 河角式6.1log2 10 I
倍最大加速度は異なると震度が
倍最大加速度は異なると震度が
3101.0
8.1100.52/1
2/5.0
④建物を軽くする
S造(鉄骨造)は単位面積あたりの床質量が0.6~1.0 t/m2程度,RC造は1.2~1.4 t/m2程度 遮音性はRC造の方が高い(遮音における質量則)
軽いのは良いことばかりではない
RC造で,軽量コンクリートや発泡コンクリートを用いる 構造的な性能が低い
高強度材料を使って質量を減らす 高強度材料は一般に
例えば,高強度コンクリートは主として靱性が期待されない柱に使用される
強度型の設計をするなら高強度材料は有効
例えば自動車
3
実際にはあまり現実的ではない
靱性(粘り強さ)が低下する
建物の復元力特性を非線形にすると…
4
2
,
00
cm/s400,
,
弾性yaS
cnstcnstk
復元力特性の設定
Sa
(cm
/s2
)
非線形領域に入ると履歴減衰により等価減衰定数が大きくなり,応答が小さくなると期待されているが…
ω0
Sa-Sd平面で考える
Sa
(cm
/s2 )
ωeq
A
B
C
履歴減衰による応答抑制
加速度応答と変位応答スペクトル
5
変位応答スペクトル
s24.1eT
s83.00T
履歴減衰による応答抑制
横軸周期の変位応答スペクトルで見ると…
建物の強度だけ引き上げる
弾性剛性一定で降伏強度を引き上げる
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Sa
(cm
/s2
)Sa
(cm
/s2 )
Sa
(cm
/s2 )
Sa
(cm
/s2 )
cm0.10,3.8,7.6,0.5
cm/s600,500,400,300 2,
0
y
ya
d
S
cnstk
復元力特性の設定
強度が大きくしても,応答変形は,ほとんど変化しない
耐力を変化させても遷移曲線の上を移動するだけ
●B点(各色共通)
建物の強度・剛性を大きくする
降伏変形一定で降伏強度を引き上げる=剛性も強度も引き上げる
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Sa
(cm
/s2
)Sa
(cm
/s2
)Sa
(cm
/s2 )
Sa
(cm
/s2 )
cnstcm0.5
cm/s600,500,400,300 2,
y
ya
d
S
復元力特性の設定
強度だけでなく剛性も引き上げることで,応答変形が小さくなる
剛性を引き上げるためには部材が大きくする必要があり,結果的に重くなる
耐震構造の限界
強度を引き上げるだけでは,応答変位は小さくならない(変位一定則)
履歴減衰による応答抑制効果と,長周期化による地震動の要求変位の増大の影響が拮抗するため
応答変位を小さくするためには,結局は剛性を引き上げる必要がある
強度を大きくしても応答はさほど小さくならないので,靱性の向上で対処する考え方が主流(靱性保証設計)
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制震構造
1985年の小堀の提唱により,本格的な研究が始まった
小堀の制震5原則(当初(1950年代)のアイディア)
1. 地震力を伝達させない
2. 地震動の主勢力を避ける
3. 非共振化を図る
4. 制御力を加える
5. エネルギー吸収に努める
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免震へ?
AVS(Active Variable Stiffness)
AMD(Active Mass Driver)
オイルダンパー
可変剛性システム(AVS)
AVS(Active Variable Stiffness)システムとして研究された
10那須ほか(1994)より引用
可変剛性システムの制御フロー
地震動の卓越振動数を検知して剛性を切り替えて,入力エネルギーを低減する
11那須ほか(1994)より引用
0.6~0.8秒 0.4~0.5秒0.5~0.7秒
可変剛性システムの観測例
1993/01/15釧路沖地震の観測例
12那須ほか(1994)より引用
可変剛性システムの現状
普及は進んでいない
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可変剛性装置を支持するブレースに作用する力が大きく,支持架構が大がかりになる
入力地震動が広帯域の場合,周期を変えることによる入力エネルギーの低減は期待できないのではないか?
入力地震動をホワイトノイズとすると,建物に入力するエネルギーは,剛性,履歴特性,減衰と無関係で,建物の質量のみに依存することが数学的に証明されている
現 状
推測される課題
AMD(Active Mass Driver*)
池田ほか(1992)より引用
付加質量に、建物の慣性力を打ち消すような強制力を加えることにより、揺れを抑制する
世界初( 1989年)のアクティブ制震建築となった京橋成和ビルに採用された
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* Damperが用いられる場合もある
AMDの効果
大きなエネルギー源を必要とする
大地震時に動作を停止する必要がある
15池田ほか(1992)より引用
パッシブ型オイルダンパ
オイルダンパーのエネルギー吸収により揺れを低減する 建物の非線形化させて等価減衰を増やすと,長周期化により要求変
位が増大してしまう
オイルダンパーの場合は周期は変わらないので,その心配はない
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Sa
(cm
/s2 )
h=0.10
h=0.05
セミアクティブ型オイルダンパ
シリンダー内の圧力センサーからの信号を元にコンピュータ制御で流路にある開閉制御弁を開閉することで、振動エネルギーを大限に吸収できるようにしたもの
パッシブ型オイルダンパの2倍以上のエネルギー吸収能力があるダンパーが開発されている
近,さらにエネルギー吸収能力の大きいダンパーも開発された
利点
エネルギー吸収を基本原理としているので,安定した効果が期待できる
アクティブな動作は制御弁の開閉のみであることから,AMDに比較すると必要なエネルギーは小さい
油圧回路のみで動作し,電気エネルギーを必要としないタイプも開発されている
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TMD(Tuned Mass Damper):同調質量ダンパー
建物本体の固有周期に近い固有周期を持つ付加質量を設けることにより、高い制振効果が得られる
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千葉ポートタワー
TMDの超高層ビルへの適用
建物の非線形化による非同調化への懸念から,本格的な適用例は少なかったが, 近になって超高層ビルの耐震補強に適用され,見直されつつある
十分な容量を持たせることにより,上述のような懸念は解消されるとのこと
19新宿三井ビル(三井不・鹿島HPより引用)
免震とは
地盤と建物を切り離す
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説明1
説明2
応答スペクトルの性質を利用している 加速度応答スペクトルは長周期側
で減少する
建物を免震層に載せて長周期化すれば,建物に作用する力は小さくなる
Sa
(cm
/s2 )
加速度応答スペクトル
説明3
免震層でエネルギー吸収が行われている
エネルギー吸収に依存するという意味では,制震と同様
免震は揺れない?
変位応答スペトルは長周期側で大きくなる
免震層+建物では長周期化しているため,免震層+建物の全体としては変形は
小さくなるのは
免震層は大きく変形する
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Sd (cm
)
変位応答スペクトル
免震装置
アイソレータ
建物を支え,地震のときに建物をゆっくりと移動させる
積層ゴム
すべり支承
転がり支承
ダンパー
アイソレータだけではいつまでも続く揺れを抑える働きをする
オイルダンパー
鋼材ダンパー
鉛ダンパー
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積層ゴム
ゴムと鋼板を交互に重ね合わせたもの
鉛直力に対しては,圧縮力による横方向への膨らみを鋼板が抑制する
水平力に対しては,ゴム層がせん断変形する
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すべり支承・転がり支承
積層ゴムよりさらに剛性を低くしたい場合に使用する
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すべり材鋼板
ダンパー
25オイルダンパー 鋼材ダンパー 鉛ダンパー
鉛プラグ入り天然積層ゴム(オイレス工業HPより引用)
鉛プラグ
鋼板+積層ゴム 被覆ゴム
免震層の変形を抑制する
免震もエネルギー吸収構造の一種という解釈もある