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文部科学省 基調講演関連資料 「教育機会確保法成立 これからのことを話そう」 主催:フリースクール全国ネットワーク 平成28年12月24日(土)

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文部科学省基調講演関連資料

「教育機会確保法成立 これからのことを話そう」

主催:フリースクール全国ネットワーク

平成28年12月24日(土)

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目次

○ フリースクール等で学ぶ子供への支援に係る経緯 ············· 1

○ 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に

関する法律概要 ··········································· 2

〇 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に

関する法律 ··············································· 3

○ 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に

関する法律案に対する附帯決議(平成 28年 11 月 18 日衆議院文部

科学委員会、平成 28年 12 月 6日参議院文教科学委員会) ···· 16

○ ニッポン一億総活躍プラン ································ 20

○ フリースクール等に関する検討会議 設置紙 ················ 21

○ フリースクール等に関する検討会議 審議経過報告概要 ······ 23

〇 フリースクール等に関する検討会議 審議経過報告 ·········· 25

○ フリースクール等で学ぶ不登校児童生徒への支援モデル事業 ·· 59

○ いじめ対策・不登校支援等推進事業 ························ 60

○ 小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・

施設に関する調査の結果(概要) ·························· 62

〇 不登校児童生徒への支援に関する最終報告の概要(平成 28年 7月)

························································ 64

〇 不登校児童生徒への支援の在り方について(平成 28年 9月 14 日

文部科学省初等中等教育局長通知) ························ 68

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○省内検討チームの設置・26年10月~

○全国フリースクール等フォーラムの開催・26年11月開催※文部科学省として初めての開催

○有識者会議における検討・27年1月~※28年7月 審議経過報告取りまとめ(28年度内に最終まとめを予定)

○フリースクール等に係る調査の実施・27年8月公表※文部科学省として初めての調査

○モデル事業(学習支援・経済的支援)の実施・27年度補正予算

※教育支援センター等の設置促進関連を含む⇒29年度予算案においても所要の経費を計上

○省内検討チームの設置・26年10月~

○全国フリースクール等フォーラムの開催・26年11月開催※文部科学省として初めての開催

○有識者会議における検討・27年1月~※28年7月 審議経過報告取りまとめ(28年度内に最終まとめを予定)

○フリースクール等に係る調査の実施・27年8月公表※文部科学省として初めての調査

○モデル事業(学習支援・経済的支援)の実施・27年度補正予算

※教育支援センター等の設置促進関連を含む⇒29年度予算案においても所要の経費を計上

文部科学省の施策

フリースクール等で学ぶ子供への支援に係る経緯

【不登校の現状】全国で小中学校の不登校児童生徒は約12万6千人(平成27年度間)

憂慮すべき状況[3年連続の増加]

教育再生実行会議第五次提言(26年7月)(※)を受け、不登校となりフリースクール等で学ぶ子供への支援策について検討

(※) 国は、小学校及び中学校における不登校の児童生徒が学んでいるフリースクール(略)などの学校外の教育機会の現状を踏まえ、その位置付けについて、就学義務や公費負担の在り方を含め検討する。

・28年12月7日、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」成立

・不登校児童生徒への支援や夜間中学の設置促進など、教育機会の確保等に関する施策の推進を目的とするもの

・28年12月7日、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」成立

・不登校児童生徒への支援や夜間中学の設置促進など、教育機会の確保等に関する施策の推進を目的とするもの

不登校支援に係る法律

26年9月安倍総理フリースクール「東京シューレ」視察

28年1月安倍総理施政方針演説

(第190回国会)

3. 一億総活躍への挑戦

「フリースクールの子どもたちへの支援に初めて踏み込みます。 」

27年11月

一億総活躍国民会議(「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」)

「いじめや発達障害など様々な原因で既存の学校に馴染めなかった子供たちでも自信を取り戻すことができるよう、特に経済困窮家庭の子供たちに対し、複線的な教育機会を確保するための支援を行う。」

28年6月一億総活躍国民会議(「ニッポン一億総活躍プラン」)

「いじめや発達障害など様々な事情で不登校となっている子供が、自信を持って学んでいけるよう、フリースクール等の学校外で学ぶ子供への支援を行い、夜間中学の設置促進等を図る。」

100,000110,000120,000130,000

21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

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義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律概要

Ⅰ.総則(第1条~第6条)

目的 教育基本法及び児童の権利に関する条約等の趣旨にのっとり、不登校児童生徒に対する教育機会の

確保、夜間等において授業を行う学校における就学機会の提供その他の義務教育の段階における普通

教育に相当する教育の機会の確保等を総合的に推進

基本理念

1 全児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保

2 不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の状況に応じた必要な支援

3 不登校児童生徒が安心して教育を受けられるよう、学校における環境の整備

4 義務教育の段階の普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を尊重しつつ、年齢又は国籍等に

かかわりなく、能力に応じた教育機会を確保するとともに、自立的に生きる基礎を培い、豊かな人生を

送ることができるよう、教育水準を維持向上

5 国、地方公共団体、民間団体等の密接な連携

国の責務、地方公共団体の責務、財政上の措置等について規定

Ⅱ.基本指針(第7条)

1 文部科学大臣は、基本指針を定め、公表する

2 作成又は変更するときは、地方公共団体及び民間団体等の意見を反映させるための措置を講ずる

Ⅲ.不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等(第8条~第 13 条)

国及び地方公共団体は、以下の措置を講じ、又は講ずるよう努める

1 全児童生徒に対する学校における取組への支援に必要な措置

2 教職員、心理・福祉等の専門家等の関係者間での情報の共有の促進等に必要な措置

3 不登校特例校及び教育支援センターの整備並びにそれらにおける教育の充実等に必要な措置

4 学校以外の場における不登校児童生徒の学習活動、その心身の状況等の継続的な把握に必要な措置

5 学校以外の場での多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の休養の必要性を踏まえ、不登校児

童生徒等に対する情報の提供等の支援に必要な措置

Ⅳ.夜間等において授業を行う学校における就学の機会の提供等(第 14 条・第 15 条)

1 地方公共団体は、夜間等において授業を行う学校における就学の機会の提供等を講ずる

2 都道府県及び区域内の市町村は、1の事務の役割分担等を協議する協議会を組織することができる 構成員:①都道府県の知事及び教育委員会、②都道府県内の市町村長及び教育委員会、③民間団体等

Ⅴ.教育機会の確保等に関するその他の施策(第 16 条~第 20 条)

1 実態把握及び学習活動に対する支援の方法に関する調査研究等

2 国民の理解の増進

3 人材の確保等

4 教材の提供その他の学習の支援

5 学校生活上の困難を有する児童生徒等からの教育及び福祉をはじめとする各種相談に総合的に対応

する体制の整備

Ⅵ.その他

1 公布日から2月後に施行(Ⅳ.は、公布日から施行)

2 政府は、速やかに、必要な経済的支援の在り方について検討し、必要な措置を講ずる

3 政府は、多様な学習活動の実情を踏まえ、施行後3年以内に検討を加え、教育機会の確保等の在り

方の見直しを含め、必要な措置を講ずる

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義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律

目次

第一章 総則(第一条―第六条)

第二章

基本指針(第七条)

第三章

不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等(第八条―第十三条)

第四章

夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等(第十四条・第十五

条)

第五章

教育機会の確保等に関するその他の施策(第十六条―第二十条)

附則

第一章

総則

(目的)

第一条

この法律は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)及び児童の権利に関する条約等の教育に関

する条約の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方

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公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、教育

機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的とする。

(定義)

第二条

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

学校

学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、

中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部をいう。

児童生徒

学校教育法第十八条に規定する学齢児童又は学齢生徒をいう。

不登校児童生徒

相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心

理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認め

られるものをいう。

教育機会の確保等

不登校児童生徒に対する教育の機会の確保、夜間その他特別な時間において授業

を行う学校における就学の機会の提供その他の義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会

の確保及び当該教育を十分に受けていない者に対する支援をいう。

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(基本理念)

第三条

教育機会の確保等に関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保

が図られるようにすること。

不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な

支援が行われるようにすること。

不登校児童生徒が安心して教育を十分に受けられるよう、学校における環境の整備が図られるように

すること。

義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ、

その年齢又は国籍その他の置かれている事情にかかわりなく、その能力に応じた教育を受ける機会が確

保されるようにするとともに、その者が、その教育を通じて、社会において自立的に生きる基礎を培い、

豊かな人生を送ることができるよう、その教育水準の維持向上が図られるようにすること。

国、地方公共団体、教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な

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連携の下に行われるようにすること。

(国の責務)

第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、教育機会の確保等に関する施策を総合的に策定し、及び実施す

る責務を有する。

(地方公共団体の責務)

第五条

地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、教育機会の確保等に関する施策について、国と協

力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(財政上の措置等)

第六条

国及び地方公共団体は、教育機会の確保等に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他

の措置を講ずるよう努めるものとする。

第二章

基本指針

第七条

文部科学大臣は、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(以下こ

の条において「基本指針」という。)を定めるものとする。

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基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 教育機会の確保等に関する基本的事項

不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する事項

夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等に関する事項

その他教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するために必要な事項

文部科学大臣は、基本指針を作成し、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、地方公共団体

及び教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の意見を反映させるために必要な措

置を講ずるものとする。

文部科学大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければなら

ない。

第三章

不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等

(学校における取組への支援)

第八条

国及び地方公共団体は、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、

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児童生徒と学校の教職員との信頼関係及び児童生徒相互の良好な関係の構築を図るための取組、児童生徒

の置かれている環境その他の事情及びその意思を把握するための取組、学校生活上の困難を有する個々の

児童生徒の状況に応じた支援その他の学校における取組を支援するために必要な措置を講ずるよう努める

ものとする。

(支援の状況等に係る情報の共有の促進等)

第九条

国及び地方公共団体は、不登校児童生徒に対する適切な支援が組織的かつ継続的に行われることと

なるよう、不登校児童生徒の状況及び不登校児童生徒に対する支援の状況に係る情報を学校の教職員、心

理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者間で共有することを促進するために必要な措

置その他の措置を講ずるものとする。

(特別の教育課程に基づく教育を行う学校の整備等)

第十条

国及び地方公共団体は、不登校児童生徒に対しその実態に配慮して特別に編成された教育課程に基

づく教育を行う学校の整備及び当該教育を行う学校における教育の充実のために必要な措置を講ずるよう

努めるものとする。

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(学習支援を行う教育施設の整備等)

第十一条

国及び地方公共団体は、不登校児童生徒の学習活動に対する支援を行う公立の教育施設の整備及

び当該支援を行う公立の教育施設における教育の充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(学校以外の場における学習活動の状況等の継続的な把握)

第十二条

国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う学習活動の状況、不登校児

童生徒の心身の状況その他の不登校児童生徒の状況を継続的に把握するために必要な措置を講ずるものと

する。

(学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援)

第十三条

国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重

要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活

動が行われることとなるよう、当該不登校児童生徒及びその保護者(学校教育法第十六条に規定する保護

者をいう。)に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとする。

第四章

夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等

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(就学の機会の提供等)

第十四条

地方公共団体は、学齢期を経過した者(その者の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学

年の初めから満十五歳に達した日の属する学年の終わりまでの期間を経過した者をいう。次条第二項第三

号において同じ。)であって学校における就学の機会が提供されなかったもののうちにその機会の提供を

希望する者が多く存在することを踏まえ、夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の

機会の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

(協議会)

第十五条

都道府県及び当該都道府県の区域内の市町村は、前条に規定する就学の機会の提供その他の必要

な措置に係る事務についての当該都道府県及び当該市町村の役割分担に関する事項の協議並びに当該事務

の実施に係る連絡調整を行うための協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織することが

できる。

協議会は、次に掲げる者をもって構成する。

都道府県の知事及び教育委員会

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当該都道府県の区域内の市町村の長及び教育委員会

三 学齢期を経過した者であって学校における就学の機会が提供されなかったもののうちその機会の提供

を希望する者に対する支援活動を行う民間の団体その他の当該都道府県及び当該市町村が必要と認める

協議会において協議が調った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければな

らない。

前三項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

第五章

教育機会の確保等に関するその他の施策

(調査研究等)

第十六条

国は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の実態の把握に

努めるとともに、その者の学習活動に対する支援の方法に関する調査研究並びにこれに関する情報の収集、

整理、分析及び提供を行うものとする。

(国民の理解の増進)

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第十七条

国及び地方公共団体は、広報活動等を通じて、教育機会の確保等に関する国民の理解を深めるよ

う必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(人材の確保等)

第十八条

国及び地方公共団体は、教育機会の確保等が専門的知識に基づき適切に行われるよう、学校の教

職員その他の教育機会の確保等に携わる者の養成及び研修の充実を通じたこれらの者の資質の向上、教育

機会の確保等に係る体制等の充実のための学校の教職員の配置、心理、福祉等に関する専門的知識を有す

る者であって教育相談に応じるものの確保その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(教材の提供その他の学習の支援)

第十九条

国及び地方公共団体は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない

者のうち中学校を卒業した者と同等以上の学力を修得することを希望する者に対して、教材の提供(通信

の方法によるものを含む。)その他の学習の支援のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(相談体制の整備)

第二十条

国及び地方公共団体は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない

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者及びこれらの者以外の者であって学校生活上の困難を有する児童生徒であるもの並びにこれらの者の家

族からの教育及び福祉に関する相談をはじめとする各種の相談に総合的に応ずることができるようにする

ため、関係省庁相互間その他関係機関、学校及び民間の団体の間の連携の強化その他必要な体制の整備に

努めるものとする。

(施行期日)

この法律は、公布の日から起算して二月を経過した日から施行する。ただし、第四章の規定は、公布の

日から施行する。

(検討)

政府は、速やかに、教育機会の確保等のために必要な経済的支援の在り方について検討を加え、その結

果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

政府は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者が行う多様な学習活

動の実情を踏まえ、この法律の施行後三年以内にこの法律の施行の状況について検討を加え、その結果に

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基づき、教育機会の確保等の在り方の見直しを含め、必要な措置を講ずるものとする。

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教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するため、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理

念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項

を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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ニッポン一億総活躍プラン

平成28年6月2日

一億総活躍国民会議

3.「希望出生率1.8」に向けた取組の方向

(2)すべての子供が希望する教育を受けられる環境の整備

(課題を抱えた子供たちへの学びの機会の提供)

特別な配慮を必要とする児童生徒のための学校指導体制の確保、スクー

ルカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置など教育相談機能の

強化に取り組む。

いじめや発達障害など様々な事情で不登校となっている子供が、自信を

持って学んでいけるよう、フリースクール等の学校外で学ぶ子供への支援

を行い、夜間中学の設置促進等を図る。

経済的な理由や家庭の事情により学習が遅れがちな子供を支援するため、

大学生や元教員等の地域住民の協力及び ICT の活用等による原則無料の学

習支援を行う地域未来塾を、平成 31 年度(2019 年度)までに全中学校区

の約半分に当たる 5000 か所に拡充し、高校生への支援も実施する。

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フリースクール等に関する検討会議について

平成27年1月27日 初等中等教育局長決定 平成28年3月31日

一部改正 1.趣旨

教育再生実行会議第五次提言(平成26年7月)を受け,フリースクール等で学ぶ

子供たちの現状を踏まえ,学校外での学習の制度上の位置付けや,子供たちへの支援

策の在り方について検討を行う。

2.検討事項 (1)フリースクール等での学習に関する制度上の位置付け

(2)子供たちへの学習支援の在り方 (3)経済的支援の在り方 (4)その他フリースクール等に関連する事項

3.実施方法

(1)別紙の委員の協力を得て検討を行う。 (2)会議に座長を置き,事務局が委嘱する。 (3)必要に応じ別紙以外の者にも協力を求めるほか,関係者の意見等を聴くことが

できるものとする。

4.設置期間 平成27年1月27日 ~ 平成29年3月31日

5.庶務

本検討会議に関する庶務は,初等中等教育局フリースクール等プロジェクトチーム

において処理する。

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別紙

フリースクール等に関する検討会議委員

生田 義久 京都市教育委員会指導部企画顧問

京都市教育相談総合センター顧問

佛教大学教授

植山 起佐子 CPCOM 臨床心理士コラボオフィス目黒 臨床心理士

奥地 圭子 NPO法人東京シューレ理事長

NPO法人フリースクール全国ネットワーク代表理事

加治佐 哲也 独立行政法人国立高等専門学校機構常勤監事

金井 剛 三重県立小児心療センターあすなろ学園園長

品川 裕香 教育ジャーナリスト

白井 智子 NPO法人トイボックス代表理事

スマイルファクトリー校長

友野 晃 福岡県教育庁理事

永井 順國 政策研究大学院大学客員教授

西野 博之 NPO法人フリースペースたまりば理事長

川崎市子ども夢パーク所長

フリースペースえん代表

宮澤 和徳 長野県辰野町教育委員会教育長

武藤 啓司 NPO法人楠の木学園理事長

森 敬之 名古屋市子ども適応相談センター所長

全国適応指導教室連絡協議会会長

横井 葉子 スクールソーシャルワーカー

上智大学総合人間科学部社会福祉学科非常勤講師

(五十音順) (平成28年4月1日現在)

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不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援について~長期に不登校となっている児童生徒への支援の充実~

(平成28年7月6日「フリースクール等に関する検討会議」審議経過報告の「概要」)

第一章 現状・課題及び基本的な方向性

<学校以外の場での学習等に対する支援の必要性>

○ 不登校の要因・背景は様々であり、一層多様化・複雑化。

○ 不登校への対応に当たっては、学校の取組の一層の充実が必要。

○ それと同時に、長期に不登校となっている児童生徒の学校以外の場での学習等に対する支援を行い、

その社会的自立を目指すことが必要。

○ その際、義務教育に責任を負う市町村教育委員会が、国や都道府県教育委員会と連携し、学校と緊

密な情報共有を図りながら、支援を推進する役割を担うことが必要。

<基本的な方向性>

1.教育委員会・学校と民間の団体等が連携した支援の充実を図ること

2.家庭にいる不登校児童生徒への支援の充実を図ること

3.支援のための体制整備を図ること

第二章 教育委員会・学校と民間の団体等の連携等による支援の充実

【教育委員会・学校と民間の団体等の連携による支援の推進】

○ 意義:きめ細かい支援、教育委員会・学校による状況の把握、民間の団体等の認知の向上

○ 現状:フリースクール等が所在する自治体でも、約半数の自治体では連携が行われていない

以下等の連携の取組の推進が必要

連携協議会の設置、協働した取組、公民連携による施設の設置・運営など

(具体的施策)

・国:連携推進のモデル事業の実施、連携の先進事例の周知

・教育委員会:地域の実情に応じ、連携に向けた取組を段階的に推進

【民間の団体等の活動の充実】

○ 児童生徒の状況に応じた支援がより行われるよう、民間の団体等の活動の一層の充実が期待

以下等の取組の充実が期待

・民間の団体等の間の連携協力を通じた活動の充実(スタッフ研修等の共同実施、相互評価の仕組

みの構築、中間支援組織の形成)

・支援プラン等の作成とそれに基づく支援

(具体的施策)

・国:民間の団体等や研究機関に委託することなどにより、相互評価や中間支援組織

の在り方、支援プラン等の作成・活用などに関する調査研究を実施

- 23 -

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第三章 家庭にいる不登校児童生徒への支援の充実

○ 家庭で多くの時間を過ごしている不登校児童生徒やその保護者への支援が必要

以下の取組の充実が必要

・保護者への情報提供等(在籍校や進路、学校外の支援の場、不登校の保護者の会の情報等)

・ICT等を通じた支援

・訪問による支援(家庭等を訪問し、相談対応や学習支援などを実施)

(具体的施策)

・国:訪問型支援を推進するためのモデル事業の実施や教育支援センター等の整備、

スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーの配置・研修の充実

・教育委員会:地域の実情に応じ、不登校の保護者の会の情報提供等の支援方策を充実

第四章 支援体制の整備

○ 支援体制の整備により、継続的な改善・充実や関係者が連携した支援が必要

以下による体制整備が望まれる

・担当部署等の教育委員会等の中への位置付けや、関係者が連携した支援体制の構築

・支援の目標・取組等を記載する様式の作成

(具体的施策)

・国:自治体での支援体制を整備するモデル事業の実施、研究機関への委託等により

全国的なセンター機能の整備の在り方について調査研究

・教育委員会:地域の実情に応じ、支援体制を整備

第五章 今後の検討課題

○ 制度上の位置付け

・ 今後、学校以外の場での学習等がどのように充実されるかを見定めることが必要

○ 経済的支援

・ 現在のモデル事業を基本に、経済的な困難等を抱える家庭への支援の具体的展開を図る

・ 公民連携による施設の設置・運営の推進も経済的支援の充実方策の一つ

- 24 -

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- 1 -

不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援について

~長期に不登校となっている児童生徒への支援の充実~

(審議経過報告)

平成28年7月6日

フリースクール等に関する検討会議

はじめに

第一章 現状・課題及び基本的な方向性

(1)不登校の状況の多様性・複雑性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・3

(2)学校以外の場での学習等に対する支援の必要性 ・・・・・・・・・・6

(3)学校以外の場での学習等に対する支援に関する現状・課題 ・・・・・7

(4)学校以外の場での学習等に対する支援の基本的な方向性 ・・・・・・12

第二章 教育委員会・学校と民間の団体等の連携等による支援の充実

(1)教育委員会・学校と民間の団体等の連携の推進 ・・・・・・・・・・13

ア.現状・課題

イ.推進のための方策と考え方

ウ.具体的施策

(2)民間の団体等の活動の充実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

ア.現状・課題

イ.充実のための方策と考え方

ウ.具体的施策

第三章 家庭にいる不登校児童生徒への支援の充実

(1)保護者への情報提供等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

(2)ICT等を通じた支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

(3)訪問による支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24

ア.現状・課題

イ.推進のための方策と考え方

(4)具体的施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

第四章 支援体制の整備

(1)整備に関する方策と考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30

(2)具体的施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31

第五章 今後の検討課題

- 25 -

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*1 この報告書における「学習」は、社会的活動や自然体験を通じた学習、教科学習、スポ

ーツ活動や芸術活動、集団活動を通じた学習など幅広い学習の態様を指す。

*2 「民間の団体等」は、不登校児童生徒を受け入れ、相談や学習機会の提供等を行ってい

る民間の団体,施設のことであり、例えば、フリースクールやフリースペースなどの名称

で運営されている。

*3 「不登校に関する調査研究協力者会議」では、中学校卒業後の課題として、高等学校の

取組や、中学校卒業後の就学・就労、「ひきこもり」への支援が検討対象となっている。

- 2 -

はじめに

○ 「フリースクール等検討会議」(以下「検討会議」という。)は、教育再生実行

会議の第5次提言「今後の学制等の在り方について」(平成26年7月3日)にお

いて、「国は、小学校及び中学校における不登校の児童生徒が学んでいるフリース

クールや、国際化に対応した教育を行うインターナショナルスクールなどの学校

外の教育機会の現状を踏まえ、その位置付けについて、就学義務や公費負担の在

り方を含め検討する。」とされたことを受け、平成27年1月27日に設置された

ものである(→資料1・2)。

○ 検討会議では、フリースクール等で学ぶ子供たちの現状を踏まえ、学校外での

学習*1の制度上の位置付けや、子供たちへの支援策の在り方について検討を行うこ

ととされた。検討事項は、次の通りである。

フリースクール等に関する検討会議における検討事項(1)フリースクール等での学習に関する制度上の位置付け(2)子供たちへの学習支援の在り方(3)経済的支援の在り方(4)その他フリースクール等に関連する事項

○ これらの検討事項について、平成28年6月27日までに11回にわたる会議

を開催し、民間の団体等*2や教育委員会、関係機関などから様々な取組や意見を聴

取しながら議論を進めてきた。今回、これまでの議論の経過を「審議経過報告」

として取りまとめ、公表することとした(→資料3)。

○ なお、不登校への対応の在り方については、検討会議と同じ平成27年1月2

7日に「不登校に関する調査研究協力者会議」が設置された(→資料4・5)。

○ 「不登校に関する調査研究協力者会議」においては、不登校施策全般について

検討が行われた一方、検討会議では、不登校施策の中で、特に、長期に不登校と

なっている義務教育段階*3の児童生徒への、学校以外の場での学習等に対する支援

に焦点を当てて検討を行ったものである。

- 26 -

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- 3 -

第一章 現状・課題及び基本的な方向性

(1)不登校の状況の多様性・複雑性

○ 平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(以下

「生徒指導調査」という。)における義務教育段階の不登校の児童生徒数は約12

万人であり、平成24年度から2年連続で、人数・割合ともに増加している。

○ 不登校の要因・背景は様々であり、一層多様化・複雑化しているという指摘も

ある。

○ 生徒指導調査における「不登校となったきっかけと考えられる状況」では、「学

校に係る状況」として「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が、「家庭に係る状

況」として「親子関係をめぐる問題」が、「本人に係る状況」として「無気力」「不

安など情緒的混乱」が上位を占めている(→資料6)。

0

5

10

15

20

25

30

35

66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14

不登校児童生徒の割合の推移

(1,000人当たりの不登校児童生徒数)

小学校(年間30日) 小学校(年間50日)

中学校(年間30日) 中学校(年間50日)

合計(年間30日) 合計(年間50日)

0

20000

40000

60000

80000

100000

120000

140000

160000

66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14

不登校児童生徒数の推移

小学校(年間30日) 小学校(年間50日)

中学校(年間30日) 中学校(年間50日)

合計(年間30日) 合計(年間50日)

- 27 -

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*4 「不登校に関する実態調査~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書」(平成

26年7月文部科学省公表)

*5 子供の貧困対策については、平成26年1月に「子どもの貧困対策の推進に関する法

律」が成立するとともに、同年8月に政府において「子供の貧困対策に関する大綱」が策

定され、子供の貧困に関する指標が設定された上で当該指標の改善に向けた当面の重点施

策として、教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援等を行うこ

ととされている。

- 4 -

○ また、不登校経験者へのアンケートに基づく追跡調査*4においては、「友人との

関係(いやがらせやいじめ、けんかなど)」を不登校のきっかけとして挙げた者が

半数以上であり、次いで、「生活リズムの乱れ」、「勉強が分からない」を挙げた者

が3割、さらに、「先生との関係」を挙げた者が4分の1を超えている。

○ 検討会議においては、様々な要因・背景がある中で、学校において、児童生徒

間のいじめやトラブルに対して適切な対応がされていなかったり、児童生徒が理

解できるよう学習指導を行うことが十分できていなかったり、学校が安心して通

える児童生徒の居場所となっていなかったりするなど、学校環境に起因した不登

校も少なくないという指摘があった。

○ 近年、不登校の子供の中で、発達障害を抱えるケースが増えてきたとの指摘も

ある。自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠

陥多動性障害等の発達障害のある児童生徒の特性に対する学校の理解は進みつつ

あるが、教育的ニーズに応じた適切な指導や必要な支援が十分になされず、周囲

との人間関係がうまく構築されない、学習のつまずきが克服できないなどの課題

が改善されず、結果的に不登校に至る事例もあることが懸念される。

○ 不登校の背景に、家庭環境や貧困の課題*5があるという指摘もある。例えば、平

成5年度と平成18年度の上記の追跡調査の結果を比較すると、「家族の生活環境

の急激な変化」を不登校のきっかけに挙げる割合は2倍(4.3%→9.7%)

に増加している。検討会議では、非行や不良行為を伴う怠学の態様をとる不登校

の背景に、家庭環境や貧困の課題がある場合があるという指摘があった(→資料7)。

○ 不登校児童生徒については、生徒指導調査の定義上、年間30日以上の欠席が

要件となっている。小中学校の年間の学校の出席日数は約200日であることか

ら、約12万人の不登校児童生徒の中には、年間30日間欠席している児童生徒

から、年間約200日間欠席している児童生徒までが、幅広く含まれている。

○ 例えば、東京都や神奈川県の調査によると、不登校児童生徒の年間の欠席日数

別の状況は、以下の通りである(→資料8)。

- 28 -

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*6 東京都教育庁調べ(対象:東京都内公立小中学校の平成26年度不登校児童生徒の年間

欠席日数別割合(概算))

*7 神奈川県教育委員会調べ(対象:神奈川県内公立小中学校の平成19年度の不登校児童

生徒)

- 5 -

(平成27年東京都調査*6)

小 中

・ 30日~ 50日 :30% 15%

・ 51日~100日 :30% 25%

・ 101日~150日 :20% 25%

・ 151日~200日 :10% 25%

・ 201日~ :10% 10%

(平成21年5月神奈川県調査*7)

小中合計

・ 30日~ 89日 : 44.5%

・ 90日~149日 : 27.5%

・ 150日~179日 : 12.8%

・ 180日以上 : 15.1%

○ これらの調査結果から、不登校児童生徒の欠席日数にはばらつきがあること、

また、不登校児童生徒の多くはいわゆる「全欠」の状況ではなく、ある程度学校

に通っている状況であることが分かる。

○ 他方、不登校児童生徒の中には、ほとんど学校に登校していない、長期に不登

校となっている児童生徒がいる。

○ 上記東京都調査に基づけば、不登校児童生徒のうち、年間201日以上欠席し

ている小中学生は10%、年間151日以上欠席している小中学生は、小学生で

20%、中学生で35%である。

○ この数字に基づき、全国ベースで推計すると、年間201日以上欠席している

小中学生は約1万2千人、年間150日以上欠席している小中学生は約3万9千

人に上る。

- 29 -

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- 6 -

(2)学校以外の場での学習等に対する支援の必要性

○ 不登校児童生徒の多くは年間ある程度の日数、学校に通っており、不登校への

対応においては、学校による取組の一層の充実が必要である。

○ 各学校においては、児童生徒の教育的ニーズを把握し、深い児童生徒理解のも

とで、分かる授業の推進、教職員・児童生徒間の信頼関係や児童生徒相互の良好

な人間関係づくり、学級経営の充実、関係者間の情報共有による組織的・継続的

な対応を行うこと等を通じて、不登校児童生徒にとって安心できる魅力ある学校

環境を作る必要がある。

○ 他方、上記のように、不登校児童生徒の中には、長期に不登校となっている児

童生徒がいる。

○ 学校においては、こういった長期に不登校となっている児童生徒が再び学校に

登校できるよう学校環境を整えたり、教員が児童生徒に関わりを持ち続けたりす

ることが必要である。

○ また、不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施

する「不登校特例校」の設置や、夜間中学での不登校児童生徒の受け入れといっ

た、既存の学校の仕組みの活用も重要である。

○ それらと同時に、このような児童生徒が学校で学習活動や体験活動、友人と触

れ合う機会などを十分得られていないことを踏まえ、学校外において様々な活動

を行うことができる場所や機会を確保するなど、学校以外の場での学習等に対す

る支援を行い、その社会的自立を目指すことが必要である。

○ 児童生徒は、いずれ社会に出て、社会の形成者として社会生活を営むものであ

り、学校は社会的活動や自然体験活動、教科学習、スポーツ活動や芸術活動、集

団活動を行うことなどを通じて、児童生徒が社会において自立的に生きる基礎を

培っている。

○ 学校以外の場での学習等についての支援を不登校児童生徒に対して行う際にも、

児童生徒が将来的に精神的にも経済的にも自立し、社会に参加し、豊かな人生を

送れるよう、その社会的自立に向けた支援が行われる必要がある。また、その際

の支援の態様としては、不登校には様々な要因・背景があることを踏まえ、個々

の不登校児童生徒の状況に応じた多様な形で行われる必要がある。

○ このような支援は、不登校児童生徒の多様な状況に対応できるよう公的機関や

民間の団体など関係機関・団体等とが連携して行うことが求められる。また、授

業や部活動など様々な業務を担う教員に学校外の学習等への支援を過度に期待す

- 30 -

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- 7 -

ることには限界がある。

○ このため、教育委員会、特に義務教育に責任を負う市区町村教育委員会が、国

や都道府県教育委員会と連携し、学校と緊密な情報共有を図りながら、不登校児

童生徒に対する学校以外の場での学習等に対する支援を推進する役割を担う必要

がある。

○ また、都道府県教育委員会においては、域内における学校以外の場での学習等

に対する支援が推進されるよう、市区町村教育委員会の取組への支援や市区町村

教育委員会間の情報共有の推進など、広域的な観点から支援の推進に取り組む必

要がある。

○ さらに、国においては、モデル事業の実施や先進事例の周知等を通じて学校以

外の場での学習等に対する支援に関する好事例を普及させるとともに、必要な人

的・財政的措置を通じた環境整備の一層の充実を図る必要がある。

○ 検討会議では、以上のような問題意識のもと、長期に不登校になっている児童

生徒に対する、学校以外の場での学習等に対する支援に焦点を当てて、検討を行

ってきたところである。

(3)学校以外の場での学習等に対する支援に関する現状・課題

(現状)

○ 不登校児童生徒に対する学校以外の場での学習等に対する支援としては、大き

く、不登校児童生徒が通う場を通じた支援と、家庭にいる不登校児童生徒への支

援がある。

① 不登校児童生徒が通う場を通じた支援

○ 不登校児童生徒が通う場の提供を行っている機関・団体等としては、教育支援

センター(適応指導教室)などの公的機関や、フリースクールなどの民間の団体

等が挙げられる。

ⅰ)教育支援センターによる支援

○ 教育支援センターは、不登校児童生徒の集団生活への適応、情緒の安定、基礎

学力の補充、基本的生活習慣の改善等のための相談・適応指導を行っており、平

成26年度間に約15,000人の義務教育段階の児童生徒が支援を受けている(→

資料9・10)。

- 31 -

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*8 「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調

査」(平成27年8月公表)(文部科学省)(存在が確認された474の民間の団体・施設

にアンケートを送付し319の団体・施設から回答(回収率:67%))

- 8 -

○ 現在、自治体により全国に約1,300箇所の設置が行われているものの、全

自治体の内、教育支援センターを設置していない自治体は730(全体の40%)

に上っている。

○ また、教育支援センターが設置されている場合においても、職員配置や施設設

備が十分でないなど、個々の不登校児童生徒の状況に応じた十分な支援が行われ

ていない場合がある。

○ さらに、教育支援センターに通うことを希望しなかったり、在籍はしていても

通所が途切れてしまったりする児童生徒もいる。

(※なお、教育支援センターの整備充実については、主に「不登校に関する調査研

究協力者会議」で扱われており、検討会議では基本的には扱わない)

ⅱ)民間の団体等による支援

○ フリースクールなどの民間の団体等は、民間において自主的に設置・運営され

ており、不登校の児童生徒に対し、個別の学習や相談・カウンセリング、社会体

験や自然体験などの体験活動、授業形式(講義形式)による学習などを行ってい

る。

○ 平成27年3月に、文部科学省において民間の団体等について初めての全国的

な調査が行われた(以下「民間の団体等調査」という。)*8(→資料11)。その結果、

小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設について、

次のような実態が把握されたところである。

【1 団体・施設の形態】・法人格を有する団体・施設が、7割弱(NPO法人が5割弱)・2000年以降に設立された団体・施設が全体の7割弱(設立から30年以上経過している団体・施設も20以上存在)

【2 在籍者数等】・在籍する義務教育段階の子供の数は、約4,200人(1団体・施設当たりの子供の数は平均約13.2人)

【3 スタッフ数等】・勤務するスタッフの数は、約2,900人うち、有給・週5日以上勤務するスタッフの数は、約900人

- 32 -

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- 9 -

(1団体・施設当たりの有給・週5日以上勤務スタッフ数は平均約2.8人)

【4 活動内容等】・個別の学習、相談・カウンセリングを行っている団体・施設が、それぞれ約9割

・社会体験、自然体験、調理体験、芸術活動、スポーツ体験は、いずれも7割以上の団体・施設で実施

・5割以上の団体・施設が、家庭への訪問を実施・授業形式(講義形式)による学習は、約4割の団体・施設で実施

【5 会費等の状況】・月額の会費(授業料)は、1~3万円・3~5万円とする団体・施設が、それぞれ4割弱、平均額は約3万3千円

【6 施設の保有状況】・約95%の団体・施設が、常設の施設を保有・常設施設を有する団体・施設のうち、約3割が自己所有、約1割が公共施設を借用、約6割が民間施設を借用

【7 設置の状況】・全ての都道府県に1つは設置されている(東京都、神奈川県、大阪府など20以上設置されている都道府県がある一方、11県では2つ以下の設置)

○ また、検討会議においては、民間の団体等に関連して、

・ 民間の団体等が提供している不登校の子供の居場所は貴重であり、そこで自

分の存在を受け止めてもらえる、時間が過ごせる、学習ができる、人と接する

ことができるということが重要。

・ 民間の団体等は、ゆっくり休むことも子供たちに認めながら、選択制の講座

や個別の学習支援、体験活動などを実施している

・ 民間の団体等は、それぞれ独自性があり、それぞれで学び方は多様である

・ 子供たちが社会的に自立できるよう支援しており、多くの子供たちが、民間

の団体等で過ごした後、学校生活を再開したり進学や就職したりしている

といった指摘や、

・ 民間の団体等の財政状況は厳しい

・ 民間の団体等に通いたくてもお金を払えないという声もある

などの指摘があった。

○ 総じて、民間の団体等の規模は大きくなく、独自性・多様性を持ちながら、一

人一人の不登校児童生徒の状況に応じて、学習活動や体験活動、人と関わる機会

や安心して過ごせる場所の提供などを行っていると言うことができる。

○ 民間の団体等は、調査結果の通り偏在しており、存在していない地域も多い。

また、地域に民間の団体等がある場合においても、保護者や地域住民にその存在

- 33 -

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*9 平成17年7月6日文部科学省初等中等教育局長通知において、家庭にひきこもりがち

な不登校児童生徒の学校復帰や社会的自立に向けた進路選択を支援するため、一定の要件

のもとで、自宅において教育委員会、学校、学校外の公的機関又は民間事業者が提供する

ICT等を活用した学習活動を行った場合、校長は、指導要録上出席扱いしたりその成果を

評価に反映したりすることができることとされた。

- 10 -

があまり認知されていなかったり、個々の児童生徒にとって適切な支援の場とな

っているかを判断する情報が乏しかったりする場合が少なくない。

○ その背景の一つとしては、民間の団体等の状況を学校や教育委員会が十分把握

していないこと等から、民間の団体等についての情報提供が必ずしも行われてい

ないことが考えられる。

② 家庭にいる不登校児童生徒への支援

○ 不登校児童生徒の中には、家庭で多くの時間を過ごしている児童生徒がいる。

教育支援センターや民間の団体等に在籍している児童生徒についても、実際には

ほとんど通っていない場合があることも考えられる。

○ このような児童生徒への支援のため、児童生徒の保護者への情報提供、ICT等を

通じた支援、家庭等への訪問による支援などが行われている。

ⅰ)保護者への情報提供等

○ 不登校児童生徒の保護者にとって、教育支援センターや民間の団体など支援を

受けられる場や児童生徒の進路、保護者間で交流する不登校の保護者の会などに

関する情報を得られる機会は重要である。

○ 他方、平成28年2月に行われた訪問型支援や保護者への情報提供に関する文

部科学省調査(以下「訪問型支援等調査」という。)(→資料28)によると、現在、保

護者を対象とした不登校に関する説明会や、不登校の保護者の会の開催・開催支

援を行う教育委員会は、全国の都道府県・市区町村教育委員会の2割以下に止ま

っている。

ⅱ)ICT等を通じた支援

○ 家庭にひきこもりがちな不登校児童生徒への支援のため、自宅においてICT等を

活用した学習を行った場合に、一定の要件のもと当該学習を指導要録上学校にお

ける出席扱いとすることが認められている*9。

- 34 -

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- 11 -

○ 例えば、各教科の解説画像を視聴し課題を提出して添削を受けるという学習活

動を、民間業者の提供により自宅で行った場合に出席扱いと認められた事例があ

る。なお、出席扱いの対象となる学習活動については、必ずしもICTを活用したも

のである必要はなく、ファックスや郵便を活用した場合も対象となる。

○ しかしながら、生徒指導調査によると、平成26年度において、このような学

習により出席扱いされた児童生徒は249人であり、仕組みの一層の活用が期待

される(→資料12)。

ⅲ)訪問による支援

○ 家庭等を訪問することにより、家庭で多くの時間を過ごしている不登校児童生

徒やその保護者に対する相談対応、学習支援などを行う「訪問型支援」が行われ

ている。

○ 現在、訪問型支援を行っている教育支援センターが一定程度存在するとともに、

福祉的な観点から訪問型支援やそのための体制作りを担っているスクールソーシ

ャルワーカーの配置なども進められている。

○ しかしながら、訪問型支援等調査によると、継続的・計画的な訪問型支援を行

っている教育委員会は、全国の都道府県・市区町村教育委員会の約3分の1に止

まっている。

③支援のための体制整備の必要性

○ 以上のような学校以外の場を通じた支援や訪問型支援等による支援を、関係者

の連携のもと継続的・組織的に行うためには、そのための支援体制の整備が必要

である。

○ また、当該支援体制による広報活動等を通じて、不登校児童生徒が行う学校以

外の場での学習等について広く社会で理解されるよう、周知を図ることも必要で

ある。

○ 不登校となった児童生徒については、学校に行っていないことへの強い罪悪感

を感じ、自己否定感を持つ場合が多いことが指摘されている。

○ 検討会議においても、不登校を経験した者や不登校の子供の保護者による発表

及び手記により、児童生徒には登校できないことに対する罪悪感や自己否定感が、

保護者には児童生徒を登校させなければならないという切迫した思いが生まれ、

両者の間に強い葛藤が生じたり、時には、児童生徒が自分自身や家族を傷つける

事態が生じたりする場合があることが紹介された(→資料13)。

- 35 -

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- 12 -

○ 不登校児童生徒の状況によっては、学校外で学習等を行ったり、一定期間ゆっ

くり休んだりすることが本人の社会的自立につながるという認識を広く社会に浸

透させることで、児童生徒が自信を持って学校以外の場での学習等を行う環境の

醸成を図る必要がある。

(課題)

○ これらの学校以外の場での学習等に対する支援についての現状を踏まえると、

まず、不登校児童生徒が通う場を通じた支援の充実のため、今後、国及び自治体

は、支援の場の整備・促進やその認知の促進等を一層図ることが必要である。特

に、民間の団体等が不登校児童生徒の社会的自立を支援するための地域の教育資

源として十分認識されていない場合があり、教育委員会・学校が民間の団体等と

の連携を深めること等により、支援の広がりを図る必要がある。

○ また、家庭にいる不登校児童生徒への支援については、取組を進めている自治

体が限られており、今後、全国的に取組の推進を図る必要がある。

○ さらに、これらの学校以外の場での学習等に対する支援を推進するための体制

整備を図る必要がある。

(4)学校以外の場での学習等に対する支援の基本的な方向性

○ 以上の現状・課題を踏まえ、今後、学校以外の場での学習等に対する支援を進

める上で、国及び自治体が目指すべき施策の方向性は、以下の3点である。

1.教育委員会・学校と民間の団体等が連携した支援の充実を図ること

2.家庭にいる不登校児童生徒への支援の充実を図ること

3.支援のための体制整備を図ること

○ 今後、国及び自治体が、学校以外の場での学習等についての社会的な理解の促

進を図りつつ、このような施策を進めることにより、学校による取組と相俟って、

個々の児童生徒の意見を尊重しながら、不登校児童生徒の将来の社会的自立に向

けて、その多様な状況に対応したきめ細かい支援を実現することが必要である。

- 36 -

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第二章 教育委員会・学校と民間の団体等の連携等による支援の充実

(1)教育委員会・学校と民間の団体等の連携による支援の推進

ア.現状・課題

○ 教育委員会(教育センターや教育支援センター等の機関を含む。)・学校と、多

様な学習機会を提供しているフリースクールなどの民間の団体等とが連携し、相

互に協力・補完し合うことは、不登校児童生徒の多様な状況に対応したきめ細か

い支援を行う上で重要である。

○ また、教育委員会・学校との連携が民間の団体等の地域社会での認知につなが

り、そのような認知が民間の団体等で学んでいる児童生徒の自己肯定感を高める

という意義も大きい。

○ 教育委員会・学校と民間の団体等との連携については、これまでもその必要性

が指摘されてきたところである。

○ 例えば、平成15年の文部科学省初等中等教育局長通知では、「不登校児童生徒

への支援については、民間施設やNPO等においても様々な取組がなされており、

学校、教育支援センター等の公的機関は、民間施設等の取組の自主性や成果を踏

まえつつ、より積極的な連携を図っていくことが望ましいこと。そのために、各

教育委員会においては、日頃から積極的に情報交換や連携に努めること。」とされ

ている。

○ 平成28年2月に、文部科学省により、教育委員会・学校と民間の団体等との

連携についての取組状況を把握するための調査が行われた(以下「連携調査」と

いう。)(→資料14)。調査の対象は、全都道府県教育委員会と、小・中学校に通って

いない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設(以下「フリースクール等」

という。)が所在する市区町村教育委員会、合計288自治体である。

○ 調査の結果、分かったことは次の通りである。

・ フリースクール等が所在する自治体でも、約半数の自治体では連携が行われ

ていない

・ 連携が行われている自治体でも、その多くは教育委員会職員によるフリース

クール等への視察に止まっている

・ 連携を進める上での課題として、フリースクール等との連携が学校復帰のた

めの取組と相容れるか明確でないことや、連携の効果が明確でないことが多く

挙げられている

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<教育委員会・学校とフリースクール等の連携に関する取組>(288自治体中・複数回答あり)

<フリースクール等との連携を進める上での課題>(288自治体中・複数回答あり)

92

21

17

17

46

19

13

6

2

7

1

67

153

23

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

教育委員会の職員が、フリースクール等を視察している

ホームページなどを通じてフリースクール等を紹介している

フリースクール等との連携を目的とした協議会を設置している

教育委員会が設置する会議の構成員にフリースクール等が

入っている

教育委員会の事業等へのフリースクール等の参加を認めている

教育委員会とフリースクール等で共同で事業等を行っている

フリースクール等に対して事業委託を行っている

フリースクール等に対して施設の貸与を行っている

フリースクール等を施設の指定管理者として指定している

フリースクール等が使う際の施設使用料の減免を行っている

フリースクール等に教職員を派遣し、研修を行っている

学校に対してフリースクール等に関する情報提供をしたり、

学校によるフリースクール等の訪問を促したりしている

特に連携の取組を行っていない

その他

100

55

116

146

102

66

0 20 40 60 80 100 120 140 160

フリースクール等の活動内容等についての情報がない

どのフリースクール等と連携すればいいかが分からない

フリースクール等との連携の効果が明確でない

フリースクール等との連携が学校復帰のための取組と

相容れるかが明確でない

児童生徒等に関する個人情報の共有が難しい

フリースクール等との連携について、

学校の理解が十分でない

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イ.推進のための方策と考え方

○ 民間の団体等により支援を受けている児童生徒は、市町村教育委員会・学校が

責任を持って育むべき児童生徒であり、校長は、民間の団体等により支援を受け

ている児童生徒の学習状況等を把握し、指導要録上当該学習の評価を行ったり出

席扱いとしたりすることができることとされている。

○ また、民間の団体等における支援の在り方は、教育委員会や学校が通常行って

いる指導や支援と異なる態様で行われている場合もあるが、個々の児童生徒にと

っては、それが学校で十分受けられなかった不可欠な支援である場合がある。

○ こういったことを踏まえると、教育委員会・学校が、民間の団体等で支援を受

けている児童生徒の状況を把握するとともに、民間の団体等が行っている取組へ

の理解を深められるよう、民間の団体等との連携を幅広く行うことは必要なこと

である。

○ このような考え方のもと、検討会議においては、連携が進んでいる地方自治体

の取組をヒアリングすること等により、連携を進めるための方策について協議し

てきた。

(視察・意見交換、連携協議会の設置、教員派遣)

○ 連携を進める上で第一に重要なことは、不登校児童生徒の社会的自立を支援す

るという共通の目標を有しているという認識の上に立って、教育委員会・学校と

民間の団体等が関わりを持ち、一定の信頼関係を築くよう努力することである。

○ 信頼関係の構築には、実際に顔を合わせ、意見交換を行うことが欠かせない。

例えば、教育委員会の職員や学校の教職員が民間の団体等を訪れ、児童生徒の様

子や民間の活動を見て、意見交換を行ったり、民間の団体等のスタッフが教育委

員会等の職員と会い、情報共有を行ったりすることは連携の第一歩である。

○ また、連携の先進自治体においては、視察を行うに止まらず、教育委員会と民

間の団体等の間の連携協議会を立ち上げ、定期的に協議を行っている事例がある。

○ 例えば京都市の「京都市児童生徒登校支援連携会議」は、当初、行政機関同士

の情報交換をする場であったものが、平成18年度から民間の団体等の代表が委

員として加わり、民間の団体等を含めた幅広い関係者の間で「お互いに顔の見え

る関係」を作る場として機能している(→資料15)。

○ また、神奈川県では、平成18年2月から県全体の協議の場として「神奈川県

学校・フリースクール等連携協議会」が設置されるとともに県内9地区で地区別

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協議会が設置されるなど、県レベル、草の根レベル双方での連携が推進されてい

る(→資料16)。

○ 同県ではさらに、民間の団体等を教員の派遣体験研修の派遣先の一つとし、1

年間、民間の団体等による支援を教員に体験させることにより、不登校児童生徒

への対応についての理解を深めさせる取組を行っている。

(協働した取組の実施)

○ 連携方策の次のステップとして考えられるのが、協働した取組の実施である。

例えば、教育委員会の事業に民間の団体等の児童生徒やスタッフが参加したり、

両者が共同で会の開催を行ったりすることなどが挙げられる。

○ このような事例として、大分県では、県立図書館が行っている調べ学習や読み

聞かせ等の活動に、民間の団体等に在籍している児童生徒への参加を呼びかけ、

社会性を育む契機としている例がある。

○ また、神奈川県が年間2回開催している不登校児童生徒及びその保護者向けの

「不登校相談会」には神奈川県内の民間の団体等のスタッフが参加しており、児

童生徒や保護者は、ブース別に民間の団体等から話を聞くことができる。

○ 教育支援センターと民間の団体等が連携している事例もあり、例えば、横浜市

では、教育支援センターの職員と民間の団体等のスタッフが相互に訪問し懇談の

場を持ったり、双方の児童生徒が文化行事や合宿活動を通して交流したりすると

いった取組が行われている。

(事業委託等)

○ さらに、自治体によっては、民間の団体等に事業を委託することなどにより、

民間の団体等のノウハウを活用した支援を行っている事例がある。

○ 事業委託については、現在、全国24の自治体(うち教育委員会が13)で行

われている。委託の内容は、体験活動、教育相談などであり、民間の団体等のき

め細やかな事業運営により、児童生徒の多様な状況に応じた支援が行われること

が期待されている。

○ また、東京都では、支援団体の育成・増加や、利用者が支援団体から安心して

支援を受けられる環境を作ることを狙いとした、民間の団体等との連携事業を行

っている。

○ 「ひきこもり等の若者支援プログラム普及・定着事業」であり、この事業では、

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NPO法人等からひきこもり等の状態にある若者及びその家族を対象とした訪問

相談や居場所提供等についての企画を募集し、1年間の研究助成を行っている。

当該NPO法人等は、最初の1年間は「研究団体」として、活動が適切と認めら

れれば、それ以降は「登録団体」として活動を行うことができる(→資料17)。

(公民連携による施設の設置・運営)

○ 公共施設の指定管理者に民間の団体等を指定すること等により、自治体と民間

の協働のもと、不登校児童生徒を支援する施設の設置・運営が行われている事例

もある。

○ このような例として挙げられるのが、川崎市が青少年教育施設の指定管理者と

して民間の団体等を指定し不登校児童生徒の居場所として運営している「フリー

スペースえん」、大阪府池田市が市の宿泊施設の指定管理者として民間の団体等を

指定するとともに教育相談業務の一部を委託して運営している「スマイルファク

トリー」である(平成27年1月時点)(→資料18)。

○ 両者とも、児童生徒のニーズに合った運営を行えることが評価されて指定を受

けている点、原則会費が無料である点、利用希望者が年々増加している点などは

共通であり、両市にとってなくてはならない教育資源となっている。

○ このような公民連携による不登校児童生徒の支援のための施設の設置・運営は、

教育支援センターが不登校児童生徒の状況に応じた十分な支援を行えていない場

合があるという課題や、民間の団体等に通いたくても経済的負担が重く通えない

家庭があるという課題を解決し得る方法である。

○ 利用者の増加等に見合う運営資金の十分な確保が必要という指摘もあり、今後、

このような点への配慮も図りながら、公民連携による施設の設置・運営に基づく

支援方策の一層の推進が必要である。

(連携の課題への対応)

○ このような様々な形での連携が進んでいる自治体もある一方、連携が進んでい

ない自治体が数多いのが実情である。

○ 連携が進んでいない自治体の多くが、連携を進める上での課題として、民間の

団体等との連携が学校復帰のための取組と相容れるか明確でないことを挙げてい

る。

○ 平成15年の「今後の不登校への対応の在り方について(報告)」(不登校問題

に関する調査研究協力者会議)で指摘されているように、不登校の解決の目標は、

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児童生徒が将来的に精神的にも経済的にも自立し、豊かな人生を送れるよう、そ

の社会的自立に向けて支援することであり、その意味においても、民間の団体等

との連携などによる不登校児童生徒への支援に当たっては、学校に登校するとい

う結果のみを最終目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的にとら

え、社会的に自立することを目指すことが必要である。

○ 現在、先進的に連携を進めている自治体においても、連携を始める前は、学校

復帰のための取組と相容れるかといったことや連携することによる効果について

課題意識を持っていた。そのような中で、以下のように取り組むことでその課題

を乗り越えている。

○ 一つ目は、連携しようとする民間の団体等に教育委員会の職員が繰り返し足を

運び、スタッフと言葉を交わし、児童生徒や活動の様子を見ることである。民間

の団体等でどのように児童生徒が支援を受けているかという実態を知ることなく、

連携の意義や効果を判断することはできない。

○ 二つ目は、自治体としてどのような民間の団体等と連携するかについて、一定

の方針を持つことである。例えば、神奈川県教育委員会では、「不登校児童生徒の

将来の社会的自立と学校生活の再開に向けた相互理解」が、連携を行う条件であ

るとした上で、そのことを繰り返し民間の団体等に確認しながら連携を進めてい

る。

○ 三つ目は、すでに一定の関係がある民間の団体等があれば、当該団体等と情報

を共有しながら、少しずつ連携の幅を広げていくことである。

○ なお、検討会議においては、民間の団体等が視察の受け入れや会議への参加、

不登校児童生徒の出席状況の連絡等を行うことは重要だが、そのための経費や事

務負担は軽くない場合があり、教育委員会等が連携を進める上で、このような負

担への配慮が必要という指摘があった。

ウ.具体的施策

○ 以上のように、教育委員会・学校と民間の団体等の連携を推進することは重要

であり、すでに連携が進んでいる自治体の取組を参考としながら、連携の推進を

図る必要がある。

○ このため、今後、国においては、連携を図るためのモデル事業を実施するとと

もに、連携の先進事例の周知を図る必要がある。

○ また、教育委員会においては、地域の実情に応じ、連携に向けた取組を段階的

に推進する必要がある。

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(2)民間の団体等の活動の充実

ア.現状・課題

○ 不登校児童生徒が通う場を通じた支援を充実させる上では、教育委員会・学校

と民間の団体等の連携とともに、民間の団体等で行われる活動がより児童生徒の

状況に応じた支援となるよう、当該活動の一層の充実が図られることが期待され

る。

○ 現在、民間の団体等の中には、定期的にスタッフミーティングや内部研修を行

うこと等により、スタッフによる児童生徒への関わりの改善を図っている例があ

る。

○ また、民間の団体等の間でネットワークを形成し、共同でスタッフの養成研修

や事業実施を行うこと等を通じて、スタッフ同士が相互に学び合う機会を作り出

している事例もある(→資料21)。

イ.充実のための方策と考え方

(連携協力を通じた活動の充実)

○ 民間の団体等が行う活動は、それぞれの団体等の自主性・主体性のもと多様な

形で行われており、活動の目標・内容が共通化されているものではない。不登校

児童生徒の状況やニーズは多様であり、このような多様な支援の形があることは

望ましいことだと言える。

○ それと同時に、民間の団体等が、その独自性を維持しながら相互に連携協力す

ることは、民間の団体等の活動の充実につながり、支援を受ける不登校児童生徒

にとって意義が大きい。

○ このため、民間の団体等が、互いに共有できる目標や取組方針のもと、相互に

連携協力し、共同で研修や事業、広報活動等を行うことや、情報共有を図る取組

等の充実が期待される。その際、教育委員会等や学校が、民間の団体等の求めに

応じて可能な協力を行うことが望ましい。

○ また、民間の団体等の間の自主的な動きとして、互いの活動の外部への発信を

図ったり、一定の枠組みのもと相互に認証するといった仕組みを構築することも

考えられる。

○ 例えば、互いの活動内容を知って外部に公開する取組や、各団体等が掲げてい

る目標に照らした取組状況を相互に評価し、その評価結果を外部に示したりする

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*10 中間支援組織とは、市民、NPO、企業、行政等の間にたって様々な活動を支援する

組織であり、市民等の主体で設立された、NPO等へのコンサルテーションや情報提供な

どの支援や資源の仲介、政策提言等を行う組織を言う。中間支援組織自らがNPO等であ

る場合もある。(平成23年2月内閣府「新しい公共支援事業の実施に関するガイドライ

ン」)

- 20 -

ことなどである。

○ このような相互評価の事例として、検討会議では、アメリカの大学等高等教育

機関で行われているアクレディテーションの取組が紹介された。複数の高等教育

機関同士が集まって団体を結成し、同団体に所属している教員や職員が学校への

訪問による評価等を行う、いわゆるピア・レビューの方法である(→資料22)。

○ それぞれの自主性・主体性のもとで運営されている民間の団体等にとって、こ

のような方法による評価は一つの参考になるものと考えられる。

○ なお、相互評価を行うに当たって一定の枠組みが必要な場合には、「民間施設に

ついてのガイドライン(試案)」(平成15年5月16日文部科学省初等中等教育

局長通知別添2)を参考とすることも考えられるところである(→資料23)。

(中間支援組織の形成)

○ このような民間の団体等の間の連携協力を推進する上で、連携協力した取組を

中心となって進める主体があることが望ましい。

○ 現在、市民活動の領域で、民間団体同士や、民間団体と行政・企業の間などを

仲立ちし、ネットワーク化や情報の収集・発信、相談・コンサルティングなどを

行う「中間支援組織」と呼ばれる組織が設置されつつある*10(→資料24)。

○ フリースクールなど民間の団体等の間においても、相互の連携協力を進めるた

め、既存のネットワークの一層の充実が図られたり、新しい組織が立ち上げられ

たりすることが期待される。

(支援プラン等の作成)

○ 検討会議では、民間の団体等で学んだことが社会に出るために必要な力として

身に付いたかを担保する視点が重要であるという意見も出された。

○ 民間の団体等が、それぞれの児童生徒に応じた目標や取組方針を、スタッフ間

や保護者等関係者との間で共有し、目標・方針に照らした状況を確認しながら支

- 44 -

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援を進めることは、継続性や実効性のある支援につながると考えられる。

○ 現在、個別支援計画を作成して学習支援を行っている民間の団体等もあり(→資料

25)、今後、民間の団体等が、それぞれの自主的な取組として、各々の児童生徒に

ついての支援プラン等を作成して支援を進めたり、上記の中間支援組織において

そのためのひな形を作成したりするという工夫も、民間の団体等の活動の充実策

の一つとして期待されるところである。

○ なお、不登校児童生徒を受け入れ、その安心感や自己肯定感、自主性・主体性

を伸ばすことを目指した民間の団体等の取組は、教育委員会や学校において参考

とすべき面があると考えられ、教育委員会・学校と民間の団体等の間での相互の

学び合いも期待される。

ウ.具体的施策

○ 不登校児童生徒が通う場を通じた支援を充実させる上で、民間の団体等の間の

連携協力の取組などにより、その活動の充実が図られることは重要である。

○ 今後、このような取組の促進を図るため、国は、民間の団体等や研究機関に委

託することなどにより、相互評価や中間支援組織の在り方、支援プラン等の作成

・活用などに関する調査研究を行い、民間の団体等の自主的な取組を後押しする

必要がある。

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第三章 家庭にいる不登校児童生徒への支援の充実

○ 不登校児童生徒の中には、家庭で多くの時間を過ごしている児童生徒がいる。

○ このような場合、児童生徒、保護者の学校をはじめとした外部との関わりが希

薄になり、必要な情報や支援を十分得られない状況になったり、孤立感を強めた

りしている場合があることが考えられる。

○ 家庭にいる不登校児童生徒が社会的自立に向かえるよう、家庭への学習等の支

援を行ったり当該学習等への社会的な理解の促進を図ることは重要であり、児童

生徒や保護者の状況を見極めながら、必要に応じ関係機関間の連携を図りつつ、

保護者への情報提供やICT等を通じた支援、さらに、家庭等への訪問による支援の

充実を図る必要がある。

(1)保護者への情報提供等

○ 保護者に提供する情報としては、在籍している学校の学習活動や学校行事等に

関する情報、高校入試など進路に関する情報、教育支援センターや民間の団体等

学校以外で支援を受けられる場やICT等による学習など家庭で行える学習方法に関

する情報、不登校に関する相談窓口など保護者が不登校について相談できる機関

に関する情報、医療機関に関する情報などが考えられる。

○ また、保護者が、不登校となっている子供に向き合い、その気持ちを受け止め

ることは、児童生徒の精神的な安定や意欲の向上にとって大きな意味がある。こ

のため、保護者が不登校についての理解を深める機会が提供されたり、そのよう

な機会についての情報提供が行われることが重要である。

○ 例えば、不登校児童生徒の保護者が参加する不登校の保護者の会は、不登校児

童生徒の保護者同士が交流することを通じて子供への接し方や進路等について理

解を深める大切な場となっており、そのような場が増えたり周知されたりするこ

とが必要である。

○ 他方、訪問型支援等調査によると、現在、保護者に対し、民間の団体等に関す

る情報を提供している教育委員会は、全国の都道府県・市区町村教育委員会の約

1割である。また、保護者を対象に不登校に関する説明会・相談会を実施してい

る教育委員会や不登校の保護者の会の開催や開催への支援を行っている教育委員

会は2割以下に止まっている(→資料28)。

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<保護者への情報提供の実施状況>(1778自治体中・複数回答あり)

○ このため、今後、保護者への情報提供や保護者間の交流機会の提供等の一層の

推進が必要である。

○ その際、教育委員会等の職員が不登校の保護者の会に参加して、保護者の経験

から学んだり不登校の保護者の会の活動の状況等について理解したりするよう努

めることや、保護者間のつながりを作っている民間の団体等と連携して保護者間

の交流機会の充実を図ることも大切である(→資料19)。

(2)ICT等を通じた支援

○ 家庭で多くの時間を過ごしている不登校児童生徒に対し、ICT等を通じて学習支

援等を行うことも児童生徒の状況によって有効な手段となり得る。

○ 一定の要件のもと、不登校児童生徒が自宅でICT等を活用した学習を行った場合

に、学校における出席扱いとすることが認められているが、生徒指導調査による

と、平成26年度において出席扱いになった児童生徒は249人に止まっている(→

資料12)。

○ その原因としては、学校の教員が十分関わっていない家庭での学習について、

学校として出席扱いすることに困難を感じていること等が考えられる。

○ 現在、自治体によっては、Eメールにより教員とやりとりができる機能などを組

み込んだ学習ソフトを通じて、家庭で過ごしている不登校児童生徒への学習機会

の提供を行っている事例もある。

○ 今後、様々な工夫により、不登校児童生徒に対するICT等による学習を通じた支

援が、将来の社会的自立を見据えながら充実されることが期待される。

1175

219

322

305

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

保護者への教育支援センター(適応指導教室)

に関する情報の提供

保護者へのフリースクール等に関する情報の提供

保護者を対象とした不登校に関する説明会や

相談会の実施

不登校の保護者同士が意見交換を行う会

(「親の会」)の開催や開催に対する支援

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*11 生徒指導調査によると、平成26年度において、「指導の結果登校する又はできるよう

になった児童生徒」は不登校児童生徒の31.5%となっている。

- 24 -

(3)訪問による支援

ア.現状・課題

○ 現在、学校・教育委員会や民間の団体等によって、家庭で多くの時間を過ごし

ている児童生徒の家庭等を訪問し、児童生徒や保護者に対する相談対応や、学習

支援などを行う訪問型支援の取組が行われている。

○ 訪問型支援の利点の一つは、児童生徒の心身の状況や変化を直接的に把握し、

その時々の児童生徒の状況に応じた支援を行うことができることである。

○ また、対人関係の困難を強く感じている児童生徒にとって、安心できる場所で

学習支援等を受けられる機会が保障されるという面も大きい。

○ さらに、家庭環境の改善に向けた支援の必要性について把握し得ることや、児

童生徒・保護者が孤立感を強めている時には、訪問型支援が外部とつながるきっ

かけとなる場合があることも利点として挙げられる。

○ 学校では、学級担任等の教職員が児童生徒の状況に応じて家庭への訪問を行い、

児童生徒への支援や保護者の相談への対応等を行っている。

○ 学校による家庭訪問は、教職員が不登校児童生徒の生活や学習の状況を把握し、

本人やその保護者が必要としている支援を行う上で大切である。生徒指導調査に

おいても、約半数の学校から、家庭訪問を行い、学業や生活面での相談に乗るな

ど様々な指導・援助を行ったことが、「指導の結果登校する又はできるようになっ

た児童生徒」*11に特に効果のあった学校の措置として挙げられており、児童生徒の

意思や保護者の状況への配慮のもとで、学校の取組の一層の充実が望まれる。

○ 一方で、児童生徒やその保護者との信頼関係が築けなかったり損なわれたりし

ていて面会ができない、児童生徒やその保護者の課題が複合的であるなど、学校

による取組だけでは対応が困難で、家庭環境への働きかけや福祉等関係機関との

連携・調整が必要な場合も想定される。

○ これらのことを踏まえると、教育委員会が、児童生徒やその保護者の状況を踏

まえつつ、学校と緊密な情報共有を行い、教職員による訪問も含めて第四章で後

述する支援体制のもと、訪問型支援を推進することが望まれる。

- 48 -

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- 25 -

○ 教育委員会による訪問型支援の実施状況や課題等については、訪問型支援等調

査において次のような状況が分かった。

・ 訪問型支援は、約3分の2の教育委員会においては実施されていない

・ 訪問型支援を行っている教育委員会の中で、支援計画を作成している教育委

員会は約4分の1である

・ 訪問型支援を行った児童生徒数の当該自治体における不登校児童生徒数に対

する割合は、半数以上の教育委員会において5%未満である

・ 訪問型支援の際の活動内容として、ほとんどの教育委員会で相談対応が行わ

れており、次いで、勉強やテレビゲームなどの遊びを行っている教育委員会が

約3分の1である

○ また、訪問型支援を行うに当たっての課題として、

・ 訪問型支援を行う者や予算の確保が難しいこと

・ 訪問型支援を受け入れてもらうよう児童生徒や保護者と信頼関係を築くこと

が難しいこと

が多く挙げられており、これらの課題を踏まえた推進方策が必要である。

<訪問型支援の実施の有無> <支援計画作成の有無>

(1778自治体中) (656自治体中)

<訪問型支援を行った児童生徒数の不登校児童生徒数に対する割合>

(656自治体中)

357

142

69

88

0 50 100 150 200 250 300 350 400

5%未満

5%~15%未満

15%~30%未満

30%以上

656

1122

行っている

行っていない

178

478

作成している

作成していない

- 49 -

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- 26 -

<活動内容>(656自治体中・複数回答あり)

<訪問型支援を行う際の課題>(1778自治体中・複数回答あり)

イ.推進のための方策と考え方

(訪問型支援を行う人材の確保)

○ 訪問型支援を推進するに当たっては、訪問型支援を行う人材の確保が必要であ

る。

○ 訪問型支援を行う人材としては、教育委員会の指導主事、教育支援センターの

職員や、スクールソーシャルワーカーなどが考えられる。地域によっては、スク

ールカウンセラーが訪問型支援を担っている場合もある。

650

225

207

187

130

66

0 100 200 300 400 500 600 700

会話・傾聴、悩み事の相談対応

勉強

テレビゲームなどの遊び

外出

運動

その他

1214

889

709

693

358

120

161

863

627

323

323

247

93

98

0 500 1000 1500

訪問型支援を

行っている自治体

訪問型支援を

行っていない自治体

訪問型支援を受け入れてもらうよう児童生徒と信頼関係を築くことが難しい

訪問型支援を行う者の確保が難しい

訪問型支援を行うための予算の確保が難しい

訪問型支援を受け入れてもらうよう保護者と信頼関係を築くことが難しい

どのように訪問型支援を行えば効果的なのかが分からない

特に課題を感じていない

その他

- 50 -

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*12 教育支援センター(適応指導教室)の実態調査について(平成27年6月25日公

表)(文部科学省)

*13 家庭教育支援チームを活用した訪問型家庭教育支援について、平成28年3月に「訪

問型家庭教育支援の関係者のための手引き」(文部科学省)が作成されている(→資料31)。

- 27 -

○ 教育支援センターについては、平成27年6月公表の文部科学省調査 *12による

と、全国約1,300箇所中約500箇所において、家庭への訪問指導を行って

いる(→資料29)。

○ また、スクールソーシャルワーカーについては、自ら訪問型支援を行うことと、

支援のための体制作りや関係機関との連携・調整を行うことの双方の役割が期待

されており(→資料30)、平成26年度には、全国で約1,200人が国の補助事業

により配置されている。

○ 今後、訪問型支援を行う教育支援センターの整備充実や、スクールソーシャル

ワーカー、スクールカウンセラーの一層の配置により、訪問型支援の推進を図る

必要がある。

○ また、自治体によっては、様々な工夫により、訪問型支援を行う人材の確保を

行っている事例がある。

○ 例えば、訪問型支援を行う人材として大学生ボランティアの協力を得ている事

例や、保健師を活用している事例、地域人材を中心とした家庭教育支援チーム*13に

よる家庭教育支援の取組と連携したり民間の団体等に委託したりすることにより

訪問型支援を行っている事例がある。

○ 民間の団体等調査によると、民間の団体等の半数以上が家庭への訪問を行って

おり、民間の団体等との連携により訪問型支援の充実を進めることは有効な方策

の一つだと考えられる。

(訪問型支援を行う人材の資質の確保・向上)

○ 訪問型支援の成否は、支援者の姿勢や資質により大きく左右される。

○ 訪問型支援を行うに当たって第一に求められるのは、不登校となっている児童

生徒やその保護者の声を聴き、その状況や気持ちを共感的に理解しながら、共に

児童生徒一人一人の状況や思いに応じた将来の姿を目指していく姿勢である。

○ その上で、心理学やカウンセリングに関連する知識・技能、保健・福祉等に関

する知識・技能、学校教育についての理解、発達障害など特別支援教育に関する

- 51 -

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- 28 -

知識・経験などを持っていることが望まれる。

○ また、訪問型支援を実際に行う中で、どのようにすればより良い支援を行うこ

とができるか協議することなどにより支援の質や支援をマネジメントする力を高

めることも重要であり、支援を行う人材の資質を高めながら、効果的な訪問型支

援が行われることが望まれる。

(児童生徒・保護者の状況に応じた支援)

○ 訪問型支援を効果的・継続的に行うためには、児童生徒との信頼関係が必要で

ある。このため、児童生徒の意思を十分尊重し、支援を行う者や支援の内容への

児童生徒の受け止め方に配慮しつつ、まずは見守るという対応も含め、その時々

の児童生徒の状況に応じた支援を行う必要がある。

○ 例えば、児童生徒の心身の状況を考慮することなく、徒に家の外に出ることを

求めることや、勉強するよう無理に働きかけたりするような支援の方法は、過度

の緊張感をもたらしたり、自己否定感を一層強めてしまったりする恐れがある。

○ また、児童生徒が人と会える状況にない場合においては、地域や関係機関、民

間の団体等とも連携しながら、会える人が会う、会える時間や場所で会うなど、

それぞれの状況ごとに対応を工夫することも必要である。

○ 訪問型支援においては、保護者との信頼関係も欠かせない。

○ 保護者の中には、行政や学校への不信感やプライバシー保護の意識等から、訪

問型支援に対して拒否感を持つ場合がある。また、訪問型支援による保護者への

働きかけが、保護者を追い詰めることにつながり、かえって事態を深刻化させる

場合も考えられる。

○ このため、保護者の状況の把握に努め、保護者と対話を繰り返しながら、児童

生徒への支援の方向性や課題意識を共有して一緒に取り組む関係を作るという基

本姿勢のもと、信頼関係を築いていくことが必要である。

○ なお、児童生徒の状況によってはネグレクトなど保護者の虐待が疑われたり、

保護者の精神的不調など家庭の生活環境が要因の一つになって不登校になってい

る場合も想定される。

○ こういった場合には、児童相談所や要保護児童対策地域協議会等の関係機関と

連携し、スクールソーシャルワーカー等の活用も図りながら、迅速で適切な対応

を行うことが求められる。

- 52 -

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- 29 -

(支援計画に基づく支援)

○ 訪問型支援を行っている教育委員会においても、支援計画を作成して支援を行

っている教育委員会は、約4分の1に止まっている。

○ 支援計画を作成して訪問型支援を進めることで、児童生徒や保護者が抱えてい

る課題やその解決・改善に向けた方向性が明確になるとともに、関係者間で支援

目標の共有化を図ることができる。そのことが、個々の状況に応じた実効性のあ

る支援を行うことにつながる。

○ 今後、児童生徒の状況に応じた支援が図られるよう、支援計画や支援計画作成

等についてのマニュアルの策定による訪問型支援の一層の推進が期待される。

(4)具体的施策

○ 以上のように、保護者に対する情報提供等やICT等を通じた支援、家庭への訪問

等による支援を推進することが必要である。

○ このため、国は、これまでの取組の成果を踏まえつつ、これらを推進するモデ

ル事業を行い、全国に普及させる必要がある。

○ また、訪問型支援を行う人材の育成・確保や体制作りを進める観点から、訪問

型支援を行う教育支援センター等の整備充実の促進や、スクールソーシャルワー

カー、スクールカウンセラーの配置、研修の充実など一層の環境整備を図る必要

がある。

○ 教育委員会においては、地域の実情に応じて、支援方策を充実させる必要があ

る。特に、不登校の保護者の会についての支援を行っている自治体は少なく、幅

広く情報提供を行うことなど早急な支援の充実が求められる。

- 53 -

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第四章 支援体制の整備

(1)整備に関する方策と考え方

(基本的な考え方)

○ 学校以外の場での学習等に対する支援を行う際には、児童生徒や保護者、地域

で支援を行っている関係機関・団体等の状況を踏まえて、どのような支援方策が

必要かを検討の上実施するとともに、その結果を踏まえて取組内容を改善してい

く必要がある。

○ また、不登校児童生徒の状況は様々であり、教育委員会・学校を中心に不登校

児童生徒に関わる関係者が連携することにより、児童生徒の状況や必要な支援を

見極めるために実態把握(行動観察や情報の収集・分析等)やアセスメントを行

うとともに、児童生徒や保護者がどのように支援内容等を受け止めているかを把

握しながら、適切な役割分担ときめ細かい連携のもとで必要な支援を継続するこ

とが必要である。

○ このような支援の継続的な改善・充実や関係者が連携した支援を進める上では、

そのための支援体制の構築が必要である。

(担当部署等の位置付け)

○ このような支援体制の中心として、学校以外の場での学習等に対する支援の継

続的・組織的な推進を図ることを目的とした担当部署や担当者が教育委員会等の

中に位置付けられることが期待される。

○ 例えば、生徒指導を担当している教育委員会の部署の所掌に、学校以外の場で

の学習等に対する支援の推進を図ることを明確に位置付け、同部署が、学校や関

係機関・団体等と情報共有しながら、教育支援センターの整備充実や民間の団体

等との連携の推進、保護者に対する情報提供や訪問型支援の推進等を図ることが

考えられる。

○ また、同部署等において、不登校児童生徒の状況によっては、学校以外の場で

の学習等が本人の社会的自立につながるということが広く社会で理解されるよう、

周知を図ることも考えられる。

(関係者間の連携による支援の推進)

○ さらに、不登校児童生徒の支援に関わる関係者が、連携して支援を行うための

体制が設けられることが必要である。

- 54 -

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○ まず、教育委員会が学校以外の場での学習等に対する支援を行うに当たっては、

学校との緊密な情報共有・連携体制のもとで、児童生徒の状況や教育的ニーズを

把握し、組織的な支援を進める必要がある。

○ 例えば、児童生徒の欠席状況が一定期間継続した場合には、速やかに教育委員

会と学校がケース会議を開き、支援方策について協議することとするといった支

援体制を設けることなどである。

○ また、支援体制の構築の際、「子ども・若者育成支援推進法」に基づく「子ども

・若者支援地域協議会」や「児童福祉法」に基づく「要保護児童対策地域協議会」

など関係部局を横断した既存の仕組みの活用も図りながら、個人情報の保護につ

いてルールの適切な運用を図りつつ、福祉機関などの関係機関の参画を得たり、

児童生徒が民間の団体等から支援を受けている場合には、民間の団体等を含めた

体制とすることなども考えられる。

○ さらに、教育委員会が訪問型支援などにより児童生徒の学習活動の状況等を把

握した場合は、構築されている支援体制により、学校をはじめとした関係者と情

報を共有することが必要である。学校においては、共有された情報を踏まえて、

出席扱いや学習の評価等を行うことが考えられる。

○ 支援体制において情報共有を図るに当たっては、支援の目標・取組等を記載す

る様式を、教育委員会を中心に作成することも考えられる。

○ 現在、「不登校に関する調査研究協力者会議」において、各学校で不登校児童生

徒に対する支援状況等を記載する「児童生徒理解・教育支援シート」を作成し、

関係機関で共有する取組を進めることが検討されている(→資料33)。

○ また、本審議経過報告案においても、第二章で民間の団体等による支援の見通

し等の作成について、第三章で訪問型支援を進める上での支援計画の作成につい

て、取組の推進が期待される旨指摘した。

○ これらの様式等は、いずれも支援の目標・取組を明確化し、関係者間の協議や

連携した取組を推進することを目指しているものであり、作成の際には、地域の

学校、教育委員会、関係機関・団体等の間で適切な様式や活用方法を検討の上、

相互に連関したものとすることが望まれる。

(2)具体的施策

○ 以上のように、不登校児童生徒への学校以外の場での学習等に対する支援を推

進するための支援体制の整備が必要である。

- 55 -

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○ このため、国は、自治体での支援体制を整備するモデル事業を行うとともに、

研究機関に委託することなどにより、民間の団体等との連携等を推進する全国的

なセンター機能の整備の在り方について調査研究する必要がある。

○ 教育委員会においては、地域の実情に応じて、支援体制の整備を図る必要があ

る。

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第五章 今後の検討課題

○ 検討会議では、3つの検討事項のうち、「(2)子供たちへの学習支援の在り方」

を中心に検討を行ってきた。

フリースクール等に関する検討会議における検討事項(1)フリースクール等での学習に関する制度上の位置付け(2)子供たちへの学習支援の在り方(3)経済的支援の在り方(4)その他フリースクール等に関連する事項

○ 「(1)フリースクール等での学習に関する制度上の位置付け」、「(3)経済的

支援の在り方」については、以下のような指摘があったところであり、これらに

ついては、今後の検討課題だと考える。

(制度上の位置付け)

○ 検討会議においては、不登校児童生徒が小・中学校等に在学しながら民間の団

体等に通っているという、制度と実態とのずれがあるという課題も指摘された。

○ この点については、義務教育制度と関わる課題であり、また、義務教育として

の質をどう保証するかという点からも考える必要があるため、今後、本報告で提

言した教育委員会・学校と民間の団体等との連携や訪問型支援の推進等により、

学校以外の場での学習等がどのように充実されるかを見定めていく必要がある。

(経済的支援)

○ 検討会議においては、

・ 民間の団体等に通いたくてもお金を払えないという声もある

といった指摘があった。

○ 民間の団体等は、不登校児童生徒を受け入れ、様々な学習活動や体験活動、人

と関わる機会や安心できる居場所の提供などを通じて、その社会的自立を支援し

ており、不登校児童生徒にとって、そのような民間の団体等で学ぶ機会があるこ

とは重要である。

○ このため、民間の団体等をはじめ学校以外の場で学習等を行う不登校児童生徒

に対する経済的支援についての方策を推進する必要がある。

○ 現在、文部科学省においては、平成27年度の補正予算により、民間の団体等

で学ぶ経済的に困窮した家庭の不登校児童生徒の学習活動等に必要な経費を支援

- 57 -

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するモデル事業が行われている(→資料34)。

○ このモデル事業の内容を基本として、不登校児童生徒がその状況に応じた支援

を受けられるよう、経済的な困難等を抱える家庭への経済的支援の具体的展開を

図ることが考えられる。

○ その上で、今後、児童生徒全体の教育にかかる経済的負担の軽減に取り組んで

いく中で、不登校児童生徒に対する経済的支援の在り方についても考えていくこ

とが望まれる。

○ また、第二章で指摘した公民連携による不登校児童生徒を支援する施設の設置

・運営は、民間の団体等で学ぶことを希望する不登校児童生徒の経済的負担の軽

減につながり得るものであり、このような設置・運営の取組を推進することも経

済的支援の充実方策の一つと考えられる。

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フリースクール等で学ぶ不登校児童生徒への支援モデル事業平成27年度補正予算額 640百万円

【目的・概要】フリースクール等で学ぶ不登校児童生徒の状況に応じた総合的な教育支援体制を構築するためのモデル事業を通じて、不登校児童生徒が自信を持って学べる教育環境を整備

【内容】

① 経済的支援

フリースクール等で学ぶ経済的に困窮した家庭の不登校児童生徒の学習活動等に必要な経費(通学費、屋外での体験活動費など)を支援

② 学習支援

支援員が家庭訪問等を行うことにより学習状況等を把握し、状況に応じた学習支援・進路相談等を実施

③ 教育委員会とフリースクール等の連携強化

教育委員会とフリースクール等の連携強化による不登校児童生徒への支援体制の構築

① 教育支援センターの設置促進

教育支援センター(適応指導教室)など、不登校児童生徒の状況に応じた学習の場の設置促進のためのコーディネーターの配置等

② 経済的支援

センターで学ぶ経済的に困窮した家庭の不登校児童生徒の学習活動等に必要な経費(通学費、屋外での体験活動費など)を支援 ※ただし、Ⅰの事業とセットの場合のみ

Ⅰ フリースクール等で学ぶ不登校児童生徒への支援(経済面・学習面・連携強化)

Ⅱ 教育支援センター等の設置促進支援

【実施予定件数】 【支援の流れ等】

国メニュー毎にそれぞれ10件モデル事業等を採択予定

都道府県等が行うモデル事業(実施主体:市町村等)

委託費

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・調査研究成果の分析・検証・周知施策への反映

いじめ対策・不登校支援等推進事業①(前年度予算額:18百万円)

29年度予算額(案):179百万円

自殺予防

脳科学・精神科学 貧困対策

長期宿泊体験

いじめ対策(専門的人材の活用)

◇法的側面からのいじめ抑止策(スクールロイヤーの活用)

◇正規職員としてのSC・SSWの活用方策

不登校児童生徒支援(学校以外の場における教育機会の確保)

その他生徒指導上の課題

いじめの未然防止、早期発見・早期対応、不登校児童生徒へのきめ細かな支援体制の整備等の推進

学校現場における科学的知見の活用

組織的な自殺予防プログラムの開発

学 校 学 校 外

貧困を背景とした問題行動等の改善、目的意識の醸成

長期宿泊体験を活用した社会性・自主性の育成

いじめ対策・不登校支援等推進事業スクールカウンセラー活用事業

スクールソーシャルワーカー活用事業

活用

◇民間団体の自主的な取組を促進するための仕組み等に関する調査研究

◇教育支援センターの設置促進

◇訪問型支援、ICT等を活用した支援

◇民間団体との連携による支援

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いじめ対策・不登校支援等推進事業②児童生徒の自殺、不登校やその他の問題行動等に対する今後の施策の在り方を検討するとともに、教育委員会や学校による問題行動等の未然防止、早期発見・早期対応などの、速やかで適切な対応を支援するため、以下のとおり調査研究を実施する。

【学校教育における長期宿泊体験活動の導入促進に関する調査[委託先:1団体]】児童生徒の社会性や自主性などを育成する上で、長期宿泊体験はどのような有用性があるかについて、実際の長期宿泊体験における児童生徒の活動内容とその成果を分析しながら調査研究を行い、学校教育における長期宿泊体験活動の導入促進のため、学校の参考となるモデルカリキュラムや教職員研修マニュアルを開発する。

【自殺予防、貧困などに対する効果的な取り組みに関する調査[委託先:都道府県・政令指定都市(2自治体)]】児童生徒の命を守るという最も基本的な対応が十分なされるよう、教職員の年間を通した教育活動に基礎を置き、現実的かつ効果的な自殺予防のプログラムを開発するための調査研究を行う。また、貧困を背景とした児童生徒の問題行動等への対応として、小学校段階からの積極的な支援が有効であると考えられ、生活習慣の改善、目的意識の醸成などについて適切にサポートし、自己形成力の基礎を早期に養成することが重要であることから、その具体的な方法についての調査研究を行う。

【脳科学・精神科学・心理学等に関する研究と学校教育の連携による調査[委託先:1団体]】「情動の科学的解明と教育等への応用に関する調査研究協力者会議審議のまとめ」(平成26年7月)において、現在、様々な分野で行われている情動に関する研究成果に係る情報等を集約するとともに、研究者間、研究者と教育関係者間等における情報交換等を円滑に行うことができる連携体制の構築(プラットフォーム)の必要性と必要な機能について提言を得ている。本提言を踏まえ、プラットフォーム機能の実行可能性を担保するために、複数の大学、教育研究機関から構成される取組全体の総括を行う基幹大学等を選定し、研究者と教育関係者が研究情報や問題意識を共有し、学校教育における科学的知見の活用や各発達段階における研究が具体的に進展していくような仕組づくりに向けて、先進的かつその成果を全国に普及することが期待できる取組についての調査研究を行う。

【スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの常勤化に向けた調査研究[委託先:1団体]】(新規)学校教育法等においてSC及びSSWが正規の職員として規定された場合を想定し、常勤化を実施している都道府県・政令指定都市を調査し、現在の取組の成果や課題な

ど週5日配置へ向けた働き方等について検証するための調査研究を行う。

いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究[委託先:都道府県・政令指定都市・市区町村(2自治体)]】(新規)法律の専門家である弁護士が、その専門的知識・経験に基づき、いじめの防止等の対策に関わることにより、法的側面からのいじめの抑止、法令に基づく対応の徹底、保護者と学校等とのトラブルの解決など、対策の実効性向上を図る。

【学校以外の場における教育機会の確保等に関する調査研究[委託先:都道府県等]】(新規)教育委員会・学校を中心に、関係者間の連携の下、地域の実情に応じて、不登校児童生徒の学校以外の場における教育機会の確保等を支援する体制の整備に向けた実践研究及び、不登校児童生徒を受け入れている民間団体の自主的な取組を支援するための仕組み等に関する調査研究を行う。<内容>(1)教育支援センター等の機能強化及び設置促進と民間団体との連携による支援の推進【21自治体】①訪問型支援やICT等を活用した支援のための支援員等の配置②ICT機材の整備③教育支援センター等の施設の設置に向けたコーディネーターの配置④不登校児童生徒支援協議会の設置及び不登校児童生徒への「支援プラン」の作成・活用⑤民間団体との連携による支援の実施(保護者学習会、民間団体に通う子供に対する訪問型支援等の実施等)⑥民間団体との連携による施設の設置に向けたコーディネーターの配置⑦学習活動への経済的支援

(2)民間団体の自主的な取組の促進に関する調査研究【2団体】①民間団体の相互評価 ②中間支援組織の在り方

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平成 27年8月5日

小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う

民間の団体・施設に関する調査の結果(概要)

◆調査内容 【調査対象】小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設

→ 474 の団体・施設へアンケートを送付

319 の団体・施設から回答(回収率:67%)

【調査時点】平成 27 年3月

◆主な調査結果 【1 団体・施設の形態】 ◇法人格を有する団体・施設(下表 1.~5.)が、7割弱(NPO法人が5割弱)

(n=321)

区分 団体・施設数 割合(%)

1. 特定非営利活動法人(NPO法人) 146 45.8%

2. 学校法人(準学校法人を含む) 7 2.2%

3. 公益社団・財団法人、一般社団・財団法人 28 8.8%

4. 営利法人(株式会社等) 27 8.5%

5. 1~4以外の法人(社会福祉法人など) 10 3.1%

6. 法人格を有しない任意団体 70 21.9%

7. 個人 31 9.7%

計 319 100.0%

【2 在籍者数等】 ◇在籍する義務教育段階の子供の数は、約 4,200 人

(1団体・施設当たりの子供の数は平均約 13.2 人)

(n=317)

男子 女子 計

(うち、出席扱い(*))

出席扱いの

割合(%)

1. 小学生 1,095 738 1,833 (969) 52.9%

2. 中学生 1,340 1,023 2,363 (1,372) 58.1%

計 2,435 1,761 4,196 (2,341) 55.8%

* 出席扱い:在籍校で出席扱いとなっている者の数

【3 スタッフ数等】 ◇勤務するスタッフの数は、約 2,900 人

◇うち、有給・週5日以上勤務するスタッフの数は、約 900 人

(1団体・施設当たりの有給・週5日以上勤務スタッフ数は平均約 2.8 人)

(n=316)

有給 無給 計

1. 週5日以上勤務 872 58 930

2. 週5日未満勤務 1,099 835 1,934

計 1,971 893 2,864

割合(%) 68.8% 31.2% 100.0%

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【4 活動内容等】 ◇個別の学習、相談・カウンセリングを行っている団体・施設がそれぞれ約9割

(n=318)

区分(*1) 団体・施設数 実施率(%)(*2)

ア 個別の学習 277 87.1%

イ 授業形式(講義形式)による学習 138 43.4%

ウ 社会体験(見学、職場体験など) 236 74.2%

エ 自然体験(自然観察、農業体験など) 232 73.0%

オ 調理体験(昼食づくりなど) 239 75.2%

カ 芸術活動(音楽、美術、工芸など) 244 76.7%

キ スポーツ体験 242 76.1%

ク 宿泊体験 164 51.6%

ケ 子供たちによるミーティング 165 51.9%

コ 学習成果、演奏や作品などの発表会 127 39.9%

サ 相談・カウンセリング 289 90.9%

シ 家庭への訪問 162 50.9%

ス その他特色ある活動 128 40.3%

*1 複数回答あり

*2 回答のあった団体・施設数(318 件)に占める割合

【5 会費等の状況】 ◇月額の会費(授業料)は、1~3万円・3~5万円とする団体・施設がそれぞれ

4割弱、平均額は約3万3千円

(n=262)

区分 団体・施設数 割合(%)

~5,000 円 25 9.5%

5,001~10,000 円 15 5.7%

10,001~30,000 円 100 38.2%

30,001~50,000 円 95 36.3%

50,001 円以上 27 10.3%

計 262 100.0%

(月単位で会費を徴収していないと回答した団体・施設は、49 か所:通所した際、その都度利用

料を徴収している場合など)

【6 施設の保有状況】 ◇約 95%の団体・施設が、常設の施設を保有

◇常設施設を有する団体・施設のうち、約3割が自己所有、約1割が公共施設を借用、

約6割が民間施設を借用

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不登校児童生徒への支援に関する最終報告の概要~一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進~

平成28年7月

はじめに不登校児童生徒に対する支援の最終目標は、将来の社会的自立を目指すことであり、そのために学校が果たすべき役割は大きい。学校は、多様化・複雑化する不登校児童生徒の要因・背景を的確に把握し、共感的理解と寄り添う姿勢が重要である。また、関係機関との「横」の連携を進めるとともに、学校間の「縦」の連携を行うことで、一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の実現が期待できる。

第1章・第2章 不登校の現状と実態

●不登校の要因、背景の多様化・複雑化不登校の要因・背景は多様化・複雑化しており、個々の児童生徒の要因を的確に把握し、早期に、丁寧にその要因を解消することが不登校児童生徒への支援に不可欠である。

●不登校の実態把握実態把握が適切になされなければ、必要な支援につながらない可能性がある。学級担任のみならず養護教諭やスクールカウンセラー(以下「SC」という。)、スクールソーシャルワーカー(以下「SSW」という。)等が的確に不登校の要因を把握し、児童生徒、保護者等と話し合い支援策を決定する必要がある。

第3章 不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方

●支援の視点不登校児童生徒への支援は、児童生徒の社会的な自立を目指して行われることが必要。不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で、学業の遅れや進路選択上のリスクも存在する。

不登校に関する調査研究協力者会議

●不登校の理由に応じた働き掛けや関わりの重要性児童生徒が主体的に社会的自立に向かうよう、環境づくりを支援することが必要。

●家庭への支援不登校児童生徒の保護者の状況に応じた働き掛けが重要。不登校の要因・背景によっては、福祉機関と連携し家庭の状況を正確に把握した上で支援策を検討しなければならない場合がある。その際、家庭と、学校を含めた関係機関等との連携を図り、保護者と信頼関係を築くことが重要。また、訪問型支援による保護者への助言等、保護者が気軽に相談できる体制を整えることが必要。

●学校教育の意義・役割義務教育段階の学校は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基

礎を培うとともに、国家・社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的としており、その役割は極めて大きいことから、学校教育の一層の充実を図るための取組が重要。不登校児童生徒への支援については、関係機関が情報を共有し、組織的・計画的に、個々の児童生徒に応じたきめ細やかな支援策を講ずることが重要。

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第4章 不登校児童生徒に対する支援における重点方策

●「児童生徒理解・教育支援シート」を活用した組織的・計画的支援学校関係者が中心となり、不登校児童生徒や保護者と話し合いながら「児童生徒理解・教育支援シート」(モデルフォーマット提示)など、個々の不登校児童生徒に応じた支援計画を策定し、組織的・計画的な支援を実施することが有効。また、支援の進捗状況に応じてシートの内容を見直すことも重要。

●教育支援センターを中核とした体制整備教育支援センターは、不登校児童生徒への支援に関する知見や技能が豊富であることから、通所を希望しない不登校児童生徒への訪問型支援等、学校外における支援の中核となることが期待される。そのため、国においては、教育支援センターの設置促進や機能強化に関するモデル事業の実施、SC配置など、自治体への財政支援が必要。

●不登校児童生徒への多様な教育機会の確保不登校児童生徒一人一人の状況に応じ、不登校特例校や教育支援センターの利用、ICTを使った学習支援の実施、夜間中学など、多様な教育環境を提供できるよう環境整備を図ることが重要。

教育支援センター

保護者

教育委員会

児童相談所など関係機関

幼児期

小学校中学校

高等学校等

シート

児童生徒理解・教育支援シートによる縦軸・横軸の連携強化

シート

シート

●不登校が生じないような学校づくり等いじめ、暴力行為等問題行動を許さない、魅力ある学校づくりが重要。また、一人一人の

学習状況を十分に把握し、具体的な指導方法や進度について児童生徒の側に立った配慮が必要。さらに、社会総掛かりで児童生徒を育んでいくため、学校と保護者・地域住民等の連携・協働体制を構築していくことが重要。

第5章 学校等における取組

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●不登校児童生徒に対する効果的な支援の充実SC・SSWなど専門スタッフを活用しつつ、校長を中心としたチームとして不登校児童生徒に対する支援体制を整えることが必要。また、学校や保護者を始め、教育支援センター、福祉機関、医療機関等の必要な関係機関において、当該児童生徒の情報を共有し、一体となって組織的・計画的な支援を行うことが重要。登校に当たっては、相談室等を居場所として活用し、徐々に学校生活になじませていくことや、場合によっては、学級替えや転校等の検討も必要。また、定期的に家庭訪問を実施し、児童生徒の理解に努めることも必要。

●不登校特例校制度・指導要録上の出席扱い制度等の活用

●高等学校に関する取組高等学校入学者選抜については、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化の観点からの改善がこれまでも進められているが、今後さらに学ぶ意欲、能力のある不登校児童生徒をより適切に評価する取組が推進されることが重要。また、生徒のニーズを踏まえた特色ある高等学校づくり等様々な取組や工夫が行われることが重要。

●中学校卒業後の就学・就労や「ひきこもり」への支援中学校卒業後に進学も就労もしていない者、高校等に進学したものの学校へ通えない者、中途退学した者等に対して、進学・職業訓練等の機会等について相談できる窓口や社会的自立を支援するための受け皿が必要。実質的に十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した者で、改めて中学校で学び直すことを希望する者には夜間中学において可能な限り受入れることが期待される。

第6章 中学校卒業後の課題

不登校児童生徒の実態に配慮した特色ある教育課程を展開する不登校特例校制度、教育支援センターや民間の団体・施設において、指導・助言を受けた場合には、指導要録上の出席扱いとすることが可能となる制度を活用し、不登校児童生徒の努力を適切に評価し支援することが重要。

第7章 教育委員会に求められる役割

●不登校や長期欠席の早期把握と取組学校が家庭や関係機関等と効果的に連携を図り、不登校児童生徒の課題の早期解決を図るための体制の確立を支援することが重要。また、コーディネーターとしての役割を果たす教員の存在が重要。

●学校等の取組を支援するための教育条件等の整備不登校児童生徒への対応のための適切な教員配置を行うことが必要。また、居場所としての相談室・学校図書館・保健室等の環境整備や、児童が小学校から中学校への進学に際して体感する段差に配慮し、その接続をより円滑なものとするために学校間接続の改善も有効。

●青少年教育施設等の体験活動プログラムの積極的な活用

体験活動においては、積極的態度の醸成や自己肯定感の向上等が期待されるため、青少年教育施設等との積極的な連携が重要。

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●アセスメント実施のための体制づくり多様化、複雑化する不登校の要因・背景を適切に把握し、初期の段階で適切な対応のアセスメントを行うことは極めて重要。そのためには、SC・SSWの配置・派遣等を行い、学校をサポートする体制づくりが必要。

●学校外の公的機関等の整備充実

●訪問型支援など保護者への支援の充実不登校のみならず子育てや家庭教育に関する情報提供や相談対応など、家庭に対する積極的な支援の推進が重要。また、訪問型支援等、困難を抱えた家庭に対する支援を積極的に推進することが重要。

●不登校児童生徒支援のための体制構築に関する支援教員配置の拡充、SC・SSWの配置拡充等が必要。また、ICTを活用した学習機会の確保及び教育支援センターの設置促進・機能強化が必要。

教育支援センターの整備促進により、不登校児童生徒の支援ができる体制の構築が必要。

●教育支援センター等を中核とした支援ネットワークの整備教育支援センターは、地域において不登校児童生徒の支援に関する中核的役割を担うことが期待される。不登校児童生徒や保護者を支援するため、学校や関係機関等との連携ネットワークの整備が必要。

第8章 国に求められる役割

●不登校の実態把握不登校に関する政策の効果検証のため追跡調査が必要。

●関係省庁との連携不登校児童生徒への支援に関し、関係機関との連携をスムーズに行えるよう、関係省庁との積極的な連携が必要。

●不登校への支援に関する全国の情報収集・情報提供効果的な施策や実践事例を収集・情報提供に努めることが必要。

●不登校施策の改善へ向けた不断の取組不登校施策改善のための不断の取組を行うことが必要。教員の質の向上や指導体制の強化、適切なSC・SSWの配置等による教育相談体制の充実等に努めるとともに、「児童生徒理解・教育支援シート」の普及、教育支援センターの設置促進・機能強化等、不登校児童生徒への支援に必要な検討を引き続き行うことが重要。

おわりに

不登校への取組においては、児童生徒の社会的自立を目指し、当該児童生徒にとっての何

が「最善の利益」であるかという視点に立つことが重要。児童生徒の可能性を信じ、長い目で児童生徒を支え見守ることが大切。保護者の方々におかれても、一人で悩まずに、関係機関に不安や悩みを伝えていただきたい。

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(別記)

義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指

導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて

1 趣旨

不登校児童生徒の中には,学校外の施設において相談・指導を受け,学校復帰への懸

命の努力を続けている者もおり,このような児童生徒の努力を学校として評価し支援す

るため,我が国の義務教育制度を前提としつつ,一定の要件を満たす場合に,これら施

設において相談・指導を受けた日数を指導要録上出席扱いとすることができることとす

る。

2 出席扱いの要件

不登校児童生徒が学校外の施設において相談・指導を受けるとき,下記の要件を満た

すとともに,当該施設への通所又は入所が学校への復帰を前提とし,かつ,不登校児童

生徒の自立を助けるうえで有効・適切であると判断される場合に,校長は指導要録上出

席扱いとすることができる。

(1)保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。

(2)当該施設は,教育委員会等が設置する教育支援センター等の公的機関とするが,公

的機関での指導の機会が得られないあるいは公的機関に通うことが困難な場合で本人

や保護者の希望もあり適切と判断される場合は,民間の相談・指導施設も考慮されて

よいこと。

ただし,民間施設における相談・指導が個々の児童生徒にとって適切であるかどう

かについては,校長が,設置者である教育委員会と十分な連携をとって判断するもの

とすること。このため,学校及び教育委員会においては,「民間施設についてのガイド

ライン」(別添3)を参考として,上記判断を行う際の何らかの目安を設けておくこと

が望ましいこと。

(3)当該施設に通所又は入所して相談・指導を受ける場合を前提とすること。

3 指導要録の様式等について

上記の取扱いの際の指導要録の様式等については,平成22年5月11日付け22文

科初第1号「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評

価及び指導要録の改善等について」のとおりとする。

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(別添1)

児童生徒理解・教育支援シート(試案)

分類番号

(高)

(中)

(小)

児童生徒名

取扱注意

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○/○

小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3 高4

①教育支援センター

②教育委員会所管の機関(①除く。)

③児童相談所・福祉事務所

④保健所、精神保健福祉センター

⑤病院、診療所

⑥民間団体、民間施設

⑦その他の機関等

⑧IT等の活用

○支援を継続する上での基本的な情報

○家族関係

備考欄

作成日:平成○年○月○日

児童生徒理解・教育支援シート(共通 シート)

追記者  H○(記入者名)/H○(記入者名)/…作成者  H○(記入者名) 

遅刻

学年

出席しなければならない日数

別室登校

出席日数

年度

生年月日名前(よみがな) 性別

○学年別欠席日数等          追記日→

特記事項(生育歴、本人を取り巻く状況(家族の状況も含む。)、作成日以降の変化等)

早退

欠席日数

指導要録上の出席扱い

特記事項(本人の強み、アセスメントの情報等)

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担任名

○支援チーム(校内・校外)

4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 計

①教育支援センター

②教育委員会所管の機関(①除く。)

③児童相談所・福祉事務所

④保健所、精神保健福祉センター

⑤病院、診療所

⑥民間団体、民間施設

⑦その他の機関等

⑧IT等の活用

○不登校(継続)の理由

○本人の状況・意向

○保護者の状況・意向

○具体的な支援方針

○月○日

○月○日

○月○日

○次年度への引継事項(支援・指導の参考となるエピソード等も含め、多様な視点で記入)

名前

指導要録上の出席扱い

出席日数

別室登校

遅刻

早退

性別 学校名

累積欠席日数

欠席日数(出席扱いを含む)

1学期 3学期2学期

3学期

1学期

2学期

関係機関目標

具体的な支援内容学校

1学期 2学期 3学期

経過・評価

児童生徒理解・教育支援シート(学年別 シート)

○月別欠席状況等        ※追記日→

作成者    追記者  ○/○(記入者名)、○/○(記入者名)、…

出席しなければならない日数

学年 学級管理職名

作成日 平成○年○月○日

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日付 

記録者

学年・組

○本人の意向

○保護者の意向

○関係機関からの情報

○支援状況

○確認・同意事項

○特記事項

支援目標

児童生徒理解・教育支援シート(ケース会議・検討会等記録)

機関・分掌ごとの役割分担 短期目標 経過・評価

参加者・機関名名前

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1

児童生徒理解・教育支援シートの作成と活用について

○児童生徒理解・教育支援シートとは

児童生徒理解・教育支援シートとは、不登校児童生徒一人一人の状況を的確

に把握し、当該児童生徒の置かれた状況を関係機関で情報共有し、組織的・計

画的に支援を行うことを目的として、学級担任、養護教諭、スクールカウンセ

ラー、スクールソーシャルワーカー等を中心に学校が組織的に作成するもので

す。

これまでも児童生徒の状況に合わせた様々な支援計画書が学校現場で作成・

利用されてきたところですが、一つの学年だけで利用され、上の学年に引き継

がれる仕組みがなかったり、学校の中でのみ共有され、関係機関との役割分担

がうまくいかなかったりすることが多く、一貫した支援が行われていないこと

もありました。

不登校には様々な要因・背景があり、教育のみならず、福祉、医療等の関係

機関が相互に連携協力して支援を行うことが必要であり、中長期的な視点で一

貫した支援を行うことが求められます。また、児童生徒の抱える背景や状況が

複雑で、登校し始めても、再度不登校の状態になることもあるため、小学校か

ら高等学校までの間、以前の情報が共有されることは非常に重要です。

児童生徒理解・教育支援シートを活用することで、不登校児童生徒の支援に

必要な情報を集約し、それに基づく支援計画を学校内や関係機関で共通理解し、

さらに、そのシートを校種間で適切に引き継ぐことによって多角的な視野に立

った指導体制が構築できるようになります。こうすることで児童生徒やその保

護者にとっても、「担当者が変わるたびに同じことを説明しなければならない」

といった問題を減少させることが期待できます。そのため、教育委員会又は学

校においては、「児童生徒理解・教育支援シート(試案)」をモデルとして、各

学校においてシートの記載項目等をカスタマイズするなど、実態に合わせた形

で実践的に使用していくことが望まれます。

○作成の対象、時期

基本的には連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒のうち、何らかの

心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、登校しないある

いはしたくともできない状況にある者について作成することが望まれます。な

別添2

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2

お、不登校児童生徒への支援は、早期から行うことが重要であり、予兆への対

応を含めた初期段階から情報を整理し、組織的・計画的な支援につながるよう

にする必要があります。そのため、30日という期間にとらわれることなく、

前年度の欠席状況や、遅刻、早退、保健室登校、別室登校等の状況を鑑みて、

早期の段階からシートを作成することが望まれます。以上のことから、それぞ

れの地域の実態に合わせて、教育委員会又は中学校区単位で、作成開始等の基

準を設定し、地域として組織的に支援が行えるようにすることが重要です。

また、学校においては、指導要録や出席簿のほか、特別な教育的支援を必要

とする児童生徒に対する「個別の教育支援計画」や外国人児童生徒に対する指

導計画等、児童生徒の課題の状況によって様々な表簿や支援計画が作成されて

います。それらの基本的情報は共通した内容もあると考えられますので、シー

トの作成に当たっては、校務の効率化の観点から、現在整備が促進されている

「統合型校務支援システム」も活用し、記載内容が連動する仕様とすることで、

共通する内容の記述を反映させるなど、作成に係る業務を効率化することも重

要です。

加えて、学級担任は、教務日誌等を利用して、学級内の全ての児童生徒に関

して日常的に状況を把握していると思います。児童生徒の気になった点につい

て、他の教諭等からの情報も含めて記録してあれば、児童生徒理解・教育支援

シートを作成するに当たって重要な情報となります。こうした観点から、教務

日誌等を個人のメモではなく、組織として共有できる形で適切に保管しておく

ことは、負担を大きく増すことなく必要な情報が必要な時に得ることができ、

継続的な支援を行うための手立ての一つとなります。同様に、保健室での保健

日誌等も体調不良や相談で訪れた児童生徒の様子が記録されており、支援に当

たって大きな手掛かりとなり、児童生徒によっては相談室や学校図書館が主な

居場所となっている場合もあるため、気になる児童生徒について、各担当者が

記録し、組織として情報を共有していくことが大切です。

なお、支援の結果、児童生徒が継続的に登校できるようになった場合におい

ても、月別の遅刻、早退、欠席等の状況を継続して記録し、引き継いでいくこ

とが、一貫した支援を行う上で大切です。

○内容

児童生徒理解・教育支援シートは、支援に関する情報を集約し、引き継いで

いくものであるため、複数の関係者が正確な情報を共有できるようにすること

が必要です。そのため、主観的な判断を避け、客観的な事実を記載するという

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ことが重要となります。また、具体的な支援計画を立てる根拠となったアセス

メントについては、児童生徒の状態の全体像をつかむための大きな情報となる

ため、複数回アセスメントを実施した場合はその推移を記載しておくと、協議

会等の際に一目で児童生徒の傾向を把握することができます。

〈共通シート〉

共通シートは、支援全体を通して利用・保存される不登校児童生徒本人の基

本情報を記入するものです。そこには、遅刻・早退等の不登校に至る前兆や、

本人の状態等について記入し、見立てを行う上で必要な情報を学校内で又は関

係機関との間で共有できるようにすることがポイントです。

〈学年別シート〉

学年別シートは、対象となる児童生徒の状況を随時追記し、具体的な支援の

計画を記入するものです。細かい欠席状況や、本人の学習・健康状況等を記載

することで、継続的に本人の変化を把握します。また、関係機関と協議の上決

定した支援方針とその実施状況を記入することで、支援状況の変遷を一覧でき

るようにします。これらにより、一貫して計画的な支援を行うことができるよ

うにすることがポイントです。

また、不登校児童生徒の支援に関しては、次の学年でも引き続き行っていく

ことが重要となるため、当該学年での支援結果の評価を明確にしておくことが

求められます。評価を行い、次年度における留意点等をまとめておくことで、

担任・担当者が変わっても、継続して支援を行うことができます。

〈ケース会議・検討会等記録シート〉

ケース会議・検討会等記録シートは、本人・保護者・関係機関の支援に関連

する協議結果をその都度記入・加筆するものです。

本人がどのような状況でどのような支援を望んでいるのか、保護者の希望を

直接記入してもらったり、面談等で聞き取ったりして、記入・加筆していきま

す。本人・保護者の思いをできるだけそのまま残していくことを基本として、

漠然としたニーズについても丁寧に拾い上げて、支援内容を導き出していくこ

とが重要です。

関係機関との連携については、実際に連携した機関と個別にやりとりしたこ

とも記録することで、他の機関とも共有できる形にしておくことで、支援者全

体で状況を共通認識することに役立ちます。支援を開始するために初めて連絡

を取るのでなく、普段から情報をやりとりし、お互いの業務について共通認識

できるようにしておくことが重要です。そして、普段のやりとりの中で、それ

- 83 -

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ぞれの機関から得た情報などは、あらかじめケース会議・検討会等記録シート

等を利用して記入・蓄積しておき、支援計画作成の際に活用します。

また、ケース会議・検討会等において、その都度支援計画の進捗状況を確認

し、その場で合意・確認できた事項について、記録しておくことで、参考とな

るエピソードを集積し、支援の質を高めることにつながります。

なお、学年別シートや共通シートが作成される前にケース会議などが持たれ

た場合には、このケース会議・検討会等記録シート単独でも積極的に活用し、

保存するようにします。こうすることで、不登校の状態になる前の当該児童生

徒の情報が確認でき、より的確な要因の把握につながります。

○引継ぎ

学校や担当者が変わっても、不登校児童生徒一人一人が受けていた支援は、

引き続き一貫して行われなければなりません。しかし、当該児童生徒や保護者

の立場からは、進学や転学に当たって、前の学校の情報が引き継がれることに

不安を感じるかもしれません。そのため、学校は、児童生徒や保護者に対して、

児童生徒理解・教育支援シートが児童生徒の評価に利用されるものではないこ

とや学校における守秘義務等について十分に説明をして、不安感を取り除くと

ともに、支援を通じて信頼関係を築き、児童生徒理解・教育支援シートを活用

することで、組織的計画的な支援が可能となり、結果として児童生徒の生活を

豊かにすることにつながることを理解してもらうことが大切です。

また、設置者が異なる中学校から高等学校、公立学校から私立学校等で引継

ぎを行うことは、個人情報の保護への配慮等からためらわれる場合があるかも

しれません。しかし、児童生徒理解・教育支援シートの引継ぎを適切に行い、

支援計画の評価や見直しを繰り返しながら継続して支援していくことで、不登

校児童生徒一人一人を支援するネットワークができ、学校だけで抱え込まない

体制の整備につながります。そのためにも、不登校児童生徒の支援に必要な事

項については適切に引継ぎを行うことが大切であり、進学先や転学先への引継

ぎについては、原則として、当該児童生徒や保護者の同意を得る必要がありま

す。

なお、引継ぎに関しては、共通シートのみならず、全てのシート(学年別シ

ート、ケース会議・検討会等記録シート)を引き継ぐことが重要であり、また、

単に児童生徒理解・教育支援シートの写しを渡すだけではなく、個別に情報交

換をする場を設けるなど、責任を持って引継ぎを行う必要があります。また、

児童生徒理解・教育支援シートの引継ぎに当たっては、保護者や関係者に十分

- 84 -

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内容を説明した上で、個人情報の取扱いや、関係機関等と共有する情報の範囲、

守秘義務等について共通理解を図る必要があります。

○個人情報の保護(学校間における情報の引継ぎ)

不登校児童生徒への支援においては、一旦欠席状態が長期化すると、その回

復が困難である傾向が示されており、継続した組織的な支援が重要です。その

ため、一度不登校傾向が見られた児童生徒については、進学・転校後も不登校

傾向が続く可能性がある場合が少なくなく、当該児童生徒の状況等については

進学・転学先の学校へ適切に引き継ぎ、継続的・組織的支援を図っていく必要

があります。また、不登校児童生徒が進学・転校先の学校でも不登校傾向が続

いた場合には、本人から「本人に係る情報」を確認するのは難しく、進学・転

校先において当該児童生徒のための適切な支援等が行うことができないことも

考えられます。したがって、不登校児童生徒を継続的・組織的に支援していく

ためには、進学・転校したら終わりというのではなく、進学・転校先の学校が

承知しておくべき情報については適切に引き継ぎ、双方の学校が連携して当該

不登校児童生徒の支援に当たることが必要です。

個人情報保護の観点からどこまで不登校児童生徒の情報を引き継げるかにつ

いては、適用される関係法令に基づき各学校等が判断することとなります。基

本法として、「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)があ

ります。個人情報の保護に関する法律は、民間である私立学校・株立学校等に

適用され、また、公立学校には、当該学校を設置する地方公共団体の個人情報

保護条例が、国立学校には「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関す

る法律」(平成15年法律第59号)が適用され、個人情報を第三者へ提供する

際には本人の同意を得ることが原則とされています。そのため、シートの作成

や支援計画の策定、関係機関での個人情報の共有(提供)については、当該児

童生徒やその保護者の同意の下に行うことが必要です。しかし、本人・保護者

と連絡が取れない、本人・保護者が第三者への提供を拒否するなど、本人・保

護者の同意を得ることが困難な場合であっても、不登校児童生徒への継続的・

組織的な支援の観点から、進学・転校先への情報共有(提供)が必要となりま

す。その場合の個人情報保護の取扱いに関しては、設置者別に以下の対応が考

えられます。

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<公立学校>

公立学校については、各地方公共団体によって個人情報保護条例の内容が異

なることから、第三者提供の原則禁止の例外についての規定ぶりを確認する必

要があります。また、条例の解釈はあくまで当該地方公共団体が行うものです

が、仮に、行政機関の保有する個人情報保護に関する法律第8条(参考①参照)

と同様の規定ぶりを有する条例の下では、公立学校が公立学校又は国立学校に、

不登校児童生徒への継続的・組織的な支援のために、必要不可欠な範囲で情報

を提供することは、一般に、社会通念上客観的にみて合理的な理由があるもの

と認められ、同法第8条第2項第3号に相当する規定の「相当な理由のあると

き」に該当し、また、私立学校・株立学校に同様の情報を提供することは、一

般に同項第4号に相当する規定の「本人以外の者に提供することが明らかに本

人の利益になるとき」に該当し、本人や保護者の同意を得ることが困難であっ

ても、第三者提供の原則禁止の例外として認められるとも考えられます。ただ

し、繰り返しになりますが、条例の解釈はあくまで当該地方公共団体が行うこ

とになりますので、後述の国立学校や私立学校等の場合の例も参考にしつつ、

各地方公共団体・各学校において適切に対応することが必要です。

また、私立学校・株立学校への情報提供については、条例によっては個人情

報保護審議会の意見を聴取することが必要とされている場合もあるため、その

規定ぶりをよく確認した上で、適切な手続をとることが必要です。

<国立学校>

国立学校について、国立学校又は公立学校に、不登校児童生徒への継続的・

組織的な支援のために必要不可欠な範囲で情報を提供することは、上記と同様

に、一般に、社会通念上客観的にみて合理的な理由があるものと認められ、独

立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律第9条第2項第3号(参

考②参照)の「相当な理由のあるとき」に、私立学校・株立学校に、同様の情

報を提供することは、同項第4号の「本人以外の者に情報を提供することが明

らかに本人の利益になるとき」に該当すると考えられることから、第三者提供

の原則禁止の例外として認められると考えられます。

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<私立学校・株立学校>

私立学校及び株立学校について、他の学校に不登校児童生徒への継続的・組

織的な支援のために必要不可欠な範囲で情報を提供することは、「○個人情報の

保護(学校間における情報の引継ぎ)」に記載する観点等に鑑みて、個人情報の

保護に関する法律第23条第1項第3号(参考③参照)により、第三者提供の

原則禁止の例外として認められると考えられます※。この点、文部科学省所管事

業分野における個人情報保護に関するガイドライン(平成27年8月31日文

部科学省告示第132号)(参考④参照)においても、第三者提供の制限に関す

る例外として、「公衆衛生の向上又は子供・若者の健やかな育成等の推進のため

に、特に個人データを第三者に提供する必要がある場合に、本人の同意を得る

ことが困難であるとき」とされています(注)。

<留意点>

なお、引き継ぎについては、前述のとおり、あくまでも本人・保護者の同意

を得ることが原則であり、引き継ぎを望まない場合であっても、その理由を聞

きつつ、引き継ぐことの利点や、どの程度の内容であれば引き継ぐことが可能

かについて話し合うなど丁寧に対応することが求められます。同意を得る努力

をしないまま安易に引き継ぐことは適切ではないことに留意が必要です。

また、情報の引き継ぎについて、本人・保護者の同意を得る際には、本人・

保護者に対して、提供しようとする情報の内容を具体的に示すことが必要です。

○個人情報の保護(民間施設等への情報提供)

不登校児童生徒が、学校外の民間施設等を利用する場合には、一定の情報を

適切に提供し、学校及び民間施設等双方が連携して当該不登校児童生徒の支援

に当たることが効果的と考えられるケースもあります。その際、当該民間施設

等において、守秘義務を負っているか否かをあらかじめ確認し、それを当該児

童生徒や保護者に十分説明した上で、その個人情報の提供について同意を得る

ことが望ましいと考えられます。

※当該私立学校及び株立学校が、個人情報の保護に関する法律に規定する「個人情報取扱事業者」に該当

する場合。

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○保存

児童生徒理解・教育支援シートは、条例や法人の各種規程に基づいて適切に

保存されるものですが、出席の状況等指導要録の記載内容と重なる部分もある

ことから、指導要録の保存期間に合わせて、5年間保存されることが文書管理

上望ましいと考えられます。

(注)

個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する

法律の一部を改正する法律(平成27年9月3日成立・同月9日公布)の施行が平成29年春頃に予定されて

おり、その施行に伴い、文部科学省所管事業分野における個人情報保護に関するガイドライン(平成27

年8月31日文部科学省告示第132号)が廃止され、全ての事業分野に適用される汎用的な「個人情報

の保護に関する法律についてのガイドライン」が発出される予定です。

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(参考)

① 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(抄)

(平成十五年五月三十日法律第五十八号)

(利用及び提供の制限)

第八条 行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個

人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。

2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当すると認める

ときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することがで

きる。ただし、保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供するこ

とによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるとき

は、この限りでない。

一 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。

二 行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用

する場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。

三 他の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人に保有個人情

報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又

は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利

用することについて相当な理由のあるとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人

情報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき、

その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。

3 前項の規定は、保有個人情報の利用又は提供を制限する他の法令の規定の適用を妨げ

るものではない。

4 行政機関の長は、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、保

有個人情報の利用目的以外の目的のための行政機関の内部における利用を特定の部局又

は機関に限るものとする。

② 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(抄)

(平成十五年五月三十日法律第五十九号)

(利用及び提供の制限)

第九条 独立行政法人等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有

個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。

② 前項の規定にかかわらず、独立行政法人等は、次の各号のいずれかに該当すると認め

るときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供すること

ができる。ただし、保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供

することによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認めら

れるときは、この限りでない。

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一 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。

二 独立行政法人等が法令の定める業務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利

用する場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあると

き。

三 行政機関(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律 (平成十五年法律第五

十八号。以下「行政機関個人情報保護法」という。)第二条第一項 に規定する行政機

関をいう。以下同じ。)、他の独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人に

保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定

める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個

人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人

情報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき、

その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。

③ 個人情報の保護に関する法律(抄)

(平成十五年五月三十日法律第五十七号)

(第三者提供の制限)

第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意

を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。

一 法令に基づく場合

二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得

ることが困難であるとき。

三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、

本人の同意を得ることが困難であるとき。

四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行

することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当

該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

④ 文部科学省所管事業分野における個人情報保護に関するガイドライン(抄)

(平成二十七年八月三十一日文部科学省告示第百三十二号)

第7 個人データの第三者提供に関する義務

(2)第三者提供の制限に関する例外(法第 23条第 1項関係)

以下の 1.~4.のいずれかに該当する場合は、(1)の規定にかかわらず、個人データを

第三者に提供することができる。

3.公衆衛生の向上又は子供・若者の健やかな育成等の推進のために、特に個人データを第

三者に提供する必要がある場合に、本人の同意を得ることが困難であるとき

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○切れ目のない組織的な支援を行うためのシート作成プロセス

【連続欠席等3日目~】 校内で情報共有 ※遅刻・早退も加味

※ 養護教諭等が、連続欠席等3日目~の児童生徒をチェックし、管理職などへ状況報告。※ 管理職を含め生徒指導部会等において、状況に応じて、周囲の児童生徒や保護者、教職員等にも聴取するなどして組織的に欠席の原因や背景の把握に努める。

※ 今後の対応方法を検討するとともに、児童生徒や保護者とつながりのある教職員を中心に引き続き家庭訪問等を実施。

【連続欠席等7日目~】 シート作成準備~記入

※ 保護者及び児童生徒本人からの希望等を受け、状況の共通理解を図る。※ 管理職、担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等が中心となり、それまでに得た情報等を基にアセスメントを行う。

※ 必要に応じて関係機関と協議し、組織的な支援計画を立てる。※ 児童生徒本人に関わる全員で情報を共有し、役割分担の確認を行う。※ 個人情報の取扱いについての確認を行う。

【シート作成後~】 支援の実施、評価・見直し

※ 共有した支援計画を基に、学校、家庭、関係機関で対応を行い、随時情報を共有する。※ 支援の実施状況を踏まえて、教育支援センター等が中心となって評価し、学校は必要に応じて計画を修正し、継続した支援を行う。

【~進級・進学】 引継ぎ

※ 支援による結果を含めて現状を整理し、進級・進学先にシートを提供し、情報を共有する。

※ 進級・進学先においても、それまでの支援の状況を適切に把握・分析し、計画を作成し、一貫した支援を行う。

【普段】 教務日誌等で気になった児童生徒の情報を記録・保管

※ 学級担任等が、日常観察の中で気になった児童生徒の状況(強みや課題)等を記録。※ 記録した情報を、必要に応じて学校で共有できるようにして保管・蓄積。

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民間施設についてのガイドライン(試案)

このガイドラインは,個々の民間施設についてその適否を評価するという趣旨の

ものではなく,不登校児童生徒が民間施設において相談・指導を受ける際に,保護

者や学校,教育委員会として留意すべき点を目安として示したものである。

民間施設はその性格,規模,活動内容等が様々であり,民間施設を判断する際の

指針をすべて一律的に示すことは困難である。したがって,実際の運用に当たって

は,このガイドラインに掲げた事項を参考としながら,地域の実態等に応じ,各施

設における活動を総合的に判断することが大切である。

1 実施主体について

法人,個人は問わないが,実施者が不登校児童生徒に対する相談・指導等に関

し深い理解と知識又は経験を有し,かつ社会的信望を有していること。

2 事業運営の在り方と透明性の確保について

① 不登校児童生徒に対する相談・指導を行うことを主たる目的としていること。

② 著しく営利本位でなく,入会金,授業料(月額・年額等),入寮費(月額・

年額等)等が明確にされ,保護者等に情報提供がなされていること。

3 相談・指導の在り方について

① 児童生徒の人命や人格を尊重した人間味のある温かい相談や指導が行われて

いること。

② 情緒的混乱,情緒障害及び非行等の態様の不登校など,相談・指導の対象と

なる者が当該施設の相談・指導体制に応じて明確にされていること。また,受

入れに当たっては面接を行うなどして,当該児童生徒のタイプや状況の把握が

適切に行われていること。

③ 指導内容・方法,相談手法及び相談・指導の体制があらかじめ明示されてお

り,かつ現に児童生徒のタイプや状況に応じた適切な内容の相談や指導が行わ

れていること。また,我が国の義務教育制度を前提としたものであること。

④ 児童生徒の学習支援や進路の状況等につき,保護者等に情報提供がなされて

いること。

⑤ 体罰などの不適切な指導や人権侵害行為が行われていないこと。

(別添3)

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4 相談・指導スタッフについて

① 相談・指導スタッフは児童生徒の教育に深い理解を有するとともに,不登校

への支援について知識・経験をもち,その指導に熱意を有していること。

② 専門的なカウンセリング等の方法を行うにあっては,心理学や精神医学等,

それを行うにふさわしい専門的知識と経験を備えた指導スタッフが指導にあた

っていること。

③ 宿泊による指導を行う施設にあっては,生活指導にあたる者を含め,当該施

設の活動を行うにふさわしい資質を具えたスタッフが配置されていること。

5 施設,設備について

① 各施設にあっては,学習,心理療法,面接等種々の活動を行うために必要な

施設,設備を有していること。

② 特に,宿泊による指導を行う施設にあっては,宿舎をはじめ児童生徒が安全

で健康的な生活を営むために必要な施設,設備を有していること。

6 学校,教育委員会と施設との関係について

児童生徒のプライバシ-にも配慮の上,学校と施設が相互に不登校児童生徒や

その家庭を支援するために必要な情報等を交換するなど,学校との間に十分な連

携・協力関係が保たれていること。

7 家庭との関係について

① 施設での指導経過を保護者に定期的に連絡するなど,家庭との間に十分な連

携・協力関係が保たれていること。

② 特に,宿泊による指導を行う施設にあっては,たとえ当該施設の指導方針

いかなるものであっても,保護者の側に対し面会や退所の自由が確保されてい

ること。

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教育支援センター整備指針(試案)

1 趣 旨

○ 教育委員会は,教育支援センター(以下「センター」という。)の整備に

当たって,この指針の定めるところに留意し,不登校児童生徒に対する適

切な支援を行わなければならない。

2 設置の目的

○ センターは,不登校児童生徒の集団生活への適応,情緒の安定,基礎学

力の補充,基本的生活習慣の改善等のための相談・指導(学習指導を含む。

以下同じ。)を行うことにより,その学校復帰を支援し,もって不登校児童

生徒の社会的自立に資することを基本とする。

3 自己評価・情報の積極的な提供等

○ センターは,その目的を実現するため,その相談・指導,その他のセン

ターの運営状況について改善・充実を図るとともに,自ら点検及び評価を

行い,その結果を公表するよう努めるものとする。

○ センターは,その相談・指導,その他のセンターの運営の状況について,

保護者等に対して積極的に情報を提供するものとする。

4 対象者

○ 入室や退室等に関する方針や基準が明らかにされていること。

○ 不登校児童生徒の入退室等の決定については,その態様等を踏まえ,セ

ンターにおける指導の効果が達せられるよう児童生徒の実情等の的確な見

立て(アセスメント)に努めるものとする。その際には,当該児童生徒が

在籍する学校関係者はもとより,専門家を含めて検討を行うことが望まし

い。

○ 必要に応じて,中学校を卒業した者についても進路等に関して主として教

育相談等による支援を行うことが望ましい。

5 指導内容・方法

○ 児童生徒の立場に立ち,人命や人格を尊重した人間味のある温かい相

談・指導を行う。

○ 相談に関しては,共感的な理解に立ちつつ,児童生徒の自立を支援する

立場から実施する。

○ 各教科等の学習指導に関しては,在籍校とも連絡をとり,センター及び

児童生徒の実情に応じて実施する。

○ 指導内容は,児童生徒の実態に応じて適切に定め,個別指導と併せて,

センター及び児童生徒の実情に応じて集団指導を実施するものとする。そ

の際,児童生徒の実情に応じて体験活動を取り入れるものとする。

○ 家庭訪問による相談・指導は,センター,地域,児童生徒の実情に応じ

て適切に実施することが望ましい。通所困難な児童生徒については,学校

や他機関との連携の下,適切な配慮を行うことが望ましい。

(別添4)

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○ センターは,不登校児童生徒の保護者に対して,不登校の態様に応じた

適切な助言・援助を行うものとする。

6 指導体制

○ センターには,相談・指導などに従事する指導員を置くものとする。

○ 指導員は,通所の児童生徒の実定員10人に対して少なくとも2人程度

置くことが望ましい。

○ 指導員には,相談・指導,学習指導等に必要な知識及び経験又は技能を

有し,かつその職務を行うに必要な熱意と識見を有する者を充てるものと

する。

○ 教育委員会は,指導員の資質向上のため適切な研修の機会を確保するよう

努めることとする。

○ カウンセラーなどの専門家を常勤又は非常勤で配置し,児童生徒の指導

方針等につき,協力を得ることが望ましい。

○ その他,年齢,職種等,多様な人材の協力を得ることが望ましい。その

際,協力を得る人材の実情に応じ,適切な研修を行い,又は指導体制等を

整えることが望ましい。

7 施設・設備等

○ 施設・設備は,相談・指導を適切に行うために,保健衛生上,安全上及

び管理上適切なものとする。

○ センターは,集団で活動するための部屋,相談室,職員室などを備える

ことが望ましい。

○ センターは,運動場を備えるなどスポーツ活動や体験活動の実施に関す

る配慮がなされていることが望ましい。適切な施設を有しない場合は,積

極的に他のセンター等と連携することが望ましい。

○ センターでの個別学習や,家庭との連絡のため,必要な情報通信機器・

ネットワークが整備されていることが望ましい。

○ センターには,相談・指導を行うため,児童生徒数に応じ,保健衛生上

及び安全上必要な教具(教科用図書,学習ソフト,心理検査用具等)を備

えるものとする。また,これらの教具は,常に改善し,補充するよう努め

なければならない。

8 学校との連携

○ 指導員等は,不登校児童生徒の態様に応じ,その支援のため,在籍校と

の緊密な連携を行うものとする(定期的な連絡協議会,支援の進め方に関

するコーディネート等の専門的な指導等)。

○ 指導員等は,不登校児童生徒の学校復帰後においても,必要に応じて在

籍校との連携を図り,継続的に支援を行うことが望ましい。

○ 指導員等は,児童生徒の実情等の的確な見立て(アセスメント)にそっ

た児童生徒の個々の回復状況を把握し,守秘義務に配慮した上で,本人,

保護者の意向を確かめて在籍校に学習成果等を連絡するものとする。

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○ 指導員等は,不登校に関し,学校に対する専門的な指導・助言・啓発を

行う。

9 他機関・民間施設・NPO法人等との連携

○ センターは,教育センターや社会教育施設などの教育機関や児童相談所,

警察,病院,ハローワーク等の関係機関との連携を適切に図り,不登校に

関する地域ぐるみのサポートネットワークづくりに努めるものとする。

○ センターは,不登校関係の民間施設,NPO法人等との連携・協力を適

切に図ることが望ましい。

○ 民間施設との連携については国が示している「民間施設についてのガイ

ドライン」等に留意するものとする。

10 教育委員会の責務

○ 教育委員会は,前各項の趣旨が達せられるよう,教育委員会規則の制定

や指導体制の充実等,センターの整備に関し必要な方策を講じなければな

らない。

○ 教育委員会は管轄地域以外のセンターの連携・協力関係が,適切に図る

ことができるよう配慮しなくてはならない。

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