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1 はじめての現代制御理論 講義11 1 講義11 オブザーバの設計 オブザーバとは何かを理解しよう オブザーバの構成方法を理解しよう オブザーバゲインの設計とオブザーバの特性の関係を 理解しよう 講義11のポイント 1.オブザーバとは 2.オブザーバの構成 3.オブザーバによる状態推定 講義11の内容 はじめての現代制御理論 講義11 2 11.1 オブザーバとは 次元1入力1出力システム システムが可制御であれば状態フィードバック 制御 により極配置可能 閉ループシステムを安定化 2次元システムの場合の状態フィードバック制御則 状態フィードバック制御則を構成すには すべての状態変数 の値を用いる必要がある

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Page 1: lecture 11 - Kagoshima U11.2 オブザーバの構成 11.2.1 オブザーバとして適切でない構成 推定誤差 両辺を微分 講義06の6.1節と同様に解く ここで

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はじめての現代制御理論 講義11 1

講義11 オブザーバの設計

オブザーバとは何かを理解しようオブザーバの構成方法を理解しようオブザーバゲインの設計とオブザーバの特性の関係を理解しよう

講義11のポイント

1.オブザーバとは2.オブザーバの構成3.オブザーバによる状態推定

講義11の内容

はじめての現代制御理論 講義11 2

11.1 オブザーバとは

次元1入力1出力システム

システムが可制御であれば状態フィードバック

制御 により極配置可能

閉ループシステムを安定化

2次元システムの場合の状態フィードバック制御則

状態フィードバック制御則を構成すには

すべての状態変数 の値を用いる必要がある

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はじめての現代制御理論 講義11 3

11.1 オブザーバとは

直流モータの例

入力:電機子回路への印加電圧

出力:電機子コイルの回転角速度

状態空間表現

状態フィードバック制御則

電機子回路内の電流

電機子コイルの回転角速度

はじめての現代制御理論 講義11 4

11.1 オブザーバとは

直流モータの例

計測できない 出力として計測

実際の入力

本来の状態フィードバック制御則とはならない

極配置などが行えない

オブザーバの概要

すべての状態変数が計測できなくても,入力 と

出力 , の情報より状態変数(ベクトル)を推定

時間的に変化している状態変数

をできるだけ早く推定するオブザーバを構成する

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はじめての現代制御理論 講義11 5

11.2 オブザーバの構成

11.2.1 オブザーバとして適切でない構成

状態ベクトルを推定したいシステムの と を使う

オブザーバの状態ベクトル列ベクトル

オブザーバの候補

を適切に与えて状態方程式を解けば

が得られる推定誤差

状態変数を推定したいシステムの状態ベクトル

とオブザーバの状態ベクトル との誤差

時間が充分経過して が0に近づけばよい

はじめての現代制御理論 講義11 6

11.2 オブザーバの構成

11.2.1 オブザーバとして適切でない構成

オブザーバの候補

推定誤差

状態ベクトルを推定したいシステム

両辺を微分

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はじめての現代制御理論 講義11 7

11.2 オブザーバの構成

11.2.1 オブザーバとして適切でない構成

推定誤差

両辺を微分

講義06の6.1節と同様に解く

ここで で は未知

のすべての固有値の実数部が負であれば

システムが不安定な場合は は発散

はじめての現代制御理論 講義11 8

11.2 オブザーバの構成

11.2.1 オブザーバとして適切でない構成

システムが安定な場合は

オブザーバによる状態推定値

収束の速さは の固有値に依存

オブザーバを用いた状態フィードバック制御則

となれば

できるだけ早く に一致させることが必要

の固有値の位置に依存する

オブザーバとして適切に機能しない場合もある

推定の速さは

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はじめての現代制御理論 講義11 9

11.2 オブザーバの構成

11.2.2 オブザーバとして適切な構成

オブザーバの状態ベクトル

オブザーバの候補

さらに と を用いる新たに追加した項

列ベクトル

推定誤差:

状態ベクトルを推定したいシステムの と を使う

はじめての現代制御理論 講義11 10

11.2 オブザーバの構成

推定誤差

講義06の6.1節と同様に解く

行列 の固有値の位置に応じて

の応答の様子が変わる

状態フィードバックによる行列 の

極配置と同様の考え方

11.2.2 オブザーバとして適切な構成

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はじめての現代制御理論 講義11 11

11.2 オブザーバの構成

推定誤差

状態ベクトルを推定したいシステムの安定性に関わらず行列 のすべての固有値の実数部

を負に配置するようにベクトル を選ぶ

と が一致

ベクトル を適切に選んで行列 の固有値を

変えて推定誤差 が0に収束する速さを変える

状態ベクトルを推定する速さを自由に変えることができる

11.2.2 オブザーバとして適切な構成

はじめての現代制御理論 講義11 12

11.2 オブザーバの構成

オブザーバ

によりシステム の

状態ベクトル はオブザーバの状態ベクトル

ベクトル を適切に選んで推定速度が変えられる

同じであるとみなせる

いつもそのようなことが可能か?

状態フィードバック制御系の場合は

システムが可制御であれば極配置可能

どのような条件のもとで の固有値を

任意に配置できるのか?

11.2.2 オブザーバとして適切な構成

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はじめての現代制御理論 講義11 13

11.2 オブザーバの構成

双対関係

が可制御 の固有値を任意の値に設定するベクトル

が存在

が可観測 対 が可制御等価

対 が可制御任意の値に設定する

ベクトル が存在

の固有値を

と の固有値は等しい

と考えればオブザーバと状態フィードバックの設計は双対関係

11.2.2 オブザーバとして適切な構成

はじめての現代制御理論 講義11 14

11.2 オブザーバの構成

オブザーバの構成条件

システム に対し

対 が可観測であれば行列 の固有値を

任意の値に設定するベクトル が存在する.

すなわち,システムが可観測であればオブザーバ

によりシステムの状態ベクトル が推定できる.

ベクトル オブザーバゲイン

行列 の固有値:オブザーバの極

11.2.2 オブザーバとして適切な構成

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はじめての現代制御理論 講義11 15

11.2 オブザーバの構成

オブザーバの構成図

11.2.2 オブザーバとして適切な構成

オブザーバ

はじめての現代制御理論 講義11 16

11.3 オブザーバによる状態推定

オブザーバゲイン の違いによる推定の違い

状態ベクトルを推定したいシステム

とする (オブザーバだけに注目)

状態ベクトル が初期ベクトル から

零ベクトルに収束する様子をオブザーバで推定

行列 の固有値: (システムは漸近安定)

可観測性行列

可観測

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はじめての現代制御理論 講義11 17

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.1

オブザーバの極:

望ましい特性方程式

オブザーバゲイン:

特性方程式

はじめての現代制御理論 講義11 18

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.1

望ましい特性方程式

特性方程式 係数比較

得られたオブザーバゲイン

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はじめての現代制御理論 講義11 19

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.1

オブザーバの極:

の固有値:行列

オブザーバの極が行列 の固有値より原点側にある

はじめての現代制御理論 講義11 20

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.1シミュレーション結果

と の応答 と の応答オブザーバの極:の固有値:行列

オブザーバの極のほうが原点側にあるため

推定値の収束が遅い

オブザーバの極の位置が不適切

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はじめての現代制御理論 講義11 21

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.2

望ましい特性方程式

特性方程式 係数比較

得られたオブザーバゲイン

オブザーバの極:

はじめての現代制御理論 講義11 22

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.1

オブザーバの極:

の固有値:行列

オブザーバの極が行列 の固有値より左側にある

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はじめての現代制御理論 講義11 23

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.2シミュレーション結果

と の応答 と の応答オブザーバの極:の固有値:行列

オブザーバの極のほうが複素平面のより左側に

あるため,速やかに推定が完了している

オブザーバの極の位置が適切

はじめての現代制御理論 講義11 24

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.3

望ましい特性方程式

特性方程式 係数比較

得られたオブザーバゲイン

オブザーバの極:

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はじめての現代制御理論 講義11 25

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.1

オブザーバの極:

の固有値:行列

オブザーバの極が行列 の固有値より左側にある

はじめての現代制御理論 講義11 26

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.3シミュレーション結果

と の応答 と の応答オブザーバの極:の固有値:行列

オブザーバの極の位置が適切

オブザーバの極が例11.2よりさらに複素平面の

左側にあるため,速やかに推定が完了している

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はじめての現代制御理論 講義11 27

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.4

望ましい特性方程式

特性方程式係数比較

得られたオブザーバゲイン

オブザーバの極: 共役複素数

はじめての現代制御理論 講義11 28

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.1

オブザーバの極:

の固有値:行列

オブザーバの極の実数部は負で行列 の固有値より左側にある

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はじめての現代制御理論 講義11 29

11.3 オブザーバによる状態推定

例11.4シミュレーション結果

と の応答 と の応答オブザーバの極:の固有値:行列

オブザーバの極を共役複素数に設定

実数部が負なので収束するが,応答が振動的

オブザーバの極の配置には注意が必要

はじめての現代制御理論 講義11 30

11.3 オブザーバによる状態推定

オブザーバの極の選び方

システムの行列 の固有値の実数部より

オブザーバの極の実数部を複素平面の

より左側に配置しなければオブザーバ

として適切に機能しない

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はじめての現代制御理論 講義11 31

講義11のまとめ

システムが可観測ならばオブザーバを構成してシステムの状態ベクトルを推定することができる.システムの行列

の固有値よりオブザーバの極

の実数部を複素平面のより左側に配置しなけれ

ば,オブザーバとして意味のあるものにならない.

オブザーバの設計は状態フィードバック制御の

設計と同様に,オブザーバゲイン

計算,係数比較により正確に求める必要がある.

の値を固有値