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Instructions for use Title 事業統括役員に求められるアンラーニング Author(s) 松尾, 睦 Citation Discussion Paper, Series B, 127, 1-17 Issue Date 2014-08 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/56792 Type bulletin (article) File Information DPB127.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Title 事業統括役員に求められるアンラーニング

Author(s) 松尾, 睦

Citation Discussion Paper, Series B, 127, 1-17

Issue Date 2014-08

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/56792

Type bulletin (article)

File Information DPB127.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Discussion Paper, Series B, No.2014-127

事業統括役員に求められるアンラーニング

松尾睦

2014 年 8 月

北海道大学大学院経済学研究科

060-0809 札幌市北区北9条西7丁目

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はじめに マネジャーは、課長、部長、事業部長、事業統括役員と組織の階層を上がるにつれて

新たな能力を身につけねばならない(Charan, Drotter, & Noel, 2001; Freedman, 2011)。つま

り、マネジャーは、昇進にともなって、役に立たなくなった知識・スキルを捨て、新た

な役割において求められる知識・スキルを獲得する必要がある。 組織論では、知識を棄却する活動をアンラーニング(unlearning)と呼ぶが(Hedberg, 1981; Tsang, 2008)、組織的アンラーニングは、イノベーションや組織学習を促進するた

めの条件となる(Buchen, 1999; Haeffner, Leone, Coons, & Chermack, 2012; Wong, Cheung, Yiu, & Hardie, 2012)。ここで注意しなければならないのは、組織がアンラーンするため

には、組織メンバーもアンラーンしなければならないという点である(Klein, 1989; Tsang & Zarha, 2008)。しかし、先行研究において、アンラーニングは、主に組織レベルの概

念として検討されており、個人レベルの概念として分析されることは少なかった(Becker, 2005, 2010)。 昇進の際に適切な形でアンラーンできるマネジャーは、組織を取り巻く環境が変化し

たときにも、全社的なアンラーニングに前向きに取り組むことができるだろう。つまり、

マネジャーのアンラーニングする力は、組織が変革やイノベーションを進める原動力に

なると考えられる。 本研究は、インタビュー調査を基に、マネジャーが事業部長から事業統括役員に昇進

した際、どのような形で知識・スキルを変更しているかを明らかにすることを目的とし

ている。事業統括役員に焦点を当てた理由は、次の 2 点である。第 1 に、事業統括役員

は組織全体の意思決定に影響力を持つためである。第 2 に、事業部長から事業統括役員

へと移行する際、マネジャーとしての役割が大きく変化するからである。上級マネジャ

ーのアンラーニング・プロセスを検討することは、マネジャーの熟達やリーダーシップ

開発の理論的発展につながると期待できる。 以下では、アンラーニングの概念について概観した後、リーダーシップ・パイプライ

ン・モデル、およびマネジャーの役割やスキルについて説明する。その上で、本研究の

リサーチクエスチョンを提示し、調査データを分析・考察する。なお、本稿では、「知

識・スキル」を「能力」と同義の用語として用いる。

先行研究のレビュー アンラーニング 組織学習論では、組織が経験を通して知識を獲得するプロセスが研究されてきた

(Argote, 2005)。組織が学習するためには、新しい知識を獲得するだけでなく、陳腐化し、

時代遅れとなった知識を捨てなければならない(McGill & Slocum, 1993)。なぜなら、組

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織は、成功を積むにしたがって、効率性を重視し、自己満足に陥り、学ばなくなる傾向

にあるからだ(Nystrom & Starbuck, 1984)。組織論では、役に立たなくなった知識を棄却

する活動をアンラーニングと呼ぶが(Hedberg, 1981)、このアンラーニング能力なしに、

組織学習や組織イノベーションを促進することは難しい(Buchen, 1999; de Holan & Phillips, 2004; Easterby-Smith, Antonacopoulou, Simm, & Lyles, 2004; Wong et al., 2012)。 一般的に、組織的アンラーニングは、「新しいルーチンを導入するために、時代遅れ

となったルーチンを棄却するプロセス」と定義されている(Antonacopoulou, 2009; Tsang, 2008; Tsang & Zahra, 2008)。ここでいうルーチンとは、組織を運用するために必要な「規

則的で,予測可能な,安定した傾向性」であり(Nelson & Winter,1982)、組織構造、

制度、システム、行動規範、行動パターン等を含む概念である。なお、組織的アンラー

ニングは、不必要となった知識を意図的に棄却するという意味で、単なる組織的忘却

(organizational forgetting)とは異なる(Easterby-Smith & Lyles, 2011)。 アンラーニングに関する実証研究の多くは事例分析であるが、数は少ないものの定量

的な研究も行われている。例えば、Akgun et al. (2006)は、アンラーニングを「組織にお

ける信念とルーチンの変化」と定義した上で、新商品開発チームのアンラーニングの決

定要因と結果要因を定量的に分析している。その結果、市場の不確実性が高く、チーム

が危機感と不安を感じているほど、チームのアンラーニングが促され、チームの学習や

業績が高まることが報告されている。また、Becker (2010)は、組織的なアンラーニング

を促進する要因として、変革の必要性を理解することや、組織的サポートやトレーニン

グのレベル、変革のアセスメント、組織における変革の歴史等を挙げている。 アンラーニングは、組織レベルの概念として提示されたが、個人にも適用が可能であ

る。なぜなら、組織学習やアンラーニングの概念は、個人学習や認知心理学の研究から

援用されたものだからである(Cook & Yanow, 1993; Akgun et al., 2007)。個人レベルのア

ンラーニングとは、個人が自身の知識・スキルが役に立たないということに気づいたと

きに、それらを棄却し、新しい知識・スキルを獲得することを指す(Akgun et al., 2007; Tsang & Zarha, 2008)。 組織レベルのアンラーニングが起こるためには、個人レベルのアンラーニングが必要

になることから、両レベルのアンラーニングに着目する必要がある(Klein, 1989; Rebernik & Sirec, 2007; Tsang & Zarha, 2008)。特に、企業全体の学習や業績に大きな影響

を及ぼす役員クラスのマネジャーのアンラーニング・プロセスを検討することは重要な

研究テーマである。例えば、戦略を転換するためのアンラーニングが成功するかどうか

は、トップ・マネジメント・チームにおけるアンラーニング次第であると言われている

(Hutzschenreuter, Kleindienst, Greger, 2012)。しかし、個人レベルのアンラーニングに関す

る理論化は遅れており、実証研究は極めて少ないのが現状である(Becker, 2005)。

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リーダーシップ・パイプライン・モデル 組織の階層が上昇すると、マネジャーは既存の知識・スキルの一部を棄却し、新しい

役割において必要となる知識・スキルを獲得しなければならない(Freedman, 2011)。こう

した点を示唆しているのが Charan et al. (2001)による「リーダーシップ・パイプライン

(leadership pipeline)」モデルである。このコンセプトは、経営実践の場において広く知

られているものの、モデルの妥当性の検証は始まったばかりである(e.g., Kaiser, 2011; Kaiser & Craig, 2011; Meuse, Dai, & Wu, 2011)。 リーダーシップ・パイプライン・モデルによれば、大規模企業には、六つのキャリア

上の経路(passage)が存在し、マネジャーは、組織の階層を上がるにつれて、新しいマ

ネジメント手法、リーダーシップスキル、価値観を学ばなければならない。しかし、多

くのマネジャーが、現在働いているレベルよりも低いレベルのスキルや価値観にとらわ

れているケースが多いという(Charan et al., 2001)。担当者レベルの働き方をしている課

長や、課長の意識から抜け出せない事業部長が多数存在する場合には、組織が機能不全

に陥ってしまうだろう。 図表 1 は Charan et al. (2001)によるリーダーシップ・パイプライン・モデルを図示し

たものである。経路1は、自分を管理することから他者を管理するようになるジュニ

ア・ミドルマネジャー(係長・課長)への移行期である。自分の仕事をうまく遂行する

だけでなく、他者が仕事を上手く遂行できるように助けるスキルを身につけなければな

らない。経路 2 は、マネジャーを管理するマネジャー(部長クラス)への移行期である。

個人の仕事はせずに、純粋にマネジメントを行うようになる点が経路 1 とは異なる。経

路 3 は、職能部門を束ねるマネジャー(職能部長クラス)への移行期である。たとえば、

人事部長、営業部長、工場長など職能部門を統括する職務に就くと、未経験の仕事も管

理しなければならないとともに、他の職能部門の動きを考慮に入れながら行動する必要

がある。さらに、長期的な視点から、競争優位につながる職能戦略を立てる能力も求め

られる。 経路 4 は、事業部門を管理するマネジャー(事業部長クラス)への移行期である。活

動と成果が明確にリンクする事業部を任せられることから、マネジャーのキャリアの中

でも最もチャレンジングな時期であり、スキルを大幅に転換することが要求される。短

期的思考と長期的思考のバランスをとりながら、幅広い人々と働き、各職能部門を束ね

ていかなければならない。経路 5 は、複数の事業部門を管理するマネジャー(事業統括

役員・副社長クラス)への移行期である。複数の事業に資源を配分するポートフォリオ

戦略など、より全体的で幅広い視点が必要となり、コーチングなどを通して、事業部長

を育てるスキルも求められる。より大きな意思決定、高いリスクや不確実性に対処しな

がら、長いスパンでものを考えなければならない。経路 6 は、企業全体を管理する最高

経営責任者(社長)への移行期である。この時期には、スキルよりも価値における変化

が求められるという。CEO になれば、長期的な戦略をとると同時に、3 カ月毎の業績を

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管理しなければならない。また、外部環境の変化に敏感となり、受け身ではなく能動的

な対応が必要となる。さらに、戦略的思考からビジョナリー思考へ、オペレーションか

らグローバルな視点への移行が求められる。 なお、Charan et al. (2001)は、単一の事業に従事する中小・中堅企業の場合には、パイ

プラインが、担当者→マネジャー→職能部門マネジャー→事業マネジャーの 4 段階にな

ると指摘している。

図表 1 リーダーシップ・パイプライン・モデル

マネジャーの役割とスキル 次に、マネジャーがどのような役割を担っており、いかなるスキルを持つべきかにつ

いて主要な研究を概観する。 Mintzberg (1973)のモデル Mintzberg (1973)は、上級マネジャーを実際に観察した研

究をもとに、マネジャーの役割モデルを提示している。このモデルによれば、マネジャ

ーの役割は「対人的役割」「情報的役割」「意思決定の役割」の3つに分けられ、これら

はさらに10の役割に細分化されている。 対人的役割には、部下の動機づけ(リーダー役)、部署の代表としての雑務(看板役)、

自部署と他部署・外部を結びつける仕事(対外的窓役)がある。つまり、自部門をまと

めながら、他部門とコミュニケーションする活動である。 情報的役割には、組織内外の情報を収集し(情報収集役)、自部署に情報を伝達する

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とともに(情報伝達役)、自部署の情報を外部に広める役目(スポークスマン)が含ま

れている。 意志決定の役割は、ヒト・モノ・カネ・時間といった資源を配分すること(資源配分

役)、予期せぬ障害が生じたときには対処すること(問題対処役)、必要に応じて自部署

を変革し(起業家)、部署の代表として外部と交渉する役割(交渉役)を含んでいる。 このモデルは、経営者だけでなく、多様な部門で働くミドルマネジャーにも適用可能

であることが報告されており、マネジャーの行動研究において最も頻繁に引用されるモ

デルである(Paolillo, 1981; Pavett & Lau, 1983, 1985; Pinsonneault & Rivard, 1998)。ただし、

ミンツバーグの研究がさかんに取り上げられたのは 1980 年~1990 年代であり、2000 年

代に入ってからはマネジャーの役割に関する研究自体が減少しているのが現状である

(Mintzberg, 2009)。 Katz (1955)のモデル マネジャーのスキルについて検討した研究の多くは Katz (1955)のモデルに依拠している(e.g., Chen et al., 2005; Dierdorff et al., 2009)。彼は、マネ

ジャーのスキルをヒューマンスキル、テクニカルスキル、コンセプチュアルスキルの3

つに分類している。なお、カッツのモデルは、ミンツバーグの役割モデルとセットで分

析されることも多い(e.g., Pavett & Lau, 1983, 1985)。 ヒューマンスキルとは、部下・同僚・上司と協力しながら仕事をする能力であり、コ

ミュニケーション、動機づけ、育成に関するスキルを含む。つまり、他者とうまく協働

するための対人能力がヒューマンスキルである。テクニカルスキルは、会計、財務、生

産、物流、販売などの専門領域における方法やプロセスに関する専門知識や技術を指す。

コンセプチュアルスキルとは、組織全体や外部環境の動きを見極める能力であり、環境

を探査する力や戦略的に意思決定する力である。Katz (1955)は、職位が高くなるほど、

コンセプチュアルスキルの重要性が増すと指摘している。 Mumford et al. (2007)の研究 Katz (1955)のモデルを発展させたのが Mumford et al.

(2007)の研究である。彼らは、マネジャーのスキルを「認知的スキル、対人スキル、ビ

ジネススキル、戦略スキル」の4つに分類している。このうち、対人スキルは Katz (1955)によるヒューマンスキルに、ビジネススキルはテクニカルスキルに、認知的スキルと戦

略スキルは、コンセプチュアルスキルに対応している。 認知的スキルとは、話す、聴く、書く、読むといった基本能力、批判的思考力、情報

の収集・分析・共有などの情報処理に関する能力である。対人スキルは、社会共感性、

協力、交渉、説得など、対人関係を構築・維持するための能力である。彼らの調査では、

これら二つのスキルは、どの階層のマネジャーにも共通した、マネジャーとしての基盤

的能力であることがわかった。 一方、マネジャーの階層間で大きな格差があったスキルは、ビジネススキルと戦略ス

キルであった。ビジネススキルとは、オペレーション分析、人的資源のマネジメント、

財務資源のマネジメント、物的資源のマネジメント等、事業を運営する上で必要となる

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専門的なスキルである。戦略スキルとは、環境の変化の原因を理解した上で、組織をシ

ステムとしてとらえ、長期的な視点から戦略のベースとなるビジョンを提示する高度な

認知能力である。調査では、シニアマネジャーになるほど、高いレベルのビジネススキ

ルと戦略スキルが要求されることが明らかになっている。 つまり、ミドルマネジャーまでは、認知的スキルや対人スキルが中心的な役割を果た

すが、部長以上のシニアレベルになると、そうした能力を前提にしながら、事業を運営

するためのビジネススキルや、戦略を立案できる戦略スキルを獲得しなければならない

といえる。

リサーチクエスチョン 従来の研究において、個人レベルのアンラーニングはほとんど実証的に検討されてこ

なかった。また、リーダーシップ・パイプライン・モデルは、マネジャーの役割やスキ

ル研究の観点から検証されているわけではない。しかし、組織全体への影響度の大きさ

を考えると、上級マネジャーのアンラーニング・プロセスは重要な研究テーマである。 この点を踏まえ、本研究は、単一の事業に従事する部長や事業部長から、複数の事業

を統括する役員へ昇進する際、どのようなアンラーニングが行われるかを明らかにした

い。具体的には、次のリサーチクエスチョンを検討する。 RQ:マネジャーは、部長・事業部長から事業統括役員へと昇進する際、どのような形

で知識・スキルを変更しているのか。

研究方法 本研究のインタビュー対象は、民間企業に勤務する事業統括役員 24 名である。イン

タビューアーは、「部長を対象とした教育プログラム」に参加した 24 名の部長である。

筆者は、講師としてこのプログラムの一部を担当したが、事前課題として、参加者に、

自組織においてロールモデルとなる事業統括役員にインタビュー調査を実施し、その内

容を文書化し、レポートとして提出するように求めた。インタビュー対象者のプロフィ

ールを調べたところ、全員が事業統括役員以上のマネジャーへインタビューを行ってい

ることが確認できた。 対象者の勤務する組織の業種は、IT・電機メーカー(6 名)、食品メーカー(2 名)、

日用品メーカー(1 名)、鉄鋼メーカー(1 名)、商社(1 名)、製薬メーカー(3 名)、住

宅・設備系メーカー(1 名)、化学メーカー(2 名)、建設(2 名)、鉄道(3 名)、生命保

険(1 名)、サービス企業(1 名)である。これらの組織のほとんどは、日本を代表する

大規模企業である。 インタビューでは、「部長時代に自身が実践していたマネジメント手法や考え方のう

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ち、役員になってからは通用しなかったもの、変えなければならなかったものは何です

か?具体的な事例や経験とともにご教示ください」という質問を対象者に提示した。 どのような形でアンラーニングが行われているかを分析するため、グラウンデッド・

セオリー・アプローチ(Strauss & Corbin, 1990)に基づいて、筆者がインタビュー・データ

を分析したところ、「経営判断」「権限委譲と動機づけ」「情報収集」という3つのカ

テゴリーが抽出された。「経営判断」は、経営に関する判断や意思決定の能力、「権限

委譲と動機づけ」は、自らの権限を部下に委譲し、部下を動機づける能力、「情報収集」

は、市場や現場に関する情報を収集する方法に関する能力を意味している。また、部長

から事業統括役員への昇進に伴い、それぞれのカテゴリーにおいて、どのような能力が

棄却され、いかなる能力が獲得されているかについても検討した。分析結果のセクショ

ンにおいてインタビューデータを紹介する際には、文章の語尾等に多少の変更を加える

ことで、表現を統一した。 上述した3つのカテゴリーについて、対象者がどの程度言及しているかを数量的にと

らえるために、Babbie (2001)に基づき内容分析を行った。まず、インタビューの内容を

文書ファイルに変換した。次に、上述した3つのカテゴリー、およびアンラーニングの

有無について、コーダー二人(博士課程の研究者)が独立した形でデータをコーディン

グした。コーディング結果の一致率は83.3%であった。一致しなかったデータについて

は、二人のコーダーが協議の上、決定した。各カテゴリーの出現比率は、カテゴリーに

言及した人数を、全体の人数で割った比率(パーセント)で示した。

分析結果 内容分析の結果、事業部長から事業統括役員に昇進した際に、何らかの形で自らの知

識・スキルを変更した、つまりアンラーンしたマネジャーは全体の 83.3%であった。図

表 2 は、その内容をまとめたものである。3 つのカテゴリーのうち、マネジャーが最も

多く言及した能力は「経営判断」(45.8%)と「権限委譲と動機づけ」(45.8%)であり、次

いで「情報収集」(37.5%)であった。以下では、各カテゴリーに関するマネジャーの発

言を紹介する。 経営判断 経営判断とは、経営に関する判断や意思決定のあり方に関する能力である。ある役員

は、株主やアナリスト等を意識しつつ、経営に関する信念を持つことの大切さを強調し

ている。

取締役になってからは、株主やアナリスト等の声にダイレクトに耳を傾ける立場と

なり、配当水準などそれまでとは全く視点の異なる判断を迫られるようになった。

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それに対応していくためには事業や経営に対する信念を持ち、ぶれずに貫くことが

重要である。

図表 2 アンラーニングの対象となった能力

カテゴリー 比率 アンラーニングの例

経営判断 45.8%

様々な情報に揺さぶれることなく、合理的な判断基準を持つ/事業や経営に対する信念を持ち、ぶれずに貫くことが必要/世間一般の分析にたよらず、自らの事業観で判断/今日と明日のことだけでなく、将来も考える、大きな視点が必要/案件が事業方針・戦略に合っているか、利益は出るのかという観点から事業を評価する/組織エゴを捨て、全体最適的に行動する

権限委譲と動機づけ 45.8%

緊急時にオペレーションの先頭に立つと自分がボトルネックになる/陣頭指揮スタイルは物理的にも無理であり、部長のイニシアティブを損なう/自分が不在でも大丈夫なように普段から一緒に考える/仕事の達成感、快感を自分ではなく、部下に味わせる/責任の所在を明確にし、業務の遂行過程を見守るようにする

情報収集 37.5%

現場情報が入るのが遅くなるので、部下へ権限委譲し、ポイントの進捗確認する/情報をほしがるのはやめ、情報がなくてあたりまえと思う/役員は孤独なので、部門運営に必要な極めて重要な部下を近接配置する/組織として合理的・戦略的な情報収集の仕組みや体制をつくる/自分の経験で判断できる領域が少なくなるため、積極的に情報収集し、社内外にブレーンを持つ

注:複数回答のため比率の合計は100%にはならない。

次の役員は、短期的視点だけでなく長期的視点を持つこと、および、顧客や競争相手

に対してもより大きな視点を持つことの重要性を指摘している。

「今日と明日」だけを考えた行動ではなく「将来」も考えなければならない。日本

や世界の顧客、競合、技術など、部長時代よりも大きな視点が必要となる。 事業統括役員への昇進に伴い、分析的な判断から、直感的な判断へとシフトした役員

もいる。コメントを見てみよう。

部長職の時は、個々人や顧客、ビジネステーマなど様々な要素に対して、分析を徹

底的に行ない、数値化された指標をベースにマネジメントを行なっていた。そうす

ることにより周囲の納得性を高め、スムーズな合意形成を行なうようにしていた。

しかし、役員になってからは、より自身の直感を信じること、リーダーシップを発

揮したトップダウン的なマネジメントが重要であると考えている。 次の役員は、部分最適から全体最適へと考え方を変える必要性を説いている。

部課長の時代は、部下の昇格のために人事にかけあうとか、組織予算をしっかり確

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保するとか、部下と組織のために力を尽くすことは当然であり、そういう行動をし

ないと成員の信頼を得られなかった。しかし、経営者になると、そういう組織エゴ

を捨て、全体最適的に行動するべきである。

以上のコメントから、事業統括役員は、部長時代における「短期的判断、分析的判断、

部分最適の判断」スタイルをアンラーンし、「長期的判断、直感的判断、全体最適の判

断」のスタイルを身につけていることがわかる。 権限委譲と動機づけ 経営判断と同程度に言及されたのは「権限委譲と動機づけ」であった。多かれ少なか

れ、マネジャーは部下に権限を委譲し、部下を動機づけなければならない。しかし、事

業に直接関わって仕事をする部長・事業部長とは違い、複数の事業を管轄する事業統括

役員には、より間接的なマネジメントが要求される。ある役員は次のように述べている。

自分の経験では、企業人として最も充実感を味わえるのは、ある領域を任され、知

識・経験を積み、その分野で第一人者と認められる時である。しかし、責任範囲が

広がり、部下の数も増えると、いつまでもこの快感に浸っていられなくなる。むし

ろ捨てる覚悟が必要となる。組織の期待が「仕事師」ではなく、より高度なリーダー

に変質するからだ。むしろ、この快感をいかに部下に味あわせるかを考えてチーム

を作るかが自らの任務となる。人によっては、この任務を辛く感じるかもしれない。 このコメントから、事業統括役員に昇進する際、マネジャーは事業を直接運営する役

割から、彼らを支援する役割へと移行することがわかる。同様に、別の役員は次のよう

にコメントしている。

課題設定、方向性決定、実行指揮といった陣頭指揮スタイルは物理的にも無理だし、

部長のイニシアティブを損なうだろうと思う。現場でしか得られない情報や考えを、

どのようにして部長以下から受け取れるようにするかが課題である。 「任せる」範囲が広がるという状況に対し、事業統括役員はどのように対処している

のだろうか。次のコメントを見てみよう。

自分が不在でも大丈夫なようにすることが大切である。そのために、一緒に考える

ようにしている。そうすると、何かあった際の判断基準に共感を持ってくれるよう

になるので、部下の判断が間違いないと確信できるようになり、仕事を任せること

ができる。また、指示待ちにはならない人材を育成することにもつながる。

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以下の役員は、全社や事業本部の方針を明確化することが、事業統括において重要に

なることを強調している。

役員になってからは、担当する事業部門の幅が広くなり、有用であったノウハウが

全く使えなくなった。分担領域が広がると現場で何が起きているかは分からなくな

る。また、現場で発生する事象の情報が入ってくるのが遅くなる。したがって、事

業部長以下への権限移譲を行う必要があり、必然的に自身は方針をトップダウンで

伝え、方向性が間違っていなければ、各事業ラインのやり方に任す形とした。トッ

プダウンで方針を伝える際にバイブルとなるのは全社や事業本部の方針・戦略であ

る。ただし、現場から全く離れるわけにはいかないため、ポイントでは、その検討

会やレビューの場に出席することとした。 以上のコメントから、事業統括役員は、自分が主人公となり、実行指揮を取っていた

部長時代のスタイルをアンラーンし、部下を主人公とし、判断基準を共有しつつ、方針

によって管理するスタイルへとシフトしてことがわかる。

情報収集 3 番目のカテゴリーである情報収集は、上述した権限委譲と密接に関係している。現

場から離れているがゆえに情報が入ってきにくい状況に置かれた事業統括役員は、情報

収集の方法を工夫しなければならない。次のコメントを見てみよう。

職位が上になればなるほど、情報を欲しがることはやめた方が良いと思っている。

情報が上がってこないからといって、それがフラストレーションになる様では駄目

であって、情報がなくて当たり前と思うぐらいでなければいけない。よく現場の情

報を欲しがる人がいるが、現場に近づけば近づくほどそれは「要望」になる。それ

は、各々の現場で全て違ってくるものであり、大事なのは、その要望を「課題」と

してまとめて、上げさせることである。 上記の役員と違い、現場情報を持つ部下を近接配置することで対処している役員もい

る。

役員は孤独なので、情報が入って来にくくなる。そこで、部門運営に必要な極めて

重要な部下を近接配置することが有効となる。 次のコメントは経営判断とも関係するが、この役員は社内外にブレーンを持つことで

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情報収集をしているという。

役員になってからは、自分の経験で判断出来る領域はかなり狭くなり、先見の目を

持ったプロアクティブな判断を余儀なくされる場面に遭遇する場合が多いので、情

報入手と自身の未経験な領域の学習に励み、さらに社内外にブレーンを持つように

なった。 以上のコメントから、事業統括役員は、現場において直接的に情報を収集する方法を

アンラーンせざるを得なくなり、現場から課題を提出させたり、社内外のネットワーク

を構築することで、情報収集のあり方を工夫していることがわかる。

考察 個人レベルのアンラーニングは、組織レベルのアンラーニングを促すためにも必要と

なるにもかかわらず、実証的に検討されることは少なかった(Becker, 2005, 2010)。本研

究は、部長から事業統括役員への昇進に伴い、マネジャーが何をアンラーニングしたか、

つまり、どのように知識・スキルを変更したかを検討した。インタビュー・データを分

析した結果、「経営判断」「権限委譲と動機づけ」「情報収集」に関してアンラーニング

が行われ、事業統括役員は、新たな知識・スキル・考え方を身につけていた。本研究の

発見事実をまとめたのが図表 3 である

図表 3 事業統括役員のアンラーニング

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まず、経営判断について、事業統括役員の多くは、部長時代の「短期的、分析的、部

分最適」な判断スタイルを改め、「長期的、直感的、全体最適」の経営判断を取り入れ

ていた。 権限委譲について、事業統括役員は、自分が主人公として事業運営に直接関与し実行

指揮をとっていたアプローチから、部下を主人公として事業運営を支援し、判断基準や

事業方針を共有することで大幅な権限を部下に委譲するアプローチへと変更する傾向

にあった。 情報収集については、現場における直接的な情報収集が困難になるにしたがい、事業

統括役員は、情報よりも現場の課題を吸い上げたり、社内外にネットワークを構築する

など、情報収集の方法を工夫していた。 以上の発見事実を理論的に考察していきたい。第 1 に、アンラーニングの対象となっ

た「経営判断、権限委譲と動機づけ、情報収集」は、Mintzberg (1973)の役割モデルであ

る「意思決定の役割、対人的役割、情報的役割」に対応している。すなわち、マネジャ

ーは、事業部長から事業統括役員へと昇進する際、マネジャーの 3 つの役割全てにおい

てアンラーニングが求められているといえる。分析結果は、Mintzberg (1973)の役割モデ

ルが、上級マネジャーのアンラーニング・プロセスを分析する際の枠組みとして有用で

あることを示している。本研究の第一の貢献は、これら 3 つの役割に関して、マネジャ

ーがミドルレベルからトップレベルへと昇進する際に行っているアンラーニングの内

容かを明らかにした点にある。 第 2 に、アンラーニングの対象として最も多く言及されたのが「経営判断」と「権限

委譲と動機づけ」であり、次いで「情報収集」であった。この結果は「上級マネジャー

ほど、コンセプチュアルスキルの重要性が高まる」とする Katz (1955)や、「シニアマネ

ジャーになるほど、高いレベルの戦略スキルが要求される」と報告している Mumford et al. (2007)の研究結果と一致はするものの、対人スキルや情報スキルにおいてもアンラー

ニングが必要であることを示している。つまり、マネジャーが事業統括役員に昇進する

ときには、戦略スキルを含むコンセプチュアルスキルをアンラーンするだけではなく、

マネジメント・スキル全般についてアンラーンしなければならないのである。 第 3 に、本研究は、ミドルマネジャーから役員レベルのマネジャーへ移行する際、コ

ンセプチュアルスキルにどのような質的変化が生じているかを明らかにしたという点

において理論的に貢献していると考えられる。役員クラスのマネジャーはミドル以下の

マネジャーに比べて、「パースペクティブ」や「経営のビジョンや目的」をより多く有

していることが報告されているが(Meuse et al., 2011)、本研究は、経営の判断基準が「短

期的、分析的、部分最適な経営判断」から「長期的、直感的、全体最適な経営判断」へ

と質的に変化していることを示したことで、戦略スキルの変化プロセスの一端を明らか

にしたといえる。今後の研究においては、コンセプチュアルスキルや戦略スキルに焦点

を当てて、上級マネジャーのアンラーニング・プロセスを検討する必要があるだろう。

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Page 15: Instructions for use - HUSCAP...アンラーニングに関する実証研究の多くは事例分析であるが、数は少ないものの定量 的な研究も行われている。例えば、

第 4 に、Charan et al. (2001)は、他人や他事業の成功に意義を見いだすことができるか

どうかが事業統括役員の有能さを決めると指摘しているが、本研究においても同様の結

果が得られた。すなわち、事業に直接関与するというやりがいを感じられる仕事から、

事業部長の仕事を支援するという仕事へと役割が変化する際に、マネジャーが自身の仕

事観を変えることができるかが重要になる。この点に関しては、Kaiser & Craig (2011)も、優れた役員クラスのマネジャーは、部下に権限委譲し、間接的なマネジメントを実

行していると報告している。職位が上がるにつれて、マネジャーは部下に権限を委譲し

ていかなければならないが、事業部長から事業統括役員への昇進時に、最もその度合い

が強まるといえるかもしれない。 次に、本研究の実践的インプリケーションについて述べたい。第 1 に、部長から事業

統括役員へとマネジャーを昇進させる際、マネジャーは「経営判断、権限委譲と動機づ

け、情報収集」についてアンラーニングが必要となることを意識すべきである。この点

を強化するために、図表 3 に示した分析結果を用いて、新任の事業統括役員向けに研

修・ワークショップ・コーチング等を実施することが有効であると考えられる。 第 2 に、権限委譲と動機づけに関するアンラーニングが適切に行われているかどうか

を確認するために、部下である事業部長の意見をフィードバックし、事業統括役員のリ

フレクションを促す必要があると思われる。特に、事業統括役員に昇進した後も、事業

に直接的関与している場合には、事業部長の成長を阻害してしまう恐れがあるので注意

が必要である。 第 3 に、経営判断のあり方に関しては、新任の役員だけでなく、経営陣全員に対して

「短期的、分析的、部分最適な判断」に陥っていないかを確認すべきである。そのため

にも、経営陣が自身の意思決定のあり方を定期的に見直したり、第三者からフィードバ

ックを得る場を設けることが効果的であろう。 最後に、本研究の問題点と今後の課題について述べたい。第 1 に、本研究の調査対象

は日本企業の役員 24 名であるため、分析結果を一般化することに限界がある。今後は、

分析対象を海外企業の役員に広めるとともに、本研究の結果を基に質問票を開発し、定

量的な調査を実施する必要がある。 第 2 に、本研究は、アンラーニングの内容に焦点を当てて分析を行ったが、マネジャ

ーのアンラーニングに影響を与える要因についても検討する必要があるだろう。例えば、

Akgun et al. (2006)は、新商品開発チームが危機感と不安を感じているほど、チームのア

ンラーニングが高まることを報告しているが、同様に、アンラーニングの促進・阻害要

因を分析することで、上級マネジャーのアンラーニング・プロセスを解明することにつ

ながると思われる。 第 3 に、企業の規模や経営環境によってもアンラーニングのあり方が異なる可能性も

ある。例えば、企業規模が大きくなるほど、市場の不確実性が高いほど、経営判断や情

報収集のあり方も複雑になるかもしれない。今後は、こうした要因をモデレーターとし

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Page 16: Instructions for use - HUSCAP...アンラーニングに関する実証研究の多くは事例分析であるが、数は少ないものの定量 的な研究も行われている。例えば、

てモデルに組み込み、アンラーニングのメカニズムを解明する必要があるだろう。 参考文献 Akgun, A.E., Byrne, J.C., Lynn, G.S., & Keskin, H. (2007). Organizational unlearning as

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