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Instructions for use Title 米国農政と厚生経済学 Author(s) 高山, 崇 Citation 北海道大學法經會論叢, 13, 131-141 Issue Date 1953-07 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/10748 Type bulletin (article) File Information 13_p131-141.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Page 1: Instructions for use - HUSCAP...産は異常な浪費と困窮の下に行われていた。農業政策は殆んど某の機能面をもち得、す、国家的観点より見て生のたらざるを得ない。経済政策一般が此の様な条件下にある時、経済政策の働き得る限界は極めて狭く、且つそれ自体消極的なも作用に依って達成されたも

Instructions for use

Title 米国農政と厚生経済学

Author(s) 高山, 崇

Citation 北海道大學法經會論叢, 13, 131-141

Issue Date 1953-07

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/10748

Type bulletin (article)

File Information 13_p131-141.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

Page 2: Instructions for use - HUSCAP...産は異常な浪費と困窮の下に行われていた。農業政策は殆んど某の機能面をもち得、す、国家的観点より見て生のたらざるを得ない。経済政策一般が此の様な条件下にある時、経済政策の働き得る限界は極めて狭く、且つそれ自体消極的なも作用に依って達成されたも

各国に於て採られた農業政策を歴史的に目見る時、其処に「経済

的厚生」という主題をめぐる数多〈の例誌を挙げうるであろう。

此処に「経済的厚生」なるものは、厚生経済学という一貫せる体

系に依り指向されたものではなく、寧ろ、配地史的社会的発展の必

然的所産と見る方が至当であろう。然し、英処に厚生経済学的な

考え方、方法の適用を辿ることも可能ではなかろうか。此の様な

視点から米国農政を事後的に分析・検証する事は、歴史的諸事象

関の錯雑した関係をある一つの体系をもって懇意的に歪めるとい

う危険を犯すことになるが、しかし、このことに依って体系のも

つ理論の一義性が現実的事象に依って劃される限界を確認十るこ

とが出来る、という利点も亦認めねばなるまい。

此の様な観点から、私は米国農政i特に-一ユ

1デイル以後のー

に於で見られる諸点を厚生経済洋の面より検討して見ることよ3

る。

古同

左E主ヌZて

ー経済政策の目的は全人口に対ずる極大可能福祉と定義

される

l

dULE同四

2M4r。同)可ロ

2Eめのあ岳町岡山

ZEZ2改め〕

E-gt・んさい

米国が農政面に於て積極的活動を示したのは一九三

O年以後に

属するc此の時代までの米国は蒼々とその経済的地歩一を進め、資

本主義経済の発展に関して憂慮すべき何物もないかの観を抱かせ

た。特に二十年代の繁栄は老衰し行〈ヨーロッパ諸資本主義国の

経済事情に対比する時著るし〈対照的で士山ったo

此の繁栄の原因は大きく分けて次の図っとテる事が出来る。

一、電気'自動車の飽和点が二十年代末まで遠ぜられなかった

こと0・

二、建築業の異常な発展

一二、国外投資の増加と外国貿易の好調

四、人口増加趨勢の持続

1

右に見る如き諸原因に依る二十年代の繁栄は、何等強力な経済

一一一一

Page 3: Instructions for use - HUSCAP...産は異常な浪費と困窮の下に行われていた。農業政策は殆んど某の機能面をもち得、す、国家的観点より見て生のたらざるを得ない。経済政策一般が此の様な条件下にある時、経済政策の働き得る限界は極めて狭く、且つそれ自体消極的なも作用に依って達成されたも

政策の作用に依るものではな〈、米国資本主義体制の自動的調整

作用に依って達成されたものであった。此の様な条件下に於ては

経済政策の働き得る限界は極めて狭く、且つそれ自体消極的なも

のたらざるを得ない。経済政策一般が此の様な条件下にある時、

農業政策は殆んど某の機能面をもち得、す、国家的観点より見て生

産は異常な浪費と困窮の下に行われていた。

当時の農業の置かれていた事情を見ると、生産は慢性過剰生産

にくるしめられ、農家資産は一九一九年七百八ず億ドルと評価さ

れたものが、.九二九年には五百七十六億ドルに減じ、収入も百

五十億ドルから百二十億ドルに夫々約二十%の減少を見せてい

る。斯かる農業部門の不振・不況を価格関係の人為的操作に依って

数済せんとしたマツグナリ・ホ1ゲシ法は、一九二四年より一九

二八年に至るまで三度談会に提出されたが遂に日の白を見るに至

らなかった。此の一事を見ても二十年代の米国農政の性絡が理解

出来ると思う。

しかし、ビジネスの永久的繁栄の夢、即ちビジネスの繁栄と、

ビジネス助長政策の築き上げた楼閣は一九三十年代に入るや忽然

として消散し去ったのである。

循環論的に見て、経済が内生的諸要因の作用に依って沈滞上り

繁栄への道を辿り得るものと考えるならば、同様の推理に依り、

一九三

O年以後の不況とその慢性化も亦経済のその内生的諸要因

の自動的作用に依って好況えと転じ得るのではなかろうか。斯か

る指理は資本主義体制の置かれている歴史的な位置を無視しては

一一一一

無意味なものとなるo

コ一十年代の米国経済政策は、その経治の体制的・構造的認識の

愛草を背景とナるものであることを理解する必要がある。

当時の大統領7

1パ1の一九二九年以後数年間に亘ってかけた

資本主義経済体制の自動的調整、自然調和への信頼は敢な〈崩れ

積極的な国家に依る経済政策の意義が改めて認識されねばならな

かった。

」九二九年の大恐慌に依る米国経済構造の斐質は経済面に対す

る国家的干渉

1介入の範囲を若るしく拡大せしめた。

農業政策に関しても著るしく改革的な函が現われるようになっ

た。次に-一ユ

1

・デイ1凡下の農政に就いて改革的な諸点を拾ひ

検討して見ょう。

ニュ

1

・デイ1ル下の農政の重点は次の二つに要約される。

一、農民の購買力を増犬せしめるために、生産制限と価格支持

を行うこと。

二、農民を負債の重庄工り教済するために、低利の農業金融を

行うこと。

では斯かる政策は如何なる目的をもち、叉いかなる.手段に依存

していたかを検討して見ょうo

一九三二年五月十二日「農業救済及びインフレーション法」が

制定され、その第一部A-A-A「農業調整法」に於てはその目的

を次の如く掲げている。

「農産物の生産と消費の均衡を計り、その市場販売を調整ナる

ことに依り、農産物価格の水準を引き上げ農民が購買する商品に

Page 4: Instructions for use - HUSCAP...産は異常な浪費と困窮の下に行われていた。農業政策は殆んど某の機能面をもち得、す、国家的観点より見て生のたらざるを得ない。経済政策一般が此の様な条件下にある時、経済政策の働き得る限界は極めて狭く、且つそれ自体消極的なも作用に依って達成されたも

対する農産物の購買力を各基本期間!煙草を除〈全農産物につい

ては一九

O九年八月から一九一四年七月まで

lの購買力にひとし

からしめること」

周知のごとく此の目的は工業製品と農産物との間の購買力の較

差を解消し、第一次大戦前の経済の比較的安定せる時期の両部門

生産物価格関係に立ち反らせることに依づて、農業の慢性的不況

を緩和救済せんとするものであったo而して、此処に見られる如

き政策目的を実現せしむべき手段、即ち戦略要因は両部門生産物

価絡である。農産物価格に関して見れば、農産物特に主食の需要

弾力性は極めて小さいため、供給が需要を超過ずる場合には価格

は大巾に下落し、逆の場合には逆の関係が現はれる。このため農

1l

産物価格

を引き上

げ或は維

おせんが

ためには

生産量を

切り下げ

るかある

点に維持

抑制する

必要が生

ずるo

の基本関

l 竿1

第 1表

64

qL

ミJ

O

O

O

J

0

2

7

a

73

86

係が確定されなければ

政策目的の実現は不可

能となる。然るに此の

基本関係を確定するた

めの政府に依る生産制

限の方策は、一九三六

年一月六日大審院に於

て.違憲の判決を受け、

価格政策も危機に爆さ

れるかに見えたのであ

るが、政府は更に

F-一

白。Emw⑦】三広三2国

L

U

C

E。az〉

-rz=2MFgn-

「土地保全及び園内割

当法」を同年六月二十

九日に制定し、生産統制は斯くて政策的戦略要因として採用せら

れるに至ったのである。

-一ユ

1

・デイ

1ル農政の放果は第一表に明らかな如〈‘一九一一一

二年に六一%であった両部門企産物の購買力比は一九三七年には

九三%にまで回復し、叉農家所得も第二表に見る如く一九一一一一一一年

の五一億一千七百万ドルより一九三六年の七入億五千万ドルへと

増加の一途を辿っているo

ニュ

1

・デイ

1

ル下の経済は一九三八年に至って下り坂を一応し

急速に戦争に捲き込まれたL

めその最終の数果を検討し得ぬ憾は

|現 金1-" 11'71 つ泊|マ"",,1 マ。",,1i所得総額 J,11/1 u,ノ守Uj , , V7VI f, U.....VI

1 S.コ 2781 5951 4981 4801 1 j政府支払額 LIUj .//./1 '~VI

!所得総額に|対する政府 5.41支払の比率

沼江・同書 p,36

第 2表

農 家 所 得 増大率

一一一一一

Page 5: Instructions for use - HUSCAP...産は異常な浪費と困窮の下に行われていた。農業政策は殆んど某の機能面をもち得、す、国家的観点より見て生のたらざるを得ない。経済政策一般が此の様な条件下にある時、経済政策の働き得る限界は極めて狭く、且つそれ自体消極的なも作用に依って達成されたも

あるにしても、農政商に就いては戦中戦後を通じその基本線は改

愛せられることな〈貰かれたL

め、斯政策は各方面より批判を浴

せられているo

以下に取り上げる厚生経済学との関係についても

猶多〈論ずべき点を残していると言えよう。此の点は章を改めて

論じよう。

ーもLU「善」とは何かu

と訊ねられたならば、私は五回は善

であり、それは、事物の目的であるμ

と容でえるo

或はH

蓮田とは如

何に定義すべきかρ

と訊ねられたならば、私は

wそれは定義され

ぬ'ものであり、それが私の栄一一のすべてだμ

と答えるo厚生という

ことも善と意味するところは同じであるl

h

HJmAVF点、

ErrgL点、巳『

54

エユ

1

・ヂイl

ル経済政策の目的がつ公衆の利益」であり、新

かる目的体系に依って-一ユ

1

・デイ

1ル原則が遂行されたとすれ

ば、此の関係から序に於てのべた厚生経済学との関聯も推論しう

ると思う。

厚生経済学はサミユエルソンに依って新日の両者に分類されて

いるが、此処で取扱うそれは主として後者、即ち

J

ピグ

1厚生経済

学である。

ピグーは厚生の増大に関して次の如き三命題を設けた。

一、国足分前分の平均量が大きければ大きい程

二、国民分配分中金者に帰属する平均取得分が大きければ大き

い程

一二、国足分国分の年々の量、及び貧者に帰属する年々の取得分

の受動が少なければ少ない程、経済的厚生は増大するもので

ある。

これらは換言すれば、国民所得の靖犬、均等なる国分、そして

安定を目的とする命題でおる。此の命題が現実に妥当ずるために

は、個人数用の可測性、ひいては社会的更生函数の確定が前提さ

れねばならない。然し此の場合一応サミユエルソ

νに依る諸仮定

を設けることに依って

認可

Hq+屯+C一

U+:・・+gl(戸)

が成立するものと十るn

問題の性格上厚生画数合農業部門と非農業部門とのこつに分け

るo

斯〈寸ることに依り

柏市、リ

mF+柏市、1〈♀十円品+Cト+・::十円九)+(門同一+

え+

+

S

E

(

バ一報酬…鎧ヨ

叉単純に致用が所得に比例するものとすれば

門」一九日川

Jvh(一同):・・.,.(∞)

hv(H弓同州

δ室〉

所得は価格と供給量との函数、叉は生産各要素1

此処では資本

Cと労働Lのみを考えるi!の画数と考え得るから

chwUJvhハNN)HJF一一(仁明子、a)H、口〔(ド

h):・-{串)

倒式と制式とより

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V

L

N

V

V

刷会HM-LQ)HMa4hshayME』

NM2・be--・(日)

QH酔

H'

増幅回

が得られる。印式は部分厚生が部分所得に比例することを示すo

斯の如く厚生と所得の一義的お比例関係を仮定することに依り、

ニュ

1

・デイ

1

ル下の農業の厚生を検討して見ょう。

第三表は此の関係を一示寸,ものである。之に依って見るも明らか

な如く農業部門の厚生は年三者るし〈増大している。

ζれを単純

111qA1「引|一な画数関係に依って苧えると、政

ろ一片ば

F-----一

誠一一瞬一∞

Mm

沼野一策的には、

ω式のおか』一定に制限

t一

j

E

l

i

t

-

-

!一一「一弘ふ乙丸一展拡大と相侯ってんを安定せしめ一

一次一

3

4

5

6

一に他ならない。然し乍ら、削式に

J

q

、d

qノ内ベJ

一年一ゆ川口

mwω

一於けふhはふを一定とした場合需

lレ|lili--|一要の函数と考えられるから、必然

的に非農業部門及び農業部門に於ける需要の大きさに左右され

るo而してめ函数は仇に依存し、山はhの函数であり、

hは叉需

要Dの函数であるとすれば、町内はDの函数であると言ドうるo即

モミH勾

(3・ji--・:::・(品)

が成立つ訳々ある。斯く見る時-一ユ

1

・デイ

1

ル農政はおを制限

する一方、抗の戦略的要因Dをヱ業政策を通じて増大ぜしめ、

斯くしてh及びn

仰を増大佐しめよーとしたと見る事が出来る。そ

れ故最終の戦略愛数は農業部門に対す包比重の極めで小さい非農

業部門の農産物に対する需要のきざであった。単的に言えばA-

A-A政策と言っても真に農民厚生の絶対的増大を保証し得た訳

ではなく、その殺果は一にヱ業の発達如何にかL

っていたのであ

るから、全経済政策、特に工業政策の従属的な一環にすぎなかっ

たのである。

以上は極めて概念的な画数論的規定であるが、ピグ1は国民所

得の増大のために限界生産力均等なる原則を採用しているo

次に

限界生産力の観点より問題を検討して見ょう。

限界生産力が各企業に於て均等であるという条件が生産の極大

を費すものでφ

めることは周知のことである。この条件は次の如〈

一応される。

。}円九一

m

w

M

b

o

M

¥

MF

Il---7111IH--:::-HIll¥

リ吋Z¥吋E:(3

056一

、Z¥。-hz

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w

U門誌

~ou門誌

IH--・・

:H||

一JU

計」¥吋61::(∞)

。明、十回。てお一。で一、

(

)

例制式怯生産因子の最適回分状態は、任意の二生産因子の限界

生産力の比がその総ての用途に就いてひとしレ場合でゐり、この

比の値は当該生産因子の生産に於ける限界代替率にひとしいとい

うことを示しているo然し、実際に此のような条件を見出すこと

が出来るであろうかo第四表は工業労働者の年間労賃と農業雇傭

労働者のそれとの比較でゐる。此の表に依って見るも明らかなよ

一一二五

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一I比

11AlJI--訓ペ

-令J

74

『J1inu--

マt

72一

3

3

3

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3

2

一る労働者の労賃は、

8

6

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2

一時制労一

s

一間れの殆んど一一一倍に遠

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寸る程の開きを一応L

a低賃一印%仰|矧i弓叫J瑚」

ぢ一

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1

0

一kているのであって、

第一期労一つ山つ叫ししししし一ぬ

JI--トIlll一凶作式刷式に見られる

H

一U

如、ぎ条件は両部門に

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一併の位引刊寸寸一山一日一つては決して満さ

-

2

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↑一一i

一年一日引いしいし

U

妨仰向れてはいないのであ

|Lilli--11Hいい

o又第五表は農業

内部に於汁る賃銀率の地域的相違を一訳す。これに依るも、農業地

域別賃銀率も著るしい高低を示していることが観取される。

これらの資料に依って見ると限界生産力均等法則は現実には実

証不可能

と言はね

ばなるま

‘lw

則ち、

ニユ

1・

デイ

1ル

政策はピ

1の田氏

けた厚生

第 5表

地 [1矧1.1.

南部太西洋地方 100¥

南 東中部地方 93

南西 M

[中部太西洋地方

北東中部地方 l

ニューイシグラシド;

北西中部地方|

J 山岳地方 i

12平洋岸地;(

Schultz.同書 p,112

138

177 I

170 I

209

175

229 ~

335 I

181

-j

一一~ /、

増大化の.第一命題を実現するに至らなかった。斯〈して限界生産

力に応ずる所得の分菌、即ち第二命題は必然的に実現せられるこ

となくして終った。

次に厚生経済学の第一二命題に就いて見てみる。

第三命題、一則ち国民所得の安定は-一ユ

1

・デイ

1ル政策の最も'

力を入れた点であったと思う。先にのベた剛式と川別式との関係か

h

v

N

V

畑、aHMも向(同)リ

H-ヤ何(』U

手伝)H』「同ハむ);:・・(吋)

岡崎

HH

u-

が引き出されるo

即ちρ

仰を政策的に統制することに依り、品をD

との一義的関係に置くことが政策の狙いでおったと言える。斯か

る関係にある両定数は直接比例関係に立つ。所得の安定は斯くし

てDの安定と同義と見倣される。然るにDは理論経済学より見れ

ばYの函数、則ち所得の函毅で表はされ、

Yは叉I、即ち投資の

函数として表ばされるo函数的には次の如〈表現されようo

てldF(LJ111{U)

UHH叫(て)||(∞)

UH可ハモ

(NUll事

消費性向は短期的に見て余り受動を一示さないから、

DはYの受

動の大きさに左右されるo

ヒツグス、ハロツド、ヵレツキ1等の

述べる如く、景気循環が内生的要因に依って発生するものとすれ

ば、

Yの受動は、資本主義経街体制に於ては不可避的なものとせね

ばならない。資本主義経済体制という枠内での政策の限界を示す

如く、第二表は此の関係を明らかに示している。即ち、一九三七

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年九三%まで辿り着いたパリティ・プラ千スは一九ゴ一八年に至っ

て、急速に七八%に一五%の減退を見せている。

斯くの如く農業所得安定のための戦略径数は農業部門に於ては

ねという一安数であったが、これを経済全体と結び合せる時戦略

愛数の比重は大きく非農業部門の安定化のための諸斐数ぃ投資の

大きさ、利潤率等lに移る。

斯くして農業所得安定のための農業生産内部の戦略愛数が、上

述した如く、国民所得安定のための戦略愛数に対して単なる消極

的な役割した持ち得ぬ時、農業政策の性絡も亦消極的なものたら

ざるを得ない。

ピグ

1第三命題も農業部門に於てはニュ

1

・デイ1

ル政策下に

於てさして改革的な実現を見なかったと結論しうるのではなかろ

〉ヲ治。

然し、少くも厚生。立場から見て、パザテイ・プライスの果し

た役割は過小評価さるべきではないと思う。勿論パリティ・プラ

イスは上述せる如き理論的・現実的制約をもち、更にそれ自体に

於て貨幣数量説的限界をもちはぺするが、これが農業関係調整の一

手段として長年月に一日一って採用せられ立保持されているという事

実の中には、何らかの合理性がなければならない。それ故次に農

業に於ける厚生という立場から、今一度その戦略斐数としてのパ

リティ・プライスを検討して見ることL寸るo

農産物価格は戦申・戦後を通じて好条件に恵まれ上昇傾向を辿

ったc価格の上昇傾向は叉所得

の増大となって現われる。六-

七表はこれらの関係を一示す。即

ち工業労働者の賃銀所得に対し

て農業従業者一人当りの平均純

所得は、一九四

O年の四二%か

ら一九四二年の五六%へ、そし

て更に一九四四年の六二%へと

飛躍的に増大している。農業労

働者一人当り所得のこのような

順調な増大は猶、戦争という外

生因に依るものとしても、農産

物価格の安定と上昇にはパリテ

ィ価格政策もあづかって力あっ

たものと言ばねばなるまい。

勿論、戦時中の価格政策は、

パリティ価格を中軸とする支持

価絡政策の型態をとって来た。

此処で注意せねばならない点は

此の様な価格政策が採られた場

合価格の硬直性は不可避的なも

のとなるということであぶo

価格が硬直性をもっと言うことは、

資源の有数なる配分叩パラメターとして価絡が機能し得なくなる

ことを意味する。然しかL

る欠陥は戦時統制経済に特有なものと

第 6表

(1935-1939= 100) 農民の受取り価格

ny

司Jnu

qJ06nu

l

l

143

(Schu!tz.同書 p,90

G

U

N

A

M

4

百I~ ~\齢者|工業労年次 l平均|働者賃1純所得 i銀所得

l附 imllsl,ml!i例 23601

(Schultz.同書p,97より〉

第 7表

1942

1944

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のみは必ずしも一言えないのであって、程度の差はあるにしてもパ

リティ価格自身もかL

る性絡をはなれることが出来なかったので

ある。一見したところ戦中戦後を通じパリティ価格を中心とした

ところの農業政策は成功を収めたかに見える。だが生産及び分間

に関して見れば上述せる欠陥は直ちに現はれる。先づ生産に与え

たパリティ価格の数果について要約しよう。

第一に資源の有放なる配分に就いて。先にも見た如く漫業労働

者は工業労働者に比して著るしくその所得は低い。斯くて農村内

部に存在する過剰労働力の問題が資源の有放なる配分に関する最

古重要な問題として浮び上って来る。更に第五表にも明らかな如

く、農業生産地域聞の賃銀差の極めて大きく現はれている現状に

於ては、地域間の相対的人口過剰も大きな問題とき口はねばなるま

、し

期〈の如き労働力の非致率的利用を解消するためにパリティ価

絡は如何なる機簡を果したかを結論する前に、此の問題を解決す

るものとしてシ且ルツが提出した農・工両部門発展速度に就いて

触れてみることL

ナる。

戦前・戦中の資料に依って見るも農産物価絡及び農業所得は可

成り順調な上昇を見せて居る。そしてこれら二者と両部門発展率

との聞には相関関係が見出されるo

斯〈てシユルツは農業と工業

との発展率が一対三という値をとる場合に、農産物価格、農業所

得も工業に於けるそれらに対するパリティを獲得し、此の過程に

於て過剰労働力の問題も解決されるとしてレる。との新らしい成

長率的観点には猶多〈の問題とすべき点があることは否定しえな

一三ぺ

ぃ。然も猶此処に於て注意せねばならぬことは、彼が農業問題の

解決を全経a併との関連に於て見出そうとしたその態度が問題の焦

点合唯一串に工業部門に移したに止まり、'解決は何らなされること

なく看過されていることでらる。この成長率的観点からすれば解

決は自然に侠つ他はないで為ろうo或は叉ヱ業成長率助長策が積

極的な意図の下に採られることも考えられる。斯くて農業生産は

再び三十年代以前の状態に放置されてよいのであろうか。一一此の解

答は政策主体の歴史的政治・経済的認識如何にかL

っているo

L現在パリティ価格が政策手段として採られているのでらるから一

此のパリティ価格が農業調整ひいては経『街の全機構に関して有数

な価格機能を某したか否かを検討しようo

有放な価格機能とは、

農業生産に於ける有数な配分決定をなさしめる価格の機能と、農

産物を、消費者に流入せ

Lめるに当って適当な役割を果す価絡の機

能をさすo

之に対する解答は、パリティ価格はこれらの機能を果しえなか

ったということにつきる。

先づ第一の機能に関Lては、価格運動と農民離村との逆説的関

係が之に答えるであろうo

第二の機能に関しぜは、パリティ価格に内在する諸矛慣は農産

物の需給の均衡を保持L得、す、斯〈て生産上の均衡を阻害する如

き作加を及ほし、国家的な見地からするも資源の浪費は依然とし

て阻止し得なかった。

農業所得に関してパリティ価絡の果した役割は先にも見た如〈

明らかである。然し此処で特に注意せねばならない点は、米国農

Page 10: Instructions for use - HUSCAP...産は異常な浪費と困窮の下に行われていた。農業政策は殆んど某の機能面をもち得、す、国家的観点より見て生のたらざるを得ない。経済政策一般が此の様な条件下にある時、経済政策の働き得る限界は極めて狭く、且つそれ自体消極的なも作用に依って達成されたも

業に於ける階層の問題である。即ち如何にパリティ価務が正常に

機能したとしても、価絡丈では此の階層聞の所得のアジバランス

資金借入れに於けるアジバラシス等弁」解消し得ぬ許りではなく、

寧ろ拡大する如き傾向をずら示してレる。

パリティ価務が此の様な否定的批判に遭い、且経済体制が統制

より自固な解放的なそれへと移行するにやれ、新たなる価路政策

が提唱せられるに至った。経済の自由主義化に照応するところの

新なる経済政策の一面、即ちジヨシソ

ν理論に就いて章を改めて

耐園周知してみること‘ふする。

シユルツがバPテイ価絡は有設なる価格機能を果L得なかった

とのベ、新な価路政策の用具としてフーオワ1ド・プライス

l見越

価絡・予一京価絡を提唱したが、これはD-G・ジヨシソシに依って

-

見越価絡は次にあげる二つの目的をもっ。

一、将来の需給条件に適合する様な最も確かと思われる将来価

絡の計測値を与えること。

二、農業者の直面している価格の不確実性を滅少せしめ、旦こ

れを全経済に転被せしめること。

此の様な業務は個々の農家をもってしては殆んど不可能に近い

ため、政府機関に依って行はるべき性質のものである。此の限り

では予示価格政策も亦国家政策、としての性質をもっ。

此の予示価務と、在来のパリティ価総との相違は、後者が過去

の年次を基準としたバッグワード・プライスでふり、現時点に於

ける非農業部門の運動との密接な関連に於て把握されたものでな

いため、価絡の硬直性が他部門価格'との聞に不可避的に摩擦、乃

至は不均衡を生ぜしめる傾向をもっに対し、前者は、非農業部門

の運動との相関、及び供給に及ぼす自然的諸条件の数果をも考慮

した上での価絡であるため、パリティ価格に見られる様な欠点は

相当除去せられるという点にあるo

斯くru価柑初予想が正確である

ならば、各農家は敷果的な資源配分を伴うところの生産計画を樹

てうるであろう。且つ叉所得配分も限界生産力的見地からする時

改善せられ、安定J

も亦達成されるであろう。然し、価格予想が不

確実な場合には此の様な利点は実現ぜられぬことは勿論、政府は

一定価格を保証する意味での財政負担をせねばならなレのであ

る。政府に依る財政負担の点は然し、予一応価絡政策に於ては著司令

し〈その比重を滅じ℃いると見られるo

叉此の予一示価施の一特性は、市場価格を政策価絡に依り歪める

ことなく、価格予想を

E確ならしめることに依って、農家経蛍方

式を此の市場価絡に適応せしめることにあるとも言い得ょうo

ち予一示価絡は、理論的には、有数な価絡機簡を果しうるものと考

えて差支えないものと思うo需要と供給との一致する点に於て価

格が決定されること、そして価格が経済運動のパラメターである

ことが自由主義的資本主義経済機構の支柱であるが故に、予一部価

絡政策は価路政策として見る時確かに統制より自由ヘの一歩を進

めたも・のと言えようo

然らば此の予一示価格政策は、農業の安定的繁栄の積極的基礎た

Page 11: Instructions for use - HUSCAP...産は異常な浪費と困窮の下に行われていた。農業政策は殆んど某の機能面をもち得、す、国家的観点より見て生のたらざるを得ない。経済政策一般が此の様な条件下にある時、経済政策の働き得る限界は極めて狭く、且つそれ自体消極的なも作用に依って達成されたも

り得るでゐろうか。従来の価格政策と対比する時、価絡機能面に

於ける斬新性は認めねばなむまい。次にこれを景気循環の立場か

ら見ればどうであろうか。ヶイシズの言う様に、景気安動要因が

非農業部門にあり、叉近代景気循環論の説く如〈、農業諸要因の

芳一動が単に間関乱要因であると見倣されるならば、農業に於ける生

産及び価格の安定化は、単に擾乱要因を循環体系より消去する丈

であり、その体系自体の安定化に積極的な放呆を与え得ないであ

ろうo農業の景気受動は此の点からするも不可避的である。

更に、農業に於ける貧乏の問題に関しても予一示価格の致果に期

待し得ない。

斯くて予一広側路の採否は広義の「厚生」なる観点に依ると同時に

l寧ろ

l在来の制限、玉義的と自由主義的・国家主義的と国際的政

策との二者旧日一にかL

っていると見られるc国際的観点に立って

農政の方向を考える時、このシカゴ学派の価格政策観には多くの

真実があることを認めねばなるまい。然し、この二価格政策の理

論的抗一は別としても、現在も猶パリティ価格方式が基準年次を

技術的に現時点に近づける方法を採用する事に依り一般に行はれ

てレる事実は、予示価格なるもの技術的不確実性もあるが、大衆

のデ十年代恐慌の歴史的体験にもとずくところの政治的意識の昂

揚に依り、政策の転換が困難なものとなっているのではないかと

思はれる。

これまで私は一二十年代の米国農政の一面の現在に至る推移を概

一回

O

観して来た。そして、農政と厚生経済苧との交渉に就いて検討し

て見たo

其処に見られたものを要約しよう。

先、つピグ1の厚生のご一命題と農政に就いてo

此処に再述ナるま

でもなく、ピグ1

の第一、第二命題は満足されていない。そして

第三命題、却も安定に関してはその政策主力のすべてが注がれて

いると見て差支えないものと思うo序にのベた如く、米国農政の

本質は厚生経済学にはなかったのであり、寧ろより一層卑近な農

業の救済と、農民所得の可及的維持増大にあったのであるから、

これらの点からするも以上の如く結論しうるで為ろうo

然し、農政の支柱であり、最大の武器であったパリティ価格は

叉同時に厚生命題実現の手段たり得なかった。パリティ値絡が此

の機能を果し得ぬという=」とは、米国農政と厚生経済学との訣別

を意味ずる。此処で米国農政と厚生の第三一命題をめぐって異論が

あると思うo然し経済の安定した均衡発展は、唯に厚生経済学に

限られた目的ではなく、景気循環政策一般の目的であることを考

え合せる時、農業生産の安定、農産物価格、農薬所得の安定は必

ずしも厚生経済学の、方向へ米国農政が一歩踏み出したことを意味

しないからであるo

(

註一2)

米国農政を厚生経済学的見地から建て直そうとしたシユルツは

斯くて予一応価格政策を提唱する一面、成長率の観点から厚生の積

極的実現の可能なることを述べている。然し、此処で注意せねば

ならぬ点は、予示価格が正確であれば農業生産は有数に行はれ、

需給は調節せられ、斯〈て農業生産及び所得の安定は得られる?

あろうが、凸旦2』

2∞}宮}冨ω三L同

の貧困の問題は改善されぬということであるO

即ち安定は農業者

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の所得が工業労働者のそれにひとしくなる事を何ら保証するもの

でないからでらる。此の貧困の問題の解決は価格政策以外の他の

方法、即ち農業と非農業両部門の成長率の関係に求めねばならな

い。斯くて、シユル吋ノに於ては予示価格政策と成長率の問題とは

表裏一体の関係にあるものと考えられるo然るにシユルツは後者

の問題に関して何等積極的な提言をなすことなく単なる問題提起

に止めているo此の点今少し掘り下げるべきではなかろうか。

だが此の様に米国農政の推移を見て来る時明らかに認められる

点は、厚生経済学を基礎とする考え方が一般化して来ていること

である。厚生経済学が経済政策の基盤となるということは、歴史

的に見れば、米国資本、正義経済体制内に於て所得の合理的再配分

が問題とせられるに至ったとレうことを意味するのではなかろう

か。斯〈考え得るとすれば、叉斯かる方向への経済政策の動きが

実現されるとすれば、厚生経済学は真に「実証科学」としての意

義を与えられるで、あろうo

然し、現在に於ては、厚生経済学は米国経済政策を動かす基盤

ではないのである。

(註l)

此の詳細につレては久武雅夫「経済分析の数字的基

礎」一二三一良以下参照

(註2)

第一章の冒頭にものベた様に、経済政策の目的は大

衆、の極大福祉にらる。然し此処で号一目う福祉とは広義の福祉

であって、必ずしも厚生経済学的に解釈されたものでな

い。それ故、米国農政も広義の農民福祉を問題としたので

はあるが、それはこれまで検討した如く、厚生経済学的福

祉を問題としたのではないと言えよう。

法経全会員氏名

村桃南松京金主駒小今飯和井伊池原林亭旗遠足,

林島泉 川羽田野田藤沢田 上藤田国 手藤

己源康 三 進欣清 泰俊善和善〆 j瞭ー智次回 代二

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(A、B、C順)

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精 勉 九市貞英

敏武侃純夫礼~ß)霊祭郎彦郎 ~ß 幸雄 t佳彦一真家次治郎