ネットワーク・アナライザ 測定を成功させる 8つの...
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Hintsネットワーク・アナライザ測定を成功させる8つのヒント
Application Note 1291-1J
本書は、ネットワーク・アナライザとその機能について概要を説明し、またネットワーク・アナライザの使用方法を理解し、その使用方法の改善について様々なヒントを説明します。
内容
ヒント1. ハイパワー・アンプの測定ヒント2. ケーブル測定でのタイム・
ディレイ補正ヒント3. 反射測定の改善ヒント4. ミキサ/コンバータ/チューナ
測定での周波数オフセットの使用
ヒント5. 挿入できないデバイスの測定ヒント6. 位相/ディレイ・フォーマット
でのエリアジングヒント7. VNA校正のクイック・チェックヒント8. リアルタイムで正確な自動測定
2
エンジニアのためのインピーダンス測定
ネットワーク・アナライザの概要
ネットワーク・アナライザは、増幅器、ミキサ、デュプレクサ、フィルタ、結合器、減衰器などの能動・受動回路網の、インピーダンスやSパラメータ特性を評価します。これらのコンポーネントはポケットベルなどの一般的で低価格なシステムから、通信システムやレーダなど複雑で高価なシステムまで、様々なシステムで使用されています。またこれらのコンポーネントは、1ポート(入力または出力)または、複数のポートを持ちます。各ポートの入力特性、あるいはポート間の伝送特性を測定することにより、設計者は、より全体的なシステムでのコンポーネントを適正に使用できます。
ネットワーク・アナライザの種類
ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)VNAは最もパワフルなネットワーク・アナライザで、5Hzの低周波から最高110GHzまで測定できます。VNAは、ネットワークの振幅および位相の特性を測定し表示するため、設計段階から製造の最終テストまで幅広く使用されています。このような特性にはSパラメータ、伝達関数、振幅と位相、定在波比(SWR)、挿入損失/利得、減衰、群遅延、反射減衰量、反射係数などがあります。
VNAのハードウェアは、掃引信号源(通常は内蔵)、順方向/逆方向テスト信号を分離するテスト・セット、およびマルチ・チャネルで高感度の同調受信器から構成されます。RFおよびマイクロ波帯での典型的なパラメータはSパラメータと呼ばれ、これらはCADでも一般的に使用されます。
スカラ・ネットワーク・アナライザ(SNA)SNAはSパラメータの振幅のみを測定し、これにより伝送利得/損失や反射減衰量、SWRなどの測定が得られます。VNAを使って設計し、生産ラインでの良否判定をSNAで行うことがよくなされます。SNAは低コストで大きな効果が得られます。SNAでも内部または外部の掃引信号源、および信号分離テスト・セットが必要ですが、複雑(で高価)な同調検出器でなく、シンプルな振幅のみの検出器(安価)を使用します。
ネットワーク/スペクトラム・アナライザネットワーク/スペクトラム・アナライザは、ネットワーク・アナライザおよびスペクトラム・アナライザに共通する回路の節約ができます。周波数カバレージは、10Hz~1.8GHzです。このコンビネーション測定器は、増幅器やミキサなどの能動コンポーネント測定に適し、設計やテストに、効率よく使用できます。
レシーバ/検出器��
プロセッサ/表示�
反 射�(A)
伝 送��(B)
入 射�(R)
信号分離�
信号源�
入 射�
反 射��
伝 送��
DUT
�
ネットワーク・アナライザ・ブロック図
3
HINT
1ハイパワー・アンプ測定時の、信号レベルの増幅/減衰方法
ハイパワー・アンプの測定では、テストに必要な信号レベルがネットワーク・アナライザのパワー・レンジを超えるために、注意が必要です。ハイパワー・アンプを実際の動作と同様の条件下で特性評価するには、高い入力レベルを必要とする場合が多くあります。またこのような条件下では、アンプからの出力パワーが、アナライザのレシーバの圧縮/焼損レベルを超える可能性もあります。
ネットワーク・アナライザが供給できる以上の信号レベルが必要な場合は、プリアンプを使用して、被測定アンプ(AUT)の前段で信号を増幅することができます。また、ここではプリアンプの出力で結合器を用いて、ブーストされた入力信号を分岐し、アナライザの基準チャネルとして使用できます。このようなセットアップを使用すれば、プリアンプの周波数応答/ドリフトによる誤差を取り除くことができます。これにより、AUTのみの正確な測定が可能となります。
また、AUTの出力レベルが、アナライザのレシーバの入力圧縮レベルを超える場合には、何らかの減衰が必要となります。これを行なうには結合器、または減衰器、あるいはその両方の組合せを使用します。損傷させずにAUTからハイパワーを吸収できるようなコンポーネントを、注意して選択しなければなりません。小信号用のほとんどの負荷は、約1ワットくらいのパワーしか処理できません。それ以上のパワーの場合は、大パワー用の特殊な負荷を使用する必要があります。
減衰器や結合器の周波数特性の結果は、適切な誤差補正を用いて誤差を除去あるいは最小にすることができます。また減衰量の大きな校正を行なう場合に、レシーバへの入力レベルが低いことが問題となり得ます。正確な測定のためには、パワー・レベルはレシーバのノイズ・フロアよりも十分高いことが必要です。このためハイパワー・アプリケーションでは、狭帯域の同調レシーバを持ったネットワーク・アナライザが多く使用されます。このようなネットワーク・アナライザは一般に、-90dBm以下のノイズ・フロアを持ち、また広範囲のパワー・レベルで優れたレシーバの直線性をもっています。
ネットワーク・アナライザには、フル2ポートのSパラメータ測定機能を持つものがあります。これによりAUTの逆特性を測定して、2ポートの誤差補正を行なうことが可能です。また、もしアナライザの出力ポートに減衰器などによる減衰がある場合は、より高いパワーのレベルを逆方向から加えて、S
22
およびS12測定におけるノイズの影響を
抑えます。多くのVNAはテスト・ポート・パワーのアンカップリング機能を持ち順方向/逆方向での様々なレベルによる測定を可能にしています。
8753ES
プリアンプ�
H
ACTIVE CHANNEL
RESPONSE
STIMULUS
ENTRY
INSTRUMENT STATE R CHANNEL
R L T S
HP-IB STATUS
8753DNETWORK ANALYZER
30 KHz-3GHz
PROBE POWER FUSED
PORT 2PORT 1
AUT
基準入力�
結合器�
ハイパワー�負荷�
4
HINT
2ケーブル測定を向上させるタイム・ディレイ補正
ネットワーク・アナライザは信号源の周波数と同調レシーバを同時に掃引して、スティミュラス-レスポンス測定を行ないます。これに対して瞬間的に、DUTからの信号の周波数とネットワーク・アナライザの周波数が完全に一致しないために、測定に誤差が生じる場合があります。例えばDUTがタイム・ディレイTを持つ長いケーブルで、ネットワーク・アナライザの掃引速度がdf/dtのとき、ケーブル端(ベクトル・ネットワーク・アナライザのレシーバ入力)における信号周波数は、アナライザのソース周波数からF=T×df/dtだけズレることになります。この周波数シ
フトがネットワーク・アナライザのIF検出帯域幅(一般に数kHz)と比較して無視できない大きさのとき、測定結果ではIFフィルタのロールオフ分の誤差が発生します。
図1はAgilent Technologies 8714ESネットワーク・アナライザを使用して、12フィート長のケーブルの伝送特性を測定した場合の、上記のような影響を示しています。上側のトレースは、掃引時間1秒で測定し、ほとんどこのケーブルの真の応答を示しています。下側のトレースはデフォルトの掃引時間129ミリ秒を使用したもので、ケーブルによる周波数シフトに起因する、約-0.5dBの誤差が示されています。従ってこの掃引時間は、このDUTに対して速すぎることになります。
図2の下側のトレースは8753ESを使用して、100ミリ秒の掃引速度により同じケーブルを測定したもので、より複雑な影響が示されています。ここではトレースに誤差があるだけでなく、ある複数の周波数で誤差の大きさが急にジャンプしています。これらの周波数は8753ESのバンド・エッジ周波数で、このアナライザの掃引速度(df/dt)が帯域によって変化したためにトレースがジャンプしています。ここではケーブルにおいて異なった周波数シフトが発生し、したがって異なった誤差幅が示されています。このような場合には掃引時間を増す代わりに、8753ESフロント・パネルのRチャネル・ジャンパを外して、DUTと同じ長さの別ケーブルを接続すれば解決できます。これで基準およびテスト経路のディレイがバランスされて、周波数シフト誤差を生じません。図2の上側のトレースは、同じ100ミリ秒の掃引時間を使用し、Rチャネルでマッチング・ケーブルを接続した場合の測定結果を示しています。
Start 10.000 MHz
2:Off
HP 8714C 1SEC VS 0.129SEC
1:Transmission &M Log Mag 0.5 dB/ Ref 0.00 dB
-2
-1.5
-1
-.5
.5
1
1.5
2
dB
Stop 3 000.000 MHz
1
M1
1:
Start .300 000 MHz
S21 &M Log MAG
HP 8753C 100mSEC WITH & WITHOUT EXTENSION
0.5 dB/ Ref 0.00 dB
Hld
*PRm
Cor
CH1
Stop 3 000.000 MHz
図1
図2
5
HINT
3適切な終端は反射測定改善の鍵
2ポート・デバイスに対して、伝送/反射(T/R)ベースのアナライザ(8712/14EファミリRFアナライザなど)を使用し正確な反射測定を行なう場合は、測定しないポートの適切な終端が必要となります。これは特にフィルタ通過帯域やケーブルなど、低損失の双方向デバイスでは重要です。通常、T/Rベースのアナライザは、反射測定のための1ポート校正が用意されています。これは方向性、信号源マッチング、周波数特性による誤差を校正しますが、負荷マッチに起因する誤差は校正されません。
1ポート校正は負荷マッチが校正されないため、被測定デバイスのポート2(測定を行なわないポート)の適正な終端を前提としています。これを行なう方法の1つに、ポート2に高品質の負荷(例えば校正キットに付属のものなど)を接続する方法があります。この方法により、高価なSパラメータ・ベースのアナライザによるフル2ポート校正に匹敵した、測定確度を得ることができます。
しかし、デバイスのポート2をネットワーク・アナライザのテスト・ポートに直接接続した場合には、前提となる適正負荷で終端するという条件は満たされません。この場合には、ポート2とテスト・ポートの間に減衰器(例えば6~10dB)を挿入することによって、かなりの測定確度の向上が期待できます。これにより減衰器の値の2倍、アナライザの実効負荷マッチングが向上します。
図1では、これの実例を示しています。挿入損失1dB、反射減衰量16dBのフィルタの測定を行なうとします(図1A)。負荷マッチング18dB、方向性40dBのアナライザを使用すると、ワースト・ケースの測定不確実さは- 4 . 6 d B、+10.4dBの反射減衰量誤差となります。これはかなりの変動であり、仕様に達しないフィルタが合格し、良品のフィルタが不合格となる可能性がかなりあります。これに対し図1Bでは、高品質(例えVSWR=1.05、32dBリターン・ロス)の10dB減衰器を加えることにより、アナライザの負荷のマッチングが29dB[(2×10+18)dBと32dBとの合算]まで向上しています。これで、ワースト・ケースの測定不確実さは+2.5dB、-1.9dBのより妥当な値まで改善しました。
減衰器を必要とせずに、1ポート校正を非常に効果的に適用できるのは、高い逆方向アイソレーションを持った増幅器のようなデバイスの入力整合を測定する場合です。この場合には増幅器のアイソレーションが、不完全な負荷のマッチングの影響を除去します。
DUT反射減衰量16dB(0.158)挿入損失1dB(0.891)
0.158
測定の不確実さ:�� –20 * log (.158 + 0.100 + 0.010) = 11.4 dB (–4.6dB)
–20 * log (0.158 – 0.100 – 0.010) = 26.4 dB (+10.4 dB)
0.891*0.126*0.891 = 0.100
方向性: �40dB(0.010)
アナライザ・ポート2マッチ: �18dB(0.125)
DUT反射減衰量16dB(0.158)挿入損失1dB(0.891)
負荷マッチ: �18dB(0.128)
10dB減衰器(0.316)SWR = 1.05 (0.024)
0.158
(0.891)(0.316)(0.126)(0.316)(0.891) = 0.010
(0.891)(0.024)(0.891) = 0.019
ワーストケース誤差 = 0.01 + 0.01 + 0.019 = 0.039
測定の不確実さ:�� -20 * log (0.158 + 0.039) = 14.1 dB (-1.9 dB)
-20 * log (0.158 - 0.039) = 18.5 dB (+2.5 dB)
方向性: �40dB(0.010)
図1A
図1B
6
HINT
4 ミキサ、チューナ、コンバータなどの周波数変換デバイスの測定では、入力と出力の周波数が異なるために、他にはない問題が発生します。これらのデバイスを測定する従来の方法に、広帯域ダイオード検波によるものがあります。この方法はスカラのみが測定可能で、中程度のダイナミック・レンジおよび測定確度が得られます。
より高確度な測定を行なうには、8753ESや8720ESなどのベクトル・ネットワーク・アナライザを使用します。これらの持つ周波数オフセット・モードでは、内部RF信号源の周波数を、アナライザのレシーバから任意でオフセットすることができます。このモードによって狭帯域検波が可能になり、高いダイナミック・レンジと測定確度、および位相と群遅延の測定機能が得られます。
この周波数オフセット・モードを使用できる基本的な構成には、次の2つがあります。最もシンプルなのは、ミキサやチューナの出力を直接アナライザの基準入力に取り込む方法です(図1A)。この方法では、最大ダイナミック・レンジ35dBのスカラ測定のみが可能です(これ以上のダイナミック・レンジでは、レシーバ入力レベルが低すぎて、アナライザの信号源は適正に位相同期できません)。ミキサの場合には、外部LOが必要になります。フロント・パネルから測定IF周波数範囲、LO周波数を設定します。すると、アナライザは、適切なRF周波数範囲を計算してRFテスト信号を発生します。上側LOの場合のように、必要に応じて逆方向にRF信号を掃引させることもできます。
広ダイナミック・レンジの振幅測定の場合には、基準ミキサが必要になります(図1B)。このミキサは位相同期のために信号をRチャネルに提供しますが、測定経路内にはないため、DUTの測定には影響しません。
位相および遅延の測定に対しても、基準ミキサの使用が必要です。基準ミキサとDUTは位相の一貫性のため、共通のLOを使用する必要があります。
ミキサをテストする場合には、どちらの方法でもIFフィルタが必要になります。これによりミキサの不要な混合積や、RFおよびLOの漏洩信号を除去します。
ミキサ/コンバータ/チューナの正確な測定のための、周波数オフセット・モードの使用
FREQON off
LOMENU
DOWNCONVERTER
| UP
CONVERTER
RF > LO|
RF < LO
VIEWMEASURE
RETURN
1 2
基準入力�
スタート: 900 MHzストップ: 650 MHz
固定LO: 1 GHzLOパワー: 13 dBm
スタート: 100 MHzストップ: 350 MHz
CH1 CONV MEAS log MAG 10 dB/ REF 10 dB
START 640.000 000 MHz STOP 660.000 000 MHz
H
ACTIVE CHANNEL
RESPONSE
STIMULUS
ENTRY
INSTRUMENT STATE R CHANNEL
R L T S
HP-IB STATUS
8753DNETWORK ANALYZER
30 KHz-3GHz
PROBE POWER FUSED
PORT 2PORT 1
基準入力��
10 dB
基準ミキサ�
3 dB
10 dB
10 dB
信号発生器�
ローパス・�フィルタ��
8753ES
基準出力�
IF
LO
RF
LO
DUT
���
図1B
図1A
7
HINT
5挿入できないデバイスの測定確度向上
フル2ポート誤差補正により、最良の確度でRF/マイクロ波コンポーネントを測定できます。しかし挿入できないデバイス(例えば両ポートがメス・コネクタのものなど)の場合には、校正にのときにそのテスト・ポートをスルー接続できなくなります。このような場合にスルー接続を行なうには特別な工夫が必要です。このことは、特に増幅器や低損失のデバイスなど、出力整合の劣ったデバイスを測定するときに大切です。
挿入できないデバイスに対しスルー接続を行なう場合の、誤差を減じる方法には、一般に次の4つがあります。
1.非常に短いスルーの使用これにより、誤差をほとんど無視できます。校正においてポート1とポート2を接続するとき、アナライザは2つめのポートの反射減衰量(負荷マッチ)と、伝送タームを計算します。校正キット定義にスルーの長さが含まれていない場合、負荷マッチの測定で誤差が発生します。またポート1とポート2間の接続にバレルを使用した場合、ポート2マッチの測定は正しい位相情報を持たないため、誤差補正アルゴリズムは不完全なポート2インピーダンスによる影響を除去できません。
この方法は、スルーによる接続が非常に短い場合にのみ使用できます。一般的なネットワーク・アナライザでは、「短い」とは波長の100分の1以下をいいます。もしスルーが(問題とする周波数で)波長の10分の1の長さである場合は、補正後の負荷マッチは生の負荷マッチ(補正前)より良くなることはありません。スルー長が波長の4分の1に近づくにつれて、残留負荷マッチは生の負荷マッチより6dBも悪くなることがあります。1GHz測定において、波長の100分の1は3mmです。
2.スワップ・イコール・アダプタ法の使用この方法では、同じ電気長を持った2つのマッチング・アダプタを使用します。1つはオス/メス・コネクタ、もう1
つは被測定デバイスにマッチするアダプタです。
一対のテスト・ポート・ケーブルのように計測器のテスト・ポートが両方オスで、デバイスが2つのメス・ポートを持つ場合を考えます。この場合に通常ポート2にメス|メス・スルー・アダプタを装着して、伝送校正を行ないます。4つの伝送測定の後、オス|メス・アダプタと交換して(これにより2つのオス・テスト・ポート)反射校正を行ないます。2つのアダプタは電気長が同じ(たとえ、物理長が異なっていても)ですので、デバイスの測定が可能となりました。
3.スルー・ライン標準の変更目的のアプリケーションが製造テストの場合は、「スワップ・イコール・アダプタ法」はアダプタを必要とする欠点があります。この方法の代わりとして、校正キット定義をスルー・ラインの長さを含むように変更します。校正キットがスルーによる損失や遅延を計算に入れるように変更されていれば、負荷マッチを正しく測定できます。オス|オス・スルー、およびメス|メス・スルーのこれらの値は、簡単に求めることができます。最初に、両メスまたは両オス・テストポートを必要とする場合の、スワップ・イコール・アダプタ法による校正を行ないます。次にスルーを測定し、S
21ディレイ(帯域
の中央値を使用)と1GHzにおける損失を見ます。この値を使用して、校正キットを変更します。
4.アダプタ・リムーバル法いくつかのアジレント・テクノロジー・ベクトル・ネットワーク・アナライザは、スルー・アダプタのすべての影響を除く、アダプタ・リムーバル法を用意しています。この方法は2つのフル2ポート校正が必要となりますが、最も正確な測定結果が得られます。
スワップ・イコール・アダプタ法の使用��
DUTポート 1
ポート 1
ポート 1
ポート 1
ポート 2
ポート 2
ポート 2
ポート 2
アダプタ A
アダプタ�B
挿入できないデバイス�
1. アダプタAを使用し、� 伝送校正。�
2. アダプタBを使用し、� 反射校正。� アダプタの長さは等長。�
3. アダプタBを使用し、� DUTを測定。� DUT アダプタ�
B
8
HINT
6位相/ディレイ・フォーマットでのエリアジングのチェック
長い電気長を持った被測定デバイス(DUT)を測定する場合、測定パラメータの選択には注意が必要です。VNAはデータを特定の周波数ポイントでサンプルし、ディスプレイ上で見やすいように「点を結んで」表示します。これに対し隣接する周波数ポイント間で、DUTの位相シフトが180゚を超えて変わるとき、位相スロープが逆になって表示されることがあります。このような場合データのサンプル数が少ないため、エリアジングが発生しています。これは例えば動いている馬車の車輪をフィルムに撮るとき、一般に車輪の動きを正確に撮るにはコマ数が少なすぎるため、車輪が逆回りしているように映るのに似ています。
またVNAは、位相データから群遅延データを計算します。ここで位相のスロープが反転していると、群遅延の符号が変わります。例えばあるSAWフィルタが負の群遅延を持つように見えたとすると、これは明らかに正しくありません。もしエリアジングの発生が疑われるときは、次のようなシンプルなテストを行ないます。つまり周波数ポイント間の間隔を狭くして、VNAの画面に変化があるか確かめます。これにはポイント数を増やすか、または周波数スパンを狭めます。
図1は8714ES VNAを使用した、SAW帯域フィルタの測定を示しています(51ポイントによる表示)。表示された群遅延は負であり、これは物理的に起こり得ません。ここでポイント数を201に増やしてみると(図2)、VNAの設定がエリアジングを起していたことが明らかとなりました。
1:
2:
Start 130.000 MHz Stop 150.000 MHz
1: Transmission2: Transmission
DelayPhase
1
51 POINT TRACE Meas1:Mkr1 140.000 MHz–1.1185
/500 ns/100
Ref 0 sRef 0.00
s
基準 = 0秒�
遅延が負として�表示�
2:
Start 130.000 MHz
1:
Stop 150.000 MHz
1: Transmission2: Transmission
DelayPhase
1201 POINT TRACE Meas1:Mkr1 140.000 MHz
–1.3814
/500 ns/100
Ref 0 sRef 0.00
s
基準 = 0秒��
遅延が正と�分かる��
図1
図2
9
HINT
7校正のクイック・チェック
デバイスを測定した後に測定値が正しくないように思えたり、あるアナライザの確度や性能が疑わしいときには、次の「クイック・チェック」を行なって、そのアナライザの校正や性能を検証してください。いくつかの校正標準のみが必要です。
反射(S11)測定の検証
ソース・ポート(ポート1)上の反射(S11)
測定の検証は、次の様な方法で行うことができます。
1.最初のクイック・チェックとして、ポート1を開放したままにして、S
11の
大きさが0dBに近いことを確認します(±1dB以内)。
2.ポート1に負荷校正標準を接続します。S
11の大きさが、アナライザ仕様の
校正された方向性以下であることを確認します(代表的に-30dB以下)。
3.ポート1に、開放または短絡校正標準を接続します。S
11の大きさが、0dBに
近いことを確認します(数10分の1dB以内)。
伝送(S21)測定の検証
1.ポート1からポート2ヘ、スルー・ケーブルを接続します。S
21の大きさが、0dB
に近いことを確認します(数10分の1dB以内)。
2.S21のアイソレーションを検証するに
は、ポート1に1つ、ポート2に1つの、2つの負荷を接続します。S
21の大きさ
を測定して、仕様されたアイソレーション以下であることを確認します(代表的に-80dB以下)。
これらの測定に対して、より正確な範囲については、アナライザの仕様を参照してください。また上記のようなチェックを校正のすぐ後に行なえば、校正の品質を検証できます。
10
HINT
8リアルタイムで正確な自動測定
製造部門で行なうRFデバイスのチューニングやテストは、多くの場合ネットワーク・アナライザにスピードと確度を要求します。しかし高速の掃引速度では、アナライザの最適な確度は得ることができません。しかしセーブ/リコール・レジスタの使用により、測定の高速化と高確度の両方を得ることができます。
セーブ/リコール・レジスタの使用例えば帯域フィルタのパスバンド/ストップバンド・リジェクションを調整する場合、まずアナライザによる基本測定をセットアップします(スタート/ストップ周波数、パワー・レベルなど)。
次にIF帯域幅を増加させ、データ・ポイント数を減らして(トレースのスピード・アップのため)、これをステート1としてセーブします。
次にIF帯域幅を減少させ、データ・ポイント数を増やします(測定の確度向上のため)。
最後にリミット線を加え、これをステート2としてセーブします。この後これらの2ステートを交互に呼び出すことによって、フィルタをリアルタイムで調整し、その仕様を正確に検証できます。
機器設定のハンドフリー切り替え8712/14Eファミリなどのネットワーク・アナライザは、フットスイッチを接続できるBNC入力を持っています。フットスイッチを使用して、2つの(またはそれ以上の)設定を切り替えることが可能です。
計測器の自動化最終テストのようなさらに複雑なテストでは、IBASICプログラミング機能を持ったアナライザ(8712/14Eファミリ、E5100、8751など)が、複雑な計算や制御が可能なため、測定の自動化を容易にします。
IBASICプログラムの使用は、難しいプログラミングの経験を必要としません。各テストやテストの組合せは、簡単にカスタム化できます。ソフトキーやフットスイッチによりテストを開始させることができます。
11
Agilent 4396Bネットワーク/スペクトラム/インピーダンス・アナライザ
4396Bは、研究や製造の分野で優れたRFベクトル・ネットワーク、スペクトラムおよびインピーダンス(オプション)の測定を行なうことができます。1台で、電子部品や回路の利得、位相、群遅延、ひずみ、スプリアス、CN比、ノイズなどを測定し評価できます。4396Bはベクトル・ネットワーク・アナライザとして、100kHz~1.8GHzのレンジで使用できます。またテスト・セットと組み合わせて、反射減衰量、定在波比、Sパラメータなどの反射測定ができます。
Agilent Technologies ネットワーク・アナライザ・ガイド
Agilent E5100A/B高速ネットワーク・アナライザ
E5100A/Bは特に高いスループットを必要とする、共振子やフィルタのメーカのために設計されています。数々のオプションが用意されているので、最少の投資で目的のアプリケーションへの最適化が可能です。周波数レンジは、10kHz~300MHzです。他にも0.04ms/ポイントの測定スピード、波形解析、ローノイズ、IBASICによる自動化などの機能があるため、E5100A/Bは製造ラインの生産性向上に大きく貢献します。
Agilent 8712/14Eファミリ RFネットワーク・アナライザ
8712/14Eファミリは、大量生産の電子部品のテスト用の経済的なネットワーク・アナライザ・ファミリです。例えば50Ω/75Ωシステム・インピーダンス、内部60dBステップ減衰器など、数多くのオプションにより大きな柔軟性をもっています。一部のモデルでは振幅、位相、および群遅延の測定も可能です。また高速CPU、大型VGA互換ディスプレイ、IBASICによる自動化、LANによる相互接続などが、本ファミリは最新の充実した機能を提供します。周波数レンジは、300kHz~1.3GHzまたは3.0GHzです。
5965-8166J040003304-L/H
Agilent 8510Cマイクロ波ネットワーク・アナライザ
1985年の発売以来、8510シリーズ・マイクロ波ネットワーク・アナライザは、ネットワーク・アザライザの性能の標準的な役割を果たし、その地位を築いてきました。このファミリは45MHz~50GHzのレンジで、能動/受動ネットワークのリニアな動作特性の評価に対して、ソリューションを提供します。オン・ウェーハ測定、ミリ波測定、パルスRF測定、広帯域バイアス、校正など、8510はこれらすべてを行ないます。さらに校正、110GHzまでの周波数、ミキサ測定のための周波数コンバータ、マルチ・テスト・セットのサポートなど、数々のオプションにより8510はどのようなニーズにも対応できます。
Agilent 8753ES RFネットワーク・アナライザ
豊富な測定機能と優れたパフォーマンスおよび確度によって、Agilent 8753ファミリは他のアナライザを測定するための標準となっています。Sパラメータ・テスト・セット内蔵、優れたダイナミック・レンジ、オフセット周波数の測定機能、3つの独立した同調レシーバなど、最高の性能を提供します。またタイム・ドメイン(TDR機能含む)、6GHz周波数レンジ、SAW測定のための高安定信号源、75Ωなど数々のオプションは、8753ESを多用途のネットワーク・アナライザにしています。
Agilent 8720ESマイクロ波ネットワーク・アナライザ
マイクロ波周波数に対し、8720ESファミリ・マイクロ波ネットワーク・アナライザは、優れた性能を提供します。コンパクトで使いやすい本ファミリは、8753ES RFネットワーク・アナライザと同じコントロールおよびインタフェースを持ちながら、50MHz~13.5GHz、20、または40GHzの周波数レンジをもっています。オプションには、オン・ウェーハなどの非同軸測定でのフルTRL/LRL校正のための4サンプラ・アーキテクチャ、ハイパワー・テスト・セット、ダイレクト・サンプラ・アクセス、タイム・ドメインなどが用意されています。
Agilent Technologies ネットワーク・アナライザ・ガイド (続き)