たこつぼ型心筋症

（Takotsubo Cardiomyopathy）

平成25年6月21日 救急部カンファレンス

忙しい方はこれだけでOK

閉経後女性．心身の過大ストレス後

AMIに類似した症状，検査所見

正常冠動脈～軽度狭窄

巨大陰性T波とQT延長

予後は良好 → AMIとの鑑別が最重要！

対症療法で自然軽快

Takotsubo Cardiomyopathy

Apical Ballooning Syndrome

Stress-induced Cardiomyopathy

Ampulla Cardiomyopathy

Broken Heart syndrome

上記はいずれも同義として扱われている．

1990年に本邦（広島）で初めて報告．

Takotsubo Cardiomyopathy

胸痛や呼吸困難を伴う急性心臓病変

冠動脈閉塞所見の欠如

ECGで新規ST-T上昇

自然回復する左室収縮異常．

心筋逸脱酵素の上昇はないか軽微

以下の4点を全て満たすもの

JAMA. 2011； 306： 277-286

Step0：疫学

閉経後の女性に多い

（男性 10～20%，女性 80～90%）

ST上昇型ACSの2%に相当 European Heart Journal. 2006； 27： 1523-1529

Chest. 2007; 132: 809-816

JAMA. 2011； 306： 277-286

Step0：病因

3つの仮説があるが，現時点でも不明．

1) 多枝攣縮

2) 微小循環障害

3) カテコラミン心筋障害

心臓. 2010； 42： 451-457

典型的な経過

強い精神的･身体的ストレス

（約2/3の症例，有無に有意差なし）

ACSを疑わせる所見

（症状・検査所見）

造影で正常冠動脈（非有意狭窄）

自然軽快（一過性の心筋障害）

Step1：誘因（発症前のストレス例）

「強烈な」 精神的ストレス

家族との離死別

口論

大病の告知

大災害 など

30% 「強烈な」 身体的ストレス

呼吸不全

手術

重症感染症

脳卒中 など

40%

JAMA. 2011； 306： 277-286

内科系・外科系を問わず全診療科で遭遇しうる疾患

Step2：発症（症状）

ACSに類似した症状

狭心症状（絞扼感、圧迫感、放散痛）

呼吸苦、心不全症状

失神

ショック状態

心電図異常

Step2：発症（検査－心電図）

直後

• 前胸部誘導のST上昇（85～90%）

• V1が正常，aVRのST低下（90%）

数時間～

数週間後

• STは正常化

• 巨大陰性T＋QT延長（65%）

数週～

数ヶ月後

• 陰性T波も正常化

J Am Coll Cardiol. 2010； 55： 2514-2516

Circ J. 2003； 67： 687-690

心臓. 2010； 42： 451-457

Step2：発症（他の検査）

Apical akinesis

Basal hyperkinesis

動画(LVG)

Enzyme elevation

（none～Mild）

Step3：治療

AMIを否定するための緊急カテ

カテができなければAMIに準じた治療

LDA（+PPI）＋Heparin

Statin

β-blocker

ACEi/ARB

Step3：治療（Management）

対症療法でひたすら耐え忍ぶ

ポンプ失調（心不全） 利尿薬，血管拡張薬，カルペリチド

カテコラミン，PDE阻害薬

IABP，PCPS

左室内血栓（心尖部血栓） 抗凝固療法

左室流出路狭窄

強心薬･血管拡張薬の中止，輸液，β-blocker，抗不整脈薬

不整脈（TdP） 一時ペーシング，硫酸マグネシウム，QT延長要因の是正

Step4：予後

心機能は数日～数週で改善 完全な回復は4～8週が多い

院内死亡率は1～8%

3～46%で心不全を合併

身体ストレス群は予後がやや悪い（基礎疾患由来）

心破裂など，予後不良なケースもある 発症から数日後，突然の心タンポナーデ

左室内血栓は塞栓症を合併しやすい

Ann Intern Med. 2004； 141： 858-865

Chest. 2010； 138： 198-207

最後に

「たこつぼ」は氷山の一角

見つけるコツはない

身体所見を真摯に診る

ECGを自身の眼でも確認する