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1 書誌情報の将来像 谷口 祥一 (慶應義塾大学文学部) 書誌情報の将来像 RDAの採用とその先の課題等に関する個人的見解 5年先程度の将来を想定 情報資源(刊行物、非刊行物)の一層の量的増大 デジタル化の範囲の一層の拡大 ライセンス管理の必要な範囲の拡大 新たなライセンス管理方式が出現するのかは不明 参考:谷口祥一 「RDAでできることできないこと:RDAの理 解に向けて」 『情報管理』 56(11), p.758-765, 2014.

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書誌情報の将来像

谷口 祥一

(慶應義塾大学文学部)

書誌情報の将来像

RDAの採用とその先の課題等に関する個人的見解

5年先程度の将来を想定

情報資源(刊行物、非刊行物)の一層の量的増大

デジタル化の範囲の一層の拡大

ライセンス管理の必要な範囲の拡大 新たなライセンス管理方式が出現するのかは不明

参考:谷口祥一 「RDAでできることできないこと:RDAの理解に向けて」 『情報管理』 56(11), p.758-765, 2014.

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刊行物

・図書・雑誌・CD、DVD

・地図、楽譜など

特殊コレクション

・稀覯書・記録史料・写真など

フリーアクセス可能なWeb資源

・Webページ・オープンソース・ソフトウェア

機関内生産資源

・教材、授業記録・研究成果報告書・調査・実験データ・マニュアル類

資源の管理責任性(stewardship)高

資源の唯一性(un

iqu

en

ess

コレクションズ・グリッド(collections grid)

刊行物

・図書・雑誌・CD、DVD

・地図、楽譜など

特殊コレクション

・稀覯書・記録史料・写真など

・ウェブページ・オープンソース・ソフトウェア

機関内生産資源

・教材、授業記録・研究成果報告書・調査・実験データ・マニュアル類

資源の管理責任性(stewardship)高

資源の唯一性(un

iqu

en

ess

状況の変化

・デジタル資源の増加・ライセンス管理の複雑化?・出版流通業界作成メタデータの増加

・オープンアクセス資源の増加

・デジタルアーカイブの範囲拡大?・デジタル化資源の増加

・機関リポジトリの範囲拡大?・研究データ管理の必要性増大

フリーアクセス可能なウェブ資源

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「コレクションズ・グリッド」の観点がもたらすもの

図書館が対象とする情報資源の広がり(多様性)の全体と、それに対する資源探索と資源管理の姿

グリッドのそれぞれの区分ごとに状況は異なり、単一方式による対処は困難

メタデータ(⊃書誌情報)の問題

メタデータの機能(探索用、管理用)は…

メタデータの作成者、作成体制は…

使用するメタデータスキーマは…

メタデータの提供者、提供体制は…

メタデータの検索システムの対象範囲は…

刊行物

・図書・雑誌・CD、DVD

・地図、楽譜など

特殊コレクション

・稀覯書・記録史料・写真など

・ウェブページ・オープンソース・ソフトウェア

機関内生産資源

・教材、授業記録・研究成果報告書・調査・実験データ・マニュアル類

資源の管理責任性(stewardship)高

資源の唯一性(un

iqu

en

ess

探索(検索)用、管理用のメタデータ

・探索RDAメタデータ・管理ライセンス管理用

・探索サーチエンジンによるメタデータ活用?(schema.orgなど)

・探索RDA?・管理保存用などMETS、その他?

・探索DCなど?・管理

METS、その他?

フリーアクセス可能なウェブ資源

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刊行物

・図書・雑誌・CD、DVD

・地図、楽譜など

特殊コレクション

・稀覯書・記録史料・写真など

・ウェブページ・オープンソース・ソフトウェア

機関内生産資源

・教材、授業記録・研究成果報告書・調査・実験データ・マニュアル類

資源の管理責任性(stewardship)高

資源の唯一性(un

iqu

en

ess

検索システム

・OPAC

・Webスケール・ディスカバリサービス

・サーチエンジン

・OPAC

・Webスケール・ディスカバリサービス

・OPAC ?

・Webスケール・ディスカバリサービス

フリーアクセス可能なウェブ資源

「図書館目録」の位置づけの変化

資源管理ツールと探索(検索)ツールとの分離傾向

これまで両者の機能を担ってきた「目録」を機能的に分けて捉える必要性あり

探索(検索)ツールとしての目録

Webスケール・ディスカバリサービス(ディスカバリインタフェース)の登場

所蔵またはアクセスライセンス取得資源と、「それ以外」の両者を検索可能

「特殊コレクション」、「機関内生産資源」も検索対象に含めることが可能

個別機関のOPACが不用ということを意味していない

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資源管理ツールとしての目録

所蔵資源の管理とアクセスライセンスの管理との機能分離

加えて、「特殊コレクション」、「機関内生産資源」は、目録とは異なる管理ツールが必要

「特殊コレクション」には充実した管理用(保存用など)メタデータが必要

コレクションズグリッドの中でのRDAの適用

RDAは記述メタデータ(資源発見等を目的としたメタデータ)の作成基準

管理用メタデータとしては他の基準やスキーマが必要

これらとの持ち分けを常に認識すべき

RDAが適用される範囲

「刊行物」、「特殊コレクション」

「機関内生産資源」:適用自体は可能。ただし、適用されるかは疑問

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「図書館目録の展開の方向性」

(出典:谷口祥一 『メタデータの「現在」』 勉誠出版, 2010.)

メタデータスキーマの再構築によるメタデータの一層の構造化

メタデータ検索システムの高機能化・多機能化

メタデータのオープン化

広範な連携・協力を踏まえたメタデータ作成体制の再構築

デジタル資源管理システムとの一元化または連携

NDL「書誌データの作成・提供の方針(2008)」と共通部分あり

検討課題群

① RDA採用

② RDAメタデータ作成・提供スキーマ

③ RDAメタデータ作成・提供体制

④ メタデータ検索システム

⑤ デジタル資源のメタデータ作成・管理

「図書館目録の展開の方向性」に基づき、将来像とその課題を整理特に、RDAに関わる部分を中心にして

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① RDA採用

方向性「メタデータの構造化」に属する課題 RDAに基づく構造化の推進

NCRの改訂

改定案の段階的公開(かつ早期公開)を要望

NDLの採用方針(適用細則)を同時に公開すべき

著作・表現形の同定基準と共有システム

効率的な同定支援、著作間・表現形間の関連の同定支援

古典著作、音楽著作、翻訳著作等の同定基準 NCR改訂に含まれるべき事項

FRBR研究会による試行あり

著作・表現形の同定基準と共有システム(続き)

既存書誌レコードからの著作・表現形の同定(抽出と統合)

人手による同定と機械的同定の組み合わせ活用

同定結果の公開・共有システム FRBR研究会による試行あり

RDA/新NCRの理解支援

研修プログラム、研修用ツールの準備

FRBR/FRADとRDAモデルの区別など

RDAメタデータ作成の上記以外の事項については後述

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② RDAメタデータ作成・提供スキーマ

RDA/新NCRの構文的要素の規定

方向性「メタデータの構造化」に属する課題

加えて、「メタデータのオープン化」、「メタデータ作成・提供体制の再構築」にも関係する

メタデータ作成用スキーマは、RDAを素直に表現できるものを採用すべき

公開・提供用スキーマ(他領域のメタデータとの共有スキーマ)とは切り離して考える

RDAによる構造化を直接表現できないスキーマを採用することは不適切

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Linked Dataの方向性

Linked Dataの基本原則

あらゆる事物にURIを付与すること

誰もが事物の内容を確認できるよう、URIはHTTP経由で参照できること

URIを参照したときは、標準の技術(RDFやSPARQL等)を使用して関係する有用な情報を利用できるようにすること

より多くの事物を発見できるように、他のURIへのリンクを含めること

方向性としては妥当

ただし、あくまでも公開・提供用のスキーマ

作成用スキーマとしての要件ではない

実質的に「リンクする」メタデータとなるには

個別のインスタンス(著作・表現形、個人等)に「共通の(一元化された)URI」の付与が必要

ローカルDBの範囲を超えて共通化したURIを付与できるか?

または、事後的にインスタンスの同一性判定が必要

同一性判定を可能にする項目群が必要

これまでは「レコード」内の複数項目の組み合わせ

Linked Dataは「トリプル」(個別エレメントに相当)単位でメタデータ流通が強調されるが、これとは矛盾

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BIBFRAME

モデルの実体

著作(creative work)

表現形を含む?

インスタンス(instance)

体現形に対応

典拠(authority)

個人、家族、団体 + 主題表現用の実体

アノテーション(annotation)

他の実体に対する付加的情報。所蔵情報(個別資料)、図書の表紙画像、情報資源に対するレビューやコメントなど

個人的な疑問

RDAを素直に表現できるスキーマとは思われない

表現形の扱い、個別資料の扱いなど

他領域のメタデータとの共有スキーマとして採用することに問題はない

BIBFRAMEは、元来、RDAに基づくメタデータのみを対象としていない

「刊行物」以外の、他領域で作成された多用なメタデータを、BIBFRAMEの構成に分割し、それぞれのメタデータインスタンスを統合できるのか疑問

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③ RDAメタデータ作成・提供の体制整備

方向性「メタデータの作成・提供体制の再構築」に属する課題

加えて、「メタデータの構造化」、「デジタル資源管理システムとの一元化または連携」にも関係する

「①RDA採用」で取り上げた事項に加えて

RDA実装における選択肢

どの程度充実したメタデータを作成できるのか

記録する著作・表現形の範囲、関連著作・関連表現形の指示の範囲

構成部分(内容細目)の記録 → 出版流通業界作成のメタデータに依存?

主題表現の充実化

NDL等における分類記号付与、件名標目付与の範囲拡大を期待

その他機関における、それら主題表現情報の流用

個別機関のOPACでの活用

識別子の適用にかかわる関連業界との調整

著作・表現形、個人等に対する識別子

基本的には権利保持者側の都合によるもの

デジタル資源のメタデータ作成については後述

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④メタデータ検索システム

個別機関(または機関グループ)のOPAC

構造化されたメタデータ(RDAメタデータ)の特性を十分に活かした検索機能の実現

FRBR化、主題表現情報の活用など

Webスケール・ディスカバリサービス

他領域のメタデータと統合的な検索を実現可能

多様なメタデータの集合体となるため、検索機能には制約あり

⑤デジタル資源のメタデータ作成・管理

この部分については、私自身は不案内

資源探索用メタデータとライセンス管理用メタデータとの関係は?

RDAは前者のみを対象としている

印刷物(非デジタル資源)とデジタル資源の並行刊行の増大は、出版流通業界作成メタデータの流用の構図を可能とする?

NIIによる取り組み

ERDB、Knowledge Base