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静岡県・市町FM研究会 公共施設マネジメント事例集 平成 28 年 3 月

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Page 1: 公共施設マネジメント事例集 - Shizuoka Prefecture€¦ · 第2部 県・市町の取組事例. ... 3 統合型gisによる市有財産管理(沼津市) ・・・・・14

静岡県・市町FM研究会

公共施設マネジメント事例集

平成 28 年 3 月

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目 次

第1部 FM研究会の取組

第1章 FM研究会設置の背景 ・・・・・1

第2章 FM研究会の取組

1 静岡県内市町のFM取組状況の共有 ・・・・・2

2 公共施設情報の共有 ・・・・・4

3 オープンデータの活用 ・・・・・5

4 FM研究会の開催 ・・・・・6

第2部 県・市町の取組事例

第1章 公共施設マネジメントの環境整備

1 アセットマネジメントの黎明期(静岡市) ・・・・・8

2 公共資産管理システムの導入(焼津市) ・・・・・12

3 統合型 GIS による市有財産管理(沼津市) ・・・・・14

4 対話と協働による公共施設マネジメント(牧之原市) ・・・・・16

5 池新田高等学校美術部との公共施設マネジメントのマンガ版

パンフレット作成(御前崎市) ・・・・・18

6 体感型職員研修の実施

~公共施設探検隊 シムシティ御前崎~(御前崎市) ・・・・・20

第2章 方針・計画づくり

1 30 年間の推計(三島市) ・・・・・21

2 公共施設再編計画(富士市) ・・・・・24

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第3章 実践

1 長寿命化の取組(長泉町) ・・・・・26

2 普通財産の利活用(伊豆市) ・・・・・31

3 ベンチマーキング(静岡県) ・・・・・34

4 公共施設見直し計画(磐田市) ・・・・・43

5 廃校からやまびこ荘へ(西伊豆町) ・・・・・48

6 駅周辺賑わい再生拠点施設整備(藤枝市) ・・・・・49

第4章 浜松市における資産経営の取組

1 浜松市資産経営推進方針 ・・・・・51

2 保有財産の 適化 ・・・・・51

3 保有財産の利活用 ・・・・・53

4 施設長寿命化に関する取組 ・・・・・55

5 これからの資産経営 ・・・・・56

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第1部 FM研究会の取組

第1章 FM研究会設置の背景

全国的な公共施設を取り巻く環境について、建築後 30 年以上経過した施設の割合が

過半数を超え、また、将来の人口減少による施設ニーズの変化への対応など、大きな

課題に直面していると認識されつつある中、本県においても、市町・県問わず、施設

の老朽化に直面し、厳しい財政状況が続き、限られた経費で将来にわたって施設を良

好な状態で維持していくことが喫緊の課題となっています。

平成 25 年 10 月 21 日に開催した県・政令指定都市サミットにおいて、静岡市から「県

内市町の連携による効果的な取組の推進のため、各自治体の課題や取組の情報交換、

県内の公共施設の情報共有などを図り、公共施設マネジメント手法や広域連携の可能

性について研究する連絡会等の設置」について提案があり、三者で合意しました。

また、平成 25 年度の県の「“ふじのくに”行財政改革新戦略会議」においても、「市

町と県との連携による行政運営を推進すべき」との提言があり、人口減少社会への適

応戦略として、県全体の生産性向上を追求するため、市町、県民、民間等との連携を

促進するプラットフォームとして「行政経営研究会」を平成26年4月に設置しました。

この行政経営研究会の部会として、ファシリティマネジメントに関する研究会を設

置し、県及び全ての市町が参加する全国に先駆けた形でFM研究会の取組がスタート

しました。

公共施設マネジメントは、一般的には①現状把握、②課題認識・共有、③方針作成、

④具体的取組という流れで展開するものとされています。平成 26 年 4 月に総務省から

「公共施設等総合管理計画」の作成要請があり、この「計画」は①~③までの取組と

密接に関連するものとして捉え、県・市町が連携して作成することをFM研究会のテ

ーマとして設定しました。

公共施設を取り巻く課題の解決のためには、「計画」作成後の「具体的取組」におけ

る連携をどのように実施していくのかが重要となります。

FM研究会では、将来的な具体的取組の連携を視野に入れ、それぞれの市町及び県

の実情に即しながら取組の環境作りに取り組んでいます。

1

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第2章 FM研究会の取組

1 静岡県内市町のFM取組状況の共有

(1)概要

平成 26 年度のFM研究会の中で、県・市町間の情報共有に努めてきましたが、連携を更に

深めることを目的に、平成 26 年度における取組状況を整理し、「見える化」することとしまし

た。

(2)県内市町のFM取組状況の分析

各市町の取組状況について、「施設情報」「組織体制」「計画・方

針」「具体的取組」の4つの大きな視点を設定し、さらにそれらを

7つの細かい視点で分類し、整理しました。その整理した情報を

レーダーチャート化し、各市町の取組状況を「情報整理先行型」「体

制整備先行型」「具体的取組先行型」「バランス均衡型」の4つに

分類し、「静岡県内市町のFM取組状況」としてまとめました。

【表1 取組状況】

大項目 中項目 評価 内容 大項目 中項目 評価 内容

1 紙台帳・所管課で管理 1 未作成

2 デジタル化 2 白書作成 方針の

作成 台帳

3 庁内共有化(DB・システム化) 3 具体的方針作成

1 未収集 1 H28 に作成(予定)

施設情報

の整理

計画・

方針

2 固定情報のみ 2 H27 に作成予定 情報収

集項目

総合管

理計画3 利用・コスト情報 3 H26 に作成予定

1 担当未設置 1 なし

2 担当(部署)のみ 2 取組実績あり 体制の

整備

具体的 具体的

取組 取組 計画的又は全庁的取組あり3 連携体制構築 3

1 特になし 組織体制

2 担当部署のみ課題認識 庁内の

方向性

3 全庁的に課題共有

2

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【図1 取組状況の分類】

【情報整理先行型】 【体制整備先行型】

0

1

2

3台帳

情報収集項目

体制の整備

庁内の方向性方針の作成

総合管理計画

具体的取組

0

1

2

3台帳

情報収集項目

体制の整備

庁内の方向性方針の作成

総合管理計画

具体的取組

施設情報の整理を中心に取り組んでいる(予

定含む)。

情報収集や体制整備などを中心に取り組んで

いる。

【具体的取組先行型】 【バランス均衡型】

0

1

2

3台帳

情報収集項目

体制の整備

庁内の方向性方針の作成

総合管理計画

具体的取組

0

1

2

3台帳

情報収集項目

体制の整備

庁内の方向性方針の作成

総合管理計画

具体的取組

統廃合、長寿命化などの具体的な取組が先行

して実施されている。

施設情報の整理、組織体制、計画方針、具体

的取組がバランスよく推進されている。

大項目 中項目 評価 内容 大項目 中項目 評価 内容

1 紙台帳・所管課で管理 1 未作成

2 デジタル化 2 白書作成 方針の

作成 台帳

3 庁内共有化(DB・システム化) 3 具体的方針作成

1 未収集 1 H28 に作成(予定)

施設情報

の整理

計画・

方針

2 固定情報のみ 2 H27 に作成予定 情報収

集項目

総合管

理計画3 利用・コスト情報 3 H26 に作成予定

1 担当未設置 1 なし

2 担当(部署)のみ 2 取組実績あり 体制の

整備

具体的 具体的

取組 取組 計画的又は全庁的取組あり3 連携体制構築 3

1 特になし 組織体制

2 担当部署のみ課題認識 庁内の

方向性

3 全庁的に課題共有

3

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2 公共施設情報の共有

(1)概要

FM研究会において、公共施設等総合管理計画の作成や具体的取組を連携していくために、

県・市町の公共施設情報を整理し、共有化していくことが有効であると考え、県・市町の公共

施設情報を比較可能な形で収集整理し、共有化するための標準形式を定めました。

(2)公共施設情報共有化実施要領

「公共施設情報共有化実施要領」を作成し、情報を共有化する対象を公共施設(土地及び建物)

の表2の項目としました。これらの情報については、県のサイト「ふじのくにオープンデータ

カタログ」に登載しオープンデータ化することで、自治体間で共有することとしています。

【表2 共有化項目】

項目 内容

基本情報 自治体名/施設番号/施設名称/圏域・地域/設置根拠/設置目的/施設用途(種別)

正職員数/非常勤職員数/その他職員数/運営形態/指定管理期間(開始)/指定管理期間

(終了)/管理運営費収入(全体)/管理運営費(手数料・使用料収入)/管理運営費(国

県支出金)/管理運営費(その他収入)/管理運営費支出(全体)/管理運営費(人件

費)/管理運営費(物件費)/管理運営費(指定管理料)/管理運営費(減価償却費)/

管理運営費(その他支出)/補助金有無/工事請負費・修繕費

運営情報

電気(使用量)/電気(料金)/上水(使用量)/上水(料金)/下水(使用量)/下水

(料金)/工業用水(使用量)/工業用水(料金)/都市ガス(使用量)/都市ガス(料

金)/プロパンガス(使用量)/プロパンガス(料金)/重油(使用量)/重油(料金)

/灯油(使用量)/灯油(料金)/軽油(使用量)/軽油(料金)

エネルギー情

基本.

xls

主な利用者/利用人数(住民利用施設)/開館日数(住民利用施設)/利用可能コマ数

(貸館)/利用コマ数(貸館)/利用者駐車可能台数/年間駐車場利用台数/貸出可能蔵

書数(図書館)/年間貸出冊数(図書館)/全戸数(居住施設)/入居戸数(居住施設)

/定員数(児童施設)/利用児童数(児童施設)/学級数(学校施設)/生徒数(学校施

設)

利用情報

防災情報 標高/津波浸水予測高(L1)/津波浸水予測高(L2)/避難施設指定の有無

自治体名/施設番号/施設名称/所管課/会計区分/財産区分/財産番号/棟名称/所在地/

経度/緯度/建築年月日/建築価額/建築面積/延床面積/地上階数/地下階数/構造/耐震

性能/複合化有無/建物所有形態/未利用施設面積/借受面積/賃借料

建物.

xls

建物情報

自治体名/施設番号/施設名称/所管課/会計区分/財産区分/財産番号/所在地/経度/緯

度/面積/地目/土地所有形態/借地面積/借地料/用途地域/建ぺい率/容積率

土地.

xls

土地情報

※土地のみの場合も記載

(3)オープンデータ化実施率

平成 28 年3月現在の県・市町の公共施設のオープンデータ化の実施率は 60%となっていま

す。

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3 オープンデータの活用

(1)GIS による施設の見える化

オープンデータ化された公共施設情報のうち、学校及び文化施設の用途の施設情報について

静岡県 GIS に掲載し、インターネットに公開することで、施設の位置の見える化を図ることと

しています。

公共施設の位置を地図上に表示し、さらに施設の規模、老朽化度、利用状況などの情報を公

開することで、施設の配置や規模についての再検討をするための材料になると考えられます。

【図2 GIS による施設の見える化】

(2)民間によるオープンデータの活用

民間による公共施設情報のオープンデータの活用は、実験段階であるため未知数ですが、主

に3つの効果が考えられます。

①経済活性化

PFI事業者、不動産関係事業者等の民間企業による積極的活用が図られます。

②透明性の確保

市民等が現在PDFで公開されている施設白書について、検索やシミュレーション機能を備

えたアプリケーションと連携することにより、情報の活用が図られ、透明性が増します。

③市民参加

地域住民・団体等が公共施設に参加するための支援ツールが開発されてくることで、例えば、

職員が常駐していない公民館等の不具合を知らせるなど、市民参加の様々な活用が図られます。

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4 FM研究会の開催

(1)平成 26 年度第1回FM研究会

開催日時 平成 26 年6月 12 日 午後1時 15 分~4時

開催場所 静岡県庁西館9階第2会議室

参加者 60 人

概要 ア 公共施設等総合管理計画の策定

平成 26年4月に総務省から策定要請のあった「公共施設等総合管理計画」

について、総務省自治財政局財務調査課からの説明と質疑応答を実施。

イ FMの取組についての意見交換

FMの取組段階に応じて、グループに分かれて意見交換を実施。

グループA:計画策定に必要なデータ整備

グループB:計画の具体的記載(数値目標、インフラの取り扱い等)

グループC:効率的な除却(統廃合・再配置)

写真

(2)平成 26 年度第2回FM研究会

開催日時 平成 26 年 10 月 16 日 午後1時 15 分~4時

開催場所 静岡県庁西館9階第2会議室

参加者 60 人

概要 ア 公共施設等総合管理計画策定の課題

公共施設等総合管理計画の策定状況と課題についてアンケート調査を実

施し、その結果に基づき、各市町共通の課題について、意見交換を実施。

イ 公共施設情報の共有化

県内の公共施設情報の共有化を目的に、共通の項目で情報収集を行い、

オープンデータ化していくことについて意見交換を実施。

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(3)平成 27 年度第1回FM研究会

開催日時 平成 27 年6月 19 日 午前 11 時~12 時

開催場所 静岡県庁別館8階第1会議室

参加者 45 人

概要 地域ごとに実施する第2回研究会に向けて、県内市町の現状の取組段階と

今後の取組の方向性について、FMの標準サイクル(戦略計画・プロジェ

クト管理・運営維持・評価・統括マネジメント)に当てはめて説明を実施。

(4)平成 27 年度第2回FM研究会

開催日時 平成 27 年6月 30 日~7月9日のうち各地域1日 午後1時~3時

開催場所 4会場(下田総合庁舎、東部総合庁舎、藤枝総合庁舎、袋井土木事務所)

参加者 延べ 59 人

概要 平成 26 年度に取り組んだ「施設情報の整理・共有」や「各市町における取組

の情報共有」について、更に取組を深めながら、具体的テーマを設定する必

要があり、ブレーンストーミング方式で意見交換を実施。3~5人のグル

ープに分かれ、「施設情報の整理」、「組織体制」、「計画・方針」、「具体的取

組」の4つの視点について意見交換。

写真

(5)平成 27 年度第3回FM研究会

開催日時 平成 28 年1月 14 日午後1時~3時

開催場所 静岡県自治研修所もくせい会館

参加者 55 人

概要 県内市町の特徴的なFMの取組を事例として共有し、県全体の取組の促進

につなげるため、事例発表を実施。計画の策定、公共施設再編の実例、シ

ステム開発等の環境整備など数多くの先進的事例を紹介。

写真

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第2部 県・市町の取組事例

第1章 公共施設マネジメントの環境整備

1 アセットマネジメントの黎明期(静岡市)

(1)アセットマネジメントを遂行していくために

第1部にも記載のとおり、公共施設マネジメントは、一般的に①現状把握、②課題認識・共

有、③方針作成、④具体的取組の流れで展開されていきます。しかし、そのような考え方が一

般に普及していなかった時代、先人たちはどのように課題認識し、どのように解決を図ろうと

したか、静岡市の取組を紹介します。

①「気づき」が大切

平成初期にバブル経済が崩壊して以降、歳入の伸び悩みによる歳出予算の削減や行財政改革

を切り口とした事務事業の見直しは、全国的な傾向ではありましたが、本市の場合も例外では

ありませんでした。

義務的経費の割合が増える一方、必然的に投資的経費が圧縮され、学校や市営住宅、道路や

トンネルなどの維持管理費も削減され続けました。

そのような傾向は、予算書などを見れば具体的な数字として、より明らかになります。

投資的経費の推移

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平成3年に 600 億円あった投資的経費は、平成 27 年には 400 億円まで圧縮されています。

投資的経費の4分の3を占める、道路や橋りょうなどの土木系インフラは、市民生活の安心・

安全にかかわる生活基盤を支える部門であり、新規整備はもとより、既存施設の維持管理にも

影響を及ぼしかねない事態になりました。

これを解決するため、自発的に行動を起こしたのは、様々な形態で資産を抱える水道部門と

道路部門の数名の技術系職員でした。

②「自発的な行動」が大切

まず、水道部門については、「日本下水道事業団」との協働により「再構築基本計画」の策

定に取り組みはじめました。これは、全国の下水道事業アセットマネジメントのモデル事業と

して取り組みました。

汚水浄化施設などの「プラント系資産」、管きょなどの「ネットワーク系資産」を包含して

おり、それぞれの保守サイクルや更新サイクルの違いがあるため、ひとつの整備方針としてま

とめるまでに、かなりの時間を要しましたが、平成20年度より「再構築基本計画」に基づく

本格実施を開始しました。

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次に、道路部門ですが、道路部門は平成 19 年度からアセットマネジメントに取り組み始め

ました。総延長 3,300kmを超える道路、2,600 を超える橋りょうなど、総資産量を把握する

ことはもとより、それぞれの劣化度も把握していきました。道路については台帳がすでに整備

されていましたが、それに加え、「舗装カルテ」も整備し、劣化状況を随時把握できる体制を

整えました。

そして、学校や住宅などのハコモノです。ハコモノについては、ファシリティマネジメント

の観点で、平成 15 年度から取り組んでおります。住宅・学校を除く一般施設については技術

職員による劣化調査・意見書の発行を行い、それを予算要求に活かしていくというシステムを

構築しておりました(住宅、学校については、それぞれの部署で独自に劣化調査等を実施)。

市営住宅については、老朽化した建物は解体し新たな建物は建設しない、というアセットマ

ネジメントの観点を盛り込んだ「再整備方針」も策定(平成 22 年度)し、着実に推進してい

るところです。

静岡市では、比較的スムーズに総資産量を把握することができ、平成 26 年4月には「静岡

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市アセットマネジメント基本方針」を定め、アセットマネジメントに取り組む体制を整えるこ

とができました。しかし、ここに至るまでには、本市アセットマネジメントの黎明期時代に、

それぞれの部門において職員自らが「気づき」、「行動した」ことがご理解いただけたでしょう

か。

(2)「気づき」「行動した」結果

現場の実情を知る職員が課題意識を持ち、創意工夫ある公共施設マネジメントに取り組んで

きた結果、近年、小さな「めばえ」が生まれてきました。

近では、消防庁舎や斎場、学校などの跡地利用について現場の職員から提案があるなど、

職員の意識改革は確実に進んでいます。

平成 26 年4月、国から「公共施設等総合管理計画」の策定要請があって以降、専門部署を

創設するなど、公共施設マネジメントに関し、国を挙げて本格的に取組が始まっておりますが、

公共施設マネジメントは一朝一夕に成果が出ません。

まず取り組むべきは、職員の意識改革であり、強力なリーダーシップの発揮であることを実

感しており、本業務を推進する職員自身がそのような「キーパーソン」になることを期待して

おります。

所管部署 静岡市公共資産経営課

参考URL等 http://www.city.shizuoka.jp/601_000094.html

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2 公共資産管理システムの導入(焼津市)

(1)導入の経緯

焼津市では平成 25 年度から公共施設マネジメントに取り組み、平成 26 年度に市が保有する

全ての公共資産(建物系公共施設、土木インフラ施設)の総合的かつ計画的なメンテナンスサ

イクルを構築することを目的に、焼津市公共施設等総合管理計画(平成 27 年3月策定)を策

定しました。

この公共施設等総合管理計画を実践にあたり、多種多様な資産の全ての情報を一元管理し、

資産全体の総量、維持管理経費などを横断的に分析する必要がありますが、全ての公共資産を

一元的に管理できる仕組み(システム)がありませんでした。

そのため、公共資産の保全・管理運営を重点化プロジェクトに掲げる㈱オリエンタルコンサ

ルツ、国立大学名古屋工業大学、焼津市の産学官連携で、公共資産の管理・運用が図れる公共

資産管理システムに関する研究を平成 26 年度から実施しています。

(2)メンテナンスサイクルの構築

性質の異なる建物系公共施設と土木インフラ施設を総合的かつ計画的に管理運営するため

には、それぞれの施設におけるマネジメントの目的を整理し、共通する目的を達成するために

公共施設等総合管理計画を策定することが重要です。

焼津市では、以下のとおり、建物系公共施設と土木インフラ施設におけるマネジメントの目

的を整理し、共通する目的は「メンテナンスサイクルの構築」であると整理し、公共施設等総

合管理計画の策定の目的としました。

建物系公共施設における 土木インフラ施設における

マネジメントの目的 マネジメントの目的

点検・診断体制の構築 施設の 適化

計画的な予算の確保 エリアの 適化

メンテナンスサイクルの構築 メンテナンスサイクルの構築

(3)システムの特徴

① 公共資産全体の統合データベース化

ア 公共施設マネジメント台帳、固定資産台帳、公有資産データを統合データベース化し、

重複する情報収集作業を合理化し、共通データの不整合の防止が図られます。【効果:

情報更新作業を 1/4 程度軽減】

イ 統合データベースは、各施設の共通項目と個別の諸元項目で構成されます。

(建物系公共施設)延床面積、構造用途など

(土木インフラ施設)道路の種類、延長、幅員など

② 建物系公共施設に関する情報集機能の強化、資料作成機能の強化、再編検討機能の強化

ア 建物系公共施設の評価とカルテの更新

更新の自動化、作業の効率化【効果:作業時間 1/4 程度、費用 1/5 程度縮減】

イ 公共施設白書の更新

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更新の自動化、作業の効率化【効果:作業時間 1/2 程度縮減】

ウ カルテによる保全対応

タイムリーな情報を提供、正確な保全対応の実現

エ 再編検討の支援

再編検討の支援機能を装備

【図3 上記②のイメージ図】

所管部署 焼津市総務部資産経営課

参考URL等 https://www.city.yaizu.lg.jp/g01-009/index.html

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3 統合型 GIS による市有財産管理(沼津市)

(1)財産管理上の課題

・敷地内に民有地が点在して廃止施設の売却処分ができない。

・市有地の所管を相談された際、公図と台帳の確認作業に時間がかかる。

・各課からの異動報告漏れ等から、財産台帳の精度確保が難しい。

・不法占拠されてしまっている市有地があるようだ。 など

(2)統合型 GIS の導入

① GIS の統合

これまで、GIS は、地理情報を特に必要とする所属がそれぞれ個別に導入してきたこと

から、同じ GIS パッケージを複数のサーバで稼働するなど、非効率な運用となっていまし

た。これら個別 GIS を可能な限り統合し、地理情報を全庁で利用することにより、効率的

な運用が可能となります。

機能が特化している一部の GIS は個別のまま運用することとしていますが、統合対象外

の GIS のレイヤも、統合型 GIS へ定期的に複写することにより、全庁で利用することが可

能となります。

統合対象 公図情報、農地情報、開発指導情報(都市計画情報)、建築概要書情報、

建築基準法上道路種別情報、法定外情報、官民境界査定情報、道路占用

情報

統合対象外 道路情報 水道管路情報

② 財産情報の視覚化

・固定資産台帳整備により収集した財産情報(土地・建物)を地図上に表示。

・航空写真のほか、都市計画情報、官民境界査定情報等と重図として表示が可能。

・公開範囲は全庁とし、各所管課は所管財産を一覧表として表示することが可能。

・財産情報の更新は資産活用課のみの権限とし、年 1 回の更新を予定。

(3)期待される統合型 GIS の導入効果

項目 効果

所管財産の視覚的把握 市有財産の位置把握が容易、台帳更新精度が向上、

施設の統廃合等への活用が可能

市有地の利用状況の把握 所管課の判別、未利用物件の把握が容易、事業に利

用可能な土地の把握が容易

施設敷地内の土地権利関係の把握 行政財産として活用中に権利整理が可能

所管財産の一覧表示 財産異動報告が容易

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【図4 GIS の表示例】

所管部署 沼津市財務部資産活用課

参考URL等 http://www.city.numazu.shizuoka.jp/shisei/gyozaisei/publicfacility/index.htm

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4 対話と協働による公共施設マネジメント(牧之原市)

(1)取組の背景

・牧之原市では、対話と協働を基本としたまちづくりを進めてきました。

・平成 17 年の合併以降も旧町の単位での施設の利用を継続しているため、合併自治体として

の市民の一体感を高めるためにも公共施設の利用方法を見直すことが求められていました。

・社会経済情勢の変化が進み、急速に人口が減少しています。その状況変化に対応するため、

第2次総合計画の計画期間を1年前倒し、平成 27 年度から新たな計画に沿ったまちづくり

を進めることとしました。

・第2次総合計画の重点プロジェクトとして、公共施設の 適化プロジェクトを掲げ、市民総

がかりでこの問題に取り組むこととしました。

(2)「対話と協働によるまちづくり」へ

平成 26 年度に公共施設白書を作成したところ、今後 40 年間の公共施設に係る費用の平均額

が過去5年間の平均額に対して、約 2.6 倍となることが分かりました。

今のままでは、既存の公共施設を安心安全な状態で維持し続けることができません。この問

題は、データだけで施設の統廃合を決めてしまうのではなく、市民みんながこの問題を学び、

気付き、共感することを通じて、公共施設のより豊かで質の高い使い方を考えるとともに、ま

ちづくりの視点で公共施設のあり方を見直すことが必要と考えました。

(3)公共施設マネジメントへの展開

平成 27 年7月に自治基本条例推進会議(坂本光司会長)に公共施設マネジメント基本計画

策定取りまとめを諮問しました。自治基本条例推進会議は、多様な市民の意見を聞く「対話の

場」を設け、その意見を基に平成 27 年度中に市長に答申を行うこととしました。

また、市役所内部でも、3役・部長相当職、施設担当課長、担当レベルの3層のプロジェク

ト組織を設置し、公共施設の状況整理や対話の場の必要事項調査などを行いました。

こうして、平成 27 年 9月から 12 月にかけ、関係する団体などから参加した市民と施設を担

当する市役所職員 78 名により対話の場を開催しました。

【対話の場の流れ】 【会議運営は、市民ファシリテーター】

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(4)対話の場の結果

対話の場では、公共施設マネジメントを進めるうえで大切にしたい視点をまとめました。

また、施設分類別の方向性についても意見を深め、20 年間の視点で方向性を整理するととも

に、施設分類を超えて横断的に施設を賢く使うモデルとなる取組を先導的な施設として位置付

けました。

【対話の場のまとめの概要】

項目 期間 内容

①未来志向、②賢く使う、③共感を大事に、④みんなで、

⑤まちづくりの視点の 5 つの基本的な考え方

大切にする視点 20 年間

(基本理念)

施設分類別の方向性 20 年間 行政、学校、コミュニティ施設など施設分類別の方向性

先導的な施設 4年間 学校、庁舎施設の活用など 2つの重点的なプロジェクト

この対話の場のまとめを基に、平成 28 年1月から3月にかけて自治基本条例推進会議が方

向性を話し合い、市長への答申を行うことを予定しています。

【対話の場の写真】 【自治基本条例推進会議の写真】

(5)先導的な施設の実践

公共施設というまちの資産を活用して賑わいの創出や市民活動などの一体感を高めること

に、市民が主体性を発揮して取り組むことが必要となります。

今ある公共施設の多くは、建設時と社会経済の背景が大きく変わってきています。庁舎や学

校施設を拠点として、まちづくりの視点で機能の効果的な再配置などに取り組むことで、施設

の総量削減と新たな価値の創出の両面に貢献できると考えています。

牧之原市が培ってきた協働のノウハウや資源を 大限活用するとともに、有識者の協力のう

えで、利害関係者を含めた更なる対話の場を開催し、未来志向で施設を賢く使うことに、スピ

ード感を持って取り組みたい。

所管部署 牧之原市政策協働部地域創生課地域創生係

参考URL等 http://www.city.makinohara.shizuoka.jp/bg/shisei/ent/7723.html

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5 池新田高等学校美術部との公共施設マネジメントのマンガ版パンフレット作成(御前崎市)

(1)概要

平成 27 年 4月に公共施設等総合管理計画(方針編)を策定し、公共施設の計画保全や保有

量の 適化などに向け、今後具体的に取り組んでいく必要があります。しかし、公共施設白書

や公共施設等総合管理計画(方針編)では、市民が手に取りたいものにはなりません。

公共施設は、市民にとって身近なまちづくりの拠点であることから、この取組をより分かり

やすく周知する必要があります。特に、将来御前崎市を担っていく中高生を対象に市の公共施

設の現状・課題・今後の取組について広く周知していく必要があります。

そのため、若年層にも親しみやすいマンガ版パンフレットを池新田高校美術部と共に作成し

ました。

(2)期待される効果

市内の池新田高校美術部にマンガ作成を依頼し、作成過程で美術部員が御前崎市の現状につ

いて学ぶ場にもなります。また、身近な高校生が作成した親しみやすい内容のマンガにより、

市民も手に取りやすく市全体としての意識共有が期待できます。

(3)取組の流れ

①平成 27 年7月3日 キックオフ会議

作成主体である池新田高校美術部員を対象に、市の公共施設の現状等の説明をし、高校生

が感じた点などをテーマにワークショップを実施し、公共施設マネジメントの必要性や具体

的なイメージの認識を図りました。

・マンガ版パンフレット作成の趣旨説明

・御前崎市の公共施設の現状等について出前講座

・出前講座を聞いてみてのワークショップ

(テーマ:「高校生にとって身近な公共施設は?」「今後これだけの費用がかかる公共施設、

みんなならどうする?」)

②平成 27 年 7月 美術部と協働でストーリーを決め、下書きを作成

③平成 27 年 12 月 下書き完了後、清書。色づけ、セリフ等の挿入作業

④平成 28 年 2月 印刷会社に発注。完成品を市内全戸配布・公共施設へ配布

市内全中高生へ配布し、アンケート実施予定

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(4)記録写真

所管部署 御前崎市財政課行政改革係

参考URL等 http://www.city.omaezaki.shizuoka.jp/zaisei/shise/shisaku/kaikaku/kokyoshisetsu/manga.html

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6 体感型職員研修の実施~公共施設探検隊 シムシティ御前崎~(御前崎市)

(1)概要

今までの研修(前年度3回実施)で公共施設マネジメントの総論への理解と必要性を感じて

いる職員が増えてきています。取組を進めるためには、施設担当課と公共施設マネジメント担

当課が両輪となり、施設担当課が主体的に取り組む必要があります。

(課題)

総論や必要性は理解できても、職員の主体的な取組に繋がっていない。

職員像例

公共施設マネジメントの必要性は研修で良くわかったけど、でもさぁ・・・

自分の仕事じゃないもん(他人事族)

今はやらなくてもいつかきっと・・・(先送り族)

言ったもん負けだから・・・・(くちチャック族)

(2)期待される効果

①公共施設更新問題を自分事と捉え、施設担当課の職員が自ら主体的に動く

②公共施設マネジメント担当課と施設担当課の役割の明確化

(3)取組の流れ

①「公共施設探検隊」~建築士などの専門家と実際の施設を見て考えてみよう!~

ア 今後再編の可能性があるエリアと施設を実際に見て回る

イ 施設担当者から施設のコスト・利用状況等の説明(5施設程度)

ウ 市の方針を説明(ありたい姿)

エ 専門家(建築士、公共施設マネジメント有識者)から見た施設の解説(課題)

オ 施設分類ごとのありたい姿を検討

②シムシティ御前崎 「みんなで考える 30 年後はどんなまち?」

再編の可能性のある地域をモデルにエリアのテーマと施設の再編をシミュレーションみ

んなで考えよう!自分が市民役(高校生役・1人暮らし高齢者・子育て世帯・・・など)

になりきり、公共施設更新問題も考えながら、どんな公共施設・どんな公共サービスが、

ここに あったらいいか考えてみるシミュレーションゲーム

③「FM Times」の発行

ア 研修の内容を全職員向けに内容のフィードバック

イ 職員ポータルサイトへ掲載を実施

所管部署 御前崎市財政課行政改革係

参考URL等 http://www.city.omaezaki.shizuoka.jp/zaisei/shise/shisaku/kaikaku/kokyoshisetsu/index.html

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第2章 方針・計画づくり

1 30 年間の推計(三島市)

(1)三島市におけるFMの取組

①「三島市公共施設白書」発行

(平成 26 年 4 月)

②「三島市公共施設保全計画基本方針」発行

(平成 27 年 3 月)

③「公共施設に関する市民アンケート」実施

(平成 27 年 8 月)

④「三島市公共施設等総合管理計画」策定

(平成 28 年 3 月[予定])

公共施設保全計画基本方針

(2)三島市公共施設保全計画基本方針 (平成 27 年 3月)

①基本理念

「まちづくりとしての公共施設の保全」

②基本方針3原則

・市民ニーズを的確に捉えた資産活用

・総量の 適化と複合化、多機能化の推進

・計画的な維持保全による長寿命化

(3)数値目標の設定

①将来更新費用にかかる一般財源必要額と充当可能見込額の試算

作業1 将来更新費用試算結果(829 億円)の財源を振り分け、一般財源必要額を確認。

【表3 将来更新費用試算結果と財源内訳(見込額)】

(単位:千円)

国支出金 地方債 一般財源

H27~H31(5年間) 8,408,087 1,768,466 4,751,503 1,888,118

H32~H36(5年間) 10,467,055 1,347,532 6,165,600 2,953,923

H37~H41(5年間) 10,825,335 1,928,659 6,265,641 2,631,035

H42~H46(5年間) 13,275,202 3,830,404 6,941,411 2,503,387

H47~H51(5年間) 25,383,871 7,476,563 13,533,199 4,374,109

H52~H56(5年間) 14,598,902 3,980,505 7,621,810 2,996,587

合計(30年間) 82,958,452 20,332,129 45,279,164 17,347,159

財源内訳(見込額)将来更新費用

試算結果年度

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作業2 一般財源必要額(173 億円)に対して充当可能見込額を算出し、不足額を確認。

【表4 一般財源必要額と充当可能見込額との比較】

(単位:千円)

H27~H31(5年間) 2,265,000 1,888,118 376,882

H32~H36(5年間) 2,265,000 2,953,923 -688,923

H37~H41(5年間) 2,165,000 2,631,035 -466,035

H42~H46(5年間) 1,725,000 2,503,387 -778,387

H47~H51(5年間) 2,115,000 4,374,109 -2,259,109

H52~H56(5年間) 2,265,000 2,996,587 -731,587

合計(30年間) 12,800,000 17,347,159 -4,547,159

年度充当できる一般財源

(充当可能見込額)

必要となる一般財源

(一般財源必要額)差額

②将来人口推計及び将来利用見込みを踏まえた床面積の試算

作業1 各施設所管課において、これまでの利用者の推移や将来人口推計等を踏まえ、

将来の施設利用者数の見込みを算出。

【表5 各施設所管課における利用者見込み(参考:A施設)】

(単位:人) 実績

H22

H27 H32 H37 H42 H47 H52

138,706 138,000 132,600 127,200 121,800 116,400 111,000

46,235 52,700 55,100 57,500 59,900 62,300 64,700

46,235 44,400 42,000 39,600 37,200 34,800 32,400

231,176 235,100 229,700 224,300 218,900 213,500 208,100合計

施設所管課における将来利用見込み

H22利用者実績(人)

推計区分

生産年齢人口(15~64歳)

老年人口(65歳以上)

年少人口(14歳以下)

H52利用者推計(人) 増減比率

231,176 208,100 -9.98%

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作業2 現状で保有する床面積に対して、各施設所管課が算出した増減比率を掛け合

わせ、将来適正と考えられる床面積を算出。

【表6 将来の施設利用者見込みを踏まえた床面積の試算結果】

(単位:㎡)

H52

以降

「利用者あり」の施設 238,546.9 228,865.2 212,039.7 194,598.0 179,409.3 169,638.2 162,507.8

「一般利用者なし及び

利用者集計が困難」の

施設

67,040.0 65,909.5 64,229.9 61,993.9 59,396.6 56,589.4 53,653.4

合 計 305,586.9 294,774.7 276,269.6 256,591.9 238,805.9 226,227.6 216,161.2

H42 H47区分 H24 H27 H32 H37

③数値目標の設定

30 年間の推計の結果、財源の試算では「26.2%」の削減が必要となり、床面積の試

算では「29.3%」を削減した面積が適正と考えられます。

⇒ 一般財源必要額の削減率をも念頭に置いて高い目標値を設定することとし、

「29%」を数値目標としました。

所管部署 三島市企画戦略部政策企画課戦略まちづくり室

参考URL等 http://www.city.mishima.shizuoka.jp/maincategory0733.html

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2 公共施設再編計画(富士市)

(1)富士市のこれまでの取組

① 平成 26 年3月 「富士市公共建築物保全計画」策定

老朽化が進む公共建築物の更新問題に対応していくための基礎資料として策定しました。

施設の利用状況や管理コスト等の現状を把握し、中長期の改修、改築経費等の分析を行いま

した。

② 平成 27 年4月 「富士市公共施設マネジメント基本方針」策定

富士市における公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進するための基本的な指針、か

つ、総務省が策定を要請する「公共施設等総合管理計画」の位置付けとして策定しました。

公共建築物及び道路、上下水道などの土木インフラに係る更新費用の推計を試算し、これ

を基に将来的な公共建築物の削減目標を設定するとともに、公共建築物の管理、更新のため

の基本原則を定めました。

(2)富士市公共施設再編計画とは

「富士市公共施設マネジメント基本方針」では、将来にわたり公共施設における公共サー

ビスを提供していくため、人口減少や少子高齢化など人口構造の変化に応じた適切な施設配

置を検証していくとともに、公共建築物の維持保全に係る財政負担の軽減を図ることとして

おり、これを推進していくために次の基本原則を掲げています。

原則1 公共サービスの提供方法を見直し、保有建築物の総量を縮減します。

原則2 一般公共建築物の維持管理手法を 適化し、ライフサイクルコストを縮減します。

原則3 一般公共建築物の資産価値を 大限引き出すために、効果的に利活用していきま

す。

これらの基本原則を具現化し、公共施設マネジメントの実効性を確保するため、現在、「富

士市公共施設再編計画」を策定しています。

(3)公共施設再編計画の策定プロセス

① 再編内容の検討

施設用途別にソフト(サービス適正化)、ハード(施設の適正化)の両面から再編内容を

検討します。

サービス提供主体 行政が提供していくべきサービスか? サービス適正化

の視点 サービス提供場所 どのような施設配置が適切か?

建物の供給量 どの程度の施設規模が必要か? 施設の適正化の

視点 建物の汎用性 他用途で活用することが可能か?

上記の4つの視点から、施設用途ごとの基本的な再編手法を整理します。

(再編手法の例)

・複合化…一つの建物に複数の施設を集合させることで、多様なサービスを提供し、余剰

となった施設を処分する手法です。

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・機能統合…複数の施設で同種のサービスを提供しており、サービス供給量に余剰が生じ

た場合、これらを一つの施設に統合し、余剰となった施設を処分する手法です。

・広域連携…利用圏域が広域な施設について、隣接市と共同で設置、運営することで効率

化を図る手法です。

・民間移管…サービスの運営主体を民間事業者へ移管することで管理経費の縮減やサービ

スの向上を図る手法です。

② 再編の有効性、可能性の検証

施設用途ごとの再編手法に係る検証結果を基に、具体的な個別施設の再編の有効性や可能

性について、再編シミュレーションを行い検証します。

公共建築物保全計画のデ

ータを基に、施設の更新

時期を一覧化したデータ

ベースを作成します。

施設を設置エリアごとに

並び替え、更新時期が近

い施設を組み合わせ、施

設用途ごとに整理した再

編手法が実施可能か検証

します。

(4)施設再編以外の今後の取組

公共施設の再編の取組と並行して、公共建築物の適切な維持保全に係る取組についても、

次のとおり進めていきます。

① 維持管理マニュアルの作成

技術的に専門的な知識を有さない職員でも、簡易に施設の点検を行うことができるよう、

マニュアルを整備していきます。

② 短期保全計画の策定

5年程度の短期間で発生が予定される公共建築物の修繕箇所を取りまとめ、その保全経費

を算定し、実施計画を策定することで、財政負担の平準化を図ります。

所管部署 富士市行政経営課

参考URL等 http://www.city.fuji.shizuoka.jp/shisei/c0705/fmervo000000ancc.html

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第3章 実践

1 長寿命化の取組(長泉町)

(1)長泉町の現状と課題

① 長泉町の人口動向

町の人口は、堅調な増加傾向が続いており、平成27年度(2015年度)には42,272人となって

います。国立社会保障・人口問題研究所推計における将来人口では、平成27年度(2015年度)の

人口は41,956人(実人口は42,272人であり、推計を超過した人口の伸び率となっている。)、

その後、平成 42年(2030年)に人口 42,972人で人口ピークを迎え、長期的には横ばいもしくは緩

やかな減少傾向に転じると予測されています。人口の減少に伴い、町全体としては公共施設ニー

ズが減少し、所有する公共施設に余裕施設、余剰施設が発生すると考えられます。

② 長泉町の保有建築物の用途、築年数、構造等

公共施設は、こうした人口動態を注視しながら、用途別に適正量を検討する必要があり、現

在、町の保有する主要な公共建築物は 78 棟(一部調査対象外)となります。用途別棟数は、

小学校 17 棟、中学校 12 棟、児童福祉施設 13 棟、町営住宅9棟、事務所施設7棟、防災施設

4棟、社会教育施設3棟、社会福祉施設2棟、文化施設2棟、生活環境施設2棟、体育施設2

棟、環境衛生施設、産業経済施設、老人福祉施設、学校給食施設、その他施設がそれぞれ1棟

となっています。

また、築年数については、平成 27 年(2015 年)時点で築 40 年以上を経過している建築物は

小学校で 13 棟、中学校で7棟、事務所施設で2棟、環境衛生施設で1棟、計 23 棟となってお

り、築 30 年~39 年のものは、小学校で1棟、中学校で4棟、児童福祉施設で2棟、防災施設、

社会教育施設、体育施設でそれぞれ1棟、計 10 棟となっています。一般的には、築 30 年を経

過した建築物は改築、大規模改修、長寿命化、用途変更、廃止等の検討を要する時期を迎える

こととなり、現状のままでは、将来的に関連費用の増大が予測されます。

③ 建築物用途別築年数と延床面積

長泉町が保有する建築物の延床面積は、築 40 年以上の建築物の合計が全体の 29%と 1/3 近く

を占め、以下築 30 年~39 年が 13%、築 20 年~29 年が 14%、築 20 年未満が 44%となっていま

す。

なお、築 30 年を経過する建築物のうち、特に延床面積の大きい学校の割合が高くなってい

ますが、学校は防災上重要な施設の一つとして長泉町の中で位置付けられていることから、高

い優先度での整備が必要です。

これらの膨大な面積にのぼるストック建築物の老朽化対策が必要であり、品質面の課題とし

ては安全性の確保、環境負荷の低減、非常時の事業継続等があげられます。

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④ 建築物用途別規模

長泉町が保有する建築物の用途別規模は、学校の規模が一番大きく、全体の 37%を占めてお

り、続いて児童福祉施設が 17%、町営住宅が 11%、事務所施設が9%、防災施設が5%、社

会教育施設が4%等となっています。

こうした建築物に一様に対応するのではなく、特に規模の大きい建物用途から早期に着手す

ることが、長泉町のファシリティマネジメントとしての方針や計画への反映のための指標とな

ります。

⑤ 長泉町の財政推移

町の行財政状況については、財政構造の弾力性を測定する指標である経常収支比率が 70%前

後という良好な水準で維持されており、通常市町村は 70~75%までに収まることが妥当とされ

ていることから、健全な状態であると言えます。しかし、将来人口の見通しでは、平成 42 年

(2030 年)年には人口のピークを迎え、その後は人口減、少子高齢化が進むと予測されており、

社会保障関係等の経費が増加するものと予想されます。

(2)長寿命化の取組へ

① ファシリティマネジメントの基本認識、基本的な考え方

長泉町の特色として子育て世代の人口が多いことがあげられますが、それに伴い幼稚園、保

育園、学校教育施設等は不足しがちであると言えます。しかしながら、今後、人口減少が予測

される中でビジョンを持たずに公共施設を建設することは賢明ではなく、また、建設敷地の確

保も容易ではありません。このようなことから、基本的には現状の施設数を維持しつつ、幼稚

園を認定こども園に移行する等、施設の積極的な有効活用を図る必要があります。

一方で、コミュニティ施設、文化施設等には、その利用目的が重複する等、統廃合を検討す

べきものがありますので、PPP(公共サービスの提供に民間が参画する手法を幅広く捉えた

概念で、民間資本や民間のノウハウを利用し、効率化や公共サービスの向上を目指すもの)、

PFI(公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力活用す

ることで、効率化やサービス向上を図る公共事業の手法)の活用を視野に入れた上で、維持管

理コストの削減に努めていかなければなりません。

② 事後保全からの脱却

公共建築物の管理については、これまでは事後的管理の修繕であったことから、実施計画、

予算編成時には経費の見込みが立たず、また、修繕履歴等も把握していないことから、その修

繕の適切性が判断できない状況でした。ファシリティマネジメントに取り組むことで、この事

後的管理から脱却して予防保全型維持管理へと移行し、保全計画に基づく計画修繕に努め、損

傷が軽微である早期段階に予防的に修繕等を実施することで、施設の長寿命化を図ることとし

ました。さらに、概ね5年に1度、公共建築物の一斉現場点検を実施し、大規模設備の管理だ

けではなく、軽微な設備においても修繕等実施すべき個所の把握に努め、必要に応じて保全計

画の見直しを実施していくことを予定しています。

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③ 対象建築物の優先度の設定

対象建築物の優先度については、広域避難場所等の指定情報等を考慮し、下のポートフォリ

オ分析(図5 ポートフォリオ分析)のとおり設定しています。建築物ごとの優先度3段階(避

難所等に指定されている建築物が優先度高い等)と工事部位ごとの優先度3段階(2次被害に

繋がる部位、防災設備等が高い等)の2軸で各建物の工事項目を平面上の 9つのエリアに振

り分け、両軸で優先度が1位のエリアから予算執行を行うことにより、修繕効率化を図ってい

ます。

建物の重要度のみや、工事項目の優先度のみで優先順位を判断すると、建築物によって更新

実施状況に偏りが出来てしまいます。したがいまして、ポートフォリオ分析により、建築物の

重要度と工事項目の優先度を総合的に判定することで、重要な建築物の優先的工事項目は優先

しつつ、重要度の低い建築物の防水等重要な項目についてもフォローすることができています。

【図5 ポートフォリオ分析】

建築 衛生・

電気 空調 予防保全における予算措置の優先順位 消火

受変電設備 優先度1

屋内消火栓 屋上防水 非常用発電機

③群 ②群 ①群 屋内消火栓ポ

ンプ 外壁 自火報設備

放送設備

給排水配管 優先度2

ポンプ類 ④群 ③群 ②群 ELV 空調設備

水槽類

浄化槽

優先度3

内装 ボイラー

⑤群 ④群 ③群 ダムウェーター 照明設備 トイレ改修

プール防水 プールろ過機

重要度C 重要度B 重要度A

役場東館 役場北館 役場本館

桃沢野外活動センタ

町営住宅 役場西館

幼稚園 消防庁舎

竹原グラウンド管理

保育園 小中学校(校舎・

体育館) 放課後児童館 納米里自由通路 消防団詰所 勤労者体育館

学校プール 福祉会館 南部地区センター

ワークプラザ ほほえみ&みの

いずみの郷

文化財展示館 文化センター

コミュニティセンター 給食センター

桃沢工芸村 ウェルピア

28

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④ 全棟調査

保全計画を作成するにあたり、まずは各公共建築物のデータベース化を行いました。長泉町

が保有する公共建築物 78 棟の中には、建築から相当年が経過したことで図面等を紛失してし

まっているもの、図面との差異があるもの、伝票等から修繕履歴が確認できないもの等様々で

したが、全棟の現場調査を経ることで、まずは緊急的に修繕すべき箇所、今後計画的に修繕を

行っていくべき箇所の仕分けを行いました。

(3)ファシリティマネジメントの推進

① 取組体制

公共建築物については、それぞれ担当部署において管理が行われており、その管理状況等に

ついては、施設管理担当部署にそれぞれ配置しているファシリティマネジメント推進委員を中

心とし、企画財政課が横断的に公共建築物全体の情報を管理、集約する事務局として機能する

ことで、総合的かつ計画的な施設管理に努めています。

② ファシリティマネジメント主導による予算執行

維持補修費の縮減のためには、限りある予算を有効に活用する事が必要です。建物ごとの優

先順位及び修繕部位の優先順位から、優先すべき工事項目を抽出し、より合理的な予算執行を

目指しています。

修繕工事金額は、年度ごとにバラつきはあるものの、概ね4億円/年で推移しています。そ

の中で特異な点として、建築に付随するものではありませんが、特殊設備として塵芥焼却場、

火葬場の炉設備及び文化センターの舞台関連設備(舞台吊機構設備、舞台照明設備、舞台音響

設備、舞台・客席移動機構設備)の修繕費が約1億 3,000 万円/年となっており、全体の3分

の1程度の割合を占めている状況です。建築付随設備以外の項目についても引き続き注目して

管理していかなければならない状況です。

③ 大規模支出への対応

平成 38 年(2026 年)からの建替え集中時期に備え、長泉町公共施設長寿命化基金条例に基

づき、毎年度 5,000 万円の積立を基準としていますが、60 年間の建設費を全て基金から充当し

ようとする場合は、3億 1,300 万円/年の積立てが必要なため、今後とも財政状況や社会状況

等を勘案しながら可能な限りの積立てを実施していきます。

④ 建替、修繕費用の将来予測

建築物の維持管理にあたり、全ての施設を常に修繕不要な良好な状態で保ち続けることは不

可能です。そこで、残存不具合率(FCI)により施設の利用状況、予算状況等からどの程度

の予算を投資し、どの程度の状態で施設を維持管理していくかの方針を定めます。残存不具合

率とは、残存不具合額を建物復成価格(同規模、同仕様の建物を再建築した場合にかかる費用

と定義します。)で除した値であり、一般には5%以下が良好、10%以上は大幅な改善が必要

とされています。

現状の残存不具合率は 10%以下を保っているものの、現行の予算規模の修繕では、試算では

2022 年頃に 10%を超えるものとなっていますので(FCIの試算には焼却設備、舞台装置関連

29

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設備は考慮していません。)、予算規模の拡大、施設の縮小、基金の取り崩し等を検討していか

なければなりません。

(4)今後の展望

① 将来需要の把握

公共建築物をよく利用する団体や住民だけでなく、日ごろ施設を利用することが少ない住民

の声も反映させながら、より公平性の高い住民サービスの提供に努めます。また、公共建築物

に関する劣化度や利用状況等の情報の発信やアンケートの実施等により、問題意識の共有、醸

成に努める等、住民との合意形成に十分配慮しながらマネジメントを進めます。

② 民間提案の積極的な活用

公共建築物における効率的、効果的なサービス提供のあり方や事業手法等について、民間か

らの提案を積極的に受け入れる仕組みを構築します。

③ インフラ系施設とファシリティマネジメントとの連携

基本計画では、町が保有する建築物の 適化をマネジメントするという視点で策定されたも

のですが、道路や橋梁、上・下水道等のインフラ系施設についても、老朽化に伴う将来費用の

増加が見込まれます。

インフラ系施設は住民の生活そのものに直結するものであることから、今後、ファシリティ

マネジメントを推進していくにあたっては、インフラ系施設を含めた保有資産全体としての将

来費用を把握し、中・長期的な財政計画に与える影響を踏まえた計画を策定します。

④ 地方公会計との関係

固定資産台帳の作成や公会計の整備により、公共施設等の維持管理、修繕、更新等に係る中・

長期的な経費の見込みを算出し、また、公共施設等の総合的かつ計画的な管理に関する基本的

な方針等を充実、精緻化するよう努めます。

所管部署 長泉町総務部門企画財政課

参考URL等 http://japan.nagaizumi.org/kikaku/

30

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2 普通財産の利活用(伊豆市)

(1)伊豆市の状況

伊豆市は、平成 16 年4月に修善寺町、土肥町、天城湯ケ島町、中伊豆町の4町が合併して

誕生しました。旧町時代、昭和 40 年代から 50 年代の高度成長期における住民ニーズの高まり

を背景に、住民サービスの向上との都市機能の充実を図るために、学校教育施設や体育施設、

産業関連施設、子育て支援施設、など様々な公共施設の整備を進めてきました。

こうした施設の中には、相当の年数が経過したものや耐震性が基準を下回っているもの、さ

らには合併による施設の重複や偏在など、数々の問題・課題を抱えているものも少なくありま

せん。

また、伊豆市では人口減少とともに年少人口(14 歳以下)の減少や高齢者人口(65 歳以上)

の増加など、公共施設を取り巻く環境は大きく変化しており、現状は、当初の施設の使用目的

を終え、解体を含む新たな活用を待つ施設が年々増加しています。

これらの公共施設をこのまま維持していく場合、経年劣化により維持・修繕費は増加し、10

年後、20 年後には老朽化した施設の大規模改修や建て替えが必要となるばかりでなく、これら

が同時期に集中することが懸念されています。

厳しい財政状況が続くことが予測される中で、今後は、これら公共施設の建築年次や配置状

況、利用状況、また施設の維持管理等に要する経費等を把握し相対的評価等により施設のあり

方について検討を進めています。

【図6 伊豆市の変遷】

下大見村

中大見村

上大見村

上狩野村

中狩野村

小下田村

八木沢村

修善寺村

下狩野村

小土肥村

土肥村

北狩野村

西豆村

土肥町土肥村 土肥町

天城湯ヶ島町

中伊豆町

修善寺町 修善寺町

昭和33年

昭和35年

明治22年

明治22年 昭和13年

大正13年

昭和31年編入

昭和34年 牧之郷、柏久保、年川、大野の一部を編入(一部は大仁町へ)

昭和31年編入合併

平成16年4月

【現在の姿】

31

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(2)公共施設(保育園、幼稚園、学校)再編の取組

合併前の各地区によって異なりますが、旧町には村を単位とするそれぞれのエリアに保育

園・幼稚園・小学校・中学校がありました。

これらの施設は少子化により、統廃合され、廃園、廃校となった施設は、普通財産として管

理することになりました。

市では、施設の有効活用を図るため、廃校になった3つの小学校、土肥地区の土肥南小学校、

中伊豆地区の大東小学校及び、八岳小学校と、廃園となった3つの保育園、土肥地区の土肥保

育園、土肥ふじみ園、中伊豆地区の大東保育園、と老朽化により取り壊した土肥地区の国民宿

舎跡地を、平成 23 年 11 月に売却または貸付により施設を利活用する事業者、個人、法人を問

わず、募集しました。

また、公募以降に廃校となった天城湯ヶ島地区の湯ヶ島小学校、月ヶ瀬小学校についても施

設の活用について検討してきました。

(3)廃止施設の利活用事例

① 民間への貸付事例 「大東小学校」

閉校に伴う跡地利用について地区に意見聴取しましたが、地区からは跡地利用の提案はあり

ませんでした。これにより、広域避難所となっている体育館を除き、校舎及びグラウンドを対

象にH23 年に公募しました。

公募により4件の応募があり。提案審査会にて健康食品製造会社が適格と判断し。地区説明

会、地区要望等を踏まえ、民間企業と貸付条件等を協議し、校舎、グランドの貸出条件等を決

定し、健康食品製造会社と5年間の賃貸借契約を締結しました。

② 民間企業へ売却した事例 「土肥ふじみ幼稚園」

土肥地区の土肥幼稚園と土肥ふじみ幼稚園が再編され、土肥ふじみ幼稚園は閉園となりまし

た。公募により旅館業者から応募があり、提案審査会にて適格と判断し、地区説明会を開催し

ました。グラウンドの代替地、隣接する診療施設の利用等について地区との協議を踏まえ、応

募者、旅館業者と折衝してきましたが、賃貸借条件等が折り合わず、 終的には園舎を取壊し、

賃貸借契約から土地の売買契約に方針を変更し、土地の売買契約を締結しました。

平成 27 年末、土地利用委員会が開かれ、平成 28 年7月に新規の旅館がオープンする予定で

す。

③ 地域づくり協議会の活動拠点施設

ア 土肥南小学校

H23 年の公募で1件応募があり、提案審査会にて応募者が適格と判断され、地区説明会も

開催しましたが、校舎が津波浸水想定区域の為、応募者より辞退届が提出され、やむを得ず

受理しました。辞退を受けて、再度、地元企業や地域住民等と校舎の利活用について協議し

ましたが、校舎は解体、体育館は社会体育館として継続使用する方針に決定しました。

平成 27 年7月に地域づくり協議会が発足し、跡地利用について協議し、解体した校舎跡

地を、協議会の活動拠点、地域の公園として整備していくことになりました。

現在、校舎跡地の一部に遊具を設置しました。また、地元ブランドの土肥桜を植樹し、芝

32

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の整備を始めました。

イ 湯ヶ島小学校

湯ヶ島小学校は、天城湯ヶ島地区の学校再編によりタウンミーティングで跡地利用を協議

してきましたが、具体的な利活用案は出ずにいましたが、H27 年 1 月に湯ヶ島地区の地域づ

くり協議会が発足し、活動拠点として、校舎の一部、教室を貸してほしいと相談があり、貸

し出しをしています。

ウ 八岳小学校

この施設は、公募により応募がありましたが、太陽光発電施設利用だった為、地区から雇

用、活性化につながらないとの意見があり、不採用となりました。その後、県内東部の製材

業者や、大学の研究室等から、校舎・体育館の利用について問い合わせがありましたが、契

約までには至りませんでした。

その後、CM、映画等のロケ施設として借用の依頼があり、貸し出しをしています。

平成 27 年の暮れ、地域づくり協議会発足準備委員会から施設利用打診があり、発足後は

貸し出しについて、条件等の協議を進めて行くこととしました。

④ 複合施設の建設

天城湯ヶ島地区の月ヶ瀬小学校は天城湯ヶ島地区のタウンミーティングで跡地利用を協議

していたところ、天城湯ヶ島地区の福祉施設の更新問題が浮上し、建設地候補地として月ヶ瀬

小学校グランドが決定されました。

昨年4月に施設を建設する社会福祉法人と土地の賃貸借契約を締結し、認定こども園、高齢

者通所介護事業、障害者就労継続支援 B型事業、地域交流スペースを備えた複合施設が建設さ

れています。

(4)今後の取組

今後も学校・公共施設等の再編・複合化により多くの施設が普通財産となります。

廃止になってから利活用の検討を始めた、伊豆市の過去の経過を踏まえると、成功事例があ

るものの廃止となった学校・公共施設等の管理利用計画を明確にしていないため、積極的な施

設利用とはならず、不完全な施設管理となっていました。

今後は、市のグラウンドデザインと、その他の施設との利用状況等を踏まえた、総合的な施

設の管理に取り組んでいきます。

所管部署 総務部財務課

[email protected] E-mail

33

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3 ベンチマーキング(静岡県)

(1)概要

静岡県では、県有施設の維持管理経費の 適化や有効活用を目的としたベンチマーキング分

析を実施しています。これまで、清掃委託費、エネルギー使用量、本庁舎の執務室と会議室に

ついて分析し、経費節減等の改善を行っています。

(2)県有施設の清掃委託費の分析(平成 25 年度)

県有施設のうち、清掃委託を実施している107施設の状況について詳細に分析を行いました。

その結果、県有施設の清掃単価(清掃単価=清掃委託費÷延床面積)については、これまで

厳しい予算管理を行ってきたため、他自治体と比較して安価であり、これ以上の経費節減は難

しいことがわかりました。

一方、設計書の積算方法などの委託に係る事務については統一されていないことが判明した

ため、「清掃委託料積算マニュアル」を作成し、マニュアルに基づいたエクセルの設計書を配

布することで事務改善を行うこととしました。

【図7 施設別の清掃単価】

0

500

1000

1500

2000

清掃単価(円/㎡)

県有施設平均

448 円/㎡

施設別・降順

(青森県の例 従前 2,729 円 → 削減後 2,106 円(△623 円))

【表7 静岡県清掃委託料算定マニュアル概要】

項目 概要

目的 これまで多くの県有施設で見積書により算定していた委託料について、標

準歩掛りを用いることで事務の改善を図る。また、清掃業務委託設計書

(例)(エクセルシート)を活用することで、事務負担の軽減を図る。

算定方法 「建築保全業務積算基準(国交省大臣官房官庁営繕部監修)」に従って、清

掃面積から労務数量を算出し、委託料を算出する。

34

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(3)県有施設のエネルギー使用状況の分析(平成 26 年度)

県有施設のうち、延床面積 1,000 ㎡以上の 242 施設のエネルギー使用量を分析しました。分

析は、各施設の電気、都市ガス、プロパンガス等の使用量を発熱量に換算し、それらの合計に

ついて施設間の比較を行いました。その結果、県有施設のエネルギー使用量は、全国平均と比

較すると比較的少ないことがわかりました。

【図8 県有施設のエネルギー使用量と延床面積の関係】

0

5,000

10,000

15,000

20,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000

延床面積(㎡)

エネ

ルギ

ー使

用量

(G

J)

庁舎・事務所 警察署等 研究施設 ホール・研修所等 高等学校 特別支援学校 その他

高等学校

庁舎・事務所ホール・研修所等

警察署等

特別支援学校

【図9 用途別エネルギー使用量と延床面積(県立高校)】

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

延床面積(㎡)

エネルギー

使用

量(G

J)

全国高等学校(H21)平均327MJ/㎡

静岡県高等学校平均230MJ/㎡

主に専門課程を有する高校

35

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その一方で光熱水費の約7割は電気であるため、電気の契約方法に着目し改善をはかること

としました。具体的には、これまで庁舎・事務所で主に行ってきた電力調達入札について、高

等学校や特別支援学校にも拡大しました。その結果、年間約 1億 4千万円の削減効果がありま

した。

【図 10 光熱水費の割合】

ア 光熱水種別 イ 用途別

電気

69%

都市ガス

14%

プロパンガス

1%

重油

1%

灯油

1%

下水

5%上水

9%

工業用水

0.2%軽油

0.01%

警察署等

10%

高等学校

30% ホール・研

修所等

15%

研究施設

8%

庁舎・事務

16%

特別支援学

5%

その他

16%

電気の契約

方法に着目 高等学校・特別支援学校に電力調

達入札拡大

【図 11 電力調達入札拡大の効果】

0

2

4

6

8

10

従来の契約 PPSとの契約

契約

額(

億円

約 1 億 4 千万円

(約 17%)の削減

36

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(4)本庁舎の執務室と会議室の利用状況の分析(平成 27 年度)

① 本庁舎執務室

本庁舎の執務室の1人あたりの面積について分析を行いました。本庁舎全体では 5.5 ㎡/

人であり、他自治体庁舎と比較すると、比較的狭いことがわかりました。その一方で各執務室

の広さにはばらつきがあり、特に4㎡/人以下の執務室では、打合せスペースがないなど課題

があることがわかりました。そのため、5.5 ㎡/人を標準とし、組織改正に伴う年度末の機構改

革に合わせて適宜適用していくこととしています。

【図 12 1人あたりの執務室面積の他事例との比較】

(他事例の出典:横浜市 H21 調査、青森県オフィススタンダードの解説、総解説ファシリティマネジメント)

5.5

7.3 7.68.4

0

2

4

6

8

10

H

2

1

H

1

9

J

F

M

A調

1人あ

たりの面

積(㎡

/人)

【図 13 執務室別の1人あたりの面積】

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

本庁舎平均執務室面積 5.5㎡/人

執務室別・降順

また近年のオフィスは、情報の共有による知識創造が、極めて重要となってきています。

知識創造を促す仕組みをもった場は「知識創造型ワークプレイス」と呼ばれ、本庁舎でも、今後

は知的創造行動を意識したワークプレイスづくりについても必要となってきます。

従来の本庁舎執務室は、決裁ルート重視の縦長の配置が多く、班内のコミュニケーションが

十分に取れないなどの課題があったため、管財課のレイアウトを試行的に図 14 のとおり変更

し、効果を検証することとしました。

37

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【図 14 レイアウト変更(試行)】

変更前

変更後

試行レイアウトのねらい

・ 振り返ると、班内の打合せができる。

・ 班員同士のパソコン画面が見え、仕事の進捗がわかりやすい。

・ 席次の上下を配慮しない配置とし、配置の自由度を高める。

・ 複雑な動線を歩く機会が増え、仕事に役立つヒントを得やすくなる。

38

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② 本庁舎会議室

本庁舎の会議室は、混雑していて予約が取りにくいことが課題となっています。そのため利

用状況について分析し、予約が取りにくい状況の改善を目指しました。分析は、予約データベ

ースのデータと、会議室利用者が記入する利用簿の内容をもとにしています。

ア 時間予約率と時間稼働率

時間予約率は 77%であり、予約状況にある程度の余裕があるように見えますが、通常の時間

帯は予約でいっぱいで、「使いたいときに使えない状態」にあります。一方で時間稼働率は 39%

であり、時間予約率が極めて高いことを考慮すると、予約しているにも関わらず未使用の 38%

の部分に改善の検討の余地があります。

【図 15 時間予約率と時間稼働率】

予約あり

77%

使用

39%使用なし

38%予約なし 23%

予約なし23%

時間稼働率

時間予約率

イ 予約時間と利用時間

予約の段階では、全体の 59%が8時間以上の予約ですが、実際に8時間以上利用されたのは、

19%となっています。また利用の 57%は4時間以下で、短時間の利用が多く、半日単位など短

時間での予約を推奨していく必要があります。

【図 16 予約時間と利用時間】

2~4時間 6~8時間

ウ 予約時期

会議室は、原則、利用日の3ヶ月前から予約を受け付けています。また、会議の重要度に応

じて、3ヶ月以上前からの「事前予約」も受け付けています。会議室の予約時期については、全

体の 48%が、利用日の3ヶ月以上前からの予約(事前予約)となっています。また利用日3ヶ

月前の予約が開始される日に集中しています。利用日の当日から2ヶ月前の予約も 34%ありま

すが、2~3ヶ月前の段階で予約がうまっていることを考慮すると、キャンセルされた会議室

が再予約されたものと推定できます。

33%

7%

24%

17%

9%

9%

16%

7%

19%

59%

利用時間

予約時間

8時間以上 2時間以下 4~6時間

39

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【図 17 予約時期】

エ 利用人数

利用した人数の割合は、全体の 42%が 10 人以下の会議であり、少人数の会議が多いことが

分かります。

【図 18 利用人数の割合】

3ヶ月以上(事前予約)

48%

1~2ヶ月前

5%

当日~1ヶ月前

29%当日~2 ヶ月前 34% (キャンセルされた会議室が再予約されたと推定できる)

2~3ヶ月前

18%

0

50

100

150

200

250

300

350

300 200 100 0

予約日(日前)

予約

件数

(件

キャンセルされた会議室が再予約

予約解禁日

事前予約

1~5人

18%

6~10人

24%

11~20人

22%

21~40人

18%

101人以上

4%

41~60人

8%

61~100人

6%

10 人以下 42%

40

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オ 利用形式

机・椅子の配置等の利用形式は、利用人数に関わらず、半数程度が「教室形式」です。

【図 19 利用形式】

42%

44%

40%

53%

62%

56%

65%

12%

19%

35%

33%

14%

11%

1%

0%

0%

0%

2%

5%

46%

36%

25%

14%

22%

33%

28%

0 200 400 600 800 1000

1~5人

6~10人

11~20人

21~40人

41~60人

61~100人

101人以上

利用件数

教室形式ロの字

椅子のみその他

カ 必要面積の推定

利用人数や利用形式から推定した必要面積別の会議室割合は、38%が 40 ㎡以下ですが、そ

の一方、実際には、40 ㎡以下の会議室の割合は3%しかありません。予約が取りにくい状況を

考慮すると、40 ㎡以下の会議室を増やす等の改善の必要があります。

【図 20 必要面積の推定と面積別の会議室割合】

40 ㎡以下 41~100 ㎡ 101~200 ㎡ 201 ㎡以上

38%

63%

36%

20%

15%

14%

11%

3%

48% 18% 13%23%

必要面積別の

会議室割合

現状面積別の

会議室割合

改善例

○ 40 ㎡以下の会議室を2室を確保。

○ 41~100 ㎡の会議室3室を2分割。

改善例実施の場

合の会議室割合

41

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キ 会議室の改善

上記の分析を踏まえ、以下の改善を実施・検討しています。

【表8 会議室の改善】

項目 改善方法

予約ルールの変更 ・ 2~3ヶ月前の不確実な予約を減らすため、予約開始時期

を3ヶ月前から2ヶ月前に変更することを検討。

・ 半日単位等の短時間予約を推奨する方法を検討。

40 ㎡以下の会議室を

増加

・ 会議室以外の 40 ㎡以下の2室を会議室として確保。

・ 41~100 ㎡の会議室を可動間仕切りで2分割することを検

討。

他スペースの活用 ・ 庁内のフリースペース等の積極的活用について周知。

・ 本庁舎以外の会議室の活用について周知。

ク 参考(ベンチマーキング分析を行うために会議室利用簿を変更)

会議室のベンチマーキング分析を実施するためには、会議室の利用実績データを収集するこ

とが必要でした。そのため、会議室利用簿に会議開始時間、会議終了時間、利用用途、机配置、

利用者などの記入項目を追加し、それらのデータを活用して分析を実施しています。

【図 21 会議室利用簿の変更】

所管部署 静岡県経営管理部管財課

参考URL等 http://www.pref.shizuoka.jp/soumu/so-120/24fm-2.html

42

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4 公共施設見直し計画(磐田市)

(1)磐田市の背景・現状

磐田市は、平成17年4月に5つ市町村が合併し、人口約17万人の市になりました。この合併

により旧市町村の庁舎、スポーツ施設、文教施設、福祉施設など、多くの公共施設を継承し、

それぞれの地域における行政サービスに活用してきました。

これらの施設の中には、経年劣化により老朽化したもの、安全性・機能性が著しく低下した

もの、住民ニーズの変化により設置意義が薄れているもの、利用状況が低迷しているもの、類

似施設の重複などが見受けられるもの等、さまざまな状況の施設が存在しており、それぞれに

多くの課題を抱えていました。

また、将来的には人口減少や少子高齢化などにより厳しい財政状況が見込まれることから、

今後は、限られた人的・財政的資源の中で、「選択と集中」並びに「スクラップ・アンド・ビル

ド」を基本に施設のあり方を見直し、時代や市民ニーズの変化に即した施設の設置並びに管理

運営が必要となりました。

加えて、平成 23 年3月 11 日に発生した東日本大震災の状況や防災対策を考慮する中で、施

設の設置目的、利用状況及び老朽化等を検証した上で、市全体として公共施設の適正な配置を

進めることを目的に、同年 10 月、「磐田市公共施設見直し計画」を策定し、これまで順次、計

画を推進してきました。

平平成成1177年年44月月 磐磐田田市市・・福福田田町町・・竜竜洋洋町町・・豊豊田田町町・・豊豊岡岡村村がが合合併併

人人口口約約1177万万人人のの新新磐磐田田市市がが誕誕生生

多多くくのの公公共共施施設設をを継継承承((老老朽朽化化、、重重複複ななどど))

「「磐磐田田市市公公共共施施設設見見直直しし計計画画」」のの策策定定

43

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(2)対象施設と基本方針

本計画の対象施設は、市が保有・管理する公共施設で、道路や河川、公園などを除いた 498

施設を対象とし、うち早期対応が必要となる 77 施設を選別して策定しています。 また、本計画は次の5つの基本方針から成り立っています。

(3)計画に基づく見直し事例

① 防災対策の強化・充実

55つつのの基基本本方方針針

①① 防防災災対対策策のの強強化化・・充充実実 を目指し、見直しを進める。

②② 質質のの高高いいササーービビススのの効効率率的的なな提提供供 を目指し、見直しを進める。

③③ 行行政政ココスストトのの削削減減 を目指し、見直しを進める。

④④ 既既存存施施設設のの有有効効活活用用 を含めて、見直しを進める。

⑤⑤ 人人口口・・財財政政規規模模等等にに応応じじたた適適正正なな配配置置 を目指し、見直しを進める。

福福田田西西南南幼幼稚稚園園 ひひままわわりり幼幼稚稚園園

豊豊浜浜幼幼稚稚園園 福福田田保保育育園園

福福田田ここどどもも園園

HH2277 年年44月月開開園園

統統 合合 統統 合合

市内沿岸部(福田地区)にある3つの幼稚園と1つの保育園を、安全が確保できる場

所(地区内の小学校横)に統合し、こども園を整備しました。

44

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② 質の高いサービスの効率的な提供

③ 行政コストの削減

竜竜洋洋長長寿寿のの家家

第第22ひひままわわりり荘荘 第第33ひひままわわりり荘荘

地地元元自自治治会会へへ返返還還

機機能能をを廃廃止止

ふれあい荘 ふれあい荘

地地元元自自治治会会へへ返返還還 地地元元自自治治会会へへ返返還還

同じエリア内に複数存在する公共施設のうち、「豊岡研修会館」、「豊岡生活改善センタ

ー」、「豊岡児童館」の機能を併せ持った複合施設として、「豊岡中央交流センター」を

建設中です。

利用実態を精査した上で機能を廃止することで、年間約700万円(3カ所で)の運営

費用を削減しました。

豊豊岡岡生生活活改改善善セセンンタターー 豊岡児童館 豊岡児童館 豊豊岡岡研研修修会会館館

集集約約 集集約約 集集約約

豊豊岡岡中中央央交交流流セセンンタターー H28 年4月 供用開始予定

45

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④ 既存施設の有効活用

福田支所 福田支所

⑤ 人口・財政規模等に応じた適正な配置

豊岡支所

消防本部 等

歴史文書館 等

多目的展示室 等

豊岡図書館 等

転転 用用

消防本部 等

竜洋支所 竜洋支所

豊田支所 豊田支所

豊岡支所

転転 用用

歴史文書館 等

転転 用用

多目的展示室 等

転転 用用

豊岡図書館 等

現在、市役所の各支所として活用されている旧町村の庁舎に生まれた空きスペースへ

他の公共施設の機能を移転することで、施設の有効活用を図りました。

豊豊岡岡東東幼幼稚稚園園 豊岡東小学校 豊岡東小学校

豊豊岡岡北北幼幼稚稚園園 豊豊岡岡北北小小学学校校

統統合合((HH2266 年年 44 月月~~)) 統合合((HH2277 年年 44 月月~~))

豊豊岡岡北北小小学学校校 豊豊岡岡ここどどもも園園 ((豊豊岡岡北北幼幼稚稚園園))

地域の人口が少ない豊岡東地区の幼稚園・小学校を、豊岡北地区の幼稚園・小学校

に統合しました。

46

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(4)進捗状況

本計画の進捗状況(平成 27 年度末現在)は約 88%となっており、77 施設うち 68 施設の方

針が決定しています。対象となった 77 施設の総延床面積は、約 73,418 ㎡で、そのうち約 29,820

㎡が削減されました。(新設は約 11,741 ㎡)

施設類型 対象 延床面積 廃止 削減面積 新設 新設面積

施設数 (㎡) 施設数 (㎡) 施設数 (㎡)

体育施設 10 9,285.00 5 7,668.00 1 1,740.93

産業振興施設 7 2,573.00 3 1,213.00 2 861.41

コミュニティ関連施設 7 1,823.28 1 388.00 3 2,494.33

行政施設 5 11,974.85 1 399.85 1 798.27

消防関連施設 2 9,090.27 - 2,321.44 - 1,336.71

教育施設 6 7,169.00 4 3,575.00 - -

文化施設 11 9534.86 5 1,320.00 - -

医療福祉施設 15 12,846.00 9 8,108.00 1 1,269.86

子育て支援施設 14 9,148.87 9 4,826.84 1 3,239.56

計 77 73,418.13 37 29,819.83 9 11,741.07

(5)今後の展望

今後は平成 25 年度に作成した「磐田市公共施設白書」や平成 27 年度末に完成する「磐田市

公共施設等総合管理計画」を活用し、市内公共施設の現状や方向性などを「見える化」し、ひ

とりでも多くの市民や利用者の皆さんに市内公共施設の整理整頓の必要性を理解していただ

くとともに、個別計画的な存在として策定された「磐田市学府一体校構想」や「磐田市幼稚園

保育園再編計画」などと連携しながら、今後の施設整備を推進していきます。

所管部署 磐田市秘書政策課文化・体育施設等整備室

参考URL等 http:///www.city.iwata.shizuoka.jp/

磐田市総合計画 磐田市公共施設見直し計画

磐田市公共施設白書

磐田市

公共施設等

総合管理計画

関連する個別計画 等

○ 磐田市幼稚園・保育園再編計画

○ 磐田市学府一体校整備構想

○ 磐田市消防団再編計画 等

磐田市

行政改革

大綱

調調整整

連連携携

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5 廃校からやまびこ荘へ(西伊豆町)

(1)概要

廃校を宿泊施設に転用した事例。地域から廃校の宿泊施設への利活用への要望を踏まえ「や

まびこ荘」として再生。西伊豆は「海」のイメージが強いですが、やまびこ荘のある大沢里地

区は豊かな森がある山村。山、川、だけでなく、海も含めた自然を丸ごと体験できる立地条件

にある宿泊施設となっており、源泉かけ流しの温泉、温泉プールと廃校を利用したノスタルジ

ックな雰囲気が利用者に喜ばれています。

(2)経緯

明治25年 7月 大沢里小学校できる

明治 40年 4月 現在の建物 大沢里尋常小学校校舎落成

昭和 17 年 在校生のピーク 241 名

昭和 48年 3月 大沢里小学校が仁科小学校との統合のため閉校し、65 年の歴史に幕を閉

じる(廃校時の生徒数は1年生1名 2年生4名 3年生5名 4年生

11 名 5年生 12 名 6年生 12 名)。廃校までに 1,572 名の卒業生を送

り出す

昭和 50年 8月 地元住民より大沢里小学校校舎存続の強い要望があり、山村振興による

宿泊施設にするため、旧大沢里小学校を改装に着手する

昭和 51年 7月 青少年宿泊施設「やまびこ荘」が開業する

昭和 54年 7月 豊富な温泉を利用して 25m5コースの温泉プールが完成

昭和 62年 3月 食堂棟が完成。1階に男女更衣室・トイレ 2階に調理室、食堂を整備

平成23年 4月 リニューアルオープン

昭和 20 年頃の大沢里小学校 平成 23 年改装前のやまびこ荘

所管部署 西伊豆町観光商工課観光商工係

参考URL等 西伊豆町 :http://www.town.nishiizu.shizuoka.jp/

やまびこ荘:http://nishiizu-yamabiko.com/

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6 駅周辺賑わい再生拠点施設整備(藤枝市)

(1)概要

① 背景・経緯等

藤枝市において、JR藤枝駅南口の旧市立病院跡地の有効活用や市立図書館の老朽化、狭

隘化等により図書館サービスの維持という公共施設を取り巻く課題がありました。一方で、

平成 21 年の富士山静岡空港開港等に向けてJR藤枝駅周辺の活性化を進めていました。

そこでこれらの課題の解決策として、民間活力を活用し、土地の有効活用と、図書館、民

間施設を併設することで「文化・学習サービスの提供」によりにぎわいを創出する「藤枝駅

周辺にぎわい再生拠点施設整備事業実施方針」を決定・公表しました(平成 18 年 8 月)。施

設の整備に当たっては、図書館という公共施設と民間施設との相乗効果を生み出すため、2

つの機能を一体とした複合施設として整備するという方針に基づき、施設の提案を民間事業

者から公募しました。

② 事例データ

地方公共団体 静岡県藤枝市

民間事業者 大和工商リース㈱(現:大和リース㈱)

所在地 静岡県藤枝市前島一丁目 7番 6号 他 4筆

敷地面積 約 10,980.42 ㎡

図書館 約 3,300 ㎡(民間所有のフロアを賃貸) 商業店舗:7,000 ㎡ シネマコンプレックス:2,700 ㎡ 駐車場:471 台 駐輪場:183 台

建物

藤枝市が、民間事業者に定期借地権(賃貸借期間 20 年)を設定 民間事業者が借地上に建設した商業施設を建設して所有 藤枝市は建物の 1フロアを賃借して図書館として使用

実施手法

地代:302 円/㎡(月額) 建物賃料:2,099,617,896 円(20 年間総額)

地代、建物賃料

平成 18 年 8 月 実施方針公表 平成 18 年 9 月 公募開始 平成 19 年 1 月 提案受付 平成 19 年 3 月 事業者決定 平成 21 年 2 月 供用開始

スケジュール

内部検討委員会 有 外部コンサルタント (独)都市再生機構 公募手続 有 官民対話の機会 有

事業内容の検討、 事業者選定等に係る手続

(2)効果

① 藤枝市及び住民にとっての効果

ア 親和性ある施設整備による賑わいの創出

年間来館者数が目標を大きく上回る 170 万人を超え、施設建設の効果は十分に発揮され

ていると考えます。これには、書店や学習施設、シネマコンプレックス等の図書館との親

和性の高い施設によるシナジー効果、集客効果が寄与しており、地元住民の利便性は向上

し、これらの施設の相乗効果による賑わいが創出されていると考えられます。

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イ 財政支出の縮減化及び平準化

藤枝市として自ら建物等の施設建設を行わず、かつ月次ごとの市有地賃料の受取、税収

や床賃貸料支払いによる財政支出の縮減及び平準化が図られています。

② 事例のポイント

事業者募集時に募集要項内で「提案に関する条件」を公表し、藤枝市が目指す施設のコン

セプトを開示しました。これにより、民間事業者は藤枝市の意向を把握した上で提案内容を

検討することが可能となりました。この結果、民間事業者から期待に見合う施設内容の提案

を受け付けることができたと考えられます。

市民にとってのニーズが藤枝市による図書館の保有ではなく図書館の利用にあることに

着意した点が本事例のポイントであると考えます。

所管部署 藤枝市都市建設部

参考URL等 http://www.city.fujieda.shizuoka.jp/toshi/chushinchi/1447731240877.html

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第4章 浜松市における資産経営の取組

浜松市では、平成 20 年度に資産経営課を設置し、保有する財産の見直しや処分・活

用、運営管理などに関するすべてを資産経営と位置づけ、平成 26 年度までを実施期間

として資産改革を実施しました。

1 浜松市資産経営推進方針

平成 21 年度に資産改革の基本的な考え方をまとめた「浜松市資産経営推進方針」を公表し

ました。

◆目指すべき資産のすがた

・保有財産(土地・建物)の縮減と効率的な施設運営 ・既存財産の戦略的な有効活用の推進 ・安全で快適に利用できる施設やサービスの提供

◎資産経営推進方針・実施方針

【個別方針】

①遊休財産の利活用に関する方針

②旧庁舎の利活用に関する方針

③中山間地域の廃校・廃園の利活用に関する方針

④市施設敷地の借用に関する方針

⑤施設長寿命化に関する方針

◆取り組みの4つの柱

・保有財産の最適化

・保有財産の利活用

・維持管理コストの最適化と環境対策

・活用財産の長寿命化

2 保有財産の 適化

(1)データ一元化の実施

公有財産台帳をベースに公共施設に関する品質・財務・供給等、マネジメントを実施するた

めに必要な情報の一元化と合わせて資産経営システムを導入しました。

(2)施設評価の実施(第1期施設評価・第2期施設評価)

平成 21 年4月に公表しました「浜松市資産経営推進方針」に基づき、一元化したデータを

活用し、2,001 施設のうち、公民館や博物館、ホールなど 736 施設を対象とした第1期施設評

価を実施しました。また、施設の課題や継続性等について整理し、残りの 1,265 施設について

は第2期施設評価として、平成 22 年度から平成 23 年度にかけて実施しました。

(3)公共施設再配置計画基本方針

・現状及び今後の公共施設が抱える様々な課題や取り巻く環境に柔軟に対応するため、主に平

成 21 年度に実施した第1期施設評価で「継続」と判断した施設を中心に公共施設再配置に

着手しました。

51

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・平成 22 年 9 月に、再配置の基本的な考え方を示した「浜松市公共施設再配置計画基本方針」

を定め、この方針を基に、多種多様な地域性を考慮しながら、施設そのもののあり方を踏ま

え、横断的・長期的な視野に立った再配置を検討し、平成 22 年度から 23 年度にかけて個別

計画を作成しました。なお、第2期施設評価については、既存の再配置計画等を踏まえ評価

しました。

(4)公共施設見直しのPDCA管理

・公共施設に関する見直しを着実に進めるため、施設に関する一元化データを毎年度更新し、

個別施設の利用状況や環境の変化などの把握することは重要なことであることから、施設カ

ルテ※1を作成しました。施設評価・再配置計画の結果に基づき、今後も継続する施設につい

ては適正化計画※2、廃止する施設については廃止計画※3を作成しました。

※1 建物を保有するすべての施設を対象として、一元化データを基に「施設カルテ」を

作成、PDCA評価ツールの一つとして活用。施設の基本情報や、運営情報、評価

結果等を記載

施設カルテ

※2 「適正化計画」は、再配置個別計画等により今後も継続するとした施設について、

ソフト事業の充実や維持管理経費の削減、利用者数の増加など個別施設ごとに目標

を立て、毎年度目標に対する達成度を評価し、施設の見直しや施設をより魅力ある

ものとしていこうとするもの

適正化計画

※3 再配置個別計画等により廃止するとした施設については、地域や利用者への説明、

条例手続きなど、施設の閉鎖に向けた手続き等に関する進捗管理を行うツールとし

て「廃止計画」を作成、アセットマネジメント推進課がその進捗状況をチェック

廃止計画

◎施設の削減状況

全体の 2,001 施設(平成 21 年度末)から 505 施設(簡易的な倉庫や観測施設など)を除

く 1,496 施設のうち、平成 26 年度までに 383 施設を削減することを目標として取り組んだ

結果、431 施設(約 22 万㎡)の削減

52

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3 保有財産の利活用

遊休財産の有効活用(処分・貸付)を進めるため、「資産経営推進基本方針」に基づき、こ

れまでの課題を含め、資産経営における視点での資産活用の考え方や、具体的な手法を定めた

「遊休財産活用に関する方針」を策定し、事務の効率化と着実な資産経営を推進。

(1)活用可能財産の把握

・活用可能財産を洗い出す目的で、平成 22 年度から普通財産(土地)の実態調査を行い、新

たな区分で分類し、処分や貸付が可能な活用可能財産を抽出しています。平成 23 年度から

は行政財産も含めて活用可能財産を抽出しています。

◎普通財産(土地)全体の状況

件数 面積(千㎡) 件数 面積(千㎡) 件数 面積(千㎡)

351 5,792 359 6,087 ▲ 8 ▲ 29

17 143 15 121 2

828 1,418 799 1,223 29 1

835 1,463 810 1,283 25 1

⑤ 活用可能 (172) (134) (163) (115) (9) (1

⑥ 要調整 (73) (468) (77) (472) (▲ 4) (▲ 4

⑦ 活用限定 (566) (857) (540) (693) (26) (16

⑧ その他 (24) (4) (30) (3) (▲ 6) (

2,031 8,816 1,983 8,714 48 1

H26 H25 増 減

① 事業財産

② 計画財産

③ 貸付財産

④ 遊休財産

内訳

合計

区 分

5

22

95

80

9)

)

4)

1)

02

※( )は④遊休財産の内数

※各分類の定義

事 業 財 産 事業林や隣接する行政財産と一体的に使用している財産

計 画 財 産 道路・建物整備などの事業計画で保有している財産

貸 付 財 産 国、県、自治会、個人等に貸付している財産

遊 休 財 産 上記以外の財産

活用可能財産 遊休財産のうち処分貸付が可能な財産

要 調整財 産 遊休財産のうち活用に向け分筆や地域等との調整が必要な財産

活用限定財産 遊休財産のうち法面等活用が限定される財産

そ の 他 公図不明、遊休財産のうち現地不明などの財産

◎行政財産のうち活用可能財産

件数 面積(㎡)

3 39,812

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(2)遊休財産の処分

・平成 22 年度から活用可能財産の洗出しを行なったことにより、平成 23 年度から以前よりも

多くの物件抽出が可能となった。また、平成 23 年度からは民間ノウハウを活用し市有地の

売却事務について包括的な委託を実施することにより、契約件数が増加し、効率的な事務の

執行が可能となりました。

(3)包括委託

・公有財産売却業務について民間事業者へ委託し、民間事業者の持つ専門的なノウハウと顧客

情報を活用し、買手の裾野を広げることにより売却物件数の増加、公有財産売却の競争性を

向上させることを目的として平成 23 年度から実施

・対象物件のうち、売却可能性調査において売出し可能とされた物件について、売出し準備が

整った物件から順次入札を行い、不調物件については専任媒介による随時売却を実施

・物件が売却された場合は委託料(媒介報酬)を支出

◎直近5カ年の一般競争入札の実施状況

年度 入札物件数 契約件数 契約面積(㎡) 契約額(千円)

H22 15 8 7,067.45 487,085

H23 40 13 37,456.17 1,684,841

H24 48 26 14,387.60 546,225

H25 63 14 9,156.15 516,880

H26 33 10 6,154.00 170,535

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4 施設長寿命化に関する取組

今後も長期的に活用していく施設について、「資産経営推進方針」の4つの柱の一つである

「活用財産の長寿命化」の考えに基づき、資産経営における視点から適正な施設改修の考え方

や手法を定めました。

(1)概要

・施設の計画的な改修による安全性と快適性の確保

・一元的な施設改修により限られた予算の中で効率的に改修実施

・今後必要な改修費用を把握することで、財政計画と整合した施設改修の検討

・柱や梁などの構造体が健全であるうちは、建替えではなく改修を行って施設を長寿命化

・施設長寿命化による長期的な財政負担の軽減と平準化

(2)施設長寿命化計画

対象施設 再配置個別計画等を基に、長期に活用が見込まれる施設

改修部位 屋根や外壁(建築物構造体の劣化を防止)、多額の経費を要する空調設備(財

政負担の平準化)

毎年度行う施設点検や建築基準法※で定められた3年ごとの定期調査によ

り、屋根や外壁の劣化状況を把握し、ひび割れなどが発見された建築物を

計画的に改修

改 修 計 画

の作成

※建築基準法第 12 条第 2項:定期調査を 3年に1回義務付け。法改正により平成 20 年4月1日か

ら、外壁の落下による事故防止を目的に、築後 10 年を超えた建築物の外壁の全面打診調査が、

定期点検の項目に加えられた(平成 25 年度末までに実施)。以降、前回の全面打診調査から 10

年を超える定期点検ごとに全面打診調査を義務付け。

(3)取組状況

【公共施設長寿命化推進事業】

・平成 23 年度より公共施設長寿命化のための改修工事を実施

・柱や梁などの構造体を長持ちさせるため、屋根や外壁の改修工事を計画

・財政負担の平準化を図るため、更新経費が大きい空調設備の改修をあわせて実施

・外壁打診調査や屋上防水調査で、劣化が進んでいると判断された(屋上防水はC、D判定、

外壁はD判定)施設への対応については平成 29 年度までに完了予定。

施工数(棟) 事業費 区 分

(単位:百万円) 屋根 外壁 空調設備

H23 386 - 35 2

H24 529 22 23 3

H25 751 14 33 11

H26 1,032 53 40 15

※H25 には、H24 繰越分を含む。

55

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5 これからの資産経営

浜松市は、これまで公共施設等のハコモノ資産を中心に資産改革を実施してきました。し

かしながら、人口減少や少子高齢化などの社会環境を考慮した場合、道路、橋りょうなどの

インフラ資産を含めた包括的な資産経営の取組を進める必要があります。

そのため、総務省から全国の地方公共団体に対して出された公共施設等総合管理計画の策

定要請への対応も含め、平成 27 年度以降の資産経営の取組を充実させるための羅針盤とし

て「浜松市公共施設等総合管理計画」を策定しました。

今後は、公共施設においては、施設カルテを中心としたマネジメントの強化により、短期

的な維持管理などの適正化や中長期的な総量縮減、民間活力の活用などの視点を持ちつつ、

毎年度のPDCAサイクルを実行し適正化を進めます。インフラ資産に関しては、大きくは

RBM(リスクベース・メンテナンス)の考え方により、各分野においてレベル区分別に管

理手法や水準を定め、予防保全の対象を明確にした上で、長寿命化計画(個別計画)を作成

し、メンテナンスサイクル(点検⇒診断⇒措置⇒記録)の実施と計画へのフィードバックに

より、実態に即した予防保全を進め、インフラ資産の長期にわたる安全性と効率性の確保を

目指すこととしています。

(参考:施設カルテを用いたPDCAサイクルのイメージ) (参考:インフラ資産の分類と適正化の考え方)

56

Plan Do Check Action

施設カルテ・現状データ・目標・課題・民間活力の導入

や複合化、統廃合等の方向性

※共同作成

施設カルテ・現状データ・目標・課題・民間活力の導入

や複合化、統廃合等の方向性

※共同作成

所管課

(資産経営推進会議)

など

(資産経営推進会議専門部会)

アセットマネジメント推進課

【年次更新】

・目標(改善)に向けた取組み

・目標(改善)に向けた取組み

・所管課評価の精査・予算、長寿命化事業等への反映・指定管理者導入施設への反映 など

・所管課評価の精査・予算、長寿命化事業等への反映・指定管理者導入施設への反映 など

・実績評価、課題を踏まえた改善

・実績評価、課題を踏まえた改善

結果報告

結果報告

◆個別施設や制度の見直しなどの改善案を提示し調整

取組みに対する支援

取組みに対する支援

・目標に対する実績評価

・課題分析

・目標に対する実績評価

・課題分析

Plan Do Check Action

施設カルテ・現状データ・目標・課題・民間活力の導入

や複合化、統廃合等の方向性

※共同作成

施設カルテ・現状データ・目標・課題・民間活力の導入

や複合化、統廃合等の方向性

※共同作成

所管課

(資産経営推進会議)

など

(資産経営推進会議専門部会)

アセットマネジメント推進課

【年次更新】

・目標(改善)に向けた取組み

・目標(改善)に向けた取組み

・所管課評価の精査・予算、長寿命化事業等への反映・指定管理者導入施設への反映 など

・所管課評価の精査・予算、長寿命化事業等への反映・指定管理者導入施設への反映 など

・実績評価、課題を踏まえた改善

・実績評価、課題を踏まえた改善

結果報告

結果報告

◆個別施設や制度の見直しなどの改善案を提示し調整

取組みに対する支援

取組みに対する支援

・目標に対する実績評価

・課題分析

・目標に対する実績評価

・課題分析

点 検

診 断

措 置

記 録(データベース)

●RBM(リスクベース・メンテナンス)

●長寿命化計画(個別計画)

(反映・見直し)

(基準・対象)(データ更新)

点 検

診 断

措 置

記 録(データベース)

●RBM(リスクベース・メンテナンス)

●長寿命化計画(個別計画)

(反映・見直し)

(基準・対象)(データ更新)

所管部署 財務部アセットマネジメント推進課

参考URL等 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/asset/asset/index.html

Page 60: 公共施設マネジメント事例集 - Shizuoka Prefecture€¦ · 第2部 県・市町の取組事例. ... 3 統合型gisによる市有財産管理(沼津市) ・・・・・14

白紙