赤外分光分析の基礎atekks.jp/wp-content/uploads/thermo_basicft-ir.pdf1.0 abs 621 797 1002...
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赤外分光分析の基礎
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
SIDアプリケーション部 モレキュラーグループ
2
• ポリマー材料の分析の例
1.ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)
2.赤外分光装置分析(FT-IR)
3.ラマン分光分析(Raman)
4.光電子分光分析(XPS)
5.液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)
6. ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
低沸点化合物、組成
モノマー、添加剤
はじめに - 分子構造評価のための分析手法
官能基、分子構造
ポリマー、硬化物
配向、結晶状態
表面状態
添加剤、組成
分子量
3
赤外光と分子の振動
4
分子は玉(原子)とバネ(結合)で模式的に表すことができ、それらは複雑に振動してる。
分子振動は、玉の重さとバネの強さからそれぞれ決まった振動数で振動をしている。(固有振動数)
分子振動 固有振動数
5
分子分光で利用する光(電磁波)
波長 (Micrometer)
核遷移 電子遷移 分子振動 核磁気共鳴
-5 -3 -1 1 3 5 7 9
回転
10 10 10 10 10 10 10 10
10 10 10 10 10 10 10 109 7 5 3 1 -1 -3 -5
波数 (Wavenumber)
X線
紫外 可視 近赤外
中赤外
遠赤外
マイクロ波
超短波
赤外領域
ラジオ波
分子振動は赤外光の波数と同期する
6
光と分子振動
光は同じ振動数の分子と共鳴しエネルギーを失う。分子振動スペクトルにより分子の振動数が分かる。
hν
吸収
分子振動 30THz
100%
0%
cm-1
吸収
分子振動スペクトル
光検出器
分子振動より遅い
振動数の光
分子振動より速い
振動数の光
分子振動と同じ
振動数の光
60THz
30THz
10THz 1000
7
多原子分子の振動 と 赤外スペクトル
酢酸エチルのモデル
CH3C(=O)OC2H5
Ethyl acetate
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1.0
Abs
orb
ance
1000 2000 3000 4000 Wavenumbers (cm-1)
2980C-H
伸縮振動
1743C=O
伸縮振動
1460C-H
変角振動
酢酸エチルの赤外スペクトル
8
面外変角(ひねり)
面外変角(縦ゆれ)
+ +
+-
振動モードの種類 (多原子分子 R-CH3, R-CH2)
多彩な振動モード
Scissoring
Twisting
Wagging
Rocking
伸 縮
面内変角(はさみ)
面内変角(横ゆれ)
対称伸縮
逆対称伸縮
Symmetric
Asymmetric
ρν s
ν as
δ
ω
τ
C
HH
変 角
9
• 近赤外領域 12,820~4,000cm-1
CH、OH、NH、CO 等の倍音、結合音。
吸収強度が弱く、厚い試料やファイバーによる測定に適しています。
• 中赤外領域 4,000~400cm-1
CH、OH、NH、CO 等の分子の基準振動。帰属表が充実し、定性に適しています。ライブラリが豊富です。
• 遠赤外(テラヘルツ)領域 400~10cm-1
分子の格子振動および回転モード。結晶性(無機、有機)、半導体などの分析に利用できます。
赤外領域 - 分光分析への利用
10
N N
変化あり 赤外吸収あり 変化なし 赤外吸収なし
赤外光吸収の強度
• 分子振動 → 遷移双極子モーメントの変化
• 吸収強度は遷移双極子モーメント変化の大きさ、方向に依存
HCl
11
539
697
756
1028
14521493
16012849
29243026
3060
3082
ポリスチレン
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Abs
621797
1002
1032
118214501583
1602
2904
3053
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Ram
an In
t
1000 2000 3000 4000 Wavenumbers (cm-1)
ラマンスペクトルと赤外スペクトルの比較
C-H伸縮
CC伸縮
CH2対称伸縮
CH2逆対称伸縮
CH2はさみ
1置換ベンゼン骨格振動
環の面外変角
C-H伸縮 CC伸縮
IRに特徴的
ラマンに特徴的二本に分かれる
CH面外変角
ラマンに特徴的
CH2はさみ
赤外
ラマン
12
赤外スペクトルからわかることは?
定性
定量
未知物質
既知物質
識別、推定
濃度
?
13
スペクトルパターンから、官能基の定性や化学構造の推定ができる。
ピーク位置 → 特性基
複数の吸収帯 → 部分構造
スペクトル → 化合物
赤外スペクトルからわかることは?
14
赤外分光測定から得られる
赤外スペクトル
15
赤外スペクトルの計算
BrBs
バックグラウンドシングルビーム
サンプルシングルビーム
振動数の領域のみ吸収
Br
サンプル
検出器に届く赤外光のエネルギー
シングルビーム
16
BsBr
=バックグラウンド
=T
%T = T x 100%
サンプル
赤外スペクトルの計算(縦軸 = 透過率)
=10
20
30
40
50
60
70
80
90
%T
1000 2000 3000 4000
Wavenumbers (cm-1)
・ 旧来のスペクトルハンドブックのフォーマット・ 日本薬局方、JISなどでのスペクトルは透過率
17
吸光度(Abs)=モル吸光係数(ε) x 試料濃度(C) x 試料の厚み(L)
Lambert-Beer の法則
Abs = -logT = -log BsBr
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
2.2
2.4
2.6
2.83.0
Abs
orba
nce
1000 2000 3000 4000
Wavenumbers (cm-1)
O.D.(光学密度)
と呼ばれることもあります。
赤外スペクトルの計算(縦軸 = 吸光度)
18
FT-IR装置の構造
19
赤外分光装置
一般分析用FT-IR
リサーチグレードFT-IR
ポータブルFT-IR
20
FT-IR (フーリエ変換型赤外分光光度計) 外観
試料室
検出器
出光ポート
乾燥剤インジケータ
入光ポート
出光ポート
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赤外光源干渉計
試料室
検出器参照レーザー
アパーチャー
FT-IR (フーリエ変換型赤外分光光度計) 内部構造
校正用サンプル減光フィルタ
22
赤外検出器
赤外光源
固定鏡
x 0 -x
ビームスプリッター
レーザー検出器
He-Ne レーザー
試料
移動鏡
市販のFT-IR分光計のほとんどが、マイケルソン型干渉計を採用しています。
マイケルソン型干渉計
FT-IRの光学系 模式図
23
固定鏡
ビームスプリッタ
x 0 -x
BF = BM位相差 = 0
検出器
干渉計
移動鏡
BF
BM赤外光源
干渉計の仕組み
+ =
位相差 無し
24
固定鏡
ビームスプリッタ
x 0 -x
位相差 = 1/4λ検出器
干渉計
移動鏡
BF
BM赤外光源
干渉計の仕組み
+ =
位相差 有り
1/8λ
25
固定鏡
ビームスプリッタ
x 0 -x1/4λ
位相差 = 1/2λ検出器
干渉計
移動鏡
BF
BM赤外光源
干渉計の仕組み
+ =
逆位相
26
干渉計の仕組み
1/2λλ
位相差
検出強度
27
検出されるシグナル強度
Volta
ge
光路差
λ
28
フーリエ変換
インターフェログラム(全赤外光の干渉光)は正弦波で、その積分をおこなうことにより、赤外光の各周波数に展開できる
Be (ν) =∫F(x)cos2πνxdx∞
-∞
Be (ν): スペクトル
F(x): 光路差xの関数であるインターフェログラム
29
インターフェログラム(干渉波)と赤外スペクトル
+| 0_
δ
Inte
nsity
(cm)
Inte
nsity
σ1
σ2
σ(cm-1)
δ (cm)+| 0
_Inte
nsity
Inte
nsity
σ(cm-1)
インターフェログラム スペクトル
δ| 0 +
_Inte
nsity
(cm)
σ
Inte
nsity
σ(cm-1)
フーリエ変換
さまざまな波長の光が干渉しあってインターフェログラムが形成されます。
30
インターフェログラム(干渉波)と赤外スペクトル
δ (cm)+| 0
_Inte
nsity
Inte
nsity
σ(cm-1)
インターフェログラム スペクトルフーリエ変換
FT-IR ソフトウエアのインターフェログラム
FT-IR 帰属表の使い方
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
SIDアプリケーション部 モレキュラーグループ
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主要な原子団の特性波数表
アルデヒド
カルボン酸
無水物
芳香族エステル
脂肪族エステル
芳香族ケトン
脂肪族ケトン
カルボニル
3置換体 対称
3置換体 非対称
3置換体 隣接
2置換体 パラ
2置換体 メタ
2置換体 オルト
1置換体
芳香族
3置換体
トランス-2置換体
シス-2置換体
ビニリデン
ビニル
アルカン
4000 3600 3200 2800 2400 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 4003800 3400 3000 2600 2200 1900 1700 1500 1300 1100 900 700 500
アルカン(枝分かれ)
イソチオシアネート -NCSイソシアネート -NCOアレン -C=C=C-チオシアネート -SCNイソニトリル -NCニトリル -CN
多重結合
アルキン
1置換体
2置換体
ss
ss m
mw
mm
アルケン
sssss
mmm
s ss
ss
s
m m ssm m
mmm
sm
m m
mmmmmmm
wwwwwww
mmmm
mm
mmmmmmm
s ss
s ss s
ss
s s
mm
ss
ss
s sss
ss
ss
33
第一アミン
第二アミン
アミン
第三アミド
第二アミド
第一アミド
アミド
ヨウ化物
臭化物
塩化物
フッ素化物
ハロゲン化物
C-O、O-H基
4000 3600 3200 2800 2400 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 4003800 3400 3000 2600 2200 1900 1700 1500 1300 1100 900 700 500
カルボキシレート -COO-飽和エーテル
不飽和エーテル
エーテル(混合体)
エポキシ
第一アルコール
第二アルコール
第三アルコール
アンモニウム
硝酸塩
炭酸塩
リン酸塩
硫酸塩
シリコン化合物
リン化合物
硫黄化合物
無機化合物
s s
m w
ss
s s
sss
ss
s
mmm
ss
mm
mm
m mss
sm
mm
m sw
m
w s mw s
w s ss m
ss s
mm m
m
mm
主要な原子団の特性波数表
34
吸収強度の記号
南江堂刊 赤外線吸収スペクトル - 定性と演習 - より引用
10.375 ~ 10.125 ~ 0.3750.025 ~ 0.1250 ~ 0.025
規格化すると・・・
35
赤外スペクトルを読むためのテクニック
• スペクトルを 1500cm-1 で「2分割」する。• 「伸縮振動」と「変角振動」領域のおよその分岐点(一部例外を除く)。
• 2000cm-1 以下を2倍に領域拡大するプロット法がソフトに採用されている。
• 1500cm-1 で分割した領域を、さらに「7つ」に分ける。• 代表的な官能基グループで分ける。
• 吸収強度が強く特徴的なピークを、まず覚える。
• 伸縮振動と変角振動の「組み合わせパターン」を覚える。
• 「パターン」はおよそ決まっている。
• 代表的なポリマーの「化学構造」を想像しながらチャートを見る。
• 特に「異物」は、ポリマー材料自身、変性物、添加剤がほとんど。
36
波数(cm-1 )
4000 3600 3200 2800 2400 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400
-OH-NH
-CH2--CH3
-C≡N-N=C=O
C=OC=C
C-F
C-O-CSi-O-Si
C-Cl
CH2O
CH~
free-OH
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦
=CH-CH2--CH3
Amide-I(C=O)
Amide-II(NH)
伸縮振動
変角振動
官能基領域 指紋領域
赤外スペクトルを読むためのコツ - 領域を分ける
37
① 4000~3200cm-1 水酸基、アミド基
• OH基、NH基
• OH基は、およそ3400cm-1にピークトップのあるブロードな吸収帯となって現れる。
• 会合していないOH基は、3700~3650cm-1付近に、鋭いピークとなって現れる。シラノール基(Si-OH)やタルク、アスベストなど無機添加剤に含まれる非会合OH基がこの位置に現れる。
• NH基は、およそ3300cm-1にピークトップを持つブロードな吸収帯となる。アミドやウレタンで観察される。
OH伸縮セルロース
Wavenumbers (cm-1)
3410
Abs
.
4000 3600 3200 2800
鉱物(アスベスト)
3692
3440
OH伸縮
Free OH伸縮
Abs
.
Wavenumbers (cm-1)4000 3600 3200 2800
ポリアミド
3297
NH伸縮
Abs
.
Wavenumbers (cm-1)4000 3600 3200 2800
38
② 3200~2800cm-1 炭化水素(不飽和、飽和)
• CH結合を持つ官能基。
• 3100~3000cm-1には、=CH基(不飽和)、ベンゼン環φCH、エポキシ基CHが現れる。
• 3000cm-1以下の領域には、脂肪族炭化水素が強い吸収となって現れる。
• 2960, 2870cm-1付近:CH3基2920, 2840cm-1付近:CH2基(これら4本のピークにより長鎖脂肪酸、末端メチルの割合が推定される)
283928
71
2919
2952
ポリプロピレン
2900 3000 3100 3200 Wavenumbers (cm-1)
3007ブタジエン
ホモポリマー
2900 3000 3100 3200 Wavenumbers (cm-1)
=CH伸縮
CH3非対称 CH2非対称
CH2対称
CH3対称
Abs
.A
bs.
39
③ 2800~2000cm-1 ニトリル、イソシアネート
• ニトリル、イソシアネート基
• 2570cm-1付近:チオール基(非常に弱い)
• 2260~2200cm-1:-C≡N基、-N=C=O基
• 2100cm-1付近:Si-H基
• バックグラウンドとして、2400~2300cm-1に炭酸ガスの強い吸収が現れる。
2237ABS 樹脂
2200 2400 2600 2800 Wavenumbers (cm-1)
2263
.0
イソシアネートモノマー
2200 2400 2600 2800 Wavenumbers (cm-1)
-C≡N伸縮
-N=C=O伸縮
Abs
.A
bs.
40
④ 2000~1500cm-1 含酸素・含窒素化合物、芳香族
• カルボニル基• 1900~1760cm-1:酸無水物のC=O基(2本),
ポリカーボネート• 1760~1720cm-1:エステル、過酸化物、炭酸塩• 1720~1710cm-1:アルデヒド、ケトン
• ベンゼン環ならびに不飽和C=C• 1640~1610cm-1:不飽和C=C基• 1620~1580cm-1:ベンゼン環骨格• 1500cm-1付近:ベンゼン環骨格(赤外で強い)
• アミド基• 1650(アミドI C=O)と1540cm-1(アミドII N-H)• ポリアミド、タンパク質(皮膚、毛髪)など。
• 窒素化合物• 1650cm-1付近:N=O基• 1550cm-1付近:メラミン、イミンに含まれるC=N
1784
1864
コハク酸無水物
1600 1700 1800 1900 2000 Wavenumbers (cm-1)
1729フタル酸エステル
1600 1700 1800 1900 2000 Wavenumbers (cm-1)
154216
40
ナイロン
1600 1700 1800 1900 2000 Wavenumbers (cm-1)
ポリスチレン
1500 1600 1700 1800 1900 2000 Wavenumbers (cm-1)
1602
1494
C=O伸縮
C=O伸縮
Φ骨格Φ骨格
アミドIアミドII
C=O伸縮
Abs
.A
bs.
Abs
.A
bs.
41
• エステルのC=O基は、カルボン酸やアルデヒドより高波数側で、酸無水物よりも低波数側となる。
• C=Oのピーク位置(高波数>低波数)の関係はおよそ次の通り。
酸無水物(2本)>ラクトン・飽和エステル>不飽和・芳香族エステル>カルボン酸>アルデヒド>アミドⅠ
④ 2000~1500cm-1 エステル、他 C=O
酸無水物1900-1750
ラクトン・飽和エステル1750-1730
カルボン酸1720-1680
Wavenumbers (cm-1)
不飽和・芳香族エステル1730-1715
アルデヒド1700-1680
アミドⅠ1650
高波数 ← → 低波数
42
⑤ 1500~1300cm-1 脂肪族炭化水素、無機イオン
• 脂肪族炭化水素(飽和、不飽和)。3200-2800cm-1の領域と「対」となって現れる。
• 1460cm-1付近:
飽和脂肪族の -CH2、-CH3基 変角
• 1420~1410cm-1
不飽和脂肪族の=CH基 変角
• 1380cm-1付近:
飽和脂肪族 -CH3基 変角
• 無機物ではフィラーとして用いられる炭酸カルシウムのCO3
2- ピークが、1420cm-1付近に、幅の広いピークとして現れる。
1368
1463
1472
高密度ポリエチレン
1350 1400 1450 1500 Wavenumbers (cm-1)
1376
1456
ポリプロピレン
1350 1400 1450 1500 Wavenumbers (cm-1)
アクリレート系光硬化樹脂
1350 1400 1450 1500 Wavenumbers (cm-1)
1407
1450
-CH2
-CH3
-CH2-CH3
-CH3
=CH
-CH2-CH3
Abs
.A
bs.
Abs
.
43
⑥ 1300~900cm-1 含酸素化合物、無機化合物
• 伸縮振動ピークが混在する。エステルやアルコール、セルロースのC-O伸縮振動の他、無機化合物の吸収帯。
• 有機化合物 (エステルでは1700-1800cm-1と対)
• 1300~1250cm-1:C-O-C(芳香族系)• 1275~1150cm-1:C-O-C(不飽和脂肪族系)• 1200~1100cm-1:C-O-C(飽和脂肪族系)• 1100~1000cm-1:C-OH• 990~ 960cm-1:R’CH=CHR(トランス)
• 無機化合物• 1300cm-1付近:C-F(フッ素ゴム、潤滑剤)• 1250~1000cm-1:S=O スルホン酸エステル• 1200~1000cm-1:P-O リン酸エステル• 1100~1000cm-1:Si-O-Si シロキサン
(Si-C:1260, 800cm-1と対) 潤滑剤、ゴム
1102
1129
1265
1716
PET樹脂
1000 1200 1400 1600 1800 Wavenumbers (cm-1)
1149
.2
1732
PMMA樹脂
1000 1200 1400 1600 1800 Wavenumbers (cm-1)
1109ポリエチレングリコール
1000 1200 1400 1600 1800 Wavenumbers (cm-1)
1020
1089
1261
シリコーンゴム
1000 1200 1400 1600 1800 Wavenumbers (cm-1)
C-O-CC=O
C=O C-O-C
C-OH
Si-O-Si
Abs
.A
bs.
Abs
.A
bs.
44
• エステルC-O-Cの逆対称伸縮振動ピーク(強度大)は、C=Oの高波数→低波数の位置関係とおよそ逆の傾向にある。
• ピーク位置(高波数>低波数)の関係は、およそ次の通り。
芳香族エステル>不飽和エステル>ラクトン・飽和エステル
⑥ 1300~900cm-1 エステル C-O-C
芳香族エステル1300-1250付近
Wavenumbers (cm-1)
不飽和エステル1275-1150付近
ラクトン・飽和エステル1200-1100付近
高波数 ← → 低波数
45
⑦ 900~400cm-1 脂肪族・芳香族、ハロゲン
• 有機物の面外変角振動ピーク、ポリ塩化ビニルのC-Cl、無機化合物の吸収帯が観察される。
• 920~800cm-1:エポキシ基
• 850~800cm-1:=CH2(アクリレート化合物)
• 800~700cm-1:ベンゼン環(強くて鋭い)
• 730~700cm-1:飽和炭化水素(鋭いピーク。ポリマーでは密度により枝分かれ)
• 720~650cm-1:R’CH=CHR (シス)
• 700~600cm-1:C-Cl(ポリ塩化ビニル)
86291
6
エポキシ接着剤
500 600 700 800 900 1000 Wavenumbers (cm-1)
729PBT樹脂
500 600 700 800 900 1000 Wavenumbers (cm-1)
718
728
高密度ポリエチレン
500 600 700 800 900 1000 Wavenumbers (cm-1)
615
636
684
ポリ塩化ビニル
500 600 700 800 900 1000 Wavenumbers (cm-1)
C-O-C(エポキシ)
Φ-H変角
C-H変角
C-Cl
Abs
.A
bs.
Abs
.A
bs.
FT-IR 測定手法
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
SIDアプリケーション部 モレキュラーグループ
47
透過法
最も基本的な分析法
48
透過法(固体)
赤外光を試料に照射し、透過光を検出する最も基本的な測定方法。試料がフィルム状の場合、そのまま測定できる。粉体ではメノウ乳鉢でKBrと混合、粉砕後、錠剤を成型し、測定をおこなう。バルク状であればヤスリやカッター等で細かく削りだし、錠剤を作る
スペクトルが飽和しない試料の厚みは、物質の吸光係数にもよるが約20μm以下にする必要がある
試料検出器
赤外光源 KBr錠剤成型器
ヌジョール
49
透過法(液体)
液体を測定するには液体セルを用いる。セルには固定セルと組み立てセルがある。固定セルは定量用としてあらかじめ光路長が一定に設計されており、セルの分解はできない。組み立てセルはスペーサーで厚みを制御でき、分解洗浄が容易である。スペーサーの厚み(光路長)は1~0.015mm程度である。試料によっては、この最小厚みでもスペクトルが飽和する場合があり、その際はスペーサーを用いずに、窓板の間に適量の液体を滴下し、薄くのばしてやれば良好なスペクトルが得られる。
@ 窓板の材質は試料に対応しなければならない。水系、アルコール系にはBaF2,CaF2を用いる。 KBrでは潮解する。非水系はKBr、その他のどの窓板を用いても良い。ただし、pHには注意が必要で、耐酸性耐アルカリ性のウインドウを選択する必要がある。
組立て式液体セル
50
透過法 液体セルの分析例
10.0% Sodium Benzoate in H2O5.0% Sodium Benzoate in H2O2.5% Sodium Benzoate in H2O
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0A
bsor
banc
e
1000 2000 3000 4000 Wavenumbers (cm-1)
水中のSodium Benzoate
H2O Sodium Benzoate
51
液体セル(透過) : シリコーンオイル
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
Abs
orb
ance
500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Wavenumbers (cm-1)
スペクトルは、縦軸が一定以上に大きくなると飽和し、スペクトルが変形するので注意が必要。液体セルやフィルム試料など試料の厚さが均一な場合は、吸光度で 縦軸が1.5以下に調整する。厚さが不均一な試料、顕微鏡の分析の場合などは、吸光度で 縦軸が 1.0 以下になるよう、試料の厚みや濃度を調整する。
透過法 試料の厚さ スペクトルの飽和
飽和している領域シリコンオイルを液体セル(透過)で分析
組立て式液体セル
試料の厚さが均一な場合の飽和の目安
不均一な場合
52
ATR法(一回反射ATR)
現在最も利用されている分析法
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ATRの特徴
透過 反射拡散
反射ATR RAS
粉末 ◎ × ◎ ○ ×
塊状(硬) △ △ △ ○ ×
塊状(柔) ○ × △ ◎ ×
フィルム ◎ △ × ◎ ×
繊維 ○ × △ ○ ×
液体 ○ △ △ ◎ △
水溶液 △ × × ○ ×
金属上膜 × ○ △ ○ ◎
有機物上膜 △ × △ ○ △
表面層 △ △ ○ ◎ △
黒物 △ △ ○ ○ ×
◎ 最適、○ 適している、△ 測定可能、× 不適
試料の形状と測定手法の対象FT-IRには様々な分析手法があるが、ATR法は、
試料の形状によらず分析が可能であることや、熟
練者でなくても 良好なスペクトルを安定して得られ
ることから 現在最も利用率の高い分析手法となっ
ている。
一回反射アクセサリ各種
54
一回反射ATR と 多重反射ATR
検出器
プレッシャーデバイス
クリスタル
サンプル
検出器 赤外光赤外光
一回反射ATR
・ 分析可能な試料形状が豊富
フィルム、粉末、繊維、成形品、液体
・ 試料とクリスタルの密着率が良い
・ 再現性が良い
・ 多くのクリスタルオプション
ダイヤモンドクリスタル対応
多重反射ATR
・ 高感度(分析深さが深い)
・ 入射角が多様 30、45、60度
・ シンプルな光学系(低価格)
55
一回反射ATRによる分析
繊維がクリスタルに密着する様子クリスタル
繊維片
Durascope Diamond ATR
繊維状異物は単繊維で分析。
Abs
orba
nce
1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Wavenumbers (cm-1)
ナイロン 6/6 単繊維(衣服など)
Nicolet iS5 + iD5
56
ATRの分析深さ
クリスタル屈折率
入射角
波 数 (cm-1)主なアクセサリ
4000 3000 2000 1600 1300 1000 650 400
ダイアモンド
ZnSe2.4
45 0.50 0.67 1.00 1.25 1.54 2.01 3.34 5.01 Orbit, iTR
DuraSamplIR, GoldenGate
60 0.28 0.37 0.55 0.69 0.85 1.11 1.84 2.77
Si 3.4
30 0.50 0.66 0.99 1.24 1.53 1.99 3.32 4.97 スライド式ATR(顕微)
45 0.21 0.28 0.42 0.53 0.65 0.85 1.41 2.12 Orbit, iTR,
60 0.16 0.21 0.31 0.39 0.48 0.63 1.05 1.57
Ge 4.0
27 0.39 0.52 0.78 0.97 1.20 1.55 2.39 - Tip-ATR(顕微)
30 0.30 0.40 0.60 0.75 0.93 1.20 1.85 -スライド式ATR(顕微),
Seagull (*1)
45 0.17 0.22 0.33 0.41 0.51 0.66 1.02 -Orbit, iTR,
OMNISampler,
60 0.13 0.17 0.25 0.32 0.39 0.51 0.78 - Seagull (*1)
65 0.12 0.16 0.24 0.30 0.37 0.48 0.74 - GATR
試料の屈折率 (n1) = 1.5、(*1) 角度可変型
212
21 )/(sin
1n2 nn
dp−
⋅⋅
=θπ
λATRの滲み込み深さの求め方
dp = 滲み込み深さn1 = クリスタルの屈折率n2 = 試料の屈折率λ = 赤外線の波長
深さの単位 μm
FT-IR ライブラリ検索のコツ
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
SIDアプリケーション部 モレキュラーグループ
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検索のテクニック
• 領域の指定(注目する領域を選択、あるいは除外)
⇒ 既知の不純物や窓材の影響を事前に除去します。
• 測定手法によるスペクトルの補正
⇒ サーチ結果に及ぼす影響 (大 > 小)1) ピーク位置 > ピーク強度 ・・・ 手法(透過・ATR・反射)に
依存 ⇒ スペクトル補正2) S/N > ベースライン
• ライブラリスペクトルとの差(再検索)
⇒ 混合物スペクトルから検索スペクトルを差し引きます。⇒ 分離したスペクトルを再検索、他の成分が予測できます。
• アルゴリズムの選択
またはデータベースの選択
⇒ コリレーション ベースライン、オフセットの影響を除去。殆どの場合に有効
⇒ 絶対微分法 ピークの位置に重点。ピーク強度の差による影響を除去
59
ライブラリ検索の例 差スペクトル
組立て式液体セル
ヒット率:83.09 Cyclohexane
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Abs
ヒット率:60.71 Decahydronaphthalene
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Abs
ヒット率:54.72 Hexadecane
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Abs
1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
Wavenumbers (cm-1)
未知物質
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
Abs
orb
ance
1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Wavenumbers (cm-1)
ライブラリ検索結果 シクロヘキサンがヒットした。しかしスペクトルを比較すると一致しない部分が見られる。
液体セルで分析された未知物質のスペクトル
60
未知物質 Cyclohexane 差スペクトル
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
5
6
Abs
orb
ance
1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
Wavenumbers (cm-1)
差スペクトル Toluene
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
2.2
2.4
Abs
orb
ance
1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Wavenumbers (cm-1)
差スペクトル
0.45
0.50
0.55
0.60
0.65
0.70
0.75
0.80
0.85
0.90
0.95
1.00
1.05
1.10
Abs
orb
ance
1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Wavenumbers (cm-1)
ライブラリ検索の例 差スペクトル
組立て式液体セル
2 ノイズ領域をブランクに処理
3 再度ライブラリ検索
1 ライブラリ検索と差スペクトル
再ライブラリ検索の結果、未知物質は、シクロヘキサンと トルエンの混合物であることが分かった。
未知物質と ライブラリ検索で得られたシクロ
ヘキサンを差スペクトルすることで、一致しない物質のスペクトルを作成した。ただし、ピークの飽和などの影響により、差し引きのノイズが発生したため、その領域をブランクに処理し、再度ライブラリ検索を行った。
61
多成分同時検索ソフトウエア
3スペクトルの合成で一番ヒット率が高かった組み合わせ
分析したスペクトルと、3スペクトルの合成スペクトル
多成分同時検索した結果OMNIC Spectaソフトウエア
62
ゴム材料の分析
サンプルは ゴム
複数の添加剤の使用が予想される。
本体ATRで測定
ゴムのATRスペクトル
通常のライブラリ検索では、必要としている材料についての情報のすべてが得られない。
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サーチ条件を設定し、検索を開始するだけで複数成分の定性結果が得られる
測定スペクトル
検索結果の合成スペクトル
成分1:ポリイソプレン
成分2:ステアリン酸塩
多成分サーチ結果(1~ 5位)
成分3:タルク
多成分同時サーチソフトウエア ゴム材料を3成分同時サーチ
あらゆる組み合わせが試されるため、熟練者でも気がつかない真実が浮き彫りになることもある。
64
多成分サーチ画面
サーチ結果にスペクトル混合比が表示されるため、半定量的な利用も可能
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ご清聴ありがとうございました
お問い合わせ先
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
Webページ http://www.thermoscientific.jp/
Webページでは、最新の装置の情報に加え技術資料のダウンロードや 過去に行ったウエブセミナーの聴講が出来ます。
66
質疑応答