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1990年に ECL (Enhanced ChemiLuminescence) ウェスタンブロッティングシステムが登場して以来、ECL検出システムのポートフォリオは広がり、ルーチンのタンパク質検出から Amersham ECL Plex を用いる蛍光多重検出までの幅広いアプリケーションに対応可能となりました。ECL検出システムを用いることで、放射性同位体を使わずに、迅速、高感度かつフレキシブルなタンパク質検出が可能です。
Amersham ECLファミリーに新しく加わった ECL Primeは、ECL Plusと比べて 2倍以上の感度を示します。ECL Primeはシグナルの安定性が大きく向上したためにくり返し検出が可能となり、1回の実験で複数のブロットを簡単に処理できるようになりました。さらに、ECL Primeで得られるシグナル強度は ECL Plusと比較して3~ 5倍に増加しているため、一次抗体や二次抗体の濃度を ECL Plusの場合の 1/3に希釈しても検出が可能で、バックグラウンドを低く抑え、高価な抗体の使用量を減らすことができます。
ECL Prime (図 1) では、検出原理は ECL Plusと変わらないまま、その利点が強化されています。タンパク質濃度を幅広いダイナミックレンジで高感度、安定かつ正確に定量可能である一方で、高価な抗体の使用量は減らすことができる検出系となっています。
• シグナル強度と感度が高く、一次抗体および二次抗体の希釈倍率を高くしても検出が可能です。
• シグナルの安定性が高いためくり返し検出が可能です。多サンプル実験に適しており、反応操作終了から検出までの時間を有効に利用できます。
• ImageQuant LAS 4000シリーズ (CCDイメージャー) を用いた画像処理に適していますが、Amersham Hyperfilm ECLもご利用いただけます。
• Rainbow 分子量マーカーおよび Amersham ECL DualVue ウェスタンブロッティング用マーカーをご利用いただけます。
• Amersham Hybond-P (PVDF) メンブレンでの使用に適していますが、Amersham Hybond-ECL (ニトロセルロース) メンブレンもご利用いただけます。
Amersham ECL Primeウェスタンブロッティング試薬
GE HealthcareLife Sciences
Data file ウェスタンブロッティング検出試薬
図 1 Amersham ECL Prime:GEヘルスケアが提供する新しい高感度化学発光ウェスタンブロッティング試薬です。
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タンパク質の化学発光検出ECL Primeはウェスタンブロッティングによる微量タンパク質の検出を可能にします。発光シグナル (化学発光、図 2) は検出されたタンパク質量に比例するため、1枚のブロットから幅広いタンパク質濃度範囲を対象に正確なデータを得ることができます。
西洋ワサビペルオキシダーゼ (HRP) によりルミノールが酸化されると、波長 425 nmの化学発光が生じます。ECL Primeは試薬中に酵素のターンオーバーを促進するエンハンサーが含まれているために他の化学発光試薬と比べて性能が向上しており、シグナルの強度と持続時間が増加します。
ウェスタンブロッティングにおけるECL PrimeECL Primeはウェスタンブロッティングの検出段階 (図3) で使用しますが、その上流プロセスにも影響します。たとえば、ECL Primeによって検出する場合は、一次抗体の希釈倍率を高くすることができます。これは経済的に望ましいだけでなく、バックグラウンドシグナルを抑えることができ、目的タンパク質と一次抗体の弱い特異的相互作用を検出する可能性を向上させます。ECL Primeの検出感度は非常に高いため、非タンパク質結合部位をブロックするための注意および、途中のすべての洗浄ステップを十分に行うことが必要です。
HRP
Amersham ECL Prime
化学発光
一次抗体
ターゲットタンパク質
西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識二次抗体
図 2 Amersham ECL Prime試薬と二次抗体に結合した HRPとの反応。Amersham ECL Prime試薬は HRPによって高感度分子に変換されます。この高感度分子はさらに酸化を受けると励起され、減衰しながら発光が起こります。
サンプル
ゲル電気泳動
マーカー
メンブレン
ブロッキング試薬
一次抗体
二次抗体
検出試薬
検出
解析
Amersham ECL DualVueマーカーRainbow分子量マーカー
Amersham Hybond-PAmersham Hybond-ECL
Amersham ECL Primeブロッキング試薬
Amersham ECL HRP標識二次抗体
Amersham ECL Prime
ImageQuant LAS 4000シリーズAmersham Hyperfilm ECL
ImageQuant TL software
図 3 ウェスタンブロッティングにおける Amersham ECL Primeの使用手順。ウェスタンブロッティングの実験は、一般的に上記の手順で行われます。GEヘルスケアは各実験ステップに対応する製品を用意しており、ウェスタンブロッティング全体を通して最適なソリューションを提供します。
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ECL Prime: 性能特性
感度および精度
ECL Primeは ECL Plusと比べて感度が高く、広いタンパク質濃度範囲で線形的なシグナル応答が得られます。
図 4に、ECL Primeは露光時間 75秒、ECL Plusは露光時間 3分で得られた画像を示します。ECL Primeは感度が 4倍に向上し (図 4の検出限界の項を参照)、ダイナミックレンジが改善されているため、同じブロット上にある多量のタンパク質と微量タンパク質の両方を1回の反応で検出・定量することができます。
シグナルの安定性
ECL Primeによって得られる化学発光シグナルは安定性が非常に高く、サンプル中の目的タンパク質が微量な場合も、試薬の添加から 3時間後でも十分なシグナル強度が持続します。このためくり返し検出が可能となり、反応操作終了から解析までの時間を有効に利用できます (図 5および表 1)。ECL Plusを使用した場合は 1時間後にシグナル強度は15%となりましたが、ECL Primeを使用した場合は 1時間後に約 60%のシグナル強度が持続していました。
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
Transferrin (ng)
Inte
grat
ed In
tens
ity (×
10-4
)
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
Amersham ECL Prime 2.5 ng 2.4 pg
0
400
800
1200
1600
2000
Transferrin (ng)
Inte
grat
ed In
tens
ity (×
10-4
)
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
Amersham ECL Plus 2.5 ng 9.8 pg
図 4 トランスフェリンを 2.5 ngから段階的に 2倍希釈した溶液を Amersham ECL Prime (上図) および Amersham ECL Plus (下図) でウェスタンブロッティングにより検出しました。サンプルはAmersham Hybond-P (PVDF) メンブレンにブロットし、画像解析には ImageQuant LAS 4000miniシステムを使用しました。
Time (min) Amersham ECL Prime Amersham ECL Plus
0
30
60
90
120
150
180
2.5 ng 4.9 pg 2.5 ng 9.8 pg
図 5 Amersham ECL Prime試薬の添加直後から 3時間後までのシグナル強度を Amersham ECL Plus試薬と比較しました。
表 1 試薬添加後 3時間後までのシグナル強度。Amersham ECL Primeおよび Amersham ECL Plusのいずれもバンド 4 (トランスフェリン 0.312 ng、赤枠) に関して解析を行い、各時点での露光時間は 3分としました。
測定時点 (反応●分後)
シグナル相対強度 (0分後を 100とする)
Amersham ECL Prime
Amersham ECL Plus
0 100 100
30 76 29
60 61 15
90 42 7
120 32 5
150 24 3
180 19 2
サンプル:トランスフェリンを 2.5 ngから段階的に 2倍希釈した溶液メンブレン:Amersham Hybond-Pブロッキング試薬:Amersham ECL Primeブロッキング試薬 (Amersham ECL Prime) および 5%スキムミルク (Amersham ECL Plus)一次抗体:ウサギ抗トランスフェリン (3,000倍希釈)二次抗体:HRP標識抗ウサギ IgG (30,000倍希釈)検出:Amersham ECL Prime / Amersham ECL Plus画像処理:ImageQuant LAS 4000mini (Amersham ECL Primeは露光時間 75秒、Amersham ECL Plusは露光時間 3分)検出限界:2.4 pg (Amersham ECL Prime)、 9.8 pg (Amersham ECL Plus)ダイナミックレンジ:3.0桁 (Amersham ECL Prime)、 2.4桁 (Amersham ECL Plus)解析:ImageQuant TL 7.0ソフトウェア
サンプル:トランスフェリンを 2.5 ngから段階的に 2倍希釈した溶液メンブレン:Amersham Hybond-Pブロッキング試薬:5%ウシ血清アルブミン (BSA) の PBS-T溶液一次抗体:ウサギ抗トランスフェリン (3,000倍希釈)二次抗体:HRP標識抗ウサギ IgG (30,000倍希釈)検出:Amersham ECL Prime / Amersham ECL Plus画像処理:ImageQuant LAS 4000mini (露光時間 3分)解析:ImageQuant TL 7.0ソフトウェア
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抗体の節約
ECL Primeを使用すると、抗体の希釈倍率を高くしても少量のタンパク質を検出することができます (図 6)。ECL Primeを 10,000倍希釈 (一次抗体) および 50,000倍希釈 (二次抗体) で使用した場合と、ECL Plusを 3,000倍希釈(一次抗体)および 30,000倍希釈(二次抗体)で使用した場合のシグナル強度および検出限界は同等でした。
製品との適合性
ECL Primeは、GEヘルスケアが提供する Hybond-Pメンブレンなどのウェスタンブロッティング用製品とともに使用した場合に至滴化していますが、ウェスタンブロッティング実験で一般に使用される他の製品にも対応しており、Hybond-ECLニトロセルロースメンブレンだけでなく、ECL Prime用として特に推奨されていない分子量マーカーやブロッキング試薬を使用した場合にも良好な結果が期待できます。
細胞溶解液中に含まれるさまざまな濃度のターゲットタンパク質の相対定量
ECL Primeをダイナミックレンジが広い ImageQuant LAS 4000miniなどの CCDイメージャー画像解析装置と組み合せれば、同一ブロット上に存在するハウスキーピングタンパク質の濃度を標準化することによって、ターゲットタンパク質を高い信頼性で相対定量可能です (図 7)。ハウスキーピングタンパク質の発現量をモニターすることにより、各レーンに等量の全細胞溶解液がアプライされたことを確認できます。
Ab dilution Amersham ECL Prime Amersham ECL Plus
Primary Secondary1:3000 1:30 000
1:5000 1:30 000
1:7000 1:50 000
1:10 000 1:50 000
156 ng 156 ng10 µg10 µg
図 6 段階的に 2倍希釈した NIH 3T3全細胞溶解液中のβカテニンを、ウサギ抗βカテニンおよび HRP標識抗ウサギ IgGを用いてウェスタンブロッティングにより検出した結果を Amersham ECL Primeおよび Amersham ECL Plusに関して比較しました。
β- catenin
Actin (houskeeping protein)
pSTAT3
Actin(houskeepingprotein)
0
0.5
1
1.5
2
2.5
1 2 3 4 50
0.2
0.40.60.8
11.2
1.4
1 2Lysate sampleLysate sample
Expr
essi
on re
lativ
e to
act
in
3 4 5
β- catenin pSTAT3
図 7 (A) 5種類の NIH 3T3細胞溶解液中に含まれるβカテニンおよび (B) 5種類の HeLa細胞溶解液中に含まれる Tyr705-リン酸化 STAT3 (pSTAT3) のウェスタンブロッティング検出。同一の細胞溶解液中に含まれるアクチン濃度を 1枚のブロット上で標準化することによってターゲットタンパク質を相対定量しました。目視ではβカテニン量が同じに見えますが、Amersham ECL PrimeおよびImageQuant LAS 4000miniを用いた解析ではタンパク質濃度が明らかに異なることがわかります。
サンプル:NIH 3T3細胞溶解液を総タンパク質量 10 μgから段階的に 2倍希釈した溶液メンブレン:Amersham Hybond-Pブロッキング試薬:5% BSAの PBS-T溶液一次抗体:ウサギ抗βカテニン (3,000~ 10,000倍希釈)二次抗体:HRP標識抗ウサギ IgG (30,000~ 50,000倍希釈)検出:Amersham ECL Prime / Amersham ECL Plus画像処理:ImageQuant LAS 4000mini (一次抗体の希釈倍率が 3,000または5,000倍のときは露光時間 5分、7,000または 10,000倍のときは露光時間 7分)解析:ImageQuant TL 7.0ソフトウェア
サンプル:NIH 3T3細胞溶解液 (総タンパク質量 10 μg、IFN-α処理済みの細胞と未処理の細胞がさまざまな比率で存在) または HeLa細胞溶解液 (アニソマイシン処理済みの細胞と未処理の細胞がさまざまな比率で存在)メンブレン:Amersham Hybond-Pブロッキング試薬:5% BSAの PBS-T溶液一次抗体:ウサギ抗βカテニン (3,000倍希釈)、マウス抗 pSTAT3 (3,000倍希釈) またはマウス抗アクチン (3,000倍希釈)二次抗体:HRP標識抗ウサギ IgG (30,000倍希釈) または HRP標識抗マウスIgG (30,000倍希釈)検出:Amersham ECL Prime画像処理:ImageQuant LAS 4000mini (βカテニンは露光時間 3分、アクチンは露光時間 1分)解析:ImageQuant TL 7.0ソフトウェア
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微量のリン酸化タンパク質の検出
STAT3は黒色腫の進行および宿主免疫に関与する転写活性化因子です。STAT3は、細胞を IFN-αなどの特定のサイトカインで処理したときに起こる特異的チロシン残基のリン酸化によって活性化されます。
IFN-αで処理した HeLa細胞溶解液を総タンパク質量 12.5 μgから段階的に 2倍希釈した溶液を用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、Hybond-Pメンブレンにブロットしました。特異抗体に よる処理後に Amersham ECL Primeと反応させ、リン酸化された STAT3を検出しました (図 8)。
Amersham ECL Prime
Amersham ECL Plus
12.5 µg 98 ng
rtnoC –ol
図 8 IFN-αで処理した HeLa細胞溶解液中に含まれる pSTAT3のAmersham ECL Primeおよび Amersham ECL Plusによるウェスタンブロッティング検出。Amersham ECL Primeでは Amersham ECL Plusと比べてより強いシグナルが得られるため、タンパク質検出感度が向上しています。コントロールのレーンには未処理細胞の溶解液 (総タンパク質量 6.25 μg) をアプライしました。
サンプル:IFN-αで処理した HeLa細胞溶解液を総タンパク質量 12.5 μgから段階的に 2倍希釈した溶液メンブレン:Amersham Hybond-Pブロッキング試薬:5% BSAの PBS-T溶液一次抗体:マウスモノクローナル抗 pSTAT3 (Tyr705) (3,000倍希釈)二次抗体:HRP標識抗マウス IgG (30,000倍希釈)検出:Amersham ECL Prime / Amersham ECL Plus画像処理:ImageQuant LAS 4000mini (露光時間 5分)解析:ImageQuant TL 7.0ソフトウェア
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製品名 包装 コード番号
ECL Prime Western Blotting Detection Reagent for 1,000 cm2 membrane RPN2232
※ 2011年 1月中旬発売予定。※ 化学蛍光検出には対応しておりません。
■ ECL Prime ご注文情報
e-mailで最新情報をお届けしています。お申込みは上記Webサイト左下の「メールマガジン購読」から
www.gelifesciences.co.jp
掲載されている価格は 2010年 12月現在の希望小売価格です(表示価格には消費税は含まれておりません)。希望小売価格は単なる参考価格であり、弊社販売代理店が自主的に設定する販売価格を何ら拘束するものではありません。掲載されている製品は試験研究用以外には使用しないでください。掲載されている内容は予告なく変更される場合がありますのであらかじめご了承ください。掲載されている社名や製品名は、各社の商標または登録商標です。お問い合わせに際してお客さまよりいただいた情報は、お客さまへの回答、弊社サービスの向上、弊社からのご連絡のために利用させていただく場合があります。
製品名 包装 コード番号
試薬
ECL Prime Blocking Reagent 40 g RPN418
Hybond-P(20× 20 cm) 10 sheets RPN2020F
Anti-Human IgG, HRP-Linked Whole Ab Sheep* 1 ml NA933-1ML
Anti-Rabbit IgG, HRP-Linked Whole Ab Donkey* 1 ml NA934-1ML
Full-Range Rainbow Molecular Weight Markers 250 µl RPN800E
ECL DualVue Western Blotting Markers 25 gel loadings RPN810
画像解析装置
ImageQuant LAS 4000miniシステム 1 式 問合せ
ImageQuant LAS 4000システム 1 式 問合せ
ImageQuant LAS 4010システム 1 式 問合せ
* この抗体の力価は IgGに対してのみ評価を行っています。IgG以外のクラス(IgM, IgE, IgAなど)に対しても弱い反応性を示す可能性がありますが、IgG以外の検出には適し ていません。
■ 関連製品
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