crest biodynamics - 国立研究開発法人 科学技術 ... ·...

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Contents 挨拶 研究総括 山本雅 エッセー 領域アドバイザー 鈴木貴 領域活動報告 特別座談会「碩学の稜線」 研究総括 山本雅、 領域アドバイザー 加藤毅、深見希代子、本多久夫 研究室の紹介 濱田グループ 海外出張報告 各チームの研究成果 領域参加者リスト 編集後記 (写真左上から時計回り) ・タイトジャンクションのフリーズフラクチャー電子顕微鏡像(月田チーム/佐々木博之、撮影) ・浮遊培養した MDCK 細胞タイトジャンクションを ZO-1 (赤)、細胞側面をαカテニン(青)、アピカル面をエズリン(緑) で染め分けている。(月田チーム/米村重信 徳島大学大学院医歯薬学研究部・理研 CLST) ・多繊毛上皮細胞アピカル面の繊毛(赤)(月田チーム/加納初穂、Elisa Herawati大阪大学大学院生命機能研究科) (領域ロゴマークのコンセプト;右上図) 生命科学と数理科学の融合として、生命現象の非線形性や階層性を大きなフィボナッチ数列の円で表現し、躍動感のある 数学の近似記号(≈)と融合する姿をシンボライズした。 CREST BIODYNAMICS News Letter 6

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Contents 挨拶 / 研究総括 山本雅

エッセー / 領域アドバイザー 鈴木貴

領域活動報告

特別座談会「碩学の稜線」 / 研究総括 山本雅、 領域アドバイザー 加藤毅、深見希代子、本多久夫

研究室の紹介 / 濱田グループ

海外出張報告

各チームの研究成果

領域参加者リスト

編集後記

(写真左上から時計回り)

・タイトジャンクションのフリーズフラクチャー電子顕微鏡像(月田チーム/佐々木博之、撮影)

・浮遊培養した MDCK 細胞タイトジャンクションを ZO-1 (赤)、細胞側面をαカテニン(青)、アピカル面をエズリン(緑)

で染め分けている。(月田チーム/米村重信 徳島大学大学院医歯薬学研究部・理研 CLST)

・多繊毛上皮細胞アピカル面の繊毛(赤)(月田チーム/加納初穂、Elisa Herawati 大阪大学大学院生命機能研究科)

(領域ロゴマークのコンセプト;右上図)

生命科学と数理科学の融合として、生命現象の非線形性や階層性を大きなフィボナッチ数列の円で表現し、躍動感のある

数学の近似記号(≈)と融合する姿をシンボライズした。

CREST BIODYNAMICS News Letter 第 6 号

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挨拶: 老化研究

研究総括 山本 雅

(沖縄科学技術大学院大学 教授)

今年はまだウグイスが鳴いている、この夏のセミは静かだった、そういえば沖縄では台風も少ない、などと思いながら、コーヒーを片手に東シナ海を背にした赤いレンガ屋根の家々を見下ろし 1 日が始まる。

5分ほど歩いて大学に行きパソコンに向かう、学生らと話す。今日のように会議がない日は、学生との会話もおもわず弾む。ストレス free の生活で、泡盛暴飲とヤンバル豚暴食の不摂生をしなければ長生きできそうだ。

高齢化社会という言葉が、しばしばマスコミ

に取り上げられる。なんの違和感もない。ひと昔前

なら姥捨山とリンクして扱われた高齢の人々や、ま

た彼らにまつわる読み物が、今や世の中に自然に出

回っている。大江健三郎の「セブンティーン」や沢

木耕太郎の「テロルの決算」の山口二矢、舟木一夫

の「高校三年生」などの若者の存在を象徴する言葉

が一世を風靡し、また若者が輝いていたことが嘘の

ように“高齢”が蔓延している。「村の渡しの船頭さ

んは、今年60のおじいさん」と言われていた時代

もあったが、今は60歳を悠に超える人々が、様々

な場面で社会の主役であったりする。あるいは主役

とまではいかないにしても十分に準主役の役割を担

っている。そして、「おひとりさまの老後」という上

野千鶴子の読み物や、また藤田孝典の「下流老人」

が注目されている。少し前までは人々が意識する必

要を覚えなかった“老”、“aging”にまつわる事柄が

様々にとりあげられ始めた。保険制度の問題、医療

のありかたなどなどなど。生命科学の分野でも“老”、

“aging”が研究の対象になってきた。healthy

aging を掛け声に研究領域が広がりそうだ。私の住

んで居る沖縄はかつては長寿王国を誇っていた。食

環境の変化でそ

れが昔の夢話に

なってしまい、

今や短命県とな

ってきた。とは

いうものの北部

の村には長寿者

がおり、また多

くの健康食品が作られている。しかも、まだまだ掘

りおこせば長寿の秘訣なる物が出てきそうだ。私の

研究室にも幾つかの沖縄の草木の葉、茎、根などの

成分を調べて欲しいという話が持ち込まれてきた。

調べてみるとオートファジーを引き起こすものがあ

る。沖縄の大学に薬学部がないのは不思議といえば

不思議。薬王国の富山県のように薬事研究所ぐらい

はあっても良いと痛切に思う。

ここで GAnton※の力を借りることにし

よう。創作ソフト「fiction」を開き「老化」「分子生

物学」「生命科学」「ニュースレター」と入力した。

※GAnton 詳細:Newsletter 第 5 号「挨拶」参照

“Shan が研究者の道を歩み始めたのは前世紀の最後の頃だ。その頃に、分子生物学が勃興した。Shan が分子生物学のルーツ探ってみると、物理学者の Erwin Schrödinger にたどり着いた。Schrödinger は遺伝子の本体を不規則な固体(aperiodic solid)と推定したらしい。それを引き継ぐように、Francis Crick が2重螺旋構造の化学物質—DNA—を発見した。分子生物学勃興の前夜だ。Shan は学生の頃どちらかというと物理や化学が好きで、生理学や免疫学などは苦手であった。現象論や観察の詳細な記載にどうしてもついていけなかった。ただ、生物でも遺伝学は別で、「遺伝子のはたらき」といった書物を好んで読み、遺伝子 DNA を操作する遺伝子工学に引きずり込まれた。分子免疫学の研究室にはいり、サイトカイン遺伝子をクローニングして免疫細胞増殖・分化の仕組みがわかったと得意になった。しかし Shan はこの数年考え込んでいる・・・・・遺伝子クローニングで生命を理解しようとするのは限界がある。「数学」が頭に浮かんだ。物理学者のSchrödinger の発想から分子生物学が導かれたように、数学が次の生命科学の大展開を導くかもしれない。数学に目を向けよう。分子—細胞—組織—個体の多階層をつなぐには、数学や情報科学が必要そうだ。なんと呼ぼうか?数理生物学かデザイン生物学か、いや、生命動態学、情報生物学、やはりシステムズバイオロジーか。名前はどうでも良い。この新たな学問領域で老化研究にチャレンジしよう・・・・・”

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先日私は、バルセロナで開催された第

17 回 International Conference of Systems

Biology (ICSB)に出席した。驚いたのは冒頭の

Plenary lecture での Denis Noble の講演が終わっ

た後、彼の主張を烈しく批判する意見が出されたこ

とだ。その場の状況を正しく伝えるにはもう少し

Denis Noble のことを知らなければならないが、

Denis Noble は 、 ”DNA is not the sole

transmitter of inheritance” などなど彼のこれま

での主張をまとめながら neo-Darwinism の議論を

した。彼の講演が終わるやいなや、この講演は極め

てバイアスの入ったものだという反論があったのだ。

爽やかだったのは通常講演の一番手、理研 QBiC 戎

家美紀さんの発表だ。Notch-Delta による細胞コミ

ュニケーションが作動する細胞系を用いて、分化や

パターン形成を誘導させる研究を紹介した。研究内

容のみならず表現力も豊かで感嘆した。このバルセ

ロナの ICSB では、上記創作文が示唆しているよう

に、分子生物学が新たに数学や情報科学などなどの

学問領域を巻き込んで、次世代分子生物学に進化し

てきている様子を見とった気持ちになった。日本国

内で、また国際的にも、大きく推進されようとして

いる老化研究が、医学とリンクした次世代分子生物

学で進められることを期待したい。

2016年、夏

山本雅 恩納村にて

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エッセー: 価値を発明するということ

領 域 ア ド バ イ ザ ー 鈴 木 貴

(大阪大学大学院基礎工学研究科 教授)

自由な時間があればよい考えが浮かぶという

わけでもない。他者とコミュニケーションし、学び、

考えなければならないのは面倒であるが、新しい発

見に満ち溢れた時間でもある。だからと言って人様

にご迷惑をかけて良いわけがない。それば百も承知

だが、忙しさを口実に、全力を出し切れなくて、申

し訳のない思いをすることもたびたびである。

夏休みが近づいたある日、トリプルブッキング

が 2 回も発生してしまった。そもそもこのあたりは、

大学院の集中講義を新しく行うことにして、10 日ほ

ど時間が拘束されている、その前半の山場である。

集中講義全体の組み立て自身が試行錯誤の真っただ

中にあり、準備に相当の時間を費やしていた。同時

に 3 日間にわたる学部主催公開講座の最終日で、実

行委員長として、講義は別としても閉講式と茶話会

を取り仕切らなければいけない。そこにきて学部担

当科目の定期試験、近隣高校の研究室訪問、大学院

入試の実施委員会である。しかしながら、この日は

公開講座を中心として、「関連する」多くのことを学

んだ 1 日でもあった。

今年の公開講座では 101 名の登録があり、

その半分が中・高校生である。一方でシニアの参加

者も多数で、10 年連続受講者を 5 名表彰した。基

礎工学部ではあるが、今回は偶然、講義の多くがビ

ッグデータについてである。その中にシステム科学

の若手教員による「嫉妬心」の講義があり、私とし

ては、この教員がどのように、どんなことを、何の

ために研究しているかという項目に注目したが、「ど

のように」と「何のために」はネット社会とマーケ

ッティングに関連していたことがわかった。確かに、

心理学は経営学の中で重要な位置を占めている。一

方、「どんなことを」で紹介があったのは、性別と年

代による嫉妬心の差異である。この差異はどうも体

内の毛細血管の総量の差異と符合しているようだ。

外から見えるデータと、中でおこっている出来事は、

実は関連しているのではないか、などと考えたりす

る。

たまたまこの日は、近隣高校から来られた生

徒たちにテレビ番組会社と共同制作した毛細血管網

形成 CG をお見

せし、課題を与

えてグループで

考えてもらった

りしたが、生徒

たちを見ている

と、日本人の特

性かと思うよう

な行動も多かっ

た。学問や科学

技術の国民性と

いうことでは、

公開講座閉講式

後の茶話会で、

挑戦的な製品開

発に携わってこ

られたシニアの

方から伺った、EU の 2 か国の比較のお話も印象に

残った。それによると、A 国はシステム、B 国はモ

ジュールを作るのに優れているという。数学者を見

ていて同感であったのだが、後で気が付いたのは、

最近 EU 脱退を決めた C 国は、マーケッティングに

果たすべき役割と活路があったのではないかという

ことである。(この稿は C 国で書いている。)

最近、世界の冠であった日本の企業なり分野な

りが、紆余曲折を経て転落していく機微を解説して

いる文書などを見かけるが、いずれも、既存の価値

観に安住していた情景が述べられている。技術革新

を怠っていたということではなく、逆にそのこと以

外が視えなくなり、測定装置まで開発して世界一の

性能を誇示しようとしたとき、その技術はすでに消

費者とは無縁のものになってしまっていた、とでも

いうように。

茶話会には釣り針を作る仕事をしておられた

という方もいて、トリプルブッキング 2 回は申し訳

なかったが、楽しい 1 日であった。

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領域活動報告 1

CREST「生命動態」第 6 回数理デザイン道場

開 催 日 : 2016 年 6 月 13-14 日

於 : 東レ株式会社総合研修センター

概要:

冬ごもり 春さり来れば 鳴かざりし 鳥も来鳴きぬ 咲かざりし 花も咲けれど 山を茂み 入りても取らず 草深み 取りても見

ず 秋山の 木の葉を見ては 黄葉をば 取りてそ偲ふ 青きをば 置きてぞ嘆く そこし恨めし 秋山われは

(額田王、楽寿園万葉歌碑)

第 6 回数理デザイン道場は、駿河湾を抱き込み、

富士山を仰ぎ見る静岡県三島市の東レ(株)総合研修セン

ターで平成 28 年 6 月 13-14 日の 2 日間にわたって開

催されました。

秋山こそ良いのだと、三島市「楽寿園」の万葉歌碑には

刻まれていますが、初夏の三島も申し分なく閑雅で、老若

男女、数理デザイン道場に専心する気持ちにあふれました。

80 名余の参加

者を道場長として率

いられたのは、前回に

続き黒田チーム石井

グループの石井信先

生(京都大学大学院情

報学研究科 教授)で

した。短い時間ながら

も、特別講演、口頭発

表、ポスター発表およ

びグループディスカ

ッションと、様々な趣

向を凝らした密度の

高いプログラムを企画頂きました。また、連携プログラ

ムである AMED「生命動態システム科学推進拠点事業」

の 4 拠点のうち、核内クロマチン・ライブダイナミク

スの数理研究拠点(広島大学)および生物医学と数学の

融合拠点;iBMath(東京大学)より各 2 名の若手研究

者が参加され、活発な事業間交流も図られました。

1 日目は、統計数理研究所長の樋口知之先生の「メ

ゾスコピック・モデリングに必要な技巧と教練」と題し

た特別講演を皮切りに、2 名の口頭発表、34 名の若手

研究者・学生によるポスター発表に続き、α、β、γ、

ε、δ、ζ の 6 グループに分かれたグループディスカ

ッションを行いました。

会場からは富士山がかろうじて見えました

特別講演では、数理表現された法則や第 1 原理計

算などの従来の方法論では解析に限界があるメゾスコ

ピック領域(生命科学でいうとマクロ領域の疫学とミク

ロ領域のゲノム解析の間に挟まれる「個人差」)につい

て、「帰納と演繹」、「シンセシス数学」、「応用と基盤技

術の溝」などのトピックと絡めて樋口先生よりお話頂き

ました。また、今回初めての試みとなるグループディス

カッションでは、研究代表者や主たる共同研究をモデレ

ータ、若手研究者を書記に添え、普段所属する研究チー

ムのメンバーが重ならないようなグループ構成とし、

「ポスト『生命動態』ってなぁに?」のお題の下、「生

命科学に数理は必要か!?」、「データサイエンスで今後

科学は進歩する(非線形に取り組める段階)」、「Dry の

仕事が評価されにくい(PI により様々)」、「実験データ

が統一されていない」、「生命のデザインを理解する」、

「生命の形態・大きさ・機能」、「健常と疾病、平均と個

体差」、「メゾスケールな数理モデリング」、「生命収斂原

理研究領域」等といった提案や問題点の提起がなされ、

熱い議論が交わされました。

グループディスカッション風景

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各グループでスライド 2 枚程度にまとめた内容は、2

日目 の道場終了時に、各グループの若手研究者・学生

から発表頂き、山本雅研究総括および巖佐庸領域アドバ

イザー兼数理デザイン道場運営支援委員長より「ネクス

ト『生命動態』研究領域の検討材料」の観点から講評を

頂きました。

夜中まで続いた自由討論でしたが、2 日目の早朝

から道場が再開され、理化学研究所生命システム研究セ

ンター / 多細胞システム形成研究センターチームリー

ダーの柴田達夫先生の「自発的な非対称形成の数理メカ

ニズム」と題した特別講演に続いて、4 名の口頭発表、

石井道場長の講演、グループディスカッション・検討結

果の発表、若手研究者・学生 5 名のポスター賞の受賞

式をもって幕を閉じました。次回は、岡部チームの井上

康博先生(京都大学 准教授)が道場長を務められます。

どのような道場になるのか乞うご期待! (東)

研究総括、アドバイザー、PI、若手研究者等がミックスされたグループディスカッション風景

各グループからのディスカッション結果の発表~研究総括によるコメントの一幕

■道場に参加しての感想(ポスター賞受賞者より)

■新海創也(広島大学クロマチン動態数理研究拠点 助教) 本CRESTの関連事業であります「核内クロマチン・

ライブダイナミクスの数理研究拠点形成(代表研究者:

楯真一)」から今回はじめて道場の門を叩かせていただ

きました。2016年3月に広島の拠点にて開催しました

生命動態システム科学四拠点・CREST・PRESTO・

QBiC合同シンポジウムでは、大きな会場での良い緊張

感の中での研究発表と討論を経験しましたが、本道場で

は道場長以下全員が切磋琢磨し合う理念ゆえの非常に

オープンな空気を吸えたことに喜びを感じています。先

も見えずに常に新しいものを吸収したいと希っていた

学生時分に戻った感覚がありました。僕自身、数理とい

っても統計物理の世界からライフサイエンスの世界に

足を踏み入れたのが4年前でして、広島の拠点でも数式

を使う議論は至極当然なのですが、驚いたことは、本道

場は実験を主とする人でさえも当たり前のように数理

を希求し科学の芽を生み出そうとしていて、数理と実験

の垣根なく生命動態という対象に真摯に向き合ってい

ることでした。そんな中、最優秀ポスター発表賞を受賞

できたことは、今後の研究の励みであると同時に、生命

動態科学を希求する仲間として受け入れられたことへ

の喜びの気持ちを一層強めてくれました。発表した研究

内容もクロマチン動態という生命動態に関連した数理

と実験の共同研究であり、実験を担当し日頃から議論し

てくれた共同研究者や日々の研究活動を支えてくれて

いる拠点メンバーへの感謝の気持ちでいっぱいです。後

日報告して一緒に喜ぶことができました。

■Stephen Wu(統計数理研究所 助教:飯野T吉田G) 今回の数理道場は、研究者として重要な経験になると

思います。私はアメリカの Caltech を卒業後、スイス

の ETH で Postdoc をして、半年前に日本の統計数理

研究所で研究を始めました。西洋研究の雰囲気を十分に

体験したことで、アジアの研究状況が気になったからで

す。今回の数理道場では素敵な研究者とたくさん会うこ

とができました。現在世界中に推奨される領域融合の研

究価値が、この数理道場で完全に表明されたと思います。

これからもいろんな分野の人たちとお互いに意見をぶ

つけ合い、創新的な研究イデアを育むために、数理道場

のような学会にいっぱい参加したいと思います。

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■井上 晴幾(東京大学大学院理学系研究科 博士後期課程1年:黒田T黒田G) 2016 年 6 月 13-14 日、静岡県三島市で行われた

数理デザイン道場に参加した。三島駅周辺は富士山麓の

街ということもあり、のどかな街並みだったが、会場の

東レ株式会社総合研修センターはそれとは対照的に先

進的なビルであった。道場では口頭発表・グループディ

スカッション・ポスター発表が行われた。口頭発表では

普段聞く機会の少ないドライ系の研究を聞くことがで

き、質疑応答を通してドライ系の研究の眺め方をより深

めることができた。グループディスカッションは、ポス

ト「生命動態」を考えるということで学生だけでなく先

生方も交えて議論が行われた。先生方を交えたことによ

り、より洗練された議論ができたと考えている。ポスタ

ー発表には多くの先生に見ていただいた。発表を通して

先生方から意見をいただくだけでなく、自分の中で曖昧

だった問題点を明確にすることができた。

数理デザイン道場は 2 日間を通して非常にフランク

な雰囲気で開催された。数理と実験研究者の議論を通し

て、生命システムの普遍的原理を理解するというコンセ

プトを肌で感じることができたと同時に、数理科学と実

験科学それぞれの問題設定の違いをすり合わせること

が重要だと感じた。

■吉田理紗子 (お茶の水女子大学大学院 修士1年:影山T郡G) この度はポスター賞をいただき、誠にありがとうござ

います。今回の発表は私にとって初めてのポスター発表

で、不安なことも多々ありましたが、このような賞をい

ただけて非常に嬉しく思っています。

数理デザイン道場に参加して、初めて実験系の研究者

の方々と触れ合ったことが印象に残りました。私にとっ

ての研究はパソコンに向かう時間が多くを占めている

ため、実験系の研究ならではの面白さや大変さ、達成感

などを知ることができ、とても興味深かったです。また

自分の研究に関して実験系の視点からアドバイスをい

ただけたことは、貴重な経験でありかつ非常に勉強にな

りました。

さらに自由討論の時間には様々な分野の研究者の方

とお話しすることができ、今まで知らなかった知識を増

やせただけでなく、自分の研究内容をいつもとは違った

角度から見ることにもつながり、これからの研究に対す

るモチベーションをさらに向上させることができまし

た。本当に楽しく、充実した 2 日間でした。

今後もこの道場で学んだことを生かし、より一層研究

に励んでいきたいと思います。本当にありがとうござい

ました。

ポスター賞受賞者の皆様(左から、巖佐委員長、曲講師、Stephen 助教、吉田さん、新海助教、井上さん、石井道場長)

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特別座談会~「碩学の稜線」

2011 年の研究領域発足から 5 年強、全 15 チームが揃った CREST「生命動態」研究領域は成熟期にさしかかった。

その間、技術のブレークスルーや国際競争の加速等、取り巻く状況は変わりつつも、研究者の情熱は変わることなく、複

雑な生命現象のベールをまとった高く険しい山に登攀中だ。おもしろい生命現象を解き明かし、最終的には「制御」にい

たることを目指す。5 合目の今、目指す高みについて研究総括および領域アドバイザーに座談会形式で議論頂いた。

出席者(敬称略):研究総括 山本 雅、領域アドバイザー 加藤 毅、深見 希代子、本多 久夫

司会・編集: JST 東、深澤、石川、猿渡

巻機山山頂をのぞむ

(数学は生物に必要か!?) 東 司会を務めさせて頂きます領域担当の東です。宜しくお願いします。本日は、九州における研究チームのサイト

ビジットの機会を活用し、山本雅研究総括、領域アドバイザーの加藤毅先生、深見希代子先生、本多久夫先生にお

集まり頂きました。本領域が平成 23 年に発足して 5 年(募集開始は平成 24 年)、領域ニュースレターも第 5 号

まで発行した記念に寄せて、CREST「生命動態」研究領域の研究総括と参謀たる 3 人により、「生命動態」の発足

から現在、未来について述懐いただきたいと思います。まずは、いきなりのアンチテーゼです。そもそも数学は、

生物に必要でしょうか。

本多 形態学だったら絶対に必要だろう。形につながらなくてかまわない生物の分野ならば、幾何学などの数学はほと

んどいらなかったけど、形態学においては「こういう形に変形する」としたら、そこに原因となる「力」が入るは

ずで数学は必要不可欠。

深見 生命科学、特に医療系の先生方は、数学を使わない方が圧倒的に多いと思います。細胞の中の現象を解析するた

めに数理的なファクターが必要になり、必要最低限のところをやっているというのが現状。

加藤 計算機の能力がここまで上がってしまうと、データをインプットしてしまえば、必要な情報は一瞬で出てくるん

じゃないかと思ってしまうくらい発展してきています。最近話題になった人工知能「アルファ碁」がプロ棋士に勝

ったことがあった。人工知能は、もの凄いデータ量のパターン認識ができるわけです。一方で、計算機だけではで

きない側面もあって、そのような限界を、数学が分類・カテゴライズして補うというところに、数学の必要性が感

じられていているのでは。その点について、根本的な議論をすることは、数学・生物学にとって実りあることだと

思う。

東 この領域では、数学・数理科学として、情報、物理、数学と、様々な分野が混在しています。そういった中での

「数学」の位置づけについて更にお伺いしたいと思います。

山本 情報系はビッグデータを扱い、勝手に学習させれば答えを出してくれるという期待がある。

加藤 そこでは、プロセスはブラックボックスになっていて、そのブラックボックスの構造を人間が理解したいかどう

かというところが重要なのでは。もし理解したいなら、数学は必ず必要と思います。ただ、アウトプットだけで十

分と思っている人には数学はいらないかもしれない。

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深見 私も含めて生物系の先生は、方法の良し悪しは自分で判断出来ませんが、「中身の計算方法は、いくつかの候補を

比較させて下さい」といった希望をもっています。出てきたアウトプットをウェットでいろいろ検証し、うまくフ

ィットしないのであれば、また別の計算方法を使わせてもらうという。

加藤 今の段階ではそれで良いと思うけど、進んでいけば必ずブラックボックスだった構造まで理解したいというレベ

ルに達すると思います。

山本 ブラックボックスの構造を解析すれば、新しい理論というか、ブラックボックスの幅や膨らみが見えてきて、よ

り高次にステップアップする期待感があるのだけど。

加藤 数学は、ラフに言ったら分類するというのが大きなプロセスの一つなので、クラス分けをする観点では、高次に

ステップアップする可能性は非常に高いですよね。

山本 大まかな言い方をすれば、楽しい人生を送ると言う観点から、やっぱりブラックボックスは理解出来た方が楽し

い人生を送れるんじゃないかと思う。Easy な人生はあるかもしれないけど、人間はきっとそれで満足しないのが

サガ。生命現象でも何でも、やはりプロセスがどうなっていることを理解できるのが人間であり、数学で理解する

ことも、プロセスの一つとして必要だと思っている。

本多 たぶん同じことを言っているのだろうが、ブラックボックスとは、不思議なことがあるときに、不思議をそのま

まにして「この入力ではこの出力」と認めてしまって、そのまま不問にすること。そんな時に、「わかった!嬉しい」

と思えるのは、既知のいくつかの個別要素を組み合わせてその不思議が説明できたときである。自然科学の一番お

もしろいところである。数理的研究の多くはこれを行っている。生物学に、必要なら数理を使うのもいとわない姿

勢で、これを行うのが理想である。

山本 CREST をやっている経験から、ほっておくと、生物と数学のコラボは立ち行かない。研究を加速するためには、

やっぱりインセンティブを持たせて強制力を働かせないと融合分野は進みにくいと思いますね。国が主導でお金を

ボンとつけたりして。せっかく CREST「生命動態」研究領域-数理と生物をコラボさせる-が動き出して、人材

も排出されている。生物分野全体を俯瞰すればまだまだ一部だけど、そういう流れを国は断ち切っちゃいけないと

思う。取り込み方はいろいろで良いが、そういう発想を常にもって生命科学を進めることが大事。「この生物をわか

りたい!そのためには数学の理論をこうしたい!」という数学者から生物を見たいというのがあれば良いなと常々

思っていた。CREST の募集の時は、「新しい数学をつくる!」と言う問い掛けをしていた。

加藤 数学科の学生から見ると、生物学と交流を持つのは敷居が高いのかなと思いま

す。宣伝も兼ねて紹介しますと、最近、京都大学理学研究科が「MACS 教育プ

ログラム」を立ち上げました。理学研究科には数学、物理、地学、化学、生物の

5 つの専攻があって、今年度の後期から分野横断的に授業・セミナーを行う予定

です。複数の専攻から学生を集めて、お互いに切磋琢磨すると言う趣旨です。大

学院生が大多数ですが興味ある教員も参加している。大学院生の頃にはお互い交

流がなかったのに、数学や生物学の研究者が突然「異分野交流をしましょう」、「共

同研究しよう」と言われても無茶。なので、若い段階から専攻を超えてお互いに

アプローチをしようという取り組みです。

山本 大学院生も大事だが、まだ専門が定まっていない学部の段階で、例えば生物専

攻の学生が数学の授業を強制的に受けるなどの仕組みが有ったら良いと思う。

加藤 生物の学生は今のところ、残念ながらあまり数学の授業を受けない傾向にあり

ます。

東 CREST の数理デザイン道場を見渡すと、数理系に比べ、生物系の学生はあま

り参加していないように思われます。数理デザイン道場において、今後は生物系

の方から、「こういうおもしろい現象があるので数理化し理解してみたい」とい

うニーズが積極的に出てくると良いと思っています。そうすれば、道場の活動も、

益々裾野が広がっていく気がします。

深見 数理科学が使える(扱いやすい)生物系分野とそうでない生物系分野があることと、数理科学が生物に関係する、

有用であるという意識がまだまだ浸透していなくて、数理は関係ないと思い込んでいるので、そういう研究者をも

う少し掘り起こさないと次の広がりにつながらないと感じます。大学入学時の試験科目が絞られているので、勿論

大学で基礎科目として全部教えているのだけど、「物理が嫌い」、「生物は面倒くさい」という潜在意識がすり込まれ

ているのだと思います。生物系からすると、数学とか物理をやると、こういう考え方も出来て、こういう風になっ

て、生物系にも良いことがある、という実感が未だ少ない。波及・発展させるためには裾野を広げることが重要で、

例えばオープンラボでも良いのですが、数物系と生物のヒトが学生の時から会話できる。そんな環境や雰囲気を自

然につくっていくというのが大事。学部が無理なら少なくとも修士のレベルでやっていくと興味が沸いて、いろい

ろな時に「あいつがこんなことやっていたからちょっと相談してみよう」という流れになる。

山本 私からすれば、数学がベールをかぶっている、という印象がある。数学のベールの向こうに神秘の世界がある。

数学は、「分類するだけですよ」とか、そんな単純なものじゃないと思ってしまう。生物系の人間の多くは、高校数

学まではいけるが、その後はベールの向こうに行っちゃうのが普通。だから、「ベールの向こうはこんなもんだよ」

と分かりやすく言ってもらえると、なじみのない人間でもハードルが低くなり、アプローチしやすくなる。応用数

学、純粋数学と色々あるけど、如何に数学を魅せてくれるかが大事。

加藤 CREST「生命動態」で、グラフ理論や情報エントロピーなどを使ってプロジェクトを進めていくことで、長い目

で見て純粋数学に問題提起をしてくれるのではと期待しますし、それは画期的なことです。もっと他の道具も合わ

加藤 毅 先生

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深見 希代子 先生

本多 久夫 先生

せ技で使って欲しいなと思ったりもします。一方で、こういうことをやったら面白いという提案は出来るけど、実

際に実装させるには労力やお金がかかり、アイディアから先になかなか行かないケースが多い。そこで数理デザイ

ン道場や MACS 教育プログラムを通して、学生や研究者は柔軟に提案が出来て議論がしやすくなる。そういう場

をつくったらよいと思います。例えば、「数理デザインコンペティション」をやってはどうかと思っています。具体

的な数理デザインを提案してもらって、その中から優れた提案を選んで、ベストなものにはそれを実行する予算を

つけるみたいな仕組みがあると良い。

本多 デザインとは。

加藤 例えば最近は統計が盛り上がっていますが、代数を使った統計を考えている人もいます。それを実際に生物系の

実験で走らせるアイディアは、新しいから成功する保証や根拠が十分ではない。やってみないとわからない。いろ

いろな観点から議論を重ねて、一番良いものを見つければよいのかなと。

山本 僕もやってもらいたい課題がある。OIST で、数学が好きな学生がたまたま僕のところに来て、僕がやっている

生物現象を見ながら「数学で解析しましょう」と、こちょこちょやっているのがいる。OIST は「融合」が大事と

言われているから、数学的な発想を持ってきた人、物理系の人など様々なバックグラウンドの学生がいる。面白い

やり方について日夜話し込む。

加藤 建築のコンペティションは、実際に建築するかわりに図面で勝負しますが、そのようなものをイメージしていて、

数理デザイン、モデルもそういうことが出来ないかなと思います。

深見 誰が審査します?

加藤 それが問題。いきなりその場で 30 分くらい話して点数つけるというのは無理。

深見 評価の評価をするのも必要。評価をする人たちと評価される人の議論を聞きながら評価をする。利害関係もない

学生達、若い人が面白いと思うものを汲み上げる。そんな評価系だと面白いと思う。お互いに足を引っ張るなら議

論で引っ張りましょう、みたいな。そういうところで勝ち残るというのを皆さんが評価できる。そういうのは見て

いて面白いと思います。専門家たちのディベートを見ると、我々生物系でも、こっちの方が正しいだろうなとわか

ってくる。普通の評価でなく面白くやってもらいたい。

加藤 数理デザイン道場はかなり所帯が大きいので、全員でやってもらうなど。

東 やりますか。紅白歌合戦みたいなクリッカーで。

山本 数学オリンピックに出場したような人など、様々な経歴の方を外部評価者や参加者とする。

(Incubation,ブレークする前夜) 東 All Japan の視点から、これからの「生命動態」研究についてご意見をお願

いします。

深見 最近の CREST・さきがけの研究領域は限られた分野に絞りすぎている印象

があります。分野融合的な、広い分野から研究者が集れるテーマがよい。最近

耳にする「Aging」でも、幅広い現象を扱える老化研究が良い。Aging は結局

のところ、生命のいわゆる根幹になることとリンクしていて、例えば、癌や分

化・発生などがあげられる。こういった根幹テーマであれば、広く人材も集め

られる。JST では、研究分野が広く、技術が見えそうな基礎研究重視のプロジ

ェクトが良いと思う。出口を絞りすぎない方が良い。アウトプット重視もよく

理解出来るが目的を絞りすぎるのも領域が狭くなる危惧がある。

本多 自然科学の進歩という観点では、ターゲットが広くて、それぞれの人がそれ

ぞれの力を発揮できるようなターゲットと大きさは絶対に必要。

山本 なにかキーワードが欲しい。CREST「生命動態」は何をやっても良いとま

では言ってないが、数学・数理科学と併せてダイナミックなことをやって欲し

いという話をしている。人材養成もしながら、数学を横軸において、いろいろ

な生命現象を縦軸として見ていくというのは良いと思う。「寿命」だったら、 生

まれてから死ぬまでなので、老化よりは良い響きを持ったキーワード。「寿命動

態」?細胞、個体、産まれるとき、死ぬときなど、何かのキーワードが欲しい。

本多 数理科学的な手法は自然科学を理解する上で絶対必須だと考えている

のだが、それがうまく取り込めていない。この CREST「生命動態」の

募集、評価の資料をみていると、「数理を入れなければ」、「使わなけれ

ばいけない」という雰囲気があったように思う。そういうことを踏ま

えて言うと、生命科学や生き物の研究に、「数理を使うことは厭わない」

として、「必要なら使う」程度で始めるのがよいと思う。そのためには、

数理研究が出来る人がすぐそばにいる必要はない。日頃から心つもり

はしなければならないが、必要とあらば数理科学に直ぐ手が出る体制

にしておけばよい。数理を「なんとか使わなければならない」という

のは本末転倒で、数理科学の側から言っても、そんなしんどいことは

やらなくて良いのではと思っている。

深見 我々生物系の人間からしたら、「数理科学とジョイントして数理を使っ

たら、我々の解析がとっても良かったね」、という実感がどこまで持て

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るかと言うところ。以前の数理科学は、計算をしていたけれどちっとも理論と実験系が合わないね、というのが我々

の感覚だった。でも今は、数理と生物を行ったり来たりさせることができ、行ったり来たりする中で、数理の良い

点を少しずつ実感する状況にある。でも、それはまだまだ限られた研究者であって、やはり一般的に生物系の先生

方が、数理の持つところの良さや、実際に「これをやると良いね!」という実感まで到達していない。今は過渡期。

だから、ビッグデータを使わなければいけないという感覚はあるものの、ビッグデータを数理的にどうやって生物

系に使って行けるのか、進展させなければならないと思う。

本多 僕の若い頃、自然科学系では、あなたは物理系ですか?生物系ですか?と言う仕分けが早くからされていた。そ

の余韻がまだあるのが僕らの世代であって、生物を勉強して数理的な視点が入るのは珍しいことだった(僕自身は

理学部。入学時でなく大学の 3 年生になるときにどちらに行くか選択できた。幸せな境遇だった)。今の若い生物

系の人を見ると、数理的な理解がよくできる人も多いように思える。

深見 学部によるのではないでしょうか。

本多 一昔前に比べれば、生物学での数理の人口は格段に増えた。これからは生物と数理がなじまないというような心

配はだんだん解消されると思う。

深見 数物系の研究室と生物系研究室の異なるラボが一緒になって1つのプロジェクトをやろうというのが今の

CREST。でも、これからは、1 つのラボで数物系と生物系が混在する。これからはラボの中で一緒というのが次

のステップになるのかなぁと感じています。

(CREST「生命動態」との邂逅) 東 この CREST「生命動態」研究領域に対する期待をお願いします。

深見 学会等とは違う、普段あまり接触がなかった研究分野を知り、その分野の研究者層と広く考え方を共有すること

ができた。はじめは数物系の言葉の理解からだったけど、少したつと言葉も理解でき、考え方も理解できるように

なったのはとても有意義。あと、若手が元気。生物系とは異なる、議論好きな若者がたくさんいて、非常に頼もし

い。分野横断的な領域をつくった意義があった。

山本 5 年間研究総括をやっていて、やっぱり、おもしろい世界になるかもしれないと言う実感がある。

本多 個々のチームにはテーマと目的があって、それにどれだけ近づけたかが評価になりますよね。その時に、それを

やっていて思いがけない発見とか可能性やなんかがふっと出てきたときどうするかが問題です。そこで芽が出て種

が出来れば、それがそのプロジェクトの成果になるのだけれどそれをどう評価するか。目的以外の発想がふわっと

出てきたとき、それをどれだけ取り組むか、伸ばしていくかです。目的がきまっていて大きいお金を使っているか

ら仕方ないかもしれないけど、芽をつぶさずに育てられるとよいのですが。

山本 どうやって面白い発想を伸ばしていくか。CREST「生命動態」のようなある程度大きなくくりであれば出来る。

テーマ設定が重要。

本多 30-40 年前に比べれば研究費も豊かになっているのに、小さい規模のところでこつこつやっていれば育つ芽を、

つぶしてしまうことがないように期待したい。

山本 そうですね。選択と集中といって多額の研究費が少数に集中すること

の弊害が出ないようにしないといけないのでは。選択と集中は、ある程

度は大事だけど、裾野がやせ細っては発展がない。まず、人を育てるの

にお金を使うということを嫌がってはいけないと思う。例えば、高校の

授業で数学は日常生活にすごく生かされているという事をわからせるこ

とができれば良いが、それには教員の育成から投資しないといけない。

数理を使うと、生活も科学もこんなに進歩するという例示が必要でしょ

う。その延長で、生物に数学が必須ということがわかってくれば良いの

ではないかな。もっと近視眼的となりますが、システムズバイオロジー

に始まって、越境する数学、数理デザイン道場、生命動態などの言葉が

出てきて、生物と数学が融合する機運が高まってきた。過去5年あまり

文部科学省も生命動態システム科学推進拠点を立ち上げて支援してきた。

ここで、この機運を加速することが必要ではないか。今日の話では、数

学は生物に必要だということを確信することができた。

(以上)

山本 雅 研究総括

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研究室の紹介

濱田研究室(理化学研究所)

ラボのメンバー

2016 年 3 月末で阪大のラボを閉じ、神戸の理研 CDB へ移りました。新旧ラ

ボの人たちの協力で無事に引っ越し作業を終え、新しい場所で研究ができるよう

になりました。現在のラボの構成は、研究員 4 名・テクニカルスタッフ 3 名・

大学院生 2 名で、半数以上は新たなメンバーです。

ラボの実験風景

マウス胚を回収・観察している、典型的なラボ風景です。

よく使う実験装置

目的に合った遺伝子改変マウスを比較的容易に作成するのが我々の武器。そのた

めに外来遺伝子を injection する顕微鏡(左)。それから、繊毛内の Ca2+を観察

するための顕微鏡システムもあります(右:CREST で購入して頂いた)。

近年の一押し研究

気道の繊毛など動く繊毛の多くは往復(平面打)運動をするが,ノード繊毛は回

転運動をする。この運動パターンの違いは、両者の軸糸の構造上の違いにある事

が判った。すなわち前者は 9+2 構造(円周囲に配置された 9 対の微小管に加え

て、中心に2つの微小管を持ち、周辺微小管と中心微小管を連結するラジアルス

ポークを有する)であるが、後者は 9+0。ラジアルスポークの構成因子を欠損

させると、本来は往復運動すべき気道繊毛が、回転運動をするようになった。運

動パターンを決める原理を明らかにするためのブレークスルーになりそうな成

果です。

CREST チーム

4つのグループ(高松 G、石川 G、篠原 G)が年に3〜4度集まり、成果を報

告し今後の戦略を練っています。

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海外出張報告 1:Mechanobiology from molecules to tissues-theory and applications

期間:6 月 26 日-7 月 2 日

於:クイニョン (ベトナム)

概要: シンガポールのメカノバイオロジー研究所(MBI)が中心となって開催された国際会議である。ベトナムで開催したのも多

く人が集まることを期待してということだったが、実際に 100 人以上の参加があった。分子から組織に至るまでメカノ

バイオロジーという言葉でこれだけ多くの人が集まり、しかも大学院生、ポスドクなど若い人が目立ち、成長しつつある

研究分野であることが実感された。発表内容の多くは非常にレベルが高かった。特に細胞において分子レベルの機能や局

在などを見るために、細胞が接着する基質のマイクロファブリケーションによる加工からさまざまな先端の光学顕微鏡技

術を駆使しているものが目立った。ただ、一つの現象をとことん解明するというより、使える技術をさまざまな現象に適

用することで幅を広げている感もあった。やや技術に偏った分野なので、その技術で何ができるかという発想になりやす

いのかもしれないが、総合的に技術を駆使して、本質的な理解を目指していきたいものである。細胞から組織に至る形態

形成に関しての数理的な研究は、二次元では世界的にもかなりの蓄積があるが、三次元となるとまだまだ少なく、その中

でも当チームの安達らの先端的なモデリング、シミュレーションなどの積極的なアプローチは目立っていた。

報告: 月田チーム 米村重信

海外出張報告 2:システムバイオロジー国際会議(ICSB2016)

期間: 2016 年 9 月 16 日~20 日

於: スペイン国、Barcelona Palau de Congressos

概要:

システムバイオロジー元年といわれる 2000 年、システムバイオロジー国際会議(ICSB)が東京で開催されて以来、

今年で 17 回目の開催となった。800 名弱の参加者(ポスター発表 521 件)を迎えた ICSB2016 のオーガナイザーは、

バルセロナの Center for Genomic Regulation(CRG)のセンター長 Dr. Luis Serrano Pubul、Dr. James Sharpe、

および Pompeu Fabra University の Dr. Jordi García-Calvo の 3 名であった。

CRG は、第1回の ICSB と時を同じく、2000 年 12 月に異分野融合体制や細胞創製を目的として設立された機関で

ある。CRG は、バルセロナリサーチパークという南欧最大の研究拠点の一つの中に位置しており、我が国では理化学研究

所 CDB が研究協定を締結している。CRG では、2011 年より学生・研究者向けのサマーコースとして国内外から講師を

招聘した「MODELING FOR SYSTEMS BIOLOGY」を毎年開催し、システムバイオロジー研究の裾野拡大を図ってい

る。

会場正面 Opening ceremony~主催者が壇上に着席 バルセロナ市内の風景

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16 日の OPENING CEREMONY では、The International Society for Systems Biology (ISSB)の代表として北野

宏明先生から、「2000 年当初は、システムバイオロジーが何を意味しているかわからない状況であったが、20 年近く過

ぎた今では、バイオサイエンスのメインストリームであり majority をとっている。今回は、In Silico Biology、 npj

Systems Biology and Applications、 Cell Systems、 Molecular Systems Biology、 Biosystems の編集長等が参

加する会合がある。良い機会なので交流を深めて欲しい。」といった趣旨の挨拶があった。この他、Dr. Luis Serrano や

カタルーニャ州政府の代表からも開会挨拶があった。

Modelling Networks and Circuits、Signalling Pathways、Cellular decision making、Large-Scale Networks

等、様々なセッションが催された。中でも plenary speaker の一人、オックスフォード大学の生理学者 Dr. Denis Noble

は、「ゲノムは生命の設計図ではないだろう」と言う挑発的な記述がある「生命の音楽—ゲノムを超えて システムズバイ

オロジーへの招待」の著書でご存じの方も多いかと思う。1960 年代にコンピュータモデルを作ったシステムバイオロジ

ー研究のバイオニアの一人でもある。講演では、「How didi the systems approach to complexity become side-lined

in the second half of the twentieth century?」という疑問を投げかけ、「An oversimplified view of the logic of

living systems: FROM molecules TO man: a one-way process. Problem: this can’t be true! Molecules are not

alive」という話が続いた。また、Kohl P, Crampin E, Quinn TA & Noble D. Systems biology: an approach. (2010)

Nature Clinical Pharmacology and Therapeutics で発表した内容を講演していた。(詳しくは、本ニュースレター「挨

拶」に記載)

また、ニュースレター第5号「自由投稿」で影山先生から紹介があった米国 UCSD の Dr. Gürol M. Süel が、ICSB2016

でも invited speaker として講演していた。内容は、Bacillus subtilis のバイオフィルムをマイクロ流体デバイス上で 2

次元で増殖させ、増殖に必要な栄養素であるグルタミン酸と飢餓状態との関係を拡散律速と振動現象とを絡めて解析をし、

バイオフィルムの成長制御に向けた新たな知見を提供している。(Nature Vol. 523, 2015)活発な質疑応答があり、基

礎研究のおもしろさと醍醐味を感じた次第である。

黒田 T 石井 G の近藤助教の発表 ポスター発表風景~同規模のポスターが、向かい側フロアに展示あり

なお、来年度の ICSB2017 は、米国バージニア、再来年度の ICSB2018 はフランス国リオンの予定である。開催 20

周年となる ICSB2019 の開催地は未だ決まっていない。2019 年度は、本研究領域の最終年度でもあり、積極的な参加

を期待したいところである。

報告: JST 東

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研究成果

月田チーム

Multiciliated cell basal bodies align in stereotypical patterns coordinated by the apical cytoskeleton. Herawati E, Taniguchi D, Kanoh H, Tateishi K, Ishihara S, Tsukita S. J Cell Biol. 2016 Aug 29; 214(5): 571-586. Multiciliated cells (MCCs) promote fluid flow through coordinated ciliary beating, which requires properly organized basal bodies (BBs). Airway MCCs have large numbers of BBs, which are uniformly oriented and, as we show here, align linearly. The mechanism for BB alignment is unexplored. To study this mechanism, we developed a long-term and high-resolution live-imaging system and used it to observe green fluorescent protein–centrin2–labeled BBs in cultured mouse tracheal MCCs. During MCC differentiation, the BB array adopted four stereotypical patterns, from a clustering “floret” pattern to the linear “alignment.” This alignment process

was correlated with BB orientations, revealed by double immunostaining for BBs and their asymmetrically associated basal feet (BF). The BB alignment was disrupted by disturbing apical microtubules with nocodazole and by a BF-depleting Odf2 mutation. We constructed a theoretical model, which indicated that the apical cytoskeleton, acting like a viscoelastic fluid, provides a self-organizing mechanism in tracheal MCCs to align BBs linearly for mucociliary transport. URL: http://jcb.rupress.org/content/214/5/571.abstract

Dose-dependent role of claudin-1 in vivo in orchestrating features of atopic dermatitis. Tokumasu R, Yamaga K, Yamazaki Y, Murota H, Suzuki K, Tamura A, Bando K, Furuta Y, Katayama I, Tsukita S. Proc Natl Acad Sci U S A. 2016 Jul 12;113(28):E4061-8. doi: 10.1073/pnas.1525474113. Atopic dermatitis (AD) is a chronic inflammatory skin disease in humans. It was recently noted that the characteristics of epidermal barrier functions critically influence the pathological features of AD. Evidence suggests that claudin-1 (CLDN1), a major component of tight junctions (TJs) in the epidermis, plays a key role in human AD, but the mechanism underlying this role is poorly understood. One of the main challenges in studying CLDN1's effects is that Cldn1 knock-out mice cannot survive beyond 1 d after birth, due to lethal dehydration. Here, we established a series of mouse lines that express Cldn1 at various levels and used these mice to study Cldn1's effects in vivo. Notably, we discovered a dose-dependent effect of Cldn1's expression in orchestrating features of AD. In our experimental model, epithelial barrier functions and morphological changes in the skin varied exponentially with the decrease in Cldn1

expression level. At low Cldn1 expression levels, mice exhibited morphological features of AD and an innate immune response that included neutrophil and macrophage recruitment to the skin. These phenotypes were especially apparent in the infant stages and lessened as the mice became adults, depending on the expression level of Cldn1 Still, these adult mice with improved phenotypes showed an enhanced hapten-induced contact hypersensitivity response compared with WT mice. Furthermore, we revealed a relationship between macrophage recruitment and CLDN1 levels in human AD patients. Our findings collectively suggest that CLDN1 regulates the pathogenesis, severity, and natural course of human AD. URL: http://www.pnas.org/content/113/28/E4061.long

Mechano-adaptive sensory mechanism of α-catenin under tension. Maki K, Han SW, Hirano Y, Yonemura S, Hakoshima T, Adachi T. Sci Rep. 2016 Apr 25;6:24878. doi: 10.1038/srep24878. The contractile forces in individual cells drive the tissue processes, such as morphogenesis and wound healing, and maintain tissue integrity. In these processes, α-catenin molecule acts as a tension sensor at cadherin-based adherens junctions (AJs), accelerating the positive feedback of intercellular tension. Under tension, α-catenin is activated to recruit vinculin, which recruits actin filaments to AJs. In this study, we revealed how α-catenin retains its activated state while avoiding unfolding under tension. Using single-molecule force spectroscopy employing atomic force microscopy (AFM), we found that mechanically activated α-catenin fragment had higher mechanical stability than a non-activated fragment. The results of

our experiments using mutated and segmented fragments showed that the key intramolecular interactions acted as a conformational switch. We also found that the conformation of α-catenin was reinforced by vinculin binding. We demonstrate that α-catenin adaptively changes its conformation under tension to a stable intermediate state, binds to vinculin, and finally settles into a more stable state reinforced by vinculin binding. Our data suggest that the plastic characteristics of α-catenin, revealed in response to both mechanical and biochemical cues, enable the functional-structural dynamics at the cellular and tissue levels.

URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27109499

岡部チーム

Raft-based interactions of gangliosides with a GPI-anchored receptor. N. Komura, K. G. N. Suzuki, H. Ando, M. Konishi, M. Koikeda, A. Imamura, R. Chadda, T. K. Fujiwara, H. Tsuboi, R. Sheng, W. Cho, K. Furukawa, K. Furukawa, Y. Yamauchi, H. Ishida, A. Kusumi (Co-Corresponding Author), and M. Kiso. Nat. Chem. Biol. 2016Gangliosides, glycosphingolipids containing one or more sialic acid(s) in the glyco-chain, are involved in various important physiological and pathological processes in the plasma membrane. However, their exact functions are poorly understood, primarily because of the scarcity of suitable fluorescent ganglioside analogs. Here, we developed methods for systematically synthesizing analogs that behave like their native counterparts in regard to

partitioning into raft-related membrane domains or preparations. Single-fluorescent-molecule imaging in the live-cell plasma membrane revealed the clear but transient colocalization and codiffusion of fluorescent ganglioside analogs with a fluorescently labeled glycosylphosphatidylinisotol (GPI)-anchored protein, human CD59, with lifetimes of 12 ms for CD59 monomers, 40 ms for CD59's transient homodimer rafts in quiescent cells, and 48 ms

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for engaged-CD59-cluster rafts, in cholesterol- and GPI-anchoring-dependent manners. The ganglioside molecules were always mobile in quiescent cells. These results show that

gangliosides continually and dynamically exchange between raft domains and the bulk domain, indicating that raft domains are dynamic entities.

http://www.nature.com/nchembio/journal/v12/n6/full/nchembio.2059.html

Mechanosensitive kinetic preference of actin-binding protein to actin filament. Yasuhiro Inoue and Taiji Adachi, Physical Review E 93,042403 (7 April 2016). The kinetic preference of actin-binding proteins to actin filaments is altered by external forces on the filament. Such an altered kinetic preference is largely responsible for remodeling the actin cytoskeletal structure in response to intracellular forces. During remodeling, actin-binding proteins and actin filaments interact under isothermal conditions, because the cells are homeostatic. In such a temperature homeostatic state, we can rigorously and thermodynamically link the chemical potential of actin-binding proteins to stresses on the actin filaments. From this relationship, we can construct a physical model that explains the force-dependent kinetic preference of actin-binding proteins to

actin filaments. To confirm the model, we have analyzed the mechanosensitive alternation of the kinetic preference of Arp2/3 and cofilin to actin filaments. We show that this model captures the qualitative responses of these actin-binding proteins to the forces, as observed experimentally. Moreover, our theoretical results demonstrate that, depending on the structural parameters of the binding region, actin-binding proteins can show different kinetic responses even to the same mechanical signal tension, in which the double-helix nature of the actin filament also plays a critical role in a stretch-twist coupling of the filament.

http://journals.aps.org/pre/abstract/10.1103/PhysRevE.93.042403

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参加メンバーリスト(ご所属機関に、研究室等へのリンクを張っています)

研究総括 山本 雅 沖縄科学技術大学院大学 教授

領域アドバイザー(五十音順)

秋山 徹 東京大学分子細胞生物学研究所 所長/教授

浅井 潔 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授

巖佐 庸 九州大学大学院理学研究院 教授

加藤 毅 京都大学大学院理学研究科 教授

鈴木 貴 大阪大学大学院基礎工学研究科 教授

高田 彰二 京都大学大学院理学研究科 教授

竹縄 忠臣 神戸大学バイオシグナル研究センター 客員教授

豊柴 博義 武田薬品工業株式会社 医薬研究本部 基盤技術研究所 主席研究員

中野 明彦 東京大学大学院理学系研究科 教授/理化学研究所光量子工学研究領域 チームリーダー

西川 伸一 JT 生命誌研究館 顧問/オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ) 代表理事

深見 希代子 東京薬科大学生命科学部 学部長/教授

本多 久夫 神戸大学大学院医学研究科 客員教授

三品 昌美 立命館大学総合科学技術研究機構 教授

吉田 佳一 (株)島津製作所 顧問

研究チーム(採択年度および五十音順)

チーム名 研究課題名およびグループリーダー(★研究代表者)

飯野チーム

H24 年度

神経系まるごとの観測データに基づく神経回路の動作特性の解明

飯野 雄一 (東京大学 大学院理学系研究科 教授)★

石原 健 (九州大学 大学院理学研究院 教授)

岩崎 唯史 (茨城大学 工学部 講師)

吉田 亮 (統計数理研究所 モデリング研究系 准教授)

影山チーム

H24 年度

細胞増殖と分化における遺伝子発現振動の動態解明と制御

影山 龍一郎 (京都大学 ウイルス・再生医科学研究所 教授)★

郡 宏 (お茶の水女子大学 大学院人間文化創成科学研究科 准教授)

黒田チーム

H24 年度

時間情報コードによる細胞制御システムの解明

黒田 真也 (東京大学 大学院理学系研究科 教授)★

石井 信 (京都大学 大学院情報学研究科 教授)

小澤 岳昌 (東京大学 大学院理学系研究科 教授)

藤井 輝夫 (東京大学 生産技術研究所 教授)

洪チーム

H24 年度

動的遺伝子ネットワークの多次元構造解析による高精度な細胞分化制御技術の開発

洪 実 (慶應義塾大学 医学部 教授)★

阿久津 英憲 (国立成育医療研究センター再生医療センター生殖・細胞医療研究部 室長)

小原 收 (財団法人かずさDNA研究所ヒトゲノム研究部 研究部長、副所長)

西村 邦裕 (株式会社テンクー 代表取締役社長)

的場 亮 (株式会社DNAチップ研究所 代表取締役社長)

古澤 力 (理化学研究所生命システム研究センター チームリーダー)

木立 尚孝 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 准教授)

松本 拡高 (理化学研究所情報基盤センター 研究員)

近藤チーム

H24 年度

動物の形態形成の分子メカニズムの探求と形を操る技術の創出

近藤 滋 (大阪大学 大学院生命機能研究科 教授)★

小椋 利彦 (東北大学 加齢医学研究所 教授)

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井ノ口チー

H25 年度

細胞集団の活動動態解析と回路モデルに基づいた記憶統合プロセスの解明

井ノ口 馨 (富山大学 大学院医学薬学研究部 教授)★

深井 朋樹 (理化学研究所 脳科学総合研究センター チームリーダー)

古賀 浩平 (弘前大学 大学院医学研究科 助教)

竹川 高志 (工学院大学情報学部 准教授) new!

栗原チーム

H25 年度

細胞動態の多様性・不均一性に基づく組織構築原理の解明

栗原 裕基 (東京大学 大学院医学系研究科 教授)★

時弘 哲治 (東京大学 大学院数理科学研究科 教授)

安田 賢二 (早稲田大学理工学術院 教授)

和田 洋一郎 (東京大学 アイソトープ゚総合センター 教授)

武田チーム

H25 年度

DNA3 次元クロマチン動態の理解と予測

武田 洋幸 (東京大学 大学院理学系研究科 教授) ★

森下 真一 (東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授)

月田チーム

H25 年度

細胞間接着・骨格の秩序形成メカニズムの解明と上皮バリア操作技術の開発

月田 早智子(大阪大学 大学院生命機能研究科/医学系研究科 教授) ★

石原 秀至 (明治大学 理工学部 物理学科 准教授)

大岩 和弘 (情報通信研究機構 未来 ICT 研究所 主管研究員)

米村 重信 (徳島大学医学部 教授/理化学研究所ライフサイエンス技術基盤センター チームリーダー)

濱田チーム

H25 年度

流れをつくり流れを感じる繊毛の力学動態の解明

濱田 博司 (理化学研究所システム形成研究センター センター長) ★

石川 拓司 (東北大学 大学院工学研究科 教授)

高松 敦子 (早稲田大学 理工学術院 教授)

篠原 恭介 (東京農工大学 テニュアトラック推進機構 特任准教授)

望月チーム

H25 年度

ネットワーク構造とダイナミクスを結ぶ理論に基づく生命システムの解明

望月 敦史 (理化学研究所 望月理論生物学研究室 主任研究員) ★

佐藤 ゆたか (京都大学 大学院理学研究科 准教授)

白根 道子 (九州大学 生体防御医学研究所 准教授)

廣島 通夫 (理化学研究所 佐甲細胞情報研究室 研究員)

上村チーム

H26 年度

革新的1分子計測技術による RNA サイレンシング機構の可視化: 基盤作出と応用展開

上村 想太郎 (東京大学 大学院理学系研究科 教授)★

塩見 美喜子 (東京大学 大学院理学系研究科 教授)

岡部チーム

H26 年度

ナノ形態解析によるシナプス動態制御システムの解明

岡部 繁男 (東京大学 大学院医学系研究科 教授)★

楠見 明弘 (京都大学 物質-細胞統合システム拠点 教授)

井上 康博 (京都大学 ウイルス・再生医科学研究所 准教授)

岡村チーム

H26 年度

クロノメタボリズム:時間相の生物学

岡村 均 (京都大学 大学院薬学研究科 教授)★

今西 未来 (京都大学 化学研究所 講師)

黒澤 元 (理化学研究所 望月理論生物学研究室 研究員)

三浦チーム

H26 年度

からだの外でかたちを育てる

三浦 岳 (九州大学 大学院医学研究院 教授)★

西山 功一 (熊本大学国際先端医学研究機構・特任准教授)

横川 隆司 (京都大学 大学院工学研究科 准教授)

関連・連携プロジェクト さきがけ「細胞機能の構成的な理解と制御」(上田泰己研究総括:東京大学大学院医学系研究科 教授)

CREST「ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術(田中啓二研究総括(東京都医学総合研究所 所

長))

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さきがけ「ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術」(若槻壮市研究総括:米国 SLAC 国立加速器

研究所 光科学部門 教授/スタンフォード大学 医学部 構造生物学 教授)

理化学研究所生命システム研究センター(QBiC) (柳田敏雄センター長)

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)生命動態システム科学推進拠点事業

多次元定量イメージングに基づく数理モデルを用いた動的生命システムの革新的研究体系の開発・教育拠点(代表研究者:

京都大学 松田道行)

転写の機構解明のための動態システム生物医学数理解析拠点(代表研究者:東京大学 井原茂男)

複雑生命システム動態研究教育拠点(代表研究者:東京大学 金子邦彦)

核内クロマチン・ライブダイナミクスの数理研究拠点形成(代表研究者:広島大学 楯真一)

編集後記

生命動態領域を担当してから、頭の片隅に置いていた”音楽と数学”の関係を探求してみたいという気持ちが強くなった。こ

のテーマは 10 代からうっすらと頭の中にありながら、学生時代に J.Bach 作曲の『平均律』等の楽譜を目の前にして「構築的

であり、音楽と数学は切り離せない関係だ」という教えを受けた。それは数、周波数、比率や音の数列等で、リュートからオル

ガンという楽器ができ、ピアノという楽器ができた時に、鍵盤楽器の音として数学を用い譜表にしたということだろう。記憶が

おぼろげである。もちろんそれだけで作曲されてはいないと思う。最近では近代の作曲家も取り上げられて数学的にアナリーゼ

されている様子、しかし私としては少々疑念を持ち、なぜか悲しい気持ちにもなる。この関係を解き明かす書物と巡り合いたい

ものだ。(JST 深澤)

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、

人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」

人材育成ネタでよく取り上げられる、有名な山本元帥海軍大将の言葉。奇をてらわぬ原点回帰ともいうべき真理。PI の皆様は、

ラボや CREST「生命動態」の志士たちに、おもいや実績、経験等様々な形を魅せていらっしゃるかと思います。CREST「生命

動態」は、今年度、領域全体の中間評価の年でもあります。卓越した研究成果はさることながら、「分野融合」領域に課せられた

人材育成についてはいかがでしょうか?数理デザイン道場や領域会議で拝見するだに、この研究領域はいつも若手研究者がたい

へん活発。ぜひ、世界に羽ばたける人材がどんどん育っていくことを期待しています。(JST 東)

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2016 年 10 月 1 日発行

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