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CORPORATE RESPONSIBILITY 2006 SUMMARY REPORT

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Page 1: Corporate最高経営責任者のあいさつ 「アストラゼネカが、革新的 な医薬品を生み出す企業 として評価され、そうした 経営方針により皆様から

Corporate responsibility 2006

summary report

Page 2: Corporate最高経営責任者のあいさつ 「アストラゼネカが、革新的 な医薬品を生み出す企業 として評価され、そうした 経営方針により皆様から

目 次最高経営責任者のあいさつ 2Patients 4患者さんの安全性 6医薬品へのアクセス 7発展途上国の場合 8Products 10動物試験 12臨床試験 13幹細胞研究 14

環境における医薬品 15営業およびマーケティング活動 16経済発展の支援 17PeoPle 18人権 20安全性、健康および福利厚生 20多様性 23Performance 24責任およびアカウンタビリティ(説明責任)26

優先行動計画 26ステークホルダーとの対話 27業績評価 29コーポレートガバナンスとコンプライアンス29環境実績 30納入業者との協力 32全社的なCRの浸透 33地域社会での活動 35保証報告 36

アストラゼネカについて>がん、循環器、消化器、感染症、ニューロサイエンス、呼吸器・炎症などの重要な治療領域で医薬品の研究、開発、生産および販売活動を展開しています。

>革新的かつ有効性の高い幅広い製品群を有し、多数の製品が世界でトップセールスを記録しています。

>従業員数は世界で6万6,000名を超えます。

>100カ国を超える国々で営業活動しています。

>19カ国に製造拠点を置いています。

>8カ国に16の研究開発拠点を有しています。

>1営業日当たり研究開発費は1,600万ドルです。

>好業績と高い競争力の実現に向けて取り組むと同時に、常に当社のコア・バリューを大切にして、持続的な成長を目指しています。

アストラゼネカグループcr(企業責任)ポリシー新規医薬品を開発することにより、アストラゼネカはヒトの健康増進および生活の向上を推し進めています。我々の事業活動は、我々が貢献している患者および当社の株主に影響を与えているだけでなく、当社の社員および社会全体にも影響を与えています。

当社に対する評価および継続的、長期的な成功は、当社が財務上の責務と社会的/環境的責任をうまく統合できるかどうかにかかっています。当社が長期的成功を継続させることができれば、当社は、社員が誇りを持って働き、社会に受け入れられる会社として、株主の自信と信頼を継続して得ることができます。

アストラゼネカは、当社が公開している社員行動指針に即した当社の本質的な価値観に沿って、世界中で、高水準の企業責任を確立し、推進し、維持し、下記の項目を確実に実現していきます。

>継続的に患者のベネフィットと安全性を最優先事項とすること。

>継続的に、安全性問題、健康問題、環境問題を当社の基本的な考慮事項とすること。

>すべての社員が当社の事業にもたらす個性、様々な才能、創造力を十分に評価し尊重すること。

>当社の新規医薬品の研究開発において、高い倫理基準を保持すること。

>事業を展開するすべての国々のマーケットおよび販売活動において、高い倫理基準を保持すること。

>当社の事業を展開する地域社会に積極的に貢献すること。

>最低限、国の法令および国際法に従うこと。

>仕入れ業者に当社と同様の基準を採用するように勧告することによって、当社の企業責任(CR)に関する取り組みを広めていくこと。

>CRに関して、新たに発現した問題に適切に効率よく対処すること。

このような義務を果たし、当社のCRの遂行を継続的に改善するために、我々が行っている取り組みについて分かりやすく情報伝達をしていきます。

本書に記載されているデータは暫定数値です。3年間の実績概要の推移など最終数値は当社ウェブサイト astrazeneca.com/responsibility にて発表します。

Page 3: Corporate最高経営責任者のあいさつ 「アストラゼネカが、革新的 な医薬品を生み出す企業 として評価され、そうした 経営方針により皆様から

高潔、高い倫理基準

オープン、誠実、信頼と協力

個人と多様性の尊重

すべてのレベルにおけるリーダーシップ

アストラゼネカのコア・バリュー:

アストラゼネカは重要な領域で多様な治療薬を有する世界最大級の医薬品企業です。当社は先端科学と広範な経営基盤をもとに、患者さんの生活の質を高める新しい医薬品を市場に継続して提供することで、株主の皆様は勿論のこと、広く社会にお役に立つ所存です。又、これを実現してこそ、当社の持続可能な発展が図られると信じています。

当社では、Patients(患者さん)、Pr o duc t s(製品)、PeoPle(人材)、Performance(業績)という4つのキーワードを掲げて企業活動を展開しており、これらキーワードのあらゆる活動に企業責任(cr)目標を組み込んでいます。これは、ステークホルダーの方々や社会からアストラゼネカの信頼獲得には、事業内容だけでなく経営姿勢もきわめて重要と認識しているからです。当社は、高いレベルのコア・バリューとCRポリシーに沿って全世界で一貫した適切な行動を徹底して、皆様の信用と信頼を維持したく考えています。

本 報 告 書 は 、アストラゼネカの 企 業 責 任(c o r P o r at e resPonsibility- cr)の取り組みに焦点を合わせ、2006年の実績の概要をご報告するものです。

アストラゼネカのcrに関する実績、方針、原則などのさらに詳しいデータや情報は、当社のウェブサイトでご覧になれます。

ウェブサイトastrazeneca.com/resPonsibilityでは随時、最新情報を掲載しておりますので、是非ご覧ください。

Page 4: Corporate最高経営責任者のあいさつ 「アストラゼネカが、革新的 な医薬品を生み出す企業 として評価され、そうした 経営方針により皆様から

最高経営責任者のあいさつ

「アストラゼネカが、革新的な医薬品を生み出す企業として評価され、そうした経営方針により皆様から信頼されること―それが私の願いです。」

astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

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アストラゼネカの事業戦略は、より有効性が高く安全な医薬品開発に役立つ革新的な科学技術基盤を構築することと、当社の医薬品を患者さんと社会に提供して、治療上の価値と経済的価値を最大限引き出すこと、患者さんと医療に対する価値ある貢献を継続するのに必要な洞察力を備えるべく、ステークホルダーの方々と密接に協力して活動することです。こうした活動のすべてにおいて企業責任(CR)を果たすための取り組みは、当社の根幹であり、その維持は常に最重要課題です。

最高経営責任者である私は、経営幹部とともに、事業目標の実現を牽引するとともに、当社の持続的な成功に不可欠な、ステークホルダーの方々と地域社会からの信頼を維持する責任があります。

当社では業績管理(BPM)の枠組みに基づき、4つの中核的な領域、すなわちPatients、Products、People、Performanceにおける戦略目標に沿って財務目標とCRなどの非財務目標を定めており、アストラゼネカ取締役会とシニア・エグゼクティブ・チーム(SET)がこれらの4つの各領域における進捗を四半期ごとに評価します。

自主性の発揮 目標を設定するだけでは業績の向上を実現できないことは明らかです。活動内容を明確にしたうえで、その活動を確実に実行できる社員に責任を割り当てなければなりません。アストラゼネカの各部門・各事業所は、SETの指揮のもと、グローバルな枠組みに基づき、しかも各地域の問題と優先課題に適した独自のCR目標を設定する責任を負っています。そして、全社員が当社のCRコミットメントを明確に理解し、それが自分にとってどのような意味を持つか完全に把握したうえで、日々のビジネス上の意思決定にCRへの配慮を反映するよう徹底を図っています。

洞察力の獲得事業活動において効果的にリーダーシップを発揮するには、ステークホルダーの方々のニーズを把握することがきわめて重要です。当社は以前にもましてステークホルダーの方々との対話を重視しており、そうした対話は当社の事業活動にしっかりと定着した特徴となっています。CR優先課題を特定するうえでも、ステークホルダーの方々とのかかわりは重要です。そこで当社は2006年に各地域のCR優先行動計画を立案する際の重要なステップとして、CRに関するステークホルダーの方 と々の対話に備えて新しい指針を社内発表しました。これに関する詳しい説明は26ページをご覧ください。

社員の意見の聴取 社員の意見は当社にとって非常に重要です。本年実施したグローバル社員意識調査の結果は、社員の勤務状況を追跡し、問題のある領域を調べるうえで有益なものとなりました。2年に1回実施されるこの調査は本年が4回目で、心強いことに過去最高の回答率(86%)となりました。これは、信頼できるフィードバックの仕組みとして、社員が意識調査を信用していることを表しています。今年の調査結果は、全カテゴリーにおいて前回調査時より改善がみられました。肯定的なフィードバックが示された領域としては、健康、安全、情報の共有、コミュニケーションが挙げられます。また今回の調査から、リーダーシップと業績管理の一部の側面など、さらなる改善を要する領域が明らかになりました。私はこのフィードバックを真摯に受けとめ、これらの領域の改善に取り組む決意であり、上述した業績管理に組み込まれる責任の明確性を向上させる施策などがすでに開始されています。

新薬開発基盤の拡充当社独自の研究開発力を増強し、患者さんによりお役に立つ次世代の医薬品の研究基盤を拡大するために、革新的な科学技術が重要であるという当社の認識は、本年も変わっていません。そのため当社は、革新的な医薬品パイプラインの増強を目的とした数々の企業買収を実行しました。この戦略には、新たにアストラゼネカグループの一員となった企業の社員が当社のCRポリシーと基本原則をきちんと理解し、一貫して適用するよう徹底を図る責務が伴います。そうした理由から、本年のCR優先行動計画にこの取り組みを盛り込みました。

発展途上国における活動当社は、全世界のより多くの患者さんが必要な医療サービスを受けられるように、私たちがお手伝いできる方法を常に模索し続けています。この一環として、乳がん治療の増強を中心とするパイロット・プロジェクトをエチオピアで実施しているほか、海外協力隊(VSO)と新たなパートナーシップ契約を結んでおり、今後当社の社員は各自のスキルや経験を生かして、途上国の重要な社会基盤の改善に向けて貢献できるようになります。また、赤十字社とアフリカ医療研究財団による地域に密着した結核撲滅活動への支援も拡大しています。(当社はバンガロールの研究所で新しい結核治療薬の研究にも取り組んでいます。)これに関する詳しい説明は8ページをご覧ください。

気候変動に関する課題 ほとんどの企業と同様に、当社の事業が気候変動に影響すると思われるのは、施設でのエネルギー使用、その他の社内活動、各種の輸送手段から排出される地球温暖化ガスです。しかし、当社の一部の喘息治療薬において薬物を送り出す仕組みとして噴射剤を使用していることから、さらなる課題に直面しています。噴射剤は地球温暖化の一因となるおそれがあるからです。当社の事業が成長し、そうした治療薬を利用する患者さんが増えるにつれて、それに伴うガスの排出量も増えれば、今後、地球温暖化ガスの排出量を毎年削減することは非常に困難になります。しかしながら、当社は、2010年の時点における製品を含む全源泉からの排出量を2000年の実績以下とするために懸命に取り組んでいます。これに関する詳しい説明は30ページをご覧ください。

人々との交流の重視当社は発展し続けていますが、絶えず変化する今日の世界では、CRを果たす上で、様々な課題に直面することでしょう。私達は、事業の発展を促進し続けながら、適切な方法で事業を運営するという当社の最も重要な責務を常に忘れぬよう徹底せねばなりません。ステークホルダーの方々や社会における当社の評判は、私たちがその責務を果たせるかどうかにかかっており、その責務の一端は、勤務地がどこであろうと、どのような職務を担当しているかにかかわらず、社員一人ひとりの肩にかかっています。人々との交流を大切にし、アストラゼネカが今後も社会の信用ある重要な一員として歓迎されるよう常に努力します。

DaViD r brennanChief exeCutiVe offiCer

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astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

私たちの最も重要な責任は、当社の医薬品が確実に効果を発揮し、それらの医薬品をできる限り安全にお使いいただけるようにすることです。また、全世界のより多くの患者さんが必要な医療サービスを受けられるようにするために、当社がお手伝いできる方法を常に模索し続ける責任があると考えています。

このセクションでは、こうした領域における当社の取り組みの概要について説明します。詳細な情報については、当社のウェブサイト(ASTRAZENECA.COM)をご覧ください。

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当社は全世界の人々の健康増進と生活の質の向上に役立つ6つの重要な治療領域—がん、循環器、消化器、感染症、ニューロサイエンス、呼吸器・炎症—において、患者さんのニーズにお応えできる幅広い強力な製品群を有しています。

当社の事業は病気との闘いです。がん、心臓病、神経疾患など、生命と健康に重大な脅威をもたらす様々な病気と闘っている患者さんと医師の皆様のお役に立つ医薬品を提供しています。

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500医薬品の臨床上の安全性に関する専門スタッフで構成された500名を超える社内チームが、医薬品のライフサイクル全体を通して医薬品の安全性に対する当社の責務を確実に遂行するべく、安全性に関する業務に専念しています。

バンガロールの当社の専門研究施設では

80名を超える研究者が、新しい結核治療薬を発見するために研究に打ち込んでいます―結核は全世界における感染症による主な死因の1つです。

企業責任優先行動計画 – patients

項 目 目 標 行動計画 Kpi(適宜) 2006年のKpiに基づく実績および詳細情報の参照ページ

患者さんの安全性 当 社 の あらゆる医 薬 品 につ いて製品ライフサイクルの全体を通して患 者さん の 安 全性に配慮することを、引き続き基本的 な重 要 事 項とするよう 徹 底 する。

各製品の創薬研究、開発、上市およびマーケティング活動の全段階における医薬品 の 安 全 性に関する取り組みの継続。

医薬品のベネフィットとリスクに対する理解を高めるためのコミュニケーションの継続。

この 分 野では医 薬品のベネフィットとリスクを比較検討して安全性を評価する必要があり、KPIを設定するのは困難である。医薬品のリスクを最小限に抑え、ベネフィットを最大限に引き出す方針をあらゆる業務に組み込む。

6ページ参照。

医薬品へのアクセス(途上国の疾病に関する活動を含む)

新ブランドの価格戦 略および 流 通戦 略 の 決 定に際し、医薬品へのアクセスを考慮するよう徹底する。

途上国では、当社のスキルと経験を生 かして 持 続 可能 な方 法で 医 療サービ スの 提 供を支援する。

医薬品へのアクセスを検討する基礎となる 枠 組み を周 知 する。

新たな 結 核 治 療 薬の創薬研究の継続。医薬品の開発・提供に関 する外 部 関 係組 織との 協 議 の 継続。

途 上 国 の医 療 サービス提 供 能 力の 強化を支援する。

結核治療の新薬として開発される候補薬。目標:2010年以降。

KPIの目標期限を見直し。

7~8ページ参照。

当社はエチオピアにおいて現地の乳がん治療能力の向上を目的としたパイロット・プロジェクトを実施しており、今回の取り組みが成功すれば、このプロジェクトは他の国々や他の疾患領域でも実施できるモデルとなるでしょう。

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90%新薬の90%超は研究開発型医薬品企業によるものです。豊富なスキル、経験、経営資源を併せ持ち、真の医薬品の進歩のために必要な活動すべてに取り組んでいるのは、研究開発型医薬品企業を置いて他にありません。

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astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

患者さんの安全性治療対象の疾患のみをターゲットとし、他の作用をまったく及ぼさない医薬品が理想的です。しかし現実には、研究者の懸命な取り組みにもかかわらず、そのような医薬品はまだ存在しておらず、どのような医薬品でも副作用が生じる可能性があります。したがって、その治療薬の開発企業が、また販売を承認する規制当局が、そして最終的には患者さんと話し合ったうえで、医師が、医薬品のベネフィットと、その副作用、そしてリスク水準とを十分に比較検討しなければなりません。リスク水準は、特に適応症の疾患の種類によって異なります。例えば、がんのような致命的な疾患では、重篤な副作用の可能性がある場合でも、その医薬品に救命または延命につながる有望な薬効があることを理由に、受け入れられると判断されることがあります。また、患者さんの特定の薬剤に対する忍容性とコンプライアンスにも左右されます。代替療法に伴うリスクや、治療薬がまったく存在しないことも重要な検討要素となります。

当社では、各医薬品の―ライフサイクル全体を通して―リスクを最小限に抑え、ベネフィットを最大限に引き出すことを目指しています。

創薬研究創薬研究では、新薬となる可能性のある化合物を見つけだすために何千もの化合物について調査研究を行っていますが、薬剤の安全性と作用機序を中心に据えた厳しい選別プロセスをクリアして、新薬となるものはごくわずかです。最も有望な化合物を開発する間も、安全性が引き続き最優先事項となります。ヒトを対象として新薬となる可能性のある薬剤の試験を実施する前には、動物試験から得た安全性データを規制当局に提出する必要があります。そして、ヒトを対象とした試験の全段階を通して安全性データは継続的に収集され評価されます。新薬の販売承認の取得は、規制当局が申請書類を厳格に審査して承認されます。

上市後の活動 さらに、医薬品の日々の作用状況を把握することも、患者さんの安全性に対する当社の責任を果たすうえできわめて重要です。そのため、上市後も引き続き当社の医薬品をすべてモニターし、開発段階で確認されなかった副作用が生じたときはすぐに察知できるようにしています。臨床試験は、たとえ広範に実施したとしても、非常に大規模で多様性に富んだ全患者さんの状況を完全に再現することはできません。ごく稀な副作用の場合は、医薬品の上市後により多くの患者さんに使用していただき、長い期間を経て初めて明らかになることもあります。受け取った情報が、医薬品の有用度を変更する必要があることを示唆している場合は、さらなる臨床試験の実施、処方情報の変更について医療従事者等へ連絡します。場合によっては適宜、実施中の臨床試験の中止、あるいは、市場からの製品回収といった措置が講じられます。

2006年の抗凝固剤Exantaの市場からの回収および開発中止の決定は、新たな臨床試験のデータが重度の肝障害の潜在的なリスクを示唆したことが誘因となりました。このデータは、整形外科手術後に、静脈血栓塞栓症の予防として、現在、本剤の販売が承認されている期間を上回る35日を超える期間、Exantaを使用することについて調査する臨床試験から得られたものでした。当社では、患者さんの安全性のためにExantaを市場から回収するとともに、その開発を中止しました。規制当局に加えて、薬剤を処方する医師などの医療従事者の方々へ広く連絡をとり、新たな患者さんにExantaの投与を開始しないよう通知しました。また、回収に関する報道の際は、錠剤の服用をやめる前にまず医師に相談すべきであるという患者さんへのメッセージを、当社の公表情報に必ず含めました。

継続的なコミュニケーション新薬の承認プロセスとそれ以降の業務の一環として、当社は規制当局と協力し、使用上の注意、服用指示、警告、禁忌、予測される副作用など、医療従事者が処方を行う際の判断に必要となるベネフィット・リスク情報をまとめた処方情報を作成しています。また、適宜、患者さんに対しても当社の医薬品や使用方法に関する情報を提供しています。

医薬品の安全性に関する専任スタッフ医薬品の臨床上の安全性については、アストラゼネカ全社で500名を超える専門スタッフからなる経験豊富な社内チームが、上記のプロセス全体を通して製品の安全性に対する当社の責務を確実に遂行するべく、安全性に関する業務に専念しています。また、(開発中の製品、上市製品の別を問わず)製品ごとに医薬品の安全性についてグローバルに検討する担当医師を定め、医薬品の安全性を専門とする研究チームのサポートのもと、担当製品の安全性を継続的に監視していただいています。アストラゼネカグループの各国企業の医薬品安全性責任者は、各自の国内における製品の安全性について責任を負っています。

patients

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不正医薬品の撲滅 不正医薬品は、全世界の患者さんの健康と福祉に影響を及ぼす可能性があります。世界保健機関(WHO)の推定では途上国の医薬品の10%が不正医薬品であり、中南米・アジア・アフリカ諸国ではその割合は30%にも達します。一方、先進諸国では効果的な規制システムが実施されているため不正医薬品は1%未満です。

アストラゼネカでは、偽造業者による当社製品の模造を困難にする技術の導入など、患者さんの保護に焦点を置いた一連の活動に取り組んでいるほか、市場の監視とサプライチェーン活動のモニタリングを実施しており、潜在する不正医薬品の製造・販売の動きを常に把握するようにしています。当社製品を詐称する不正医薬品の報告を受けたときは、患者さんの健康を守るため、所轄規制当局、医療従事者、販売業者、法執行機関等の組織・団体と協力して迅速に対処しています。

不正医薬品を撲滅するためのさらなる対策を調査研究するとともに、WHOの国際偽造医薬品対策タスクフォース(IMPACT)作業部会をはじめとする公共・民間部門の様々な不正医薬品撲滅フォーラムに引き続き参加していきます。

医薬品へのアクセス価格設定全世界の医療に対する需要は、高齢化、人口の増加、新興市場の出現により高まるばかりであり、同時に医療費予算に対する圧力が高まっています。当社では継続的な課題として、こうした動向に伴う薬価引き下げ圧力への対処に努める一方、革新的な医薬品の研究開発・製造・販売に継続的に投資しています。

当社が医薬品の価格を設定するときは、患者さん、医療費の負担者、そして社会全体にもたらす包括的な価値を考慮に入れます。また、株式公開会社である当社には、常に株主の皆様に投資に対する利益を還元する責任があるという事実も考慮します。当社のグローバルな価格ポリシーでは、患者さんの適切なアクセスの確保など、多様な要因を比較検討し、当社製品の収益性を持続可能な方法で最適化する枠組みを定めています。

当社の製品群(既存製品および開発段階製品の両方を含む)を継続的に見直し、医療ニーズを満たす上で重要と見なされる可能性のあるものを見極めています。重要な医薬品とは、発展途上国で流行している(または将来流行する)疾病を治療できるものや、主要な治療薬あるいは比類のない治療薬となる可能性があり、未対応のニーズに応え、重篤もしくは危篤の患者さんの治療に多大な効果を及ぼすものをいいます。

こうした中、当社は、寄付や寄贈、拡大アクセスプログラムなどを通じて、患者さんが重要な医薬品にアクセスできるように努めています。さらに当社は、これに関連して区別価格制度を支持しています。ただし、この場合は、区別価格を設定した製品が必要な患者さん以外に流用され、富裕市場で販売・使用されることがないように徹底するセーフガードの実施が前提となります。

知的財産の保護特許制度は、社会の進歩に役立つ新薬開発を続ける上で重要な誘因となっています。医薬品の場合は、新薬の圧倒的多数が研究開発型医薬品企業から生まれています。豊富なスキル、経験、経営資源をすべて併せ持ち、この医薬分野で真の進歩を成し遂げられるのは、研究開発型医薬品企業をおいて他にありません。新薬開発への道は長く、複雑で、巨額の費用を要し、リスクを伴います。8~12年もの歳月をかけて研究開発に取り組み、最初の製品の販売にこぎつけるまでに、通常8億ドルを超える費用が投じられます。当社では通例、研究開発プロセスの早い段階で特許出願を行います。つまり、新薬が上市された時点で、他社がジェネリック医薬品を(当社のように巨額の研究費を負担する必要がないため、かなり低い価格で)販売できるようになるまで、当社には8~15年しか残されていないことになります。したがって、知的財産権は、重要な治療領域の医薬品開発に継続的に投資していくために必要な収益を得る時間を当社に与えてくれるものであることから、当社は、保護期間中における自社の正当な知的財産権を積極的に保護しています。

特許は治療薬を独占するものではありません。他社は同一の症状を適応症とする別の治療薬を開発することができます。また、特許制度上、特許医薬品に関する情報の開示および公告が義務づけられているため、改善された代替薬の導入競争が促進され、治療薬の選択の幅が広がります。治療薬が異なれば患者さんの反応も異なるため、このことは重要な意味を持ちます。ある製品を対象としたすべての特許権が失効した後は、(創薬研究開発型企業、ジェネリック医薬品企業双方の)製薬企業は、合法的に同一製品を発売できるようになります。

米国では、健康保険に加入していない人々が当社の医薬品を割引価格や無償で利用できるように支援することを目的とした患者支援プログラムを実施しています。2006年には支援対象となる患者さんの所得水準を引き上げることによりプログラムの範囲を拡大しました。これにより、支援を受けられる患者さんが大幅に増えました。

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astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

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発展途上国の場合アストラゼネカでは引き続き発展途上国における健康増進に貢献するために積極的に取り組んでいます。当社の医薬品は、発展途上国が現在直面している最重要の医療問題に対応したものではないため、当社のグローバルなスキル、経営資源、経験を生かして別の方法でこうした困難な課題に立ち向かうことが最善の支援になると考えており、途上国における主要な致死的疾患である結核(TB)の新しい治療薬の発見を中心に据えた専門研究施設を設置しています。このような継続的な研究プログラムと並行して、常に地域社会における治療能力の強化を援助する活動の拡充に努めています。

結核の撲滅に向けた活動専門研究 結核は全世界における感染症による主な死因の1つで、毎日5,000人を超える人々が結核で亡くなっており、以前より増加しています。結核の現行の治療法は、効果はあるものの複雑で長期にわたるため、患者さんは、症状が現れなくなると完治していないにもかかわらず治療をやめてしまうことがあります。その結果、結核が再発し、薬剤耐性が起こりやすくなります。結核の新しい治療薬を発見するプロセスは複雑です。新薬は既存の結核治療薬とも適合 性がなければならず、さらに、結核はHIV感染者の最大の死亡原因であるためHIV/エイズ治療でも使用できる必要があります (HIV/エイズと結核の二重感染は致命的であり、いずれの疾患も他方の進行を早めます)。

新しい結核治療薬の発見に向けた世界的な取り組みに参加できるよう社内体制を強化するため、当社は2003年にインドのバンガロールにおいて、結核に特化した最先端専門研究施設を開設しました。80名を超える同施設の研究者たちは米国マサチューセッツ州ボストンの当社感染症研究センターや、この分野の学界指導者とも密接に協力しあっており、ハイスループットスクリーニング、化合物ライブラリーなど、当社のプラットフォームテクノロジーを無制限に利用できるようになっています。

当社が重点課題として取り組んでいるのは、薬剤耐性結核菌に作用し、治療期間の短縮につながり、(休眠型を含め)結核を根治して再発の可能性を低下させ、しかもHIV/エイズ治療にも適合する新たな結核治療薬の発見です。当社の研究者は、こうした困難な研究分野での経験を深めるにつれて、以前にもまして迅速に適切な判断を下し、最も有望な最高品質の新しい分子に的を絞って研究に打ち込めるようになっています。しかしながら、当社では最も可能性の高い候補のみに限定して研究を推進する方針であり、有効な薬剤の必要条件に対する理解が深まるに伴い、開発候補について非常に高いハードルを越えなければならなくなっており、こうした状況が当社のスケジュールに影 響を及ぼしています。以前は2007~2008年中に候補薬についてヒトを対象とした試験の開始を予定していましたが、当社はこうした複雑な研究分野で成功するために厳しい基準を設定しており、現在のプログラムの進行状況では候補薬の特定にまだ3~4年の期間を要します。したがって本分野の主要行動指標(KPI)を見直し、候補薬の特定は2010年以降としました。当社の研究者は今後もさらに知識を蓄え、結核治療の重要な進歩に向けて引き続き研究プログラムの進行を促進し、可能性の高い化合物の強固なポートフォリオの確立に努めます。

候補薬が特定され次第、規制当局のほか、結核治療薬開発のための世界同盟(Global Alliance for TB Drug Development)などの外部専門機関と協議のうえ、候補薬の開発方針を定める予定です。通常どおり特許出願を行いますが、最も重要なこととして、しかるべき国際組織や現地組織とパートナーシップ契約を結び、治療薬を必要とする最貧国の人たちに手頃な価格で提供します。

研究の枠を超えた支援活動当社は4年前から英国赤十字社と協力して中央アジア、特にキルギスタンとトルクメニスタンにおける結核治療への取り組みを支援しています。両国は貧困ライン以下の人口比率が高く、結核の発生率は依然としてきわめて高い水準にあります。赤十字社と赤新月社は、当社の資金援助のもとに地域密着型の活動を展開し、結核に対する意識の向上、結核関連徴候の治療、早期診断の促進、患者さんの服薬遵守の促進、現地における予防・管理能力の確立に重点的に取り組んでいます。これまでに、新聞・テレビ等によるキャンペーン、30万人以上の人が受講した学校や公民館等での保健教育講座などを通じて、地域社会における結核に対する意識の大幅な向上が図られています。現在では診断を受けた多くの患者さんが、赤十字社や赤新月社の専任看護師の看護とサポートを受けて治療を終えるようになっています。

このほか当社はカザフスタンにおける慈善活動の新しいプログラムを支援しており、これは同地の公衆衛生上重大な脅威となっている結核とHIVの二重感染の発生削減を目的としています。現地の赤新月組織は、効果的で持続可能かつ反復可能な治療モデルの確立と、結核やHIVに感染した患者さんと家族に対する社会的支援の確立に努めています。

2007年1月には英国赤十字社との交流をさらに拡充しました。これに伴い今後3年間、南アフリカ共和国とレソトの結核感染の被害が深刻な地域において、結核とそれに加えて重大な脅威となっているHIVとの二重感染の撲滅に向けた地域社会の取り組みを援助する英国赤十字社の活動を支援する予定です。

上記に加えて本年はアフリカ医療研究財団 (AMREF)との交流を通じて支援活動の対象地域の拡大を図りました。同財団は、結核/HIV/マラリアの3つの疾患全てにより苦難に見舞われているウガンダの医療制度の強化と、これらの疾患の統合化された対策プログラムの実現の促進に重点的に取り組んでいます。このような多重感染への対処はまだ進んでいないため、今回のプログラムはアフリカにおいて新たなモデルを開発し導入する好機と

英国赤十字社とアフリカ医療研究財団に対する当社の支援は、アフリカ・アジア諸国における結核/HiVとマラリアの各地域の予防・治療能力の強化活動を援助することに焦点を置いています。

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なります。

様々な組織と協力する継続的な取り組みの一環として、当社では結核撲滅活動を援助する国際的な取り組みに積極的に参加しています。

2006年にはゲイツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation)、結核治療薬開発のための世界同盟(Global Alliance for TB Drug Development)(結核同盟)、治療活動グループ(Treatment Action Group: TAG)、ストップ結核パートナーシップ新結核治療薬作業部会(Stop TB Partnership Working Group on New TB Drugs)によって開催された結核治療薬の開発における重要課題に関するオープンフォーラム(Open Forum on Key Issues in TB Drug Development)の第2回大会に資金を提供し参加しました。このときのワークショップには製薬業界、学界、非政府組織(NGO)の代表者が参加し、結核治療薬の登録までのクリティカルパスと枢軸となる試験における重要課題のほか、HIV/エイズ感染者など特定の患者さん向け結核治療薬の開発における困難な課題について集中的に討議しました。

さらに当社は、国際赤十字・赤新月社連盟が新たに創設した欧州ストップ結核パートナーシップにも参加しました。これは、欧州地域での結核の流行に備えてさらに効果的な対応策を講じるため、国際赤十字・赤新月社連盟が世界保健機関(WHO)、欧州疾病予防管理センターなどの主要な欧州機関やNGOと共同で設立したもので、民間部門、各種財団、学術研究機関、報道機関、NGO、市民団体など、多様なステークホルダーを活動に引き込むことによ

り戦略的な効果を強化することを目指しています。

保健医療能力の強化医療へのアクセスは、適切な医薬品の利用可能性だけでなく、基本的な医療制度が確立され、訓練を積んだ医療スタッフが充実し、効果的な供給・流通の仕組みが整備され、包括的な医療管理のもとで医薬品が十分に効果的に活用されるようになっているかどうかに左右されます。一部の途上国では、こうしたことが特に困難な課題となっています。

アストラゼネカではこのような困難な状況の中でお役に立てる最善の方法を模索するため、2005年にエチオピアにおいて現地の乳がん治療能力の向上を目的としたパイロット・プロジェクトに着手しました。乳がんは同国の若い女性の間で2番目に多いがんです。プログラム開始当時、エチオピアのがん専門医は全国にわずか1名のみであり、乳房撮影装置は1台もなく、化学療法やホルモン剤へのアクセスも容易ではありませんでした。そのうえ、がん検診は全く実施されておらず、国内の治療プロトコルも未策定でした。最初の18カ月間のプログラムは、(同国の2名のがん専門医が活動拠点 と す る )ア ジ ス アベ バ に あ る T i k u r Anbessa大学病院の診断・治療能力の強化に重点を置きました。アストラゼネカの乳がん治療薬も寄贈しています。プロジェクトの長期目標としては、医療従事者の意識の向上、専門医などへの紹介システムの強化、医療機関ごとのがん登録リストの創設、エチオピアの医師を対象としたトレーニングの実施、乳がんの診断・治療に優れた中心 拠 点としてのT i k u r Anbessa大学病院の確立が挙げられます。長期的には、治療指針を策定するほか、診断・

検診手順に要する将来の資金を確保する仕組みの整備に向けて援助するなど、パイロット・プロジェクトの期間中に確立される啓蒙活動を通じて、プロジェクトの持続可能性を確実なものとします。また、本プログラムでは政策立案者や、世界保健機関、国際対がん連合などの国際組織に途上国の乳がん問題に注目してもらうために確固とした福祉戦略を定めています。当社におけるこの種のプロジェクトは初めてであり、本パイロット・プロジェクトは3年間継続し、その効果について有効な評価を行えるようにする予定です。今回の取り組みが成功すれば、このプロジェクトは他の国々や他の疾患領域でも実施できるモデルとなるでしょう。

最もお役に立てる分野で当社のスキルと経験を生かす新たなアプローチとして、2006年には海外協力隊(VSO)と3年間のパートナーシップ契約を結びました。VSOは、ボランティア活動を通じて途上国の中核的な能力の強化に取り組んでいる国際開発慈善団体です。当社の支援には当機関への上級管理職員の派遣が含まれ、アストラゼネカの社員が各自のスキルを生かして、重要な社会基盤の改善に向けて現地の専門能力の確立を手助けできる適切な国々への派遣を志願できるようにします。当社の社員は、各自のキャリア開発の一環としてリーダーシップ、協調性、プロジェクト管理などのスキルを磨きながら、貢献できる機会を得られます。

アストラゼネカは、結核治療薬の開発における重要課題に関するオープンフォーラムやストップ結核パートナーシップなど、結核撲滅活動を援助する国際的な取り組みに積極的に参加しています。

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�0

astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

02proDuCtsアストラゼネカの評判は、当社の目標を責任ある方法で達成できるかどうかにかかっています。つまり、倫理基準に則った適正な方法で営業・マーケティング活動を実施すること、社会にもたらす当社の医薬品のベネフィットを完全に理解いただくこと、そして、新薬の探索を行うときは、最高水準の倫理基準に従って科学研究を実施するように徹底しなければなりません。

このセクションでは、こうした領域における当社の取り組みの概要について説明します。詳細な情報については、当社のウェブサイト(ASTRAZENECA.COM)をご覧ください。

�0 世界各国でマーケティング活動を展開する現地法人は�0社を数え、それぞれ国内向けの営業・マーケティング規範を定めて高い倫理基準の実践を促進しています。

当社の将来の事業成功は、効果的な製品ライフサイクル管理とマーケティング活動を通じて、既存製品の治療上・経済上の潜在的能力を余すところなく最大化することと、最先端の科学技術を駆使して患者さんのニーズに応じた有望な新薬を送り出し続けられるかどうかにかかっています。

Page 13: Corporate最高経営責任者のあいさつ 「アストラゼネカが、革新的 な医薬品を生み出す企業 として評価され、そうした 経営方針により皆様から

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医薬品に関する適切な情報を必要とする人々に提供するという当社の取り組みの一環として、臨床試験の結果については、好結果か否かにかかわらず公表しており、インターネット上で自由にご覧いただけます。

企業責任優先行動計画 – proDuCts

項目 目標 行動計画 Kpi(適宜) 2006年のKpiに基づく実績および詳細情報の参照ページ

動物試験 科 学 的目標 達 成のため に 最 小 限の動 物を 使 用する。

動 物 以 外 の方法による 新 薬 発 見を最大化する。

使 用する動 物 の健 康 を 強 化 する。

動 物 を 使 用する全施設で、動物保護および 動 物 使 用の 代替・削減・改善(3R)を含む 各施 設の改善 計 画を毎 年策 定する。

アストラゼネカまたは委 託 機 関が 研 究を行う施 設 の 動 物保 護 査 察 を正 式にプログラム化する。

使用動物数

改善計画が承認された施設の比率(目標:100%)

改善計画に基づき進展が実証された施設の比率 (目標:100%)

予定どおり内部評価による査察を完了した施設の比率(目標:100%)

計画どおり外部委託研究機関の査察が完了した施設の比率(目標:100%)

社 内 で の 使 用 数 は 約27万6,000匹、外部研究委託機関での使用数は約1万2,000匹

施設ごとの改善計画の承認を100%完了

施設ごとの進展の実証を100%完了

予定どおり内部評価による査察を83%完了

外部委託研究機関の査察を計画の80%完了

12ページ参照。

臨床試験 試 験の実 施 場 所を問わず、臨床試験プログラムの安全性・周到性・適切 性の 継 続 的な確 保 を 徹 底 する。

適正なデータを公開する。

グローバルポリシーの要件に従い、全世界一貫した倫理基準の維持。

最新情報に基づく臨床試験グローバルウェブサイトの情報更新の継続。

進行中の検証的治験が、当社ウェブサイトおよび米国立医学図書館ウェブサイトで公表されている比率。

すべての主要製品のうちグローバルな検証的治験のデータが公表されている比率。

100%.

100%.

13ページ参照。

環境における 医薬品

当 社 製 品と環 境の 相 互作 用 に関する理解を深め、悪 影 響 の削 減を追求し続ける。

当分野、特に環境毒性に関する研究を進めるために、単独の取り組み、他機関との 協 働 の双 方を 継続。

製 造 中に廃 水 に混入する製品量の最小化 を 施 設ごとに 追求。

医薬品開発プロセスへの環 境 情 報の 組み込 み を 向 上させる。

科学的知見が進歩し続けている中で、このような長 期的な研究分野で意味あるKPIを確立するには時期尚早であると考えられる。

15ページ参照。

営業および マーケティング

あらゆる国における営業・マーケティング活動の高い倫理基準の実践を徹底する。

営業・マーケティング要員の継続的なトレーニングの実施。

コンプライアンスの継続的なモニタリングおよび評価検討。

各地域で策定されたアストラゼネカ規範の数。

外部規制・規範の違反確認件数。

すべての国で最新の関連規範を制定。

60カ国で44件の違反について調査。

16ページ参照。

�400万ドル

1,400万ドルを投じて英国のbrixHam enViron-mental laboratoryを拡張し、環境に及ぼす医薬品の影響に関する研究活動を強化する予定です。

�rs 当社は動物試験の代替・削減・改善(3r)の継続的な促進に取り組んでいます。

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研究開発部門への投資単位:百万ドル

3,902

3,379

3,467

2006

2005

2004

研究活動における使用動物数単位:千匹

288

267

245

2006

2005

2004

49

45 17 15

開発プロジェクト1

前臨床段階 第I相臨床段階 第II相臨床段階 第III相臨床段階

282023 120

91

10629

31 17 17 26

2006 計

2005

2004

�2

astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

動物試験

動物試験は、新薬の探索において今なお重要な役割を果たしています。新しい治療薬の候補が疾病や生体に及ぼす影響について、他の方法では得られない不可欠な情報を提供してくれるからです。また、新薬についてヒトを対象とした試験(臨床試験。前掲の説明参照)を開始する前に、前臨床段階の動物試験から得た安全性データを世界各国の規制当局に提出することが義務づけられています。

当社は研究活動全体における3R(動物試験の代替・削減・改善)の原則の適用に取り組んでいます。細胞培養、コンピュータモデリング、ハイスループットスクリーニングなど、可能な限り医薬品開発初期の動物使用をなくし、必要数を削減する方法を採用しているほか、既存の手法の改善に努めており、動物ができる限り苦痛やストレスにさらされないようにしています。

2006年における社内での動物の使用数は約27万6,000匹で、2005年(25万4,000匹)より増加しました。このほか外部研究委託機関での使 用 数は 約1万 2 , 0 0 0 匹で、2 0 0 5 年(1万3,000匹)より減少しました。2006年に使用した動物の約94%が齧歯類、5%が魚類・両生類、残る1%がイヌ、ウサギ、サル、フェレット、ブタ、トガリネズミでした。ヒトの病気にかかわる遺伝子を研究するために遺伝子改変マウスを使用することもあります。2006年はこうした使用例が齧歯類の14%を占めました。

近年の使用動物数の増加は、科学的目標の達成に必要な動物数を削減する当社の取り組みから逸脱したものではありません。当社では継続的な課題として、動物を用いて開発向け候補薬の特定に役立てる創薬研究活動を引き続き拡大しながら、それに伴う動物使用の増加を抑えることを目指しています。

2006年の早期開発段階ポートフォリオの成長は、研究活動の質と生産性の向上を図っている当社の努力によるものであり、3Rを積極的に推進しなくとも創薬研究における当社の動物使用はそれほど増えないと考えています。

既存の研究能力に加えて、より適切で安全な医薬品開発に役立つ機会を模索するために新しい科学分野の研究調査を続けています。

こうした新しい分野は、動物使用の増減につながる可能性もあります。そうした分野の1つが生物分子です。生物分子とは、一般に、疾患に反応して体内で自然に生成されるものです。例としては、抗体が挙げられます。新技術により、それ自体には効果がない場合でも、自然反応を模倣し改善できるようになってきています。この科学分野に進出した場合は、ほとんどの研究事例ではサルが唯一の該当する動物モデルであるため、サルの使用数が次第に増えることが予想されます。

proDuCts

当社にとって新しい別の分野としては、ヒト胚幹細胞研究が挙げられます。これについては外部パートナーとの協働を通じて取り組んでいます。この種の研究により、早期開発段階プロセスにおける研究内容のヒトに対する妥当性が高まる可能性があり、それに伴い必要な使用動物数の削減につながるかもしれません。ただし、このように非常に新しい科学分野では、動物試験に対する影響を解明する前に膨大な作業を実施する必要があります(当社の幹細胞研究の詳細については14ページをご覧ください)。

� アストラゼネカが主導する欧州プロジェクトでは、新薬を初めてヒトに投与する前に所定の試験として実施される動物の急性毒性試験に関する規制当局の指針について調査・検討しており、このプロジェクトにより、ヒトの安全性を保証するために必要な情報は改善の進んだ他の動物試験から入手されるため、このような指針は不要であることが実証されています。当社は本プロジェクトからまとめた主要な推奨事項をすでに採用しており、その結果、急性毒性試験における使用動物数が大幅に削減されました。

2 当社ではin vitro肝細胞試験により、化合物がどのように排出されるかについて評価検討し、動物試験を実施しなくても不適切な化合物を除外できるようにしています。このほか自動化したラットの肝細胞試験を開発しており、その試験の正確性は、以前の手作業によるアッセイよりバラツキが少ないことを証明しています。つまり、こうした効率的な手法を利用すれば、動物試験を実施しなくてもこの研究段階でさらに多くの化合物を試験し、化合物を選別することができます。

� 当社では医薬品開発において動物の合成タンパクを用いることにより、動物組織を使用する必要があった一部の手法を代替化するとともに、現在も実施する必要のある動物試験の予測精度を改善し、使用動物全体の削減を図っています。

アストラゼネカの3rに関する取り組み事例

1 新規化合物および適応症・剤型の追加を含みます。

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臨床試験候補薬は、その潜在的効果や安全性が前臨床試験で確認されて初めて臨床開発(ヒトを対象とした試験)へと進みます。前臨床試験では、本セクションで前述したように動物試験が行われます。臨床試験は、多くの国の臨床医との協力や何千もの人 (々健康被験者や患者さん)の参加を伴う大がかりな作業です。

当社は臨床試験の実施にあたり、最高水準の倫理基準に従うよう真剣に取り組んでいます。試験計画はすべて、前臨床試験データはもとより、その試験プロセスが参加者にとって安全かどうかなど、まず厳しい社内審査を受けます。試験については、開始前にその都度、外部の独立した治験倫理委員会および治験審査委員会の承認を得なければなりません。

当社では取り組みの一環として、参加者が試験の目的・内容を理解し、不必要なリスクにさらされず、かつ健康状態に関する個人情報の保護を受けられるように厳格なガイドラインを定めています。さらに、インフォームドコンセントの適正な取得手順を確立するように徹底を図り、参加者の異なる個別状況に応じて適切な方法を採用しています。

当社の医薬品には成人向けだけでなく、喘息治療薬のように小児向けのものもあります。小児は体重に応じて服用量を調整し、少量を服用すればよいこともありますが、多くの場合は、小児は単なる成人のミニチュアではありません。通常、小児については個別に試験を実施し、適正用量を確定する際に、肝臓や腎臓の機能など年齢によって異なる各種の要因を考慮しなければなりません。小児が臨床試験に加わるときは、経験豊富な小児医療の専門家と協力し、参加者本人とインフォームドコンセントを提出する保護者の方々に小児の年齢に応じて適切な情報を提供するようにしています。

当社の臨床試験に関する倫理基準は全世界で適用されており、臨床試験プログラムが実施される全地域で一貫して遵守されるよう徹底を図っています。臨床試験関連業務について

動物試験の3r動物保護使用する動物の保護は常に最優先課題です。外部の関連法令や規制要件をすべて遵守することは最低条件であり、当社独自の動物保護基準を裏づけるものです。当社の動物保護プログラムの開発・実行にはしかるべき獣医師が立ち会い、試験動物にかかわる者はすべて動物保護の訓練を受けた優れた人材です。政府当局による法定検査に加え、当社は独自の優れたスタッフによる正式な社内検査を2年ごとに実施しています。また、当社の委託を受けて動物試験を行う外部研究委託機関にも高い倫理基準の遵守を求めており、当社のスタッフが外部研究委託機関の検査を順次実施し、当社の求める基準の遵守状況を確認しています。

パフォーマンスの評価 当社では3Rと動物保護の継続的な促進を支え、評価するための指標を定めています。

動物試験施設ごとに改善計画を毎年策定することを義務づけており、各施設は毎年その計画に基づいて全体的な進展を実証しなければなりません。例えば、動物の居住環境の改善、ストレスの緩和や侵襲的な試験法の削減、動物使用の削減につながる研究デザインの改善などです。

2006年末までに、施設ごとの改善計画の承認は10 0%完了し、施設ごとの進展の実証も100%完了しました。予定どおり内部評価による査察は83%完了し、外部委託研究機関の査察は計画の80%を完了しました。

さらに有効性の高い、安 全な医 薬品開 発に役 立つ 新しい科 学 分野の研 究調 査を続けています。

可能な限り動物試験の代替策を利用する

代替(REPLACE)

現行の手法を改善し、実験動物の必要数を削減する

削減(REDUCE)

現行の手法を改善し、動物ができる限り苦痛やストレスにさらされないようにする

改善(REFINE)

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astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

proDuCts

は、社内で実施する場合または外部機関に委託する場合にかかわらず、広範な監査と正式な査察を実施し、臨床試験実施施設における臨床試験関連書類の監査のほか、システムやプロセスについても監査を行っています。

データの透明性アストラゼネカは、医薬品に関する適切な情報を必要とする人々に提供する取り組みの一環として、2005年7月以降、当社の依頼で実施される新規および進行中の臨床試験のうち、ICH1の「仮説検証治験」の定義(医薬品申請の論拠とする安全性および有効性の確固たる証拠を得るために実施される試験)に該当する全試験について情報を公開しています。こうした試験に関する基本情報は、当社の専用ウェブサイト(astrazenecaclinicaltrials.com)で閲覧できるほか、米国立医学図書館ウェブサイト(clinicaltrials.gov)に詳細な情報が掲載されています。新しい試験の情報は開始から21日以内に追加されます。

当社のウェブサイトでは、(規制当局への申請手続き上、情報開示が制限される場合を除き)完了から1年以内の臨床試験の結果を(好結果であるか否かにかかわらず)掲載しています。発行前の結果の公表を禁じている医学雑誌等により審査中の臨床試験の結果については、その雑誌等が発行された時点で掲載します。

当社のウェブサイトで閲覧できる情報には、1999年のアストラゼネカ社設立以降に承認された医薬品の申請時における安全性および有効性に関する中核的な試験のほか、現在承認されているすべての医薬品に関して設立以降に完了したグローバルな試験、および2005年1月1日以降に完了した各国の試験が含まれます。ウェブサイトの情報は随時更新していきます。

さらに、こうした情報は、2005年9月に開設されたIFPMA2の臨床試験ポータルサイトにも掲載されており、同サイトでは一度登録すると研究開発型医薬品業界全体の臨床試験データを横断的に検索できます。

幹細胞研究

ヒト胚幹細胞研究は、より安全で有効な医薬品を実現する新たな機会を提供するものであり、したがって患者さんにより良い結果をもたらす次世代の医薬品開発に役立つと当社では考えています。

これは当社にとってかなり新しい医学研究分野であり、そのために必要なスキルや技術など社内体制がまだ整っていないことから、本分野の可能性を調査研究するにあたっては外部パートナーとの協働を通じて取り組んでいます。

潜在的なベネフィット 当社では、ヒト胚幹細胞株から正常なヒト細胞、例えば肝細胞や心筋細胞に分化する細胞の可能性に関心を持っており、もしこれが可能になれば、そうした細胞を用いて、新薬候補が正常細胞に及ぼす影響を評価し、ヒトにおける薬物代謝や安全性をより正確に予測できるようになるでしょう。これは、新薬候補の早期開発段階において研究内容のヒトに対する妥当性を高める重要なステップとなり、現在の制約を克服するうえで役立つと考えられます。

高い基準の遵守この研究分野において高い倫理基準を確立する当社の取り組みは、アストラゼネカのヒト胚幹細胞研究ポリシーの枠組みに反映されており、外部の法令・規制・ガイドラインおよび当社独自の研究活動規範の両方の遵守を求めています。この枠組みは、すべての社内の研究活

当社は臨床試験の実施にあたり、最高水準の倫理基準に従うよう真剣に取り組んでいます。

1 ICH=International Conference on Harmonisation(日米EU医薬品規制調和国際会議):調和ガイドラインE9

2 IFPMA=International Federation of Pharmaceutical Manufacturers and Associations(国際製薬団体連合会)(ifpma.org)

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環境における医薬品近年の分析技術の向上により水生環境中の残留医薬品が検出されるようになっていますが、これらの残留量は変化するとはいえ非常に微量であり、人体に大きな危険をもたらしたり、水生生物に短期的な害を及ぼしたりするほどではないというのが、産官学の研究者たちの共通する意見です。長期的な影響が生じるかどうかを判断するにはさらに多くの情報が必要であり、本セクションで前述したように当社ではこうした研究に積極的に取り組んでいます。同時に、患者さんにもたらす当社医薬品の価値を考慮しながら、環境中の医薬品残留量を最小限に抑えるなど、そのような残留医薬品により過度なリスクが生じないように努めています。

環境中に存在する残留医薬品の主な原因は、患者さんによる薬物の排泄であることがわかっています。しかし、比較的微量の成分が製造施設から放出されたり、未使用の薬剤が排水設備に投棄されたりしたために、薬剤成分が環境中に流出することもあります。本分野における当社の取り組みについて、以下に簡単に説明します。

医薬品の製造 2003年に実施した製造施設の第1回調査から、当社医薬品の環境への流出はすでに非常に低水準であることが明らかになっていますが、当社では製造中に廃水に混入する製品量の最小化を施設ごとに追求し続けています。また、医薬品の流出が環境に及ぼす影響について理解を深めて、当社の活動を適切に管理する評価ツールの開発・改善を続けています。2006年には、技術者が最適な廃水処理方法を選定する際に一助となる新たなエキスパートシステムを導入し、本年エジプトで新しい製造施設の操業を開始したときは、このシス

テムを用いて設計の妥当性を確認しました。

医薬品の使用欧州医薬品審査庁は2006年に新しい医薬品の環境リスク評価指針を発表しました。当社はこの指針の策定に協力し、そのプロセスに積極的に参画しました。欧州連合域内で販売されるすべての新薬だけでなく、その新たな用途により大幅な売上増につながる可能性がある場合は既存の医薬品についても、今後は潜在的な環境への影響を明確にすることに重点を置いた総合的な評価の対象となります。

上記の環境リスクに関するデータと既存製品に関して入手可能な情報については、スウェーデン製薬工業協会(LIF)と共同で導入した自主的な情報開示システムを用いて、スウェーデン医師向け処方ガイド(FASS.seウェブサイト)により積極的に公表しています。このシステムは、LIFとスウェーデン国内の多数のステークホルダーが、当社を中心とする国際的な製薬企業の専門家と協力して開発したものです。また、当社は英国製薬工業協会と連携して、優先行動リストに収載された既存製品に関するイングランド・ウェールズ環境庁によるリスク評価に協力しています。

当社は医薬品開発モデルの構築に向けて引き続きこうした問題に関する情報を収集し、潜在的な影響について早期に警告するとともに、より多くの情報に基づいて適切な判断を下せるようにしています。今後は環境リスクマネジメント計画の構想を発展させ、あらゆる新薬の開発プロセスで環境リスクマネジメント計画を必ず作成し、すべての重要な判断ポイントにおいて関連する環境データをすべて利用できるようにします。

動だけでなく外部研究委託機関にも適用され、このような研究に着手する前に必ず満たすべき重要な基準が含まれます。英国の登録リストや米国立衛生研究所登録リスト(National Institute of Health Registry)など、公的な幹細胞登録リストへの収載時に適用されるものと同様に本基準においても、幹細胞は生殖目的で作成された受精卵に由来したものでなければならず、その目的上不要になった受精卵であり、かつ、科学研究のために受精卵を寄贈することについて(金銭による勧誘を行うことなく)十分なインフォームドコンセントを取得していることを規定しています。

上記枠組みの目的は、本分野のすべての研究活動が、重篤な疾患により有効かつ安全な医薬品を開発するという当社の戦略に沿って推進されるよう徹底することにあります。

なお、アストラゼネカは、ヒト胚幹細胞の遺伝子組み換えやクローニングにより損傷組織や病変組織を再生する研究には従事しておらず、これはそのような研究に対する関心を表明するものではありません。

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astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

proDuCts

未使用医薬品 未使用医薬品は、トイレに捨てたりすれば簡単に環境中に流出することになります。また、医薬品が家庭ごみとして廃棄され、結局、防護措置を施していない埋立地で投棄処分されれば同様の事態になりかねません。未使用医薬品の処分は、環境中の医薬品残留量全体のごくわずかを占めるに過ぎませんが、ほかの場合より管理しやすい発生源であるといえます。多くの欧州諸国では、未使用医薬品の製薬会社への返送を促進する枠組みをすでに確立し、製薬会社において安全に廃棄できるようになっています。米国では、そのような回収システムはそれほど普及していないことから、当社は様々なステークホルダーや同業者と協力して、米国の患者さんが必要な情報に基づいて処分方法を選択し、必ず適切な方法で未使用医薬品を処分するように促しています。

継続的な研究活動 医薬品が長期にわたり環境に及ぼす潜在的な影響について理解を深めることは、アストラゼネカの環境科学者にとって常に優先的な研究課題であり、ときにアストラゼネカ単独で、ときに他機関と協力してこの分野の研究を進めています。このような主題に関する当社の研究については科学雑誌等において継続的に発表しており、最近の掲載論文リストは当社のウェブサイトでご覧いただけます。現在1,400万ドルを投じて英国のBrixham Environmental Labo-ratoryを拡張しており、特に当社の医薬品が環境にもたらす最終的な結果について調査研究する予定です。

研究が進むにつれて、こうした問題の複雑な要因に対する理解が深まっています。以前は、どのような医薬品にも短期の研究から推定する方法では予測できない長期的な環境への影響があるのではないかという懸念がありました。しかし、データの蓄積に伴い、このようなことは「例外的」な影響を示す少数の物質に関する問題にすぎないことが明らかになっています。

先ごろ当社は魚を用いてタモキシフェンの全ライフサイクル試験を実施し、タモキシフェンの毒性はホルモン療法薬の予想毒性より有意に低いことが明らかになりました。このような点については、単一または複数の種類としてグループ化して評価するより、むしろすべての医薬品を個別に評価すべきであると思われます。

さらに、同様の作用機序を有する近縁物質でもまったく異なる環境プロファイルを示す場合があることが明らかになっています。こうしたことは、例えばβブロッカーであるアテノロールとプロプラノロールについて観察されており、アテノロールは、プロプラノロールより魚に対して有意に低い毒性を示します。

このほか、日光による自然の光崩壊は、環境中から残留医薬品を除去する強力な要因となる可能性があることが、最近の研究によって実証されています。例えばプロプラノロールについては、この方法により最高70%まで消失することを示すデータがあります。

営業およびマーケティング活動当社は、50カ国を超える国々でマーケティング活動を展開する現地法人を擁する国際的な製薬企業として、各国の事業環境においてますます複雑になる様々な規制や法制に直面しています。さらに、医薬情報担当者が直接面談する従来の方法から、医薬品に関する情報を医師や薬剤師などの方々にお知らせする媒体として、ますます重要な役割を果たすようになっているインターネットによる情報提供まで、幅広いコミュニケーションチャネルを活用しており、当社の営業・マーケティング活動はいっそう複雑になっています。したがって、当社が事業を展開しているところは、このような複雑な状況の中でも、常に一貫した方法で効果的に対処しているところは、常に適切な行動をとれるように徹底することが、当社の課題となっています。

当社は、全世界のいずれの地域の営業・マーケティング活動においても、外部の規則や行動規範に定められた最低基準を十分に満たす倫理基準に則って活動することに心血を注いでいます。そのため、各地域でマーケティング活動を展開する現地法人において、当社独自の世界共通の営業・マーケティング規範を設定しており、さらに外部の関連規範と少なくとも同程度の規制内容を有する国内向け行動規範を整備しています。例えば、会議や学術大会に伴う現地通貨建ての接待費の上限を定めています。

すべての営業・マーケティング要員を対象とした継続的なトレーニングを実施し、当社が事業を展開している国や地域で、常に適切な行動をとれるように徹底しています。

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営業・マーケティング部門:外部規範・規制の違反確認件数

44

56

2006

2005

社員の労働生産性に対する疾病の影響(週40時間労働の場合)1

欠勤=欠勤時間 労働遂行能力の低下=勤務中の生産性の低下により喪失した労働時間(生産性の低下率×勤務時間)

胃食道逆流症 腰 痛 関節炎 アレルギー 高血圧

5.7

1.04.1

0.63.3 1.1

4.8

0.6

5.7

1.3

6.1

0.7

 

頭 痛

1 P Wahlqvist、M Reilly、A Barkun:「システマティック・レビュー:胃食道逆流症の労働生産性に対する影響」Alimentary Pharmacology & Therapeutics 2006:24 (2):259-272。

2 Frank R Lichtenberg:「新薬のベネフィットとコスト:最新事情」全米経済研究所、マサチューセッツ州ケンブリッジ、2002年6月。

��

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当社の規範には各国のコンプライアンス委員会が各市場のパフォーマンスをモニターするという要件も含まれます。また、特に販促資材のリリース承認に焦点を当てた指定承認権限者のネットワークも整備しています。

当社の活動が必要な基準に達していない事例に関する情報は、継続的なコンプライアンス報告プロセスにより収集され、上級幹部の評価検討を受けるほか、適宜、アストラゼネカ取締役会と、非常勤取締役のJohn Buchananが率いるアストラゼネカ監査委員会によって評価検討されます。

2006年は国際的な医薬品業界マーケティング規範(国際製薬団体連合会(IFPMA)規範)の大規模な見直しと拡大に積極的に協力すると同時に、ほとんどの国で当社独自の世界共通規範と国内向け規範を更新し、2007年1月に発行する新しいIFPMA規範との整合化を図り、いくつかの追加分野で新たな規定を定めました。さらに、この作業を完全なものとするため2005年から2006年にかけて、営業・マーケティング活動ならびにその他の事業活動の側面における当社のガバナンスについて第三者による審査を受けました。この審査結果は、規範更新の周知に役立ちました。ガバナンスと営業・マーケティング規範に関するトレーニングは、担当スタッフ全員に実施しています。

パフォーマンスの評価 営業・マーケティング活動に関する外部の規制が国によって異なることは、当社が2005年に導入した主要行動指標(KPI)(外部規範・規制の違反確認件数)を把握するうえで難関となりますが、このKPIが所定期間中のパフォーマンスを評価する際の基準となります。2006年は、現地法人がマーケティング活動を展開する50カ国と、当社の代表拠点を置く他の10カ国から収集した情報に基づいて、全体で44件 (2005年は56件)の該当事例が確認されました。

特に、さらに厳しい規範を導入したことや、規制当局や営業・マーケティング規範制定機関が規制を強化していることを考えると、今回、違反事例の減少を報告できたことは喜ばしいことです。裁定機関の審議に委ねられる苦情には、医薬品の優位性の主張に関する企業間紛争も含まれます。製薬企業は競合他社の販促活動を注意深く監視しており、有効性や忍容性の向上に関する主張がすべての入手可能な証拠資料により十分に裏づけられるか確認しています。

2006年のデータには、認められていない不適切な水準の接待を行ったことが認められた少数の事例が含まれますが、その後、そのような事例の再発を予防する適切な措置を講じました。このほか、違反は確認されなかったものの、規制当局から懸念が表明され、それに対処するため当社で適切な措置を講じた数件の事例がありました。

さらに、当局が該当する情報を公表している場合は、当社の違反件数と他社の実績を比較調査すれば有益な情報を得ることができます。

経済発展の支援先に述べたように、医療に対する需要が高まるにつれて、医療費を負担する側では医療費予算に対する圧力が高まっています。したがって、そうした方々と話すときは、当社製品の治療面のベネフィットに加えて経済面のベネフィットについても説明し、その価値を十分に理解していただけるように努めています。

有効な治療薬は、入院や手術など高額な療法の必要性を減らすため、医療費の削減をもたらします。例えば2002年に実施された米国での調査2によれば、より新しい薬剤の追加費用として1ドル支出すると、医療費全体で6.17ドルの節減となる場合があることが明らかになっています(病院の費用4.44ドルの節減を含みます)。

生産性の面でも利点があります。発病を減らしたり疾病管理を改善したりする画期的医薬品を利用した場合、仕事や学校などの日常活動を休むことが少なくなり、しかも活動の生産性が向上し、患者さんは社会で活動する一員として日常生活を送ることができます。

当社の医薬品と同様に事業活動全体も、各地域での雇用や賃金、納税、地域支援、地元や国内から調達される資材・サービスの購入などにより、当社が事業を展開している地域社会の経済発展に貢献しています。当社では、中国をはじめとする新興経済地域での存在感の増強を図る場合と同様に、設備投資、現地取引先との協業、臨床試験プログラム、さらに社員の現地採用により貢献しようとしています。

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常に困難な課題に取り組み、様々な機会を最大限に活用して事業目標を達成するよう社員に求めるのであれば、それが可能となる適切な職場環境を社員に提供しなければならないと考えています。この一環として、健康、安全かつ公平で、活力を与える職場環境を世界各国の全社員に提供することは、当社の最優先事項の1つです。

このセクションでは、こうした領域における当社の取り組みの概要について説明します。詳細な情報については、当社のウェブサイト(ASTRAZENECA.COM)をご覧ください。

当社の事業はダイナミックで刺激に満ちたビジネスです―しかし、要求の厳しいビジネスでもあります。全世界で事業を展開している研究開発型医薬品企業として、当社は長期的な成功を促進する多大な機会に恵まれている一方で、様々な困難な課題に直面しています。

66,800全 世 界 の従 業 員 数

6�%2006年に実施した当社のグローバル社員意識調査によれば、全体の63%の社員が経営陣は全社員の機会均等を支持していると考えています。

astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

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米国で実施している当社の「roaD scHolars」プログラムは、業務で運転する社員の圧倒的多数を占める営業担当者を対象としたドライバーの安全意識の向上に焦点を当てています。

社員の勤務地別分布

米国 20%

英国 18%

スウェーデン 21%

その他の地域 41%

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企業責任優先行動計画 – people

項 目 目 標 行動計画 Kpi(適宜) 2006年のKpiに基づく実績および詳細情報の参照ページ

人 権 全社で一貫して当社のコア・バリューを守り、国連人権 宣 言の原 則 の尊 重 を 徹 底 する。

共通の人事情報システムの運用を継続する。

データ収集予定の地域を基にグローバルなKPIを設定する。

KPIについては検討中。 20ページ参照。

ドライバーの安全性

社 用で車を 運 転するドライバー全員の 安 全 性を向上させる。

最 大の 運 転 業 務 分野に個別に焦点を当てたドライバー安全プログラムの実施を全世界で継続する。

営業部門における走行距離100万キロメートル当たりの事故件数。

国別に実施を継続。

21ページ参照。

多様性の受容 多様 性 の 受 容が全 世界 の 社 員に支持され、リーダーシップに反映され、事業戦略や人材戦略に採り入れられるよう徹底する。

業 績 管 理に多様 性の受容を反映する。

人員管理、配属、業績評価と報酬、学習開 発 に関 する最 低基準を重視する。

上級幹部に占める女性の比率。

経 営 陣 直 属 の 管 理 職7 9 名のうち33%が女性。

23ページ参照。

29%2006年の事故のうち、29%が車両事故でした。―ドライバーの安全第一は常に最重要課題です。

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アストラゼネカ社員の労働損失日あり・なしを含む重傷事故(100万時間当たり)

2.371

3.05

3.62

2006

2005

2004

アストラゼネカ社員の業務上の疾病数(100万時間当たり)

0.97

1.34

2.07

2006

2005

2004

20

astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

人 権アストラゼネカは国連人権宣言に定める原則を完全に支持しています。当社の行動規範およびグローバル人事方針・基準は、全社員がその精神はもとより字義どおりに遵守すべき高い就業基準を定めたものです。

上記基準には、当社が事業を展開している国の労働法に定める成人のみを雇用することや、最低でも賃金や労働時間に関するその国の法的要件を守ることなどが定められています。社員は全員が労働組合への加入権を有します。当社は、団体交渉が国の法的枠組み内の慣例であり、社員にも支持されている多数の国で、労働組合と合意を交わしています。

当社はまた主な納入業者とも密接に協力のうえ、当社と同様の基準を奨励するような購買方針をとっています。こうした取り組みは、既存業者との関係だけでなく、中国やメキシコなどの新興市場で拡大する事業にも適用されます。納入業者との協力に関する詳しい説明については32ページをご覧ください。

当社のような規模の企業にとって難しいのは、責任の境界線を引くことです。当社は、上述した内容より、広い範囲にわたり個人の権利や自由を社会で推進してゆくよりも、自ら範を示して影響を及ぼすべきであり、またそれが可能であると考えています。

モニタリングおよび評価近年、当社は各地の人事方針・基準のコンプライアンス状況を長期間にわたりモニターするシステムに基づいて、世界各国におけるこの分野の報告プロセスの改善に努めてきました。アストラゼネカは本分野に大規模な投資を行っており、社員管理と社員情報に関する基準の世界共通化を促進する、グローバルな人事情報システムの運用を進めています。2006年は英国、スウェーデン、中国でこのシステムを導入し、2007年には米国、日本およびその他のアジア太平洋諸国で導入の予定です。この大規模な取り組みにより、2007年6月までに約70%の職場において世界レベルで一貫した詳細な総合社員情報を利用できるようになりま

す。他の地域での展開に向けて現在、計画を策定中であり、2007年の導入を目指して本分野のグローバルなKPIの確立に取り組んでいます。

「健康権」一部の地域では、国連の健康に関するミレニアム開発目標の達成とは、人権面では「健康権」の確立であり、その責任は各国政府と製薬企業の双方の肩にかかっていると考えられています。これに関して当社では、確固とした医療体制、すなわち健全な公衆衛生を支え、必要とする人々の手に医薬品を確実に届けるシステムを国民に提供する責任を負っているのは各国政府であると考えています。それでも当社には果たすべき役割があることを認識しています。本書において前述したように、当社の既存製品は途上国における最重要の医療問題に対応したものではありませんが、その分野での貢献体制を整えることに取り組んでいます。また、こうした課題に関する国内外の討論に継続的に参加し、当社の考えを説明しています。つまり、バンガロールでの結核研究と、各地域の治療能力の強化を目的とした活動に取り組むことこそ、健康に関するミレニアム開発目標の達成における当社の最善の貢献につながるということです。この分野に関する当社の取り組みの詳細については8ページをご覧ください。

安全性、健康および福利厚生安全な職場環境を整え、世界各国の全社員の健康と福利厚生を促進することは、常に当社の最優先事項です。ますます厳しさを増すビジネス環境において事業活動を拡大し変更し続ける中で、当社は絶えず取り組みを強化・調整しています。職場行動や勤務態度に重点を置いた従来のプログラムを増強するとともに、ストレスを管理し、社員が各自の健康上のリスクを理解しやすくする新しいアプローチを採用しています。

2006年初めに、当社はグローバルな安全・健康・環境方針の3つの側面に重点を置いた2010年までの新たな全社的目標を導入しまし

た。第1の目標が、特に安全性、健康、福利厚生の取り組みに関するものです。第2の目標は当社の環境実績に関するもので、これについては30ページで詳しく説明します。これまでの経験から、安全性と健康面での良好なパフォーマンスは、このような全社的な課題に対する社員の自主的な取り組みと強いつながりがあることが示唆されています。したがって2010年までの第3の目標には、社員を訓練し能力向上を図り、社員一人ひとりが責任を持って安全性と健康に留意するよう義務づける取り組みを含めました。これは新しい取り組みではなく、当社の継続的改善のための基盤を強化する個別目標であり、この側面に力を注ぐことで各自の責任を強化し、事業活動全体において安全性と健康を効果的に管理する新しいアイデアや取り組みを奨励したいと考えています。

安全で健康的な職場環境を提供し、健康増進と福利厚生の促進を図ることにより、仕事に関連するけがと健康障害の件数を全体的に削減することが当社の目標です。安全・健康・福利厚生に関する新しい主要行動指標(KPI)は、致命傷・重傷事故と業務上の疾病発症の頻度を1つのKPIにまとめたもので、特に、2010年までに社員に関する上記の2つの発生頻度を2001/2002年の基準値に対し50%削減させることを目指します。

アストラゼネカの 各 部 門と事 業 拠 点は、2010年までのグローバル目標の達成に貢献する活動やプログラムなどの機会を明確にし、それぞれ独自の地域目標を設定したうえで、対象分野の進捗をモニターし、四半期ごとに中央管理部門へ進捗を報告する責任を負っています。

people

ア ス ト ラ ゼ ネ カ は2006年の『science』誌の調査において5年連続で「優良企業」の1社として 選 定 さ れ ま した。

1 2006年に「重傷」の定義を修正しました。次ページの説明参照。

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2�

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当社の究極の理想は、けがや病気のない職場環境で社員が自分のスキルや熱意を発揮できる会社になることです。もちろん、特定の側面ではリスクを完全に排除することは不可能ですが、それでも一部の重要な課題、特にドライバーの安全性と職場のストレスに積極的に取り組んでいます。さらに、当社の事業が成長し変化する中で、外部パートナーや当社の買収した企業が、健康や安全性などに関するアストラゼネカの様々な基準との適合化を図るよう継続的に働きかけています。この分野の取り組みには事前選定審査、契約要件、監査などが含まれ、継続的な重点課題分野の1つとなっています。

事故の発生頻度および原因悲しいことに、今年は3件の死亡事故がありました。社員の運転する車が、ハンガリー・ブダペスト郊外の高速道路で起こったトラックの衝突事故に巻き込まれ、1名の社員が亡くなりました。ベネズエラの営業担当者の1人が単独自動車事故で死亡し、さらにインド・バンガロールでは当社研究開発施設の新設工事に従事していた建設請負作業員が高所から落ちて死亡しました。

当社は重傷事故については手を尽くして根本的原因を究明し、再発防止のために広範な調査を行います。そして得た情報は管理責任者と社員が共有し、根底の原因に関する結論を踏まえて安全・健康・環境(SHE)管理システムを改善します。

上記の死亡事故が暗い影を落としたものの、当社は2010年までの健康と安全性に関する目標達成に向けて前進しています。2006年のアストラゼネカ社員の致命傷・重傷事故の頻度は、2005年(100万時間当たり3.05)から減少しました(2.37)。ただし、2006年に「重傷」の定義を修正し、「刺し傷」と「動物によるけが」のカテゴリーに分類される一部のけがを重傷から除外したため、これを加味してデータを調整すると、2005年の頻度(2.54)と2006年(2.37)の比較では有意な変化はないことになります。社員の重傷事故の最大原因は同一平面上での転倒等で、全体の30%を占めます。2番目に多い原因は車両事故で29%、運搬等の作業中のけがが3位で14%となっています。

契約/派遣社員に関する2006年の致命傷・重傷事故の頻度は、2005年から有意な変化はなく、わずかに7%の減少となりました。当社では引き続き契約/派遣社員と協力しながら、正社員の場合と同等の安全責任の遂行を求めてまいります。

ドライバーの安全性残念ながら2006年の車両事故の改善はわずかであり、労災事故報告の29%が車両事故関連でした。この分野のパフォーマンス向上の一助として、2006年に新たなKPI―営業部門における走行距離100万キロメートル当たりの事故件数―の運用を開始しました。このKPIが今後の相対的なパフォーマンスを評価する際の基準となり、各国から収集したデータを用いて行動計画の策定を周知する予定です。

業務で運転するのは営業担当者が多いため、営業部門におけるドライバーの安全意識の自発的な向上を図ることを目的とした様々な国別プロジェクトを実施しています。例えば、データベース化したドライバー監督管理システムを確立し、現場の責任者に詳細な情報を提供して危険度の高いドライバーを特定しやすくしています。

当社は米国で約6,500台の営業車両を保有し、最大の営業陣を擁しています。こうした状況に伴う安全課題への対応策として、当社の米国法人は総合的なドライバー安全プログラム 「Road Scholars」を開発しています。この構想の基本理念となっているのは、ドライバーの安全性についても、営業活動のコーチングモデルと合致したトレーニングや業績管理への導入など、すべての他の営業面と同様の方法で管理すべきであるという考え方です。車両関連のけがは2004年から30%減少し、交通違反は2005年から54%減少しています。

従来、英国のドライバー安全プログラムでは多大な危険に遭遇する走行距離の多いドライバーに重点を置いており、走行距離は少ないけれども他の要因により危険度の高い社員について考慮していませんでした。新しい現在のアプローチでは、年齢、免許状況等の情報を収集するオンラインツールを用いて、同一基準に基づきドライバー全員の危険度を個別に評価しています。このオンラインツールには交通法規に対する認識、危険意識などに関する双方向的な試験プログラムが含まれ、その結果に基づいて、各自の状況に応じてどのようなレベ

社員の健康と福利厚生を重視する当社の取り組みを評価している社員の割合。

84%2010年までの、事故と業務上の疾病の発生頻度の削減目標。

50%

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22

astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

ルの「運転」トレーニングが必要であるか判断し、さらに講習後にもトレーニングの追跡調査を実施しています。

その他の地域では、ブラジルの現地法人は総合的なドライバー安全管理システムを導入し、ドライバーのリスク・プロファイリング、安全ドライバー講習、業績評価への運転関連項目の導入などを行っています。業務で車を運転するブラジルの全社員は毎年、安全運転研修を受講し、その際にドライバーの安全性に関する主要項目について評価を受けます。

当社の取り組みは前進していますが、増加する世界各国の営業部門においてドライバーの安全性に関するパフォーマンスの向上を促進するにはまだ実行すべきことが多数あり、ドライバーの安全性は現在も重要な課題です。

業務上の疾病2006年には2010年までの目標達成に向けて順調に前進しました。報告のあった業務上の疾病数は118件で、100万時間当たりの業務上の疾病の発生頻度は、前年と比べて28%の大幅な削減となり、ほとんどの疾病カテゴリーで改善されました。

仕事によるストレス性疾患は最も報告頻度の高い疾病で、全体の54%を占めます。喜ばしいことに、この発生頻度が16%低下しました。ストレスの原因として挙げられた中で最も多いのはやはり過労で、人間関係のほか、変化や仕事の不確実要因に対処する難しさも重要な原因となる要素です。ストレス症例の84%は欠勤を伴いました。

報告のあった疾病で2番目に多いのは仕事による上肢の疾病で、全体の27%を占めます。この発症頻度も下降傾向にあります。この疾病の主な原因は、コンピュータ操作や、包装など繰り返しの多い製造作業です。

労働衛生に関する取り組みでは、3つの重要な分野である、人間工学的に優れた業務慣行、職場におけるプレッシャーの確認・管理、業務上有害物質へさらされることからの保護に引き続き重点を置きます。

人間工学的に優れた業務慣行を社内で促進することは、仕事による筋骨格疾病問題の負担を軽減する当社の戦略上の重要な要素であり、この発生頻度の着実な低下は、近年の人間工学的な改善がプラスになっていることを示唆しています。社内オフィスの設計開発を行うときは、以前にもまして人間工学の考え方を

採用するようになっていますが、当社にはさらなる改善の余地があることを認識しています。人間工学の観点から設計された職場で、人間工学の観点から設計された製品を用いて働く場合のほうが、社員の生産性が高く、より健康的であり、身体にかかる負荷によるストレスが少ないと当社では考えています。

仕事によるストレスに関する継続的な取り組みでは、リスクに応じて積極的に事前に対応するアプローチを採用しており、リスクの高い分野を特定し、介入対象をより効果的に定める福利厚生リスク評価ツールを用いています。この戦略上のもう1つの重要な要素は、あらゆるレベルの労働衛生、福利厚生、人事、経営管理の専門家が密接に協力して、この課題に対処するためにさらに総合的なアプローチを開発することです。さらに当社では、継続的なSHE監査プログラムと20 0 6 年に構築した各地 域のSHEサポートネットワークにより、常に全社内の業務上の疾病について報告しており、必要に応じ報告プロセスを改善しています。

産業衛生分野では引き続き有害物質の吸入防止に重点を置きながら、リスク評価ツールの改善を図り、皮膚をはじめ有害物質にさらされる潜在的な危険のある経路を確実に考慮できるようにします。

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当社では仕事と家庭を健全に両立させることを奨励・サポートしています。世界各国の社員の長 期 的な福 利厚生を図るには、当然、仕事と家庭の両立が不可欠です。

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経営陣直属の管理職

男性女性

53

69

76

26

19

19

2006

2005

2004

2�

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福利厚生当社は常に全社における広範な健康増進・福祉向上プログラムに多大な投資を行っており、社員一人ひとりの責任の自覚を促すことに力を入れています。2006年グローバル社員意識調査の結果から、社員の84%が社員の健康と福利厚生を重視する当社の取り組みを評価していることが明らかになっています。健康リスク・プロファイル、各部門、文化の違いに応じてプログラムの内容は多岐にわたり、運動量の増加、喫煙削減、栄養改善、ストレス管理、健全な仕事と家庭の両立の促進などを目的とした健康問題全般に関する取り組みが含まれます。さらに、がん、循環器疾患、インフルエンザなど個別の疾患領域に重点を置いたプログラムも提供しています。

2006年には世界的なインフルエンザ流行の潜在的な脅威に対処するための計画を策定し、世界各国の全社員に啓発資料を配布することにより、社員とその家族がインフルエンザの流行に備えられるようにしました。そのほか、国内の治療体制から十分な医薬品等の提供を受けられないおそれのある地域の社員に抗ウイルス薬を提供するなどの措置を講じました。

特に筋骨格疾病と精神的不調の領域における、健康と生産性の直接的な関連性を示唆する一連のデータが増える中で、健康増進を図ることは当社の将来の健康・福利厚生戦略の重要な要素となっています。

2006年は上級管理職クラスにおいて多様性が適切に反映されるよう徹底することを引き続き重要課題としました。1つの指標として、現在はシニア・エグゼクティブ・チーム直属の上級管理職79名のうち33%(2005年は88名中22%)が女性となっています。

2006年グローバル社員意識調査では、全体の63%の社員が経営陣は全社員の機会均等を支持していると考えていることが明らかになっており、女性の69%、男性の70%が、社内で偏見や差別を受けたことはなく、ほかの人がそのような目に遭っているのを見たこともないと答えました。さらに調査結果には全データの地域別・部門別内訳も含まれ、重点的に改善する必要のある領域を確認できるようになっています。この調査の詳細については27ページをご覧ください。

多様性アストラゼネカにおいて多様性として考慮するのは性別や人種だけではありません。その他の違いも考慮しています。当社ではこのような違いが社内で受け入れられ、理解され、尊重されるよう徹底を図り、社員一人ひとりはもとより、当社のビジネス、顧客、そしてコミュニティのためにベネフィットをもたらすことを目指しています。

当社の長期的な課題は、多様性が各職場で適切に支持され、リーダーシップに反映されるようにすることです。多様性と人事管理は、シニア・エグゼクティブ・チーム(SET)の目標に含まれており、配属、業績評価、学習・能力開発、報酬などの人事管理プロセスに多様性が一貫して反映されるようにグローバルに足並みのそろった一連の最低基準を定めています。社員の業績と潜在能力を評価するにあたり、目的に沿って根拠に基づいたアプローチを導入することにより、社内の潜在能力の高い人材を明らかにするプロセスの明確性と透明性を確保しています。

20ページで説明したグローバルな人事情報システムの運用は、当社の基準の一貫した適用の促進と、この分野のパフォーマンスに対する理解の向上に大いに寄与することになるでしょう。

経 営 陣 直 属の 管理 職 79 名のうち3 3 % が 女 性 ( 2 0 0 5 年 は22%)。

69%33%女性の69%、男性の70%が、社内で 偏見や差別を受けたことはなく、ほかの人がそのような目に遭っているのを見たこともないと答えました。

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astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

04performanCeトップクラスの財務実績の達成に向けて懸命に努力しながら、社会に対する責任を全うするよう正々堂々と事業を運営するという当社の責務を常に忘れないことが、きわめて重要であることを私たちは認識しています。

アストラゼネカの医薬品は、患者さんにベネフィットをもたらし、広く社会に価値を還元することを目的としています。この目的を適切に達成することから生まれる高い財務実績によって、当社は公開会社としての責務を果たし、株主の皆様の期待に応える投資収益を実現できるのです。

2006~2010年の環境目標の達成には、特に天然資源の利用を節減し、環境汚染をなくすように努めることにより、当社のあらゆる活動の持続可能性を継続的に改善する必要があります。

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2006年のコミュニティ支援総支出額5,600万ドル

科学・教育助成 15%

寄付 34%医療助成47%

その他 4%

2�

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企業責任優先行動計画 – performanCe

項 目 目 標 行動計画 Kpi(適宜) 2006年のKpiに基づく実績および詳細情報の参照ページ

すべての活動へのcrの浸透

関係する戦略・決定のすべてにおいてCRの配慮を徹底する。

個 人 業 績目標 へのC R 導 入 を 継 続 する。

方針、枠組み、基準および指針に関する社内コミュニケーションを継続する。

地域ごとの実践を継続する。

学習開発(L&D)プログラムへのCR導入を継続する。

社員の理解・意見のサンプリングを継続する。

グローバル社員意識調査(2年ごと)と非定期的な動向調査

CRトレーニングに参加するリーダー数

27ページ参照。

2006年のCRトレーニングに参加したリーダーは4 9 0 名( 2 0 0 5 年 は245名)。

コーポレートガバナンスとコンプライアンス

あらゆるステークホ ル ダー に 最 高の 倫 理 基 準で 対応する。

アストラゼネカグループ全体における必要なCR基準の 全 社 一貫した実 践 を 徹 底 する。

報 告手 順 を含む 行動 規 範の周知 徹 底を継続する。

CRを盛り込 んだ監査プロセス開発を継続する。

グローバル監査を継続する。

新たにアストラゼネカグループの一員となった社員と一丸になって、CRにかかわる期 待 事 項に対 する理解を徹底する。

CRを盛り込んだ監査回数

内部施設監査を18回実施(2005年は18回)。

29ページ参照。

気候変動 全 世界 の 事 業 活動 による影 響 を最小 限に抑 制 する。

2010年の時点で全源泉からの排出量(pMDI(加圧式定量噴霧吸入器)製品からの放出を含む)が2000年の実績以下で、かつ1990年の実績より40%少ない水準を確実に達成することを目標とする。

全源泉(pMDIを除く)から発生する地球 温 暖 化 ガスの 排出量を2010 年までに2005年実績から12%削減する目標達成 に向 けた長 期 的な取り組みを継続する。

全源泉(製品の使用を含む)からの温室効果ガス総排出量。

全源泉(pMDIを除く)からの温 室効果ガス総 排出量。

132万トン(20 05年は143万トン)。

9 6 万トン( 2 0 0 5 年 は93万トン)。

30ページ参照。

サプライヤー サプライヤーが当社と同様のCR基準を導入するよう促し、サプライヤーとベストプラクティスの共有や改善支 援を 適 宜 協働する。

グローバルな購買マネジメント・プロセスへのCRの導入を継続する。主要なマーケティング・製造・研究活動を 行 っ て い る 国々*の購買指針におい て C R を 実 施 する。

中間 生 成 物 や医 薬品有効成分のサプライヤーに関する監査プログラムを継続する。対象を製剤製品のサプライヤーと包装業者にまで拡大する。

すべてのカテゴリープランでCRの考慮を継続する。

対象国*で締結される新たな契約や基本合意のすべてでCRを考慮する。

監査回数

* 英国、米国、スウェーデン、日本、中国、インド、カナダ、メキシコ、プエルトリコなど。

新しいカテゴリー・マネジメント・プロセスを開始するときは必ずCRが反映されている。

2006年末までにプロセスを整備し、対象国*で締結されるすべての新たな契約や基本合意においてCRの反映を徹底している。

監査を17回実施(2005年は19回)。

32ページ参照。

新たにアストラゼネカグループの一員となった社員と一丸になって、crにかかわる期待事項がきちんと理解されるよう徹底を図っています。

04performanCe

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26

astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

performanCe

責任およびアカウンタビリティ(説明責任)アストラゼネカ取締役会はCR戦略を承認し、社内におけるCR戦略の実施状況を監視する明確な責任を担う非常勤取締役(Dame Nancy Rothwell)を選任しています。

グローバルCR委員会がDame Nancy Rothwellをサポートし、CR枠組みの策定をリードしています。シニア・エグゼクティブ・チーム(SET)と他の上級管理職はグローバルなCR枠組みに基づき、その一方で国や部門、拠点ごとの課題や優先事項を考慮しながら、担当分野のCRマネジメントに責任を負います。個人レベルでは、 アストラゼネカの社員一人ひとりが、日々の意思決定や行動にCRへの配慮を反映させる責任があります。

こうした取り組みを世界規模で支える共通基盤には、グループCRポリシー、グループCR基準、グローバルCR優先行動計画があります。それらは、当社のCRコミットメントの取り組みを理解・管理するための枠組みを提供するものです。

さらにCR目標は当社の業績管理の枠組みにも組み込まれており、全社的に実施される予定の新たな業績管理制度の一部として、社員の個人目標に適切なCR関連目標が盛り込まれることになっています。SETおよび上級管理職の場合は、それぞれの担当分野を超えてCRを統合的に管理するためのマネジメントシステムや行動計画を確保するよう、目標が決定されます。社員の年間業績評価プロセスでは、標準的な業績管理システムにより、各社員による当社の業務基準と倫理基準の採用・遵守状況を評価します。

優先行動計画当社ではリスクマネジメント・プロセスにおいてアストラゼネカの企業としての評価にかかわるリスクを常に考慮しており、管理職がそうしたリスク意識を持って日々の判断を行うよう徹底を図っています。そのためのツールは、リスクマネジメントの基本的な考え方の共有、原則や枠組みといった形で示されており、管理職はそれらを用いて行動について検討し、リスク評価を行い、プラス思考で意思決定を行えます。

また、統合的リスクマネジメントの専門家からなる専任チームを設置しており、このチームは、上級管理職が各自の担当分野におけるリスクマネジメント戦略を明確化し、評価検討のうえ策定できるよう手助けしています。さらに、有効な統合的リスクマネジメントに関する社員研修プログラムを実施しているほか、ベストプラクティスを共有・実践するためのネットワークを構築しています。

当社はこうした取り組みにより、最高財務責任者を長とするリスク諮問グループの方針を周知しており、リスク諮問グループは、当社が直面している重要なリスクとその対応策を監視しています。

企業責任にかかわる優先課題の把握 アストラゼネカではこのような正式な内部リスク評価プロセス、外部ベンチマーキング、ステークホルダーとの対話を活用し、当社の企業責任にかかわる機会や課題の把握に役立てています。

2006年にはリスクに関する社内での対話を拡大し、全社の適切なチームからさらに多くの担当者を対話に加えて社内プロセスのさらなる強化を図りました。これにより当社のCRにかかわるリスクをより明確に把握できるようになりました。

さらに本年は、CR優先行動計画の一環としてCRに関してステークホルダーの方々と対話を行う際の新しい指針を社内発表しました。従来の管理職向けCR実施要領には、ステークホルダーの方々とのかかわりは国別の優先行動計画を立案する際の重要なステップであることが明記されていますが、新しい指針は、こうした取り組みの具体的な実践方法を理解するのに役立つほか、今後、CRに関する重大な懸念や期待事項を一貫した方法で把握し、適宜、グローバルCR課題に反映させるための基準となります。

CR優先行動計画は4つのセクションに分かれており、それぞれ5ページ、11ページ、19ページ、25ページに記載しています。これは、当社のコア・バリューに従ってこうした課題を管理するための枠組みとなるもので、明確な目標のほか、必要に応じて適切な主要行動指標(KPI)が含まれます。優先行動計画は常に妥当性を確 認 するため 毎 年見 直しを行 っており、2006年には気候変動に関する新しいKPIを導入し、この分野における当社の継続的な取り組みを反映させました。さらに、企業買収による当社の事業拡大に伴う責任を念頭に置いて、「コーポレートガバナンスとコンプライアンス」の項目に優先行動計画に対する個別の言及を加え、新たにアストラゼネカグループの一員となった社員にも、CRにかかわる期待事項がきちんと理解されるよう徹底を図っています。

本書に記載した事項などCRの他の分野についても、当社は引き続き課題として取り組んでおり、これらの分野において成果を挙げるべくこれまでと同様に強い責任感を持って臨んでいます。

非常勤取締役のDame nancy rotHWell(写真左)は、社内におけるcrの取り組みを監視する明確な責任を担ってい ま す 。 最 高 財 務 責 任 者 のJonatHan symonDs(写真右)を長とする当社のリスク諮問グループは、企業評価にかかわるリスクなど当社が直面している重要なリスクとその対応策を監視しています。

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研究などでした。質問にはすべて率直にお答えするとともに、さらなる話し合いや情報をご希望であればご連絡をいただくことにしました。そして、そうしたフォローアップのための会合が2007年1月に行われました。

社員ラインマネジャーとのブリーフィングやチームミーティングに加え、当社は様々な電子媒体や印刷媒体を使って、世界中の社員と定期的にコミュニケーションを図っています。社内コミュニケーション・プログラムにフィードバックの機会が組み込まれているほか、当社の行動規範には社員が誠実性に関する問題を提起する際の手順が定められており、社内ヘルプラインの電話番号なども記載されています。2006年はヘルプラインなどを通じて106件の問題の報告が 社 員 か ら 寄 せら れ ました( 2 0 0 5 年 は114件)。電話のほとんどは社員の職場での行動に関するものでした。問題事項はすべて調査のうえ、必要に応じて適切な措置を講じており、責任者に対する指導、懲戒処分、解雇といった処置がとられることもあります。今年、この手順を介して重大な問題事項はまったく通報されていません。

さらに、社員の勤務状況を追跡し、問題のある領域を調べるために社内調査(2年に1回)も世界規模で実施しています。この調査は無記名で、外部専門機関の助力を得て実施され、調査結果の分析も同機関に委託しています。2006年には4回目の調査を行い、過去最高の回答率(86%)を記録しました。このような高水準の社員の回答を得られたことは、信頼できるフィードバックの仕組みとして、社員が意識調査を引き続き信用していることを表しています。調査 結果は、全カテゴリーにおいて2004年の前回調査時より改善がみられ、ほとんどの事例で医薬品業界の基準を上回りました。肯定的なフィードバックが示された領域としては、健康、安全、情報の共有、コミュニケーション(特に、直属の上司のフィードバックに対するオープン性の向上)が挙げられます。また、社員は、社外取引に適用される当社の倫理基準を高く評価しています。全体的に勤務状況は堅実ですが、リーダーシップと業績管理の一部の側面ではさらなる改善が必要であること

が明らかになりました。これらの領域に重点を置いた取り組みとして、業績の枠組みに組み込まれる責任の明確性を向上させる施策などがすでに開始されています。

政府組織および非政府組織とのかかわり製薬業界は、産業界全体で最も厳しい規制を受けている業界の1つです。当社の事業はほとんどの面が規制や倫理綱領の対象となります。したがって、政府など公共団体との公共政策に関する対話集会等に参加し、当社の事業に影響を与える諸事項についてコミュニケーションを図ることはきわめて重要です。

政府とのコミュニケーションは、製薬業界に影響を与える政策や規制の策定・施行の建設的枠組みを作り、良き規制、確かな業務慣行を生み出すのがねらいです。さらに国内外の製薬業界団体と連携し、業界標準のベストプラクティスの推進や、政府・国際機関の主要なステークホルダーの方々と信頼関係の確立に努めています。また、当社は赤十字社や赤新月社のほか、世界保健機関、オックスファム(OXFAM)などの非政府組織や国際組織とも交流を図っています。

2006年も引き続き管理職社員へのサポートとして各国のcr活動向けツールや関連指 針を整 備しました。

ステークホルダーとの対話先に述べたように、当社ではCRに重点を置いたステークホルダーの方 と々のかかわりを各国の優先行動計画に反映させるにはどうすればよいか理解を深めるべく努めており、そのために特別な場を設けてCRだけに的を絞った話し合いを重ねています。

大局的には、日々の事業活動の中で様々なステークホルダーの方 と々の対話を続けることにより、患者さんにベネフィットをもたらし、株主の皆様はもとより広く社会に価値を還元できる新薬を送り出し続けるために必要な洞察力を蓄えています。このような方々との対話はCRに限ったことではなく、どちらかといえばビジネスを目的としていますが、双方にとってCRに関する課題などを話し合う機会にもなります。

こうした対話には2つのレベルがあります。グローバルレベルでは投資家、全世界の社員、国際的な政府組織と非政府組織、そしてビジネスおよびファイナンシャル・メディアなどのオピニオンリーダーの方々が中心となります。

国や地域レベルでは、各国、各地域の社員、政府、メディア、地域社会、顧客が中心となります。

株主の皆様当社は非公式な対面ミーティングや、Dow Jones Sustainability Index(持続可能性で評価した企業株価指数。29ページ参照)などの公的調査の双方から、当社に対する株主の皆様の評価を得ています。

当社は2006年11月に、シティグループがCRについて討議するために開催した「Best of British」会議に招かれた6社のうちの1社として、20名を超える社会的責任投資家(SRI)の方々とお会いしました。4回にわたるセッションにおいて、投資家の方々が当社に関して最も重要と考えておられるトピックや、詳しい情報を求めておられる事項について意見をお伺いしたところ、関心をお持ちの分野は臨床試験、環境における医薬品、営業・マーケティング活動、幹細胞

購買活動に関するCR方針 ステークホルダーとのかかわりに関するCR方針

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astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

performanCe

2006年には社内の渉外業務規範の策定に着手しました。公共政策立案者や公共政策に影響を及ぼす方々を対象としたすべてのコミュニケーション・プログラムや公共政策戦略に規範を適用する予定です。その目的は、当社を代表して公共政策に関する討論会などに参加するすべての担当者が最高水準のコミュニケーションを図れるようにし、政府等の適切なステークホルダーの方 と々建設的対話の場を持ち、そうした関係を維持することにあります。

顧客の方々とのかかわり当社は各地域の市場における日々の事業活動の中で、医師などの医療従事者や、医療費を負担する側の方々とかかわっています。先に述べたように、そうした方 と々のコミュニケーションは、当社の医薬品、その適応症、使用に伴うベネフィットとリスクが中心となります。医療サービスの買い手として、各国政府は規制管理側であると同時に顧客でもあることがしばしばであり、治療面と経済面でベネフィットをもたらす医薬品へのアクセスは、こうした政府関係者とのコミュニケーションの重要テーマです。

患者さんとのかかわり 医療面で可能な限り最善の貢献を行うには、絶えず変化するニーズを常に把握することが不可欠です。そのため、患者さんや担当医師の方 と々継続的に話し合い、医療現場におけるニーズの把握に努めています。例えば、個別の健康問題に関する特定の要求事項を代表する患者さんの団体と協力し、こうした団体を支援しているほか、医療従事者や患者さんが直面するさらに広範な疾患上の課題について医療従事者と協議しています。

2006年は新しい行動規範の要件に従い、(ウェブサイトastrazeneca.co.uk上で)英国における当社と患者団体との交流をすべて公表しました。さらに外部の要件に基づいて、当社のグローバルチームと国際的な患者団体との交流に関する一連の基準を策定したほか、こうしたアプローチの他地域への拡大について今後検討する予定です。この基準には、上記のような情報を収集し、世界のアストラゼネカ・ウェブサイトastrazeneca.comを通じて公表する仕組みが含まれます。

地域社会とのかかわり各国のアストラゼネカでは事業所ごとに地域社会の皆様との窓口を務める担当チームが、常に地域住民の方 と々オープンな対話を心がけており、当社の事業活動や計画をお知らせし、また、懸念事項をお聞かせいただく役割を担っています。

アストラゼネカは当社の活動に関心をお持ちのステークホルダーやその他の方々との建設的対話を推進することで、その変化する期待に対応し、当社の立場をご理解いただく機会としています。

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DoW Jones sUstainability inDexなどの主要な外部調査を用いて当社の進捗を評価し、持続可能な開発の必要性に対する理解を深めています。

内部施設監査の実施回数

18

18

24

2006

2005

2004

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業績評価業績の評価基準は、CR活動を効果的に管理する手がかりとなるものであり、継続的な業績の向上のためには、当社の進捗状況を把握し、改善の必要な分野を明確にすることが極めて重要です。

当社の主要行動指標(KPI)については5ページ、11ページ、19ページ、25ページに記載した優先行動計画をご覧ください。気候変動に関しては2006年に新たなKPIを導入しました。これについては30ページで説明します。

当社は業績のベンチマークを行うための方法をさらに模索中です。

当社はまた、Dow Jones Sustainability Indexなどの主要な外部調査の対象となっています。上記指数は、当社の業績を評価し、持続可能な開発の必要性についてよく理解できる重要なツールとなっています。アストラゼネカは本年も、世界の資産運用責任者が社会的責任投資を行う際に指標として用いる2007 Dow Jones Sustainability World Indexの対象銘柄として選定されていますが、順位争いがますます熾烈なEuropean Index(Dow Jones STOXX)では、スコアを伸ばしたにもかかわらず、2005年に失った地位の回復には至りませんでした。

コーポレートガバナンスとコンプライアンスアストラゼネカの全管理職社員は、配下のチームが行動規範だけでなく、各自の職務に関係する当社の他のポリシーや規範、基準をすべて遵守するよう徹底させる個人責任を負っています。また当社は、全社内における要件の遵守を徹底するため適切なプロセスの整備に取り組んでいます。

コンプライアンス 2006年には当社のコンプライアンスに関する戦略的アプローチをさらに強化し、戦術の実行を調整するため、グローバル・コンプライアンス責任者(GCO)のポストを新設しました。10月に任命された新しいGCOは最高経営責任者(CEO)直属で、各地域や各部門内でグローバル・コンプライアンス・プログラムの実施にあたる各国・地域のコンプライアンス担当者のネットワークと連携してコンプライアンスを推進しています。コンプライアンス担当者は、効果的なトレーニング、モニタリング、監査、実施プロセスにより、社内における当社のポリシーや基準の遵守の促進に取り組んでいます。

2005年に開始した当社の営業部門における第三者審査は2006年中に完了しました。この審査プログラムは、特に営業・マーケティング活動、財務、ITおよび人事管理領域における当社のガバナンスを中心としたもので、その結果に基づき各営業部門で改善計画を策定し、すべての措置について明確な完了目標期限を設定しています。

内部監査グループ内部監査(GIA)部門は独立した保証・諮問部門で、当社の他の監査部門やコンプライアンス部門の業務と独立性など、特に当社のリスク、ガバナンス、コンプライアンスの枠組みの有効性に関するチェック機能を果たしているほか、法律、規制およびグループポリシーの遵守状況をチェックしています。2006年は、GIA部門ではいくつかの中核的な保証領域(コンプライアンスなど)に加えて、重要な領域におけるリスクマネジメントのプロセスと業務の有効性に重点を置きました。

当社は本年も引き続き内部施設監査プログラムを実施しました。これは、CR課題の安全性、健康、福利厚生、環境、セキュリティ、多様性、地域社会の側面に関する当社のポリシーや基準、プログラムに基づく各地域の施設および担当領域のパフォーマンスに主眼を置いたもので、この監査業務については監査人向け個別監査実施計画を作成しており、当社の業績評価の重要な要素となっています。2006年は18回の上記監査を実施しました。このような広範な監査プログラムから結論を導き出すことは困難ですが、各地域の事業部門が当社のCRコミットメントの重要な側面をこれまでどおり各地域のビジネスに反映させるべく鋭意取り組んでいることが、監査結果から確認されています。しかし、どうすれば各地域での活動を通じて当社の戦略的CR目標の実現に貢献できるかについて共通の理解を徹底するために、なお一層の取り組みが必要です。

監査委員会 アストラゼネカ監査委員会は、アストラゼネカ取締役会配下の委員会の1つで、3名の非常勤取締役で構成されており、GIA部門の監査結果と管理職社員より報告のあったその他の重要事項について調査検討を行います。特に内部統制の全体的な枠組みに関して調査検討のうえ報告を行い、内部監査の実施、結果または結論について重大な懸念がある時はただちに取締役会に知らせる仕組みをとっています。

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2006年地球温暖化の可能性のあるガス総排出量132万t

社内業務 23%

移動・輸送・廃棄28%エネルギー移入 22%

吸入製品 27%

温室効果ガス排出量CO2相当量(1,000mt)

1,000

2,000

3,000

4,000

0

1990 2000 20051995 2010

オゾン層破壊ガス排出量CFC-11相当量(mt)

1,600

400

1,200

800

0

1990 2000 20051995 2010

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astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

performanCe

環境実績当社は、事業成長を続けながら環境への影響を抑制するという課題に常に挑戦しており、2006年は新たなグローバル環境実績目標を導入しました。すなわち、特に天然資源の利用を節減し、環境汚染をなくすように努めることは、当社のあらゆる活動の持続可能性の向上につながると考えます。2010年までの個別目標は温室効果ガスと廃棄物の排出に関するもので、これについてはのちほど詳しく記載します。

気候変動ほとんどの企業と同様に、当社の事業が気候変動に影響すると思われるのは、施設でのエネルギー使用、その他の社内活動、各種の輸送手段から排出される地球温暖化ガスです。しかし、当社製品の使用に伴うガスの排出もそれに含めるべきであると当社は考えます。そして、当社の一部の喘息治療薬において噴射剤を使用していることから、さらなる課題に直面しています。噴射剤はオゾン層破壊と地球温暖化の一因となるおそれがあるからです。

堅調な実績当社は過去5年間にエネルギー効率の改善策を実施し、熱電併給プラントへ投資するとともに、再生可能エネルギーの選択を積極的に推進しました。その結果、まず排出量の伸び率を低下させ、その後、当社施設からのCO2排出量を一定化させました。こうした源泉からの排出量は、2005年には2001年の水準まで減少し、全源泉(製品を含む)から発生する当社の地球温暖化ガス排出量は、1990年と比較して63%削減されました。ちなみに、京都議定書では、先進国の場合、2008~2012年までに5%削減することが目標とされています。

当社による地球温暖化ガスの環境への排出を削減するため、さらに改善すべき対象領域が明らかになっており、例えば以下の事項が含まれます。

> さらなるエネルギー節約プログラムの実施。

> プロセス設計におけるグリーンテクノロジーの原理の導入。

> 事業所における外部電力会社からのより環境にやさしいグリーンエネルギー供給や、よりクリーンな熱電装置に対するさらなる投資。

> 環境にやさしい車輌/および移動手段への投資。

> 事業所からの廃棄物とガス排出の最小化。

当社の気候変動に関する情報開示と戦略は、2006年にCarbon Disclosure Projectにおいて、製薬業界部門の最上位にランクされ、Climate Leadership Indexでもトップクラスの評価を受けました。このプロジェクトでは、投資家向けに企業の環境情報等をまとめて、温室効果ガスの排出と気候変動に及ぼす企業の影響を評価できるようにしています。

挑戦の継続喘息は誰もが知っている疾患で、患者さんの衰弱を引き起こしがちですが、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)と呼ばれる小型スプレーを使って薬剤を吸入すると、症状を軽減できます。pMDIとは、噴射剤のガスを利用して患者さんの気道に薬剤を取り込めるようにしたもので、従来のpMDIで使用していたフロンガス (CFC)が、オゾン層を破壊するガスとして特定されたのを契機に、当社では代替器具の開発 に 着 手 し まし た 。1 9 8 7 年 に 導 入し たTurbuhalerドライパウダー吸入器は噴射剤を必要としないものの、あらゆる患者さんの使用に適したものではありません。そこで当社はpMDI用の代替的な噴射剤を開発し、その導入を進めています。そうした代替器具は、オゾン層を破壊するおそれがまったくなく、地球温暖化の一因となる可能性はCFCに比べて半分に

も及びません。このハイドロフルオロアルカン(HFA)噴射剤は、依然として気候変動に若干影響するものの、患者さんにとってこれより安全な代替剤は存在しないことが国際的に認められています。

2 0 0 6 年 に は 米 国 で 新 し い 喘 息 治 療 薬Symbicortの販売承認を取得しました。米国では3,000万人を超える人々がこの衰弱性疾患に苦しんでいます。HFA噴射剤を含むpMDIを用いた当社の新しい治療薬は、喘息症状を急速かつ効果的にコントロールすることができます。世界最大の医薬品市場である米国でこの新薬を上市すれば、その恩恵を受ける患者さんが増えるにつれて、HFAの排出量も必然的に増えることになります。

気候変動への潜在的な影響にもかかわらず、SymbicortのpMDI製剤が喘息の患者さんにもたらす療法の選択肢の拡大と潜在的なベネフィットのほうが、当社の環境実績に及ぼす潜在的な影響より重要であると当社では考えています。

当社は引き続き環境への影響の抑制に鋭意努める所存であり、気候変動に関する新しい目標として、2010年の排出量が2000年の実績以下で、なおかつ1990年の実績より40%少ない水準を確実に達成することを目指します。2007年中に予定しているSymbicortのpMDI製剤の上市により、当社の事業活動からの温室効果ガス排出量は低下し続けると考えられますが、2000年から毎年達成してきたように、 (製品からの排出を含む)温室効果ガスの総排出量を今後も削減し続けることはできないでしょう。

当社では、患者さんのお役に立つ新しい吸入薬を提供する能力を損なうことなく2010年までの目標を達成しようと懸命に取り組んでいます。こうした状況の中で、2005年にアストラゼネカ取締役会の承認を得た気候変動に関する目標を達成するために、pMDIを除く全源泉から発 生する地 球 温暖 化ガスの 排出量を2010年までに2005年と比較して12%削減する目標達成に向けて、全社の総力をあげた大規模な取り組みを行います。

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総廃棄物(KTE)

59.7

59.2

60.4

2006

2005

2004

��

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持続可能な生産活動エネルギーや水など、当社における原材料の総使用量を測定すれば、廃棄物の排出量やら、資源の効率性と業務プロセスの持続可能性に関する良い指標となります。そのため当社では、この分野の適切な測定基準の開発に取り組んでいます。

その一方で当社は引き続き廃棄物の継続的改善に力を入れており、新たな目標として、2010年までに廃棄物排出量を、対売上高比率で2005年と比較してさらに11%削減することを目指しています。さらに、中間生成物と製品の当社の製造委託業者によるエネルギー使用量と廃棄物排出量の調査を開始しています。詳細については当社のウェブサイトをご覧ください。

reacH-euの化学品規制 当社は、EU産業界の競争力を高めつつ、環境と健康を守るというこの方針を常に支持しています。

REACHの実施により当社の現在のサプライチェーンに影響が生じることが予想されます。例えばメーカーは、競争上または経済上の理由のために特定物質の供給を中止するかもしれません。本規制の施行前にもかかわらず、すでにこのような事態が生じている気配があり、当社 は 現 在 、納 入 業 者と 協 力して 将 来 のREACHの遵守を円滑に進め、事業中断の可能性を回避するべく取り組んでいます。

また当社は、化学品の認可・代替に関するREACHの改正条項による潜在的な影響を評価検討しています。現在の状況では、代替規定が適用されれば、従来の製造プロセスの使用物質をより安全な代替物質に変更することを求めるREACHの要件と医薬品規制の間で相違点が生じるおそれがあり、そのような代替が重大な変更になると考えられる場合は、製品の一部または全部の再登録が必要になるでしょう。REACHは人類と環境に多大な利益をもたらす可能性があると当社では考えていますが、これは非常に複雑な規制であり、今後10年の期間を経なければ、これに伴う当社の事業活動への影響は完全には明らかにならないでしょう。

スウェーデンの営業部門で使用している「フレックス燃料」車は、ガソリンとアルコールのいずれでも走行可能で、アルコールは再生可能資源から生成される非化石燃料であるため、気候変動に及ぼす影響はガソリンに比べてごくわずかです。50台の「フレックス燃料」車の使 用 に より、毎 年 約 2 0 0トン のco2排出量の削減を実現できる可能性があります。

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中間生成物や医薬品有効成分の納入業者に関する監査の実施回数

17

19

10

2006

2005

2004

�2

astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

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納入業者との協力

当社は、納入業者が当社と同様のCR基準を導入するよう奨励し、納入業者と協力し、共有化を図り、必要に応じCRパフォーマンスの改善を促す責任があると考えています。

上記の考えは、販促物から医薬品成分に至る当社の広範な購買活動全体に適用され、動物試験など、社内活動を補完するために外部委託研究機関を利用する専門業務も対象に含まれます。さらに、既存業者との関係だけでなく、新興市場で拡大している事業にも適用されます。

当社の購買活動の大部分はグローバル購買部門の主導によりますが、他部門の多数の社員も社外からの製品やサービスの購入に関わっています。本年は購買活動に関するCR方針の指針を見直し改定しました。これは、当社を代表して購買活動を担当する全員に適用され、当社のCR責務を一貫して効果的に購買活動に反映させるために必要となる部門・地域・事業所ごとのプログラムを策定し実施する際の枠組みとなるものです。

当社では、納入業者のCRパフォーマンスが受け入れがたい状況でも、それを根拠として短絡的にその業者を除外するのではなく、まず改善を促していますが、相応の期間内に改善できない業者や、その意欲のない業者は利用しないことになっています。

継続的な取り組み 世界各地の何千にも及ぶ納入業者との関係にCRを反映させることは重要課題です。前進しているものの、各国での実施に向けて当社の高い水準の方針の意味を読み取り、全世界のすべての購買活動に適切に適用するには時間が必要です。

現在は米国、英国およびスウェーデンにおける新しい契約や基本合意のすべてにCRへの配慮が盛り込まれています。上記3カ国は当社の主要活動拠点であり、当社の納入業者の80%以上がこれらの国を本拠としています。当社において、上記国々の契約締結済み納入業者は膨大な数にのぼるため、業者の優先順位を設定して、CR基準について協議するという、実際的なアプローチをとっています。

この取り組みを継続しながら、現在、対象地域を拡大しつつあり、日本、中国、インド、カナダ、メキシコ、プエルトリコ、そして欧州諸国など、まず、当社が上記3カ国以外で主要なマーケティング・製造・研究活動を行っている地域の納入業者に的を絞っています。他地域であれば低基準とみなされそうな納入業者の慣行が受け入れられる文化的要素のある国では、当社の購買活動を通じて基準の向上を促し、基準を高く引き上げることにより、自ら範を示して現地での活動を牽引していきます。

パフォーマンスのモニタリング 中間生成物や医薬品有効成分の納入業者に関する監査プログラムを引き続き実施し、2006年には計17回の監査を行いました。供給業務のSHE、CR、品質およびセキュリティを対象とするこの 納 入 業 者監 査プログラムが2002年に導入されてから、これで当社の指定納入業者の監査が初めて一巡したことになります。2006年の監査のうち3社については、

2002年以降2回目の監査となりました。納入業者は、次の監査までの合間にも数回の視察を受け、業務見直しの会合を行い、特定されたCR課題などについて協議します。

2006年に実施した新興市場の納入業者の多数の監査結果から、プロセスの安全性に関する問題が浮き彫りになりました。これに伴い、当社はこれらの業者の化学品の有害性を評価する能力開発を支援しています。

2007年1月にはこの監査プログラムの適用範囲を拡大し、当社向けカスタム製品を供給している製剤製品の納入業者と包装業者を含めました。これに備えて、上記業者を受け持つ95%以上の監査担当者に対し、CRを盛り込んだ本監査実施計画に関するトレーニングを実施しました。残りの担当者のトレーニングは2007年初めに実施予定です。

このほか2007年初期の活動予定として、監査プログラムを構成し直し、当社の事業継続と評判に影響を及ぼす可能性が最も高い取引先を優先した監査活動の徹底を図ります。同時に、来年中の発表に向けて強化した指針を策定するなど、こうした監査におけるCRのリスクマネジメントの強化に力を注ぎます。

グローバル購買チームの上級幹部2名が2006年に中国無錫の当社事業所でcrワークショップを行い、改定された購買活動に関するcr指針について説明し、この高水準の方針を各地域でどのように解釈すればよいかについて指針に基づいて詳細に話し合いました。

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アストラゼネカ(英国チャーンウッド)は、青少年による各地域の学校とのパートナーシップ活動を助成する取り組みにより、英国の非営利 組 織であるbitc(bUsiness in tHe commUnity)から「biG ticK」賞を授与されました。4,500名を超える学生が助成を受けており、この活動に積極的に取り組む当社の社員がどんどん増えています。

全社的なcrの浸透当社のあらゆる活動にCRを浸透させることは常に最優先課題です。アストラゼネカほどの規模と活動地域を有する会社で、これを徹底するには大変な困難が伴います。当社は着実に前進しつづけていますが、企業責任(CR)が常に当社の組織全体に浸透し、各国で積極的に解釈・運用されるまでにはまだ取り組むべきことがあります。

社員の6割以上が勤務する米国、英国およびスウェーデンでは国内CR委員会を設置し、CRを管理するシステムを確立しています。他の地域では、常にリーダーシップチームの課題にCRが組み込まれ、各地域でCRに対する理解の促進が図られています。各市場でのCR浸透の進捗については次のセクションで説明します。

本書の他のセクションで述べたように、当社は全世界の優先課題分野のパフォーマンスをモニターするシステムを確立していますが、現在のところ、CR関連活動全体を一元的に検証する正式な仕組みはありません。そこで2006年に一元的に検証するパイロットテストを行いました。今後これをもとに作業を続け、適宜、現在のデータベースと統合し、世界各国のCR関連活動全体を世界規模で把握するための共通基盤を策定する予定です。

地域別活動の概要当社の主要活動拠点3カ国と他の地域における2006年のCR活動の実施状況について、以下に簡単に説明します。アストラゼネカが世界各地で取り組んでいるプロジェクトやパートナーシップの具体例は、本書の関連セクションのほか、当社のウェブサイトに別途記載しています。

英国 英国では、CRは、国内CR委員会の役割を果たす英国ガバナンスグループの職掌に組み込まれており、別のCRステアリンググループが優先行動計画などCRの枠組みの展開を管理しています。当社のグローバル計画に沿って英国CR優先行動計画が定められ、各分野での前進を徹底させる改善責任者が任命されています。大規模な事業所(オールダ-リーパーク、マックルズフィールド、チャーンウッド、アヴロナ、ブリックナム、ルートン)では現在、全国計画に加えて事業所別行動計画を作成し、各事業所の活動はもとより現地の地域社会に関連する課題と機会を反映させています。毎年、CR活動の担当者全員を対象としたワークショップを開催して活動の進捗を評価検討し、CR課題の前進を図っています。

英国の社員は、各自のパフォーマンス目標の第1目標として、標準的なCR指令(社員は「アストラゼネカの企業責任ポリシーに従って各自の職務上の重要な責務を果たすよう徹底する」)を盛り込んでいます。

さらに、CRはいまでは英国の新入社員向けオリエンテーション研修の必須要素になっており、2006年は528名の社員が研修プログラムを受講しました。このプログラムには、当社の

CRコミットメントについて新入社員へ具体的な説明と、興味を引く方法を用いて社員に求められることを理解しやすくするための双方向的な要素が含まれます。

英国で営業・マーケティング活動を主として展開する現地法人は、毎年、双方的なイントラネットを利用して、アストラゼネカのポリシーや規範の遵守に対する各自の理解と、それらに基づく取り組みについて検証することを全社員に求めています。新入社員も同様に検証しなければならず、入社時にコーポレートガバナンスに関する研修を受講し、さらにラインマネジャーのフォローアップが行われます。2006年は245名の新入社員の研修に加えて、301名の第一線のラインマネジャーがコーポレートガバナンスに関する全日の再教育研修を受けました。コンプライアンス問題が明らかになったときは、まず補習などの処置がとられ、それでも改善がみられなければ懲戒処分などのさらなる処置が講じられ、最終的には解雇されることもあります。

英国現地法人は、ステークホルダーの方々のニーズや関心事に対する理解をさらに深めるため、2005~2006年に社員、医療従事者、継続的職能開発専門家、国民医療サービス(NHS)や英国政府の代表者など、主だった方々と広範な課題に関する話し合いの場を持ちました。その結果を踏まえて一連の共通した組織の行動を確立し、責任ある営業・マーケティング活動をしっかりと定着させています。この共通基盤は社内に広く周知されており、1,700名に及ぶ英国の営業担当者が、長期的なビジネスの成功を促進するために必要となるステークホルダーの方 と々の関係をさらに強化するうえで力を発揮することになります。

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astraZeneCa Corporate responsibility summary report 2006

せ、一人ひとりの日常業務の中で責任ある行動についてしっかりと理解し、常に責任ある行動を心がけるよう徹底を図っています。当社の総合的な社員コンプライアンス・倫理コミュニケーション・プログラムは本年、製薬企業コンプライアンスフォーラムにおいて「Best Practice in Communications」として表彰されました。

その他の地域当社は主要活動拠点3カ国以外の地域でも引き続きCRの浸透を促進しています。以下はそうした活動の一部です。

中国では、コンプライアンスおよびリスクマネジメントに関する専門部署が、中国アストラゼネカの社長が委員長を務めるコンプライアンス委員会のサポートを受けて、コンプライアンスとコーポレートガバナンスにかかわる課題の取り組みを監督しています。新入社員向けオリエンテーション・プログラムには行動規範に関する講義が含まれており、当社の様々なポリシーと重要なコンプライアンス指針について指導しています。さらに2006年は当社の基準と期待事項に対する理解を確立するため、引き続き管理職向け研修プログラムを実施し、納入業者と話し合いの場を持ちました。

フィリピンでは、マーケティング活動を展開する現地法人の社長がCR課題の取り組みを指揮しており、本年は様々な関連ポリシーと規範に関する追加的な社員研修を重点課題に定めました。同国の営業担当者全員が当社の行動規範と営業・マーケティング規範に関する研修を受け、新入社員向けオリエンテーション研修にはポリシーと基準に関する講義を含んでます。患者さんの安全性に関する取り組みの一環として行われる有害事象の報告に関する社員研修も特徴となっています。社員の個人目標にコンプライアンスが組み込まれており、年2回パフォーマンスの評価を行っています。2007年の計画には同国のCR優先行動計画とCRマネジメント構造の確立が盛り込まれています。

スペインでは、マーケティング活動を展開する現地法人の社長の指揮のもと、各事業領域の担当取締役全員が参加する国内CR委員会を設置しています。同国の優先課題だけでなく全

performanCe

スウェーデン部門横断型のスウェーデンCR委員会はスウェーデン・アストラゼネカの上級幹部からなるチームをサポートし、同チームが国内CR優先行動計画を作成しています。スウェーデンの計画はグローバル優先行動計画に準拠しており、環境における医薬品(PiE)、動物試験、営業・マーケティング活動など、現地で一般の方々の注目が増している課題に特に重点を置いています。

スウェーデンでは2006年に公式な外部ステークホルダーとの対話が2回行われました。1つはPiE、もう1つは動物試験をテーマとしたものでした。PiEの対話集会には社外の研究団体、地方当局、非政府組織などの代表者が参加され、この分野の期待事項に関する当社の理解を深めるためにお力添えをいただきました。このような事項としては、事前対策の継続、提携、オープン性、医薬品開発プロセスにPiEの観点を反映する必要性などが挙げられ、現在これを踏まえてグローバル実施計画を作成中です(当社の取り組みの詳細については15ページをご覧ください)。動物試験に関する対話集会では、医学研究における動物試験の役割と代替策の利用が焦点となりました。動物愛護団体や動物保護団体、患者団体、政治家、政府高官、研究者などの代表者が参加され、合意には至らなかったものの、様々な主要利益団体が一堂に会してこうしたテーマで話し合う場を設けた当社のオープン性と前向きの姿勢は、参加者の皆様から好感をもって迎えられました。

スウェーデン最大のファンドマネジャーの1つであるFolksamは本年、ストックホルム証券取引所上場企業269社の人権と環境に関する取り組みを評価し、当社は製薬部門において両方のカテゴリーで最優秀企業となり、全体でもそれぞれ5位と7位にランクされました。

スウェーデンのリーダー層を対象としたCRワークショップ・プログラムが引き続き実施され、2006年は約150名の上級管理職社員がワークショップに参加しました。このほか本年は個別のCR責任に応じて異なる領域に関する8回のワークショップが開催されました。新入社員が

当社の企業責任を十分に認識し理解するよう確実にするため、スウェーデンの全事業所におけるすべてのオリエンテーション研修にCRに関する必修講義が組み込まれています。

米国アストラゼネカの米国CR理事会は部門を超えた管理職社員からなるグループで、アストラゼネカ・ビジネス品質保証チームとして、ポリシー・法務・科学担当副社長に直轄しています。理事会は米国CR戦略の提言と優先行動計画の作成を行い、米国法人全体のCR活動の実施を指導しています。当社のグローバル計画に沿って米国CR計画が定められ、重要な課題分野ごとに進捗を監督する責任者が任命されています。

2005年にステークホルダーの方々と話し合う場を持った成果の1つとして、アストラゼネカが米国においてCRコミットメントをどのように実現しようとしているかについて、米国にかかわる情報を求める声が多く聴かれるようになりました。そのため、2006年6月に初めて米国CR R e p o r tを 発 行し 、対外 的 なウェブサイトastrazeneca.comにおいて広く社内外に公表しました。

2006年に米国でメディケア(パートD)加入者を対象としたもう1つの新しい患者支援プログラム「AZ Medicine and Me」を導入しました。メディケアは、米国連邦政府が運営する65才以上の高齢者(所得制限なし)と65才未満の身体障害者向け医療保険制度です。パートDはメディケア加入者の薬剤費給付特約で、受給者は個人別プランに応じてオプションの薬剤費給付を受けることができます。当社の新しいプログラムは、メディケア薬剤費給付特約に加入していても、経済的に薬剤費の負担が困難な患者さんに割引価格で当社医薬品を提供するものです。

米国における当社の全社員と主要な外部委託先スタッフに対し、各自の職務と倫理に則った社風の維持にかかわる米国行動規範のほか、CRに直接関連する様々なポリシー等に関する研修を実施しました。さらに引き続き広範な業務に関するコミュニケーションにCRを浸透さ

米国では本年、当社の患者支援プログラムなど患者さん向けの幅広い健康情報やリソースを一元的に提供する 新し い ウェブ サイト 「astrazeneca.com」を立ち上げました。

南アフリカの世界教育基金(GLOBAL EDUCA-TION FUND)は、当社がスウェーデンの著名スポーツ選手、SVEN TUMBA氏と共同で設立したもので、基本的な読み書き能力と計算能力の向上と並行して活発なスポーツ活動の振興など、地方の学校教育における教育管理と基礎学習に重点を置いて取り組んでいます。

南アフリカ

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for further information Visit astraZeneCa.Com/responsibility

地域社会での活動アストラゼネカは事業を展開しているところがどこであろうとも、寄付や助成など独自の活動を通じて地域社会への積極的な貢献を目指しています。当社の企業責任は地域支援方針に反映されており、この方針の目的は、地域活動に取り組む際に、健康増進と生活の質の向上という当社の事業と一貫した方法で地域社会にベネフィットをもたらし、そして、若い人たちにとっての科学の価値を高めることに重点が置かれることにあります。

当社では世界中の情報を一元的に収集し、組織全体で情報と活動を共有できるようにするとともに、この分野における全社的な費用の正確な財務報告を支える地域支援専用データベースを構築しています。このデータベースは、当社の地域活動が、主に保健・科学教育活動を通じて地域社会に貢献することを目指す上で重要な役割を果しています。

地域活動の具体例については、本書の関連セクションのほか、当社のウェブサイトに詳しく掲載しています。

当社は2006年に全世界で総額4億9,900万ドルの地域助成や寄付を行いました。これには4億4,300万ドル(平均卸売価格)相当の医薬品の寄贈が含まれます。

社的な優先課題を盛り込んだ同国のCR優先行動計画を作成し、計画作成者が各分野の進捗について責任を負っています。全社員が少なくとも年1回、販売促進活動の倫理基準に関する再教育研修を受けるほか、こうした優先分野における継続的な取り組みの一環として、全社員を対象とする安全運転研修が実施されています。スペイン・アストラゼネカは独自のCR Reportを毎年発行し、同国内の取り組みと実績に関する詳細な情報を提供しています。

リトアニアでは、マーケティング活動を展開する現地法人の社長の指揮のもと、部門を超えた上級管理職社員からなるコンプライアンス委員会の課題にCRを反映させています。グローバルCR優先行動計画の関連する側面に沿って同国の活動を実施し、主に営業・マーケティング活動と社員の健康および安全性に重点を置いています。

メキシコでは、マーケティング活動を展開する現地法人の社長の指揮のもと、上級幹部チームの課題にCRを反映させています。同国の優先課題には社員の健康および安全性、環境、営業・マーケティング活動、購買活動へのCRの浸透が含まれます。

医薬品の寄贈が減少したのは(2005年は8億3,500万ドル)、米国におけるメディケア(パートD)の適用に伴うもので、この変更により現在はさらに多くの人々が連邦医療保険制度を通じて薬剤費給付を受けています。米国における当社の患者支援活動はすでに業界随一の規模であり、先に述べたように2006年11月には、メディケア薬剤費給付特約に加入していても、経済的に薬剤費の負担が困難な人々を対象とする新しい支援策を開始しました。また、本年は患者支援策の所得制限の水準を引き上げることにより、支援策の範囲を拡大しました。こうした取り組みの財政負担は2007年のデータに反映されることになります。このほか当社では、米国の適切な人々に必要な医薬品が行き届くようにするために、当社がお手伝いできるその他の方法を常に模索し続けています。

2002年に設立したスペインのアストラゼネカ基金は、慢性疾患の患者さんや障害者の生活の質の向上を目的とする医学研究プログラムと生涯保健教育の支援を通じて、地域社会の保健医療の向上に重点を置いて活動しています。

スペイン中国アストラゼネカは、がんの患者さん向けのリハビリテーション教育に主眼を置いた中国がんリハビリテーション協会の連続講習会に協力しています。

中国インドの営業担当者は2006年3月の世界結核デーの記念行事として、インドで用いられる6つの言語で作成したポスターやパンフレットを配布し、病院や養護施設、診療所などにおいて患者さんの病気に対する意識向上に協力しました。

インド

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ビューローベリタス社による第三者保証報告

ビューローベリタス社がアストラゼネカPLC(以下、アストラ ゼネカ)の 企 業 責 任( C R )Summary Report(以下、報告書)に対する第三者保証の依頼をお受けするのは、今年で3回目になります。同報告書の作成およびその内容はアストラゼネカ経営陣の責任であり、弊社の役割はそこに記載された情報の信頼性に対する保証を提供し、保証範囲に従って報告書に関する所見を表明することです。弊社業務の目的、範囲、方法、制限および除外事項は次ページに記されています。

弊社の所見実施した業務に基づく弊社の所見では、

> 報告書は、ステークホルダーが重大な関心を寄せる事項としてアストラゼネカが確認したCR課題に関する当該期間の同社の進捗状況と実績の概要を公正に表明しています。

> 報告書に記載された所信表明は、全社的なポリシーと目的に合致していることを示しています。

> 報告書に記載された事実に基づく情報は正確で信頼できると考えられ、明快かつ理解しやすく報告されています。

> また、報告されている主要行動指標(KPI)に関するデータは、施 設ごとに収 集のうえ アストラゼネカが全社的に照合した情報を正確に反映しています。

> 安全・健康・環境(SHE)、地域支援、営業・マーケティングおよびグローバル社員意識調査に関するデータは、優れた調整がなされたシステムおよび情報源に由来しています。

> 報告書はAA1000保証基準の基本原則との適合性が高まっていることを示しており、同社のステークホルダーにとって優先事項であると考えられるCRの重要課題が取り上げられています。

> アストラゼネカはコンプライアンスと評価を協議事項として常に高く位置づけています。

報告対象期間中の進捗 報告対象期間中のアストラゼネカの進捗に関して、ビューローベリタス社が論述させていただいた内容は以下のとおりです。

> CR課題に関するステークホルダーとの協議やコミュニケーションに関する指針を作成しており、こうした情報をさらに構造化された方法で把握するための基盤を現在策定中です。

> 社内におけるコンプライアンスのモニタリング、管理および報告を強化する仕組みを開発し、グローバル・コンプライアンス責任者を任命しており、コンプライアンスに関するネットワークが責任者の活動をサポートしています。

> さらに、以下を通じて標準的な事業活動にCRの原則を反映させています。

– 同社の経営体制へのCRの導入・統合を継続する。

– シニア・エグゼクティブ・チームおよびその他の部門別業績管理評価にCR目標を組み込む。

– 職務と責任を再調整するため、CRガバナンス機構の見直しと再編に着手する。

> 追加選定したグローバル・オペレーションを第三者保証範囲に組み入れています。

> 気候変動分野で新しいKPIを導入したほか、新たにアストラゼネカグループの一員となった社員と一丸になって、CRにかかわる期待事項に対する理解の徹底化を図ることについて、優先行動計画に個別の言及を加えています。

> 前年までのCR Summary Reportに関する保証業務の結果に基づく助言を実施または推進しています。

aa�000保証基準の基本原則との合致完全性アストラゼネカのCR課題と報告範囲は、同社のCRにかかわるリスクと機会を全社的に把握する確固とした総合的なプロセスにより周知されており、同社に影響する広範な長期および新規の課題を反映しています。同社が報告書に盛り込む内容として選定した分野・活動はすべて、部門横断型のガバナンス機構により検討評価済みです。また、アストラゼネカはステークホルダーの関心事やフィードバックを把握する仕組みの構築において前進しており、その一方で現在、全社的なリスクと評価の管理プログラムをさらに調整しています。

重要性 報告範囲は、同社とステークホルダーにとってきわめて重要と思われるCR課題の優先順位づけのプロセスによって決 定されています。 アストラゼネカは適切で意味のある情報を提供するために、社内で、また特定の主要ステークホルダーと協議を行って明確化したCR課題に基づいて実績を評価していますが、必ずしも構造化された対話に基づいていません。アストラゼネカおよびそのステークホルダーは、ここに報告された情報を、自らの意見や意思決定の合理的根拠として使用することができます。

応答性 アストラゼネカは、重要なものとして同社が確認した側面についてCR目標と目標値を設定しており、報告範囲と関連する範囲において報告対象期間中のパフォーマンスと進捗状況を公正に表示しています。アストラゼネカは常に優先行動計画を見直し、適切なKPIを策定しています。例えば、報告対象期間中に新しい目標を導入し、新たに買収したグループ企業の社員にもCRの期待事項がきちんと理解されるよう徹底を図っているほか、気候変動分野の新しいKPIを導入しています。しかし、人権と患者さんの安全性の分野における人材データの収集については、KPIはまだ確立されていません。

アストラゼネカは、営業・マーケティング活動に関する外部規制・規範の違反、研究活動における動物使用、CO2排出量など、一部の重要なCR課題に関する実績データの透明性を確保する取り組みについて追跡調査を行っています。同社は主な報告対象事項について実績の向上を報告しています。

アストラゼネカにおける主な追加検討項目弊社が実施した業務に基づき、アストラゼネカでは以下の項目について検討されることを推奨します。

1. 社内で進行中の関連部門の再編に鑑みて、グループのCR管理とガバナンス機構が常に明確に定められ、周知され、実施されるよう徹底させる。

2. 各地域で設定する目標や行動指標が、各地域の要件に適合しており、かつ、全社的に設定された優先事項や目標と一致しているよう常に徹底を図る。

3. CRを導入する取り組みの目的、利点および妥当性について共通の理解のもとで、グローバル・オペレーション全体へのCRの浸透を常に促進する。

4. 外部ステークホルダーの関心事を常に把握し、同社のCRにかかわるリスクの確認に反映させるよう徹底するためのプロセスを改善する。

5. IGRIなどの報告指針に従って実績の評価基準を採用または改良し、業界全体の共通の関心分野に関するベンチマーキングを促進し、報告対象とする実績データの範囲拡大を助長する。

6. 適宜、優先行動計画のKPIに関するデータ収集システムの堅牢性の向上を図り、これらのKPIに基づいて進捗を報告する。すでにベストプラクティスが確認されている場合は、遭遇した障害、不遵守の事例、これに対処するための是正処置などを報告に含める。

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7. 進展がみられない場合は、既存システムの強化を継続し、同社のCR優先行動計画のKPIを策定する。

8. アストラゼネカのCRに関するアプローチやパフォーマンスについて第三者から受けた助言とステークホルダーからのフィードバックに対する同社の回答をきちんと管理し、それらについて報告する。

上記所見は、本第三者保証報告の中で後述する固有の制限を踏まえて、そうした制限を前提にまとめたものであり、保証業務は、絶対的保証ではなく合理的保証を提供するために計画を立てて実施しました。したがって、上記所見は弊社の結論の合理的な根拠となっていると弊社では考えています。

目的と範囲 保証の目的は以下のとおりです。

1. 2006年1月1日~12月31日のこの報告書に対する保証を提供する。

2. AA1000保証基準の基本原則に照らして報告書を評価する。

> 完全性 > 重要性 > 応答性

3. 報告プロセスについて中立なコメントを提供し、必要に応じてさらなる開発事項を提言する。

ビューローベリタス社では、信用を確立するため、また、アストラゼネカのCRプログラムの実績向上を促進する1つの手段として、確固とした透明性の高い保証プロセスが必要であると考えています。これについては、報告プロセスについて中立なコメントを提供し、必要に応じてさらなる開発事項を提言することによって実施しており、別の報告書においてアストラゼネカの経営陣に詳しく説明しています。

保証範囲業務範囲はアストラゼネカと協議のうえ決定しました。その範囲には以下に関する保証の提供が含まれます。

> アストラゼネカのCR管理およびガバナンスの構造、それを支えるポリシー、関連する運営体制および実施システム。

> 環境・社会問題、各種の活動、システムおよびKPIなどの裏づけデータについての事実に関する情報。

> 報告書に記載されているアストラゼネカのグローバル・オペレーションから得た情報。

> 報告対象期間中の進捗。

方法事実に関する記述および裏づけデータは、確証となるデータベースや報告システムの文書調査、データの抜き取り調査、担当責任者のインタビューなどの一連のプロセスによって検証しました。これには、報告書に掲載された資料の内容を厳密に調査し確認する作業も含まれます。こうしたプロセスにより、CRパフォーマンスを裏づける報告システムと基礎システムの品質を評価しました。弊社では少なくともデータは報告書に正しく転載されていることを保証いたします。

> 上級幹部、研究員、監督者など、組織のあらゆる階層の50名を超える社員のインタビューを実施しました。

> ロンドンおよびオールダ-リーに所在する アストラゼネカの英国オフィスのほか、セーデルテリエ(スウェーデン)およびナウカルパン(メキシコ)の事業拠点を視察しました。

報告書の誤り、漏れ、誤解を探すために弊社業務に依存することはできません。

制限および除外事項 弊社の業務範囲から除外されているのは以下の情報です。

> 規定の報告対象期間外の活動。

> アストラゼネカの所信表明(同社による意見、信条、抱負、期待、目的、将来的意図の表明など)。

> 価格設定、患者さんの安全性など、(少数にしか知られていない)高度な機密性を有する情報も審査の対象としましたが、保証業務の一環としてそうした情報を閲覧したとしても、必ずしも綿密な評価を下せるとは限りませんでした。

> 本報告書の財務データは、アストラゼネカのAnnual ReportおよびForm 20-F Informa-tionから抜粋されており、これらの文書については別途外部監査人の監査を受けていることから、弊社の保証範囲から除外しています。

独立性、中立性および業務能力に関するビューローベリタス社表明ビューローベリタス社は、品質、環境、健康、安全および社会的責任を専門とする独立のサービス企業であり、第三者保証サービスを提供して170年以上になります。2005年の売上高は17億ユーロです。

弊社保証チームはアストラゼネカとの他のプロジェクトには一切関与しておらず、ビューローベリタス社が提供する他のサービスと保証チームのサービスとが相反することはありません。

ビューローベリタス社は、スタッフ全員が日常の業務活動において高い倫理基準を維持するための倫理規範を全社で実践しています。

業務能力:弊社保証チームは20年以上にわたり、環境、社会、倫理、健康および安全に関する情報、システムおよびプロセスの、ベストプラクティスに基づく保証を行ってきた実績を有します。

ロンドン、2007年�月

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・本書の用紙は、70%再生紙で、ISO14001認証取得工場で製造されたものです。・本書の印刷は、環境に配慮した植物性大豆油インキを使用しています。

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本冊子はアストラゼネカグループのCRレポートの翻訳版であり、資料の正式言語は英語です。内容および解釈については英語が優先します。また、商標および製品の発売状況、取得適応症、開発状況など内容が日本とは異なる場合もあります。詳細については、アストラゼネカ株式会社 コーポレートマネジメント統括部 広報部までお問い合わせ下さい。

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