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Page 1: 細胞 THE CELL 2010年7月号 (立ち読み)Diamond-Blackfan貧血が知られ,近年,その原因のひ とつがribosomalproteinの異常であることが明らかとな った。後天性赤芽球癆は臨床経過から急性型と慢性型
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特集 貧血

4(270) 細 胞 42(7),2010

要 約赤芽球癆は正球性正色素性貧血と網赤血球および骨髄赤芽球

の著減を特徴とする症候群である。発症メカニズムとして,ヒトパルボウイルスB19感染による赤芽球系前駆細胞の障害,顆粒リンパ球に発現する抑制性KIRがHLA class Iの低下した赤芽球系前駆細胞を認識できずに細胞傷害が生じる細胞免疫的機序,ABO血液型不適合の造血幹細胞移植における抗赤血球抗体による赤血球産生抑制などが示されている。近年,特発性造血障害に関する調査研究班(小峰班・小澤班)による後天性慢性赤芽球癆の全国アンケート調査が行われ,特発性および胸腺腫,大顆粒リンパ球白血病などの基礎疾患を有する続発性赤芽球癆の病態と治療について解析が進んでいる。その結果,寛解導入療法として副腎皮質ステロイドに加えて,シクロスポリンやシクロホスファミドの有効性とともに,長期に寛解を維持するためにはシクロスポリンを中心とした維持療法の継続が重要であることが示されている。

1.赤芽球癆の病態

赤芽球癆(pure red cell aplasia, PRCA)は骨髄におけ

る赤血球系造血の選択的障害とこれに起因する正球性

正色素性貧血をきたす疾患であり,骨髄赤芽球の著減

と網赤血球の著減を特徴とする1,2)。赤芽球系前駆細胞

には前期赤芽球系前駆細胞(burst-forming unit-erythroid,

BFU-E)と後期赤芽球系前駆細胞(colony-forming unit-

erythroid, CFU-E)があるが,赤芽球癆では両者が減少

することが多い2)。再生不良性貧血とは異なり基礎疾

患を伴わない赤芽球癆では白血球と血小板の造血は正

常に保たれるため,高度の貧血に伴う動悸や息切れな

どの症状が主となる。先天性赤芽球癆としては

Diamond-Blackfan貧血が知られ,近年,その原因のひ

とつがribosomal proteinの異常であることが明らかとな

った。後天性赤芽球癆は臨床経過から急性型と慢性型

があり,急性型の代表的な原因として薬剤とヒトパル

ボウイルスB19感染がある。ヒトパルボウイルスB19

は免疫不全状態においてはしばしば持続感染による慢

性型の経過もきたし得る。慢性型は原因の明らかな基

礎疾患を有しない特発性と基礎疾患を認める続発性に

分類され,続発性の病態は多岐に渡る。このように赤

芽球癆は均一の病態ではなく,多くの病因・病型から

なることを理解することが重要である。

特発性造血障害に関する調査研究班(小峰班・小澤

班)では,後天性慢性赤芽球癆に対する治療ガイドラ

インを作成することを目標として全国アンケート調査

を行い,109施設からヒトパルボウイルスB19感染を

除いた国内外最大規模の185例の後天性慢性赤芽球癆

を集積した。このコホート解析の結果,わが国では特

発性(39%)がもっとも多く,胸腺腫(23%),リン

パ増殖性疾患(14%)と続くことが示され,各々の

病態と治療および長期予後がまとめられた3-5)。

2.ヒトパルボウイルスB19感染と赤血球系造血障害

赤芽球癆の代表的な外的要因としてヒトバルボウ

Fujishima Naohito, Hirokawa Makoto, Sawada Kenichi

【赤芽球癆】

藤島 直仁1)・廣川 誠2)・澤田 賢一3)

Key words赤芽球癆,ヒトパルボウイルスB19,

KIR

1)秋田大学医学部附属病院 輸血部 2)秋田大学医学部附属病院 腫瘍センター  3)秋田大学大学院医学研究科 血液・腎臓・リウマチ内科学分野1)Akita University Hospital, Division of Transfusion 2)Akita University Hospital, Clinical Oncology Center3)Akita University Graduate School of Medicine, Department of Medicine,Division of Hematology,Nephrology and Rheumatology〒010-8543 秋田市本道1-1-1 Tel:018-884-6313 Fax:018-884-6251

Pure red cell aplasia

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(271)5細 胞 42(7),2010

特集 貧血

イルス B19感染の関与は重要である 1)。ヒトパルボ

ウイルス B19は小児における伝染性紅班の原因とし

て知られる single-strand DNAウイルスである。成人

にも感染し,無症状で経過する場合も多いが,関節

症や貧血を来たし得る。ヒトパルボウイルス B19の

受容体は赤血球型糖脂質の P抗原(globoside)であり,

P抗原を介したウイルスの細胞内エントリーの後,

ウイルス DNAの複写,RNAへの転写,ウイルス蛋

白の産生,ウイルス粒子の複製を経た赤芽球癆系前

駆細胞の直接障害が赤血球系造血抑制のメカニズム

と考えられている(図 1A)6)。しかしながら,P 抗

原は巨核球や血管内皮細胞にも発現している。最

近の研究により toll-like receptor (TLR) 9 リガンドで

ある CpG oligodeoxynucleotide (ODN)-2006 に属し

phosphodiester (PO)基を有する 2006-PO が赤血球造

血の選択的な障害を生じ得ることが明らかとなっ

た 7)。興味深いことに 2006-POはヒトパルボウイル

ス B19の P6-promotor領域に位置する 5’-GTTTTGT-

3’という共通の塩基配列を有し(図 1B),この配

列特異的にエリスロポエチン受容体の遺伝子発現を

制御し,エリスロポエチン受容体の down-regulation

を介して BFU-Eの分化増殖を阻害することが示唆

された。ヒトパルボウイルス B19が感染すると骨髄

赤芽球は特徴的な“giant pronormoblast”(図 2A)を

呈する。ヒトパルボウイルス B19感染では通常 10-

15日以内に赤血球造血の回復が得られるが,持続

感染例に対してはγグロブリン療法を行う 6)。

3.後天性慢性赤芽球癆の病因・病態

ヒトパルボウイルス B19感染を除いた後天性慢性

赤芽球癆を対象にした全国調査により,わが国では

特発性,胸腺腫,リンパ増殖性疾患の順に頻度が高

く,これらの 3分類で後天性赤芽球癆の約 7割を占

める3)。

① 特発性赤芽球癆

特発性赤芽球癆は充分な検索を行っても明らかな

基礎疾患を認めないものを指す。特発性赤芽球癆の

機序は明らかではないが,クローナルな T細胞の増

加が報告されており,発症に関与している可能性が

ある。前述の全国調査では十分なデータが得られた

図1 ヒトパルボウイルスB19による赤血球系造血障害

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特集 貧血

細 胞 42(7),20108(274)

要 約発作性夜間血色素(ヘモグロビン)尿症(PNH)は 1866

年に発見された後天性溶血疾患である。他に血栓症や造血障害を伴い,稀に白血病を発生する。造血障害には再生不良性貧血と同様に免疫が関与し,それを後ろ盾に変異幹細胞が拡大し PNHを発症する。溶血は PNH赤血球選択的,補体介在性に血管内で起こる。PNH赤血球は補体感受性が亢進しており,これは造血幹細胞の PIGA変異に起因する血球膜補体制御因子欠損が原因である。異常血球を捉える Ham試験とフローサイトメトリーは診断に利用される。血栓症は溶血に依存する。病因,造血障害と白血病化の分子病態は不明である。溶血と血栓症には補体第5因子阻害抗体医薬(eculizumab)を用いた分子標的療法,造血障害には免疫抑制療法が効く。診断後平均生存期間は 32年で,主死因は出血や感染など造血障害に由来する。自然寛解も再発もある。

はじめに

PNHは人口百万人あたり1〜5人の有病率ながら病

名は良く知られる1)。造血幹細胞の後天性変異に起因

し,溶血,血栓症,造血不全などを呈し,稀に白血病

を発生する。造血不全は日本人に血栓症は欧米人に比

較的多い。免疫介在性造血不全と白血病化を共有する

ため再生不良性貧血(AA)や骨髄異形成症候群

(MDS)と共に骨髄不全症候群(BFS)に含まれる。

溶血は血管内で慢性持続性に発生するが時に感染症な

どに伴って亢進し一過性に容態の悪化を招く(溶血発

作)。臨床病型には溶血が顕著な古典的 PNHと,AA

が先行し溶血が軽いPNH(AA-PNH症候群)がある。

本稿では1980年代以降,徐々に判明しつつある主病態

の分子病態とそれに伴う診断と治療の進展を概説す

る。

1.PNHの主病態の発生機序

溶血

PNH患者には補体感受性が正常の赤血球と種々の程

度に亢進した赤血球(PNH赤血球)が共存する。溶血

には補体が必要であるが,補体感受性のPNH赤血球

のみが選択的に溶血することから補体消費量は少なく

血清補体価は低下しない。補体感受性亢進は,崩壊促

進因子(decay-accelerating factor, DAFまたは CD55)や

CD59などの補体制御蛋白の欠損が原因である。これ

らの蛋白はPNH血球内で合成されるが,それらを血

球膜に留める役目の糖脂質(glycosylphosphatidylinositol,

GPI)が合成されないため血球膜に表出されない。こ

の GPI合成不全は PIGA(PI glycan-complementation class

A遺伝子)変異に起因する。PIGAは X染色体にあり

GPI合成初期に働く糖転移酵素の触媒部位をコードす

る1)。GPI合成に関わる遺伝子は20以上あるがPIGA以

外は常染色体に存在し,PNH患者ではPIGA変異だけ

が検出される。溶血は血管内で起こり尿中にヘモグロ

ビン(図1)やヘモジデリンが排泄されるため,やが

て鉄不足に陥る。溶血には,わずかに常時活性化され

ている補体第2経路による慢性持続性溶血と,感染症

などに伴う補体古典経路の活性化による一過性溶血亢

進(溶血発作)がある。発作時には嚥下困難や勃起障

害を訴えることがあり,これは溶血に伴い血中へ遊離

Nakakuma Hideki

【発作性夜間血色素尿症(PNH)】

中熊 秀喜

Key wordsPNH,hemolysis,

bone marrow failure,eculizumab

和歌山県立医科大学 輸血・血液疾患治療部(血液内科)Division of Hematology, Nephrology and Rheumatology〒641-8510 和歌山市紀三井寺811-1 Tel:073-441-0665 Fax:073-441-0653

Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria

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特集 貧血

(275)9

する大量ヘモグロビンが,筋弛緩作用を持つ一酸化窒

素(Nitric oxide, NO)を吸収して平滑筋攣縮を助長す

るためである。PNH患者における貧血の発生は溶血,

血色素排泄による鉄欠乏,造血障害による。

血栓症

血管内溶血が血栓形成を助長するという所見が増え

ている。例えば,PNHクローン量と血栓症の発生頻度

が相関する,溶血で生じる赤血球膜断片のリン脂質部

分が血漿凝固因子に触れて凝固の引き金になる,血中

遊離ヘモグロビンが血小板を活性化すると同時にNO

を吸収し,その結果,凝固や血栓形成を促す,等であ

る。またPNH血小板が補体で活性化されて血栓症を助

長するという報告もある。確かに,後述の補体阻害薬

eculizumabは溶血と血栓症を抑制する2)。さらにGPI結

合型膜蛋白 urokinase-type plasminogen activator receptor(u-

PAR, CD87)の欠損や血中増加の遊離u-PARによるプラ

スミン生成阻害が血栓融解を遅延させるという報告も

ある。こうして血栓症もPIGA変異で説明されている。

なぜ欧米PNH患者に血栓症が多いのかは不明である。

造血障害

PNH患者の主死因である3)。程度の差はあれ,事実

上すべての患者に造血障害があると予想される1,4)。

造血障害に免疫抑制療法が奏功し,AAと同様に免疫

の関与が想定されている4)。免疫細胞としてナチュラ

ルキラー(NK),NKT,細胞傷害性T細胞が,造血細

胞上の標的分子として WT1,HSP72,DRS-1,ULBP,

MICA/Bが提唱されている4)。AA患者の約3割にGPI

蛋白を欠損するPNH型血球が検出され,そのような

患者ほど免疫抑制療法が奏功するといわれ,PNHクロ

ーン拡大の背景に免疫機序による造血障害が想定され

る。この場合,何らかのGPI蛋白が免疫標的分子の一

つである可能性が高く,上述の標的分子候補の中で

GPI 蛋白である ULBP が注目され,ULBP 受容体の

NKG2Dを持つ免疫細胞の関与が推定されている4,5)。

2.PNHの発症に至る分子過程

PIGA変異血球は健常人にも極めてわずかに存在し

ており,またPIGA変異導入マウスでPNHが発症せず,

PIGA 変異のみでは PNH は発症しない1)。発症には

PIGA変異クローンの拡大が必要である。造血障害は

変異クローン生存と拡大に好都合と考えられている

(生存優位説)4)。しかし生存優位だけでは発症を説

明できず,追加的にPNHクローンの増殖亢進が支持

されている4,6)。

3.PNHの診断

表に診断基準を示す3)。造血障害を背景にして後天

性PIGA変異幹細胞が非腫瘍性にクローン性拡大し補

体介在性血管内溶血を生じることを基調とする。診断

のポイントは,クームス陰性血管内溶血,造血幹細胞

の後天性PIGA変異(三血球系の血球膜GPI蛋白欠損,

溶血試験陽性),造血障害,血栓症である。フローサ

イトメトリーは,PNH血球の種類と数,欠損する膜分

子の種類と欠損程度を確認でき,また感度と特異性に

優れるため旧来のHam試験に替わってPNH診断や病

勢判断に利用されている。三血球系における複数GPI

蛋白の同時欠損を捉えるとよい。また赤血球より網赤

血球,白血球では顆粒球にPNH異常を検出しやすい。

PNH特有のPIGA変異はなく,当面はPIGA変異血球が

1 %以上あれば診断的価値がある。

4.PNHの治療

根治療法

HLA適合同胞ドナーがいれば唯一の根治療法の造血

図1 PNH患者の血色素尿(ヘモグロビン尿)PNH赤血球が補体により血管内で破壊され,血色素が血中へ遊離

し,やがて尿中へ排泄される。

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特集 貧血

20(286) 細 胞 42(7),2010

要 約遺伝性貧血の一種である X 染色体連鎖型鉄芽球性貧血

(XLSA)は,ヘム合成系初発酵素 ALAS2遺伝子の分子異常と連鎖し,その分子異常は ALAS活性の低下をもたらすことが多数報告されている。XLSAの臨床的特徴として,ミトコンドリアに鉄が異常蓄積している環状鉄芽球が患者骨髄中に出現することが挙げられる。筆者らによる ALAS2遺伝子破壊マウスの解析から,完全欠損マウスでは,細胞質内での鉄沈着が認められ,環状鉄芽球とは異なる鉄沈着を示したが,XLSA患者と同様な,部分欠損マウスにおいて環状鉄芽球が形成された。これらのモデルマウスの解析から,環状鉄芽球形成には,細胞質内の鉄がミトコンドリアへ移行する過程が決定的に重要であり,その過程は細胞内ミトコンドリア鉄移行因子 mitoferrin1が制御していることが示唆された。また,ヘムによって,赤血球系分化成熟やヘモグロビンスウィッチングが促進され,グロビンタンパク質が安定化されることが示唆された。

はじめに

X 染色体連鎖型鉄芽球性貧血(X chromosome-

linked sideroblastic anemia, XLSA)は遺伝性鉄芽球

性貧血の一種であり,骨髄中に,鉄が異常沈着した

ミトコンドリアが多数,核周囲に存在する環状鉄芽

球の出現が臨床的特徴である。XLSA患者骨髄中で

は,ヘム生合成系初発酵素であり,律速酵素でもあ

る 5-アミノレブリン酸合成酵素(5-aminolevulinate

synthase, ALAS)の活性低下が報告されており,ヘ

ム生合成系酵素遺伝子 ALAS2 1)の遺伝子異常が X染

色体連鎖型鉄芽球性貧血と連鎖していることが明ら

かにされている 2, 3)。これらの分子異常のほとんど

が,ALAS2酵素活性の部分欠損をもたらすことが

報告されている。本稿では筆者らのグルーブが確立

した XLSAモデルマウスの解析により明らかとなっ

た,赤血球系細胞におけるヘム欠乏によりもたらさ

れる病態と,環状鉄芽球形成の分子メカニズム,ヘ

ムの役割について概説する。

1.ALAS2欠損マウスの病態

筆者らのグループにより作製された,ALAS2遺

伝 子 破 壊 マ ウ ス は , ALAS2 完 全 欠 損 マ ウ ス

(ALAS2 -/Y)は,胎齢 11.5日齢までに,ほぼ血色

素が認められない重篤な貧血で胎生致死した 4)。胎

児赤血球にはアポグロビンの発現は認められたもの

の,ヘモグロビン染色が陰性のため,ヘム欠乏性

(低色素性)貧血であった。この結果から, ALAS2

がヘモグロビンへの正常なヘム供給に必須であるこ

と が 明 ら か と な っ た 。 ま た , ALAS2 の 機 能 が

ALAS1により代償されないこともわかった。因み

に,筆者らのグループは ALAS1遺伝子破壊マウス

も作製しており,E7.5までに胎生致死することがわ

かっており,ALAS1 の生命維持に必須の機能も

ALAS2により代償されないことが明らかとなって

いる 5)。以下,各表現型について,表にまとめた。

ALAS2完全欠損マウス胎児赤血球では,予想に

反して,XLSA患者骨髄中で観察される環状鉄芽球

におけるミトコンドリアへの鉄沈着とは異なり,細

胞質内に瀰漫性に鉄が沈着しているのが確認され

Nakajima Osamu

【X染色体連鎖型鉄芽球性貧血モデルマウス】

中島 修

Key wordsXLSA, 5-aminolevulinate synthase 2

(ALAS2), ring sideroblast

山形大学医学部遺伝子実験施設Research Laboratory for Molecular Genetics, Yamagata University School of Medicine〒990-9585 山形市飯田西2-2-2 Tel:023-628-5901 Fax:023-628-5900

Mouse models of X-linked sideroblastic anemia