特定の顧客を抱える - nihon university ·...

1
(2) 平成27年10月1日 第37号 20 13 13 18 19 使西沿調29 33 LL . M . 10 退25 25 48 12 19 24 37 プロテスタント国教制だった19世紀の米国 公教育の場で同化政策 いまも続く「忠誠宣誓」 研究室で書籍を探す髙畑教授 研究室でデータを分析する横山准教授 授業で「憲法」を講じる髙畑教授 和気あいあいとしたゼミ風景

Upload: others

Post on 22-May-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 特定の顧客を抱える - Nihon University · りません」でやめましょう、とはな「キリスト教が起源なのる「習俗的行為」がある。 「教え子の葬儀が仏式

日 本 大 学 広 報 特 別 版 (2)平成27年10月1日第37号

日本は戦後、日本国憲

法第20条で政教分離を定

めた。国による神道の保

護を改め、全ての宗教を

等しく扱う大きな転換だ

った。同条制定に影響を

与えたのが米国の「政教

分離原則」と髙畑教授は

述べる。「日本の裁判所

が政教分離問題に、積極

的に関わるようになった

のは、1970年代後半

からです。最高裁の判断

基準に影響を与えたのも

米国の政教分離裁判とさ

れます」。では、米国で

同原則がどのように形成

されたか。

清教徒、北部に入植

米国といえば、英国か

ら渡ったピューリタン

(清教徒)ら宗教的迫害

を逃れた移民がつくり、

キリスト教に根差した

国、と一般的に理解され

る。「その米国は政教分

離を初めて採用した国家

でもあります」

英国はイギリス国教会

を国家の宗教とする。ヘ

ンリー8世は国教会を樹

立して、ローマ法王の支

配から脱した。聖書や典

礼もカトリックとは異な

る。とはいえ、国教会の

教義は、純粋なプロテス

タンティズムとは相入れ

ない。

その英国教会から迫害

を受けた会衆派などのピ

ューリタンは、北米大陸

東部13植民地のうち、主

に北部の植民地に入植し

た。「初期の植民地では、

政府が特定会派、あるい

はプロテスタント全体を

優遇する『公定宗教制』

がとられました。プロテ

スタント信仰が共同体の

一員となる条件でした」

 

13の植民地は18世紀後

半に英国から独立。合衆

国は連邦憲法修正第1条

で「政教分離」を掲げた。

これは連邦政府だけに適

用され、宗教行政は州政

府に任されたが、各州で

も徐々に公定宗教制を見

直す動きが広がる。18

33年のマサチューセッ

ツ州を最後に特定会派へ

の優遇は廃止された。

「しかし、州の公務員

採用では信仰について尋

ねる宗教審査が容認され

ました。裁判で陪審員、

証人になる際の宣誓でも

プロテスタントであるこ

とが強く求められまし

た。19世紀後半までは事

実上、プロテスタントを

国教として処遇していた

とする学説もあ

ります」

米国の工業化

による労働力不

足、母国の飢饉

などを背景に、

1840年代に

ローマカトリッ

クが支配的な南

欧諸国やアイル

ランドなどから

移民が大量に流

入した。入植者

は自らの教会を建て、母

国から神父を呼び寄せ

る。カトリシズム信仰の

自由は認められた。

その一方で、移民の子

どもや2世に対しては、

学校教育を通じたプロテ

スタントへの同化政策が

とられた。「公立学校で

は、プロテスタント聖書

(欽定聖書)が使われ、

カトリック側からの反発

を招きました」。欽定聖

書を読むこと自体が背信

行為とみなされたから

だ。カトリック系私立学

校への公金支出も禁止さ

れ、宗教対立の要因とな

った。

今の米国ではどうか。

「公立学校教育での同化

政策は1960年代に終

焉(しゅうえん)を迎え

ます。具体的には、聖書

の朗読と祈祷が廃止され

ました」

「宗教上の同化政策は

なくなりましたが、国家

への同化政策は今日も続

けられています。学校で

は毎朝、子どもたちが国

旗に向かって『忠誠宣

誓』を行います。多様な

民族を統合するために、

合衆国への帰属意識が重

要視されます」

習俗と儀礼

政教分離とは、全ての

宗教的要素を排除するこ

とではない。たとえばク

リスマスを祝い、西暦を

用い、日曜日を休日とす

る「習俗的行為」がある。

「キリスト教が起源なの

でやめましょう、とはな

りません」

「教え子の葬儀が仏式

で行われても、クリスチ

ャンの教師は会葬するで

しょう。職場ぐるみで地

域の祭に参加する。こう

した公人として社会で求

められる振る舞い、『社

会的儀礼』も、政教分離

の範囲内で許容されるも

のでしょう」

「国家と宗教との関係

は、その国の歴史と伝統

によって決まります。日

本でも宗教は社会や文化

に根付いているのですか

ら、政教分離のあり方も

それに応じたものになる

べきでしょう」

践的という言葉には消費

者の潜在的ニーズを発掘

して具現化させるという

意味がこめられている。

従来のマーケティング

リサーチでは、消費者ア

ンケートやグループイン

タビューで消費者の意図

をすくい上げてきたもの

の、それではもう古い。

消費者自身が意識すらし

ていないニーズを見つけ

てきて、それをコンセプ

トに変え、商品化に結び

つけるという観察手法

は、大手の企業も最近取

り入れている。

「それらを学生にも体

験してもらう」と語る言

葉には、研究の最前線に

立つ実践派の面目躍如た

るものがある。

横山准教授の研究の原

点にあるのは、小さな商

店が軒を連ねた商店街や

繁華街の裏通りなど、都

市部ならどこにでもある

風景だ。懐かしさを覚え

るそんな風景は、社会や

競争環境の変化により

徐々にその力を失いつつ

ある。それを何とかでき

ないか、というのが研究

のモチベーションである。

最初は商店街でのイベ

ントなど、各小売店が協

力して進める集客活動や

地域活性化を集中して研

究。そこから海外の状況

や、中小商業の存在が商

品流通全体にどのような

インパクトがあるのか、

また大型店との競争関係

についても、研究を進め

てきた。最近は研究対象

を中規模チェーン小売企

業にまで広げている。

そうした中で新たな発

見もあった。例えば過去

の研究では、商業者は経

済活動を行う主体なの

で、利益や効率を最も重

要なものとして行動する

と想定して理論化してき

たが、意外にそうでもな

い。自分の店は放り出し

て街のために頑張る者も

いれば、自分の店が頑張

ることで結果的に街のた

めになると考える者もい

るなど、商業者といえど

も千差万別。中小規模の

商業では、そんな想定で

は見えなかったものが

次々と出てきた。

データを解析・分析

大型店の出店攻勢は世

界的な趨勢だが、「大型

店には有利な面もあれば

不利な面もある。だから

中小もやりようによって

は、十分生き残れる余地

がある」というのが、横

山准教授の考えである。

例えば、家族経営に近

い零細規模の商店の場合

――。特定の顧客をガッ

チリ捕まえ、そのニーズ

を手に取るようにわかる

まで把握できれば、顧客

にとってその店は最もき

め細かく自身の希望に沿

った対応をしてくれる。

抱える顧客が少なければ

少ないほど利点になると

いう観点からの有利さだ。

あるいは狭い地域で人

気のある中堅スーパーマ

ーケットの場合――。農

産物や海産物が典型的だ

が、手当てする商品の量

が大きくなればなるほ

ど、仕入れの値段が高く

なるというパターンがあ

る。同じ大きさで形もそ

ろった野菜の規格品を確

保するにしても、量が多

いほど難しくなる。その

分コストもかさむ訳で、

全国展開する大型スーパ

ーにとっては不利。逆に

小回りの効く中堅スーパ

ーには有利となる。

これらの研究成果は、

現場を訪ねてのフィール

ドワークと、定量的なデ

ータ解析を積み重ねての

賜物だ。中小規模の商

店の強みを、事業者や

顧客へのヒヤリングで

聞き出す一方、政府資

料の商業統計や事業

者・顧客へのアンケー

トデータを分析するこ

とで、傾向を探る。

だからゼミ生を指導

する際も、力を入れる

のはフィールドワー

ク。グループごとに研究

テーマを設定し、実際に

街に出て取材やアンケー

トなどの調査を行い、報

告書や研究論文を作成す

る。「出来るだけ新しい

現象をフィールドワーク

で読み解いていくことを

通じて、社会の変化とか

見えない因果関係とかが

分かるんじゃないか。ま

ずは行ってみて、感じる

ことが重要だと思います」

コンテストで優勝

一方で、企業から“お

題”をもらって、そのニ

ーズを汲み取った新製品

のアイデアコンテスト

に、横山ゼミぐるみで毎

年応募。29大学33ゼミが

参加した昨年の大会で

は、「枡の特性を生かし

たオブジェのようなアク

セサリースタンド」や「子

供の表現力で作れるペン

マグ」など計3点がテー

マ優勝を獲得した。ダン

ボールや発泡スチロール

で苦労して制作した試作

品は、デザイナーの手で

今年中に製品化される。

コンテスト参加の狙い

は、実践的なマーケティ

ングを学ぶためだが、実

髙畑 英一郎(たか

はた・えいいちろう)

平成3年成城大学法学

部卒、9年米ジョージ

ア大学ロース

クールLL.M

.

修了、10年日本大学大

学院法学研究科博士後

期課程満期退学。同年

同大学法学部助手、助

教授などを経て25年教

授。25年3月から2年

間、米ラトガーズ大学

カムデン校州憲法研究

所客員研究員。

専門は公法学、

憲法。日本公法学会、

比較憲法学会など所属。

著書は『憲法』ほか多

数。東京都出身。48歳。

横山 斉理(よこや

ま・なりまさ)平成12

年同志社大学商学部

卒、19年神戸大学大学

院経営学研究

科博士後期課

程修了。博士(商学)。

同年に流通科学大学商

学部の専任講師とな

り、准教授へ。24年に

日本大学商学部に移っ

て准教授。専門は流

通、マーケティングな

ど。日本商業学会、日

本マーケティ

ング学会、組

織学会、日本消費者行

動研究学会などに所属

する。大阪府出身。37

歳。

プロフィル

プロフィル

政教分離、米国が初めて採用

法・髙畑

英一郎教授

中小商業の存在意義を巡る流通・

マーケティング研究�

商・横山

斉理准教授

プロテスタント国教制だった19世紀の米国公教育の場で同化政策

いまも続く「忠誠宣誓」

特定の顧客を抱える

フィールドワークを重要視

研究室で書籍を探す髙畑教授

研究室でデータを分析する横山准教授

授業で「憲法」を講じる髙畑教授和気あいあいとしたゼミ風景