第4回 掘削性―excability―bwe(bucket wheel excavator)とともに図19に...
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69連載 土工機械の話
4-1 はじめに
前回は機械土工の基本となる土工計画について施工
業者の立場で手法を紹介し、施工性(掘削性・積込み性・
走行性・締固め性)を重視した検討の必要性を述べた。
今回は掘削について、特に掘削機械の機種選定と生産
性で問題となる掘削性を中心に記すこととする。
4-2 掘 削
4-2-1 掘削法
機械土工の基本的な掘削法には、山の取り方による
分類があり、ダウンヒルカット工法(傾斜面掘削)と
ベンチカット工法(階段式掘削)がある。ダウンヒルカッ
ト工法は、傾斜面の下り勾配を利用して掘削を行う方
法でブルドーザやスクレーパ系の掘削に適する工法で
ある。ベンチカット工法は、階段状に掘削を進める方
連載 土工機械の話
第4回 掘削性―Excability―山﨑建設(株)技術部長 岡本 直樹
法で、ショベル&ダンプトラック工法に適した工法で
ある。また、ブルによるエサ出し(切崩し)とローダ
積込みの場合の組合せは、両工法の併用である。図2
は発破ベンチカットの施工図である。図中のケーブル
式パワーショベルは、国内では姿を消しているが、海
外鉱山ではまだ超大型が使われている。国内ではロー
ダかバックホウ積込みとなり、鉱山では大型油圧ロー
ディングショベルも使われている。
さて、掘削法にはこのほか、機種ごとのオペレーティ
ングレベルのものがあるが本稿では触れない。
4-2-2 掘削機構の分類
図1 ダウンヒルカット工法
作業始点
下り勾配削土
図2 ベンチカット工法 2)
(1)削岩クローラドリル
(2)ハッパ
(3)積込みパワーショベル
(4)運搬
ダンプトラック
掘削機には掘削
機構から分類する
と図3のようなも
のがある。
①ディッパ方式
②ドラグ方式
③グラブ方式
④ブレード方式
⑤スクレーパ方式
⑥リッパ方式
⑦連続掘削方式
掘 削 積 込 み 作
業や掘削運搬を兼
ねる機種について
は、今回は取り上
げない。
図3 掘削機構の種類 3)
① ②
③ ④
⑤
⑥
⑦
4-2-3 掘削性の“はかり”
岩の硬さを表す“はかり”として、計画時に入手し
やすい情報には、岩そのものの硬さを示す一軸圧縮強
度、岩層の亀き れ つ
裂の程度を表す RQD、両者を含めてマ
クロ的に捉える弾性波速度がある。また、軟岩以下で
は N 値も利用できる。施工中には、簡易なシュミット
70 JOURNAL for CIVIL ENGINEERS 2009.10 連載 土工機械の話
ハンマも利便性が高い。
掘削性の判定には弾性波速度がよく使われ、
道路土工指針では汎用的な機械の大まかな掘
削性の適用範囲を示している(図4)。
4-2-4 岩掘削工法の選定
岩掘削の各種工法の適用範囲を示すとおお
むね図5のようになる。インパクトリッパは
リッパとブレーカを合体させたもので、硬岩
領域に踏込み生産性が高かったが、消耗が激
しいためか生産中止となっている。次に岩掘
削工法の選定基準の例を図6に示す。
4-2-5 低公害岩掘削工法
環境面から岩掘削工事において発破が制限さ
れ、振動・騒音を抑制した制御発破や無発破工法
の採用例が増えている。振動・騒音を低減した低
公害岩掘削法はいろいろあるが、整理すると図7
のように分類できる。
図6 岩掘削工法選定の例
図7 低公害掘削法の種類
図4 機種別適用範囲 4)
図 5 工法別適用範囲
4-3 無発破工法
上図の低公害掘削工法の
中から主な機械掘削工法を
以下に紹介する。
4-3-1 リッパ工法
無発破工法の機械掘削工
法には、軟岩から中硬岩領
域まで掘削可能で生産性の
高いリッパ工法がある。
(1)リッパの種類
岩掘削工法
硬岩転岩岩 質 ?
軟岩不能
No
Yes
3,000m3 以下 普通発破の適用?
全切土量かつ、硬岩
< 50,000m3
< 10,000m3
規模大
通常発破小規模発破特殊発破リッパ別途積算 ブレーカ
U:アーバナイトC:CCR
JOURNAL for CIVIL ENGINEERS 2009.10 71連載 土工機械の話
チシャンク式のものとシングル式のジャイアントリッ
パがある。リッパの貫入機構にはヒンジ式とパラレル
式、アジャスタブル式の3種類があったが、現在の国内
機種は可変式のアジャスタブル式のみとなっている。ま
た、15 t級ブルドーザ等に装着されている小型のもの
はリッパスカリファイアと称し、硬土の掻かき
起こし用であ
る。
(2)リッピングのメカニズム
リッピングとは、ブルドーザのリッパ刃先にかける
押付け力と牽けんいん
引力との合成力である貫入力で、刃先を
岩盤に喰く
い込ませながら、岩盤組織を破壊し、破砕す
る作業である。リッピングによる地盤起砕の状況を模
式的に示すと図10のようなタイプがある。
(3)リッパビリティ :Rippability
4-3-2 ブレーカ
ブレーカは、転石破砕や発破後の二次破砕として
使われていたが、環境面からの発破制限や小割の細粒
化要求から多用されるようになっている。欠点は生
産性が低いのと騒音である。このため騒音対策として
コンクリート破壊機(ニブラ)も利用されている。ま
た、これだけ普及しているにもかかわらずその生産性
を示すオーソライズされた文献資料がない。わずか
1,300kg 級が国交省の標準歩掛値としてあるだけであ
る。参考にブレーカの能力比較と転石破砕能力関係の
図8 油圧リッパ
(1)ジャイアントリッパ
(2)マルチシャンクリッパ
リッパは、21t 級以上
のブルドーザ後部に装着
される図8のような油圧
式の岩破砕装置で、マル
図10 リッパによる起砕 10)
図 11 リッパビリティ
図12 リッパ能力 10)
図 9 リッパの貫入力
牽引力
貫入力
押付け力
38 ~ 100t 級
の リ ッ パ 付 ブ ル
ド ー ザ の 岩 種 別
リ ッ パ ビ リ テ ィ
を図11に示す。
図 12 は、38 ~
100 t 級 の 生 産
性の比を示してい
る。実際の作業量
は岩質等の係数を
掛けて求める。
弾性波速度 m/s
作業
量 m
3/h
(a) (b)
(c)
(d)
72 JOURNAL for CIVIL ENGINEERS 2009.10 連載 土工機械の話
公表資料を転載する。図13はトンネル工事での実測
値、図14はメーカ提供の理論曲線である。2 つのメー
ブルドーザで二次破砕を行う場合の割岩ピッチと弾性
波速度の関係を示すと図17のようになる。割岩機に
は油圧式の他にドロップハンマ式がある。
4-3-4 切削系
図13 ブレーカ能力比較 7) 図 15 ブレーカ転石破砕能力 10)
図 16 油圧割岩機の割岩手順 10)
カから同様の資料が提供されている
が、クラス別の生産性比較(比率)の
参考資料である旨がただし書にある。
図15は転石破砕の能力である。
4-3-3 油圧割岩機
油圧割岩機は、ドリルで穿せんこう
孔した孔
に油圧楔くさび
を挿入して割岩するもので、
ドリルとの一体式と単体式があり、施
工は図16のような手順で行う。
BP500 で割岩し、70t 級リッパ付
生産
性
図14 ブレーカ能力比較 10)
一次破砕 m3/8h石灰石雲母片岩ドロマイト黒雲母花こう岩角閃石片麻岩
花こう岩石灰質砂岩コンクリートコケラ(丸石)
安山岩
班れい岩
花こう岩片麻岩 粘板岩
長石砂岩風化玄武岩
輝石閃緑岩黒雲母片麻岩
リオライト
角閃石花こう岩閃緑岩角閃石片岩
新玄武岩
風化輝緑岩
長石けい岩
輝石けい岩
未風化輝緑岩
図17 弾性波速度と割岩ピッチ 10)
5 → VP(km/s)432
2
0
1(m)
3ピ�チ(P)
�
中硬岩 硬岩 超硬岩
1 自由面破砕
2 自由面破砕
1.5m 以上
P×2の範囲を2自由面にする
JOURNAL for CIVIL ENGINEERS 2009.10 73連載 土工機械の話
ドマイナがある。類似機械にはスタビライザやコー
ルドプレーナもある。サーフィスマイナの掘削能力は
BWE(Bucket Wheel Excavator)とともに図19に
示す。
(3)ツインヘッダ
ツインヘッダは、汎用的なバックホウに装着して岩
を切削できるので、比較的利便性が高い。メーカ提示
の掘削能力は図20のとおりである。
(4)岩盤トレンチャ
トレンチャは古くからある機種であるが、近年、岩
盤トレンチャが注目され、英 Mastenboek 社や米
Torencor 社のものが輸入され、岩盤のパイプ埋設掘
図18 自由断面掘削機の切削能力 8)
図 19 大型連続掘削機の掘削性能 10)
図 21 岩盤トレンチャの形式 9)
(1)自由断面掘削機
切削系の掘削機には自由断面
掘削機と面掘削機、トレンチャ
があり、自由断面掘削機は主
にトンネル工事用で、メーカご
との呼称としてロードヘッダ、
ブームヘッダ、カッタローダ、
スライスローダ、アルピネ、パ
ワーカッタ等がある。参考に理
論掘削能力による掘削性を示す
と図18のようになるが、実作
業能力はこれらの値の 5 ~ 6
割程度と考えられる。類似の切
削機にバックホウのアタッチメ
ントとしてのツインヘッダがあ
る。
(2)面掘削機
そのほかにマイナ系の面切削
機に、サーフィスマイナとロー
削やトンネルの中央排水溝掘削に利用されてい
る。そのバリエーションは図21のようなチェー
ン式、円盤型、ドラム型がある。
4-3-5 バックホウ
バックホウは軟岩の掘削が可能であるが、大
型化に伴ってどの程度の硬さまで掘削可能なの
か、またそのときの生産性はどうなのか? そ
ういう資料は少ないが、参考になるものとして
70 ~ 180t 級のバックホウの掘削性能を図22
に示す。掘削力から求めた理論曲線に実績値を
プロットしている。
チェーン式 円盤型 ドラム型
図20 ツインヘッダの純切削能力 10)
スライスローダ、カッタローダ
土砂
亜炭固結土
亜瀝青炭軟泥岩泥灰岩
無煙炭泥岩軟砂岩
石灰石鉄鉱石砂岩
BWE
トラック BWE
サーフィスマイナ
汎用土工機械
発破
圧縮強度 MPa
74 JOURNAL for CIVIL ENGINEERS 2009.10
4-4 おわりに
次回は掘削機の掘削性にポイントを絞った。紙幅の
関係で省いた資料も多いが、掘削能力・生産性を示す
図表をできるだけ数多く載せるように努めた。メーカ
による理論計算値が多いので、経験値からの割掛が必
要であるが、おおむね実作業量は半分くらいであろう。
さて、次回は、搬土関係の話とします。
参考文献・資料
1)岡本:施工計画、山﨑建設、1980.5
2)伊藤雅夫:ベンチカット工法、地人書館 1969.2
3)米倉・久野:土と岩の施工論、理工図書、1981.4
4)道路土工―施工指針、日本道路協会、1986.11
5)土木工事積算基準、JH
6)振動騒音ハンドブック、JCMA
7)重永晃洋:大型ブレーカによる岩石破砕、建設機械、1997.11
8)竹林ほか:土工事ポケットブック、山海堂、2000.4
9) 下 半 切 削 に 関 す る 報 告 書、 ジ ェ オ フ ロ ン テ 研 究 会、1998.11
10)Caterpillar、ヤマモトロック、コマツ、Krupp、三井三池(製)、日立建機の各社技術資料
11)土工教室 /,http:///www.yamazaki.co.jp
図22 大型バックホウの掘削能力 10)