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どうしよう? 嘔気・嘔吐

岡山大学病院

消化器内科

那須淳一郎

2012/7/9

第38回緩和ケア勉強会

1

参考資料

がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン 2011年版(日本緩和医療学会編)

PEACE project / 緩和ケア研修会資料(日本緩和医療学会編)

制吐剤適正使用ガイドライン(日本がん治療学会編)

2滋賀県「彦にゃん」

定義

嘔気(nausea)とは、

「吐きたくなるような切迫した不快な自覚症状である」

嘔吐(vomitting)とは、

「消化管内容物を反射的に口から出すことである」

EPECTM-O Participant’s Handbook一部改変

3

奈良市「せんとくん」

定義

悪心(おしん)…CTCAE

嘔気(おうき)…緩和医療学会

×あくしん=恨みをいだき悪だくみをする

こと

×おうけ

4

Agenda

原因

治療

• 薬物療法

• 制吐剤適正使用ガイドライン

• ケア

症例

5

熊本県「くまモン」

嘔気・嘔吐の原因

薬剤:NSAID、オピオイド、SSRI、抗うつ薬、ジギタリス、抗がん剤など

誘発物質:エンドトキシン、腫瘍からの誘発物質

代謝異常:腎不全、肝不全、高カルシウム血症、低ナトリウム血症、ケトアシドーシス

消化管運動の異常:腹水、腫瘍による圧迫、がん性腹膜炎、放射線治療、消化管閉塞

頭蓋内圧亢進:脳腫瘍、脳浮腫

中枢神経系の異常:細菌性髄膜炎、がん性髄膜炎、放射線治療、脳幹の疾患

心理的な原因:不安、恐怖

前庭系の異常:頭位変換による誘発、頭蓋低への骨転移、聴神経腫瘍 6

嘔吐中枢への入力

原因代表例

大脳皮質頭蓋内圧亢進髄膜刺激感情(不安・予期性嘔吐)

前庭器薬物(オピオイド)頭蓋底への転移頭位変換により誘発(車酔い)

化学受容体トリガーゾーン

薬物(抗がん剤、オピオイド)代謝(腎不全、肝不全、電解質異常)

消化管消化管蠕動低下・胃内容停滞機械的消化管閉塞粘膜障害(胃炎・NSAID) 7

嘔気・嘔吐に関わる神経伝達物質

ドパミン

ヒスタミン

アセチルコリン

セロトニン

8

ファジアーノ岡山「ファジ丸」

嘔気・嘔吐の治療

原因の治療

• オピオイド→オピオイドローテーション

• 高カルシウム血症→ビスホスホネート製剤

• 便秘→排便コントロール

• 脳転移→画像評価し、治療適応を検討

• 消化管閉塞→手術・ドレナージ・薬物など

制吐薬の投与

9

症状・病態と制吐薬の選択

臨床症状 病態 薬剤の種類

・動くと悪化する

・めまいを伴う前庭神経の刺激 抗ヒスタミン薬

・持続的な嘔気・嘔吐

・オピオイド血中濃度

に合わせて増悪

化学受容体(CTZ)

の刺激

ドパミン受容体

拮抗薬

・食後に増悪

・キリキリと痛い消化管蠕動の亢進 抗コリン薬

・原因が複数、もしくは

同定できない複数の受容体

複数の受容体

拮抗薬

10

制吐薬1(第一選択薬)

H1受容体拮抗薬 副作用:眠気

• ジメンヒドリナート(ドラマミン錠)

• ジフェンヒドラミン(レスタミンコーワ錠、ベナ錠)

• ジフェンヒドラミン・ジプロフィリン配合(トラベルミン錠、注)

• クロルフェニラミン(ヒスタール錠、クロールトリメトン注、ポララミン錠、注)

• ヒドロキシジン(アタラックス錠、注)

D2受容体拮抗薬 副作用:蠕動痛、錐体外路症状

• ハロペリドール(セレネース錠(0.75mg)、注(5mg))眠前1~2T 1~3日ごとに増量、持続静注・皮下注 0.5~1A/日

• メトクロプラミド(プリンペラン錠、注)持続静注・皮下注2~6A/日

• ドンペリドン(ナウゼリン錠、坐剤)3~6錠 分3、坐薬 1日2個

抗コリン薬

• ブチルスコポラミン(ブスコパン錠、注)

• スコポラミン(ハイスコ注(0.5mg)0.15~0.25mg i.s. [適応注意]11

制吐薬2

複数受容体拮抗薬 major tranquilizer

• クロルプロマジン(ウィンタミン錠、コントミン錠) [抗D2, 抗コリン, 抗アドレナリンα1]

• プロクロルペラジン(ノバミン錠、注)[抗D2, 抗H1, 抗コリン] 3錠分3、持続静注1~2A/日 副作用:眠気、錐体外路症状

• リスペリドン(リスパダール)錠1mg, 2mg, 3mg、OD錠0.5mg, 1mg, 2mg、細粒1%、液1mg/mL [抗D2, 抗H1, 抗5HT2] 1mg眠前内服 嘔気時0.5mg追加内服

• レボメプロマジン(レボトミン錠、ヒルナミン錠) [抗D2, 抗H1, 抗コリン, 抗5HT2] 5~10mg眠前内服または屯用

• オランザピン(ジプレキサ)錠2.5mg, 5mg, 10mg、細粒1% [抗5HT2, 抗5HT3, 抗H1, 抗D2, 抗コリン] 2.5~7.5mg1日1回内服または屯用

12

制吐薬3

5HT3受容体拮抗薬 [適応] 化学療法による悪心嘔吐

• トロピセロトン(ナボバンカプセル)

• グラニセロトン(グラニセトロン注、カイトリル注、錠)

• オンダンセトロン(ゾフラン注、錠、ザイディス錠)

• アザセトロン(セロトーン注、錠)

• ラモセトロン(ナゼア注、OD錠)

• インジセトロン(シンセロン錠)

• パロノセトロン(アロキシ注)

5HT4受容体拮抗薬

• モサプリド(ガスモチン錠)愛媛県警察「まもるくん」

13

制吐薬4

コルチコステロイド

• デキサメタゾン(デキサート注、デカドロン錠(0.5mg))4~8mg/日

• ベタメタゾン(リンデロン注、リンデロン錠(0.5mg)) 4~8mg/日

オクトレオチド

• オクトレオチド(サンドスタチン注(100μg)300μg/日持続皮下注射 (100μg皮下注で半減期1.8時間)

NK1受容体拮抗薬 [適応] 化学療法による悪心嘔吐

• アプレピタント(イメンドカプセル(125mg, 80mg))

• ホスアプレピタントメグルミン(プロイメンド注(150mg))アプレピタントのプロドラッグ

14

制吐薬の副作用と対策

眠気(不快な場合)

• 制吐薬の減量・変更

錐体外路症状

• パーキンソン症候群やアカシジアなど

• 特にドパミン受容体拮抗薬で注意が必要

15

高松市高松琴平電気鉄道「ことちゃん」

制吐薬の副作用と対策

アカシジアに対する評価の仕方

症状

• イライラして落ち着かない

• じっとしていられない

• 客観的にも落ち着かない

• 足がむずむずする

原因薬物

• 抗精神病薬、抗ドパミン作用を持つ制吐薬が最近開始・増量されていないか、あるいは長期投与されていないかを評価

16

広島県福山市「ローラ」

化学療法による悪心・嘔吐

制吐剤適正使用ガイドラインの解説(日本癌治療学会編 2010年5月)

17

サンテレビジョン 「おっ!サンテレビ」

3大制吐剤

ステロイド• 第一選択はデキサメタゾン• リン酸デキサメタゾン 12mgはデキサメタゾン 9.9mgを含有• デカドロン(6.6mg)注=デキサート(6.6)注=デキサメタゾン6.6mg• デカドロン(0.5mg)錠=デキサメタゾン0.5mg 経口最大20mg

5HT3受容体拮抗剤NK1受容体拮抗剤• アプレピタント(イメンド®): 1日目抗がん剤投与前の1-1.5hr前に

125mg、2日目・3日目午前中に80mg内服• 遅発性悪心・嘔吐に有効• アプレピタントはCYP3A4を介してデキサメタゾンのAUCに影響する

のでデキサメタゾンを減量する• アプレピタントは効果不十分の場合、5日目まで追加してよい

補助薬:H2RA, PPI 18

制吐薬適正使用ガイドライン2010年5月 (第1版)

セロトニン受容体拮抗剤 (5HT3RA)

グラニセトロン(グラニセトロン、カイトリル3mg注、錠)

パロノセトロン(アロキシ0.75mg注)• パロノセロトンは遅発性嘔吐に有効

ラモセトロン(ナゼア注、錠)

オンダンセトロン(ゾフラン注、錠)

トロピセトロン(ナボバン錠)

アザセトロン(セロトーン注、錠)

インジセトロン(シンセロン錠)

19制吐薬適正使用ガイドライン2010年5月 (第1版)

岡山市おかやまデミカツ丼応援隊「デミかっちゃん」

嘔吐リスク分類高度嘔吐リスク(+AC療法)

• 急性・遅発性の両者とも >90% リスクは約4日間

• NK1RA+Dex+5HT3RA

• CDDP…

中等度嘔吐リスク(AV療法以外)

• 急性が30-90%で遅発性も問題となりうる リスクは約3日間

• Dex+5HT3RA

• CPT-11, MTX, l-OHP…

軽度嘔吐リスク

• 急性が10-30%で遅発性は問題とならない

• Dex

• Doc, 5FU, GEM, MMC, PTX…

最小度嘔吐リスク

• 急性が10%以下で遅発性は問題とならない

• 制吐療法不要

• Bmab, Cmab, Rmab…20

岡山県新見市「チーモくん」

嘔吐リスク分類とレジメン

高度嘔吐リスク• 5FU/CDDP, S-1/CDDP• GEM/CDDP

中等度嘔吐リスク• FOLFOX, FOLFIRI, XELOX• CPT-11• イマチニブ

軽度嘔吐リスク• 5FU/LV• MTX/5FU• GEM• PTX• DTX• S-1, UFT, Cape

最小度嘔吐リスク• Cmab• ソラフェニブ 21

愛媛県今治市日本食研「バンコ」

高度嘔吐リスクの前投薬

Day1 Day2 Day3 Day4 Day5アプレピタント* ○125mg ○80mg ○80mg5HT3RA ○

Dex ○9.9mg(1.5A)(div)

○8mg (po)

○8mg (po)

○8mg (po)

(8mg (po))

Day1 Day2 Day3 Day4 Day55HT3RA ○

Dex ○13.2-16.5 mg (4-5A) (div)

○8mg (po)

○8mg (po)

○8mg (po)

*1日目抗がん剤投与前の1-1.5hr前に125mg、2日目・3日目午前中に80mg

デキサメタゾンを積極的に使用できない場合は、デキサメタゾン2-4日間の代わりに5HT3RA 2-4日間を追加する。

22

中等度嘔吐リスクの前投薬

Day1 Day2 Day3 Day4 Day5アプレピタント* ○125mg ○80mg ○80mg5HT3RA ○

Dex ○4.95 mg (0.75A)(div)

(8mg (po)) (8mg (po)) (8mg (po))

Day1 Day2 Day3 Day4 Day55HT3RA ○

Dex ○9.9 mg (1.5A)(div)

○8mg (po)

○8mg (po)

(8mg (po))

*1日目抗がん剤投与前の1-1.5hr前に125mg、2日目・3日目午前中に80mg

オプション:カルボプラチン、イリノテカン、メトトレキサートなど

23

軽度嘔吐リスクの前投薬

Day1 Day2 Day3 Day4 Day5Dex ○6.6 mg

(1A) (div)

24

愛媛県松山市「タルト人」

突発性悪心

前投薬が最適か確認前投薬に用いたものと違う薬剤を用いる。ドンペリドン(ナウゼリン)、メトクロプラミド(プリンペラン)、ハロペリドール(セレネース)、ロラゼパム(ワイパックス)など5HT3RAを前投薬で用いた場合、違う5HT3RAを用いる5日目までならアプレピタント(イメンド)追加可能軽度リスク抗がん剤で急性悪心・嘔吐が生じたら:デキサメタゾン 4-8mg他の原因はないか:イレウス、前庭機能障害、脳転移、電解質異常、尿毒症、オピオイド、心因的要因など

25

予期性嘔吐

ロラゼパム(ワイパックス 1mg前夜、1mg当日朝) 病名「心身症」

アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス 0.4mg前夜、0.4mg当日朝) 病名「心身症」

26

岡山県「ももっち」「うらっち」

抗精神病薬major tranquilizers

定型抗精神病薬 D2阻害作用で精神症状を改善.副作用:錐体外路症状、高プロラクチン血症、肝障害、悪性症候群

① フェノチアジン系 鎮静作用強い.クロルプロマジン(ウィンタミン、コントミン、ベゲタミン)、レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)、プロクロルペラジン(ノバミン)

② ブチロフェノン系 幻覚妄想に対する作用強く、鎮静作用は弱い.ハロペリドール(セレネース)

③ ベンザミド系 スルピリド(ドグマチール)、チアプリド(グラマリール)

非定型抗精神病薬 錐体外路症状が少ない、陰性症状や認知機能にも効果.

① セロトニンドパミン遮断薬(SDA) D2Rと5HT2Rを拮抗.高プロラクチン血症が問題.リスペリドン(リスパダール)、ペロスピロン(ルーラン)、ブロナンセリン(ロナセン)

② 多元受容体作用抗精神病薬(MARTA) 体重増加、血糖上昇に注意.オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル)、クロザピン(クロザリル)

③ ドパミン部分作動薬(DSS) D2Rを部分的に刺激.不眠や胃腸症状がでることがある.アリピプアゾール(エビリファイ)

抗コリン作用のある薬剤はほかにファモチジン(ガスター)など

抗精神病薬→認知症患者への投与はhigh risk

27

抗不安薬・睡眠薬minor tranquilizers

【化学構造による分類】

ベンゾジアゼピン系(下記) 離脱症候群.譲渡・転売は麻薬及び抗精神病薬法により処罰.自動車の運転禁止.アルコールと併用禁.

非ベンゾジアゼピン系 ゾピクロン(アモバン)、ゾルピデム(マイスリー)筋弛緩作用が弱い、ブロムワレリル(ブロバリン)

バルビツール酸系(作用時間 1時間) ペントバルビタール(ラボナ、ネンブタール)、フェノバルビタール(フェノバール)

抗うつ剤 ミアンセリン(テトラミド)、トアゾドン(デジレル)

抗精神病薬 レボメプロマジン(ヒルナミン)、クロルプロマジン(コントミン)、クエチアピン(セロクエル)

抗ヒスタミン薬 ヒドロキシジン(アタラックス)

セロトニン1A部分作動薬 タンドスピロン(セディール)

【作用時間による分類】

超短時間作用型(作用時間 2~4時間) トリアゾラム(ハルシオン)、ゾピクロン(アモバン)、ゾルピデム(マイスリー)

短時間作用型(6~10時間) エチゾラム(デパス、エチカーム)筋弛緩効果あり、ブロチゾラム(レンドルミン)、ロルメタゼパム(エバミール)、リルマザホン(リスミー)、クロチアゼパム(リーゼ)

中時間作用型(12~24時間) エスタゾラム(ユーロジン)、フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)、ニトラゼパム(ベンザリン、ネルボン)、ニメタゼパム(エリミン)、アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス)、ロラゼパム(ワイパックス)、ブロマゼパム(レキソタン、セニラン)、ブロムワレリル(ブロバリン)、

長時間作用型(24時間~) ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)、クロキサゾラム(セパゾン)、フェノバルビタール(フェノバール)、ハロキサゾラム(ソメリン)、クアゼパム(ドラール)、フルラゼパム(ダルメート、ベノジール)、クアゼパム(ドラール)、

超長時間型 ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)28

CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine

嘔気・嘔吐のケア

コミュニケーション・環境調整

嘔気・嘔吐の原因を説明し、目標を相談

嘔気・嘔吐の原因・誘因になるものを除去

吐物の臭気・食事・香水

必要な物を手元に準備

ガーグルベースン

ティッシュペーパー

ナースコール

CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine

嘔気・嘔吐のケア

日常生活

上半身を挙上した安楽な体位

背中をさする

冷罨法

食事の工夫食事量や種類の工夫

NST、栄養士と協働する

リラクセーション・気分転換

CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine

嘔気・嘔吐のケア

口腔ケア・便秘対策

口腔のケア口腔内の観察冷水・レモン水・氷片の準備

便秘対策患者の生活習慣にある便秘対策を確認薬剤によるマネジメントの必要性を判断

症例1-1

40代女性 子宮頚癌術後再発 (一部改変)

オキシコンチン20mg/day、レスキュー:オキノーム散5mgで疼痛管理良好

X年1月 weekly TXL/Nedaplatin開始(制吐剤グラニセトロン+デキサートdiv)

Day2悪心、食事摂取不良、grade2 プリンペランiv2回したが無効 そわそわした感じあり

Day5不眠に対してデパス錠 まずまず眠れたが悪心残りすっきりしない

Day6緩和ケアチームに紹介

訪問すると、動くと気分が悪いので臥床がち32

症例1-2

【評価と対応】

嘔吐中等度リスクの化学療法に対して、前投薬グラニセトロン+デキサートを行った

化学療法の遅発性嘔吐と考えられ、次コースからアロキシdiv追加

プリンペランによるアカシジアの疑い

体動で悪心が誘発されるのでトラベルミン錠

悪心嘔吐消退し、通院化学療法に移行した

33

症例1-3

x年3月xx日 通院化学療法中に嘔気増加。経口摂取減り内服薬が飲みにくく、疼痛増悪し緊急入院。

オキシコンチン40mg/day、レスキュー、オキノーム散5mgだったところをフェントステープ3mg、レスキュー、オキノーム散10mgまたはボルタレン坐薬25mgに変更した。

痛みは軽快したが、嘔気が持続し食事摂取不良のため補液している。

34

西日本旅客鉄道「イコちゃん」

症例1-4

【評価と対応】

オキシコンチン40mg/dayの1.5倍=オキシコンチン60mg=フェントステープ3mg レスキューはオキシコンチン60mgの1/6=オキノーム散10mgよって妥当

オピオイド増加に伴う嘔気に対してノバミン錠 3T分3追加

35

株式会社ロイヤリティマーケティング「ポンタ」

症例1-5

3/31と4/1じっとしていられない感じ、立ったり座ったり、スリッパを履いたり脱いだりした。嘔気は軽快。

4/2 朝からノバミン中止したところ嘔気再発

4/3 嘔気に対してノバミンを再開したところ、そわそわしてbed sideに降りる

36

岡山放送「OH!くん」

症例1-6

【評価と対応】

ノバミンのD2阻害作用によるアカシジア

4/4 朝デキサート2A するも嘔気継続

4/4 眠前ジプレキサ1mg内服開始

37

症例1-7

4/5 嘔気消失、朝眠気あるが不快ではない

4/9 朝食後に嘔吐、ジプレキサは継続希望(体重増加、高血糖に注意)

痛みを3日毎に評価

4/15 フェントステープ8mg、レスキューはオキノーム散30mgまで増量

4/17 退院

38東京都「おしなりくん」

ご清聴ありがとうございました

抗がん治療を遂行するために、支持療法を適切に行いましょう。

患者さんの苦痛を緩和するために、最善の支持療法を行いましょう。

39

愛媛県今治市「バリィさん」

Agenda

嘔気・嘔吐

悪性消化管閉塞

悪性腹水

便秘

40

嘔気・嘔吐

41

悪性消化管閉塞

42

イレウス

43

消化管閉塞の病態生理

消化管閉塞の発症には、多くのメカニズムが関係しており、その発症様式や原因も様々である

炎症性浮腫、便秘、脱水、便秘を惹起する可能性がある薬剤(例:オピオイド、抗コリン薬)は消化管閉塞を悪化させる

44

消化管閉塞の治療

経鼻胃管

バイパス手術・内視鏡的ステント留置術、経皮的内視鏡的胃瘻造設術(PEG)などの適応を専門家に相談

薬物療法

輸液

• 1,000mL/日+異常喪失量を目安に行う

• 2,000mL/日以上の輸液:腹水、浮腫、胸水を悪化させることが多い

参考:終末期癌患者に対する輸液治療のガイドライン45

内視鏡的ステント留置術

46

消化管閉塞の薬物療法

酢酸オクトレオチド (強い推奨)• 消化管の分泌抑制、吸収を促進

• がんによる消化管閉塞に対する有効性が示されている(嘔気の改善、嘔吐回数・胃管からの排液量の減少)

Mercadante S. Support Care Cancer 2000

Mystakidou K. Anticancer Res 2002

Ripamonti C. J Pain Symptom Manage 2000

• 持続皮下・静脈注射(サンドスタチン)0.3mg/日

• 間欠的皮下・静脈注射 0.1mg×3回/日

• 経静脈的使用と間欠的皮下注は保険適応外使用47

消化管閉塞の薬物療法

必要に応じてステロイドを併用• 消化管閉塞を再開通させる可能性がある

Feuer DJ. Cochrane Database Syst Rev 2000

• ベタメタゾン4~8mg/日 で開始。3~5日で効果があれば0.5~4mg/日に減量維持。効果がなければ中止

• 酢酸オクトレオチドとベタメタゾンの混注避ける

48

悪性腹水

49

悪性腹水

悪性腫瘍の影響によって生じた腹腔内の異常な液体貯留(卵巣癌は多い)

身体所見での検出は1000~1500mL、画像検査では100mL程度から

機序:

• 腫瘍が産生する増殖因子による透過性亢進(慘出性腹水)

• 肝転移による門脈圧亢進(漏出性腹水)

• 腫瘍によるリンパ管閉塞(乳び腹水)

検査:試験穿刺による細胞診(癌性腹水の細胞診感度97%)、アルブミン値、培養

50

悪性腹水の治療

食事療法:肝硬変では減塩食

輸液:過剰な輸液を避ける

利尿薬:効果43%(観察研究)、腹膜播種や乳び腹水では効果が低い

治療的腹腔穿刺:5Lまでなら血圧低下はほとんど起こらない 腹腔内カテーテル留置を用いる報告あり

腹腔静脈シャント:Le Veen shuntとDenver shuntがある。効果は平均78%、合併症25~50%。最多はシャント閉塞で、血性腹水や総蛋白>4.5g/Lでは禁忌。

腹水濾過濃縮再静注(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy:CART)

51

便秘

52

便秘

定義

• 日本内科学会「3日以上排便がない状態または毎日便があっても残便感がある状態」

• 日本緩和医療学会「腸管内容物の通過が遅延・停滞し、排便に困難を伴う状態」

原因

• がんの直接的影響 消化管閉塞、脊髄損傷など

• がんの二次的な影響 経口摂取不良、低繊維食、脱水、高カルシウム血症、低カリウム血症など

• 薬剤性 オピオイド、フェノチアジン、三環系抗うつ薬など

• 併存疾患 糖尿病、甲状腺機能低下、痔瘻など53

便秘の治療

原因の除去

原因薬剤の変更

薬物療法

経直腸薬:グリセリン浣腸、炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム(新レシカルボン座薬)

非薬物療法:環境の整備、水分や繊維質の摂取、身体活動を促す、腹部マッサージ

54

便秘の治療薬浸透圧性下剤

• 塩類下剤 酸化マグネシウム

• 膨張性下剤 カルメロースナトリウム(バルコーゼ) 全身状態が悪い患者には不適

• 糖類下剤 D-ソルビトール、ラクツロース(モニラック)[適応注意]

• クエン酸マグネシウム(マグコロール) [適応注意]

大腸刺激性下剤

• センナ(ヨーデル、アローゼン)

• センノシド(プルゼニド)センノシドは乳汁に移行

• ダイオウ(ダイオウ、大黄甘草湯)

• ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン錠、液、コーラックソフト)腸管内でビサコジルに変化する ビサコジルより穏やかに効果発現 習慣性が少ない

• ビサコジル(コーラック) [腸溶錠なので牛乳で服用不可]

• ビサコジル座薬(テレミンソフト座薬)

その他 パンテチン(パントシン)、メペンゾラート(トランコロン)、チキジウム(チアトン)、トリメブチン(セレキノン)、プロスタグランジンF2α(プロスタルモンF)、モサプリド(ガスモチン)、メトクロプラミド(プリンペラン)、ポリカルボフィル(ポリフル、コロネル)、大建中湯、麻子仁丸55

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