7.1 浄水部門 - osaka...7 今後の維持管理方針 7.1 浄水部門 7.1-①...

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12 7 今後の維持管理方針 7.1 浄水部門 7.1-① 基本的な考え方(電気機械設備) 今年度改正された水道法への対応について、現状有している整備基準が、国から示されてい る「維持・修繕に係るガイドライン」に十分 対応していることを確認しており、今後も引 き続き整備基準に基づき点検等を実施し ていくとともに、維持管理の高度化に向け 電子化を進め、日々の設備運転状況や 点検などで得られた膨大なデータを、インタ ーネット等を用い様々な情報とつなぎ合わ せる、CPS/IoT 技術を活用し、予兆診断 やそれらデータを駆使した効率的な補修や 資産有用を行っていく。 図-11 タブレットを使用した点検実施状況 図-12 CPS/IoT 活用手順 図-13 浄水場における CPS/IoT 活用事例 7.1-② 基本的な考え方(土木施設の管理方針) (1)土木構造物 通常点検、定期点検により劣化や不具合の兆候を捉える予防保全(状態監視型)を基 本とし、健全度を踏まえて施設管理、維持管理を行い、機能維持や劣化状況を管理する。

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7 今後の維持管理方針

7.1 浄水部門

7.1-① 基本的な考え方(電気機械設備)

今年度改正された水道法への対応について、現状有している整備基準が、国から示されてい

る「維持・修繕に係るガイドライン」に十分

対応していることを確認しており、今後も引

き続き整備基準に基づき点検等を実施し

ていくとともに、維持管理の高度化に向け

電子化を進め、日々の設備運転状況や

点検などで得られた膨大なデータを、インタ

ーネット等を用い様々な情報とつなぎ合わ

せる、CPS/IoT 技術を活用し、予兆診断

やそれらデータを駆使した効率的な補修や

資産有用を行っていく。

図-11 タブレットを使用した点検実施状況

図-12 CPS/IoT 活用手順 図-13 浄水場における CPS/IoT 活用事例

7.1-② 基本的な考え方(土木施設の管理方針)

(1)土木構造物

通常点検、定期点検により劣化や不具合の兆候を捉える予防保全(状態監視型)を基

本とし、健全度を踏まえて施設管理、維持管理を行い、機能維持や劣化状況を管理する。

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図-14 予防保全(状態監視)による管理手法のイメージ

(大阪市公共施設マネジメント基本方針(平成 27年 12月)より抜粋)

(2)浄・配水場管路

日常的な巡視による通常点検により異常の有無を把握することを基本とし、早期の異常発見

につとめ、事故及び二次災害を未然防止する。

(3)弁・栓類

通常点検により動作状況を把握し、必要に応じた修繕を行う。動作不良の場合には、構造物

に付帯する流入弁・流出弁は池休止時に修繕を計画する。管路に付帯する弁の場合は、当該

管路改良工事に併せて更新できるように情報整理する。

7.1-② 「浄水場土木構造物維持管理計画」の策定

「5.1-② 課題」で述べた課題解消を目指し、コンクリート構造物の維持管理の体系化を目的

として「浄水場土木構造物維持管理計画」を策定した。本計画では、「池状構造物(コンクリー

ト構造物)の維持管理の体系化」、「点検方法・頻度の設定、補修方法の見通しを確定」、

「中長期的な財務財政収支見通しに基づくアセットマネジメント体制の構築」を実行可能にするこ

とで、「台帳整理」、「点検記録」、「補修補強」のサイクルを継続し、データの蓄積ができる仕組み

を作り上げた(図-15 参照)。

図-15 浄・配水場土木構造物の維持管理における方向性

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7.1-③ 土木施設の点検

(1)土木構造物

土木施設は新設、既設に関わらず適切に診断することが必要であり、診断の目的に応じた点検

を行い、土木構造物の要求性能を評価するための情報を入手する必要がある。図-16 に点検の

種類と、本タスクフォースで実施する浄・配水場施設(既設構造物)の点検範囲を示す。

※出典 コンクリート示方書維持管理編(2013)を改編

図-16 点検の種類

1)初期点検

初期点検は維持管理開始時点での構造物の性能に関する初期状態を把握することを目的と

して実施するものであり、構造物全体に対する目視やたたき、簡易な計測等の調査と設計、施工

に関する書類調査を実施する。

2)通常点検

通常点検は目視にて行い、コンクリートの亀裂・劣化の有無、漏水の有無など躯体の劣化程度

を把握する。点検範囲は、運転に影響を与えず目視が可能な範囲を対象とする。点検のために運

用休止しなければならない構造物については、外壁や管廊等の外部から目視可能な範囲を点検

することから、全ての土木構造物を対象としている(表-2 参照)。

点検頻度は、概ね 3 か月に 1 回以上は点検するように計画している。

表-2 通常点検対象施設

3)定期点検

定期点検は、池状土木構造物の健全度を評価することを目的として、池を空にして実施する点

検であり、通常点検では点検できない構造物全体の劣化、損傷の有無について目視・打音による

点検を行う。

取水口・取水塔 接合井

沈砂池 着水井

凝集沈澱池 中オゾン接触池

急速ろ過池 後オゾン接触池

粒状活性炭吸着池 塩素接触池

塩素注入井 浄水池・配水池

各種ポンプ吸水井 洗浄排水溜

その他コンクリート構造物

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点検範囲は、定期的に機能維持管理業務を実施する池やろ材を更新するために、池を休止

し、池内を空池にする池状構造物を対象とする(表-3 参照)。

点検頻度は、原則 10 年に 1 回以上の頻度で実施するよう計画している(表-4 参照)。ただ

し、予備池等のバックアップ機能を有しない施設については、施設休止時に点検を行うこととする。

点検結果については、表-5 に示す対応レベル並びにグレード判定基準で示した対応レベルに応

じて記録・詳細調査・応急処置・補修の要否を判断する。対応レベルとしては、対応レベル 1「異

常なし」、対応レベル 2「軽微」、対応レベル 3「応急処置または詳細調査」、対応レベル 4「補修」

とし、図-17 のフローに従い実施する。

表-3 定期点検対象施設

※定期的に躯体調査を実施するホイラー床のろ過池を対象とする。

4)臨時点検

地震等の偶発的な外力が発生した直後に、構造物の状態を把握するために実施する点検をい

う。

5)緊急点検

構造物で事故や損傷が生じた場合に、同様の構造物や同様な条件下の構造物で同様な事

故や損傷が生じていないかを確認するために実施する点検をいう。

沈砂池 凝集沈澱池

中オゾン接触池 急速ろ過池※

後オゾン接触池 粒状活性炭吸着池

浄水池 配水池

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表-4 浄水施設点検計画(例) 【柴島】

図-17 定期点検作業フロー

●定期点検実施年度

直営作業

請負工事

定期点検

「ひび割れ」「目地部損傷」

異常なし

応急処置による対応の可否

目視調査

補修

・ひび割れ幅測定・水準測量 推定した劣化原因を踏まえた詳細調査

(e.g.)中性化試験、鉄筋腐食調査

応急処置

記 録

対応レベル1 対応レベル2 対応レベル3 対応レベル4

yes

no

不可(水処理、水質、安全上の影響がある状態)

補修の必要性の検討【図19を参照】

不要

必要

劣化原因の推定

可(水処理、水質、安全上の影響がない状態)

劣化原因の推定

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対応レベル1

対応レベル2

対応レベル3

対応レベル4

異常なし

軽微

応急処置または詳細調査

補修

C(Cruck)

ひび割れ

ヘアクラック程度のひび割れ

⇒グレードⅠ

遠方目視により明らかにわかるひび割れが生じている

状態

⇒ひび割れ幅測定後、グレード判定

ひび割れからしみだし程度の漏水が生じている状態。

または、グレード判定の結果、グレードⅣの場合。

ひび割れから流れのある漏水が生じている状態

S(Surface)

表層劣化

表層モルタルのみが変色、劣化した状態。

⇒グレードⅠ

表層モルタルが剥がれ、躯体本体が露出した状態。

躯体表面は変状なし。

⇒グレードⅡ

モルタルが剥がれ、躯体の表面より骨材が露出した

状態

⇒グレードⅢ

⇒躯体の表面より、鉄筋が露出した状態。

⇒グレードⅣ

U(浮き)

浮き・剥離

モルタルの付着力が低下した状態。

⇒グレードⅠ

モルタルがコンクリートから浮いたり、剥がれている状

態。

⇒グレードⅡ

躯体コンクリートが浮いたり、剥がれている状態。

⇒グレードⅢ

躯体コンクリートが剥がれて鉄筋が露出している状

態。

⇒グレードⅣ

EJ

(Exp-J)

目地部損傷

目地に僅かなズレ、開きが生じている状態。

⇒グレードⅠ

目地が明らかにズレ、開いている状態。

⇒グレードⅡ

目地部から漏水しているが、特に周辺環境へは影響

を及ぼしていない状態。

⇒グレードⅢ

⇒目地からの漏水により、周辺環境に影響を及ぼして

いる状態。

⇒グレードⅣ

Y(遊離石灰)

遊離石灰の析出

コンクリート表面に僅かに遊離石灰が析出している状

態。

⇒グレードⅠ

コンクリート表面に白色の遊離石灰が析出している状

態。

⇒グレードⅡ

0.5㎜程度以下のひび割れと遊離石灰が発生してい

る状態。または、錆汁が含まれた遊離石灰が析出し

ている状態。

⇒グレードⅢ

【浮き・剥離 グレードⅣへ移行】

J(ジャンカ)

豆板

粗骨材が露出しているが、叩いてもほとんど剥落する

ことは無い状態。

⇒グレードⅡ

粗骨材が露出しており、叩くと剥落する状態。

⇒グレードⅢ

粗骨材が露出しており、容易に剥落するとともに、コン

クリート内部に多くの空洞が見られる状態。

⇒グレードⅣ

M(Mending)

補修跡

補修跡が、躯体と一体化している。

⇒グレードⅡ

補修モルタルが剥落している。

⇒グレードⅢ

⇒補修モルタルが剥がれ、鉄筋が露出している状態。

⇒グレードⅣ

Xその他

-構造物の耐久性や機能性に影響がない状態。

⇒グレードⅡ

詳細調査等を実施し、今後の対応について検討が必

要な状態。

⇒グレードⅢ

構造物の耐久性や機能性に大きな影響を及ぼして

いる状態。

⇒グレードⅣ

※「ひび割れ」は対応レベル2の場合、ひび割れ幅測定。対応レベル3、4の場合は対応内容を記録。

 「豆板」「補修跡」「その他」については、コンクリートに異変がある場合しか調査対象とならない、グレード判定はグレードⅡからの判定とする。

モルタル部のみひび割れ発生。

躯体部分のひび割れが0.2mm以下。

躯体部分のひび割れが0.2~0.5mm。

躯体部分のひび割れが0.5mm以上。

黒皮の状態、またはさびは生じているが全体的に薄

い緻密なさびであり、コンクリート面にさびが付着して

いることはない。

部分的に浮きやさびがあるが、小面積の斑点状であ

る。

断面欠損は目視観察では認められないが、鉄筋の

全周または全長にわたって浮きさびが生じている。

断面欠損を生じている。

表層のみが中性化している状態。

中性化が進んでいるが、鉄筋被り-10mmよりも中性

化深さが進行していない状態。

『中性化深さ<鉄筋被り-10mm』

中性化が進んでおり、鉄筋付近まで中性化深さが達

している状態。

『鉄筋被り-10㎜<中性化深さ≦鉄筋被り』

中性化が進んでおり、鉄筋を超えて中性化深さが達

している状態。

『鉄筋被り≦中性化深さ』

グレードⅠ

グレードⅡ

グレードⅢ

グレードⅣ

詳 細 調 査

ひび割れ測定

鉄筋腐食調査

中性化試験

調査

区分

記号

劣化症状

目 視 調 査

調査

区分

調査内容

表-5

応レ

ベル

並び

にグ

レー

ド判

定基

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表-6 点検頻度(土木構造物)

(2)浄・配水場管路

管路は、浄水場が管理する構造物に付帯する管路を対象とし、通常点検により異常の有無を

把握する(定期点検は実施しない)。

e.g.)導水管、送水管、取水管、各構造物の流入・流出管、連絡管など

点検は日常的な構内巡視、構内作業中に目視にて行うが、埋設管は管体を目視することがで

きないため、道路の水たまりの状態や陥没の有無など道路状態を点検する。露出管については、管

体の腐食状況及び漏水の有無など劣化程度を把握する。

点検頻度は、概ね 3 か月に 1 回以上の頻度で実施するよう計画する。

(3)弁・栓類

弁・栓類は、浄水場が管理する手動弁、空気弁、消火栓、排水栓を対象とし、通常点検によ

り異常の有無を把握する(定期点検は実施しない)。

点検は運転に支障をきたさない範囲で弁・栓の開閉作業を行うなど動作確認を行い、弁・栓

類の状態を把握する。また、弁室のコンクリートの亀裂・劣化状況については、目視可能な範囲で

概ね 1 年に 1 回以上の頻度で実施するよう点検する。

通常点検 定期点検 備考

取水塔・取水口

1回/3か月

施設休止時に随時実施 -

接合井 施設休止時に随時実施 -

沈砂池 1回/9~10年機能維持管理1回/2~3年

着水井 施設休止時に随時実施 -

凝集沈澱池 1回/9~10年機能維持管理1回/2~3年

中オゾン接触池 1回/9~10年機能維持管理1回/3年

急速ろ過池(ホイラー床)

1回/15年機能点検 1回/年ろ材更新 1回/15年

急速ろ過池(レオポルドブロック)

機能点検時に異常があった場合に随時実施

機能点検 1回/年

後オゾン接触池 1回/10年機能維持管理1回/5~10年

粒状活性炭吸着池 1回/10年機能点検 1回/年ろ材更新 1回/5年

塩素接触池・注入井 施設休止時に随時実施 -

浄水池・配水池 1回/8~10年機能維持管理1回/8~10年

各種ポンプ吸水井 施設休止時に随時実施 -

洗浄排水溜 施設休止時に随時実施 -

その他コンクリート構造物

通常点検時に異常があった場合に実施

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7.1-④ 土木構造物の補修

(1)劣化症状に対する対応方針

通常点検、定期点検で把握する詳細な劣化症状への対応については、施設の重要度や特性

により補修レベルの判断に違いが生じることから「耐震化による分類」と「施設による分類」を行い、

与える影響の度合いにより決定する。

1)耐震化による分類

「耐震済施設」と「その他の施設」に分類する。

2)施設による分類

各施設の重要度(A~C)に基づき分類する。

図-18 施設による分類

※対応レベルは劣化症状をレベル 1~4 で判定したものであり、レベル 1 が健全な状態であり、レベル 4 が最も劣化が激しい状態である。

図-19 施設の重要度、特性に応じた劣化状況に対する対応フロー

(2)補修シナリオの設定

本市の水道は明治 28 年の創設以来、9 回の水道拡張事業により柴島、庭窪、豊野の 3 浄

水場を整備し、その後は、浄水施設整備事業により施設の耐震化や配水池の整備を進めている

ことから、様々な経過年数の施設が存在する。

また、補修の内容や規模は、施設の劣化状況やこれ

までの補修実績により異なるとともに、将来的な施設の

耐震化・更新や廃止を見据える必要がある。以上か

ら、当該施設の属性(経過年数、耐震化時期、補

強・補修履歴、点検履歴)や補修規模(軽微な補

修、中規模補修、大規模補修)を考慮した将来の補

修シナリオを設定する。ここで、その他(塗装塗替え)

分類A 施設衛生管理を

必要とする

・浄水池

・配水池

分類B

オゾン環境のため外気と閉鎖している施設

・中オゾン接触池

・急速ろ過池

・後オゾン接触池

・粒状活性炭

分類C

外気に開放された施設

・沈砂池

・凝集沈澱池

耐震化工事の具体的予定

耐震化による分類

施設による分類

対応レベルによる判定

分類A 分類BC

対象施設

その他の施設

補修内容の判定

即時修繕を要するもの

(次回調査以降に)計画的に修繕するもの

即時的修繕や計画的修繕の必要性を判断

10年以内に施設の廃止を予定 無 有

無 有

1、2 3、4 1、2、3 4

耐震済施設

分類A 分類B 分類C

1、2 3、4 1、2、3 41、2 3,4

健全度を把握し、補修シナリオを設定

記録し、経過観察するもの

図-20 補修シナリオの設定

経過年数

耐震化時期

補強・補修履歴

点検履歴

土木構造物の属性

・補修レベル③

土木構造物の属性

・補修レベル① ・補修レベル②

補修シナリオⅠ

補修シナリオの設定

補修シナリオⅡ

補修シナリオⅢ

その他

(塗装塗替え)

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建設

50~60年程度

補修レベル①(大規模補修)

20年以上

耐震化

シナリオ 建設後50~60年程度経過後に補修。耐震化まで20年以上

補修規模 補修レベル① 大規模補修(施工例:伸縮継手設置、ひび割れ補修等)

適用施設 浄・配水池

建設 補強(補修含む)

20~30年程度40年程度 20年以上

耐震化補修レベル②(中規模補修)

シナリオ 建設後補強実施。補強後20~30年経過。耐震化まで20年以上

補修規模 補修レベル② 中規模補修 (施工例:伸縮継手取替等)補修レベル③ 軽微な補修 (中規模補修時にて未対応箇所)

適用施設 浄・配水池

補修レベル③(軽微な補修)

建設(耐震化含む)

15~20年程度 10年 10年 10年

補修レベル③(軽微な補修) (耐震化)

補修レベル③(軽微な補修)

シナリオ 建設後15~20年程度経過後に補修。

補修規模 補修レベル③ 軽微な補修 (施工例:ひび割れ補修等)

適用施設 浄・配水池、浄水施設

補修レベル③(軽微な補修)

建設(耐震化含む)

シナリオ 30年程度の周期で順次塗替え

補修規模 池内面塗装の塗替え(施工例:高度浄水処理施設の塗替え)

適用施設 浄・配水池、浄水施設

30年※1

内面塗装の塗替え 内面塗装の塗替え

※1 周期については、点検状況等を踏まえ精査

【補修シナリオⅠ】

【補修シナリオⅡ】

【補修シナリオⅢ】

【その他(塗装塗替え)】

は、浄・配水池内面の塗装補修劣化の塗替えを行うものであり、補修シナリオⅠ~Ⅲの施工時と

組み合わせ、合致する時期に施工する。

図-21 補修シナリオ

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(3)補修時期(予定)について

土木構造物を良好な状態に保つため、補修シナリオに基づき、各施設の補修を計画的に実施

する。

浄・配水施設 号池 容量 建設年度等 補修

シナリオ H30 R1 R2 R3 R4 R5 R6 R7 R27 R28 R29 R30

○○配水場 ○池 ○○m3 S○○年

H○○年補強 シナリオⅠ

○○配水場 ○池 ○○m3 H○○年 シナリオⅡ

○○配水場 ○池 ○○m3 H○○年 シナリオⅢ

○○浄水場 - - S○○年 シナリオⅢ

補修時期(期間)

図-22 補修時期の設定イメージ

(4)計画的補修により期待する効果

点検により劣化状態を把握し、最適なタイミングで補修を実施する予防保全(状態監視型)

による維持管理は、事後保全型に比べ点検頻度が多くなることもあり、維持管理費用は増加する

が、定期的な点検及び劣化状態に応じた適切な補修により施設を良好な状態に保つことで、供用

開始時と同レベルまで性能を回復することが可能となる。

予防保全によりコンクリート構造物の健全度が保たれることで、施設の長寿命化に繋がるだけで

なく、施設の更新を行わず安価な耐震補強を採用することが可能となる。この場合、補修に係る費

用を加味しても約半分の費用で済む(図-23 参照)。

更に、耐震補強後の施設は適切に維持管理を行うことで長寿命化によるライフサイクルコストの

大幅削減が可能となる。

図-23 補修費用における削減効果

★試算条件★ (延命化【無】整備費用)

○耐震補強による耐震化 ⇒ 更新(新設)による耐震化 とする。○算出期間は、H30(2018)年~H60(2048)年までとする。

延命化【有】※整備費用

延命化【無】整備費用

土木構造物の整備費用の試算【H30(2018)~H60(2048)】

約1,000億円

※延命化【有】の費用は、収支シミュレーションの費用による(今後、変更の可能性あり)

569億円

更新

更新耐震補強

補修

長寿命化の有無による

整備費用の差

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7.2 給配水部門

7.2-① 基本的な考え方

目視による状態把握ができない地中に埋設されている管路については、時間計画型の予防

保全(図-24)を基本とし、管路巡視や漏水調査等の情報収集による異常箇所の早期発見

と、管路更新による事故の未然防止に努める。

一方、目視による状態把握が可能な水管橋及び橋梁添架管やバルブ等の付属設備につい

ては、状態監視型の予防保全(図-25)を基本とし、定期的な点検・診断を行うことにより、故

障や劣化の予兆等を事前に予測し、施設の状態に応じて修繕や更新等を行う。

この理念に基づき、これまで蓄積した施設の点検・修繕データ等や、ガイドラインの点検頻度を

参考にしながら、最適な点検・修繕を行うメンテナンスサイクルを構築・推進(図-26)する。ま

た、このサイクルを推進していく中で、蓄積した点検データに基づく点検・修繕サイクルの最適化

や、施設の劣化予測の精度向上など、より効率的な維持管理手法の検討を継続する。

図-24 時間計画型の予防保全 図-25 状態監視型の予防保全

図-26 メンテナンスサイクルの構築・推進

調査・点検

診断・評価

修繕・更新

記録

(日常点検)重要度や老朽度に応じた幹線管路巡視点検水管橋巡視点検共同溝巡視点検機動的点検整備管路用地点検 など

(定期点検)計画的漏水調査路面下空洞調査(漏水調査)幹線弁栓類等調査整備耐震性貯水槽点検・循環ポンプ点検市内一円管体調査鋼管埋設状況調査(腐食電流測定)電気防食設備保守点検 など

配水設備修繕(計画・非計画)給水装置修繕(道路部・宅内1次側)管路用地整備

水管橋塗替・橋台補修・防衝杭設置埋設鋼管電気防食計画的故障バルブ修繕特殊洗浄工法試行工事 など

更新・維持管理計画修繕計画の策定 など

施設の長寿命化

充実反映

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7.2-② 管路施設の維持管理方針

【全体方針】

管路施設における今後の維持管理方針について、管種別に整理したものを図-27 に示す。

本市水道局の管路更新については、平成 30 年 3 月に策定した「管路耐震化促進・緊急

10 カ年計画」に基づき、切迫する南海トラフ巨大地震への備えとして、老朽管路の更新・耐震

化を大幅に促進し、安心安全の強化を図っていく。

一方、配水設備の維持管理としては、管路の重要度や老朽度等を勘案し、点検頻度の強

化・見直しを図りながら、より効率的な維持管理手法を採用しつつ、トータルコストの縮減やイン

フラ長寿命化に向けた最適なメンテナンスサイクルを構築・推進していく。

図-27 管種別の維持管理方針

【埋設管路】:令和2年2月現在、運用開始済み

埋設管路については、管路更新の促進による時間計画型の予防保全に努めつつ、管路の重

要度等を勘案して設定した頻度による「①管路巡視」(表-7)を行うとともに、埋設管路の劣

化因子と思われる布設経過年数や埋設箇所の土壌等を把握した上で、サンプリングによる「②

管体調査」を継続し、データを蓄積することにより劣化状況把握の精度向上に努める。

表-7 管路巡視の実施頻度

対 象 水道局頻度 ガイドライン頻度 内 容

導水管 1 巡/月 4巡/年 地上漏水の有無、

路面の状況、鉄蓋

劣化状況等を目視

により点検する

送配水幹線管路 1 巡/年 4巡/年

老朽化管路

(FA 管・FC 管)等 随時 1 巡/月

鋳鉄管 ダクタイル鋳鉄管管 種 鋼管ビニル管

管路更新

漏水調査(Φ400mm以下、4年循環) 腐食対策水管橋点検

経年管路の増加漏水事故の増加

・ 大口径が多く事故影響大・ 特に水管橋事故件数が増加

漏水調査のコスト縮減

腐食調査管体調査

故障バルブの増加

弁栓類調査 弁栓類調査

漏水事故の増加

洗浄排水作業

蛇口からの砂等夾雑物の流出

管路更新(促進)

③ 漏水調査(見直し)⑦ 水管橋目視点検

② 管体調査(継続)

⑨ 弁栓類点検整備(見直し)

⑪ 洗浄排水作業(カメラ調査・特殊洗浄工法等)

管路巡視 管路巡視

① 管路巡視(重要度・老朽度等を勘案)

① 管路巡視

⑧ 水管橋塗替え(見直し)

③ 漏水調査(見直し)

耐震化率・有収率の向上、事故の未然防止、管内水質の保持、維持管理コストの削減 など

これまでの対策

課 題

今後の対策

効 果

⑥ 電気防食設備設置・点検

⑤ 腐食調査・探傷調査

⑩ 計画的バルブ修繕⑨ 弁栓類点検整備(見直し)

⑩ 計画的バルブ修繕

④ 埋設環境調査

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また、平成 25 年度より実施している計画的な「③漏水調査」については、これまでの調査実

績データをもとに、市内全域の調査に必要な費用と、漏水による損失費用の合計が最小となる

年数を最も経済的な循環年数(図-28、表-8)として設定し、顕在化していない漏水の早期

発見と修繕を実施することで、漏水率・有収率の改善及び漏水事故による二次被害の未然防

止を図る。また、管路の巡視頻度はガイドラインの頻度よりも低くなっているが、これは、この漏水

調査の効率的な実施を考慮したためである。

図-28 漏水調査の循環年数の考え方

表-8 漏水調査の循環年数

管種 循環年数 算定式

鉄製(400mm 以下) 6 年循環

非鉄製(ビニル管)

給水管含む

2 年循環

(強化)

埋設鋼管については、「④埋設環境調査」において腐食の確率が高いと判断され、かつ配水

運用上、特に重要な路線を、対策優先路線と設定し、このうち、漏水事故履歴のある路線

(事故履歴路線)及び漏水事故履歴が無い(未事故路線)ものの、「⑤腐食調査・探傷

調査」の結果、損傷箇所が多く確認された路線(未事故路線のうち、漏水リスクの高い路線)

は、塗覆装の損傷状況に応じた「⑥電気防食設備設置・点検」を実施することにより、事故の未

然防止を図る。

また、「④埋設環境調査」で腐食の可能性が低いとされた重要路線(その他路線)について

も、必要に応じて「⑤腐食調査・探傷調査」を行い、漏水リスクの低減に努める。

埋設鋼管の維持管理判断フローを図-29 に示す。

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図-29 埋設鋼管の維持管理判断フロー

【水管橋及び橋梁添架管】:令和2年4月より運用開始予定

約 400 条の水管橋及び橋梁添架管について、年 1 回の水道局職員による「⑦水管橋目

視点検」を行い、この結果や健全度評価に基づき設定したに周期(原則 20 年:外観上で塗

装剥がれ等が見られる標準的な年数)での「⑧水管橋塗替え」を行い、劣化状況に応じた適

切な点検・修繕等を実施する。水管橋及び橋梁添架管の維持管理を表-9に示す。

なお、船上からの水管橋目視点検では、点検範囲に限界がある、調査時期が非出水期に限

定される、定点観測が困難などの課題がある。このため、今後、ドローンによる点検など、新たな

技術の適用についても、継続的に検討を行っていく。

表-9 水管橋及び橋梁添架管の維持管理

項 目 水道局頻度 ガイドライン頻度 内 容

目視点検 1 回/年 基幹管路上:1回/2 年

上記以外:1回/5年

船上等からの目視点検、

ドローンによる点検等 【検討中】

塗替え

20 年周期

目視点検結果が

良好なら適宜延長

WSP 基準※

・美観考慮 :15 年

・防食性考慮:31 年

水管橋の塗替工事

修繕等 随時 ― 伸縮継手、橋台・橋脚等の修繕

※WSP:日本水道鋼管協会監修 「WSP 水管橋外面防食基準」 平成 22 年3月 25 日改訂

その他の重要路線迷走電流が多いと想定される重要路線

(④埋設環境調査に基づく)

事故履歴路線11路線、約12km

未事故路線23路線、約14km

⑤腐食調査による使用可能年数特定

塗覆装の損傷状況に応じた補修、電気防食設備設置、更新、事後保全の判断

路線の損傷箇所の確認(⑤損傷調査(外面塗覆装))

使用可能年数超過⑤腐食調査による使用年数の再評価

埋設部(水管橋除く)約64km

項 目

対象路線対象延長

使用可能年数特定方法

対 応

路線の損傷箇所の確認(⑤損傷調査(外面塗覆装))

緊急度に応じて 緊急度に応じて

⑥電気防食設備設置・点検今後、25箇所設置予定

(2~3箇所/年)

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【付属設備】:令和2年4月より運用開始予定

埋設管路や水管橋等の付属設備には、バルブ、空気弁、消火栓、排水栓等がある。これら

弁栓類は、配水区域内の適正な流量、水圧、水質の確保のため、管路と一体となって適正な

機能を保持しなければならない。

本市では、弁栓類の中でも特に配水運用上、重要な機能を持つ幹線弁栓類について継続

的に「⑨弁栓類点検整備」を実施しており、既に多くの点検記録のデータが蓄積されている。これ

に基づき、重要度が高い設備(主に 600mm 以上)の頻度は高く保ち、それ以外の施設は

故障発生状況等を踏まえ、頻度を下げた適切な点検サイクル(表‐10、図-30)を設定し、機

能保持を図るとともに、故障バルブ等の異常を把握した弁栓類については「⑩計画的バルブ修

繕」を行う。

今後も引き続き、点検記録のデータを蓄積しつつ、適切なサイクルの見直しを行っていく。

表-10 弁栓類の維持管理

項 目 水道局頻度 ガイドライン頻度 内 容

制水弁

【600mm 以上】

1 回/4年

(縦型弁は1回/2年) 1 回/5年 鉄蓋・弁室の状況、漏水

の有無、開閉状況、塗装

の目視点検、動作確認を

行い、軽微な修繕も行う

制水弁

【400mm 以上】

1 回/4年

(減速機付は1回/2年) 1 回/5年

空気弁 1 回/10 年 1 回/10 年

図-30 弁栓類の点検整備サイクルの見直し

【管内水質保持】:令和 3年度の本格運用に向けて検討中

これまでのパイプクリーニング施策(管路更新、計画的洗浄排水作業等)の実施により、赤

水等によるお客さまからの苦情は減少してきた。しかしながら、近年、砂等の夾雑物によるお客さ

制 水 弁

トルク超過操作不能2年⇒2年

タイコ落ち

グランド漏水

枝管以上φ600~

異常個所 少数4年⇒6年

効率化 ※ 減速機付2年

フロート弁、パッキン交換

故障・漏水無ほとんど4年⇒10年

枝線以上φ400~

空 気 弁

2年⇒4年

バタフライ弁 効率化

効率化

故障が少なく制水弁より故障が維持管理に与える影響が小さいため点検間隔効率化

故障が少ないため重要度に応じ点検間隔効率化

故障は多いがバルブ構構造や重要度を考慮して点検間隔効率化

縦型弁 現行基準維持

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まからの苦情が増加している。

今後は、これまでの行政区単位で面的実施してきた放水洗管作業以外に、より効果的な夾

雑物の排出を目的とした特殊洗浄工法について検討するとともに、お客さま苦情や砂等夾雑物

の滞留が懸念される場所において管内カメラ調査を実施するなど、継続的な「⑩洗浄排水作

業」により更なる管内水質の保持に努める。

8 最後に

本タスクフォースでは、水道法改正や大阪府北部地震、G20 大阪サミットを契機として、水道施設の

総点検・補修に取組みつつ、信頼性の高い水道システムを構築するための今後の維持管理方針につい

てとりまとめた。

今後とも、メンテナンスサイクルを推進する中で、より効果的な維持管理手法について継続して検討す

るとともに、水道施設に係る事故や災害時においても安定的に水の供給ができるよう、引き続き施設管

理の強化に努める。