1.3.2 球座標での変数分離法(3.3.2 spherical …legendre...
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1.3.2 球座標での変数分離法(3.3.2 Spherical Coordinates)
図 1.15: 球座標.
境界が球面で与えられる場合は,球座標による変数分離が有効である.デカルト座標から球座標への変換は
x = r cos! sin ", y = r sin! sin ", z = r cos " (1.93)
で与えられる.球座標での Laplace方程式は
!2V =1
r2#
#r
!r2#V
#r
"+
1
r2 sin "
#
#"
!sin "
#V
#"
"+
1
r2 sin2 "
#2V
#!2= 0 (1.94)
で与えられる.(1.94)の導出の詳細はこの節の最後に補足1として与える.ここでは簡単のため,ポテンシャルは z軸周りで対称,すなわち V が方位角 !に依存しない場合を考えることにしよう.このとき Laplace方程式は
1
r2#
#r
!r2#V
#r
"+
1
r2 sin "
#
#"
!sin "
#V
#"
"= 0 (1.95)
となる.ここで解を変数分離形V (r, ") = R(r)!(") (1.96)
に仮定する.(1.96)式を (1.95)式に代入して V で割ると
1
R
d
dr
!r2
dR
dr
"+
1
! sin "
d
d"
!sin "
d!
d"
"= 0 (1.97)
書き換えると1
R
d
dr
!r2
dR
dr
"= " 1
! sin "
d
d"
!sin "
d!
d"
"(1.98)
となる.左辺は rのみに依存し右辺は "のみに依存するので,両辺は定数でなければならない.この定数を,後の便宜のために,l(l + 1)と書くことにすると
1
R
d
dr
!r2
dR
#r
"= l(l + 1),
1
! sin "
d
d"
!sin "
d!
d"
"= "l(l + 1) (1.99)
となる.動径関数 Rに対する微分方程式は
1
R
d
dr
!r2
dR
dr
"= l(l + 1) (1.100)
19
となる.一般解はR = Arl +
B
rl+1(1.101)
で与えられる.ただし A,B は任意の定数である.二階の微分方程式なので,一般解は二つの未定定数 A,B
を含んでいる.(1.101)式が微分方程式 (1.100)の解であることは,以下のように容易に確かめられる.
r2dR
dr= r2[lArr!1 ! (l + 1)
B
rl+2] = lArl+1 ! (l + 1)
B
rl(1.102)
d
dr
!r2
dR
dr
"=
d
dr
#lArl+1 ! (l + 1)
B
rl
$= l(l + 1)Arl + l(l + 1)
B
rl+1= l(l + 1)R (1.103)
次に角度方程式1
! sin !
d
d!
!sin !
d!
d!
"= !l(l + 1) (1.104)
を考える.この微分方程式は,lが負でない整数のときにのみ,物理的に意味のある解,つまり 0 " ! " 2"
の範囲で有限で連続な一価関数の解を持つことが知られている.この解は Legendre多項式とよばれる.
!(!) = Pl(cos !) (1.105)
Legendre多項式についての詳細と,角度関数が方位角 #に依存する場合(球面調和関数)については補足 2
を参照のこと.ここでは Legendre多項式のいくつかの重要な性質のみを記す.Legendre多項式の一般的な表式は Rodoriguesの公式によって与えられる.
Pl(x) =1
2ll!
!d
dx
"l
(x2 ! 1)l (1.106)
最初の数個の Legendre多項式の具体的な表式を以下に示す.
P0(x) = 1
P1(x) = x
P2(x) = (3x2 ! 1)/2
P3(x) = (5x3 ! 3x)/2
P4(x) = (35x4 ! 30x2 + 3)/8
P5(x) = (63x5 ! 70x3 + 15x)/8
(1.107)
上式を見てもわかるように,Pl(x)は xの l次の多項式である.また,lが偶数のときは偶数次の項のみを含み,lが奇数のときは奇数次の項のみを含む.(1.106)式の因子 (1/2ll!)は Pl(1) = 1となるように選ばれている.Legendre多項式 Pl(x)は !1 " x " 1で完全直交系を作ることが知られている.
% 1
!1Pl(x)Pl!(x)dx =
% !
0Pl(cos !)Pl!(cos !) sin !d! =
2
2l + 1$ll! (1.108)
この性質は境界条件を満たす解を構成するために重要な役割を果たす.以上によって,軸対称な場合の Laplace方程式の変数分離解が
V (r, !) =
!Arl +
B
rl+1
"Pl(cos !) (1.109)
と求まった.デカルト座標の時と同様に,(1.109)は無限個の解の組を与える.一般的な解はそれらの線形結合で与えられる.
V (r, !) ="&
l=0
!Alr
l +Bl
rl+1
"Pl(cos !) (1.110)
係数 Al は与えられた境界条件を満たすように定める.その際には Legendre多項式の直交関係 (1.108)を利用する.
20
例題(Example 3.6):境界面でポテンシャルが与えられている場合 (1)
半径 Rの球面上でポテンシャルの角度依存性 V0(!)が定まっているとき,球の内部でのポテンシャルを求めよ.球の内部には電荷は存在しないものとする.
解答:原点 r = 0でポテンシャルが有限であるためには (1.110)で全ての lで Bl = 0でなければならない.よって
V (r, !) =!!
l=0
AlrlPl(cos !) (1.111)
球面上での境界条件を満足するためには
V (R, !) =!!
l=0
AlRlPl(cos !) = V0(!) (1.112)
上述のように Legendre多項式は完全系を作ることがわかっているので,係数 Alを適当に選ぶことにより任意の V0(!)に対して境界条件を満たす解を作ることができる.係数 Al を (1.112)式の両辺に Pl!(cos !) sin !
をかけて !で積分する.!!
l=0
AlRl
" !
0d! sin !Pl!(cos !)Pl(cos !) =
" !
0d! sin !Pl!(cos !)V0(!) (1.113)
ここで Legendre多項式の直交関係 (1.108)を使うと
Al!Rl! 2Rl
2l + 1=
" !
0V0(!)Pl(cos !) sin !d! (1.114)
よってAl =
2l + 1
2Rl
" !
0V0(!)Pl(cos !) sin !d! (1.115)
を得る.これを (1.111)式に代入すれば解が得られる.具体的な例として,
V0(!) = k sin2(!/2) (1.116)
である場合を考える.sin2(!/2) = (1! cos !)/2および P0(x) = 1, P1(x) = xより (1.116)式は
V0(!) =k
2(1! cos !) =
k
2[P0(cos !)! P1(cos !)] (1.117)
と書ける.これを Al の表式 (1.115)に代入して Legendre多項式の直交関係 (1.108)を使うと
A0 =k
2, A1 = ! k
2R, Al = 0 (l "= 0, 1) (1.118)
を得る.これを (1.111)式に代入すればポテンシャルは
V (r, !) =k
2
#P0(cos !)!
1
RP1(cos !)
$=
k
2
%1! 1
Rcos !
&(1.119)
となる.
例題(Example 3.7):境界面でポテンシャルが与えられている場合 (2)
半径 Rの球面上でポテンシャルの角度依存性 V0(!)が定まっているとき,球の外部でのポテンシャルを求めよ.球の外部には電荷は存在しないものとする.
解答:この場合,無限遠方ではポテンシャルは 0(r # $で V = 0)でなければならない.この条件を満たすためには,全ての lに対して Al = 0でなければならない.よって
V (r, !) =!!
l=0
Bl
rl+1Pl(cos !) (1.120)
21
球面上での境界条件を満足するためには
V (R, !) =!!
l=0
Bl
Rl+1Pl(cos !) = V0(!) (1.121)
(1.121)式の両辺に Pl!(cos !) sin !をかけて !で積分すると,
Bl =2l + 1
2Rl+1
" !
0V0(!)Pl(cos !) sin !d! (1.122)
を得る.これを (1.120)式に代入すれば解が得られる.
例題(Example 3.8):一様電場中に導体球が置かれている場合一様な電場E = E0zの中に帯電していない半径Rの導体球が置かれている.(図 1.16)導体中の正電荷
は電場による力を受け z の正の方向に移動する.逆に,負電荷は電場からの力によって z の負の方向に移動する.このようにして誘起された電荷は導体球周辺の電場を変形させる.このとき,導体球外部における電場を求めよ.
図 1.16: 一様電場中に置かれた導体球.
解答:導体球面上は等電位であるから,V (R, !) = V0とする.また,導体球から遠く離れた場所では電場は一様で E = E0zであるから
V ! "E0z + C (1.123)
となる.ここで C は xy面内での無限遠方をポテンシャルの基準点にとると V (z = 0) ! 0より C = 0となる3.以上より,この問題の境界条件は
(i) V = V0 when r = R
(ii) V ! "E0r cos ! for r # R
(iii) 導体球は帯電していない.(導体球に誘起された電荷の総和は 0.)(1.124)
で与えられる.この問題では条件 (iii)が必要となることに注意されたい.これは,導体球が孤立している(接地されていない)ので導体球面上でのポテンシャルが指定されていないからである.境界条件 (i)-(iii)を満たすように一般解 (1.110)の係数 Al, Bl を求めなければならない.
3Gri!thsのテキストでは導体球面上をポテンシャルの基準として V0 = 0として,対称性により(電場の xy 成分が 0であるから)xy 面内では等電位であり,したがって C = V0 = 0と結論している.ここでは直感的な議論に頼らずにとりあえず V0 を未定の定数とおいて,後で境界条件より定めることにする.
22
まず先に境界条件 (ii)を考える.rが大きければ Bl の項は無視できるので!!
l=0
AlrlPl(cos !) = !E0r cos ! (1.125)
となる.ここで P1(x) = xより (1.125)式は!!
l=0
AlrlPl(cos !) = !E0rP1(cos !) (1.126)
と書ける.両辺に Pl!(cos !) sin !をかけて !で積分すると,直交性により l = l" の項だけが残るので,これより
A1 = !E0, Al = 0 (l "= 1) (1.127)
を得る.次に境界条件 (i)を考える.
V (R, !) =!!
l=0
"AlR
l +Bl
Rl+1
#Pl(cos !) = V0 (1.128)
前と同様に,Legendre多項式の直交性により
B0
R= V0, AlR
l +Bl
Rl+1= 0 (l "= 0) (1.129)
を得る.ただし,(1.127)より A0 = 0であることを用いた.上式と (1.127)より
B0 = RV0, B1 = !A1R3 = E0R
3, Bl = 0 (l "= 0, 1) (1.130)
を得る.(1.127),(1.130)式を (1.110)式に代入すると
V (r, !) =RV0
r! E0
"r ! R3
r2
#cos ! (1.131)
を得る.最後に条件 (iii)より未定定数 V0 を決める.導体球面上に誘起された電荷の密度分布は
"(!) = !#0$V
$r
$$$$r=R
= #0RV0
r2+ #0E0
"1 + 2
R3
r3
#cos !
$$$$r=R
= #0V0
R+ 3#0E0 cos ! (1.132)
となる.これを球面上で積分すると%da = 2%R2
% !0 sin !d!より (1.132)式第2項からの寄与は消えて,誘起
電荷の総和はQ =
&da" = 4%R#0V0 (1.133)
となる.条件 Q = 0より,V0 = 0を得る.結局,ポテンシャルは
V (r, !) = !E0
"r ! R3
r2
#cos ! (1.134)
となる.また,表面誘起電荷密度は"(!) == 3#0E0 cos ! (1.135)
で与えられる.これは上半球 (0 # ! # %/2)で正,下半球 (%/2 # ! # %)で負となる.ポテンシャル (1.134)
式は二つの寄与からなる.V = Vex + Vsphere と書いて
Vex = !E0r cos !, Vsphere = E0R3
r2cos ! (1.136)
とすると,Vex は外場からの寄与を表し Vsphere は導体球面上に誘起された電荷からの寄与を表す.
23
もし仮に導体球が帯電していて,表面電荷の電荷の総和が Qであったとすると,(1.131)式は
V (r, !) =Q
4"#0r! E0
!r ! R3
r2
"cos ! (1.137)
となる.右辺第一項は原点に点電荷 Qが置かれたときのポテンシャルを表している.
補足1:球座標表示におけるLaplacianの導出
球座標 (1.93) による Laplacianの表式
"2V =1
r2$
$r
!r2$V
$r
"+
1
r2 sin !
$
$!
!sin !
$V
$!
"+
1
r2 sin2 !
$2V
$%2(1.138)
を導出しよう.このために,まず極座標表示による gradientの表式
"V =$V
$rr+
1
r
$V
$!! +
1
r sin !
$V
$%" (1.139)
を導こう.ここで r, !, "はそれぞれ r, !,%方向の単位ベクトルであり,以下で与えられる.
r =!r!r## !r!r
## = cos% sin !x+ sin% sin !y + cos !z (1.140)
! =!r!"## !r!"
## = cos% cos !x+ sin% cos !y ! sin !z (1.141)
" =!r!#### !r!####= ! sin%x+ cos%y (1.142)
である.(1.139)を示すために,まず $V/$rをデカルト座標を用いて表すと
$V
$r=$V
$x
$x
$r+$V
$y
$y
$r+$V
$z
$z
$r= "V · $r
$r(1.143)
ここで (1.140)式を用いると$V
$r= "V · r
####$r
$r
#### = "V · r (1.144)
を得る.ここで,|$r/$r| = 1を用いた.同様に
$V
$!=$V
$x
$x
$!+$V
$y
$y
$!+$V
$z
$z
$!= "V · $r
$!(1.145)
ここで (1.141)式及び |$r/$!| = rより
$V
$!= "V · !
####$r
$!
#### = r"V · ! (1.146)
$V
$%=$V
$x
$x
$%+$V
$y
$y
$%+$V
$z
$z
$%= "V · $r
$%(1.147)
ここで (1.142)式及び |$r/$%| = r sin !より
$V
$%= "V · "
####$r
$%
#### = r sin !"V · " (1.148)
ここで,r, !, " が互いに直交する基底ベクトルであることから
"V = ("V · r)r+ ("V · ")"+ ("V · !)! (1.149)
24
と書けるはずである.この式と (1.144),(1.146),(1.148)式を比較すれば (1.139)が得られる.また,これより!演算子は
! = r!
!r+ !
1
r
!
!"+ "
1
r sin "
!
!#(1.150)
と書けることがわかる.次に,Laplace演算子は
!2V = ! ·!V (1.151)
に (1.150)式を用いると
!2V =
!r!
!r+ !
1
r
!
!"+ "
1
r sin "
!
!#
"·!!V
!rr+
1
r
!V
!"! +
1
r sin "
!V
!#"
"
=!2V
!r2+
1
r2!2V
!"2+
1
r2 sin2 "
!2V
!#2+!V
!r
!1
r! · !r
!"+
1
r sin "" · !r
!#
"
+1
r
!V
!"
#1
r! · !!
!"+
1
r sin "" · !!
!#
$+
1
r sin "
!V
!#
#1
r! · !"
!"+
1
r sin "" · !"
!#
$(1.152)
となる.ここで,球座標表示での!を2回作用させる際には単位ベクトル (r, !, ") の微分も考慮しなければならないことに注意せよ.また,単位ベクトルの r微分は 0であることを用いている.単位ベクトルの表式(1.140)-(1.142)を用いると,
! · !r!"
= 1, " · !r!#
= sin " (1.153)
! · !!!"
= 0, " · !!!#
= cos " (1.154)
! · !"!"
= 0, " · !"!#
= 0 (1.155)
を示せる.これらを (1.152)に用いると
=!2V
!r2+
1
r2!2V
!"2+
1
r2 sin2 "
!2V
!#2+
2
r
!V
!r+
cos "
r2 sin "
!V
!"
=1
r2!
!r
!r2!V
!r
"+
1
r2 sin "
!
!"
!sin "
!V
!"
"+
1
r2 sin2 "
!2V
!#2(1.156)
を得る.よって (1.138)式を導けた.
補足2:Ledengre多項式と球面調和関数
ここでは一般にポテンシャル V が方位角にも依存する場合を考える.変数分離形
V (r, ",#) = Y (",#)R(r) (1.157)
を仮定すると,角度関数 Y (",#)は以下の角度方程式に従う.%
1
sin "
!
!"
!sin "
!
!"
"+
1
sin2 "
!2V
!#2
&Y (",#) = "l(l + 1)Y (",#) (1.158)
の解を求めよう.角度関数に対してさらに変数分離形
Y (",#) = !(")"(#) (1.159)
を仮定すると" 1
"
d2"
d#2=
1
!sin "
d
d"
!sin "
d!
d"
"+ l(l + 1) sin2 " (1.160)
25
を得る.左辺は !のみの関数,右辺は "のみの関数であるから,両辺は定数でなければならない.この定数を便宜的に(後に便利なように)m2 をおこう.こうして,!と "に対する二つの方程式を得る.
d2!
d!2= !m2!(!) (1.161)
1
sin "
d
d"
!sin "
d"
d"
"+
#l(l + 1)! m2
sin2 "
$" = 0 (1.162)
まず,!に対する解は容易に!(!) = e±im! (1.163)
であることがわかる.ここで !が !の一価関数であるためには
!(!+ 2pi) = !(!) " eim(!+2") = eim(!) (1.164)
したがってmは整数でなければならない.
m = 0,±1,±2, · · · (1.165)
次に,"に対する解を求めるために変数を "から z = cos "に変換し
"(") = P (cos ") = P (z) (1.166)
と記す.dz = ! sin "d"より P に対する微分方程式は
d
dz
#(1! z2)
dP
dz
$+
#l(l + 1)! m2
1! z2
$P = 0 (1.167)
となる.この方程式は一般化された Legendre方程式とよばれる.求める解が物理的に意味のある波動関数を表すためには,解は !1 # z # 1の範囲で有限で連続な一価関数でなければならない.まず最初に,簡単な場合としてm = 0,つまり角度関数が方位角依存性を持たない場合を考えよう.この
ときの P (z)に対する方程式d
dz
#(1! z2)
dP
dz
$+ l(l + 1)P = 0 (1.168)
は Legendre方程式とよばれる.ここで,解を次のベキ級数の形に仮定しよう.
P (z) = z#!%
j=0
ajzj (1.169)
これを Legendre方程式 (1.168)に代入すると!%
j=0
&(#+ j)(#+ j ! 1)ajz
#+j"2 ! [(#+ j)(#+ j + 1)! l(l + 1)] ajz#+j'= 0 (1.170)
を得る.これが |z| # 1のすべての z に対して成り立つためには z のべきの係数はそれぞれ全て 0でなければならない.(べき級数の一意性)
まず,z#"2, z#"1 の係数が 0の条件より
#(#! 1)a0 = 0 (1.171)
(#+ 1)#a1 = 0 (1.172)
を得る.上の二式は,以下のように書くこともできる.
a0 $= 0であれば# = 0又は# = 1 (1.173)
a1 $= 0であれば# = 0又は# = !1 (1.174)
26
また,一般の次数のべきについては
aj+2 =
!(!+ j)(!+ j + 1)! l(l + 1)
(!+ j + 1)(!+ j + 2)
"aj (1.175)
となる.少し考えれば,(1.173)と (1.174)は全く同等であり,a0 か a1 のどちらか一方が 0でないように選べばそれで十分であることがわかる.そこで,a0 "= 0, a1 = 0であるとする.これより !については
! = 0又は! = 1 (1.176)
を得る.このとき (1.175)式より,べき級数解は ! = 0なら偶数べきだけを含み,! = 1なら奇数べきだけを含むことがわかる.! = 0,! = 1のどちらの場合でも,べき級数は次の性質をもつことが証明できる.(i)lの値に関係なく,z2 < 1の場合にはべき級数は収束する.(ii)有限級数でない場合には,z = ±1で級数は発散する.
たとえば,l = 0,! = 1とするとべき級数は
P (z) = z +1
3z3 +
1
5z5 + · · · (1.177)
となる.(ただし a0 = 1とした.)この級数は関数
Q0(z) =1
2ln
1 + z
1! z(1.178)
のべき級数展開に等しく,明らかに z = ±1で発散する.一般に lの値に対しても,級数が無限に続くときには z = ±1で対数的な発散があることを示すことができる.以上より,|z| # 1の領域で有限な解を得るためにはべき級数が有限個で終わることが要求される.そのためには,(1.175)式の分子がある j = jmax で 0になる必要がある.つまり,
(!+ jmax)(!+ jmax + 1) = l(l + 1) (1.179)
であれば良い.このとき j $ jmax に対しては aj = 0となる.!と jmax は 0か正の整数であるから,lが 0
か正の整数であるときのみ (1.179)式は満たされる.また,! = 0なら jmax = l,! = 1なら jmax = l! 1となるが,いずれの場合も P (z)の最高次数の項は zl をもつ項となる.以上のように求まった多項式は Legendre多項式 Pl(z)とよばれる.最初の数個の Legendre多項式の具体
的な表式を以下に示す.P0(z) = 1
P1(z) = z
P2(z) = (3z2 ! 1)/2
P3(z) = (5z3 ! 3z)/2
P4(z) = (35z4 ! 30z2 + 3)/8
P5(z) = (63z5 ! 70z3 + 15z)/8
(1.180)
上式を見てもわかるように,Pl(z)は zの l次の多項式である.また,lが偶数のときは偶数次の項のみを含み,lが奇数のときは奇数次の項のみを含む.また,Pl(1) = 1となるように規格化されている.Legendre多項式の一般的な表式として以下の Rodoriguesの公式が知られている.
Pl(z) =1
2ll!
#d
dz
$l
(z2 ! 1)l (1.181)
(1.181)式の因子 (1/2ll!)は Pl(1) = 1となるための規格化因子である.Legendre多項式 Pl(z)は !1 # z # 1で完全直交系を作る.直交関係は
% 1
!1Pl(z)Pl!(z)dx =
% !
0Pl(cos ")Pl!(cos ") sin "d" =
2
2l + 1#ll! (1.182)
27
で与えられる.角度関数が方位角依存性を持つ場合は,一般のm != 0に対して一般化された Legendre方程式 (1.167)の
解を求める必要がある.詳細は省略するが,Legendre方程式 (m = 0)の場合と同様に,区間"1 # n # 1で解が有限であるためにはパラメータ l,mは以下の条件を満たさなければならないことが示される.(1)lは 0または正の整数であること.(2)mは "l,"l + 1, · · · , 0, · · · , l " 1, lの値のみを取り得ること.このような性質を持つ解を Legendre陪多項式 Pm
l (z)という.m > 0の場合,この関数は
Pml (z) = ("1)m(1" z2)m/2 dm
dzmPl(z) =
("1)m
2ll!(1" z2)m/2 dl+m
dzl+m(z2 " 1)l (1.183)
によって定義される.微分方程式 (1.167)は m2 だけに依存し,整数 mの符号にはよらないので Pml (z) =
P!ml (z)である.与えられたmに対して Legendre陪多項式は直交系を作る.直交関係は以下で与えられる.
! 1
!1Pml (z)Pm
l! (z)dz =2
2l + 1
(l +m)!
(l "m)!!ll! (1.184)
以上をまとめると,規格化された角度関数は
Ylm(",#) = ("1)(m+|m|)/2"(2l + 1)(l " |m|)!4$(l + |m|)!P |m|
l (cos ")eim! (1.185)
となる.ここでl = 0, 1, 2, · · · , m = "l,"l + 1, · · · , l " 1, l (1.186)
である.この関数 Yml を球面調和関数という.球面調和関数は以下の正規直交条件を満たす.! "
0sin "d"
! 2"
0d#Y "
l!m!(",#)Ylm(",#) = !ll!!mm! (1.187)
以下に l = 0, 1, 2の球面調和関数の具体的表式を示す.
l = 0 : Y00 =1$4$
l = 1 : Y1±1 = %#
3
8$sin "e±i!, Y10 =
#3
4$cos "
l = 2 : Y2±2 =
#15
32$sin2 "e±2i!, Y2±1 =
#15
8$sin " cos "e±i!
Y20 =
#5
16$(3 cos2 " " 1)
(1.188)
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