11-12 13-14strategies 日本語版vol.2 no.3 p1 市場最強のpcrクローニング・キット...

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VOLUME 2 N0. 3 日本語版 【ページ】 Index ●市場最強のPCRクローニング・キット ●高速、高感度、高収量、高正確性の万能型 PCR酵素 ●アデノウイルスによる遺伝子導入と TAPによる相互作用タンパク質の精製 ●アデノウイルスの精製と力価測定キット ●低温で発現することによりタンパク質の 溶解性を向上させるコンピテント・セル ●生分解性ポリマーを利用した低毒性の トランスフェクション試薬 ●テック・トーク 「ウイルス・ベクター」 ●転写活性をもたらす活性化因子の同定 ●ハイブリダイゼーションの時間を大幅に短縮 Interview 「名古屋大学木村宏先生」 FAQ アデノウイルス遺伝子導入システム ●キャンペーン 1 2 3 4 5 6 7-8 9 10 11-12 13-14 15 new new new new new new 中綴じ付録:テック・トーク「ウイルス・ベクター」 ウイルス特集 【ページ】 Index

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Page 1: 11-12 13-14Strategies 日本語版Vol.2 No.3 p1 市場最強のPCRクローニング・キット 問題点 Problem 解決法 Solution PCRクローニングでは、ライゲーションの簡便さから

V O L U M E 2 N 0 . 3

日本語版

【ページ】 Index

●市場最強のPCRクローニング・キット

●高速、高感度、高収量、高正確性の万能型 PCR酵素

●アデノウイルスによる遺伝子導入と TAPによる相互作用タンパク質の精製

●アデノウイルスの精製と力価測定キット

●低温で発現することによりタンパク質の 溶解性を向上させるコンピテント・セル

●生分解性ポリマーを利用した低毒性の トランスフェクション試薬

●テック・トーク 「ウイルス・ベクター」

●転写活性をもたらす活性化因子の同定

●ハイブリダイゼーションの時間を大幅に短縮

●Interview 「名古屋大学木村宏先生」

●FAQ アデノウイルス遺伝子導入システム

●キャンペーン

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中綴じ付録:テック・トーク「ウイルス・ベクター」

ウイルス特集

【ページ】 Index

Page 2: 11-12 13-14Strategies 日本語版Vol.2 No.3 p1 市場最強のPCRクローニング・キット 問題点 Problem 解決法 Solution PCRクローニングでは、ライゲーションの簡便さから

PCRクローニング PCR Cloning

Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p1

市場最強のPCRクローニング・キット

問題点 Problem 解決法 Solution

PCRクローニングでは、ライゲーションの簡便さから

Taq等のPol I型酵素に見られる3'末端に付加されるAを

利用したTAクローニングが主流で、ライゲーション効

率が劣る平滑末端(Blunt)でのPCRクローニングは敬

遠されていました。

ストラタジーン社のStrataCloneTM Blunt PCR Cloning Kit は、トポイソ

メラーゼ I とCreリコンビナーゼの二つの酵素を使用した画期的な高

効率のPCRクローニング・キットです。Pfuをはじめとする3'→5'エク

ソヌクレアーゼ活性(proofreading機能)を持つ酵素による平滑末端

のPCR産物からでも、高効率でのクローニングが可能です。

StrataCloneTMに使われている新技術

ストラタジーン社のStrataCloneTM BluntPCR Cloning Kitでは、Vacciniaウィルス由来のDNAトポイソメラーゼ I とP1ファージ由来のCreリコンビナーゼの二つの酵素を使用しています。本製品に使われている StrataCloneTM

Vector Mixには、一方の末端にDNAトポイソメラーゼが充填され、もう一方の末端にloxP配列を持った二種類のベクターアームが含まれています(図1)。PCR産物がVector Mixに加えられると、DNAトポイソメラーゼ I がそれぞれの結合反応を触媒し、<ベクターアーム・PCR産物・ベクターアーム>からなるDNA直鎖が形成されます。この反応は、室温で5分ほど静置するだけで十分です。次に、このDNA直鎖をそのままの状態で、

Creリコンビナーゼを一過的に発現するコンピテント・セル(SoloPack® PCR CloningCompetent Cells)に形質転換します。形質転換されたDNA直鎖は両端にloxP配列を持つため、CreリコンビナーゼによりloxPの位置で組換反応が起こり、閉じた環状二本鎖のベクターになります。そのベクターは、そのまま大腸菌を一晩培養することにより増幅されます。インサートがある陽性のクローンは、lac Z

による青白スクリーニング法により容易に選

別することができ、10kbまでのPCR産物なら長さに関係なく、95%以上の高効率で目的のクローンが手に入ります。また、Eco RI切断部位とM13のプライマー結合部位がMCSの両側にあるため、インサートの切り出しやシークエンシングも容易に行えます。

StrataCloneTMの応用

StrataCloneTMにはTAとBluntの両方があり、これらは使用するPCR酵素により使い分けます。TAクローニング用に使用できるEasy-A®

High-Fidelity PCR Cloning Enzyme(#600400)は、古細菌由来ではあるけれども3'末端にAが付加され、Taqの6倍もの正確性があります。6kbまでのテンプレートに対応できるので、多くのPCRに応用することができます。

Blunt用には、現在販売されているPCR酵素の中で最高の正確性を持つ(Taqの20倍)PfuUltra TM II Fusion HS DNA Polymerase(#600670)と高速、高感度、高収量、高正確性の万能型PCR酵素Herculase® II Fusion DNAPolymerase(#600675)が特に有用です。前者は変異導入やライブラリーの作製等の非常に高い正確性が求められる場合に有効で、後者は一般的なPCRから難しいテンプレートを扱う際に有効です。いずれも二本鎖DNA結合ドメインが融合したFusionタイプの酵素なので、高速でのPCRが可能で、従来のPCRに比べて反応時間を1/5に短縮できます。前者は、PCR40反応分(50µl)とクローニング20反応分 が 一 つ に ま と ま っ て 非 常 に お 得 なStrataClone UltraTM Blunt PCR Cloning Kit(#240218)としても販売しています。

StrataCloneTM PCR Cloning Kits

製品 Blunt/TA 容量 カタログ# 価格(税別)

PCRクローニング・キット&PCR酵素

StrataClone UltraTM Blunt PCR Cloning Kit Blunt 20反応 (PCRは40反応) 240218 ¥73,200

PCRクローニング・キット

StrataCloneTM Blunt PCR Cloning Kit Blunt 20反応 240207 ¥54,000

StrataCloneTM PCR Cloning Kit (TA用) TA 20反応 240205 ¥54,000

PCR酵素

PfuUltra TM II Fusion HS DNA Polymerase Blunt 40反応 600670 ¥20,400

Herculase® II Fusion DNA Polymerase Blunt 40反応 600675 ¥9,200

Easy-A® High-Fidelity PCR Cloning Enzyme TA 100U 600400 ¥19,600

Creリコンビナーゼを持ったStrataClone™ Competent Cellsにトランスフォーメーション

lac Z'MCS

PCR Product

MCSlac Z'

ampicillin

pUC ori

P lac

<loxP>

StrataClone™ PCRCloning Vector

pSC-B

PCR産物をStrataCloneTM Vector Mixに加えて5分間室温で静置

Topoisomerase I

ampicillin loxPloxP MCS lac Z'

Topoisomerase I

P lac lac Z'pUC ori MCS

PCR Product

f1 ori図1 StrataCloneTM Blunt PCR Cloning Kitの仕組み

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PCR酵素と機器 PCR Enzymes & Instruments

Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p2

市場唯一の万能型PCR酵素

ストラタジーン社のHerculase®(ヘラクレス)II Fusion DNA Polymeraseは、高い正確性を持つproofreading系PCR酵素(α型)のPfuに、二本鎖DNA結合ドメインが融合したFusion型のPCR酵素です。DNAポリメラーゼは、伸長反応中にテンプレートへの結合と乖離を繰り返しながらヌクレオチドを連結させていきますが、二本鎖DNA結合ドメインが融合したDNAポリメラーゼでは、テンプレートからの乖離が起こりにくくなり、一回の結合あたりに連結できるヌクレオチドの量(pro-cessivity)が飛躍的に増大します。この結果、伸長時間の大幅な短縮や感度の向上、収量の増加等が可能になります。

大幅な時間短縮

Pfuをはじめとするproofreading系PCR酵素では伸長時間を1kbあたり1~2分必要としていましたが、Herculase®(ヘラクレス) IIFusion DNA Polymeraseではprocessivityの飛躍的な向上に伴い、1kbあたり15秒しか必要としないため(10kb以上のテンプレートでは30秒)、大幅な時間短縮が可能です(図1)。

少量のテンプレートからでも高感度で増幅

向上したprocessivityに加えて、本製品のバッファーにはArchaeMaxx® PolymeraseEnhancing Factorが添加されているため、少

量のテンプレートからでも効率よく増幅することができます(図2)。

優れた増幅能力

向上したprocessivityとArchaeMaxx® Factorで裏付けされた優れた増幅効率により、他社製品では不可能な短い伸長時間でも本製品では十分な収量が得られます(図3)。このため、少量のテンプレートから十分な収量を得るには、非特異的な増幅やエラーを増やしてしまう可能性のあるサイクル数の増加ではなく、伸長時間の延長で対応できます。本製品では、最長で12kbのテンプレートの増幅が可能です。

GCリッチ等の難しいテンプレートからの増幅

本製品のバッファーはArchaeMaxx® Factorの添加に加えて、ストラタジーン独自の組成

で最適化しているため、GCリッチな難しいテンプレートでも楽に増幅できます(図4)。また、DMSOが別に添付されているので、反応条件の最適化を容易に行うことができます。

卓越した正確性

本製品はPfuをベースにしているため正確性が非常に高く(Taqの約6倍)、現在市販されている酵素の中では、ストラタジーン社のPfuUltra TM II Fusion HS DNA Polymerase(Taqの約20倍)に次いで2番目の正確性があります。短い伸長時間でも正確性を落とすことなく、高感度、高収量での増幅が可能です。

Accuracy of Proofreading DNA Polymerase30.00

25.00

20.00

15.00

10.00

5.00

0.00

PfuUltra™ IIPolymerase

Herculase® IIPolymerase

Ph DV V K PU Taq

Accu

racy

(x1

05 )

図5 市販されている各種酵素との正確性の比較ストラタジーンでは、確立された方法論により各酵素の正確性を導き出しており、一貫してこの方法を用いています。Cline, J. et al. (1996) Nucleic Acid Research,Vol.24,No.18:3546-3551

高速、高感度、高収量、高正確性の万能型PCR酵素

問題点 Problem 解決法 Solution

市場では様々なPCR酵素が販売されていますが、

そのほとんどが正確性や増幅性などの目的ごとに性能が特化していたり、逆に幾つかの酵素を混ぜ合わせることで幅広い用途に使用できるけれども各要素における性能が低下しています。

ストラタジーン社のHerculase®(ヘラクレス)II Fusion DNA Polymeraseは、

反応速度、感度、収量、増幅性、伸張性、正確性のいずれの要素においても高い性能を示す万能型のPCR酵素で、ほとんど全てのPCRに使用することができ

ます。独自のバッファー組成に加えて、DMSOが別に添付されているため、難

しいテンプレートでのPCRに特に有効です。

PfuUltra™ II & Herculase II Common proofreaderTaq

52分

2時間30 分2時間30 分

1時間17 min

6時間52分増幅なし

2 時間40分

13時間44分増幅なし

2.6

kb6

kb12

kb

Tem

plat

e le

ngth

Total protocol length

図1 Fusion仕様による可能な短縮時間Herculase® II & PfuUltra TM II Fusionポリメラーゼ、他のProof-Reading機能を持つポリメラーゼ、Taqポリメラーゼにおいて、各酵素が推奨する伸長時間を用いた、2.6Kb、6Kb、12Kbの断片を増幅するための30サイクルからなる3-ステップPCR反応の所要時間を比較しました。

3002001005010510

Herculase® IIEnzyme PlPh/iP 50 K

3002001005010510

3002001005010510

3002001005010510

3002001005010510ng

3.9 kb

図2 各酵素における検出限界Ha1AT遺伝子(3.9kb)を用いて、様々なテンプレート量からの増幅を比較したところ、Herculase® IIでは、少量のテンプレートからでも十分な増幅が得られました。

Seconds / kb 15 30 45 60 15 30 45 60 15 30 45 60 15 30 45 60

Herculase® IIEnzyme Ph/iP 50 W

6 kb

IGFB FMR1 HTR MMZ5 IGFB FMR1 HTR MMZ5 IGFB FMR1 HTR MMZ5

Herculase® II Enzyme Ph/iP APGC

図4 GCリッチなターゲットにおける増幅IGFB: Human Insulin-like Growth Factor (79% GC,250bp)、FMR1: Fragile Mental Retardation Syndromeprotein (84% GC, 300bp)、HTR: HydroxytryptomineReceptor C2 fragment (65% GC, 540bp)、MMZ5: ZincFamily Member 5 protein (68% GC, 562bp)。Herculase® IIでは84% GCでも十分な増幅が得られています。

図3 短い伸長時間でも優れた収量1kbあたりの伸長時間を変えて、6kbのテンプレートを増幅したところ、Herculase® IIでは15秒/kbでも十分な収量が得られました。

製 品 容 量 カタログ# 価格(税別)

Herculase® II Fusion DNA Polymerase 100U 600675 ¥9,200

(dNTPs付き) 500U 600677 ¥41,600

(dNTPs付き) 1,000U 600679 ¥79,600

Herculase®(ヘラクレス)II Fusion DNA Polymerase

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タンパク質の機能解析用ベクター Functional Analysis Vectors

Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p3

アデノウイルスによる遺伝子導入とTAPによる相互作用タンパク質の精製

問題点 Problem 解決法 Solution

相互作用している未知のタンパク質を精製する際に、FLAGやGSTを用いたプルダウン法では十分な純度が得

られませんでした。また、従来のTAP法では高純度で

の精製は可能でも、使用できる細胞株が限られていたり、タンパク質の発現が低レベルであったりと、様々な問題点がありました。

ストラタジーン社のInterPlayTM Adenoviral TAP Systemは、アデノウイ

ルスを用いた遺伝子導入システムであるAdEasyTM XL Adenoviral

Vector Systemと弊社独自のTandem Affinity Purification (TAP) システ

ムとを組み合わせたシステムで、非分裂細胞を含む幅広い哺乳類細胞への高効率での遺伝子導入、高レベルでのタンパク質発現、相互作用タンパク質の高純度での精製を可能にしました。

STREPTAVIDIN-BINDING PEPTIDE (SBP)

PROTEIN OF INTEREST WITH INTERACTING PARTNER

STREPTAVIDIN RESIN

CALMODULIN RESIN

CALMODULIN-BINDING PEPTIDE (CBP)

CONTAMINANTS

InterPlayTM Adenoviral TAP System

製 品 カタログ# 内容 価格(税別)

InterPlayTM Adenoviral N-Terminal TAP System 240213 N末用#240214を含む一式 ¥374,000

InterPlayTM Adenoviral N-Terminal TAP Vectors 240214 N末用シャトル・ベクターのみ ¥116,000

InterPlayTM Adenoviral C-Terminal TAP System 240215 C末用#240216を含む一式 ¥374,000

InterPlayTM Adenoviral C-Terminal TAP Vectors 240216 C末用シャトル・ベクターのみ ¥116,000

図1 TAP法の模式図

TAP ShuttleVector

TAP ShuttleVector

pAdEasy-1Vector

Pac I

Pac I

Pme I

LITR

RITR

RITR

P CMV

Encapsidationsignal (ES)Kanr

poly A

タグの付いた目的の遺伝子

MCSOri目的の

遺伝子の

クローニング

大腸菌内

での

相同組換え

AD-293

細胞で

ウイルスの

産生

直鎖化した組換えアデノ

ウイルス・プラスミド

Pac I

Pac I

LITR ESKanr

P CMV

poly A

タグの付いた目的の遺伝子

Ori

Ori Ampr

Pac I

Pme Iで直鎖化

BJ5183-AD-1細胞にトランスフォーメーション

(Kanrで選別)

相同組換え部位

組換えプラスミドを増幅した後、Pac Iで切断

AD-293細胞にトランスフェクション

LITR poly A Adenoviral DNA RITRCMV

promoterタグの付いた目的の遺伝子

ESPac I Pac I

Left Arm Right A

rm

Left A

rm Right Arm

相互作用タンパク質の精製

ストラタジーン社の In terP lay TM

Adenoviral TAP System で採用されているTAP法は、InterPlayTM MammalianTAP Systemで用いられているTAP法と同じ原理で、哺乳類細胞で発現させた目的のタンパク質(ベイト)と相互作用するタンパク質を、結合を乱さずに回収することができます。この斬新な精製方法では、まず2つ

のアフィニティー・タグ(SBP:ストレプトアビジン結合ペプチドとCBP:カルモジュリン結合ペプチド)と融合したベイトを哺乳類細胞で発現させます。次にストレプトアビジン・レジンとカルモジュリン・レジンによる二段階の精製を行います(図1)。これらの洗浄と溶出は非常に穏やかなので、タンパク質間の相互作用に対する影響は最小限に抑えられます。また、SBPとCBPはそれぞれビオチンとEGTAによりアフィニティー・レジンから容易に溶出されるため、タンパク質分解酵素を用いて溶出する必要がなく、相互作用しているタンパク質の複合体を高純度で精製することが可能です。

アデノウイルスによる遺伝子導入

InterPlayTM Adenoviral TAP Systemsは InterPlayTM Mammalian TAPSystemsのTAPタグとアデノウイルス遺伝子導入システムであるAdEasyTM

XL Adenoviral Vector Systemを組み合わせたシステムです。アデノウイルス・ベクターは一般的なトランスフェクション法と比べ、分裂・非分裂細胞に関係なく、幅広い哺乳類細胞に目的遺伝子を導入することができます。組換えアデノウイルスは高い力価(トランスフェクション後107~108pfu/ml)をもたらすことから、発現タンパク質の高い収量を実現します。

AdEasyTM XL Adenoviral VectorSystemにはヒト・アデノウイルスやヒト由来の細胞株を使用するため、ヒト由来のタンパク質を大量に発現することができ、正確な翻訳後修飾や折りたたみ構造を再現します。本システムでは pTAP shuttle vectorに最大6.6kbのDNAを組み込むことができ、アデノウイルスはepichromosomalに留まることから、ホスト細胞の遺伝子を活性化あるは不活性化することはほとんどありません。

図2 InterPlayTM Adenoviral TAP Systemのメカニズム

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タンパク質の機能解析用ベクター Functional Analysis Vectors

Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p4

アデノウイルスの精製と力価測定キット

問題点 Problem 解決法 Solution

ウイルスをベクターとして遺伝子導入を行う際、実験結果はウイルス粒子の濃度や力価により大きく左右されます。従来の超遠心によるCsClの密度勾配を用いた

精製方法や、プラーク形成による力価測定方法では、時間と手間が大幅にかかり、正確性も欠けていました。

ストラタジーン社のAdEasyTM Virus Purification Kitを用いると、注射器

やフィルターを用いた簡単方法で、わずか2~3時間でウイルス粒子を

精製することができます。また、新製品AdEasyTM Viral Titer Kitを用い

ると、免疫染色したアデノウイルス粒子のヘキソン・タンパク質を検出することで、アデノウイルスの力価を簡単に測定することができます。

メンブレンを用いたクロマトグラフィーによるアデノウイルス精製システム

ウイルスをベクターとして遺伝子導入を行う際、ウイルス粒子の濃度や力価により実験結果が大きく左右されます。従来の超遠心によるCsClの密度勾配を用いた精製方法では、アデノウイルスの精製と濃縮に12~48時間もかかってしまい、大きな負担になっていました。ス ト ラ タ ジ ー ン 社 の AdEasyTM Virus

Purification Kitを使用することで、面倒だった精製と濃縮がたったの2~3時間で完了できます。操作手順も簡素化されており、凍結融解を3回ほど繰り返して感染細胞を溶解した後、Benzonase核酸分解酵素で細胞由来の核酸を分解し、0.45µm Filterで濾過します。濾過したウイルス粒子の懸濁液から、ウイルス粒子が特異的に結合するSartbind® Filter Unitと溶出用バッファーを用いて、アデノウイルス粒子の吸着・溶出をおこない、精製が完了します。この後、付属の遠心濃縮装置を用いて、更なるウイルス粒子の濃縮や、保存用などの異なるバッファーへの再溶出が可能です。本製品を用いて精製、濃縮したアデノウイ

ルス粒子は、60mlの培養細胞から最大で1~3×1012個/mlの力価が得られます(0.025 EU(endotoxin units)/ml以下)。これは、従来の超遠心によるCsClの密度勾配を用いた方法と同等以上の精製度です。力価の測定はストラタジーン社のAdEasyTM Viral Titer Kit (#972500)を用いると容易に行うことができます。

実験の規模に合わせたフレキシブルな製品構成

AdEasyTM Virus Purification Kitは、実験の規模に応じて次の3つの製品の中から選ぶことができます。

• 2×100 (#240243): 60-100mlの培養細胞からの小規模の精製を2回行えます。

• 5×100 (#240244): 60-100mlの培養細胞からの小規模の精製を5回行えます。

• 500 (#240245): 500mlの培養細胞からの大規模での精製を1回行えます。本製品では、濾過する際にMasterflex® L/S 16-size tubeを使用できるペリスタポンプ(Peristalt icpump)が必要になります。

免疫染色によるアデノウイルスの力価測定

アデノウイルスの力価を測定する際に、従来のTCID50 (50% Tissue Culture InfectiousDose) 法やプラーク形成法では、結果が得られるまでに10日もかかってしまいます。ストラタジーン社のAdEasyTM Viral Titer Kitは、免疫染色したアデノウイルス粒子のヘキソン(カプシドを形成するタンパク質)を検出することで、アデノウイルスの力価を簡単に測定することができ、全実験工程が24~48時間で完了できます。操作手順は、細胞への感染、感染細胞の固定

と染色、ウイルス粒子の定量の3つの段階に分けられます。まず、AD-293細胞もしくはHEK293細胞(ストラタジーンでは、HEK293細胞由来で細胞の接着性が向上しているAD-293細胞株の使用を推奨しています)に、10-2~10-6の範囲で希釈系列を作製したアデノウイルスのストックを感染させ、24~48時間培養します。

次に、100%メタノールで固定した後、マウス抗ヘキソン抗体を加えて37℃で1時間培養し、さらにヤギ抗マウス二次抗体を加えて37℃で1時間培養します。ヤギ抗マウス二次抗体にはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)が結合しているので、金属増感性の基質であるDAB(diaminobenzidine)を加えると、HRPの酵素触媒反応により、アデノウイルス粒子のヘキソンを持つ感染細胞だけが褐色を呈します(図1)。最後に、褐色を呈している感染細胞の数を

一般的な顕微鏡下で計測して、力価を算出します。また、pShuttle-IRES-hrGFP-1ベクターやpShuttle-IRES-hrGFP-2ベクターを使用すると、アデノウイルスの力価を蛍光顕微鏡やフロー・サイトメトリーで測定することができます。本製品では、24 wellのプレートを使用した

場合、120 well分の免疫染色反応を行えます。

図1 免疫染色されたアデノウイルス感染細胞

AdEasyTM Adenoviral Vector Systems

製 品 容量 カタログ# 価格(税別)

AdEasyTM Virus Purification Kit 2回×100ml cultures 240243 ¥94,000

5回×100ml cultures 240244 ¥208,000

1回×500ml cultures 240245 ¥188,000

AdEasyTM Viral Titer Kit 120wells (24wellプレートを使用) 972500 ¥92,000

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コンピテント・セル Competent Cells

Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p5

低温で発現することによりタンパク質の溶解性を向上させるコンピテント・セル

問題点 Problem 解決法 Solution

大腸菌を用いたタンパク質発現システムにおいて、最も多い問題点は発現タンパク質の凝集体形成による不溶性です。このため、より時間がかかり、収量も少ない酵母や昆虫細胞、哺乳類細胞などの発現システムに移行せざるを得ませんでした。

ストラタジーン社のArcticExpressTM Competent Cellsは、好冷

細菌(Oleispira antarctica)由来の分子シャペロンCpn60およ

びCpn10の働きにより、発現タンパク質の凝集体形成を防ぎ、

不溶性の問題を解決します。

大腸菌を用いたタンパク質発現システムにおける問題点

大腸菌(E. coli )は、ヒトなどの哺乳類由来の異種タンパク質でも、迅速かつ手軽に多量のタンパク質を生産することができるため、組み換えタンパク質の発現実験に多用されています。しかし、大腸菌で異種タンパク質を発現させた場合、ポリペプチド鎖が正しく折りたたまれない事が多々あり、結果としてこれらのタンパク質は不活性を呈するため、構造や機能の解析に用いることが出来なくなります。また、ポリペプチド鎖が正常に折りたたまれなかったタンパク質は(特に過剰にタンパク質を発現させた場合)、近隣のポリペプチド鎖と疎水性領域で結合し、タンパク質凝集体(Inclusion bodies)を形成してしまいます。凝集体の精製は容易ですが、in vitro で折り畳み直す(refolding)事は容易ではなく、必ずしも活性のあるタンパク質が得られるわけではありません。

低温での発現に適応したシャペロニン

タンパク質の正常な折り畳みには、分子シャペロンが関与していることが知られています。分子シャペロンは、当初、タンパク質の折り畳みを助ける一群のタンパク質と定義されていましたが、現在では折り畳みだけでなく、様々な細胞機能の制御に関与していることが明らかにされています。凝集体を形成するタンパク質を低温でゆっ

くり発現させると、正常に折り畳まれる場合があることが一般的に知られています。これは過剰発現を抑え、ポリペプチドの密度を下げることで凝集を防いでいると考えられています。しかし、中温細菌である大腸菌をそのまま低温でのタンパク質発現に用いた場合、増殖速度やポリペプチドの合成速度が減速し、さらに折り畳みに必要な分子シャペロンの活性が低下するため、活性を持った目的のタンパク質の発現量が大きく減少してしまいます。ストラタジーンの A r c t i c E x p r e s s T M

Competent Cellsは、好冷細菌(Oleispiraantarctica)由来のシャペロニンCpn60およびCpn10遺伝子を発現するため、低温でのタ

ンパク質発現を可能にしました。これらのシャペロニンは、4~12℃の条件下で高いタンパク質の折り畳み活性を持ち、完全に、もしくは部分的にしか折り畳まれていないタンパク質の疎水性領域に結合することで、正しく折り畳まれて活性を持つ目的のタンパク質の発現を可能にします(図1)。

豊富な製品構成と関連製品

ArcticExpressTM Competent Cellsでは、大腸菌と目的のタンパク質の由来生物種とのコドン使用頻度の違いを補正するためのtRNAを発現する、CodonPlus®仕様も販売しています。RILやRPはアルギニン(R)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、プロリン(P)の略号で、目的の遺伝子がAT過多の場合RILを、GC過多の場合RPを使用します。これらCodonPlus®の詳細に関しては、Strategies日本語版Vol.2No.2のp13~14を参照してください。本製品では、CodonPlus®有り(2種類)と

無しのそれぞれで、lac UV5プロモーターで誘導されるT7 RNA ポリメラーゼを持つ溶原性のファージDE3があらかじめ大腸菌内に内在している(DE3)仕様も用意しています。これにより、pETベクター等の様にT7プロモーターで発現が誘導されるシステムと、T7以外のプロモーターで発現するシステムの両方で使用できます。本製品で使用可能なベクター類の一つであ

るVariFlexTMベクター・システムは、タンパク質全体の負の電荷を増加させることにより、タンパク質の可溶性を向上させるSETタグ(Solubility Enhancement Tags)や精製用のSBPタグ(Streptavidin Binding Peptide Tag)を、pETをベースにしたプラスミドに付加させた大腸菌でのタンパク質発現システムです。SETとの併用により、可溶性が向上する場合もあります。VariFlexTMベクター・システムの詳細に関しては、Strategies日本語版Vol.2No.2のp12を参照してください。

- - RIL pGBM RIL RPCpn60/Cpn10 + + + + + + - - + +

Temp (°C) 30 13 30 13 30 13 30 13 30 13

Cpn60

X-21p

CodonPlus®

Cpn10

188kDa

62kDa

49kDa

38kDa

28kDa

18kDa14kDa

1 2 3 4 5

製 品 発現 CodonPlus® 容量 カタログ# 定価プロモーター (税別)

ArcticExpressTM Competent Cells T7以外 なし 10×0.1ml 230191 ¥29,600

ArcticExpressTM (DE3) Competent Cells T7 なし 10×0.1ml 230192 ¥29,600

ArcticExpressTM (DE3) RIL Competent Cells T7 RIL(AT過多)10×0.1ml 230193 ¥29,600

ArcticExpressTM (DE3) RP Competent Cells T7 RP(GC過多)10×0.1ml 230194 ¥29,600

ArcticExpressTM RIL Competent Cells T7以外 RIL(AT過多)10×0.1ml 230195 ¥29,600

ArcticExpressTM RP Competent Cells T7以外 RP(GC過多)10×0.1ml 230196 ¥29,600

ArcticExpressTM Competent Cells

図1 低温での発現により増加した溶解性タンパク

質の発現量1. ArcticExpressTM +CodonPlus®なし2. ArcticExpressTM +CodonPlus®-RIL3. ArcticExpressTM +CodonPlus®用の骨格ベクターpGBMのみ

4. BL21-CodonPlus®-RIL5. ArcticExpressTM +CodonPlus®-RP

疎水性タンパク質X-21pを上記の条件下で、それぞれ13℃と30℃で発現させ発現量を比較しました。シャペロニンCpn60 と Cpn10の発現が13℃で増加し、それに伴って可溶性のX-21pの発現が増加しています。また、CodonPlus® の骨格ベクター(pGBM)の存在が、tRNA遺伝子(RIL/RP)の有無に関わらず、シャペロニンの働きを妨げないことが分かります。

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細胞生物学 Cell Biology

Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p6

生分解性ポリマーにより毒性を低く抑えた斬新なトランスフェクション試薬

ストラタジーン社の S a t i s F e c t i o n T M

Transfection Reagentは、全く新しいカチオン(陽イオン)性ポリマー(重合体)を用いたトランスフェクション試薬で、血清が含まれる条件下でも非常に広範な培養細胞株に対して、一過性および安定化株の作成を可能にします(表1)。本製品の主要成分であるポリマーは、ポリプレックスと呼ばれる複合体を形成することによりDNAを濃縮し、細胞の飲食作用(endocytosis)により細胞内へ取り込まれます。このポリプレックスは、エンドソームの破裂を誘導し、リソソームによる導入するDNAの分解を防ぎます。このポリプレックスを形成するポリマーは、継続的に細胞内のpHにさらされることにより、毒性の低いモノマー(単量体)へと還元されます。還元されたモノマーは簡単に細胞外へ分泌されるため、細胞に対する毒性が低下し、結果として細胞の生存率を向上させます(図1)。

トランスフェクションが簡単な細胞と困難な細胞

SatisFectionTM Transfection Reagentを使用することにより、トランスフェクションをしやすい細胞株では、より高効率での遺伝子導入やタンパク質発現が可能になります。また、トランスフェクションが難しいとされている細胞株や、初代培養細胞(primary cells)では、顕著な遺伝子導入効率の改善が可能です。一例として、現在最も広く使用されている他社製品と比べて、HUVECとHepG2細胞株では優れた導入効率が得られました。

大幅なコスト削減を実現

遺伝子の機能解析の研究が盛んに行われるようになったことで、様々な細胞に遺伝子導入を効率よく行う必要性が高まってきています。特に多くの細胞にトランスフェクションを行う場合、反応一回あたりに要するコストは、試薬を選定する際の大きなポイントになります。先述の他社製品と比較した場合、SatisFectionTM Transfection Reagentは、使用する試薬量を3分の1程度にまで減らすことが可能です。価格では約70%の節約となります。また、本製品の大きな特徴であるDNA濃縮力により、通常のプラスミドDNA量の65%で同等の導入効率が得られます。本製品の詳細については下記のウェブサイ

トを参照してください。

http://www.stratagene.com/satisfection

生分解性ポリマーを利用した低毒性のトランスフェクション試薬

問題点 Problem 解決法 Solution

遺伝子の機能解析の研究が盛んに行われるようになり、様々な細胞に遺伝子導入を効率よく行う必要性が高

まってきていますが、現在市販されているトランス

フェクション試薬は細胞毒性が高く、全ての細胞株に使用できるわけではありません。

ストラタジーン社のSatisFectionTM Transfection Reagentは、生分解性

ポリマーを利用した全く新しいトランスフェクション試薬で、既存の他の試薬に比べて、より幅広い細胞株に対して高効率での遺伝子導入が行え、細胞毒性も大幅に低くなっています。

表1 SatisFectionTM Transfection Reagentが有効であると確認できている細胞株

図1 低い細胞毒性により向上したホスト細胞の

生存率AD293細胞にpExchange-luciferaseベクターをトランスフェクションし、24時間後に細胞の生存率を比較しました。A:トランスフェクションしていないコントロール用のAD293細胞、B:他社製品、C:SatisFectionTM

Transfection ReagentSatisFectionTM(C)では、コントロール(A)と同程度の生存率が得られ、他社製品(B)で見られるようなアポトーシスの兆候は観察されませんでした。

製 品 容 量 カタログ# 価格(税別)

SatisFectionTM Transfection Reagent 0.3ml 204121 ¥29,600

0.75ml 204122 ¥54,800

2×0.75ml 204123 ¥86,800

SatisFectionTM Transfection Reagent

A

B

C

208F DAOY NCIH460

293 DU-145 NIH3T3

A549 HeLa PC-3

B16-F0 HepG2 PtK2

B16-F10 HT-1080 RPMI-1846

C6 HUVEC SK-OV-3

CaCO-2 LnCap SVEC

ChoK1 MCF-7 T24

Cos-7 MDA-MB-231 U-2 OS

CT26WT MDCK WEHI

CV1 MS1

広範な培養細胞株に対して高い導入効率が確認され

ています。

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Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p7

Tech Talkストラタジーン・ジャパンのテクニカルサービスが提供

する「Tech Talk」では、分子生物学での基本的な技術や新しいテクノロジー、知っていそうでも実は曖昧にな

りがちな知識などについて、各回一つのトピックを取り

上げ、出来るだけ深く掘り下げて紹介していきます。

今回のTech Talkではウイルス・ベクターを取り上げます。タンパク質の機能を理解するためには、目的のタンパク質を発現する遺伝子を本来の細胞や生物個体に導入し、発現させる必要があります。遺伝子導入方法の分類の仕方は幾つかありますが、ここでは、ウイルス・ベクターを用いる方法と、非ウイルス・ベクターを用いる方法に大別して考えていきます。

非ウイルス・ベクターを用いた遺伝子導入非ウイルス・ベクターを用いる方法には、リン酸カルシウムやカ

チオニック・リポソームなどを用いる化学的方法、エレクトロポレーションや遺伝子銃などを用いる物理的方法、細胞融合や特異的な受容体を用いる生物学的方法などがあります。非ウイルス・ベクターを用いる方法は古くから用いられていたため、様々な方法が生み出

されています。この中から、標的細胞の種類(株化、初代培養、浮遊、付着など)、導入する遺伝子の種類(DNA、siRNA、タンパク質など)、発現形態(一過性か安定発現か)などの自分の実験に対するニーズにより、適切な遺伝子導入方法を選択します。

ウイルス・ベクターを用いた遺伝子導入ウイルス・ベクターを用いた遺伝子導入方法は、ウイルスが元々

持っている、宿主細胞への進入機能を利用して、ウイルスのゲノムと共に目的の遺伝子を細胞内に導入する方法で、非常に高い導入効率が得られます。先の非ウイルス・ベクターを用いた遺伝子導入方法では十分な効率が得られなかった場合や、最終的に生体モデルでの研究を展開していく場合などにとても有効な方法です。現在、一般的に使われているウイルス・ベクターは、レトロウイルス・ベクター、アデノウイルス・ベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルス・ベクターなどですが、センダイウイルスやヘルペスウイルスも使用されています。非ウイルス・ベクターの場合と同様に、標的細胞の種類(分裂、非分裂、接着、浮遊など)と発現形態(一過性か安定発現か)などの自分の実験に対するニーズにより選択します。表1に代表的なウイルス・ベクターの特徴と、それぞれのウイルスにおけるストラタジーン製品の特徴をまとめてありますので、ウイルス・ベクターの選択の参考にして下さい。

レトロウイルス(MMLV) アデノウイルス AAV(アデノ随伴ウイルス)

ウイルスの概要ゲノムのタイプ 一本鎖RNA 線状二本鎖DNA 線状一本鎖DNAゲノムの大きさ 10,690塩基 約36kb 約5,000塩基ウイルス粒子の安定性 不安定 安定 非常に安定野性型での病原性 有 有 無エンベロープの有無 有 無 無

遺伝子導入導入可能な大きさ 9kbまで 8kbまで 4.5kbまで分裂細胞への導入 可 不適 不適非分裂細胞への導入 不可 可 可接着細胞への導入効率 中 高 中浮遊細胞への導入効率 中 低 低染色体への組み込み 有 無 低頻度遺伝子発現 安定 一過性 安定生体内への導入 不可 可 可免疫原性 無 有 有

ストラタジーン製品製品名 ViraPort® Retroviral Gene Expression System AdEasyTM Adenoviral Vector System AAV Helper-Free System

システム概略図

特徴

hrGFPとβ-ガラクトシダーゼの二つのレポーター遺伝子や、様々な種類のレトロウイルス・ライブラリー等の幅広い選択肢により、特定の機能について迅速かつ簡単なスクリーニングを可能にします。全ての cis と trans エレメントが3つのプラスミドに分散されているため、他のレトロウイルスのシステムより安全です。また、宿主ゲノムへの組込みにより、安定した形質導入細胞株の作製が可能です。

目的の発現カセットをシャトル・ベクターへサブクローニングした後、E. coliでの相同組換えによりアデノウイルスへ伝達されるという二段階の方法を用いることで、組換えアデノウイルス・ベクターの作製を簡単にしました。従来のシステムでは数週間かかった工程が、一度の形質転換と一晩のインキュベーションだけで可能になります。TAPとの組み合わせも可能で、相互作用タンパク質の共精製への応用も可能です。

組換え複製能欠損型のAAVウイルス粒子を産生するために、溶解段階のアデノウイルス遺伝子を含むpHelperベクターを使用しているため、ヘルパーウイルスの共感染が不要です。高い感染効率により、様々な非分裂細胞において、長期にわたる安定した発現を可能にします。宿主細胞のゲノムへの組込みは頻度が非常に低いため、分裂細胞で安定した発現を行うためには、高レベルで発現する細胞を選別して培養することが必要です。

amp

BGH pA

IRES

P CMV

pUC ori

pVPack-GP

hisD

gag-p

ol

pVPack-VSV-G

VSV-G

pVPack-Eco

Eco

pVPack-Ampho

Ampho

pVPack-10A1

10A1

P C

MV

IRES

BGH pA

amp

puro

pUC ori

pVPack-env

pFB-Neo-lacZ Control Vector

5′ LTR

3′ LTR

amp

p

BR32

2 or

i

splice donor

ψ +

lacZ

hrGFP

IRES

Luc

neo

pFB-hrGFP Control Vector

pFB-Luc Control Vector

gag

transcription initiation

pFB Retroviral Vectors

MCS

MCS

IRES neo

pFB-Cloning Vector

pFB-Neo Cloning Vector

splic

e ac

cept

or le

ft ar

m h

omol

ogy

right arm homology

Ad

5 (E

1/E3

-dele

ted)

pBR322 ori

pADEasy-1 Vector

amp

kan

pBR322 ori

MCS

IRES

IRES

P CMV

hrGFP

hrGFP

P CMV

P CMV

MCS

MCS

MCS

SV40 pA

SV40 pA

SV40 pA

3x HA

3x FLAG

pShuttle-IRES-hrGFP-2 Vector

pShuttle-IRES-hrGFP-1 Vector

pShuttle-CMV Vector

pShuttle Vector

Pme I

Pac I

AdEasy pShuttle Vectors

left arm homology

L-ITR

R-ITR

P CMV

SV40 pA

pShuttle-CMV-lacZ VectorlacZ

righ

t ar

m h

omol

ogy

ESPac I

f1 ori

7.3 k bp AAV-RCam

p

pUC ori

AAV-2 cap

AAV-2 rep

pCMV-MCS

P CMV

hGH

pA

β-globin intron

amp

PUC ori

f1 ori

MCS

pAAV-MCS Cloning Vector

pAAV-IRES-hrGFP Cloning Vector

3x FLAG®

IRES hGHpA

hGHpA

hrGFP

MCS

MCS

pAAV-lacZ Control Vector

hrGFP

β-globin intron

β-globin intron

β-globin intron

hGH pA

SV40 pAlacZ

pAAV-hrGFP Control Vector

R-ITR

f1 ori

L-ITR

P C

MV

pUC ori

pAAV Vectors

amp

f1 ori

pUC

ori

a

pHelper

V

E4

E2A

hGH intron

表1 代表的なウイルス・ベクターの特徴とストラタジーンのウイルス・ベクター製品

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Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p8

ここからは、ウイルスの感染のメカニズムと、表1で取り上げたウイルス・ベクターの用途や由来となるウイルスの特徴について説明していきます。

ウイルスとは基本的にはタンパク質と核酸からなる粒子で、細胞質をもたず、

代謝と自己複製を宿主細胞の機能に完全に依存。宿主によって動物ウイルス、植物ウイルス、細菌ウイルス(バクテリオファージ)に大別され、ゲノムの種類(DNA/RNAおよび一本鎖/二本鎖)で分類されます。基本構造は、核酸(RNAまたはDNA)とタンパク質から成るコアを、カプシドと呼ばれるタンパク質の殻で包んだ粒子で、数十nmから数百nmの大きさを持ちます(図1)。カプシドは、電子顕微鏡で観察可能な形態学的な構造上の基本単位であるカプソメアの集合体で、カプソメアは一般に3ないし6個のペプチドで構成されます。このコアとカプシドを併せてヌクレオカプシドと呼び、エンベロープをもたないウイルスは、ヌクレオカプシドが完全な粒子になります。ウイルスの中にはカプシドの外側に、脂質二重膜で形成されるエンベロープ(外套)を持つ物がありますが、これは宿主の細胞から出芽する際に宿主の細胞質膜や核膜の一部をまとったものであると考えられています。エンベロープ上には、スパイクあるいはスパイクと呼ばれる糖タンパク質が突出していることがあり、これはウイルスの遺伝子から作られた、そのウイルス独自のタンパク質であり、宿主細胞に吸着・侵入したり、宿主の免疫機構から逃れたりするための生理的な作用があります。

ウイルス感染のメカニズムウイルス増殖は、まず宿主細胞の表面にウイルスが吸着すること

で始まります。ウイルスが細胞に接触すると、ウイルスの表面にあるタンパク質が宿主細胞の表面に露出しているいずれかの分子(レセプター)を標的にして吸着します。ウイルスが感染できるかどうかは、そのウイルスに対するレセプターを宿主細胞が持っているかどうかに依存します。次に細胞内への侵入が起こりますが、ウイルスのエンベロープが宿主の細胞膜と融合し、粒子内部のヌクレオカプシドが細胞質内に送り込まれる膜融合タイプ(エンベロープを持つウイルス)や、宿主細胞の飲食作用(エンベロープを持たないウイルス)、吸着したウイルス粒子の尾部にある管を通しての移動(バクテリオファージ)などがあります。カプシドごと細胞内に侵入したウイルスは、一旦カプシドが分解されてウイルス核酸が宿主細胞質に遊離します。ウイルス核酸の複製メカニズムはウイルスのタイプにより大きく異なりますが、基本的には、核酸の複製とウイルス・タンパク質の合成が別々に行われた後、カプソメアが核酸を包み込むようにしてカプシドを形成し、ヌクレオカプシドが作られます。その後、出芽や宿主細胞が死ぬことにより、宿主細胞外に放出されます。

レトロウイルス

プラス鎖一本鎖RNAをゲノムとし、直径が約0.1µmのエンベロープをもち、

内側に直径40~60nmのヌクレオカプシドをもつウイルス。このウイルスが

感染した細胞では、RNAゲノムからウイルスの持つ逆転写酵素により合成さ

れたウイルスDNAが染色体に組み込まれます。遺伝子治療用ベクターには、

レトロウイルスの一種であるマウス白血病ウイルス(MMLV : Molony Murine

Leukemia Virus)を改変し、自己増殖能を奪ったものが広く用いられていま

す。レトロウイルスは大別して、オンコウイルス(Oncovirus)、レンチウイ

ルス(Lentivirus)、スプーマウイルス(Spumavirus)の3亜科に分類され、

先述のMMLVはオンコウイルスに属します。一般的に、レトロウイルス・ベ

クターはオンコウイルス由来のウイルス・ベクターを指し、レンチウイル

ス・ベクターと区別するためにオンコレトロウイルス・ベクターと呼ばれる

こともあります。

ゲノムの基本構造は 、両端に存在するLTR(Long Terminal Repeat)と、そ

の間に挟まれるgag、pol、env、および5'側のLTRとgagの間のψ(gagの塩基

配列の一部も含む)で構成されています。LTRは染色体DNAへの組込みに重

要な役割を果たし、プロモーター/エンハンサー活性が存在します。gag、pol、

envはそれぞれウイルス蛋白質の構造蛋白質、逆転写酵素、エンベロープ蛋

白質をコードしており、ψはパッケージング・シグナル配列と呼ばれ、ウイ

ルスゲノムRNAがウイルス粒子の中に包み込まれるときに必要な配列です。

細胞質で逆転写されたレトロウイルスのDNAは宿主の核膜孔を通過できない

ため、染色体に組み込まれるためには核膜が消失する細胞分裂が必要不可欠

になります。このため、レトロウイルス・ベクターは、非分裂系の細胞への

遺伝子導入には不適ですが、それ以外の細胞で、安定的に遺伝子発現を行い

たいときに最適です。

アデノウイルス

252個のカプソメアから成る正20面体のカプシドを形成し、内部には塩基性

タンパク質からなるコアと,それをとりまくように直鎖二本鎖DNAがゲノム

として存在します。直径が約70~90nmの球状粒子で、エンベロープは持っ

ていません。20面体の各頂点に位置する12個のカプソメア(ペントン)には

先端に小粒子のあるスパイクが突出し、感染する細胞に吸着します。ヒトの

アデノウイルスは、主にカプソメアを構成するヘキソン・タンパク質上のエ

ピトープが決定している中和反応により、51の血清型に分けられ、更に血球

凝集反応の性格などによりA~Fの6群に分類されます。B群とE群は上気道炎

と角結膜炎、D群は角結膜炎、F群は胃腸炎、B群の11型は急性出血性膀胱炎

との関連が解明されています。

遺伝子導入に用いられるアデノウイルスは、ウイルスの増殖に必須な初期遺

伝子であるE1AおよびE1B遺伝子を欠失させてあるため、これらのE1A、E1B

を恒常的に発現している293細胞内でしか増殖できないよう設計されていま

す。E1A により全てのアデノウイルスのプロモーターが活性化されるため、

通常の実験に用いる培養細胞や動物個体内ではウイルスの増殖に伴う細胞死

は起こりません。先のE1A、E1Bとウイルスの増殖に必須では無いE3領域を

欠損させることで、約8kbの外来遺伝子を組み込むことができます。アデノ

ウイルス・ベクターは、染色体には組み込まれないため、一過性の発現にし

か利用できませんが、浮遊細胞を除く広範囲の様々な細胞に非常に効率良く

遺伝子導入を行うことができます。特に、非分裂細胞や増殖停止期の細胞に

も遺伝子導入が可能であることから、生体への応用も可能です。

AAV(アデノ随伴ウイルス)

パルボウイルス科Parvoviridaeのデペンドウイルス属Dependovirusのウイル

スで、自立増殖できず、アデノウイルスをヘルパーとして、アデノウイルス

が感染している細胞の核内で増殖します。しかし、アデノウイルスとの間に

DNA塩基配列の類似性は見られません。変異原物質の存在下で宿主細胞が同

調分裂を行う条件下では、ヘルパーウイルスなしで増殖することも可能です。

直鎖一本鎖DNAを持ち、プラス鎖を含む粒子とマイナス鎖を含む粒子とがあ

り、約半数ずつ存在します。直径20nmの球状粒子で、32個のカプソメアか

ら成る正20面体のカプシドを形成し、エンベロープは持っていません。パル

ボウイルスは自然界に存在するウイルスの中でも最も小さい部類に入り、そ

のためラテン語で「小さい」を意味する parvus から命名されました。

AAVベクターは、染色体への組み込みは稀ですが、非分裂細胞にも高効率で

導入でき、比較的長期にわたって遺伝子が発現されるのが特徴です。また、

重複感染が可能なため、複数の遺伝子を別のベクターを用いて、同じ標的細

胞に導入することもできます。近年、ヒトやサルの様々な組織から100以上

の新たなAAVの型が発見されており、また、成人の約85%でAAVに対する抗

体を有していますが、ヒトに対する病原性は証明されていません。このため、

生体内への直接投与に適しています。

今回の記事に関するご意見、ご質問は、当社テクニカルサービスまでお願いいたします。

Tel: 0120-20-8076Email: [email protected]

カプシド(全体)

カプソメア(単体)

ペントン

スパイク

ゲノム

図1 ウイルスの基本構造

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細胞生物学 Cell Biology

遺伝子の探索から機能へ

ストラタジーン社のPathDetect® PathwayProfiling Systemsは、簡単な酵素活性を測定することで目的の転写活性の定量を可能にします。PathDetect® Pathway Profiling Systemsには、cis -と t rans -の2種類のRepor t ingSystemがあります。

PathDetect® cis -Reporting Systemsは、ルシフェラーゼ・レポーターもしくはhrGFPの発現を用いたシステムで、in vivoにおけるシグナル伝達経路の活性化を、in vitroで簡単、迅速かつ的確に確認できます。このシステムは、未知の遺伝子産物や薬剤等の特性を検討する際に有用です。これに対してPathDetect® trans-Reporting

Systemsは、目的の伝達経路における転写因子のリン酸化を引き起こす刺激を特定する際に便利なシステムで、特定の経路における新しい遺伝子産物や成長因子、薬剤の候補因子などの直接的あるいは間接的な関与を検証することに利用できます。

PathDetect® Cis-Reporting Systemsのメカニズム

研究対象のエンハンサ ー 配 列 を 含 む c i s -

レポーター・プラスミドと目的遺伝子を発現させるプラスミドをともに哺乳類細胞へトランスフェクションします。目的遺伝子の遺伝子産物がエンハンサー配列へと導くシグナル伝達経路に関与している場合、レポーターが活性化されます(図1)。また、cis -レポーター・

プラスミドがトランスフェクションされている細胞に、薬剤等の細胞外の刺激を加えることにより、その刺激がエンハン

サー配列へと導くシグナル伝達経路に関与しているかどうかを検証することができます。

様々なシグナル伝達経路の研究が可能に

MAPキナーゼ・カスケードは細胞外刺激によって活性化され、さまざまな細胞応答を引き起こします。活性化されたMAPキナーゼ・カスケードは下流のc-Jun/c-fos(AP-1)、Elk-1、Egr-1、NF-kB、SREなどの転写因子を活性化し、その結果、アポトーシス、炎症、細胞増殖、細胞分化などに関与する遺伝子の発現を制御します。

JAK/STATシグナル伝達経路では、サイトカインなどの刺激により活性化されたSTATが核内に移動し、GAS、ISRE、LILREなどのエレメントに結合することにより、サイトカイン誘導遺伝子などの転写を誘導します。

PathDetect® cis -Reporting Systemsを利用すれば、MAPキナーゼ・カスケード、JAK/STATシグナル伝達経路のみならず、レチノイン酸受容体を介し、DR1/RXRE、DR3/VDR、DR4、DR5/RAREへと導くシグナル伝達経路などの活性化を検証することができます(表1)。

柔軟な製品構成

PathDetect® cis -Reporting Systemsでは、多様な研究目的に対応するために、様々な製品を提供しています。PathDetect®システムでは、レポーター・タンパク質として、高感度で便利なルシフェラーゼを採用しています。また、hrGFPレポーター・タンパク質を使用すれば、蛍光顕微鏡やフロー・サイトメーターによる解析が可能です。

pLuc-MCS plasmidには、マルチ・クローニング・サイト(MCS)があり、エンハンサー配列や転写エレメントを挿入可能なので、弊社で取り扱っていないエンハンサー配列や全く未知の配列の解析が可能です。また、本システムにはコントロール実験用に、陽性あるいは陰性の両コントロール・プラスミドが含まれています。更に、レポーター、陽性、陰性コントロール・プラスミドの単品での購入も可能で、本システムの柔軟性を最大限に高めています。

PathDetect®システムおよび関連製品の詳細については以下のサイトをご覧下さい。

www.stratagene.com/transcription

転写活性をもたらす活性化因子の同定

問題点 Problem 解決法 Solution

研究の対象が遺伝子の探索から機能ゲノミクスへ移行するにつれて、遺伝子やタンパク質(ミクロ)と生物学的な現象(マクロ)との関係を解明する必要が高まっています。これまでは、シグナル伝達経路の解析に面倒なブロッティングや、時間がかかり非定量的なゲル-シフト解析(EMSA)が主流でした。

ストラタジーン社のPathDetect® Pathway Profiling Systemsは、

従来の方法よりも高感度かつ定量的に転写活性を測定することができます。PathDetect® システムを用いることで、細胞遺伝

子をレポーター遺伝子に置き換えることができ、簡単な酵素活性を測定することで目的の転写活性の定量が可能です。

TA

プロテイン・キナーゼA

+ Cotransfection of genes

+ 細胞外刺激

+ シグナル伝達経路が活性化+ プロテイン・キナーゼ(PK)が活性化+ trans-activator(TA)のリン酸化

+ Cisレポーターベクター

PKA

POL IICOMPLEX

反応因子 TATATA レポ-ター

反応因子 TATATA レポ-ター

TATA

TA

PO4 PO4

PO4 OH

+ リン酸化されたTAが、  Cis活性反応因子に結合し、  レポーター遺伝子の  転写を促す

レポーター・ベクターと目的の遺伝子を同時にトランスフェクション

図1 PathDetect® Cis -ReportingSystemsのメカニズム

AP-1 (Activator protein-1)

c/EBP (CCAAT-enhancer binding protein)

CRE (Cyclic AMP)

DR1/RXRE (Retinoic x receptor epsilon)

DR3/VDR (Vitamin D receptor)

DR4/TR (Thyroid receptor)

DR5/RARE (Retinoic acid receptor epsilon)

Egr-1 (Early growth response-1)

GAS (g-activated sequence)

GRE (Glucocorticoid response element)

ISRE (Interferon-stimulated response element)

LILRE (LPS IL-1b response element)

NFAT (Nuclear factor of activated T cells)

NF-kB (Nuclear factor kB)

p53 (Tumor suppressor protein p53)

SRE (Serum response element)

SRF (Serum response factor)

TARE (TGF-Beta or Activin response element)

表1 PathDetect® Cis -Reportor Plasmids

Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p9

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ノーザン、サザン解析 Northern & Southern Analysis

Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p10

ハイブリダイゼーションの時間を大幅に短縮

問題点 Problem 解決法 Solution

長時間にわたるプローブの標識やオーバーナイトでのハイブリダイゼーションなど、従来のハイブリダイゼーション実験は時間がかかり、非効率的でした。

ストラタジーン社のハイブリダイゼーション関連製品を用いることで、プローブの標識が2分、プローブの精製が2分、ハイ

ブリダイゼーションが1~2時間で完了できます。

プローブの標識が最短で2分で完了

ストラタジーン社のPrime-It® II RandomPrimer Labeling Kitを使用することで、1×109dpm/µg以上の特異的活性を持つプローブが、2分以内で作製できます。本製品にはヌクレオチドのミックスが添加された2種類のバッファーが含まれており、これらのバッファーは[32p]dATPまたは[32p]dCTPのどちらにも対応しています。本製品には9merのランダム・プライマーとエクソヌクレアーゼ活性を欠損させたクレノウ・ポリメラーゼも含まれています。

Prime-It® RmT Random Primer Labeling Kitでは、耐熱性細菌からクローン化した熱安定性ポリメラーゼを使用しており、至適増幅温度が72℃と高温なので、室温での保存が可能です。このポリメラーゼは37℃でも十分な活性を示します。また、DNAポリメラーゼ Iのクレノウ・フラグメントと比較して、熱劣化に対して安定しています。本製品の内容物は、6ヶ月以内は機能活性を失うことなく室温での保存が可能です。本製品では、高い特異的活性を持つプローブが、5分以内で作製できます。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)

法は、遺伝子の局在性や遺伝子マッピング、そして染色体異常の検出等に広く使用されています。 Prime-It® Fluor FluorescenceLabeling Kitは、ランダム9-merプライマーおよびexo- Klenowポリメラーゼを用いて、プローブ断片にfluor-12-dUTPを取り込ませることにより、蛍光標識したDNAプローブを作成するキットです。蛍光ヌクレオチドを取り込ませたプローブを、顕微鏡用スライドに固定した染色体とハイブリダイゼーションさせた後、蛍光顕微鏡下で標的遺伝子(染色体)を観察できます。

プローブの精製が2分で完了

ストラタジーン社のNucTrap® ProbePurification Columnsは、G-50ドリップ・カラムやスピン・カラムに代わる方法で、放射性同位元素で標識したDNAやRNAのプローブから、組み込まれなかったヌクレオチドを99%以上分離します。遠心分離等の操作は不要で、標識したプローブを、シリンジ状のカラムに通すだけで精製が完了します。プローブの回収効率はプローブの大きさにより変動します(17mer未満では70%以上、17~50merでは80%以上、51mer以上では90%以上)。放射能を遮断するPush Column Beta Shield

Deviceを使用することで、RI標識したプローブでも安全に精製することができます。NucTrap® Probe Purification Columns専用にコンパクトに設計されており(12×12×23cm)、3つのアクリルのパーツで構成されています。

ハイブリダイゼーションが1~2時間で完了

QuikHyb® Hybridization Solutionは、核酸のプローブを溶液の水層から排除する、高速化エンハンサーが含まれているため、ハイブリダイゼーションの局所でプローブの濃度を効果的に高めることができます。また新しく開発された界面活性剤はプローブの非特異的な結合を防ぎ、高い温度でのハイブリダイゼーションを可能にします。その結果、プローブのテンプレートへの結合反応速度が劇的に上昇します。また本製品では、他社製品と比べて2倍のシグナル強度が得られることが実証されています。

MiracleHybTM Hybridization Solutionは、極めて少量のRNAをノーザンブロットで検出する際や、高いシグナル強度が必要な場合に有効です。本製品は、24時間のインキュベーション後でも、バックグラウンドのレベルを上げることなく、最大限の感度が得られるように特別な組成を施しています。また、本製品にはプローブ調整用のバッファーも含まれているため、プローブの調整も容易に行えます。

ハイブリダイゼーション関連製品

製 品 容 量 カタログ# 価格(税別)

ハイブリダイゼーション関連

QuikHyb® Rapid Hybridization Solution 1,000ml 201221 ¥186,000

250ml 201220 ¥54,000

MiracleHybTM Hybridization Solution 125ml 201223 ¥24,000

250ml 201222 ¥44,000

Salmon Sperm DNA (10µg/ml) 10ml 201190 ¥52,000

プローブの標識

Prime-It® Fluorescence Kit 30反応 300380 ¥59,600

Prime-It® II Random Primer Labeling Kit 30反応 300385 ¥49,600

Prime-It® RmT Random Primer Labeling Kit 25反応 300392 ¥48,800

プローブの精製

NucTrap® Probe Purification Columns 25カラム 400701 ¥51,200

50カラム 400702 ¥79,600

Push Column Beta Shield Device 1台 400700 ¥132,800

Push Column Extra Syringe, 25 25本 400703 ¥28,000

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Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p11

今回から、ストラタジーン製品を実際に使用されてい

るユーザー様から生の声を聞く、「Lead Vocal」のコーナーが始まります。このコーナーでは、分子生物学の

各分野で活躍されている「Vocalist」を独断と偏見でノミネートさせていただき、「Vocalist」の研究内容と合わせて、お使いのストラタジーン製品の「使い勝手を」

お伝えしていきます。

記念すべき第一回目の「Vocalist」は、名古屋大学医学部助教授の木村宏先生(分子総合医学専攻微生物免疫学講座ウイルス学分野)に登場していただきます。木村宏先生は、20年近くにわたってヘルペスウイルスの研究に従事されてこられました。また一方で、ストラタジーンのMx3000P® リアルタイムPCRシステムを用いたMultiplex(多色)解析に早くから取り組まれ、これまで難しいといわれてきたMultiplexの実験系を確立されています。今回は、現在木村先生が取り組まれている研究の中でも、ヘルペスウイルスのMultiplex解析を中心にお話を伺います。

また、木村宏先生は11月19~21日に名古屋国際会議場で開催される、「第54回日本ウイルス学会学術集会」の事務局長でもあることから、本学会の見所についてもご説明いただきます。

Q. まず、木村先生の研究内容についてお伺いします。

A. ヒトに感染すると考えられているヘルペスウイルスは、現在8種類同定されており、私たちのほとんどが感染しています。ヘルペスウイルスは初感染時に急性疾患を生じた後、潜伏感染化し、免疫能が低下したときに再活性化して何らかの疾患を生じます。特に造血幹細胞移植や臓器移植の際には免疫抑制剤を投与するため、ヘルペスウイルスの再活性化が起こりやすく、これらをいかにして感知し、治療や予防に繋げていくかをテーマに研究を行っています。具体的には、HCMV、HHV-6、EBVの3つのヘルペスウイルス(下記Keynotesを参照)を、ストラタジーンのMx3000P® リアルタイムPCRシステムを用いて同時に検出、定量し、再活性化のメカニズムを解明しようとしているところです。

分子総合医学専攻ウイルス学教室の皆さん前列左から2番目が木村先生。前列左から3番目の西山幸廣先生は、名古屋大学医学部教授および第54回日本ウイルス学会学術集会会長。

名古屋大学医学部を卒業後、愛知県厚生連安城更生病院という農協の病院で研修され、その後名古屋大学小児科に入局。名古屋大学にて医学博士号を取得された後も、3年間のNIHへのポスドクを挟み、10年以上にわたって小児科医として臨床医の道を歩む傍ら臨床ウイルス研究に従事してこられましたが、2005年より現職のウイルス学分野に所属されています。研究テーマは、小児科大学院時代から一貫してヘルペスウイルスに関する臨床ウイルス学研究で、特に 1)ウイルス疾患の遺伝子診断、2)ウイルスの中枢神経系感染機構の解明、3)ウイルスによる母子感染・先天感染の発症病理の解明、4)難治性ウイルス疾患に対する免疫・細胞療法の確立などです。

木村宏先生の略歴

Keynotes♪Keynotes♪ヘルペスウイルス(Herpusvirus):二本鎖DNAウイルスで、ウイルス

遺伝子DNAは150kb以上あり、80

以上のORFを持つ。162個のカプソ

メアからなる直径約100nmの正20

面体のカプシドの中に入っており,

このヌクレオカプシドをエンベ

ロープがとり囲み全体として約150

~200nmの大きさをもつ。潜伏感染を特徴とし、宿主の免疫状態の

変化に伴って再活性化(回帰発症)する。ヘルペスウイルス科のウ

イルスは哺乳動物から昆虫に至るまで130種以上が分離されており、

α(単純ヘルペスウイルス等),β(HCMVやHHV-6等)および

γ(EBV等)亜科に分類される。潜伏感染部位がそれぞれ神経節、マ

クロファージ系細胞、B細胞と異なるだけでなく、亜科間はもとよ

り亜科内でも遺伝子の大きさや構造が大きく異なる。ヘルペスウイ

ルスは広い宿主域を持ち、外来遺伝子の搭載許容量が大きいなどの

理由から、遺伝子治療用のベクターとしても開発が進められている。

ヒト・サイトメガロウイルス(HCMV: Human Cytomegalovirus):235kbのDNAを持ち、直径180nmもある科内最大のウイルス。経胎

盤、産道、母乳、唾液、性交渉、輸血等により感染し、そのほとん

どが不顕性感染の形で尿や唾液中にウイルスを排出し、更なる水平

感染源となる。全出産の0.4-1%に胎内感染が報告され、その内5-

10%は出生時に脳障害が生じ、出生時無症状児の内約10%は生後数

年してから脳障害が生ずる。脳や骨髄系神経前駆細胞、マクロ

ファージ等に潜伏感染し、成人後は主に免疫抑制時に肺炎や網膜炎、

脳炎等を発症する。

ヒト・ヘルペスウイルス6(HHV-6: Human Herpesvirus 6):160kbのDNAを持ち、AとBのバリアントがある。HHV-6Aは疾患と

の関係が未確定であり、HHV6と言えば一般的にHHV-6Bを指す。ほ

とんどの人で1歳半までに初感染し、突発性発疹の原因となる。脳や

マクロファージ等に潜伏感染し、再活性時には熱性痙攣や免疫低下

時の脳炎の原因となる。

EBウイルス(EBV: Epstein-Barr Virus): 172kbのDNAを持ち、

HHV4と同じ。人に感染するウイルスの中で初めて「がんウイルス」

と呼ばれる。成人までに90%以上の人が感染し、一部の人で伝染性

単核球症を発症する。末梢血Bリンパ球に潜伏感染し、唾液中にウ

イルスを排出する。免疫低下時に再活性化し、日和見リンパ腫や

種々のリンパ増殖性疾患を発症する。東アジアに多く見られる慢性

活動性EBV感染症の場合、B細胞以外のTやNK細胞に感染し、発熱や

リンパ節腫脹、肝脾腫などを呈する。予後は極めて不良で、数年後

には多臓器不全や悪性リンパ腫、白血病等を発症する。

図1 単純ヘルペスウイルス1型の電子顕微鏡写真

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Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p12

Q. ストラタジーンのMx3000P® リアルタイムPCRシステムの使い勝手はどうでしょうか?

A. 以前は他社の機械を使っていたのですが、それらに比べて、データの再現性も高く、操作が簡単で非常に使い勝手が良いです。ソフトも使いやすく、とても満足しています。Multiplexは初めてだったのですが、Mx3000P®リアルタイムPCRシステムでは簡単に取り組むことが出来ました。

Q. 貴重なサンプルを節約する以外に、Multiplexで行うメリットは何ですか?

A. まず、多検体を定期的に効率よく測定することができます。それ以上に重要なのが、これらのヘルペスウイルスの活性化は、それぞれが独立して引き起こされるのではなく、免疫低下時には複雑に関連しあって活性化され、様々な疾患が引き起こされることが分かっています。したがって、Multiplexで測定することにより、これら疾患のどの段階でどのウイルスが関与しているのかといった宿主を介したウイルス間の相互作用や病態の解明に繋がり、ひいては臨床診断の指標を作成することができます。

Q. 現在直面されている問題点等がございますか?

A. これらのウイルスはそれぞれ潜伏感染場所や活性化する場所が異なるので(Keynotes参照)、3つのウイルス全てを網羅するためにサンプルとして全血を用いているのですが、活性化したウイルスだけでなく、潜伏感染している状態のウイルスまで拾ってしまうことでしょうか。いかにして、潜伏状態と活性化状態を見分けるか、もしくは活性化状態のウイルスだけを検出するかが今後の課題です。

Q. 今後の展望についてお聞かせ下さい。

A. 3種類のウイルスだけでなく、単純ヘルペスウイルス(Herpes-Simplex Virus)等の他のヘルペスウイルスの検出も行っていきたいと考えています。フィルターが5枚のMx3005Pを使用すれば十分に可能です。また、まだ原因がはっきりしていない脳炎が報告されているのですが、ヘルペスウイルスとの関連性の解明や、脳炎を引き起こすウイルスの同定も行っていきたいと考えています。

Q. 「第54回日本ウイルス学会学術集会」についてPRをお願いします

A. 名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学の西山幸廣教授が学会長となり、第54回日本ウイルス学会学術集会を、本年11月19日(日)から21日(火)までの3日間名古屋国際会議場において開催いたします。本大会のテーマは“ウイルスを知る。ウイルスから学ぶ。”です。今回の学術集会では、ウイルス学の現在をできる限り俯瞰できたらと考え、教育講演&Overviewシリーズ“ウイルスを知る”を企画し、会期中を通して開催することに致しました。また、シンポジウム“ウイルスを利用する”、ランチョンセミナーなども計画しております。ポスター&ミキサーの会場となる国際会議場イベントホールは、参加者全員が集まっても十分余裕がありますので、交流の場として大いに活用して戴けるものと思います 皆様ぜひご参加ください。

図2 Mx3005P®(左)とMx3000P®(右)リアルタイム定量PCRシステム

図3 Real-time PCR法によるEBV DNAの定量Kimura, J. Clin Microbiol. 1999

図4 Multiplex real-time PCR法によるEBV, CMV, HHV6同時測定法の確立

■ EBV BALF5領域-FAM■ CMV IE2領域-HEX■ HHV-6 U31領域-Cy5

コントロールプラスミドの増幅曲線

サイクル数1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49

蛍光強度

057

047

037

027

017

007

-0.03

コピー数100 101 102 103 104 105 106 107

サイクル数

41

39

37

35

33

31

29

27

25

23

21

19

17

検量線

コピー数

サイクル数

100 101 102 103 104 105 106 107

44

39

34

29

24

19

14

学会名:第54回日本ウイルス学会学術集(http://virus54.umin.jp/)

会 長:西山幸廣 名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学

会 期:2006年11月19日(日)~21日(火)

会 場:名古屋国際会議場

事務局:第54回日本ウイルス学会学術集会 事務局名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65Tel.052-744-2207 Fax.052-744-2452

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Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p13

Aストラタジーン社では、次に挙げるアデノウイルス遺伝子導入システムを販売しています。

◆アデノウイルス遺伝子導入システムAdEasyTM Adenoviral Vector SystemAdEasyTM XL Adenoviral Vector System

◆アデノウイルス遺伝子導入システムを利用した相互作用タンパク質の精製システムInterPlayTM Adenoviral TAP System

FAQこのコーナーでは、お客様からの技術や製品に関する様々な疑問や質問に回答しながら、最新の技術情報を提供していきます。

今回は、アデノウイルスを用いた遺伝子導入システムAdEasyTM システムに関して寄せられる質問

に、弊社のテクニカルサービス部が回答します。

目的の遺伝子を本来の細胞で発現させることは、タンパク質の機能を理解する上で非常に重要です。しかしながら、従来の方法での哺乳類細胞へのトランスフェクションでは、細胞の種類によっては効率が非常に低いという問題がありあます。アデノウイルスを利用すれば、多様な細胞への感染が可能ですが、従来のアデノウイルス遺伝子導入システムは、組換えアデノウイルス・ベクターの構築が難しい上に、構築だけで数週間を要することもあります。ストラタジーン社のAdEasyTM Adenoviral Systemを使用す

れば、細胞の種類に左右されない高効率での遺伝子導入が可能です。また、組換えアデノウイルス・ベクターを、一度の形質転換と一晩のインキュベーションだけで構築することができるので、時間や労力を大幅に削減することができます。さらに、ストラタジーンでは、アデノウイルス粒子の

精製と濃縮のためのキットや力価を測定するキット、TAP法と組み合わせた相互作用タンパク質の共精製用キットも販売しており、アデノウイルスを用いた遺伝子導入実験を、トータルでサポートしています。

アデノウイルス遺伝子導入システム

製品 カタログ# 内容と容量 価格(税別)

InterPlayTM Adenoviral N-Terminal TAP System 240213 N末用ベクター#240214とレジン、バッファーを含む一式 ¥374,000

N-Terminal TAP Vectors 240214 N末用シャトル・ベクターのみ ¥116,000

C-Terminal TAP System 240215 C末用ベクター#240216とレジン、バッファーを含む一式 ¥374,000

C-Terminal TAP Vectors 240216 C末用シャトル・ベクターのみ ¥116,000

AdEasyTM Virus Purification Kit 2x100 240243 2回 x 100ml cultures ¥94,000

5x100 240244 5回 x 100ml cultures ¥208,000

500 240245 1回 x 500ml cultures ¥188,000

AdEasyTM Viral Titer Kit 100 972500 120wells (24wellプレートを使用) ¥92,000

AdEasyTM Adenoviral Vector System 240009 #200154を含むベクター・システム一式 ¥196,000

BJ5183 Electroporation-Competent Cells 200154 相同組換えのためのコンピテント・セル(5×100µl) ¥49,600

pAdEasy-1 vector 240005 複製能を欠失したアデノウイルス・ベクター(2.5µg) ¥82,000

pShuttle vector 240006 目的の発現カセット用クローニング・ベクター(20µg) ¥82,000

pShuttle-CMV vector 240007 CMVプロモーター付きクローニング・ベクター(20µg) ¥82,000

pShuttle-CMV-LacZ vector 240008 LacZレポーター付きクローニング・ベクター(10µg) ¥66,000

pShuttle-IRES-hrGFP-1 vector 240081 FLAGとhrGFPの付いたシャトル・ベクター(20µg) ¥104,000

pShuttle-IRES-hrGFP-2 vector 240082 HA tagとhrGFPの付いたシャトル・ベクター(20µg) ¥104,000

AD-293 cells 240085 パッケージング用細胞(1×106細胞) ¥62,000

AdEasyTM XL Adenoviral System 240010 #200157と#240085を含むベクター・システム一式 ¥248,000

BJ5183-AD-1 Electroporation-Competent Cells 200157 相同組換えのためのコンピテント・セル(5×100µl) ¥65,200

Q ストラタジーン社では、どのようなアデノウイルス遺伝子導入システムを販売しているのですか?

AAdEasyTM Adenoviralシステムは非分裂細胞を含む幅広い哺乳類細胞への高効率での遺伝子導入や、高レベルでのタンパク質発現を可能にするアデノウイルス遺伝子導入システムです。従来のアデノウイルス遺伝子導入システムでは、組換えアデノウイルス・ベクターを構築するのが難しい上に、数週間を要することもあります。これに対してAdEasyTM Adenoviralシステムでは、目的遺伝子をpShuttleベクターに挿入した後、pAdEasy-1ベクターと共にE. coli BJ5183株を形質転換し、E. coli 内での相同組換えによりアデノウイルス・ベクターを構築します。わずか二段階でアデノウイルス・ベクターを構築することができるので、時間や労力を大幅に削減することができます。

Q AdEasyTM Adenoviral Vector SystemとAdEasyTM XLAdenoviral Vector Systemとはどのような製品でしょうか?また、従来のアデノウイルス遺伝子導入システムとはどのように異なるのでしょうか?

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Strategies 日本語版 Vol.2 No.3 p14

AAdEasyTM Adenoviralシステムでは、目的の遺伝子を含むpShuttleベクターとpAdEasy-1ベクターを共にE. coli BJ5183株に形質転換し、アデノウイルス・ベクターを構築します。

これに対してAdEasyTM XL Adenoviralシステムでは、AdEasy-1ベクターが既に形質転換されているBJ5183-AD1株を使用します。目的の遺伝子を含むpShuttleベクターだけを形質転換させるため、2つのベクターを同時に形質転換させるBJ5183株使用時に比べて、3倍の組換え体を得ることができます。

Q AdEasyTM Adenoviral Vector SystemとAdEasyTM XLAdenoviral Vector Systemとはどのように異なるのでしょうか?

AInterPlayTM Adenoviral TAP SystemはAdEasyTM XL Adenoviral VectorSystemとTandem Affinity Purification System (TAP)を組み合わせたシステムで、非分裂細胞を含む幅広い哺乳類細胞への高効率での遺伝子導入、高レベルのタンパク質発現、相互作用タンパク質の高純度での精製を可能とします。本製品の詳細はStrategies 日本語版 Vol.2 No.3P3を参照してください。

Q InterPlayTM Adenoviral TAP Systemとはどのようなシステムですか?

AAdEasyTM Adenoviralシステムに使用するpShuttleベクターには7.5kb、pShuttle-CMVベクターには6.6kb、pShuttle-IRES-hrGFP-1ベクターとpShuttle-IRES-hrGFP-2ベクターには5.2kbの目的遺伝子を挿入することができます。また、InterPlayTM Adenoviral TAPシステムに使用するpTAP Shuttleベクターには6.6kbの目的遺伝子を挿入することができます。

Q どのくらいの大きさの目的遺伝子をpShuttleベクターに挿入可能ですか?

AAD-293細胞はHEK293細胞由来の細胞で、高い粘着性をもつ細胞です。この高い粘着性によりAD-293細胞単層がトランスフェクションの際に破壊されにくくなり、高力価のウイルスの生産を可能とし、また、プラーク・アッセイを容易にします。

Q AdEasyTM AdenoviralシステムおよびInterPlayTM

Adenoviral TAPシステムに含まれているアデノウイルス・パッケージング用のAD-293細胞とはどのような細胞ですか?

Aトランスフェクションはさまざまな手法により可能ですが、ストラタジーン社ではViraPack Transfection Kit (#200488) の使用を推奨しています。このキットはリン酸カルシウム法を改良したもので、高力価のウイルス(107pfu/ml)の生産を可能にします。

Q AD-293細胞へのトランスフェクションはどのような手法を用いれば良いのですか?

A塩化セシウム密度勾配法を用いると、アデノウイルスを精製するのに12~48時間も要しますが、ストラタジーン社の新製品AdEasyTM VirusPurification Kitを使用すれば、注射器やフィルターを用いた簡単方法で、わずか2~3時間で精製することができます。また、付属の遠心ユニットを使用すれば、緩衝液の交換やウイルスの濃縮を簡単な遠心操作で行うことができます。本製品の詳細はStrategies 日本語版 Vol.2 No.3P4を参照してください。

Q 従来の手法を用いてアデノウイルスを精製するには時間や労力を大幅に使うのですが、何か良い方法はありませんか?

Aストラタジーン社の新製品AdEasyTM Viral Titer Kitを用いれば、24~48時間でアデノウイルスの力価を測定することができます。このキットはアデノウイルス粒子のヘクソン・タンパク質を免疫染色により検出します。アデノウイルスに感染した細胞は褐色になり顕微鏡で検出できるので、特殊な機器などは必要ありません。

また、pShuttle-IRES-hrGFP-1ベクターおよびpShuttle-IRES-hrGFP-2ベクターを使用すると、アデノウイルスの力価を蛍光顕微鏡やフロー・サイトメトリーで測定することができます。本製品の詳細はStrategies日本語版 Vol.2 No.3 P4を参照してください。

Q アデノウイルスの力価を測定したいのですが、50% Tissue Culture Infectious Dose (TCID50) 法やプラーク形成法を用いると10日もかかってしまいます。もっと速い測定方法はありませんか?

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